JP2024010444A - 焼結用窒化ケイ素粉末 - Google Patents

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Abstract

【課題】高強度及び高靭性の焼結体が得られるβ型の窒化ケイ素粉末を提供する。【解決手段】 β化率が80%以上の窒化ケイ素粉末よりなり、その粒度分布を示す体積頻度分布曲線を波形分離したとき、0.5μm以上1μm以下の間にピークを有する分離波形a、1μm超3μm以下の間にピークを有する分離波形bが存在し、前記分離波形a及び分離波形bの合計面積は、全分離波形の合計面積に対して60~98%であり、前記分離波形bの面積に対する前記分離波形aの面積の比(Sa/Sb)が0.4~0.8であることを特徴とする、焼結用窒化ケイ素粉末。【選択図】なし

Description

本発明は、焼結用窒化ケイ素粉末に関する。
窒化ケイ素粉末は、その焼結体が、高熱伝導性、高絶縁性、高強度等の優れた特性を有するため、各種工業材料のセラミックス原料として注目されている。
窒化ケイ素粉末の製造方法としては、例えば、シリカ粉末を原料として、炭素粉末存在下において、窒素ガスを流通させて窒化ケイ素を生成させる還元窒化法、シリコン粉末と窒素とを高温で反応させる直接窒化法、ハロゲン化ケイ素とアンモニアとを反応させるイミド分解法等が知られている。
また、直接窒化法の一つとして、燃焼合成法により窒化ケイ素粉末を合成する方法も知られている。燃焼合成法は、シリコン粉末を窒素雰囲気下で燃焼させる方法であり、一般には、シリコン粉末と燃焼を制御するための希釈剤(窒化ケイ素粉末)との混合物に着火し、燃焼させて窒化ケイ素の塊状物を得た後、これを粉砕して窒化ケイ素粉末を得る方法である。
窒化ケイ素粉末の結晶形態としては、α型とβ型とが存在することが知られているが、燃焼合成法で得られる窒化ケイ素粉末は主としてβ型であり、一般に製造されているα型とは焼結性が異なることが知られている。すなわち、α型は焼結の際にβ型へと転移するため、粒成長し易く、焼結性が良好であり、一方で、β型は転移しないため、粒成長し難く、焼結性が悪いことが知られている。
β型の窒化ケイ素粉末は、比較的製造コストを低くできるという利点があるため、β型の窒化ケイ素粉末において、焼結性を改善する検討がなされている。
特許文献1では、β化率が80%以上の窒化ケイ素粉末であって、レーザー回折散乱法により測定して、平均粒径D50が0.5~1.2μm、0.5μm以下の粒子の占める割合が20~50質量%であり且つ1μm以上の粒子の占める割合が20~50質量%である、焼結用窒化ケイ素粉末に関する発明が記載されている。そして、このような割合で、微細な粒子(粒径0.5μm以下の粒子)と、大きな粒子(粒径1μm以上の粒子)を含むことで、焼結に際して、微細な粒子が大きな粒子の周囲の液相に溶解して析出するというオストワルド成長(Ostwald ripening)という現象が生じて、緻密な焼結体が得られることが記載されている。
特許文献2では、β相含有率が50%以上で平均粒径Daが5μm以下である窒化ケイ素粉末Aとβ相含有率が50%以上で平均粒径Dbが1~25μmである窒化ケイ素粉末Bとの混合粉末からなり、A/Bの重量比が1~1000でDb/Daが2~50であることを特徴とする窒化ケイ素粉末に関する発明が開示されている。そして、該窒化ケイ素粉末によれば、焼結性に優れ、高強度、高靭性かつ高信頼性のある窒化珪素焼結体が得られることが記載されている。
国際公開第2019/167879号 特開平6-64906号公報
上記した特許文献1に記載の窒化ケイ素粉末は、オストワルド成長をするのに適した粒度分布となっており、小さい粒径の窒化ケイ素粒子の割合が比較的多い。
また、特許文献2に記載の窒化ケイ素粉末は、明細書の記載及び比較例を参照すると、平均粒径の大きい方の窒化ケイ素粉末Bの方を多く使用すると、焼結体の強度が低下することが記載されている。そのため、平均粒径の小さい方の窒化ケイ素粉末Aを相対的に多くする必要がある。
従来のβ型の窒化ケイ素粉末は、粒径の小さい窒化ケイ素粒子の割合が比較的多い設計となっている。そして、本発明者らの検討によると、従来のβ型の窒化ケイ素粉末は、より高度な強度及び靭性の物性バランスを備える焼結体を得る観点から、改善の余地があることが分かった。
そこで本発明の目的は、高強度及び高靭性の焼結体が得られるβ型の窒化ケイ素粉末を提供することである。
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた。その結果、β化率が80%以上の窒化ケイ素粉末であって、その粒度分布を示す体積頻度分布曲線を波形分離したときに、特定の粒径範囲にピークを有する分離波形a及び分離波形bが存在し、これら分離波形a及び分離波形bの合計面積及び面積比が一定範囲である窒化ケイ素粉末により、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。
本発明の要旨は、以下の[1]~[4]である。
[1]β化率が80%以上の窒化ケイ素粉末よりなり、その粒度分布を示す体積頻度分布曲線を波形分離したとき、0.5μm以上1μm以下の間にピークを有する分離波形a、1μm超3μm以下の間にピークを有する分離波形bが存在し、前記分離波形a及び分離波形bの合計面積は、全分離波形の合計面積に対して60~98%であり、前記分離波形bの面積に対する前記分離波形aの面積の比(Sa/Sb)が0.4~0.8であることを特徴とする、焼結用窒化ケイ素粉末。
[2]走査型電子顕微鏡で観察される粒径1~5μmの範囲の粒子において、アスペクト比(L/D)が1.1~1.8の単粒子の割合が20体積%以上である、上記[1]に記載の焼結用窒化ケイ素粉末。
[3]平均粒子径(D50)が0.5~2μmである、上記[1]又は[2]に記載の焼結用窒化ケイ素粉末。
[4]残部の分離波形が、0.1~0.3μmの間にピークを有する分離波形cである、上記[1]~[3]のいずれかに記載の焼結用窒化ケイ素粉末。
本発明によれば、高強度及び高靭性の焼結体が得られるβ型の焼結用窒化ケイ素粉末を提供することができる。
本発明の焼結用窒化ケイ素粉末の粒度分布を示す体積頻度分布曲線の一例を示す図である。 図1の体積頻度分布曲線の横軸を粒径から粒径の常用対数に変換した図である。 図2の体積頻度分布曲線を複数の分離波形に分離した図である。 図3の体積頻度分布曲線の横軸を粒径の常用対数から粒径に変換した図である。 本発明の焼結用窒化ケイ素粉末のSEM写真である。
[焼結用窒化ケイ素粉末]
本発明の焼結用窒化ケイ素粉末は、β化率が80%以上の窒化ケイ素粉末よりなり、その粒度分布を示す体積頻度分布曲線を波形分離したとき、0.5μm以上1μm以下の間にピークを有する分離波形a、1μm超3μm以下の間にピークを有する分離波形bが存在し、前記分離波形a及び分離波形bの合計面積は、全分離波形の合計面積に対して60~98%であり、前記分離波形bの面積に対する前記分離波形aの面積の比(Sa/Sb)が0.4~0.8であることを特徴とする。
<粒度分布>
本発明の焼結用窒化ケイ素粉末は、その粒度分布を示す体積頻度分布曲線を波形分離したとき、0.5μm以上1μm以下の間にピークを有する分離波形a、1μm超3μm以下の間にピークを有する分離波形bが存在する。
焼結用窒化ケイ素粉末の粒度分布を示す体積頻度分布曲線を波形分離する方法を説明する。
最初に、レーザー回折粒度分布測定装置により焼結用窒化ケイ素粉末を測定し、図1に示すように、横軸を粒径(μm)、縦軸を体積頻度とする体積頻度分布曲線を得る。なお、図1は一例として、後述する実施例1で製造した焼結用窒化ケイ素粉末の粒度分布を表す体積頻度分布曲線を示している。
次に得られた体積頻度分布曲線の横軸を「粒径」から、「粒径の常用対数」に変換する(図2)。そして、横軸を常用対数に変換した体積頻度分布曲線を、複数のガウス関数の合成であるとして波形分離する。
図3には、図2の体積頻度分布曲線を波形分離した後の複数のガウス関数である、分離波形a、分離波形b及び分離波形cを示す。すなわち、図2の体積頻度分布曲線を波形分離すると、3つの分離波形となる。なお、これは一例であり、後述する最適化により、図1及び図2の体積頻度分布曲線の形状に応じて、2つの分離波形となる場合もあるし、4つ以上の分離波形となる場合もある。
図3に示す分離波形a、分離波形b及び分離波形cを重畳すると、図2に示す体積頻度分布曲線となる。
波形分離は、以下の式で表される近似曲線と、実測した体積頻度分布曲線との残差二乗和が最小になるように、ガウス関数の個数(分離波形の個数)及び各ガウス関数のパラメータ(Ai、Bi、Ci)を最適化して行う。

上記式において、Dは粒径の常用対数、Aはピーク高さ、Bはピーク位置、Cはピーク半値幅/2.35、iは分離波形の種類(個数)を表し、i=1,2,3,・・・である。
例えば、図3の場合はi=1,2,3となる。
図3の横軸を「粒径の常用対数」から、「粒径」に戻すと、図4に示す体積頻度分布曲線となる。図4によると、ピーク位置0.53μmの分離波形a、ピーク位置1.9μmの分離波形b、ピーク位置0.23の分離波形cが確認されている。なお、上記した図1~図4は本発明の一例を説明する図であり、本発明は図面に限定されるものではない。
本発明の焼結用窒化ケイ素粉末は、その粒度分布を示す体積頻度分布曲線を波形分離したとき、0.5μm以上1μm以下の粒径範囲にピークを有する分離波形a、1μm超3μm以下の粒径範囲にピークを有する分離波形bが存在する。
分離波形a及び分離波形bの両方が、後述するように特定範囲の合計面積、かつ特定範囲の面積比で存在することにより、強度及び靭性の両方に優れる焼結体が得られる焼結用窒化ケイ素粉末となる。
この理由は定かではないが、β型の窒化ケイ素粉末は、焼結の際に粒成長が進み難いため、焼結前の原料粉末の粒度分布が焼結体の物性に影響しやすくなることから、焼結用窒化ケイ素粉末において、分離波形aの存在が焼結体の強度、分離波形bの存在が焼結体の靭性に関係し、これらが特定の面積で存在することにより、強度及び靭性の両方に優れる焼結体が得られると考えられる。
上記のとおり、分離波形bは1μm超3μm以下の粒径範囲にピークを有するが、該分離波形bを有さずに、3μm超の粒径範囲にピークを有する分離波形を有する窒化ケイ素粉末の場合は、焼結体の強度及び靭性が低下する傾向があり、さらに焼結体にボイドも多く発生しやすくなる。
また、上記のとおり分離波形aは0.5μm以上1μm以下の粒径範囲にピークを有するが、該分離波形aを有さずに、0.5μm未満の粒径範囲にピークを有する分離波形を有する窒化ケイ素粉末の場合は、焼結体の靭性が低下する傾向がある。
分離波形bの面積に対する分離波形aの面積比(Sa/Sb)は、0.4~0.8である。このような面積比(Sa/Sb)を有する窒化ケイ素粉末により、強度及び靭性の両方に優れる焼結体を得やすくなる。面積比(Sa/Sb)が0.4未満であると、焼結体の強度が低下しやすくなり、面積比(Sa/Sb)が0.8超であると、焼結体の靭性が低下しやすくなる。
面積比(Sa/Sb)は、好ましくは0.4~0.7であり、より好ましくは0.4~0.6である。
分離波形a及び分離波形bの合計面積は、全分離波形の合計面積に対して60~98%である。分離波形a及び分離波形bの合計面積が、全分離波形の合計面積に対して、60%未満であると強度及び靭性に優れた焼結体を得ることが難しくなる。一方、分離波形a及び分離波形bの合計面積が、全分離波形の合計面積に対して、98%超であると、後述する分離波形cの面積が小さくなるため、焼結体のボイドを低減して、絶縁性に優れる焼結体を得難くなる。
分離波形a及び分離波形bの合計面積は、全分離波形の合計面積に対して、好ましくは70~98%であり、より好ましくは80~98%であり、さらに好ましくは90~96%である。
本発明の焼結用窒化ケイ素粉末は、体積頻度分布曲線を波形分離したときに、分離波形a及び分離波形b以外に、残部の分離波形を有するが、残部の分離波形は、0.1~0.3μmの粒径範囲にピークを有する分離波形cであることが好ましい。
窒化ケイ素粉末が分離波形cを有することにより、得られる焼結体のボイドが少なくなり、絶縁性に優れる焼結体を得やすくなる。
焼結体の絶縁性向上の観点から、分離波形cの面積は、全分離波形の合計面積に対して、好ましくは1~30%であり、より好ましくは1~20%であり、さらに好ましくは2~10%である。
本発明の焼結用窒化ケイ素粉末における分離波形a、分離波形b、及び分離波形cのそれぞれの分離波形におけるピーク半値幅は、特に限定されないが、横軸を粒径(μm)の常用対数にした体積頻度分曲線において、好ましくは、0.1~1.5であり、より好ましくは0.2~1.0である。各分離波形がこのような範囲のピーク半値幅であることにより、強度及び靭性の高い焼結体を得やすくなる。
また、本発明の焼結用窒化ケイ素粉末は、分離波形a及び分離波形bを有すると共に、3μm超にピークを有する分離波形dをさらに有してもよいが、焼結体の強度を高める観点から、3μm超にピークを有する分離波形dの面積は、全分離波形の合計面積に対して10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、0%であることがさらに好ましい。
本発明の焼結用窒化ケイ素粉末の平均粒子径(D50)は、特に制限されるものではないが、強度及び靭性の高い焼結体を得る観点から、好ましくは0.5~2μmであり、より好ましくは0.8~1.5μmである。
なお、本明細書において、平均粒子径はレーザー回折粒度分布装置において測定される粒子の累積体積が50%となる粒径(D50)を意味する。
<アスペクト比(L/D)>
本発明の焼結用窒化ケイ素粉末は、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察される粒径1~5μmの範囲の粒子において、アスペクト比(L/D)が1.1~1.8の単粒子の割合が20体積%以上であることが好ましく、30体積%以上であることがより好ましく、40体積%以上であることがさらに好ましく、そして90%以下であることが好ましい。アスペクト比(L/D)が1.1~1.8の単粒子の割合がこのような範囲であると、焼結体の靭性が向上しやすくなる。
アスペクト比(L/D)が1.1~1.8の単粒子の割合は、次のようにして求める。
まず、焼結用窒化ケイ素粉末を倍率2000倍の条件でSEM観察をする。そして、得られた画像から、粒径1~5μmの範囲の粒子を特定する。ここで、粒径1~5μmの範囲の粒子とは、円相当径が1~5μmの粒子を意味する。なお円相当径とは、画像から確認される粒子の面積から算出される、該粒子と同等の面積を有する円の直径を意味する。
次に、粒径1~5μmの範囲の粒子の中から、アスペクト比(L/D)が1.1~1.8の単粒子を特定する。単粒子は、凝集していない粒子のことであり、SEMの画像により容易に判断することができる。
なお、上記した粒径1~5μmの粒子は、少なくとも1000個以上を測定対象とすることとする。
アスペクト比(L/D)は、短径(D)に対する長径(L)の比(L/D)であり、長径(L)は単粒子の外周上の任意の2点間の最大距離と定義する。短径(D)は、長径(L)と垂直に交わる線分であって、長径(L)の中点と単粒子の外周上の2点とを通る線分と定義する。
そして、以下の式1に基づいて、アスペクト比(L/D)が1.1~1.8の単粒子の割合を求める。
(式1) [アスペクト比(L/D)が1.1~1.8の単粒子の総体積/粒径1~5μmの範囲の粒子の総体積]×100
なお、式1における総体積は、円相当径に基づいて算出される総体積である。
上記した所定の分離波形、平均粒子径、アスペクト比を有する焼結用窒化ケイ素粉末を得る方法は、特に限定されないが、例えば後述するように、製造時において、特定の粉砕方法を採用する方法などが挙げられる。あるいは、特定の粒度分布を有する窒化ケイ素粉末を複数準備して、所定の分離波形が得られるように、該複数の窒化ケイ素粉末を混合する方法などが挙げられる。
<β化率>
本発明の焼結用窒化ケイ素粉末は、β化率が80%以上の窒化ケイ素粉末よりなる。β化率が80%以上の窒化ケイ素粉末は、厳密な製造条件を設定しなくても得ることができるため、比較的低コストで製造することができる。したがって、β化率の高い窒化ケイ素粉末を使用することで、窒化ケイ素焼結体の全体の製造コストを抑制することができる。窒化ケイ素粉末のβ化率は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上である。
なお、窒化ケイ素粉末のβ化率とは、窒化ケイ素粉末におけるα相とβ相の合計に対するβ相のピーク強度割合[100×(β相のピーク強度)/(α相のピーク強度+β相のピーク強度)]を意味し、CuKα線を用いた粉末X線回折(XRD)測定により求められる。より詳細には、C.P.Gazzara and D.R.Messier:Ceram.Bull.,56(1977),777-780に記載された方法により、窒化ケイ素粉末のα相とβ相の重量割合を算出することで求められる。
[焼結用窒化ケイ素粉末の製造方法]
本発明の焼結用窒化ケイ素粉末の製造方法は、特に制限されず、還元窒化法、燃焼合成法などの直接窒化法、イミド分解法など種々の製法を適用できるが、β化率の高い窒化ケイ素粉末を得やすいため、燃焼合成法が好ましい。
燃焼合成法は、シリコン粉末を含む原料粉末に着火して、シリコン粉末の窒化反応により生じる窒化燃焼熱を前記原料粉末全般に伝播させることにより、窒化ケイ素粉末を製造する方法である。
(原料粉末)
原料粉末に含まれるシリコン粉末の平均粒子径(D50)は、特に限定されないが、本発明の特定の粒度分布を有する焼結用窒化ケイ素粉末を得やすくする観点から、好ましくは1~30μmであり、より好ましくは1~20μmである。シリコン粉末は、高純度のものが好ましく、Al、Fe含量が、それぞれ200ppm以下であることが好ましい。シリコン粉末は、例えば、半導体多結晶シリコンロッドを破砕してナゲットを製造する過程で生じる微粉を回収して使用することができる。
原料粉末は、希釈剤として窒化ケイ素粉末を含むことが好ましい。シリコン粉末と窒素との反応は発熱反応であり、シリコン粉末の量が多くなればなるほど、温度をコントロールすることが難しくなる。しかし、原料粉末が、希釈剤を含むことにより、原料粉末におけるシリコン粉末の含有量が低減され、原料粉末の発熱も低減される。そして、原料粉末の温度のコントロールが容易になる。
希釈剤として用いる窒化ケイ素粉末の平均粒子径(D50)は、本発明の特定の粒度分布を有する焼結用窒化ケイ素粉末を得やすくする観点から、好ましくは0.5~30μmであり、より好ましくは0.5~20μmである。
希釈剤の含有量は、本発明の特定の粒度分布を有する焼結用窒化ケイ素粉末を得やすくする観点から、原料粉末全量基準に対して、好ましくは5~50質量%、より好ましくは10~30質量%である。
本発明の効果を阻害しない範囲で、原料粉末には、シリコン粉末及び必要に応じて用いられる希釈剤以外のその他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、例えば塩化ナトリウム、塩化アンモニウム等の塩化物、酸化カルシウム、酸化イットリウム、酸化マグネシウム等の酸化物などが挙げられる。その他の成分は、原料粉末全量基準で好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0質量%である。
(着火及び燃焼合成法の条件)
上記した原料粉末を、反応容器(セッター)に充填して原料粉末層を形成させ、該原料粉末層を着火して反応させるとよい。反応容器は、セラミックス製、黒鉛製などの耐熱性の反応容器であることが好ましい。
また、燃焼合成法に際し、着火点となる部分には、Ti、Al等の粉末を含有した着火剤を添加しておくこともできる。勿論、このような着火剤の量は、得られる窒化ケイ素粉末の焼結性に影響を与えない程度の少量とすべきである。着火剤を配置する場合には、原料粉末層の端部でも、中央部でも、あるいは任意の位置に、単数または複数の部位に配置することができる。
上記のように、原料粉末を反応容器に充填した後、反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で原料粉末に着火する。
上記反応容器は、着火装置とガスの給排機構を有する耐圧性の密閉式反応器内に設置され、反応器内を減圧して空気を除去した後、窒素ガスを供給して窒素置換するのが一般的である。なお、反応は常圧下で行っても、加圧下で行ってもよいが、加圧下で行うことが好ましい。
着火は、従来公知の方法で行うことができ、例えば、密閉式反応器に取り付けた一対の電極を用いてのアーク放電による着火、カーボン製または金属製のヒーターに通電加熱することによる着火、レーザー照射による着火などを採用することができる。
(粉砕)
上記のようにして燃焼合成反応を実施することにより、窒化ケイ素からなる塊状生成物が得られる。この塊状生成物は、後述する機械的粉砕により、適切な粒度分布を有する窒化ケイ素粉末とすることができる。
塊状生成物を機械的粉砕する粉砕機としては、ロールクラッシャー、カッターミル、スタンプミル、乳鉢、擂潰機、ピンミル、コロイドミル、ボールミル、高圧分散装置、石臼式摩砕機などが挙げられる。
これらの中でも、上記した特定の粒度分布を備える本発明の窒化ケイ素粉末を得るためには、石臼式摩砕機とボールミルとを組み合わせて使用することが好ましい。尚、ボールミルは、振動ボールミルが好適に使用される。すなわち、前記粒度分布を有する窒化ケイ素粉末を得るためには、一つの粉砕機、例えばボールミルを使用して得ることも可能であるが、燃焼合成法は前記製造方法において、希釈剤の量が変化すると急激な温度上昇によって局部的に生じる融着粒子の生成量や大きさも変化するため、一つの粉砕機により前記分布を得るための粉砕条件を設定し、安定して製造することは困難である。そのため、燃焼合成によって得られた塊状物を石臼式摩砕機により粉砕して分離波形bに相当する粉末とした後、その一部をさらにボールミルにより粉砕し、分離波形a、更に必要に応じて分離波形cに相当する粉末をそれぞれ製造したのち、これらを適切な割合で混合することにより、本発明の窒化ケイ素粉末を製造することが好ましい。
尚、前記窒化ケイ素の塊状物は、石臼式摩砕機に供給する前に、粉砕に好適な大きさとなるように解砕しておくことが好ましい。
本発明の窒化ケイ素粉末を製造する方法において使用する石臼式摩砕機は、一般に、燃焼合成によって生成した融着粒子よりなる粗粒を効率的に粉砕可能であり、本発明の分離波形bに相当する粉末を、微粉の生成を抑制しながら得ることを可能とする。
石臼式摩砕機は、間隔を自由に調整できる上下2枚の砥石によって構成されており、上部砥石を固定し、高速で回転する下部砥石との間に原料を送り込み、両砥石間で生ずる強力な圧縮・せん断・転がり摩擦等の複合作用により原料を粉砕する装置である。
本発明の複数の分離波形を有する特定の粒度分布を備える窒化ケイ素粉末を得る観点から、石臼式摩砕機を用いた粉砕において、上下砥石の間隙を適切に調整することが好ましい。上下砥石の間隙を適切に調整した上で、適宜、砥石の回転数及び粉砕時間を調整するとよい。
具体的には、上下砥石の間隙は、好ましくは2~7μmであり、より好ましくは3~5μmである。
このように、上下砥石の間隙を調整した上で、砥石の回転数及び粉砕時間を適宜調整して、前記分離波形bに相当する窒化ケイ素粉末を製造することができる。
石臼式摩砕機の粉砕を担う砥石は、セラミックス製、有機無機複合樹脂製、金属製等があるが、電子材料用途のような不純物金属の混入を嫌う用途においては、セラミックス製や有機無機複合樹脂製の砥石が好ましく採用される。砥石の材質としては、SiC、Al、Si、ZrO等がある。本発明においては、窒化ケイ素粉末の粉砕に利用するため、共材であるSi系の砥石が好適に採用される。
市販されている石臼式摩砕機を例示すると、例えば、マスコロイダーやセレンディピター(商品名:増幸産業製)、グローミル(商品名:グローエンジニアリング製)、ミクロパウダー(商品名:槇野産業製)、石臼式摩砕機(ヤマト機販株式会社)等を挙げることができる。
また、前記石臼式摩砕機により得られた分離波形bに相当する窒化ケイ素粉末の一部は、ボールミル、好ましくは振動ボールミルにより粉砕して前記分離波形aに相当する窒化ケイ素粉末とすることができ、必要に応じて更にその一部を粉砕して分離波形cに相当する窒化ケイ素粉末とすることができる。
上記ボールミルの構造、ボールの材質、大きさ等、また、振動ミルを使用する場合の振動数などは、特に制限されず、目的とする粉砕が行えるものを適宜選択すればよい。特に、ボールの材質としては、共材であるSi系のものが好ましい。
このようにして得られた粒度分布が調整されたそれぞれの窒化ケイ素粉末を前記分離波形の割合を満足する量で混合することにより、本発明の窒化ケイ素粉末が得られる。
これらの粉末の混合は、公知の乾式粉のブレンダーを使用して行うことができ、かかる混合により、本発明の特定の分布を有する窒化ケイ素粉末を得ることができる。
上述の機械的粉砕は、液体媒体を用いない乾式粉砕であってもよいし、液体媒体を用いる湿式粉砕であってもよい。乾式粉砕による粉砕の場合は、一般的に生産性が高くなる。湿式粉砕による粉砕の場合は、粉砕時の粉立ちが低減される。
粉砕の際には、液体媒体として水又はアルコールなどの粉砕助剤を使用することが好ましく、粉砕に供する試料の粉砕助剤の含有量は、好ましくは0.5~5質量%、より好ましくは0.5~2質量%である。
[窒化ケイ素焼結体の製造方法]
上記のようにして得られた本発明の焼結用窒化ケイ素粉末を用いて、公知の方法により、窒化ケイ素焼結体を製造することができる。
例えば、焼結用窒化ケイ素粉末に、イットリア、マグネシア、ジルコニア、アルミナ等の焼結助剤を混合し、プレス成形により、嵩密度が1.7g/cm以上、好ましくは1.85g/cm以上、より好ましくは1.95g/cm以上の成形体を作製し、次いで、焼成を行うことにより、窒化ケイ素焼結体を得ることができる。
上記のプレス成形は、一軸プレス成形が代表的であるが、一軸プレス成形した後にCIP(Cold Isostatic Pressing、冷間静水圧加圧)成形を行う方法が好適に採用される。
また、焼成は、窒素雰囲気中、1700~2000℃で行われる。焼結体の密度は、焼成温度と焼成時間の両方に依存する。例えば1700℃で焼成する場合、焼成時間は3~20時間程度である。焼成時間及び焼成時間は、目的とする焼結体の大きさ、形状等に応じて適宜設定すればよい。例えば、1850℃以上の温度で窒化ケイ素を焼成する場合、焼成時間が長すぎると窒化ケイ素自体の分解によって焼結体の密度が低下する場合がある。この場合には、窒素で加圧された雰囲気下で焼結することにより、窒化ケイ素焼結体の分解を抑制できる。この窒素圧が高いほど窒化ケイ素の分解を抑制することができるが、装置の耐圧性能等による経済的な理由で1MPa未満の圧力が好適に採用される。相対密度が99%以上の高密度の焼結体を得るために、1800℃以上の加圧窒素雰囲気下で焼成を行うことが好適である。
本発明の焼結用窒化ケイ素粉末は、上記したとおり、その粒度分布を示す体積頻度分布曲線を波形分離したとき特定の分離波形を特定の比率で有するため、その焼結体である窒化ケイ素焼結体は、強度及び靭性が共に高く、優れた物性バランスを有する。
以下、本発明をさらに具体的に説明するため実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[測定方法]
実施例および比較例における各種物性は、下記の方法により測定した。
(1)窒化ケイ素粉末のβ化率
窒化ケイ素粉末のβ化率は、CuKα線を用いた粉末X線回折(XRD)測定により求めた。具体的には、C.P.Gazzara and D.R.Messier:Ceram.Bull.,56(1977),777-780に記載された方法により、窒化ケイ素粉末のα相とβ相の重量割合を算出し、β化率を求めた。
(2)窒化ケイ素粉末の粒子径
(i)試料の前処理
試料の窒化ケイ素粉末の前処理として、窒化ケイ素粉末を空気中で約500℃の温度で2時間焼成処理を行った。粒子径測定において、窒化ケイ素粉末の表面酸素量が少ないか、粉砕時の粉砕助剤等によって粒子表面が疎水性物質で覆われ、粒子そのものが疎水性を呈している場合があり、このような場合、水への分散が不十分となって再現性のある粒子径測定が困難となることがある。そのため、試料の窒化ケイ素粉末を空気中で200℃~500℃程度の温度で数時間焼成処理することによって窒化ケイ素粉末に親水性を付与し、水溶媒に分散しやすくなって再現性の高い粒子径測定が可能となる。この際、空気中で焼成しても測定される粒子径にはほとんど影響がないことを確認している。
(ii)粒子径の測定
最大100mLの標線を持つビーカー(内径60mmφ、高さ70mm)に、45mLの水と濃度5質量%のピロリン酸ナトリウム5mLを入れてよく撹拌した後、耳かき一杯程度の試料の窒化ケイ素粉末を投入し、超音波ホモイナイザー((株)日本精機製作所製US-300E、チップ径26mm)によってAMPLITUDE(振幅)50%(約2アンペア)で2分間、窒化ケイ素粉末を分散させた。上記チップを、その先端がビーカーの20mLの標線の位置となるまで挿入して分散を行った。次いで、得られた窒化ケイ素粉末の分散液について、レーザー回折・散乱法粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル(株)製マイクロトラックMT3300EXII)を用いて測定し、横軸を粒径(μm)、縦軸を体積頻度とする体積頻度分布曲線を得た。
測定条件は、溶媒は水(屈折率1.33)を選択し、粒子特性は屈折率2.01、粒子透過性は透過、粒子形状は非球形を選択した。上記の粒子径分布測定で測定された体積基準の粒子径分布の累積曲線が50%になる粒子径をD50とした。
(3)体積頻度分布曲線の波形分離
上記(ii)粒子径の測定で得られた、横軸を粒径(μm)、縦軸を体積頻度とする体積頻度分布曲線の横軸を常用対数に変換した。次いで、横軸を常用対数に変換した体積頻度分布曲線を、複数のガウス関数の合成であるとして波形分離した。波形分離は、以下の式で表される近似曲線と、実測した体積頻度分布曲線との残差二乗和が最小になるように、ガウス関数の個数及び各ガウス関数のパラメータ(Ai、Bi、Ci)を最適化して行った。なお、横軸を常用対数に変換した体積頻度分布曲線は、横軸に等間隔で133点の測定点があり、個々の測定点に基づいて、上記した残差二乗和を求めて、最適化した。波形分離は、表計算ソフトウェア(マイクロソフト社製「MICROSOFT EXCEL(登録商標)」)のソルバーを用いて行った。

上記式において、Dは粒径の常用対数、Aはピーク高さ、Bはピーク位置、Cはピーク半値幅/2.35であり、i=1,2,3,・・・であり、分離波形の種類(個数)を表す。
(4)アスペクト比(L/D)が1.1~1.8の単粒子の割合
各実施例及び比較例で製造した焼結用窒化ケイ素粉末について、走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製「TM3030」)を用いて倍率2000倍のSEM写真(加速電圧15kV、二次電子検出)を撮影した。
得られたSEM画像から、粒径(円相当径)1~5μmの範囲の粒子を特定した。次に、粒径1~5μmの範囲の粒子の中から、アスペクト比(L/D)が1.1~1.8の単粒子を特定した。そして、以下の式(1)に基づいて、アスペクト比(L/D)が1.1~1.8の単粒子の割合(%)を求めた。
(式1) [アスペクト比(L/D)が1.1~1.8の単粒子の総体積/粒径1~5μmの範囲の粒子の総体積]×100
なお、式1における総体積は、円相当径に基づいて算出される総体積である。
(5)3点曲げ強度
各実施例及び比較例で製造した窒化ケイ素焼結体より3点曲げ強度測定用の試験片を切り出し、ISO 23242:2020に準じた方法で3点曲げ強度(MPa)を測定した。この際、支点間距離は15mmの試験治具を使用した。10個の試験片の3点曲げ強度の平均値を焼結体の3点曲げ強度とした。
3点曲げ強度は、実施例1の窒化ケイ素焼結体の3点曲げ強度を100とした場合の3点曲げ強度を求めて、以下の基準で評価した。
〇:90以上
△:70以上90未満
×:70未満
(6)破壊靭性値
窒化ケイ素焼結体の破壊靭性値(MPa・m1/2)は、JIS R1607:2015に準じた方法により、(株)アカシ製ビッカース硬さ試験機AVK-COにて測定されたビッカース硬さからIF法により算出した。
破壊靭性値は、実施例1の窒化ケイ素焼結体の破壊靭性値を100とした場合の破壊靭性値を求めて、以下の基準で評価した。
〇:90以上
△:70以上90未満
×:70未満
(7)ボイド率
窒化ケイ素焼結体の断面を走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製「TM3030」)により観察(倍率1000倍で10視野)し、断面全体の面積に対するボイドの面積の割合をボイド率(%)とし、以下の基準で評価した。ボイド率は、実施例1の窒化ケイ素焼結体のボイド率(%)を100とした場合の各実施例・比較例のボイド率を求めて、以下の基準で評価した。
〇:200以下
△:200超500以下
×:500超
<実施例1~2>
(焼結用窒化ケイ素粉末の製造)
シリコン粉末(半導体グレード、平均粒径5μm)と、希釈剤である窒化ケイ素粉末(平均粒径1.5μm)とを混合し、原料粉末(Si:80質量%、Si:20質量%)を得た。該原料粉末を反応容器に充填し、原料粉末層を形成させた。次いで、該反応容器を着火装置とガスの給排機構を有する耐圧性の密閉式反応器内に設置し、反応器内を減圧して脱気後、窒素ガスを供給して窒素置換した。その後、窒素ガスを除々に供給し、0.7MPaまで上昇せしめた。所定の圧力に達した時点(着火時)での原料粉末の嵩密度は0.5g/cmであった。その後、反応容器内の原料粉末の端部に着火し、燃焼合成反応を行い、窒化ケイ素よりなる塊状生成物を得た。
得られた塊状物を、解砕機により、塊状物同士をお互いに擦り合わせることで解砕した後、得られた窒化ケイ素の解砕物を石臼式摩砕機(スーパーマスコロイダー;増幸産業製、MKZA10-15J)を使用して粉砕処理(湿式粉砕)を実施した。上下の砥石の間隙は5μmで、砥石の回転数は1800rpmで粉砕処理を実施した。破砕面を構成する部材にはSi系の砥石を使用した。
なお、石臼式摩砕機による粉砕は湿式粉砕とした。すなわち、窒化ケイ素粉末に対して粉砕助剤としてエタノール5質量%を加えて粉体と水がよく馴染むように十分に混合した後、粉砕機に供給し、上記条件にて粉砕処理を行い、表1に示すピークを有する分離波形bに相当する混合用粉末bを得た。
前記石臼式摩砕機により得られた混合用粉末bの一部に粉砕助剤としてエタノール1質量%を加えて、Si系のボールを使用した振動ボールミル(中央化工機商事(株)製、ニューライト)により粉砕処理を行い、表1に示すピークを有する分離波形aに相当する混合用粉末aを得た。
また、上記混合用粉末aの一部に粉砕助剤としてエタノール1質量%を加えて、前記振動ボールミルにより粉砕して表1に示すピークを有する分離波形cに相当する混合用粉末cを得た。
このようにして得られた窒化ケイ素の混合用粉末a、b及びcを表1に示す配合割合で、ブレンダーにより混合して焼結用窒化ケイ素粉末を製造した。
以上のようにして得られた焼結用窒化ケイ素粉末の倍率500倍でのSEM写真を図5に示す。粒径の小さい窒化ケイ素粒子と、粒径の大きい窒化ケイ素粒子の両方が存在し、粗粒(粒径10μm以上)はほとんど確認されなかった。
また、レーザー回折散乱法により得られた体積頻度分布曲線(図1)を波形分離した結果、図4に示すように、ピーク位置0.53μmの分離波形a、ピーク位置1.9μmの分離波形b、ピーク位置0.23の分離波形cが確認された。
(焼結体の製造)
上記方法により得られた焼結用窒化ケイ素粉末100質量部に主焼結助剤としてイットリアを5質量部、副焼結助剤としてアルミナを2質量部添加して、遊星ボールミルで混合した後、一軸プレス成形とCIP成形を経て、大気圧の窒素雰囲気下、2700℃で5時間焼成して、窒化ケイ素焼結体を得た。
<実施例3>
石臼式摩砕機及び振動ボールミルにおける粉砕条件を変更した以外は、実施例1と同様にして表1に示す混合用粉末a、b、及びcを得て、表1に示す割合で、ブレンダーにより混合して焼結用窒化ケイ素粉末を得た。そして、得られた焼結用窒化ケイ素粉末を用いて、実施例1と同様の方法で窒化ケイ素焼結体を得た。
<比較例1~3>
実施例1において、混合用粉末a、b、cの配合割合を表1に示すとおりとした以外は、実施例1と同様にして焼結用窒化ケイ素用粉末を得た。そして、得られた焼結用窒化ケイ素粉末を用いて、実施例1と同様の方法で窒化ケイ素焼結体を得た。
<比較例4~6>
実施例1において、混合用粉末a、b、cを得る粉砕条件を変えて、表1に示すピーク位置を有する混合用粉末a、b、cを得た以外は、実施例1と同様にして焼結用窒化ケイ素用粉末を得た。そして、得られた焼結用窒化ケイ素粉末を用いて、実施例1と同様の方法で窒化ケイ素焼結体を得た。
比較例4で得られた焼結用窒化ケイ素粉末は、波形分離したときに分離波形aと分離波形cを有するが、分離波形bを有しない焼結用窒化ケイ素粉末である。
比較例5で得られた焼結用窒化ケイ素粉末は、波形分離したときに分離波形cを有するが、分離波形a及び分離波形bを有さない焼結用窒化ケイ素粉末である。
比較例6で得られた焼結用窒化ケイ素粉末は、分離波形bを有するが、分離波形a及び分離波形cを有しない焼結用窒化ケイ素粉末である。
比較例4~6は、波形分離したときに3種類の分離波形を有する窒化ケイ素粉末であるが、上記したとおり、分離波形a~cの少なくともいずれかを有していない。なお、表2には、比較例4~6について、他の実施例・比較例と比較し易いようにするために、確認された3種類の分離波形のデータについて、そのピーク位置の大きい順に、分離波形b、分離波形a、分離波形cの欄に記載した。
実施例1~3は、各分離波形a、b及びcを有し、分離波形a及び分離波形bの合計面積、及び、分離波形aとbの面積の比(Sa/Sb)が本発明の要件を満足する焼結用窒化ケイ素粉末であり、その焼結体は、強度(3点曲げ強度)及び靭性に優れており、かつボイド率が小さかった。
これに対して、比較例1~2の焼結用窒化ケイ素粉末は、分離波形a、b及びcを有するものの、全分離波形の合計面積に対する分離波形aとbの合計面積の割合又は分離波形aとbの面積比(Sa/Sb)が本発明の範囲外であるため、実施例と比較して、焼結体の強度及び靭性の物性バランスが劣っていた。比較例3の焼結用窒化ケイ素粉末は、分離波形a及びbを有するものの、全分離波形の合計面積に対する分離波形aとbの合計面積の割合及び分離波形aとbの面積比(Sa/Sb)が本発明の範囲外であるため、実施例と比較して、焼結体の強度及び靭性の物性バランスが劣っており、かつ分離波形cを有さないため、ボイド率も高かった。
比較例4~5の焼結用窒化ケイ素粉末は、3種類の分離波形を有していたが、本発明で定める分離波形a及びbの少なくとも一方を有しておらず、分離波形a及びbにおけるピーク位置から外れたピーク位置を有する別の分離波形が確認されており、実施例と比較して、焼結体の強度及び靭性の物性バランスが劣っていた。比較例6の焼結用窒化ケイ素粉末は、3種類の分離波形を有していたが、本発明で定める分離波形a及びcを有しておらず、実施例と比較して、焼結体の強度が低下しており、ボイド率も高かった。

Claims (4)

  1. β化率が80%以上の窒化ケイ素粉末よりなり、
    その粒度分布を示す体積頻度分布曲線を波形分離したとき、0.5μm以上1μm以下の間にピークを有する分離波形a、1μm超3μm以下の間にピークを有する分離波形bが存在し、
    前記分離波形a及び分離波形bの合計面積は、全分離波形の合計面積に対して60~98%であり、
    前記分離波形bの面積に対する前記分離波形aの面積の比(Sa/Sb)が0.4~0.8であることを特徴とする、焼結用窒化ケイ素粉末。
  2. 走査型電子顕微鏡で観察される粒径1~5μmの範囲の粒子において、アスペクト比(L/D)が1.1~1.8の単粒子の割合が20体積%以上である、請求項1に記載の焼結用窒化ケイ素粉末。
  3. 平均粒子径(D50)が0.5~2μmである、請求項1又は2に記載の焼結用窒化ケイ素粉末。
  4. 残部の分離波形が、0.1~0.3μmの間にピークを有する分離波形cである、請求項1又は2に記載の焼結用窒化ケイ素粉末。
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