JPH083601A - アルミニウムー窒化アルミニウム複合材料およびその製造方法 - Google Patents

アルミニウムー窒化アルミニウム複合材料およびその製造方法

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JPH083601A
JPH083601A JP6130659A JP13065994A JPH083601A JP H083601 A JPH083601 A JP H083601A JP 6130659 A JP6130659 A JP 6130659A JP 13065994 A JP13065994 A JP 13065994A JP H083601 A JPH083601 A JP H083601A
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aluminum
composite material
nitriding
aln
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JP6130659A
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Hirohisa Miura
宏久 三浦
Yasuhiro Yamada
泰弘 山田
Mamoru Okamoto
守 岡本
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Abstract

(57)【要約】 【目的】130GPa以上のヤング率をもつAI/AI
N複合材およびその製造方法を提供することを目的とす
る。 【構成】本発明のAI/AIN複合材は、Alを主成分
とするマトリックス中に、40〜90体積%を占め、直
径が1μm以下の粒子状または針状のAlNが分散保持
されている。このAlNが極めて細かいためAlNとマ
トリックスのAlとがより一体化している。このためA
lNの塑性割合に見合った高い剛性をもち、塑性加工
性、切削性もよい。また、摺動時における相手材攻撃性
も小さく、摺動材として適している。このAI/AIN
複合材は、微細なAlをそのAlの融点以下の温度で窒
化することにより得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はアルミニウムー窒化アル
ミニウム複合材料およびその製造方法に関する。このア
ルミニウムー窒化アルミニウム複合材料は高弾性の構造
材料として広く利用できる。
【0002】
【従来の技術】アルミニウム(以下Alと表示する)合
金粉末と窒化アルミニュム(以下AlNと表示する)粉
末を粉末段階で混合後、押出し法、焼結法で製造したア
ルミニウム/窒化アルミニウム複合材料(以下AI/A
IN複合材と表示する。)が知られている。この従来の
AI/AIN複合材はそのAIN含有量は高々30体積
%以下であり、その剛性率(ヤング率)は130GPa
未満である。
【0003】また、Al溶湯中に窒素ガス等を吹き込
み、炉中でAlNを合成することによりAI/AIN複
合材を製造する試みがある。しかしこの方法では、20
体積%以上のAlNを含有するAI/AIN複合材は得
られていない。さらに最近、窒素プラズマをAl溶湯に
吹き付け、その噴霧体をノズルを介して微小凝集粉とし
て回収し、その後、この微小凝集粉をホットプレスする
ことによりAI/AIN複合材を製造する方法が報告さ
れている(A.INOUE 、K.NOSAKI他:JOURNAL OF MATERIAL
S SCIENCE 28(1993)4398-4404)。この方法で得られるA
I/AIN複合材の最大AlN含有量は36.5体積%
であり、その最大の剛性率(ヤング率)は113GPa
と報告されている。
【0004】一方、セラミックスとしてのAlNは熱伝
導性に優れ、かつ電気絶縁性が良いため、基板材料とし
て使用されている。このセラミックスとしてのAlN
は、アルミナの炭素還元またはアルミ粉体の直接窒化に
より製造され、その剛性率(ヤング率)は270〜31
4GPaと報告されている。しかし、これらの炭素還元
および直接窒化でAI/AIN複合材を製造するとする
報告あるいは窒化の程度をコントロールする報告はな
い。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】一般に、Al合金粉末
とセラミックス粉末とを粉末段階で混合し製造するAI
/セラミックス複合材では、粉末を均一混合することが
難しい。そのためセラミックス量を30体積%以上とし
ても、その剛性率はあまり向上しない。また、セラミッ
クス量を30体積%以上とすると、混合体の塑性加工が
困難と成ることにより、30体積%以上のセラミックス
量を有する複合材は実用的では無い。
【0006】一方、実用面ではAl材料の剛性は鋼の1
/3と低いので、少しでも剛性の高いAl材料が求めら
れている。例えば、現在は鋼で製造されている自動車エ
ンジンのピストンピンを外径を変えずにAlに置き換え
ようとすると、最低ヤング率として160GPaが必要
とされる。若干の形状変更をした場合でも130GPa
以上が希望されている。
【0007】本発明はかかる問題を基本的に解決するも
ので、130GPa以上のヤング率をもつAI/AIN
複合材およびその製造方法を提供することを目的とす
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者は、AlとAI
Nが製造段階で原子オ−ダで配合されていれば、理論値
通りの剛性値が得られ、かつ微細な純Alが結合剤とし
て働き、塑性加工も容易となると考え、実験を進めた。
そして粉末状および繊維状のAlまたはAl合金を融点
以下の固体状態で窒素を主体としたガス体により、半窒
化することによりAlとAINが原子オ−ダに近い形態
で配合されたAI/AIN複合材が得られることを発見
し、本発明を完成したものである。
【0009】すなわち、本発明のAI/AIN複合材
は、Alを主成分とするマトリックスと該マトリックス
中に分散保持された直径が1μm以下の粒子状または針
状のAlNとからなり全体積を100体積%としたとき
該AlNが40〜90体積%を占めていることを特徴と
する。本発明のAI/AIN複合材は、Alを主成分と
するマトリックス中にAlNが1μ以下の細かさの粒子
あるいは数十ナノメートルの径で長さが数百ナノメート
ルの針状体として分散保持されている。AlNの粒径は
できるだけ小さく、かつAl合金と微小状態で均一混合
していることが、複合材料の強度、剛性上望ましい。
【0010】Al合金粉末とAlNとを粉末段階で混合
する方法では、Al合金粉末の粒径が最小でも数μmあ
る事より、1μ以下の細かさの混合物体を得ることは不
可能である。本発明では、後で説明するように、粉末
状、フレーク状あるいは繊維状のAlを窒化し、粉末状
あるいは繊維状のAl内部に微細なAlNを析出させて
いる。このため、Alを主成分とするマトリックス中に
AlNが1μ以下の細かさで分散させることができる。
AlNが分散保持されたAl合金粉末あるいは繊維とし
ては、直径が10μm〜150μm程度のものが好まし
い。また、Alはフレーク状でもよい。この場合厚さ
が、1μm〜100μm程度のものが好ましい。
【0011】なお、この粉末状、繊維状あるいはフレー
ク状の微細なAlNが分散したAlは通常の粉末冶金の
手段で、一体化され、直接所定形状の部品とされたり、
ビレット状の棒材あるいは板材に加工される。具体的に
は通常焼結あるいはホット焼結で一体化されたり、熱間
組成加工で一体化される。本発明のAI/AIN複合材
は、AlNが1μ以下の細かさでAl中に分散保持され
ているので、強度、剛性に優れ、かつ塑性加工性にも優
れる。また、切削性もよい。
【0012】なお、微細なAlNが分散した本発明の粉
末状、繊維状あるいはフレーク状のAI/AIN複合材
は、Alあるいは他の金属またはセラミックスと配合さ
れ、高度に複合化された複合材料とすることもできる。
本発明のAI/AIN複合材のAlNは、全体積を10
0体積%としたとき40〜90体積%を占める。
【0013】AI/AIN複合材のAlNが1μ以下の
細かさでAlマトリックス中に分散している場合、この
AI/AIN複合材の剛性(E)は次式で示されると考
えられる。 InE=VAlN ×InEAlN +(1−VAlN )×InE
AlAlN ;AI/AIN複合材中のAIN の体積%, EAlN ;AIN の剛性率(314Pa ) EAl;AI合金材の剛性率、 この式によれば、AINの剛性率が314Paと大き
い。このためAI/AIN複合材の剛性にはVAlN が大
きく寄与する。
【0014】また、マトリックスとなるAI合金材の剛
性率も、AINに比較すると小さいが、AI/AIN複
合材の剛性に影響する。このため、AI合金材を構成す
る合金成分は重要である。合金成分として、マンガン、
チタン、シリコン等は窒化物を形成し、Al合金材を脆
くするため望ましくなく。これに対して、ニッケル、
鉄、銅、など窒素との親和力が小さく、かつ剛性upに
寄与する元素が合金成分として望ましい。しかし、これ
ら成分を多量に配合するとAl合金材を脆くする。この
ため配合量は20体積%以下が望ましい。
【0015】なお、Alが純Al材であり、VAlN が4
0体積%以上である場合の上記式によるAI/AIN複
合材の剛性率は126Paとなる。前述したように、現
在鋼で製造されている部品、例えば自動車エンジンの重
要部分であるピストンピンをAl材料に置き換えようと
すると、そのヤング率として望ましくは160GPa以
上、少なくとも130GPaが要望される。この点から
も、VAlN としては40体積%以上が必要とされる。1
60GPaを得ようとするとVAlN は50体積%が必要
である。
【0016】なおVAlN が90体積%を越えると、AI
分が減少し、塑性加工性が困難となり、好ましくない。
以上のことより、VAlN は範囲は40体積%〜90体積
%、好ましくは50体積%〜85体積%がよい。AI/
AIN複合材の硬さとしては、VAlN 0%のカタサ(純
Alのカタサ):Hv30VAlN から100%のカタ
サ; Hv1400まで可能である。しかし、強度面か
らはHv150以上が、切削性の点からはHv1000
以下が奨励される。
【0017】本発明のAI/AIN複合材は、粉末状、
フレーク状もしくは繊維状のAlまたはAl合金をその
融点以下の温度において窒化することにより製造され
る。なお、窒化は、その窒化温度がAlまたはAl合金
の融点以下の温度で、AlまたはAl合金が5体積%に
なる前に窒化を終了するするようにする。さらに、窒化
はAlまたはAl合金の融点以下の温度で行う第1窒化
とその後で該第1窒化より高い温度で窒化する第2窒化
のように複数工程で窒化することとすることができる。
【0018】窒化のためのAl合金としてはマグネシウ
ムを重量%で0.5%以上含む合金であるのが好まし
い。また、Al合金はニッケル、鉄、銅の少なくても1
種類以上を含み、かつニッケル、鉄、銅の合計量が20
重量%以下の合金であるのが良い。また、窒化のための
原料は、全体を100体積%としたとき、10〜70体
積%の粉末状、フレーク状もしくは繊維状のAlまたは
Al合金と、残り30〜90体積%を占めかつ窒化Al
を30〜90体積%含む粉末状、フレーク状もしくは繊
維状のAlー窒化Al複合材料との混合物を窒化原料と
するのが好ましい。
【0019】本発明の窒化で使用するガスは純窒素ガス
が好ましい。水素は窒化を阻害する。なお、アルゴンガ
ス等の不活性ガスの配合は窒化に影響が少ないと思われ
る。また、水蒸気等の水分の混入も可能な限り避けるよ
うにするのが好ましい。窒化温度は原料として使用する
AlあるいはAl合金の融点以下である。融点以上で
は、原料の粉末、フレークあるいは繊維形態が維持され
ず、原料がブロック化し、原料内部までの窒化が困難に
なるからである。
【0020】窒化温度としては540℃程度(温度一
定)で10時間程度の窒化処理により窒化率70〜80
%のAl/AlN複合材を得ることができる。なお、A
l材料は非常に酸化されやすい金属であり、その最表面
には若干の自然酸化膜を有しているのが普通である。こ
の酸化膜が窒化を妨害する。原料のAl材料の表面に酸
化膜が存在する場合、原料のAl材料中にMgを0.5
重量%以上を配合することにより解決される。Mgは大
変蒸発しやすい金属であり、大気圧下540℃で300
Pa程度の蒸気圧を有し、このMg蒸気が酸素ゲッタと
して作用し、窒化が促進されると思われる。
【0021】次ぎに窒化率を70〜95%に向上させる
方法としては、600℃以下の第一段階の窒化処理に引
き続き、Al材料の完全溶融点(完全に溶融する温度)
以上の650〜950℃で第二段階の窒化処理を行うこ
とにより達成される。この場合の出発原料として、A
l、またはAl合金粉末、またはAl合金の繊維体の他
に、30〜90体積%のAlNを含有するAI粉末を5
〜20体積%混合し使用することにより、より窒化を容
易とする事ができる。
【0022】一方、窒化率が40〜70%と低いAI/
AIN複合材を希望する場合では、上法の逆で、520
〜550℃での2〜5時間程度の第一段階の窒化処理に
引き続き、完全溶融点以下の580〜620℃という融
点以下の比較的低い温度で第二段階の窒化処理を行う事
により達成される。なお、窒化処理により、窒化物は部
分的に焼結した状態となりやすい。このため窒化物を粉
砕し、微粉化することが好ましい。この微粉化した窒化
物を通常の粉体冶金の技術で集積し、得られた集積体を
塑性加工することにより、棒状、板状等のバルク状のA
l/AlN複合材料とすることができる。
【0023】
【作用及び発明の効果】本発明のAI/AIN複合材
は、Alを主成分とするマトリックスと該マトリックス
中に分散保持された直径が1μm以下の粒子状または針
状のAlNとからなり、全体積を100体積%としたと
きAlNが40〜90体積%を占める。マトリックスに
分散保持されているAlNが直径が1μm以下の粒子状
または針状と極めて細かい。このためAlNとマトリッ
クスのAlとがより一体化している。このためAlNの
塑性割合に見合った高い剛性をもつ。また、AlNが極
めて細かいため、AlNの硬い粒子としての性質が抑制
され、塑性加工性、切削性もよい。また、摺動時におけ
る相手材攻撃性も小さく、摺動材として適している。
【0024】このAI/AIN複合材は、微細なAlを
そのAlの融点以下の温度で窒化することにより得られ
る。AlNは窒素とAlが反応して形成され、Al内部
で樹枝状に結晶化する。このため、AlNはマトリック
スのAl中に極めて微細に分散する。
【0025】
【実施例】
(窒化処理1)実験には耐熱鋼製マッフルの電気炉(エ
レマ炉)を使用した。この電気炉は通常鉄系焼結材の焼
結に使用されているものである。この電気炉は完全には
密閉されない構造のもので、その中央部に中間シャッタ
ーをもつ。導入ガスは中央部の上方から炉内に入り、マ
ッフル奥部で横に吹き出し、装入口より排出される構造
のものである。なお、炉内容積は16l程度である。こ
の電気炉は、Alの窒化処理の実験炉としては最適とは
いえないが、この程度の炉でも処理できなければ工業的
には成立しないと考え、この電気炉を使用した。なお、
炉に問題かある場合も想定し、石英ガラス製管状炉での
実験も平行して行った。
【0026】実験方法は、ステンレス製の角形バット
(17×21cm2 、高さ3cm)に被窒化原料のAl
材100gを薄く、均一に敷き詰めの状態で入れ、その
バット炉内に挿入し、その後、窒素ガスを1分間30リ
ットルの割合で約5時間炉内に導入し、炉内のガスを窒
素ガスに置換した。その後1時間あたり約100℃の昇
温速度で、所定窒化温度に加熱し、その温度で所定時間
窒化を行った。窒化中の純窒素ガスの導入量は1分間1
0〜30リットルとした。その後炉中で冷却し、窒化物
を得た。
【0027】使用した被窒化原料の化学組成を表1に示
す。また、窒化の条件を表2に示す。表1のAl材1〜
3および6〜7の粉末は通常の急冷凝固粉末の製造法で
製造されたAl合金粉末で、その粒径が10μm〜15
0μmのものである。Al材4はAl材3を繊維とした
ものでその直径が60μm長さ3m/mのものである。
Al材5はAl材3のブロックを旋盤で切断しその時に
でた切粉で、切粉の形状は幅8mm、長さ15mm、厚
さ0.2mm程度のものである。なお、表2に示したN
o.5の窒化原料は、60体積%のAl材2と残部40
体積%の複合材とから構成されている。この複合材は、
本発明の方法で得られたAl/AlN複合材で、30〜
70体積%のAlNを含む。この複合材は粉末状でその
直径が5μm〜100μmのものである。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】なお、管状炉では、内周径55mmの石英
管を使用し、幅12mm、長さ80mmのアルミナ製ボ
ードに被窒化用原料を3g入れ、このボードを管状炉に
収納した。その後、真空ポンプでおよそ13Pa以下に
減圧した後、純窒素ガスを1分間当たり1リットルの割
合で導入し、続いて180℃に昇温し約2時間保持し
た。その後所定の窒化温度までおよそ100℃/10分
の速度で昇温し、その窒化温度で規定時間保持し、その
後管状炉内で冷却した。この間管状炉内には、1リット
ル/分の純窒素ガスを導入し続けた。
【0031】表2中、純窒素ガスの露点とあるのは、炉
内のガスを露点カップに導きドライアイスを用いて測定
した露点(℃)を示す。また、窒化率は得られた複合材
料の窒素を重量分析で測定し、この窒素量より求めた。
表2に示す、得られた複合材No.1およびNo.2は
管状炉での窒化を行ったものである。
【0032】No.1は純Al材の窒化実験結果であ
り、540℃に到達後、6時間後に反応に伴う発熱を生
じ、7.5時間後に発熱(反応)が終了した。得られた
窒化率は73%であった。一方No.2はMgを2.7
%含むJIS5052粉末材を窒化処理したもので、5
40℃に到達後すぐに発熱反応を生じている。これはM
gが酸素ゲッタ−として作用し、粉末表面に存在する自
然酸化膜の作用を除去し、早期の窒化反応を生じさせた
ものと思われる。
【0033】得られた複合材No.3およびNo.4
は、被窒化原料の表面に生じる酸化膜の作用を調べたも
ので、両者ともマッフル炉で実験した。複合材No.3
およびNo.4の被窒化原料ともに同じ化学組成をもつ
が、No.4の被窒化原料は予め500℃×1Hrの大
気中での酸化処理を施したものであり、表面に約0.0
3μmの酸化皮膜をもつ。No.3はNo.2同様Mg
を含み、直ぐに窒化反応が生ずるものの窒化率は46%
と低めであった。一方No.4は、活発な窒化反応は7
時間と遅れるものの、窒化率は77.8%と向上してい
る。
【0034】No.5およびNo.6は、被窒化原料の
形状を変えた、ファイバ−と切粉について調べた物であ
る。発熱、窒化率ともNo.4に類似している。No.
5のファイバ−はAl丸棒からビビリ切削加工で製作さ
れたものでありNo.6の切粉同様、切削加工の際、表
面に強固な酸化膜を生じたものと思われる。No.7〜
No.10は、窒化反応が早期に生じ、かつ高い窒化率
(≧80%)を得ている。すなわち、90%を越える高
い窒化率は600℃以下の第一段階の窒化処理に引き続
き、850℃での第二段階の窒化処理を行うことと、N
o.7〜No.9にみられるように、被窒化原料にAl
/AlN複合材を配合するのが効果的である。
【0035】Al/AlN複合材の配合量については1
0〜40%を試験したが、特に多量の配合は必要なく、
10%の配合で十分である。これは、Al/AlN複合
材の粉末がAl粉末同志の焼結による固着を防止し、最
後まで窒素ガスの流入路が確保されれば良いためと思わ
れる。またNo.10はAl/AlN複合材を配合しな
い、すなわち、0%複合材の高温2段窒化処理である。
高温2段窒化処理であればAl/AlN複合材を配合し
なくとも、窒化率を83.9%と一段窒化と比較して高
い窒化率が得られている。
【0036】No.11〜No.14は、低温2段窒化
処理のものである。N0.4のような酸化処理をするこ
と無く、窒化率50〜70%を達成している。先に述べ
たように、160GPaのヤング率を得ようとすると、
AlN ≧50%が必要である。このためには一段の窒化
処理では不十分であり、かつ出来るだけ微細な結晶粒を
得る目的で、2段目の処理として600℃以下での処理
が推奨される。
【0037】No.11,No.12では2段目の温度
として580℃、No.13,No.14では600℃
が採用され、それぞれ窒化率;57.4%,55.2
%,68.0%、61.2%が得られている。一方、比
較材のNo.51(Al/AlN複合材を含み、900
×3Hrの処理)では窒化率が99%とほぼ完全なセラ
ミックス体となった。
【0038】なお、窒素ガスの露点は低ければ低いほど
良いと考えられるが、この窒化処理では露点が−10℃
程度のものでも十分に窒化が可能であることが明らかに
なった。 (窒化処理2)前記(窒化処理1)の窒化ガス組成を代
え、純窒素ガスを30リットル/分と純水素ガス1.5
リットル/分の混合ガスを使用し、Al/AlN複合材
No.3と同じ条件で窒化を行った。この条件では被窒
化原料はほとんど窒化されなかった。セラミックスAl
Nの製造には通常窒素ガスと共に水素ガスが導入され、
窒化がなされる。しかしこの実験では明らかに水素ガス
の配合は窒化を阻害する。本試験のように540℃と低
い窒化温度では水素がAlH2 、AlH等としてAl内
に留まり、窒素との反応を妨害するものと思われる。従
って窒素ガスに水素ガスを混入するのは好ましいことで
はない。 (Al/AlN複合材の微細組織)Al/AlN複合材
No.12の透過電子顕微鏡(TEM)写真を図1、図
2に示す。この写真の倍率は図1は約10万倍、図2は
約20万倍で、黒い針状のものがAlNの結晶である。
バックの白い部分がマトリックスとなるAl合金であ
る。このAlN結晶の太さは約20〜30nm、長さは
約数100nmである。なお、このAlN結晶はその部
分を極微電子回折像を撮影することにより確認した。図
2に示す針状部分の極微電子回折像を図3に示す。この
極微電子回折像は亀甲状を呈している。さらにASTMカー
ドで調べると、面間隔、面角ともAINの理論値に等し
く、この棒状物はAINの結晶体(Wurtzite型
六方晶)であることが分かるこのように本発明のAl/
AlN複合材はAl合金マトリックス中に極めて微細な
AlN結晶が析出している。なお、Al/AlN複合材
中のAlNは、図lに示すように、樹枝状結晶の形態と
なったり、あるいは微細粒子状に析出しているのが観察
された。
【0039】また、このAl/AlN複合材No.12
のX線解析チャートを図4に示す。なお、図4のピーク
の頂部に付したAおよびBの符号は、ピークの結晶構造
を示すもので、符号AはAlを符号BはAlNを示して
いる。このチャートからもAl/AlN複合材No.1
2はAlとAlNの複合材であることがわかる。 (窒化直後のAl/AlN複合材)前記したAl/Al
N複合材No.3のマッフル炉から取り出した複合材は
窒化原料を挿入した状態がそのまま焼結した形状を持っ
ていた。この複合材は表面部分が黒く、内部は白っぽい
状態であった。この焼結形態の複合材の端の部分、中央
の表面部分および内部についてそれぞれAlNおよびA
lの割合およびそれら部分の硬度を調べた。その結果を
表3に示す。
【0040】
【表3】
【0041】表3より、窒化は端部が一番進み、内部の
窒化は遅いことがわかる。 (Al/AlN複合材の性質1)前記したAl/AlN
複合材No.3〜No.14を一度粉砕し、100メッ
シュ以下の粉末とした。そして得られた各粉末を450
℃、1時間、240MPaの圧力でホットプレスし、5
0x50x10mm3 の板材を作った。これらの板材を
試験片とし、硬さおよび剛性を測定した。硬さはビッカ
ース硬度計により、剛性は超音波測定法で測定した。
【0042】図5に測定された硬さの値と計算で求めら
れた硬さの値とを示す。計算では次の式を使用した。 InHv=VAlN ×InHvAlN +(1−VAlN )×I
nHvAl この式でHvAlN としては1400をHvAlとしては1
20と30との2つの硬さについて求めた。HvAlが1
20はマトリックスとなるAl合金で多量のFe、Ni
を含み、硬さも高目と思われるAl合金を想定したもの
であり、実線で示した。HvAlが30はマトリックスと
なるAlが最も柔らかい純Alを想定したものであり、
破線で示した。また、本発明のAl/AlN複合材を用
いて実際に測定された値は白丸印で示した。
【0043】また、図6に測定された剛性の値と計算で
求められた剛性の値とを示す。計算では次の式を使用し
た。 InE=NAlN ×InEAlN +(1−VAlN )×InE
Al この式でEAlN としては314をEAlとしては84.2
と68.6との2つの剛性について求めた。EAlが8
4.2はマトリックスとなるAl合金で多量のFe、N
iを含み、剛性の高目と思われるAl合金を想定したも
のであり、実線で示した。EAlが68.6はマトリック
スとなるAlが最も剛性が低い純Alを想定したもので
あり、破線で示した。また、本発明のAl/AlN複合
材を用いて実際に測定された値は白丸印で示した。
【0044】図5および図6から明らかなように、本発
明のAl/AlN複合材の硬さおよび剛性は、ほぼ計算
値に近い値をとることがわかる。これは、AlNがAl
マトリックスに極めて微細に分散保持されているため、
マトリックスのAlと分散子のAlNとが一体化し、両
者の親密性が高いためだと考えられる。なお、通常のセ
ラミックスAlN粉末をAl合金粉末に混合し、熱間塑
性加工を施して作ったAl/AlN複合材でセラミック
AlN粉末の配合量が15重量%程度で最も高い剛性が
得られる。15重量%を超えて、20重量%、25重量
%とセラミックAlN粉末の配合量を増加させると得ら
れるAl/AlN複合材の剛性を逆に低くなる。 (Al/AlN複合材の性質2)本発明のAl/AlN
複合材とセラミックスとしてのAlN粉末との性質の差
異を明らかにするため、次の試験を実施した。
【0045】まず、表1に示す被窒化原料7を使用して
得られた表2に示すNo.14複合材をマッフル炉より
取り出した後一度破砕し、100メッシュ以下の粉末と
した。このAI/ALN複合材粉末をそれぞれ5体積%
および10体積%含み、残部を表1に示すAl材7とし
た2種類の混合粉末を調製し、通常のキャニング法で、
450℃で押出し加工し、棒状の複合材を得た。これら
を更に機械加工することによりLFW磨耗試験片を得
た。
【0046】摺動相手材として比較的硬さの低いJI
S,AC2C材を用い、LFW磨耗試験機で摺動試験を
実施した。この摺動試験により得られた自己および相手
材の磨耗量を表4に示す。
【0047】
【表4】
【0048】表4より、本発明のAl/AlN複合材粉
末を配合したものはAINセラミックス粉末を配合した
ものに比較し、自己磨耗量および相手材磨耗量共に少な
い。特に相手材磨耗量が少ない。これはAINセラミッ
クス粉末の硬さはHv1300〜1400程度と極めて
硬いのに対し、No.14複合材の硬さはHv500程
度と低いことによると思われる。また、No.14複合
材の比重も3.0とAINセラミックスの比重3.26
に比較して低く、Al材の比重に近いため、Al材への
分散性に優れ、相手材磨耗量が少なくなったものと考え
られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Al/AlN複合材No.12のAlN結晶の
結晶構造を示す約10万倍の透過電子顕微鏡(TEM)
写真。
【図2】図1と同じAl/AlN複合材No.12のA
lN結晶の結晶構造を示す約29万倍の透過電子顕微鏡
(TEM)写真。
【図3】AlN結晶の極微電子回折像を示すX線写真。
【図4】Al/AlN複合材No.12のX線解析チャ
ート。
【図5】Al/AlN複合材のAlNの割合と硬さ(H
v)の関係を示す理論値と実測値を示す図。
【図6】Al/AlN複合材のAlNの割合と剛性(G
Pa)の関係を示す理論値と実測値を示す図。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成6年6月28日
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正内容】
【図1】
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正内容】
【図2】
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図3
【補正方法】変更
【補正内容】
【図3】

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アルミニウムを主成分とするマトリックス
    と該マトリックス中に分散保持された直径が1μm以下
    の粒子状または針状の窒化アルミニウムとからなり全体
    積を100体積%としたとき該窒化アルミニウムが40
    〜90体積%を占めていることを特徴とするアルミニウ
    ムー窒化アルミニウム複合材料。
  2. 【請求項2】剛性率(ヤング率)が130Pa以上であ
    る請求項1記載のアルミニウムー窒化アルミニウム複合
    材料。
  3. 【請求項3】硬さがHv150〜1000の範囲にある
    請求項1記載のアルミニウムー窒化アルミニウム複合材
    料。
  4. 【請求項4】形状が粉末状、フレーク状もしくは繊維状
    である請求項1記載のアルミニウムー窒化アルミニウム
    複合材料。
  5. 【請求項5】粉末状、フレーク状もしくは繊維状のアル
    ミニウムまたはアルミニウム合金をその融点以下の温度
    において窒化することを特徴とするアルミニウムー窒化
    アルミニウム複合材料の製造方法。
  6. 【請求項6】窒化はアルミニウム5体積%になる前に窒
    化を終了する請求項5記載のアルミニウムー窒化アルミ
    ニウム複合材料の製造方法。
  7. 【請求項7】窒化はアルミニウムまたはアルミニウム合
    金の融点以下の温度で行う第1窒化とその後で該第1窒
    化より高い温度で窒化する第2窒化とからなる請求項5
    記載のアルミニウムー窒化アルミニウム複合材料の製造
    方法。
  8. 【請求項8】第2窒化の窒化温度はアルミニウムまたは
    アルミニウム合金の完全溶融点以下の温度である請求項
    7記載のアルミニウムー窒化アルミニウム複合材料の製
    造方法。
  9. 【請求項9】第2窒化の窒化温度はアルミニウムまたは
    アルミニウム合金の完全溶融点以上の温度である請求項
    7記載のアルミニウムー窒化アルミニウム複合材料の製
    造方法。
  10. 【請求項10】アルミニウム合金はマグネシウムを重量
    %で0.5%以上含む合金である請求項5記載のアルミ
    ニウムー窒化アルミニウム複合材料の製造方法。
  11. 【請求項11】アルミニウム合金はニッケル、鉄、銅の
    少なくても1種類以上を含み、かつニッケル、鉄、銅の
    合計量が20重量%以下の合金である請求項5記載のア
    ルミニウムー窒化アルミニウム複合材料の製造方法。
  12. 【請求項12】全体を100体積%としたとき、10〜
    70体積%の粉末状もしくは繊維状のアルミニウムまた
    はアルミニウム合金と、残り30〜90体積%を占めか
    つ窒化アルミニウムを30〜90体積%含む粉末状もし
    くは繊維状のアルミニウムー窒化アルミニウム複合材料
    との混合物を窒化原料とする請求項5記載のアルミニウ
    ムー窒化アルミニウム複合材料の製造方法。
  13. 【請求項13】粉末状もしくは繊維状のアルミニウムま
    たはアルミニウム合金をその融点以下の温度において窒
    化する窒化工程と、 窒化工程で得られた窒化物を粉砕する粉砕工程と、 粉砕工程で得られた粉体の集積体を加熱一体化する加熱
    工程とからなることを特徴とするアルミニウムー窒化ア
    ルミニウム複合材料の製造方法。
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