JP6539098B2 - 成型発熱体 - Google Patents

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Description

本発明は、金属の酸化還元反応を利用する成型発熱体に関するものである。
食品の加温や加熱調理に用いる発熱体として、酸素供与体を含む自己燃焼型の発熱体が開発されている。例えば、特許文献1には、フェロシリコン粉末と、酸化第2鉄とこれより低次の酸化鉄粉末の混合粉末を圧縮成形した発熱体が提案されている。このような発熱体では、酸化第2鉄とこれより低次の酸化鉄がフェロシリコン中の珪素に対して酸素供与体として作用するので、外部から酸素を供給しなくても自己燃焼する。
ところが、このような粉末原料を混合して加圧成形しただけの発熱体では、発熱体の燃焼時の高熱によって水分や炭素分などに起因して発生するガスによって発熱体に膨張や割れが発生する。
特許文献2には、酸化鉄粉末と、珪素と鉄の合金粉末とからなる自己燃焼性粉末に、アルカリ性化合物の水溶液を添加してプレス成形することによって発熱体の強度を向上させる技術が提案されている。
しかしながら、このような提案技術によっても燃焼時の発熱体の膨張や割れを十分に抑制することはできない。
特開平4−177056号公報 特開平2−229881号公報
本発明はこのような従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、圧縮成型された発熱体であって、燃焼によって高温となっても膨張や割れが生じない発熱体を提供することにある。
また本発明の他の目的は、自己燃焼によって高温となっても膨張や割れが生じない発熱体の製造方法を提供することにある。
そしてまた本発明の他の目的は、燃焼によって高温となっても膨張や割れが生じない発熱体を圧縮成型することによって作製できる造粒物を提供することにある。
前記目的を達成する本発明に係る成型発熱体(以下、単に「発熱体」と記すことがある)は、金属粉末と金属酸化物粉末とを含有し、圧縮成型された発熱体であって、空隙率が35体積%以上60体積%以下で且つ圧壊強度が100kg/cm以上であることを特徴とする。
ここで、発熱体の密度としては、1.90g/cm以上2.70g/cm以下の範囲であるのが好ましい。
また本発明によれば、金属粉末と金属酸化物粉末とを分散媒中に投入してスラリーを得る工程と、前記スラリーを噴霧乾燥して球形状の造粒物を得る工程と、前記造粒物を圧縮成型する工程とを有することを特徴とする成型発熱体の製造方法が提供される。
ここで、前記造粒物の、下記式(1)から算出される円形度は0.75以上であるのが好ましい。
円形度=4π×(A/L)・・・・・・(1)
(式中、L:造粒物の周囲長,A:造粒物の投影面積)
また、前記造粒物の体積平均粒径は25μm以上400μm以下の範囲であるのが好ましい。
そしてまた本発明によれば、圧縮成型によって発熱体とされる、金属粉末と金属酸化物粉末とを含有し球形状の造粒物であって、下記式から算出される円形度が0.75以上である成型発熱体用の造粒物が提供される。
円形度=4π×(A/L
(式中、L:造粒物の周囲長,A:造粒物の投影面積)
ここで前記造粒物の体積平均粒径としては25μm以上400μm以下の範囲であるのが好ましい。
本発明の発熱体によれば、圧縮成型された発熱体であっても燃焼による膨張や割れが生じない。
また本発明の製造方法によれば、自己燃焼によって高温となっても膨張や割れが生じない発熱体を製造方法できる。
そしてまた本発明の造粒物を用いて圧縮成型すれば、自己燃焼によって高温となっても膨張や割れが生じない発熱体を製造できる。
実施例1の発熱体の断面SEM写真である。 比較例1の発熱体の断面SEM写真である。
本発明の発熱体は、金属粉末と金属酸化物粉末とを含有し圧縮成型されたものである。
本発明で使用する金属粉末としては、鉄やアルミニウムなどの金属粉末、ホウ素や珪素などの半金属の単体粉末、フェロシリコンの粉末などが挙げられる。これらの中でもフェロシリコンが好適に使用される。フェロシリコンとしては、シリコン含有量70%以上で、平均粒径20μm以下であるのが望ましい。金属粉末の含有量としては、20重量%〜35重量%の範囲が好ましい。金属粉末の含有量が20重量%未満であると、燃焼が円滑に進まないおそれがある一方、金属粉末の含有量が35重量%を超えると、単位重量当たりの発熱量が低下するおそれがある。
本発明で使用する金属酸化物粉末としては、酸化第2鉄、酸化スズ、酸化チタンなどの金属酸化物粉末及びこれらよりも低次の酸化物粉末が挙げられる。これらの中でも酸化第2鉄粉末及びこれよりも低次の酸化鉄粉末が好適に使用される。金属酸化物粉末の平均粒径は10μm以下が好ましく、より好ましくは5μm以下である。また金属酸化物の含有量としては、10重量%〜70重量%の範囲が好ましい。金属酸化物粉末の含有量が10重量%未満であると、圧縮成型後の強度が低下するおそれがある一方、金属酸化物粉末の含有量が70重量%を超えると、単位重量当たりの発熱量が低下するおそれがある。
酸化第2鉄よりも低次の酸化鉄粉末としてはマグネタイト(Fe3−X,X:0.33)が好適に使用される。前記低次の酸化鉄粉末の平均粒径は20μm以下であるのが望ましい。また前記低次の酸化鉄粉末の含有量としては、10重量%〜60重量%の範囲が好ましい。前記低次の酸化鉄粉末の含有量が10重量%未満であると、燃焼が円滑に進まないおそれがある一方、前記低次の酸化鉄粉末の含有量が60重量%を超えると、単位重量当たりの発熱量が低下するとともに発熱体の強度も低下するおそれがある。
その他、燃焼速度調整剤などの添加剤を必要により本発明の効果を害さない範囲において添加してもよい。
本発明に係る発熱体の大きな特徴の一つは、圧縮成型された発熱体であって、空隙率が35体積%〜60体積%で且つ圧壊強度が100kg/cm以上である点にある。これまでの圧縮成型された発熱体では、圧縮力を強くすることによって圧壊強度を高くすることはできたが、この場合、空隙率は小さくなる。発熱体の空隙率が小さいと、発熱体の燃焼時の高熱によって発生するガスによって発熱体に膨張や割れが発生する。反対に、発熱体の空隙率を大きくすると、圧壊強度が低下する。これに対して、本発明の発熱体では、後述する製造方法によって、所定の空隙率を得ながらしかも高い圧壊強度が得られるようになった。
本発明に係る発熱体の空隙率は35体積%〜60体積%の範囲である。発熱体の空隙率が35体積%未満であると、発熱体の燃焼時に発生するガスの抜け道が十分には確保されず発熱体に膨張や割れが発生する。一方、発熱体の空隙率が60体積%を超えると発熱体の強度が急激に低くなる。より好ましい発熱体の空隙率は、40体積%〜60体積%の範囲である。
本発明に係る発熱体の圧壊強度は100kg/cm以上である。発熱体の圧壊強度が100kg/cm未満であると、圧縮成型された発熱体が実使用において損壊するおそれがある。より好ましい圧壊強度は110kg/cm以上である。
また、本発明に係る発熱体の密度は1.90g/cm〜2.70g/cmの範囲が好ましい。発熱体の密度が1.90g/cm未満であると、体積当たりの発熱量が低下するおそれがある。一方、発熱体の密度が2.70g/cmを超えると、発熱が急速に進行し持続的な発熱が得られないおそれがある。より好ましい発熱体の密度は1.90g/cm〜2.50g/cmの範囲である。
本発明に係る発熱体の製造方法に特に限定はないが、以下に説明する製造方法が好適である。
まず、金属粉体原料、金属酸化物粉体原料を秤量する。次いで、原料を分散媒中に投入しスラリーを作製する。本発明で使用する分散媒としては水が好適である。分散媒には、前記原料の他、必要によりバインダー、分散剤等を配合してもよい。バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコールが好適に使用できる。バインダーの配合量としてはスラリー中の濃度が0.5質量%〜2質量%程度とするのが好ましい。また、分散剤としては、例えば、ポリエーテルやポリカルボン酸アンモニウム等が好適に使用できる。分散剤の配合量としてはスラリー中の濃度が0.5質量%〜2質量%程度とするのが好ましい。その他、本発明の効果を阻害しない範囲で従来公知の添加剤を配合してもよい。スラリーの固形分濃度は50質量%〜90質量%の範囲が望ましい。より好ましくは60質量%〜80質量%である。
次に、以上のようにして作製されたスラリーを湿式粉砕する。例えば、ボールミルや振動ミルを用いて所定時間湿式粉砕する。粉砕後の原材料の平均粒径は5μm以下が好ましく、より好ましくは1μm以下である。振動ミルやボールミルには、所定粒径のメディアを内在させるのがよい。メディアの材質としては、鉄系のクロム鋼や酸化物系のジルコニア、チタニア、アルミナなどが挙げられる。粉砕工程の形態としては連続式及び回分式のいずれであってもよい。粉砕物の粒径は、粉砕時間や回転速度、使用するメディアの材質・粒径などによって調整される。
そして、粉砕されたスラリーを噴霧乾燥させて造粒する。具体的には、スプレードライヤーなどの噴霧乾燥機にスラリーを導入し、雰囲気中へ噴霧することによって球形状に造粒する。噴霧乾燥時の雰囲気温度は100℃〜300℃の範囲が好ましい。これにより、球形状の造粒物が得られる。前記式(1)から算出される造粒物の円形度としては0.75以上であるのが好ましい。円形度が0.75未満であると、造粒物の流動性が悪く、圧縮成型時に型へ充填が隅々まで行われず、成型体に欠けが発生するなど、十分な形状が得られないおそれがある。次いで、得られた造粒物を振動ふるいを用いて分級し所定の粒径範囲の造粒物を作製する。造粒物の平均粒径は25μm〜400μmの範囲が好ましい。平均粒径が25μm未満であると、造粒物の流動性が悪く、圧縮成型時に型へ充填が隅々まで行われず、成型体に欠けが発生するなど、十分な形状が得られないおそれがある。平均粒径が400μmを超える場合は、型へ充填時に十分な密度がえられず、成型体として十分な強度が得られないおそれがある。
次に、得られた造粒物を所定の型に投入し圧縮成型して本発明の成型発熱体とする。成型圧力としては、前記の空隙率及び圧壊強度を満足する成型発熱体が得られる範囲において特に限定はないが、通常、200kg/cm〜500kg/cmの範囲が好適である。成型発熱体の形状に特に限定はなく、円柱形状や円板形状、円筒形状など実際の使用形態を考慮し適宜決定すればよい。
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが本発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
出発原料として、平均粒径11μmのフェロシリコン(Fe28%)を9kg(30重量部)、平均粒径2μmのFeOを18kg(60重量部)、平均粒径15μmのマグネタイト粉末(Fe3−X,X:0.33)を3kg(10重量部)混合し、純水10kg中に分散し、分散剤としてポリエーテル系分散剤を450g添加して混合物とした。この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理してスラリーを得た。
このスラリーをスプレードライヤーにて約160℃の熱風中に噴霧し、粒径10μm〜100μmの造粒物を得た。この造粒物から、粒径100μmを超える粗粒は篩網を用いて除去した。得られた造粒物の平均粒径及び円形度を後述の方法で測定した。
次いで、この造粒物15gを直径2cmの円柱状凹部が形成された金型に入れ、圧力300kg/cmで圧縮成型し、厚さ1.5cmの円柱形状の発熱体を得た。目視観察において、得られた発熱体に割れ、欠け、形状の崩れは確認されず、形状保持性は良好であった。発熱体の密度、空隙率、圧壊強度、燃焼後の割れの有無を下記方法で測定及び観察した。結果を表1にまとめて示す。また図1に、発熱体の断面SEM写真を示す。
(実施例2)
平均粒径が27.1μmの造粒物を用いた以外は実施例1と同様にして発熱体を作製した。そして作製した発熱体の形状保持性、密度、空隙率、圧壊強度、燃焼後の割れの有無を実施例1と同様にして測定及び観察した。結果を表1にまとめて示す。
(実施例3)
平均粒径が304.1μmの造粒物を用いた以外は実施例1と同様にして発熱体を作製した。そして作製した発熱体の形状保持性、密度、空隙率、圧壊強度、燃焼後の割れの有無を実施例1と同様にして測定及び観察した。結果を表1にまとめて示す。
(実施例4)
成型体作製時の成型圧力を500kg/cmと得た以外は、実施例1と同様にして発熱体を作製した。そして作製した発熱体の形状保持性、密度、空隙率、圧壊強度、燃焼後の割れの有無を実施例1と同様にして測定及び観察した。結果を表1にまとめて示す。
(比較例1)
出発原料として、平均粒径11μmのフェロシリコン(Fe28%)を9kg(30重量部)、平均粒径2μmのFeOを18kg(60重量部)、平均粒径15μmのマグネタイト粉末(Fe3−X,X:0.33)を3kg(10重量部)ヘンシェルミキサーを用いて混合し、実施例1と同様の条件で圧縮成型して発熱体を作製した。作製した発熱体の形状保持性、密度、空隙率、圧壊強度、燃焼後の割れの有無を実施例1と同様にして測定及び観察した。結果を表1にまとめて示す。また図2に、発熱体の断面SEM写真を示す。
(比較例2)
成型体作製時の成型圧力を100kg/cmとした以外は、比較例1と同様にして造粒物、成型体を作製し、特性評価を行った。評価結果を表1に合わせて示す。
(造粒物の体積平均径の測定)
造粒物の体積平均径(D50)をSYMPATEC社製の「HELOS」を用いて測定した。
(造粒物の円形度測定)
走査型電子顕微鏡(日本電子製「JSM−6510LA」)を用いて、加速電圧は5kV、スポットサイズは45,倍率は30倍〜150倍(粒径に対応して変化)として、粒子が重ならないように造粒物を分散させて撮影した。そして、その画像情報を、インターフェースを介してメディアサイバネティクス社製「画像解析ソフト(Image−Pro PLUS)」に導入して解析を行い、A(造粒物の投影面積)及びL(造粒物の周囲長)を求め、下記式(1)から造粒物の円形度を算出した。なお、円形度は、100個の造粒物の平均値をその造粒物の円形度とした。
円形度=4π×(A/L)・・・・・・(1)
(式中、L:造粒物の周囲長,A:造粒物の投影面積)
(発熱体の密度)
発熱体の重量及び体積から密度を算出した。
(発熱体の空隙率)
発熱体の密度と、Quantachrome社製のウルトラピクノメータ1000型を用いて測定した造粒物の真密度とから発熱体中の固形分体積を算出し、発熱体の体積から固形分体積より差し引いて空隙体積を求め、発熱体の空隙率を求めた。
(発熱体の圧壊強度)
造粒物15gを直径20mmの金型に入れ、300kg/cmで圧縮成型した発熱体に軸方向から力を加えて圧壊強度を測定した。
(燃焼試験)
発熱体を断熱材の上に載せ、発熱体のほぼ中央部に、鉄粉、フェロシリコン、酸化銅、過酸化バリウムの混合粉末0.2〜0.3gを着火剤としておき、マッチで着火剤に点火した。そして、発熱状態、発熱体が燃焼した後の発熱体に割れなどがあるかどうかを目視にて観察した。
表1から明らかなように、空隙率及び圧壊強度が本願発明の規定範囲を満足している実施例1〜4の発熱体では、圧縮成型時の割れ・欠け・崩れは見られなかった。また、発熱状態は良好で、発熱体の膨張や燃焼後の割れも見られなかった。
これに対して、出発原料を造粒せずに圧縮成型して作製した比較例1の発熱体では空隙率が31.1体積%と低く、密度は2.96g/cmと高かった。このため、発熱体の燃焼試験では、燃焼によって生じた気体が発熱体の外部に円滑に抜け出ることができず、発熱体の膨張及び燃焼後に割れが確認された。
また、比較例1と比較し小さい成型圧力で作製した比較例2の発熱体では、空隙率が54.5体積%であったが、圧縮強度が73kg/cmと低い値を示し、発熱体に欠けが確認された。
本発明の発熱体は、圧縮成型された発熱体であるが燃焼による膨張や割れが生じず有用である。

Claims (2)

  1. 金属粉末と金属酸化物粉末と、ポリエーテル及び/又はポリカルボン酸アンモニウムとを含有し、圧縮成型された発熱体であって、
    空隙率が35体積%以上60体積%以下であり、
    圧壊強度が100kg/cm以上である
    ことを特徴とする成型発熱体。
  2. 密度が1.90g/cm以上2.70g/cm以下の範囲である請求項1記載の成型発熱体。
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