JP4140176B2 - 低熱膨張耐熱合金及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱膨張率が低く、高い室温強度ならびに高温強度を有する低熱膨張耐熱合金およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ガスタービン部品やセラミックスおよび超硬合金との複合材として、あるいは高温で精密加工を行うための機器等の部品材料として、常温から約600℃を超える高温に到るまで強度が維持されるとともに、その温度範囲にわたって部品の寸法変化が許容範囲内に納まるように低い熱膨張係数を示す耐熱合金が開発され、実用化されている。
【0003】
例えば、日本公開特許公報4−218642号は、質量%で炭素0.1%以下、シリコン1%以下、マンガン1%以下、チタン0.5〜2.5%、ニオブ3.0〜6.0%、ホウ素0.01%以下、アルミニウム1.0%以下を含み、かつニッケル20〜32%およびコバルト16%〜30%を48.8≦1.235xNi+Co<55.8の範囲で含有し、残部が実質的に鉄でなる低熱膨張超耐熱合金について記載している。この耐熱合金は、常温から400℃までの平均熱膨張係数が7.0x10−6/℃以下であり、500℃において100kgf/mm2以上という引張強度特性を有している。
【0004】
また、日本特許公報4−1057号は、重量比で34%ないし55%のニッケル、25%までのコバルト、1%ないし2%のチタン、1.5%ないし5.5%のニオブ、0.25%ないし1%のケイ素、0.1%以下の炭素、残部が実質的に鉄及び不可避不純物からなる時効硬化型制御膨張合金について記載している。この制御膨張合金は、常温と屈折温度(329℃)との間において9.9x10-6/℃以下の熱膨張係数を有し、538℃においておよそ100〜110kgf/mm2の引張特性を有している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、さらにきびしい高温条件下でも安定して使用可能な低熱膨張耐熱合金の開発、特に600℃、さらには700℃における強度特性が改善された低熱膨張耐熱合金の開発が待たれている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明の目的は、上記したような温度範囲においても高い強度特性を有する低熱膨張耐熱合金を提供することにある。すなわち、本願請求項1の低熱膨張耐熱合金は、質量%で、ニッケル20〜50%、コバルト25%以下、ニオブ5〜15%、チタン2〜10%、アルミニウムおよびシリコンの少なくとも1種1%以下、炭素0.2〜2.0%、残部が鉄および不可避不純物でなる組成を有し、室温における強度が1000MPa以上で600℃における強度が800MPa以上であり、室温から600℃までの熱膨張係数が12x10−6/℃以下であることを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、低熱膨張耐熱合金の平均結晶粒径は5μm以下であることを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1もしくは2の発明において、低熱膨張耐熱合金は、上記した合金組成を構成する元素でなる金属間化合物及び炭化物の析出物を含むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の別の目的は、長時間を要する溶体化処理や時効処理を実施することなく高い常温強度および高温強度を有する低熱膨張耐熱合金を製造する方法を提供することにある。すなわち、本願請求項4の低熱膨張耐熱合金の製造方法は、室温における強度が1000MPa以上で600℃における強度が800MPa以上であり、室温から600℃までの熱膨張係数が12x10 −6 /℃以下である低熱膨張耐熱合金の製造方法であって、質量%で、ニッケル20〜50%、コバルト25%以下、ニオブ5〜15%、チタン2〜10%、アルミニウムおよびシリコンの少なくとも1種1%以下、炭素0.2〜2.0%、残部が鉄および不可避不純物でなる組成となるようにメカニカルアロイング法もしくはメカニカルミリング法によって混合粉末を作製する工程と、混合粉末を非酸化性雰囲気中、900℃〜1300℃の焼結温度で焼結する工程とを具備することを特徴とする。
【0014】
請求項5の発明は、請求項4の発明において、混合粉末は、上記した合金組成を構成する元素の少なくとも2種以上の合金粉末と残りの各単体元素の粉末を原料としてメカニカルアロイング法によって作製されることを特徴とする。
【0015】
請求項6の発明は、請求項5の発明において、上記した合金粉末は、鉄−ニッケル−コバルト合金粉末であることを特徴とする。
【0016】
請求項7の発明は、請求項5の発明において、上記した合金粉末は、チタン炭化物、ニオブ炭化物およびコバルト炭化物の少なくとも一種を含むことを特徴とする。
【0019】
請求項8の発明は、請求項4〜7のいずれかの発明において、混合粉末は、放電プラズマ焼結法、ホットプレス焼結法、もしくは金属粉末射出焼結法によって焼結されることを特徴とする。
【0020】
請求項9の発明は、請求項4〜8のいずれかの発明において、混合粉末を焼結した後、得られた焼結体を焼結温度から不活性ガスを使用して20℃/分以上の冷却速度で冷却することを特徴とする。
【0025】
また、本発明のさらなる目的は、長時間を要する溶体化処理や時効処理を実施することなく粉末冶金法による特定の条件の下で製造される低熱膨張耐熱合金を提供することにある。すなわち、本願請求項10の低熱膨張耐熱合金は、質量%で、ニッケル20〜50%、コバルト25%以下、ニオブ5〜15%、チタン2〜10%、アルミニウムおよびシリコンの少なくとも1種1%以下、炭素0.2〜2.0%、残部が鉄および不可避不純物でなる組成を有する結晶粒径が5μm以下の混合粉末を作製し、その混合粉末を非酸化性雰囲気中、900℃〜1300℃の焼結温度で焼結することによって製造されることを特徴とする。
【0026】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の低熱膨張耐熱合金は、質量%で、ニッケル20〜50%、コバルト25%以下、ニオブ5〜15%、チタン2〜10%、アルミニウムおよびシリコンの少なくとも1種1%以下、炭素0.2〜2.0%、残部が鉄および不可避不純物でなる。特に、本発明の低熱膨張耐熱合金の代表的な合金組成としては、質量%で、ニッケル35%±1%、コバルト12%±1%、ニオブ約10%±1%、チタン5%±0.5%、アルミニウム0.05%±0.02%、シリコン0.5%±0.1%、炭素1.0%±0.2%、残部が鉄および不可避不純物でなる場合を挙げることができる。
【0027】
本発明においては、炭素量を0.2〜2.0%の範囲とするとともに、ニオブやチタンなどの炭化物を形成しやすい元素の組成範囲を増加させていることに特徴がある。これによりNbCやTiCなどの炭化物とNi−Al,Ni−Ti等(γプライム相等)の金属間化合物の両方を十分に析出させることが可能となる。このように、上記した炭素量およびニオブやチタンの組成範囲は、室温から700℃まで(特に600℃まで)の合金強度を向上させる上で特に重要である。
【0028】
上記合金組成を有する低熱膨張耐熱合金は、室温において1000MPa以上、好ましくは1600〜1700MPaの強度と、600℃において800MPa以上、好ましくは1200〜1300MPaの強度を有するともに、室温から600℃までの熱膨張係数は、12x10-6/℃以下であり、より具体的には8〜11x10-6/℃の範囲内にあることを特徴とする。
【0029】
また、上記のような強度特性を安定して提供する上で、低熱膨張耐熱合金の平均結晶粒径は、5μm以下、特に1μm以下であることが好ましい。さらに、上記した合金組成を構成する元素でなる金属間化合物及び炭化物の析出微粒子が低熱膨張耐熱合金内に均一に分散されていることが好ましい。
【0030】
本発明の低熱膨張耐熱合金は、質量%で、ニッケル20〜50%、コバルト25%以下、ニオブ5〜15%、チタン2〜10%、アルミニウムおよびシリコンの少なくとも1種1%以下、炭素0.2〜2.0%、残部が鉄および不可避不純物でなる組成となるように混合粉末を作製する工程と、混合粉末を焼結する工程とを含む製造方法により製造することができる。
【0031】
従来の低熱膨張耐熱合金は、上記合金組成となるように作製された熔融合金を鋳造し、その後溶体化処理および時効処理を実施して比較的大きな結晶粒にγ´相などの金属間化合物を析出させて高温強度を確保している。しかしながら、溶体化処理や時効処理は非常に長時間を要するものであって、合金の製造効率を下げる大きな要因となっている。そこで、本発明の低熱膨張耐熱合金の製造方法によれば、溶体化処理や時効処理を行わなくても高い常温強度および高温強度を有する低熱膨張耐熱合金を改善された製造効率で提供することができるのである。
【0032】
混合粉末を作製するにあたっては、メカニカルアロイング法もしくはメカニカルミリング法を採用することが特に好ましい。メカニカルアロイング法とは、ボールミルや遊星ボールミルなどで機械的な衝撃を与えながら、2種以上の粉末(2種以上の単体元素粉末の混合粉末でも、2種以上の合金粉末でも、合金粉末と単体元素粉末の混合物でも良い)を混合して合金粉末を作成する方法である。一方、メカニカルミリング法は、1種の粉末(合金粉末でも単体元素粉末でも良い)に機械的な衝撃を与えながら微細組織やアモルファスなどの粉末を作成する方法である。メカニカルミリング法に特に限定はないが、例えば、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気中、20〜60時間ボールミル粉砕あるいは遊星ボールミル粉砕する場合を挙げることができる。
【0033】
メカニカルアロイング法もしくはメカニカルミリング法を施す前の原料粉末としては、上記した合金組成を有する合金をガスアトマイズ法または粗粉砕することにより得た平均粒径200μm以下の合金粉末や、ガスアトマイズ法、水アトマイズ法あるいは粗粉砕することにより得た平均粒径200μm以下の上記した合金組成を構成する各単体元素の粉末を使用することができる。
【0034】
また、上記した合金組成を構成する元素の少なくとも2種以上の合金粉末と残りの各単体元素の粉末を原料としてメカニカルアロイング法によって混合粉末を作製することも好ましい。合金組成を構成する元素の少なくとも2種以上の合金粉末としては、たとえば、鉄−ニッケルーコバルト合金であるコバール合金や、チタン炭化物、ニオブ炭化物およびコバルト炭化物の少なくとも一種を使用することが好ましい。
【0035】
原料粉末として、低熱膨張合金であるコバール合金を用いることで、メカニカルアロイングの時間を短縮することができる。また、チタンやニオブなどの酸化しやすい金属をTiCやNbCなどの炭化物で供給する場合は、それらの純金属の粉末を原料とする場合に比較して酸素含有量の少ない混合粉末を作製することができ、それにより焼結後に酸素含有量の少ない健全な合金を得る上で好適である。
【0036】
さらに、上記した合金組成を構成する元素の少なくとも1種の水素化物粉末と残りの各単体元素の粉末を原料としてメカニカルアロイング法によって混合粉末を作製しても良い。この場合、水素化物として、ヘプタンもしくはその他の炭化水素や水素化チタンを使用することが好ましい。例えば、炭素の原料としてヘプタン等の炭化水素や、TiH2などの水素化物を使用してメカニカルアロイング法により混合粉末を作製する場合は、平均粒径10〜30μm程度の粉末をポリプロピレン樹脂とワックスあるいはポリアセタール樹脂とワックスなどを主成分とする有機バインダーと混練して射出成型用ペレットとし、金型内に射出成形機で射出成形して成形体を作製し、加熱脱脂により有機バインダーを除去した後、例えば真空中、約1200〜1300℃の温度条件で普通焼結することにより本発明の低熱膨張耐熱合金を製造することができる。このように、普通焼結法を採用することにより、熱膨張が低く高温まで耐力の高い複雑な3次元形状を有する合金部品を比較的安価に大量生産することができる。
【0037】
焼結工程直前の混合粉末は、平均結晶粒径が5μm以下、特に1μm以下であることが好ましい、また、焼結は900〜1300℃の焼結温度で実施することが特に好ましい。混合粉末の結晶粒径および焼結温度が上記範囲にあれば、良好な室温強度および高温強度を安定して得ることができる。尚、混合粉末を燒結するにあたっては、放電プラズマ焼結法、ホットプレス焼結法、もしくは金属粉末射出焼結法を採用することが好ましい。一例として、ホットプレス焼結を行う場合は、非酸化性雰囲気、特に真空雰囲気中で30〜50MPaの加圧下、1000〜1100℃の焼結温度で10〜20分間燒結することが好ましい。また、プラズマ焼結を実施する場合は、真空雰囲気中で30MPaの加圧下、1000℃の焼結温度で5〜60分間燒結することが好ましい。これらの焼結工程により平均粒径が数μm以下、好ましくは1μm以下で炭化物粒子(NbC等)が均一微細に析出した合金構造を得ることができる。
【0038】
ところで、本発明においては、上記した粉末冶金法により、溶体化処理や時効処理を実施せずとも高い常温強度および高温強度を有する低熱膨張耐熱合金を得ることができるが、得られた焼結体に対して溶体化処理や時効処理を実施することを禁止するものではない。すなわち、粉末冶金法によって製造された低熱膨張耐熱合金には炭化物粒子が均一に析出しており、それ自体優れた室温強度および600℃における高温強度を有するものである。しかし、γプライム相等の金属間化合物の析出が焼結後の冷却速度の設定によっては析出が十分に生じなかったり、粗大な金属間化合物が析出したりする恐れがある。そこで、必要に応じて時効処理のみ、または溶体化処理後に時効処理することで微細な金属間化合物の析出を促し、低熱膨張耐熱合金の600℃より高温側(700℃)における強度をさらに改善することができるのである。
【0039】
具体的には、混合粉末を焼結した後、得られた焼結体を焼結温度からガス冷却等により急冷することが効果的である。例えば、アルゴンや窒素等の不活性ガスを使用して20℃/分以上の冷却速度で冷却することが好ましい。これにより、組織の粗大化を効果的に抑制することができ、室温から700℃までの強度が改善された合金を得る上で有効である。
【0040】
また、得られた焼結体をガス冷却等により焼結温度から急冷した後、所定温度においてその焼結体に熱間加工を施すことも好ましい。例えば、焼結温度からおよそ100℃以下まで急冷した後、約750℃で熱間鍛造、熱間圧延あるいは熱間押し出し加工等を行うことを例示できる。急冷後に熱間加工することで平均結晶粒径が数μm以下になるとともに、加工により析出核となる転位等の格子欠陥が均一に導入されるので、炭化物あるいはTi−Alなどの金属間化合物(γ´相など)が均一微細に析出して室温〜700℃までの強度を更に改善することができる。尚、熱間加工は、所定の熱間加工温度まで急冷し、100℃以下まで冷却することなく行っても良い。
【0041】
さらに、得られた焼結体をガス冷却等により焼結温度から急冷した後、所定温度においてその焼結体に時効処理を施すことも好ましい。例えば、焼結温度からおよそ100℃以下まで急冷した後、約750℃で10時間程度時効処理を実施することを例示できる。急冷後に時効処理することで平均結晶粒径が数μm以下となり、炭化物あるいはTi−Alなどの金属間化合物(γ´相など)が均一微細に析出して室温〜700℃までの強度を更に改善することができる。
【0042】
また、得られた混合粉末を焼結した後、その焼結体に第1熱処理温度で溶体化処理を施し、さらに第1熱処理温度から焼結体を急冷した後、第2熱処理温度で時効処理を施すことも好ましい。例えば、第1熱処理温度での溶体化処理としては、950℃〜1100℃の温度で2時間保持することが好ましい。また、第1熱処理温度から焼結体を急冷する場合は、水焼入れ、油焼入れあるいはガス焼入れで約100℃以下まで冷却することが好ましい。一方、第2熱処理温度での時効処理としては、例えば、750〜850℃の温度で10時間保持する時効処理を例示することができる。溶体化処理に続いて急冷した後、時効処理することで炭化物あるいはTi−Al等の金属間化合物が均一微細に析出するので、得られた合金の室温強度および高温強度(700℃)を更に改善することができる。
【0043】
また、得られた混合粉末を焼結した後、その焼結体に第1熱処理温度で溶体化処理を施し、さらに第1熱処理温度から焼結体を急冷した後、第2熱処理温度で熱間加工を施すことも好ましい。例えば、第1熱処理温度での溶体化処理としては、950℃〜1100℃の温度で2時間保持することが好ましい。また、第1熱処理温度から焼結体を急冷する場合は、水焼入れ、油焼入れあるいはガス焼入れで約100℃以下まで冷却することが好ましい。さらに、第2熱処理温度での熱間加工としては、例えば、750〜850℃の温度で熱間鍛造、熱間圧延あるいは熱間押出し加工等を実施することを例示できる。溶体化処理に続いて急冷した後、熱間加工を施すことで炭化物あるいはTi−Al等の金属間化合物が均一微細に析出するので、得られた合金の室温強度および高温強度(700℃)をさらに改善することができる。尚、熱間加工は、所定の熱間加工温度まで急冷し、100℃以下まで冷却することなく行っても良い。
【0044】
【発明の実施の形態】
本発明の低熱膨張耐熱合金およびその製造方法を以下の実施例に基いて具体的に説明する。
(実施例1)
組成が質量%で、ニッケル約35%、コバルト約15%、ニオブ約10%、チタン約5%、アルミニウム約0.1%、炭素約1%、残部が鉄でなる合金を作成し、この合金を平均粒径が約200μm以下になるように粗粉砕した。得られた粉末をステンレスボールと共にステンレス製ボールミルポットに入れ、アルゴンガスをポットに封入して、48時間ボールミル粉砕した。これにより平均粒径が2〜3μm程度の合金粉末を得た。この合金粉末を放電プラズマ焼結用のモールドに充填し、真空中、30MPaの圧力下、1000℃で10分間放電プラズマ焼結を実施した。このようにして、本発明の低熱膨張耐熱合金の焼結体を得た。この焼結体を所定の形状に加工して強度評価用試片を作成した。強度測定の結果、室温および600℃における0.2%耐力は、それぞれ1620MPa、1200MPaであった。また、室温から600℃までの熱膨張係数は、8〜11x10−6/℃の範囲内であった。
(実施例2)
組成が質量%で、ニッケル約30%、コバルト約15%、ニオブ約10%、チタン約5%、アルミニウム約0.1%、炭素約1%、残部が鉄となるようにニッケル、コバルト、ニオブ、チタン、アルミニウム、および黒鉛の各粉末を秤量し、これらの粉末をステンレスボールと共にステンレス製ボールミルポットに入れ、アルゴンガスをポットに封入して、60時間ボールミル粉砕した。尚、原料粉末となる各単体金属の粉末としては、ガスアトマイズ法、水アトマイズ法または粗粉砕により作製された平均粒径200μm以下の粉末を使用した。このようにして焼結用の混合粉末を得た。この混合粉末をホットプレス焼結用のモールドに充填し、真空中、50MPaの圧力下、1100℃で20分間ホットプレス焼結を実施した。このようにして、本発明の低熱膨張耐熱合金の焼結体を得た。この焼結体を所定の形状に加工して強度評価用試片を作成した。測定の結果、室温および600℃における0.2%耐力は、それぞれ1650MPa、1125MPaであった。また、室温から600℃までの熱膨張係数は、8〜11x10−6/℃の範囲内であった。
(実施例3)
組成が質量%で、ニッケル約35%、コバルト約15%、ニオブ約10%、チタン約5%、シリコン約0.5%、アルミニウム約0.1%、炭素約1%、残部が鉄となるようにFe−29%Ni−17%Co合金粉末(コバール合金粉末)、ニッケル粉末、チタン粉末、シリコン粉末、アルミニウム粉末、および炭化水素であるヘプタンを秤量した。投入する原料粉末の配合として、ニッケル約15%、ニオブ約10%、チタン約5%、シリコン約0,5%、アルミニウム約0.1%、ヘプタン約5%、残部をコバール合金粉末とした。これらの粉末をステンレスボールと共にステンレス製ボールミルポットに入れ、アルゴンガスをポットに封入して、48時間遊星ボールミルによりメカニカルアロイングを実施して粉砕した。これにより平均粒径が1μm以下の混合粉末を得た。この混合粉末を放電プラズマ焼結用のモールドに充填し、真空中、30MPaの圧力下、1030℃で5分間および60分間放電プラズマ焼結を実施した。このようにして、本発明の低熱膨張耐熱合金の焼結体を得た。これらの焼結体を所定の形状に加工して強度評価用試片を作成した。
【0045】
本実施例において得られた合金(焼結時間:5分および60分)のそれぞれに対して、室温(28℃)、400℃、500℃、600℃および700℃のそれぞれにおいて0.2%耐力を測定した。測定結果を図1に示す。また、特許公報4−1057号の時効硬化型制御膨張合金の組成に相当する合金(比較例)の温度−強度特性の関係を参考までに図1に示す。図1のグラフから分かるように、本発明の低熱膨張耐熱合金は、焼結時間が5分および60分のいずれにおいても600℃まで約1200MPaもしくはそれ以上の強度が維持され、特に焼結時間を60分とした場合は700℃においてさえ約900MPaの強度を維持できた。
【0046】
それぞれの温度における本実施例の低熱膨張耐熱合金の熱膨張係数を測定したところ、8〜11x10-6/℃の範囲内であった。また、本実施例の低熱膨張耐熱合金の組織を示すTEM写真の一例を図2に示す。TEM観察により、平均粒径1μm以下の結晶粒でなる母相の粒界に析出物粒子(NbC等)が均一微細に分散しているのが確認された。図3は、本実施例において得られた合金(焼結時間:5分および60分)のそれぞれのX線回折結果である。60分間焼結した場合において、炭化物のピークがより顕著にかつシャープになっているのがわかる。(実施例4)
実施例1の混合粉末を実施例1と同じ条件で焼結した後、得られた焼結体をその焼結温度からアルゴンガス冷却により急冷した。この時の冷却速度は、約20℃/分以上であった。これにより、本実施例の焼結体の700℃における0.2%耐力は、約820MPaであった。
(実施例5)
実施例1の混合粉末を実施例1と同じ条件で焼結した後、アルゴンガス冷却により焼結温度から100℃以下に急冷し、さらに750℃に加熱してその焼結体に熱間鍛造を施した。これにより、本実施例の焼結体の700℃における0.2%耐力は、約950MPaであった。
(実施例6)
実施例1の混合粉末を実施例1と同じ条件で焼結した後、アルゴンガス冷却により焼結温度から100℃以下に急冷し、さらに750℃で10時間時効処理を実施した。これにより、本実施例の焼結体の700℃における0.2%耐力は、約1020MPaであった。
(実施例7)
実施例2の混合粉末を実施例2と同じ条件で焼結した後、その焼結体に1000℃で2時間溶体化処理を施し、さらに水焼き入れにより1000℃から焼結体を100℃以下に急冷した。その後、800℃で10時間時効処理を施した。これにより、本実施例の焼結体の700℃における0.2%耐力は、約1030MPaであった。
(実施例8)
実施例2の混合粉末を実施例2と同じ条件で焼結した後、その焼結体に950℃で2時間溶体化処理を施し、さらに950℃からアルゴンガス冷却によりその焼結体を急冷した。その後、850℃で熱間鍛造を施した。これにより、本実施例の焼結体の700℃における0.2%耐力は、約1070MPaであった。
【0047】
【発明の効果】
本発明においては、質量%で、ニッケル20〜50%、コバルト25%以下、ニオブ5〜15%、チタン2〜10%、アルミニウムおよびシリコンの少なくとも1種1%以下、炭素0.2〜2.0%、残部が鉄および不可避不純物でなる合金組成とすることにより、室温において1000MPa以上の強度と600℃において800MPa以上の強度を有するとともに、室温から600℃までの熱膨張係数が12x10−6/℃以下の低熱膨張耐熱合金を提供することができる。
【0048】
本発明の低熱膨張耐熱合金の製造方法としては、従来の鋳造法ではなく粉末冶金的手法を採用することが特に好ましく、これにより従来より行われている長時間の溶体化処理や時効処理を省くことができ、上記したような高い強度特性および低い熱膨張係数を有する低熱膨張耐熱合金を改善された製造効率で提供することができる。特に、上記の合金組成を有する結晶粒径が5μm以下、より好ましくは1μm以下の混合粉末を作成して、この混合粉末を非酸化性雰囲気中、900℃〜1300℃の焼結温度で焼結する場合においては、得られた合金の母相の結晶粒子径が微細になって上記した特性を有する低熱膨張耐熱合金を安定して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に基づく低熱膨張耐熱合金の0.2%耐力と温度の関係を示すグラフである。
【図2】本発明の実施例に基く低熱膨張耐熱合金のTEM写真の複写物である。
【図3】本発明の実施例に基く低熱膨張耐熱合金のX線回折チャートである。
Claims (10)
- 質量%で、ニッケル20〜50%、コバルト25%以下、ニオブ5〜15%、チタン2〜10%、アルミニウムおよびシリコンの少なくとも1種1%以下、炭素0.2〜2.0%、残部が鉄および不可避不純物でなる組成を有し、室温における強度が1000MPa以上で600℃における強度が800MPa以上であり、室温から600℃までの熱膨張係数が12x10−6/℃以下であることを特徴とする低熱膨張耐熱合金。
- 上記合金の平均結晶粒径は5μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の低熱膨張耐熱合金。
- 上記合金は、上記合金組成を構成する元素でなる金属間化合物及び炭化物の析出物を含むことを特徴とする請求項1あるいは2に記載の低熱膨張耐熱合金。
- 室温における強度が1000MPa以上で600℃における強度が800MPa以上であり、室温から600℃までの熱膨張係数が12x10 −6 /℃以下である低熱膨張耐熱合金の製造方法であって、質量%で、ニッケル20〜50%、コバルト25%以下、ニオブ5〜15%、チタン2〜10%、アルミニウムおよびシリコンの少なくとも1種1%以下、炭素0.2〜2.0%、残部が鉄および不可避不純物でなる組成となるようにメカニカルアロイング法もしくはメカニカルミリング法によって混合粉末を作製する工程と、前記混合粉末を非酸化性雰囲気中、900℃〜1300℃の焼結温度で焼結する工程とを具備することを特徴とする低熱膨張耐熱合金の製造方法。
- 上記混合粉末は、上記合金組成を構成する元素の少なくとも2種以上の合金粉末と残りの各単体元素の粉末を原料としてメカニカルアロイング法によって作製されることを特徴とする請求項4に記載の低熱膨張耐熱合金の製造方法。
- 上記合金粉末は、鉄−ニッケル−コバルト合金粉末であることを特徴とする請求項5に記載の低熱膨張耐熱合金の製造方法。
- 上記合金粉末は、チタン炭化物、ニオブ炭化物およびコバルト炭化物の少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項5に記載の低熱膨張耐熱合金の製造方法。
- 上記混合粉末は、放電プラズマ焼結法、ホットプレス焼結法、もしくは金属粉末射出焼結法によって焼結されることを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載の低熱膨張耐熱合金の製造方法。
- 上記混合粉末を焼結した後、得られた焼結体を焼結温度から不活性ガスを使用して20℃/分以上の冷却速度で冷却することを特徴とする請求項4〜8のいずれかに記載の低熱膨張耐熱合金の製造方法。
- 質量%で、ニッケル20〜50%、コバルト25%以下、ニオブ5〜15%、チタン2〜10%、アルミニウムおよびシリコンの少なくとも1種1%以下、炭素0.2〜2.0%、残部が鉄および不可避不純物でなる組成を有する結晶粒径が5μm以下の混合粉末を作製し、前記混合粉末を非酸化性雰囲気中、900℃〜1300℃の焼結温度で焼結することによって製造される低熱膨張耐熱合金。
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