定義
本明細書において、「D−キシロース及びD−キシルロース以外の炭素源」とは、D−キシロース及びD−キシルロース又はそれらのポリマー若しくはオリゴマー又は混合物(例えば、キシラン及びヘミセルロース)以外のキシリトールの生産のための炭素基質を意
味する。この炭素源は、D−グルコース、並びにD−グルコース含有シロップ及びD−グルコースと他の糖の混合物を含むことが好ましい。
本明細書において、「遺伝子」とは、タンパク質をコードし得る核酸配列、特にDNA配列を意味する。
本明細書において、「ベクター」とは、遺伝情報、特にDNAを宿主細胞に運搬することができるプラスミド又は任意のDNA配列を意味する。ベクターはさらに、ベクターにより形質転換した細胞の同定に使用するのに好適なマーカ又はリポータ、1種又は複数種の原核若しくは真核生物宿主におけるベクターの維持及び複製を可能にする複製起点も含有してよい。「プラスミド」は、ベクターであり、一般的には、少なくとも1つの宿主細胞中で維持され、自動的に複製する環状DNAである。
本明細書において、「発現ベクター」は、ベクターに類似しているが、宿主への形質転換後に、その中にクローン化された遺伝子又はコード核酸の発現を支持するベクターを意味する。クローン化した遺伝子又はコード核酸は通常、ベクター又はクローン化した遺伝子の組換え体構築物が提供し得るプロモータ配列などの特定の制御配列の制御下に置かれる(すなわち、該配列と作動可能に連結される)。発現制御配列は、ベクターが、原核又は真核生物宿主において作動可能に連結された遺伝子を発現するように設計されているかどうか、そしてエンハンサーエレメント(上流活性化配列)及び終結配列などの転写要素、並びに/又は翻訳開始及び終結部位を追加的に含有し得るかどうかによって変動し得る。
本明細書において、「宿主」とは、組換え体材料の受容体及び担体として使用される原核若しくは真核細胞を意味する。
本明細書において、「ペントース−リン酸経路の酸化分枝(Oxidative Branch)」とは、例えば、D−グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.49)グルコノラクトナーゼ(EC3.1.1.17)及び6−ホスホ−D−グルコン酸デヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.44)で触媒される反応などの酸化反応を触媒して、ヘキソース基質を利用してペントースリン酸を形成するペントース−リン酸分路の部分を含むことを意味する。ペントース−リン酸経路の「非酸化的」部分(これは、D−グルコースからリボースの正味形成も触媒する)は、トランスケトラーゼ(EC2.2.1.1)、リボース−5−リン酸イソメラーゼ(EC5.3.1.6)、D−リブロース−5−リン酸−3−エピメラーゼ(EC5.1.3.1)及びトランスアルドラーゼ(EC2.2.1.2)によって触媒される反応のような非酸化的異性化を特徴とする。Biological Chemistry,H.R.Mahler & E.H.Cordes,Harper & Row,publishers,New York,1966,pp.448−454を参照されたい。
本明細書において、「コード核酸」とは、核酸分子(好ましくはDNA)を意味する。コード核酸は、タンパク質をコードすることができ、これは、様々な供給源から調製することができる。こうした供給源として、ゲノムDNA、cDNA、合成DNA、及びこれらの組み合わせが含まれる。
本明細書において、「異種」とは、遺伝子又はコード配列が、遺伝子操作により細胞に導入されていることを意味すると理解される。これは、エピソーム又は染色体の形態で存在し得る。遺伝子又はコード配列は、それが導入される宿主細胞とは異なる供給源に由来するものでもよい。しかし、これは、それが導入される宿主細胞と同じ種に由来するものであってもよいが、その環境が天然ではないために、異種とみなされる。例えば、遺伝子
又はコード配列は、それが、その天然のプロモータではないプロモータの制御下にあり、その天然の位置とは異なる位置に導入されるため、異種と呼ばれる。宿主細胞は、異種遺伝子の導入前に遺伝子の内在性コピーを含有しても、又は内在性コピーを含有しなくてもよい。
発明の目的
本発明によれば、キシリトールの生産以外の目的への炭素の利用を低減又は排除するように、特定の微生物宿主の天然の代謝経路が操作される。
このようにして、そのような遺伝子組換え宿主株は、高収率で、キシリトールを1回の発酵工程で生産することができる。例えば、48時間の培養後の上清中のキシリトール力価は、15g/l超であり、好ましくは25g/l超、より好ましくは50、60、70、80、90又は100g/l超である。
本発明の実用的態様では、本発明の遺伝子組換え宿主はまた、D−キシロース及び/又はD−キシルロースだけではなく、D−グルコースなどの構造的に無関係な炭素源からもキシリトールを合成する能力によって特徴づけられる。
本発明の遺伝子組換え宿主は、合成されたキシリトールを培地中に分泌することもできるのが好ましい。
具体的には、例示的かつ好ましい実施形態において、本発明の遺伝子組換え宿主は、アラビトールが、キシリトール形成の中間体である経路によって特徴づけられる。
従って、本発明の組換え宿主株は、以下の遺伝子改変によって特徴づけられる:
(1)NAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼ(D−キシルロース形成)活性を有するタンパク質をコードする異種核酸が宿主細胞に導入され、これによって、D−アラビトールのD−キシルロースへの変換を提供すること;及び
(2)NADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードする異種核酸が宿主細胞に導入され、これによって、D−キシルロースのキシリトールへの変換を提供すること。
微生物の選択
本発明に好適な微生物又は宿主株は、グルコースからD−アラビトールを生産することができる。より詳細には、これらは、高浸透圧培地下でグルコースから相当量のD−アラビトールを生産することができる。
「高浸透圧培地」とは、本明細書において、10〜60%のD−グルコース、好ましくは約25%D−グルコースを含む培地を指すものとする。
「相当量のD−アラビトール」とは、少なくとも100g/LのD−アラビトールを意味する。特に、微生物又は宿主株は、微生物又は宿主株が、バッチ条件にて25%のD−グルコースを含む培地中で100g/LのD−アラビトールを生産するとき、相当量のD−アラビトールを生産するものとみなされる。
グルコースから相当量のD−アラビトールを生産することができる宿主株の例としては、好浸透圧性若しくは耐浸透圧性酵母、特に、以下の種:ピチア属(Pichia)、コダマエア属(Kodamaea)、カンジダ属(Candida)、ジゴアッカロマイセス属(Zygoaccharomyces)、デバリオマイセス属(Debaromyces)、メチニコビア属(Metschnikowia)及びハンゼヌラ属(Hanse
nula)に属するもの;又はD−アラビトール生産真菌、特に、以下の種:デンドロフィエラ属(Dendryphiella)及びシゾフィルム属(Schizophyllum)に属するもの、とりわけ、デンドロフィエラ・サリナ(Dendryphiella salina)及びスエヒロタケ(Schizophyllum commune)が挙げられる。
ピチア属の微生物の例としては、ピチア・オウメリ、ピチア・スチピチス、ピチア・ファリノサ(Pichia farinosa)、ピチア・ハプロフィラ(Pichia haplophila)が挙げられる。カンジダ属の微生物の例としては、カンジダ・ポリモルファ及びカンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)が挙げられる。ジゴサッカロマイセス属(Zygoaccharomyces)の微生物の例としては、ジゴサッカロマイセス・ルーキシィが挙げられる。他の例として、トルロプシス・カンジダ(Torulopsis candida)及びトルラスポラ・ハンセニィ(Torulaspora hansenii)が挙げられる。メチニコビア属の微生物の例としては、メチニコビア・パルチェリマ(Metschnikowia pulcherrima)、メチニコビア・レウカフィ(Metschnikowia reukaufii)、メチニコビア・ビクスピダタ(Metschnikowia bicuspidata)、メチニコビア・ルナタ(Metschnikowia lunata)及びメチニコビア・ゾベリィ(Metschnikowia zobellii)が挙げられる。具体的な株として、メチニコビア・パルチェリマ(Metschnikowia pulcherrima)ATCC 18406、メチニコビア・レウカフィATCC 18407、メチニコビア・ビクスピダタATCC 24179、メチニコビア・ルナタATCC 22033、メチニコビア・ソベリィ(Metschnikowia zobellii)ATCC 22302及びメチニコビア・パルチェリマ(Metschnikowia pulcherrima)FERM BP−7161を挙げることができる。これらの株は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)、住所:12301 Parklawn Drive,Rockville,Maryland 20852,United
States of Americaから入手することができる。メチニコビア・パルチェリマ(Metschnikowia pulcherrima)FERN BP−7161は、初め、生命工学工業技術研究所(National Institute of Bioscience and Human−Technology)、産業技術総合研究所(Agency of Industrial Science and Technology、Ministry of International Trade
and Industry)(郵便番号:305−8566、日本、茨城県つくば市東1丁目1−3)に1998年1月16日に、FERM P−16592の寄託番号で寄託されていたが、その後、ブタペスト条約(Budapest Treaty)に基づき、2000年5月15日付けで元の寄託から国際寄託に移され、FERM BP−7161の寄託番号で寄託されている。具体的態様では、微生物は、アクセッション番号FERM
BP−7161を有する。さらなる情報については、欧州特許第1065276号明細書を参照されたい。
微生物は、それがD−アラビトール生産能を向上させるために、及び/又はキシリトールの生産以外の目的でそれがD−アラビトールを使用する能力を低減するために、遺伝子操作することができる。
本発明のために、宿主株は、以下に挙げるその特殊な代謝特性により有利に選択される:
−宿主株は、特に、高浸透圧培地、例えば、10〜60%のD−グルコース、好ましくは25%のD−グルコースを含む培地の下で、前述のように、グルコースから相当量のD
−アラビトールを生産し得る株である(「通常の」培地は、一般に2〜3%のグルコースしか含有しない)
−宿主株は、唯一の炭素源としてD−アラビトールを消費しないことがある;
−その酸素還元バランスによって、対応するケトペントース/ペントースアルコール変換に必要な補助因子の生成を可能にする。
本発明の一実施形態では、好浸透圧性酵母ピチア・オウメリ(及びその突然変異誘導体)は、モデルとして、並びに好ましい宿主として使用されている。ピチア・オウメリは、最初に、塩漬けキュウリから単離され、ピクルス、皮、及び果実の発酵のために食品産業で一般に使用されている。
ピチア属、ジゴサッカロマイセス属、デバリオマイセス属及びハンゼヌラ属などの酵母種は、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)とは反対に、低水分活性環境で増殖することができることが当業者に知られている。これらの浸透圧耐性又は好浸透圧性酵母は、グリセロール、D−アラビトール、エリスリトール及びマンニトールなどの適合溶質を蓄積し、これらは、酵素を保護及び安定化し、これにより、浸透圧条件下での細胞機能を付与する。生産されるポリオールも酸化還元均衡において役割を果たす。
好ましい態様では、微生物は、ピチア・オウメリである。実際に、宿主株ピチア・オウメリの主な特徴は、グリセロール及びD−アラビトールを生産するジゴサッカロマイセス・ルーキシィとは対照的に、適合溶質としてD−アラビトールのみを生産することである。加えて、グルコースからD−アラビトールへの代謝経路は、ピチア・オウメリにおいてよく知られている。
ジゴサッカロマイセス・ルーキシィについて記載されている(J.M.INGRAM and W.A.WOOD, 1965,Journal of Bacteriology,Vol.89,N°5,1186−1194)ように、ピチア・オウメリにおける炭素フラックスは、ペントース−リン酸経路(PPP)の酸化部分を通って、D−グルコースをD−リブロース−5−Pに変換して、NADPHの2つの分子を同時に生産する。D−リブロース−5−Pは、脱リン酸化してD−リブロースになった後、D−アラビトールに還元される。ピチア・オウメリ宿主株では、ペントースリン酸経路(PPP)は、非常に活性があり、50%を超えることが判明している。
好ましい実施形態では、宿主細胞は、2012年3月7日に、パスツール国立微生物保存機関(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes[National Collection of Microorganism Cultures]of the Institut Pasteur)(CNCM)(25 rue du Docteur Roux, 75724 PARIS Cedex 15)に番号I−4605で寄託された変異体ピチア・オウメリである。
酸化還元反応及び酵素
補助因子NADH及びNADPHは、多数の生物学的機能に不可欠であり、いわゆる酸化還元反応において、1つの反応から別の反応への電子のキャリアとして作用する。NADPH/NADP+対は、NADH/NAD+対より還元された状態で維持されて、熱力学的駆動力を提供することがわかっているため、細胞は、2つのレドックス対NADH/NAD+及びNADPH/NADP+の代謝平衡を維持する必要がある。大部分が酸化型NAD+で見出されるNADHは、異化反応における主要な補助因子であり、この反応において、これは、栄養素からのエネルギーの酸化的放出に関与する。NADHとは対照的
に、NADPHは、同化反応において、又は酸化ストレスの間のみ再酸化される。
酸化還元反応を伴うあらゆる代謝工学的戦略は、これらの細胞の制約の下で機能しなければならない。これは、本発明の目的である遺伝子組換え株において達成されている。
本発明者により見出され、特に、「Contribution a l’etude du metabolisme des pentitols chez Pichia
ohmeri」(Sophie Huchette,University of Sciences and Technics of Lille,1992)と題する博士論文に記載されているように、ケトペントースの酸化還元に関与する反応は、2つの異なる酵素により触媒される。
従って、宿主株は、D−リブロースからD−アラビトールを形成して、D−キシルロースからキシロースを形成するNADPH特異的D−ケトペントース−オキシドレダクターゼとして定義される酵素を有する。宿主株はまた、D−リブロース及びD−キシルロースから、それぞれリビトール及びキシリトールを形成するNADH特異的D−ケトペントース−オキシドレダクターゼも有する。この酵素は、ピチア・スチピチス(XYL2)からの公知のNAD+特異的キシリトールデヒドロゲナーゼE.C1.1.1.9と密接に関係している。D−キシルロースとは対照的に、細胞内D−リブロースのみが入手可能であるため、宿主株は、D−リブロースからのD−アラビトールの細胞質形成によるNADPHの再酸化を用いて、NADPH/NADP+レドックス対を直接均衡させる。その後、受動拡散によりD−アラビトールをブロス中に分泌させる。
本発明者らは、細胞内D−キシルロースの不足が、たとえピチア・オウメリが、NADH若しくはNADPH特異的D−ケトペントース−オキシドレダクターゼによるこのポリオールを生産する酵素的ツールを全て備えていたとしても、宿主株によってキシリトールが生産されない主な理由であることを見出した。
実際、細胞質D−アラビトールをD−キシルロース及びNADHに変換することを可能にするNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼ(D−キシルロース形成)活性(E.C.1.1.1.11)を有するタンパク質をコードする遺伝子を野生型株ピチア・オウメリにクローン化することが選択された。
したがって、細胞内D−キシルロースは、遺伝子組換え株において入手可能となり、内因性NADH及びNADPH特異的D−ケトペントース−オキシドレダクターゼにより還元することができる。しかし、その株には、D−キシルロースをキシリトールに効率的に変換することができる内在性酵素がない。そのため、異種キシリトールデヒドロゲナーゼを導入するために、株を遺伝子操作する必要がある。
国際公開第94/10325号パンフレットには、キシリトールの生産を可能にすると共に、NADH/NAD+レドックス対を事前の代謝工程により生産されたNADHの酸化と均衡させるピチア・スチピチス(XYL2)由来のNAD+特異的キシリトール−デヒドロゲナーゼ(E.C1.1.1.9)をクローン化することが選択されている。しかし、前述したように、結果はそれほど納得できるものではない。
本発明者らは、NADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼを有する突然変異タンパク質をコードする遺伝子をクローン化することにより、D−キシルロースをキシリトールに変換して、D−リブロースからのD−アラビトールの内因性生産によって為されるように、NADPH/NADP+レドックス対を均衡させることを見出した。
D−アラビトールに対するNADPH特異的D−ケトペントース−オキシドレダクターゼの低親和性のために、ピチア・オウメリ野生型株は、細胞外D−アラビトールを消費しない。
遺伝子組換え株へのNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼ(D−キシルロース形成)活性の導入によって、ブロス中に生産されるD−アラビトールは、細胞質D−アラビトールと同様に、遺伝子組換え株により良好に消費され得る。
その結果、キシリトールは、細胞内及び細胞外D−アラビトールから同時に生産される。
その生産は、中間D−アラビトールの拝出を完全に回避するようにキシリトール経路拡張の効率を増強することによって、改善することができる。
従って、D−アラビトールと同じ生理学的作用によってD−グルコースからキシリトールだけが生産されることになる。この改善は、遺伝子修飾だけではなく、培養条件の改変の結果でもあると考えられる。
宿主株にクローン化しようとする2つの酵素活性の選択
これら2つの酵素活性の選択は、前述したように、それらの補助因子によって支持される。
第1の酵素は、D−アラビトールをD−キシルロースに酸化する。
2つのタイプのD−アラビトールデヒドロゲナーゼとしては、D−キシルロース形成(EC1.1.1.11)(D−アラビトールNAD+4−オキシドレダクターゼ)及びD−リブロース形成(EC1.1.1.250)が知られている。別に記載のない限り、本明細書で意図されるのは、D−キシルロース形成アラビトールデヒドロゲナーゼであり、本明細書においてアラビトールデヒドロゲナーゼと呼ぶ。D−リブロース形成デヒドロゲナーゼは、野生型酵母及び真菌に見出される。
D−キシルロース形成アラビトールデヒドロゲナーゼは、主として細菌において知られている。例えば、これらは、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)、特に、大腸菌、クレブシエラ・アエロゲネス(Klebsiella aerogenes)、アエロバクター・アエロゲネス(Aerobacter aerogenes)株PRL−R3、グルコノバクター・オキシダンスにおいて、さらにまた、ピチア・スチピチスでも同定されている。特に、数種の酵素、例えば、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)(#O52720)、ラルストニア・ソラナケアルム(#P58708)、エルシニア・ペスティス(Yersinia pestis)(#P58709)、アエロバクター・アエロゲネス(#L8BEF0)、大腸菌(#K3EX35、I2ZSJ5、W1BYD6、W1H8N7、E7U4R7)が、UniprotKBデータベースに掲載されている。
本発明の目的のために、大腸菌は、NAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼ(D−キシルロース形成)遺伝子の好ましい供給源である。より具体的には、そのアミノ酸配列は、配列番号2に開示されている。特に、配列番号1及び3は、大腸菌のNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼをコードする核酸を開示する。コード配列は、そのコドン特異性を考慮に入れることによって、ピチア・オウメリについて最適化されている。
さらに、ラルストニア・ソラナケアルムもまた、NAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼ(D−キシルロース形成)遺伝子の好ましい供給源である。より具体的には、そのアミノ酸配列は、配列番号43に開示されている。特に、配列番号42は、ラルストニア・ソラナケアルムのNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼをコードする核酸を開示する。コード配列は、そのコドン特異性を考慮に入れることによって、ピチア・オウメリについて最適化されている。
第2の酵素は、D−キシルロースをキシリトールに変換する。
酵母及び真菌の大部分は、内在性のキシリトールデヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.9)遺伝子を有するが、本発明の実施のためには、NADHからNADPHへのそれらの補助因子特異性の変化が必要である。実際に、本発明の重要な態様は、NADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼを使用するものである。さらに、この酵素を宿主に過剰発現させることが好ましい。
多数のキシリトールデヒドロゲナーゼが知られており、いくつかの科学論文では、どのようにして補助因子特異性をNADHからNADPHへと変化するかを教示している。Watanabe et al(J;Biol.Chem.,2005,280,10340−10345)は、修飾された補助因子特異性を備えるピチア・スチピチスの突然変異キシリトールデヒドロゲナーゼ、特に、三重変異体(D207A/I208R/F209S)及び四重変異体(D207A/I208R/F209S/N211R)を開示している。四重変異体のアミノ酸配列は、配列番号5に開示されている。NADPH補助因子特異性を備えたグルコノバクター・オキシダンス(D38S/M39R)のキシリトールデヒドロゲナーゼの二重変異体が、Ehrensberger et al(2006,Structure,14,567−575)に開示されている。二重変異体のアミノ酸配列は、配列番号8に開示されている。
NADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼをコードするピチア・スチピチスXYL2核酸配列の突然変異及びクローン化は、本発明者らによって調製されている。特に、配列番号4及び6は、ピチア・スチピチスの特異的NADPHキシリトールデヒドロゲナーゼをコードする核酸を開示する。
これ以外にも、本発明者らは、NADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼをコードするグルコノバクター・オキシダンス核酸配列の突然変異及びクローン化も実施した。特に、配列番号7及び9は、グルコノバクター・オキシダンスのNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼをコードする核酸を開示する。コード配列は、そのコドン特異性を考慮に入れることによって、ピチア・オウメリについて最適化されている。
発現カセット、ベクター及び組換え宿主細胞
特定の態様において、本発明は、配列番号1、3、7、9及び42からなる群から選択されるピチア・オウメリについて最適化されたコード配列を含む核酸に関する。
本発明はさらに、配列番号1、3、7、9及び42からなる群から選択される、ピチア・オウメリについて最適化されたコード配列を含む核酸を含む発現カセットに関する。
本発明はまた、配列番号4の核酸構築物及び前記核酸構築物を含む核酸にも関する。
さらに、本発明は、前記核酸又は発現カセットを含む組換えベクター、特に、発現ベクターに関する。一般に、発現カセットは、タンパク質中への遺伝子転写及び翻訳に必要な全ての要素を含む。特に、上記カセットは、プロモータ、任意選択でエンハンサー、転写
終結因子及び翻訳のための要素を含む。より具体的には、NADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼの発現を制御するために用いられるプロモータは、強力な発現を駆動するために選択される。実際に、この酵素は、宿主細胞に過剰発現させるのが好ましい。こうしたプロモータは、当技術分野では周知である。例えば、プロモータは、ピチア・オウメリリブロースレダクターゼプロモータ(poRR)又はピチア・オウメリホスホグリセリン酸キナーゼ(poPGK1)であってよい。
本発明は、NAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼをコードする核酸、及びNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼをコードする核酸を含む組換えベクター、特に、発現ベクターに関する。本発明はまた、NAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼをコードする核酸を含む組換えベクター、特に発現ベクターと、NADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼをコードする核酸を含む組換えベクター、特に発現ベクターとを含むキットにも関する。
前記NAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼ及びNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼは、上に開示した酵素から選択されることが好ましい。特に、前記NAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼは、配列番号2若しくは42のアミノ酸配列、又は1〜3のアミノ酸付加、置換若しくは欠失を有する配列を含むか、又はそれから構成される。とりわけ、前記NADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼは、配列番号5若しくは8のアミノ酸配列、又は1〜3のアミノ酸付加、置換若しくは欠失を有する配列を含むか、又はそれから構成される。
好ましいベクターは、プラスミドである。好適なプラスミドは、当業者には周知であり、例えば、実施例に具体的に開示されるものから選択することができる。
まず、好適なプロモータの制御下でNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼ及びNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を組換えベクター中にクローン化することによって、本発明の遺伝子組換え宿主を作製した後、形質転換によりD−アラビトール生産生物の宿主細胞に導入する。
本発明は、NAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼ(EC1.1.1.11)をコードする異種核酸配列と、NADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼをコードする異種核酸配列とを含む組換え又は遺伝子操作宿主細胞に関する。NAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼは、基質としてD−アラビトールを使用し、生産物としてD−キシルロースを生産する。NADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼは、基質としてD−キシルロースを使用し、キシリトールを生産する。NADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼ及びNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼをコードする配列は、エピソームであってもよいし、又は宿主細胞の染色体に組み込んでもよい。実際に、ベクターを用いた形質転換系によって遺伝子的に安定な形質転換体を構築し、これにより、所望のDNAを宿主染色体に組み込むことが好ましい。こうした組み込みは、細胞内にde novoで実施するか、又は染色体内へのDNA配列の組み込みを促進するDNA要素と一緒に、それ自体が宿主染色体に機能的に挿入されるベクターを用いた形質転換によって補助することができる。
組換え又は遺伝子操作宿主細胞は、NAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼをコードする配列のいくつかのコピー及び/又はNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼをコードする配列のいくつかのコピーを含むことができ、宿主細胞染色体に組み込むことが好ましい。特に、組換え又は遺伝子操作宿主細胞は、NAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼをコードする2つ、3つ若しくは4つの配列及び/又はNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼをコードする2つ、3つ若し
くは4つの配列を含むことができる。例えば、宿主細胞は、大腸菌由来の2つ又は3つのNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼ及び/又はラルストニア・ソラナケアルム由来の1つ又は2つのNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼ、より具体的には、大腸菌由来の2つ又は3つのNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼ及び/又はラルストニア・ソラナケアルム由来の1つのNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼを含んでもよい。NAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼは、同じ生物由来又は異なる生物由来のいずれであってもよい。NADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼは、同じ生物由来又は異なる生物由来のいずれであってもよい。例えば、宿主細胞は、ピチア・スチピチス由来の1つ、2つ若しくは3つのNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼ及び/又はグルコノバクター・オキシダンス由来の1つ、2つ若しくは3つのNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼ、より具体的には、ピチア・スチピチス由来の1つのNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼ及び/又はグルコノバクター・オキシダンス由来の3つのNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼを含んでもよい。
本発明の具体的態様では、組換え又は遺伝子操作宿主細胞は、以下:
−2つのNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼと、2つのNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼ;又は
−大腸菌由来の2つのNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼと、2つのNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼ(1つはピチア・スチピチス由来で、他方はグルコノバクター・オキシダンス由来);又は
−2つのNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼと、3つのNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼ;又は
−大腸菌由来の2つのNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼと、3つのNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼ(1つはピチア・スチピチス由来で、2つはグルコノバクター・オキシダンス由来);又は
−3つのNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼと、3つのNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼ;又は
−3つのNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼ(2つは、大腸菌由来で、1つは、ラルストニア・ソラナケアルム由来)と、3つのNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼ(1つはピチア・スチピチス由来で、2つはグルコノバクター・オキシダンス由来);又は
−4つのNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼと、4つのNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼ;又は
−4つのNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼ(3つは、大腸菌由来で、1つは、ラルストニア・ソラナケアルム由来)と、4つのNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼ(1つはピチア・スチピチス由来で、3つはグルコノバクター・オキシダンス由来)
を含む、ピチア・オウメリ株である。
宿主細胞は、上に詳述した微生物から選択される。好ましい実施形態では、宿主細胞は、ピチア・オウメリである。出発宿主細胞は、番号I−4605でCNCMに寄託されている変異体ピチア・オウメリであることが好ましい。
本発明の特定の態様において、宿主細胞は、CNCMに寄託されている株I−4982、I−4960及びI−4981から選択される株である。
本発明は、培地中で組換え又は遺伝子操作宿主細胞を培養する工程と、生産されたキシリトールを回収する工程とを含む、キシリトールの生産方法に関する。培地は、好都合な炭素源を微生物に供給するのが好ましい。炭素源は、D−グルコース、及び様々なD−グ
ルコース含有シロップ、並びに他の糖とD−グルコースの混合物を含むことが好ましい。この方法は、キシリトールを精製する工程をさらに含んでもよい。
本発明は、キシリトールを生産するための本明細書に開示する組換え又は遺伝子操作宿主細胞の使用に関する。
こうした遺伝子組換え株により生産されたキシリトールは、当技術分野で公知の任意の技術により本発明の宿主の培地から精製することができる。例えば、本明細書に参照により組み込まれる米国特許第5,081,026号明細書は、酵母培地からキシリトールのクロマトグラフ分離を記載している。従って、発酵工程から、米国特許第5,081,026号明細書に記載のクロマトグラフ工程を用いて、キシリトールを培地から精製した後、結晶化に付することができる。
本発明の他の特徴及び利点は、以下の実施例を読めば明らかであろう。しかし、これらは、例示として記載されているに過ぎず、限定的ではない。
実施例1.遺伝子操作のための好ましい宿主としてのピチア・オウメリ株の選択
最適な宿主株として、ピチア・オウメリは、
−高浸透圧培地、例えば、10〜60%のD−グルコース、好ましくは25%のD−グルコースを含む培地の下で、グルコースから相当量のアラビトールの生産株である(「通常の」培地は、一般に2〜3%のグルコースしか含まない)
−必要な補助因子の生成を可能にする酸化還元バランスを有する。
その性能の例示として、以下の表に、ピチア・オウメリのアラビトール代謝経路に関与する酵素活性(Sophie HUCHETTE Thesis,1992)を示す。
ヘキソース一リン酸経路:グルコース−6−PからD−リブロース−5−P及びD−キシルロース−5−Pへ
ヘキソース一リン酸経路(HMP)とも称するPPPの酸化部分は、NADPH生成経路である。2つのNADP+依存性酵素、すなわち、グルコース−6−Pデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.49)及び6−P−グルコン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.44)は、1モルのD−リブロース−5−Pにつき1モルのグルコース−6−Pの酸化に参加して、2モルのNADPHを生成する。
下記の酵素の動態パラメータを決定した:D−リブロース−5−P3−エピメラーゼ(E.C5.1.3.1)、D−リブロース−5−Pケト−イソメラーゼ(E.C.5.3.1.6)、トランスケトラーゼ(E.C.2.2.1.1)及び酸性ホスファターゼ(E.C.3.1.3.2)。
in vivoで、D−リブロース−5−Pのエピメリ化から合成されたD−キシルロース−5−Pは、ケトール基転移によりPPPの非酸化部分に効率的に入る。その結果、D−キシルロース−5−Pは、D−キシロースをへの脱リン酸化のために利用できなくなる。
NADH及びNADPH特異的D−ケトペントース−オキシドレダクターゼ
D−リブロース及びD−キシルロースは、D−リブロース−5−P及びD−キシルロース−5−Pの脱リン酸化により生産される。
ミカエリス・メンテ定数は、各基質に対するNADH及びNADPH−D−ケトペントース−オキシドレダクターゼの親和性並びに対応する最大速度を明らかにする。
NADH特異的D−ケトペントース−オキシドレダクターゼは、D−リブロース及びD−キシロースからそれぞれリビトール及びキシリトールを形成し、D−リブロースよりD−キシロースに対して高い親和性を示す。逆反応は、キシリトール及びリブロースに対する良好な親和性を示し、これは、これら2つのポリオールでの宿主株の良好な増殖を説明している。
NADPH特異的D−ケトペントース−オキシドレダクターゼは、D−リブロースからD−アラビトールを、D−キシロースからキシリトールを形成し、D−キシロースよりD−リブロースに対して高い親和性を示す。逆反応は、D−アラビトールに対する非常に低い親和性を示し、これは、このポリオールでの宿主株の非増殖を説明している。
宿主株からの2つのケトペントース−オキシドレダクターゼは、Ingram and
Wood,1965(Journal of Bacteriology,vol.89,n°5,1186−1194)により、サッカロマイセス・ルキシィ(Saccharomyces rouxii)に記載されている以前の酵素とは異なるものとして特性決定された。実際に、サッカロマイセス・ルキシィでは、D−リブロースとNADHに正反応は検出されず、D−アラビトールとNADPHに逆反応が検出された。
ホールデンの関係は、in vivoでの酵素の速度論的挙動を予測する。
2つの酵素は、逆反応(ペンチトール還元)よりも正反応(D−ケトペントース酸化)を好む。
宿主株におけるPPPは、極めて効率的であり、1モルの消費グルコースから2モルのNADPHが生産される。その結果、NADPHは、同化反応及び維持反応の両方について過剰に利用可能となる。宿主株は、NADPH/NADP+レドックス対を均衡させるために、D−リブロースからD−アラビトールを、又はD−キシロースからキシリトールを生産するに違いない。
NADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼに対するNADP+の阻害作用がin
vitroで判明している。この活性は、NADP+を過剰に添加すると、80%少ない。たとえこの濃度が細胞内NADP+濃度と適合性でなくても、この結果は、NADPH/NADP+レドックス対の均衡へのNADPH特異的D−ケトペントース−オキシドレダクターゼの役割のある程度の概観をもたらすものである。
PPPの非酸化部分にD−キシルロース−5−Pが入ることによって、D−キシルロースが利用可能ではないとき、宿主株は、D−リブロースからD−アラビトールしか生産しない。
D−アラビトールの生産とNADPH/NADP+レドックス対の均衡との関係は、D
−アラビトール生産に対するグルコース−6−Pデヒドロゲナーゼの過剰発現の影響を評価することにより、宿主株において証明されている。従って、得られた株は、宿主株と比較して、1.5倍高いG6PDH活性を保有し、10%多いD−アラビトールを生産する(仏国特許第2772788号明細書)。
実施例2.ピチア・オウメリコドン使用頻度
ピチア・オウメリのコドン使用頻度は、入手可能なDNA並びに5つのピチア・オウメリ遺伝子:トランスケトラーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ(仏国特許第2772788号)、リブロースレダクターゼ、βイソプロピルリンゴ酸デヒドロゲナーゼLEU2(Piredda and Gaillardin,Yeast,vol.10:1601−1612(1994)及びオロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ−URA3(Piredda and Gaillardin,1994,前掲)の対応するアミノ酸配列から決定した。
全ての個別の遺伝子を、単一のアミノ酸をコードするヌクレオチドトリプレットに区分した。5つの遺伝子は、合計2091のコドンから構成された。
各アミノ酸について、5つの遺伝子に存在する全てのコドンの数を計数し、2091で割ってから、1000を掛けた。このようにして、1000コドン中の特定のコドンの頻度を推定した。
ピチア・オウメリの暫定コドン使用頻度を表7に記載する。
ピチア・スチピチス由来のキシリトールデヒドロゲナーゼを除き、ピチア・オウメリに発現された異種遺伝子は全て、この表及びhttp://genomes.urv.es/OPTIMIZER/から入手したオプティマイザー(Optimizer)プログラムを用いて、コドン最適化した。
酵素をコードする配列それぞれの5’及び3’末端に、制限酵素のための認識部位を手で付加した後、得られた配列を遺伝子合成のために提出した。
実施例3.大腸菌NAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼ(D−キシルロース形成)遺伝子のクローン化
配列番号1の登録配列に従って、大腸菌由来のNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼaltDをコードするDNA断片を化学的に合成した(GeneArt(登録商標)Gene Synthesis,Life Technologies,Regensburg,Germany)。
altD遺伝子をコードする配列AF378082.1(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/AF378082から入手)のヌクレオチド1441〜2808を鋳型として使用した後、http://genomes.urv.es/OPTIMIZER/から入手したオプティマイザープログラムを用いて、実施例2の表7に記載のピチア・オウメリATCC20209での使用のためのコドン最適化に付した。
さらなるクローン化を促進するために、得られた配列の5’及び3’末端に、制限酵素AscI(GGCGCGCC)及びSphI(GCATGC)の認識部位をコードするヌクレオチドを付加した。
加えて、酵母のコザック(Kozak)様配列における3位のアデノシンを構成するために、開始ATGの前にアデノシントリプレットを含有させた。
その後、最終配列(配列番号1)を合成のために提出した(GeneArt,Rege
nsburg,Germany)。
大腸菌由来のNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼをコードする合成DNA断片をpMK−RQ由来のベクターに5μgの凍結乾燥プラスミドDNAとして送達した(12ABYWMP、図1)。
さらなるサブクローン化のために、AscI及びsphI酵素による制限切断により、遺伝子を放出させた(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)。
実施例4.ピチア・スチピチスNADH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼの突然変異誘発及びクローン化
ピチア・スチピチスNADH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼ遺伝子のクローン化
キシリトールデヒドロゲナーゼをコードする、酵母(ピチア・スチピチス)遺伝子の既知ヌクレオチド配列(Koetter et al.,Curr.Genet.18:493−500(1990))を、仏国特許第2765589号明細書の教示に従って、プラスミドベクターlig7.78にクローン化した(本特許の実施例4及び図7を参照されたい)。ベクターの制限マップを図2aに示す。
ピチア・スチピチスNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼ遺伝子の突然変異及びクローン化
配列番号4の配列に従って、ピチア・スチピチス由来のNAPDH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼXYL2をコードするDNA断片を化学的に合成した(GeneArt(登録商標)Gene Synthesis,Life Technologies,Regensburg,Germany)。
XYL2遺伝子をコードする配列X55392.1(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/X55392.1から入手)のヌクレオチド319〜1410を鋳型として使用した。
Watanabeら(J;Biol.Chem.,2005,280,10340−10345)の論文に従い、公開された4つのアミノ酸突然変異:D207A/I208R/F209S/N211R(番号付与は、http://www.uniprot.org/uniprot/P22144から入手したp22144タンパク質配列に基づく)を導入することによって、キシリトールデヒドロゲナーゼの補助因子優先傾向をNADHからNADPHへと変化することができた。
従って、D207、I208、F209及びN211をコードするコドンを、対応する配列においてそれぞれGCT、AGA、TCA及びAGAにより手作業で置換した。
加えて、さらなるクローン化を促進するために、制限酵素HindIII(AAGCTT)及びSacII(CCGCGG)の認識部位をコードするヌクレオチドをそれぞれ5’及び3’末端に手作業で含ませた。
さらに、酵母のコザック(Kozak)様配列において3位のアデノシンを構成するために、開始ATGの前にアデノシントリプレットを含ませた。最終配列(配列番号4)を合成のために提出した(GeneArt,Regensburg,Germany)。
ピチア・スチピチス由来のNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼをコードする合成DNA断片をpMA−T由来のベクターに5μgの凍結乾燥プラスミドDNAとし
て送達した(12AALQTP、図2b)。
実施例5.グルコノバクター・オキシダンスNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼの突然変異及びクローン化
配列番号7の登録配列に従って、グルコノバクター・オキシダンス由来のNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼXdhをコードするDNA断片を化学的に合成した(GeneArt(登録商標)Gene Synthesis,Life Technologies,Regensburg,Germany)。
Xdh遺伝子をコードする配列AB091690.1(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/AB091690.1から入手)のヌクレオチド1063〜1851を鋳型として使用した後、http://genomes.urv.es/OPTIMIZER/から入手したオプティマイザープログラムを用いて、表7(実施例2)に記載のピチア・オウメリATCC20209での使用のためのコドン最適化に付した。
Ehrensbergerら(Structure,2006,14,567−575)による論文に基づき、公開された2つのアミノ酸突然変異:D38S/M39R(番号付与は、http://www.uniprot.org/uniprot/Q8GR61から入手したQ8GR61タンパク質配列に基づく)を導入することによって、上記酵素の補助因子特異性をNADHからNADPHへと変化することができた。
このように、D38及びM39をコードするコドンを、対応する配列においてTCT及びAGAにより手作業でそれぞれ置換した。加えて、さらなるクローン化を可能にするために、制限酵素AscI(GGCGCGCC)及びSphI(GCATGC)の認識部位をコードするヌクレオチドを、それぞれ5’及び3’末端に手作業で含ませた。
さらに、酵母のコザック(Kozak)様配列における3位のアデノシンを構成するために、開始ATGの前にアデノシントリプレットを含有させた。最終配列(配列番号7)を合成のために提出した(GeneArt,Regensburg,Germany)。
グルコノバクター・オキシダンス由来のNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼをコードする合成DNA断片をpMA−T由来のベクターに5μgの凍結乾燥プラスミドDNAとして送達した(13AAYSYP、図3)。さらなるサブクローン化のために、AscI及びsphI酵素による制限切断により、遺伝子を放出させた(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)。
実施例6.poURA3選択マーカを用いた異種遺伝子発現のためのピチア・オウメリベクターの構築
置換可能な以下:
−プロモータ、
−オープンリーディング、及び
−ターミネータエレメント
を含むベクターのクローン化を、3つの個別の断片の2回の連続的オーバーラップPCRにより実施した(図4)。
組換えピチア・オウメリ株におけるタガトース3−エピメラーゼ遺伝子のクローン化及び過剰発現を試験するために、ベクターは初め、発現モデルとして計画した。
以下に説明するように、タガトース3−エピメラーゼ遺伝子は、特定のAscI−Sp
hI制限部位カセットにクローン化されており、これらの同じ挿入部位を用いることにより、目的とするいずれの遺伝子のクローン化も可能になる。
クローン化は、以下の方法により構想した。
第1PCR(PCR1)において、SpeI及びAscI部位(プライマー配列に下線で示す)によりフランキングされるピチア・オウメリの長さ490bpのリブロースレダクターゼプロモータ断片を以下:
−プライマーEV2960:
及び
−プライマーEV2961:
を用いて増幅した。
加えて、逆プライマーEV2961の5’末端に、タガトース3−エピメラーゼ遺伝子の5’末端を呈示する長さ13ヌクレオチドの断片を付加した。
この断片は、AscI部位の8ヌクレオチド及びこれに続くリブロースレダクターゼプロモータの3’末端の10ヌクレオチドと一緒に、PCR1の断片を後述するPCR2の断片と融合するためのオーバーラップとして必要であった。ピチア・オウメリATCC20209のゲノムDNAを鋳型として使用した。
この目的のために、新しく条斑として生成されたピチア・オウメリコロニーを30μlの0.2%SDSに再懸濁させ、95℃で4分間加熱した。最高速度の遠心分離の後、0.5μlの上清をPCRのために使用した。
適切な1×バッファー中の0.02U/μlのiProof(商標)ポリメラーゼ(BIO−RAD,Hercules,California)と共に200μMの各dNTP及び0.5μMの各プライマーからなる反応混合物中で鋳型を増幅した。
PCRは、98℃で30秒の最初の変性工程に続いて、98℃で10秒/50℃で20秒/72℃で15秒を25サイクルの後、72℃で10分の最終伸長工程により実施した。PCR産物を1%アガロースゲル上で分離して、抽出した後、Zymoclean(商標)Gel DNA Recovery Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いて精製した。
第2PCR(PCR2)では、AscI及びSphI部位(プライマー配列に下線で示す)によりフランキングされるシュードモナス・チコリィST24のタガトース−3−エピメラーゼの長さ911bpの断片を以下:
−プライマーEV2962:
及び
−プライマーEV2963:
を用いて増幅した。
プライマーEV2962の5’末端は、リブロースレダクターゼプロモータの3’を呈示する長さ9ヌクレオチドの断片を含む。
この断片を、AscI部位の8ヌクレオチド及びこれに続くタガトース3−エピメラーゼオープンリーディングフレームの12ヌクレオチドと一緒に、PCR2産物を前述したPCR1産物と融合するためのオーバーラップPCRのために使用した。
加えて、逆プライマーEV2963の5’末端は、ピチア・オウメリのリブロースレダクターゼターミネータの5’末端を呈示する長さ12ヌクレオチドの断片を含む。
この断片は、SphI部位の6ヌクレオチド及びこれに続くタガトース3−エピメラーゼオープンリーディングフレームの3’末端の12ヌクレオチドと一緒に、PCR2を後述するPCR3のPCR断片と融合するためのオーバーラップとして必要である。
シュードモナス・チコリィST24のタガトース−3−エピメラーゼ遺伝子の合成コピーを含むベクター12AAMCJP(図5)(GeneArt,Regensburg,Germany)の鋳型25ngを使用した(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/AB000361からのAB000361.1のヌクレオチド719〜1591)−配列番号11。
適切な1×バッファー中の0.02U/μlのiProof(商標)ポリメラーゼ(BIO−RAD,Hercules,California)と共に200μMの各dNTP及び0.5μMの各プライマーからなる反応混合物中で鋳型を増幅した。
PCRは、98℃で30秒の最初の変性工程に続いて、98℃で10秒/48℃で20秒/72℃で30秒を25サイクルの後、72℃で10分の最終伸長工程により実施した。
第3PCR(PCR3)では、SphI及びSacI部位(プライマー配列に下線で示す)によりフランキングされるピチア・オウメリのリブロースレダクターゼターミネータの長さ380bp断片を以下:
−プライマーEV2964
及び
−プライマーEV2965
を用いて増幅した。
プライマーEV2964の5’末端は、タガトース3−エピメラーゼオープンリーディングフレームの3’末端の長さ12ヌクレオチド断片を含有し、この断片を、SphI部位の6ヌクレオチド及びこれに続くピチア・オウメリのリブロースレダクターゼターミネ
ータの12ヌクレオチドと一緒に、PCR3と前述のPCR2の融合のために使用した。
ピチア・オウメリATCC20209のゲノムDNAを鋳型として使用した。最高速度の遠心分離の後、0.5μlの上清をPCRに使用した。この目的のために、新しく条斑として生成されたピチア・オウメリコロニーを30μlの0.2%SDSに再懸濁させ、95℃で4分間加熱した。
適切な1×バッファー中の200μMの各dNTP、0.5μMの各プライマー及び0.02U/μlのiProof(商標)ポリメラーゼ(BIO−RAD,Hercules,California)からなる反応混合物中で鋳型を増幅した。
PCRは、98℃で30秒の最初の変性工程に続いて、98℃で10秒/50℃で20秒/72℃で15秒を25サイクルの後、72℃で10分の最終伸長工程により実施した。PCR産物を1%アガロースゲル上で分離して、抽出した後、Zymoclean(商標)Gel DNA Recovery Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いて精製した。PCR産物を1%アガロースゲル上で分離して、抽出した後、Zymoclean(商標)Gel
DNA Recovery Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いて精製した。
3つの個別のPCR断片の融合は、次のように実施した:PCR1及びPCR2のゲル精製産物の各々50ngを、EV2960及びEV2963を用いたPCR反応での鋳型として使用した。
前述したプライマー設計から得られる2つの断片における長さ30ヌクレオチドの相同セグメントを融合反応におけるオーバーラップとして使用した。
このようにして、SpeI及びAscI部位によりフランキングされるピチア・オウメリのリブロースレダクターゼからなる長さ1.4kbの断片をシュードモナス・チコリィST24のタガトース−3−エピメラーゼのオープンリーディングフレームに融合させた。
適切な1×バッファー中の200μMの各dNTP、0.5μMの各プライマー及び0.02U/μlのiProof(商標)ポリメラーゼ(BIO−RAD,Hercules,California)からなる反応混合物中で鋳型を増幅した。
PCRは、98℃で30秒の最初の変性工程に続いて、98℃で10秒/62℃で20秒/72℃で45秒を30サイクルの後、72℃で10分の最終伸長工程により実施した。PCR産物を1%アガロースゲル上で分離して、抽出した後、Zymoclean(商標)Gel DNA Recovery Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いて精製した。
2回目のオーバーラップPCRで、精製断片をPCR3の生産物と融合させた。40ngの各断片を鋳型として使用して、EV2960及びEV2965で増幅した。
前述したプライマー設計から得られる2つの断片中の長さ30ヌクレオチドの相同セグメントを融合反応におけるオーバーラップとして使用した。
このようにして、SpeI及びAscIによりフランキングされるピチア・オウメリのリブロースレダクターゼプロモータと、AscI及びSphI部位によりフランキングさ
れるシュードモナス・チコリィST24のタガトース−3−エピメラーゼのオープンリーディングフレームとから構成される長さ1.8kbの断片をピチア・オウメリのリブロースレダクターゼターミネータと融合させた。
適切な1×バッファー中の200μMの各dNTP、0.5μMの各プライマー及び0.02U/μlのiProof(商標)ポリメラーゼ(BIO−RAD,Hercules,California)からなる反応混合物中で鋳型を増幅した。
PCRは、98℃で30秒の最初の変性工程に続いて、98℃で10秒/65℃で20秒/72℃で55秒を30サイクルの後、72℃で10分の最終伸長工程により実施した。PCR産物をアガロースゲル上で分離して、抽出した後、Zymoclean(商標)Gel DNA Recovery Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いて精製した。
リブロースレダクターゼプロモータ及びターミネータによりフランキングされるシュードモナス・チコリィST24のタガトース−3−エピメラーゼの長さ1.7kbの断片からなる最終PCR産物を制限酵素SpeI及びSacII(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)で消化し、ゲル精製した後、T4 DNAリガーゼ(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)を用いて、lig7.78ベクターバックボーンの長さ9.8kbの単離SpeI/SacII断片と、16℃で一晩連結させた(図6)。
ライゲーション混合物によるXL10 Goldウルトラコンピテントセル(Agilent Technologies,Santa Clara,California)の形質転換後、Zyppy(商標)Plasmid Miniprep Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いて、プラスミドDNAを単離した。精製したプラスミドDNAは、制限消化及びシーケンシング(Microsynth,Balgach,Switzerland)によるさらなる特性決定のために使用した。
新たにクローン化した発現プラスミドpEVE2523(図7)は、細菌(大腸菌)複製起点及びアンピシリン耐性遺伝子、酵素(ピチア・オウメリ)自己複製配列、並びに酵母での選択のためのpoURA3(ピチア・オウメリ)遺伝子から構成されるシャトル大腸菌−ピチア・オウメリベクターである。
さらに、これは、シュードモナス・チコリィのタガトース−3−エピメラーゼのオープンリーディングフレーム(AscI及びSphI制限により交換可能)をフランキングする交換可能なピチア・オウメリリブロースレダクターゼプロモータエレメント(SpeI及びAscI制限により)並びにターミネータエレメント(SphI及びSacIIを介して)も含む。
実施例7.poLEU2選択マーカを用いた異種遺伝子発現のためのピチア・オウメリベクターの構築
第2ピチア・オウメリ発現ベクターの構築のために、実施例6に記載したプラスミドpEVE2523の発現カセット(図7)をピチア・オウメリpoLEU2選択マーカを含むベクターにクローン化した(図6)。
SpeI及びSacIIで切断したベクターpEVE2523(図7)の平滑化1.7kb断片を挿入片として使用した。Blunting Enzyme Mix(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)を用
いて、室温で15分間平滑化を実施した後、酵素の熱不活性化を70℃で10分間実施した。
ベクターバックボーンは、SalI(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)で線状化したpoARSベクター(plig3−仏国特許第2772788号明細書)から取得して、平滑化した後、アンタークティックホスファターゼ(Antarctic phosphatase)(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)を用いて、37℃で1時間脱リン酸化した。Zymoclean(商標)Gel DNA Recovery Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いてゲル精製した挿入片及びベクターバックボーンを、T4DNAリガーゼ(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)を用いて室温で1時間にわたり連結させた。
ライゲーション混合物によるXL10 Goldウルトラコンピテントセル(Agilent Technologies,Santa Clara,California)の形質転換後、Zyppy(商標)Plasmid Miniprep Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いて、プラスミドDNAを単離した後、これを制限消化及びシーケンシング(Microsynth,Balgach,Switzerland)によるさらなる特性決定のために使用した。
新たにクローン化した発現プラスミドpEVE2560(図8)は、細菌(大腸菌)複製起点及びアンピシリン耐性遺伝子、酵素(ピチア・オウメリ)自己複製配列、並びに酵母での選択のためのpoLEU2(ピチア・オウメリ)遺伝子を含むシャトル大腸菌−ピチア・オウメリベクターである。
さらに、ピチア・オウメリリブロースレダクターゼプロモータ及びターミネータによりフランキングされるシュードモナス・チコリィのタガトース−3−エピメラーゼのオープンリーディングフレームは、AscI及びSphI制限により交換可能である。
実施例8.グルコノバクター・オキシダンスNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼの過剰発現のためのピチア・オウメリベクターの構築
グルコノバクター・オキシダンスNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼの過剰発現のためのピチア・オウメリベクターを構築した。
発現ベクターにクローン化するために、AscI及びSphI制限部位(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)で切断することによって、グルコノバクター・オキシダンスNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼをコードするDNA断片をベクター13AAYSYP(図3)から放出させた。
Zymoclean(商標)Gel DNA Recovery Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いて、803bpの断片をゲル精製した後、T4DNAリガーゼ(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)を用いて、pEVE2523(図7)の9.8kb AscI/SphI消化及びゲル精製ベクターバックボーンに室温で2時間連結させた(図9)。
ライゲーション混合物によるXL10 Goldウルトラコンピテントセル(Agil
ent Technologies,Santa Clara,California)の形質転換後、Zyppy(商標)Plasmid Miniprep Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いて、プラスミドDNAを単離した後、これを制限消化及びシーケンシング(Microsynth,Balgach,Switzerland)によってさらに特性決定した。
得られたプラスミドpEVE3284(図10)は、ピチア・オウメリのリブロースレダクターゼプロモータ及びターミネータによりフランキングされるグルコノバクター・オキシダンスのコドン最適化NADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼと、poURA3選択マーカを含む。
実施例9.ピチア・スチピチスNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼの過剰発現のためのピチア・オウメリベクターの構築
発現ベクターへのサブクローン化のために、ピチア・スチピチス由来のNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼをコードするDNA断片をAscI及びSphI制限部位とフランキングさせなければならなかった。
この目的のために、以下:
−EV3101プライマー
AscI部位(下線部)を含む
と、
−EV3102プライマー
SphI(下線部)を含む
を、30ngのベクター12AALQTP(図2b)とのPCR反応に、鋳型として使用した。
適切な1×バッファー中の0.02U/μlのiProof(商標)ポリメラーゼ(BIO−RAD,Hercules,California)と共に200μMの各dNTP及び0.5μMの各プライマーからなる反応混合物中で鋳型を増幅した。
PCRは、98℃で30秒の最初の変性工程に続いて、98℃で10秒/55℃で20秒/72℃で30秒を25サイクルの後、72℃で10分の最終伸長工程により実施した。
1.1kbのPCR産物を1%アガロースゲル上で分離して、抽出した後、Zymoclean(商標)Gel DNA Recovery Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いて精製してから、AscI及びSphI(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)で制限消化した。DNA Clean & Concentrator(商標)−5 Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いたカラム精製の後、これを、T4DNAリガーゼ(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)を用いて、pEVE2523(図7)の10.6kb Asc
I/SphI消化及びゲル精製ベクターバックボーン、並びにpEVE2560(図8)の11.8kb AscI/SphI消化及びゲル精製ベクターバックボーンに室温で2時間連結させた(図11)。
ライゲーション混合物によるXL10 Goldウルトラコンピテントセル(Agilent Technologies,Santa Clara,California)の形質転換後、プラスミドDNAを単離した後、これを制限消化及びシーケンシング(Microsynth,Balgach,Switzerland)によってさらに特性決定した。
得られたプラスミドpEVE2562及びpEVE2564(図12)は、ピチア・オウメリのリブロースレダクターゼプロモータ及びターミネータによりフランキングされるピチア・スチピチスのコドン最適化NADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼと、poURA3又はpoLEU2選択マーカのいずれかをそれぞれ含む。
実施例10.ピチア・スチピチスNADH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼの過剰発現のためのピチア・オウメリベクターの構築
発現ベクターへのサブクローン化のために、ピチア・スチピチス由来のNADH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼをコードするDNA断片をAscI及びSphI制限部位とフランキングさせなければならなかった。
この目的のために、以下:
−AscI部位(下線部)を含むEV3101
と、
−SphI(下線部)を含むEV3102
を鋳型として30ngのベクターlig7.78(図2a)とのPCR反応に使用した。
適切な1×バッファー中の0.02U/μlのiProof(商標)ポリメラーゼ(BIO−RAD,Hercules,California)と共に200μMの各dNTP及び0.5μMの各プライマーからなる反応混合物中で鋳型を増幅した。
PCRは、98℃で30秒の最初の変性工程に続いて、98℃で10秒/55℃で20秒/72℃で30秒を25サイクルの後、72℃で10分の最終伸長工程により実施した。
1.1kbのPCR産物を1%アガロースゲル上で分離して、抽出した後、Zymoclean(商標)Gel DNA Recovery Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いて精製してから、AscI及びSphI(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)で制限消化した。
DNA Clean & Concentrator(商標)−5 Kit(Zymo
Research Corporation,Irvine,California)を用いたカラム精製の後、これを、T4DNAリガーゼ(New England Bi
olabs,Ipswich,Massachusetts)を用いて、pEVE2560(図8)の10.5kb AscI/SphI消化及びゲル精製ベクターバックボーンに室温で2時間連結させた(図13)。
ライゲーション混合物によるXL10 Goldウルトラコンピテントセル(Agilent Technologies,Santa Clara,California)の形質転換後、プラスミドDNAを単離した後、これを制限消化及びシーケンシング(Microsynth,Balgach,Switzerland)によってさらに特性決定した。
得られたプラスミドpEVE2563(図14)は、ピチア・オウメリのリブロースレダクターゼプロモータ及びターミネータによりフランキングされるピチア・スチピチスのコドン最適化NADH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼと、poLEU2選択マーカを含む。
実施例11.大腸菌NAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼの過剰発現のためのピチア・オウメリベクターの構築
大腸菌NAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼの過剰発現のためのピチア・オウメリベクターを構築した。
発現ベクターへのクローン化のために、AscI及びSphI制限酵素(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)で切断することによって、コドン最適化大腸菌NAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼをコードするDNA断片をベクター12ABYWMP(図1)から放出させた。
Zymoclean(商標)Gel DNA Recovery Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いて、1.4kbの断片をゲル精製した後、T4DNAリガーゼ(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)を用いて、pEVE2523(図7)の9.8kb AscI/SphI消化及びゲル精製ベクターバックボーンに室温で2時間かけて連結させた(図15)。
ライゲーション混合物によるXL10 Goldウルトラコンピテントセル(Agilent Technologies,Santa Clara,California)の形質転換後、Zyppy(商標)Plasmid Miniprep Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いて、プラスミドDNAを単離した後、これを制限消化及びシーケンシング(Microsynth,Balgach,Switzerland)によってさらに特性決定した。
得られたプラスミドpEVE2839(図16)は、ピチア・オウメリのリブロースレダクターゼプロモータ及びターミネータによりフランキングされるコドン最適化大腸菌NAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼと、poURA3選択マーカを含む。
ピチア・オウメリのリブロースレダクターゼプロモータに加えて、大腸菌由来のNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼも、ピチア・オウメリホスホグリセリン酸キナーゼ(poPGK1)プロモータ及びトランスケトラーゼ(poTKL)ターミネータの制御下でクローン化した。
クローン化は、初めに、poPGK1プロモータによりリブロースレダクターゼプロモータを置換した後、リブロースレダクターゼターミネータをpoTKLターミネータに交換する2つの連続した工程で実施した。
ピチア・オウメリpoPGK1プロモータの長さ611bp断片をピチア・オウメリのゲノムDNAから、以下:
−SpeI部位(下線部)を含むプライマーEV3177
及び
−AscI部位(下線部)を含むプライマーEV3178
を用いて増幅した。
新しく条斑として生成されたピチア・オウメリコロニーを30μlの0.2%SDSに再懸濁させてから、95℃で4分間加熱することにより、ゲノムDNA鋳型を調製した。最高速度の遠心分離の後、0.5μlの上清をPCRのために使用した。
適切な1×バッファー中の0.02U/μlのiProof(商標)ポリメラーゼ(BIO−RAD,Hercules,California)と共に200μMの各dNTP及び0.5μMの各プライマーからなる反応混合物中で増幅した。
PCRは、96℃で2分の最初の変性工程に続いて、96℃で10秒/58℃で10秒/72℃で30秒を25サイクルの後、72℃で2分の最終伸長工程により達成した。
PCR産物を1%アガロースゲル上で分離して、抽出した後、Zymoclean(商標)Gel DNA Recovery Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いて精製した。
増幅した長さ610bpのpoPGK1プロモータ断片をSpeI及びAscI(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)で制限消化した後、T4DNAリガーゼ(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)を用いて、pEVE2839(図16)の11.5kb SpeI/AscI消化及びゲル精製ベクターバックボーンに室温で2時間かけて連結させた(図17)。
ライゲーション混合物によるXL10 Goldウルトラコンピテントセル(Agilent Technologies,Santa Clara,California)の形質転換後、Zyppy(商標)Plasmid Miniprep Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いて、プラスミドDNAを単離した後、これを制限消化及びシーケンシング(Microsynth,Balgach,Switzerland)によってさらに特性決定した。
得られたプラスミドpEVE3102(図18)は、ピチア・オウメリのホスホグリセリン酸キナーゼ(poPGK1)プロモータ及びリブロースレダクターゼターミネータによりフランキングされるコドン最適化大腸菌NAD+特異的D−アラビトール4−オキシ
ドレダクターゼと、poURA3選択マーカを含む。
次の工程では、pEVE3102のリブロースレダクターゼターミネータをピチア・オウメリのトランスケトラーゼ(poTKL)ターミネータに換えた。
ピチア・オウメリpoTKLターミネータの長さ213bp断片をピチア・オウメリのゲノムDNAから、以下:
−SphI部位(下線部)を含むプライマーEV3817
及び
−SacII部位(下線部)を含むプライマーEV3818
を用いて増幅した。
ゲノムDNAは、前述したように調製した。
増幅は、適切な1×バッファー中の0.02U/μlのiProof(商標)ポリメラーゼ(BIO−RAD,Hercules,California)と共に200μMの各dNTP及び0.5μMの各プライマーからなる反応混合物中で実施した。
PCRは、96℃で2分の最初の変性工程に続いて、96℃で10秒/57℃で10秒/72℃で30秒を25サイクルの後、72℃で2分の最終伸長工程により達成した。PCR産物を1%アガロースゲル上で分離して、抽出した後、Zymoclean(商標)Gel DNA Recovery Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いて精製した。
増幅した長さ213bpのpoTKLターミネータ断片をSphI及びSacII(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)で制限消化した後、T4DNAリガーゼ(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)を用いて、pEVE3102(図18)の11.5kb SphI/SacII消化及びゲル精製ベクターバックボーンに室温で2時間連結させた(図17)。
ライゲーション混合物によるXL10 Goldウルトラコンピテントセル(Agilent Technologies,Santa Clara,California)の形質転換後、Zyppy(商標)Plasmid Miniprep Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いて、プラスミドDNAを単離した後、これを制限消化及びシーケンシング(Microsynth,Balgach,Switzerland)によってさらに特性決定した。
得られたプラスミドpEVE3123(図19)は、ピチア・オウメリのホスホグリセリン酸キナーゼ(poPGK1)プロモータ及びトランスケトラーゼ(poTKL)ターミネータによりフランキングされるコドン最適化大腸菌NAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼと、poURA3選択マーカを含む。
別の選択を用いて、あるプラスミドから大腸菌のNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼを発現することを可能にするために、pEVE3123のpoURAマーカをpoLEU2マーカに換えた。
この目的のために、PsiI及びAfeI(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)での制限消化により、poURA3マーカをベクターpEVE3123(図19)から放出させた。
Zymoclean(商標)Gel DNA Recovery Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いて、9.1kbのベクターバックボーンをゲル精製し、Blunting Enzyme Mixキット(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)を用いて、室温で15分間平滑化した後、酵素の熱不活性化を70℃で10分間実施してから、アンタークティックホスファターゼ(Antarctic phosphatase)(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)を用いて、37℃で1時間脱リン酸化した。
挿入片として、AseI及びAfeI制限消化によりベクターpEVE2560(図8)から放出されたpoLEU2マーカの3kbの平滑化及びゲル精製断片を使用した。T4DNAリガーゼ(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)を用いて、断片の連結反応を室温で2時間実施した(図20)。
ライゲーション混合物によるXL10 Goldウルトラコンピテントセル(Agilent Technologies,Santa Clara,California)の形質転換後、Zyppy(商標)Plasmid Miniprep Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いて、プラスミドDNAを単離した後、これを制限消化及びシーケンシング(Microsynth,Balgach,Switzerland)によってさらに特性決定した。
得られたプラスミドpEVE3157(図21)は、ピチア・オウメリのホスホグリセリン酸キナーゼ(poPGK1)プロモータ及びトランスケトラーゼ(poTKL)ターミネータによりフランキングされるコドン最適化大腸菌NAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼと、poLEU2選択マーカを含む。
実施例12.ピチア・オウメリ株ATCC20209におけるプラスミド性大腸菌NAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼ及びプラスミド性ピチア・スチピチスNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼ遺伝子の発現
アラビトールからキシリトールへの生合成変換のためには、NAD+特異的大腸菌D−アラビトール4−オキシドレダクターゼ及びピチア・スチピチスのNADP特異的キシリトールデヒドロゲナーゼの同時発現が必要である。
第1の酵素は、キシルロースの形成をもたらし、第2の酵素は、キシルロースをキシリトールに変換する。
以下のプラスミド:
−pEVE2839(大腸菌のNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼ)及び
−pEVE2564(ピチア・スチピチスのNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼ)
での形質転換によるキシリトール分泌酵母株の構築のために、ATCC20209に由来し、且つロイシン及びウラシルについて栄養要求性のピチア・オウメリ株SRLU(MATh− LEU2 ura3)(Piredda and Gaillardin,1994,前掲)を宿主として使用し、これにより株EYS2755を取得した。
加えて、対照(国際公開第94/10325号パンフレットの教示に従う)として、ピチア・スチピチスのNADH特異的野生型キシリトールデヒドロゲナーゼを発現する株も、SRLU宿主への以下のプラスミド:
−pEVE2839(大腸菌のNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼ)及び
−pEVE2563(ピチア・スチピチスのNADH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼ)
での形質転換により構築して、株EYS2962を取得した。
対照として、以下の単一プラスミド:
−pEVE2839(大腸菌のNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼ)、
−pEVE2563(ピチア・スチピチスのNADH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼ)及び
−pEVE2564(ピチア・スチピチスのNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼ)
で形質転換した株も作製し、これにより、それぞれEYS2943、EYS2696及びEYS2697が得られた。
酵母形質転換は、主としてGreen et al.(Green E.D.,Hieter,P.,and Spencer F.A.,chapter 5 in Genome Analysis:A Laboratory Manual,Vol.3,Cloning Systems,Birren et al.(eds.),Cold Spring Harbor Press,New York,1999)のスフェロイプラスト化法により実施したが、以下の改変を加えた:スフェロプラストの生成のために、リチカーゼ()の代わりに、ザイモリアーゼ100Tを使用し、酵素と一緒に行うインキュベーションは、細胞懸濁液のODが、ザイモリアーゼ処理の前に初期ODの20〜30%に達するまで37℃で実施した。
手短には、ピチア・オウメリ細胞は、YPD培地(酵母抽出物1%(w/v)、ペプトン2%(w/v)、デキストロース2%(w/v))において、3〜5の最終OD600まで30℃で一晩増殖させた。
200OD600単位を遠心分離により採取し、水及び1Mソルビトールで1回洗浄してから、70OD/mlの最終濃度まで、SCEバッファー(1Mソルビトール、100mMクエン酸三ナトリウム塩二水和物、10mM EDTA)中に再懸濁させた。
DTT及びザイモリアーゼ(LuBio Science,Luzern,Switzerland)をそれぞれ10mM及び0.5U/ODの最終濃度まで添加した後、混合物を低速で振盪しながら37℃でインキュベートした。
細胞壁消化の後、水で希釈した溶液の光学密度を測定した。この値が初期値の80%まで低下したら、慎重な遠心分離、続いて、1Mソルビトール及びSTCバッファー(0.98Mソルビトール、10mMトリスpH7.5、10mMCaCl2)での洗浄によって消化を終了した。
スフェロプラストを、50μg/mlの仔ウシ胸腺DNA(Calbiochem/VWR,Dietikon,Switzerland)を含むSTCバッファー中に200OD/mlの最終濃度まで注意深く再懸濁させた。100μlのアリコートを100〜200ngのプラスミドDNAと混合した後、室温で10分間インキュベートした。
1mlのPEG溶液(19.6%PEG8000w/V、10mMトリスpH7.5、10mM CaCl2)を懸濁液に添加し、10分間インキュベートした後、ペレット化した。スフェロプラストは、25%YPD及び7mM CaCl2を含む1Mソルビトール溶液1ml中、30℃で1〜2時間再生させた。
再生した細胞に、7mlの50℃の温かい上層寒天(アミノ酸を含まない0.67%酵母窒素塩基、ロイシン/ウラシル/ヒスチジン/トリプトファン/メチオニンを含まない0.13%ドロップアウトパウダー(drop−out powder)、0.086‰の必要な欠損アミノ酸、2%グルコース、1Mソルビトール、pH5.8及び2.5%ノーブル(Noble)寒天)を添加してから、混合物を予め温めたソルビトール含有選択プレート(アミノ酸を含まない0.67%酵母窒素塩基、ロイシン/ウラシル/ヒスチジン/トリプトファン/メチオニンを含まない0.13%ドロップアウトパウダー、0.086‰の必要な欠損アミノ酸、2%グルコース、1Mソルビトール、pH5.8)上に均等に注いだ。
プレートを30℃で3〜5日間インキュベートした。形質転換体を適切な選択プレート上で再選択した。
作製した株の各々をアラビトール、キシリトール及びリビトール生産について3回試験した。
この目的のために、クローンをまず種培地(アミノ酸を含まない0.67%酵母窒素塩基;ロイシン/ウラシル/ヒスチジン/トリプトファン/メチオニンを含まない0.13%ドロップアウトパウダー;0.086‰の必要な欠損アミノ酸;5%グルコース;pH5.7)中に30℃で一晩増殖させた。
この一晩の培養物から、0.2の出発OD600で生産培地(アミノ酸を含まない0.67%酵母窒素塩基;ロイシン/ウラシル/ヒスチジン/トリプトファン/メチオニンを含まない0.13%ドロップアウトパウダー;0.086‰の必要な欠損アミノ酸;15%グルコース;pH5.7)中の主要培養物に接種した。
この培養物を37℃で48時間増殖させた後、Aminex(登録商標)HPX−87カラム(Bio−Rad,Hercules,California)及びWaters(登録商標)TQ−Detector(トリプル四重極型検出器(triple quadrupol detector)に接続されたAcquity(登録商標)UPLC、Waters,Milford,Massachusetts)並びに移動相として100%水を用いるアイソクラチック条件を用いたHPLC/MSにより、上清中のアラビトール、キシリトール及びリビトール濃度を決定した。
試験した株全てのポリオール力価を表8に記載する。
ピチア・スチピチスのNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼの使用により、野生型NADH特異的酵素と比較して、キシリトール力価の有意な増加がもたらされる。
実施例13.ピチア・オウメリにおけるプラスミド性グルコノバクター・オキシダンスNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼ遺伝子の発現
ピチア・スチピチスのNADP特異的キシリトールデヒドロゲナーゼを用いたキシリトール生産株以外に、グルコノバクター・オキシダンスのNADP特異的キシリトールデヒドロゲナーゼを発現する第2株を作製した。
プラスミドpEVE3157(大腸菌のNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼ)及びpEVE3284(グルコノバクター・オキシダンスのNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼ)での形質転換によるキシリトール分泌酵母株の構築のために、ATCC20209に由来し、且つロイシン及びウラシルについて栄養要求性のピチア・オウメリ株SRLU(MATh− leu2 ura3)(Piredda and Gaillardin,1994,前掲)を宿主として使用し、これにより株EYS3324を得た。
コントロールとして、以下の単一プラスミド:
−pEVE3157(大腸菌のNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼ)及び
−pEVE3284(グルコノバクター・オキシダンスのNADH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼ)
で形質転換した株も作製し、これにより、それぞれEYS3067及びEYS3323が得られた。
上記株の構築のために用いた大腸菌D−アラビトール4−オキシドレダクターゼは、poPGK1プロモータにより制御したのに対し、ピチア・スチピチスのキシリトールデヒ
ドロゲナーゼを発現する株にはpoRRを使用した。
しかし、プロモータの影響を排除するために、従って、グルコノバクター・オキシダンス由来のキシリトールデヒドロゲナーゼを発現する株におけるポリオールレベルと、ピチア・スチピチス由来の対応する酵素を発現するものとの比較を可能にするために、別の株を作製した。
この株EYS2963は、以下のプラスミド:
−pEVE3123(大腸菌のNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼ)及び
−pEVE2564(ピチア・スチピチスのNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼ)
で、SRLU宿主を形質転換することにより得た。
酵母形質転換は、実施例12に記載したように実施した。作製した株は各々、実施例12に記載のように、アラビトール、キシリトール及びリビトール生産について試験した。
全ての試験した株のポリオール力価を表9に記載する。
グルコノバクター・オキシダンス由来のNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼを発現する株(EYS3324)のキシリトール力価は、ピチア・スチピチス由来の対応する酵素を発現する株(EYS2963)に類似している。しかし、グルコノバクター・オキシダンス酵素は、はるかに低いリビトール力価をもたらすため、キシルロースに対し、より高い基質特異性を示す。
実施例14.アラビトールの分泌増加を有する変異体ピチア・オウメリ株の作製
より多くのアラビトールを生産する変異体をピチア・オウメリATCC 20209の
UV照射懸濁液から選択した。
UV照射系(Vilber Lourmat,France)は、マイクロプロセッサ制御RMX−3W放射計を備えた。ピチア・オウメリを37℃のYPD寒天(デキストロース20g/L)上で一晩増殖させた。
106cfu/mL(OD620=0.4)に達するように懸濁液を調製した後、5mLを滅菌ペトリ皿に導入した。皿から蓋を外した後、懸濁液を照射した。UV波長は、254nmであり、照射エネルギーは、1.8 10−2J/cm2であった。酵母細胞の90%の致死率が得られた。放射を停止し、蓋を再度かぶせた後、懸濁液を氷冷浴中に配置した滅菌チューブ中に移した。
20mLのYPD液体培地に突然変異懸濁液を接種してから、37℃、250rpmで12時間インキュベートした。
インキュベーション後、突然変異した培養物を滅菌40%グリセロール(V/V)で希釈した。アリコートを5mLバイアルに分配し、−80℃で凍結した。
スクリーニングは、非常に高濃度のデキストロース(最大600g/L)で増殖することができるピチア・オウメリの浸透圧特性に基づいて実施した。
本発明者らの目的は、デキストロース600g/L又は700g/Lを含むYPD寒天上で母株より速く増殖することができる変異体を選択することであった。
解凍したアリコートをYPD600及びYPD700上に延ばしてから、最初に出現したコロニーを選択して、振盪フラスコ中のアラビトールの生産について試験した。
継代培養及び生産培地は、それぞれグルコース50g/L又は100g/L、酵母抽出物3g/L、MgSO41g/L及びKH2PO42g/L、pH5.7から調製した。継代培養(100mLフラスコ中10mL)を37℃、250rpmで24時間インキュベートした。生産培地は、5mLの継代培養物を接種してから、37℃、250rpmで64時間インキュベートした。
変異体ピチア・オウメリ株が、その高速なグルコース消費及び高いアラビトール生産のために選択され、2012年3月7日フランスで、パスツール国立微生物保存機関(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes[National Collection of Microorganism Cultures] of the Institut Pasteur)(CNCM)(25 rue du Docteur Roux,75724 PARIS Cedex 15)に番号I−4605で寄託された。
実施例15.LEU2欠失プラスミドの構築
プラスミド選択及び遺伝子組み込みの目的で、新しく作製したCNCM I−4605株を用いることを可能にするために、LEU2オープンリーディングフレームの欠失のためのプラスミドを構築した。
第1工程では、ピチア・オウメリに使用することができる一般的組み込みベクターは、サッカロマイセス・セレビシエ(S.cerevisiae)CRE/loxP系から改変した。PstI及びEcoRV酵素(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)を用いた制限切断によって、ベクターバックボーンをpUG73(Gueldener et al.,2002,Nucleic Acid Res,30,e23)から単離した。
挿入片として、loxP部位によりフランキングされるピチア・オウメリのLEU2選択マーカを含むPCR断片を使用したが、これは、以下のプライマー対:
−EV3043
及び
−EV3044
並びに
−鋳型としてのpoARS(plig3−仏国特許第2772788号明細書−図6を参照)
を用いて作製した。
フォワードプライマーEV3043は、AscI(下線部)部位の次にSphI部位(下線部)、続いて、長さ48bpのloxP断片(太字)及びDraIII部位(下線部)を含む。EV3043の3’末端は、ピチア・オウメリのLEU2遺伝子の増幅のための長さ25bpの追加断片を含む。これに対し、リバースプライマーEV3044は、NheI部位(下線部)の次にNcoI部位(下線部)、続いて、長さ48bpのloxP断片(太字)及びMluI部位(下線部)を含む。EV3044の3’末端は、ピチア・オウメリLEU2遺伝子の増幅のための長さ25bpの追加断片を含む。適切な1×バッファー中の0.02U/μlのiProof(商標)ポリメラーゼ(BIO−RAD,Hercules,California)と共に200μMの各dNTP及び0.5μMの各プライマーからなる反応混合物中で鋳型を増幅した。PCRは、98℃で30秒の最初の変性工程に続いて、98℃で10秒/65℃で10秒/72℃で50秒を30サイクルの後、72℃で7分の最終伸長工程により実施した。PCR産物を1%アガロースゲル上で分離して、抽出した後、Zymoclean(商標)Gel DNA Recovery Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いて精製した。
増幅した断片は、さらなるサブクローン化のための第2PCR反応において、PstI及びEcoRV部位によりフランキングさせた。増幅は、以下:
−PstI部位(下線部)を含むプライマーEV3056
及び
−EcoRV部位(下線部)を含むEV3057
を用いて、適切な1×バッファー中の0.02U/μlのiProof(商標)ポリメラーゼ(BIO−RAD,Hercules,California)と共に200μMの各dNTP及び0.5μMの各プライマーからなる反応混合物中で実施した。PCRは、98℃で30秒の最初の変性工程に続いて、98℃で10秒/72℃で45秒を30サイクルの後、72℃で7分の最終伸長工程により実施した。PCR産物を1%アガロースゲル上で分離して、抽出した後、Zymoclean(商標)Gel DNA Recovery Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いて精製した。
増幅した2.5kbLEU2マーカは、PstI及びEcoRV酵素(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)で制限消化し、Zymoclean(商標)Gel DNA Recovery Kit(Zymo
Research Corporation,Irvine,California)を用いてゲル精製した後、これを、T4DNAリガーゼ(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)を用いて、ベクターpUG73の2.4kb PstI/EcoRV(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)、ゲル精製済(Zymoclean(商標)Gel DNA Recovery Kit − Zymo Research Corporation,Irvine,California)バックボーンに室温で2時間かけて連結させた(図22)。ライゲーション混合物によるXL10 Goldウルトラコンピテントセル(Agilent Technologies,Santa Clara,California)の形質転換後、Zyppy(商標)Plasmid Miniprep Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いて、プラスミドDNAを単離した後、これを制限消化及びシーケンシング(Microsynth,Balgach,Switzerland)によってさらに特性決定した。
得られたプラスミドpEVE2787(図23)は、内在性プロモータ及びターミネータの制御下のピチア・オウメリLEU2選択マーカを含有し、これは2つのloxP部位によりフランキングされている。さらに、ゲノム内の組み込み部位と相同性の領域のクローン化を助けるために、第1loxPの上流にAscI及びSphI部位を導入し、第2loxPの下流にNheI及びNcoI部位を導入した。
次に、内在性LEU2オープンリーディングフレームの欠失が意図されたことから、組み込みベクターのLEU2マーカをストレプトマイセス・ノウルセイのnat1耐性遺伝子で置換した。
ストレプトマイセス・ノウルセイのnat1遺伝子をコードするDNA断片は、配列番号28の登録配列に従って、GeneArt(登録商標)Gene Synthesis
(Life Technologies,Regensburg,Germany)により化学的に合成した。
nat1遺伝子をコードする配列S60706.1(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/S60706.1から入手)のヌクレオチド204〜776を鋳型として使用して、http://genomes.urv.es/OPTIMIZER/から入手したオプティマイザー(Optimizer)プログラムを用いて、表7(前出)に記載のピチア・オウメリATCC20209での使用のためのコドン最適化に付した。
さらなるクローン化を促進するために、得られた配列の5’及び3’末端に、制限酵素AscI(GGCGCGCC)及びSphI(GCATGC)の認識部位をそれぞれコードするヌクレオチドを手作業でテキストファイルに付加した。加えて、酵母のコザック(Kozak)様配列における3位のアデノシンを構成するために、開始ATGの前にアデノシントリプレットを含有させた。
その後、最終配列(配列番号28)を合成のためにGeneArt(Regensburg,Germany)に提出した。nat1遺伝子をコードする合成DNA断片をpMA−T由来のベクターに5μgの凍結乾燥プラスミドDNAとして送達した(12ABTV4P、図24)。
nat1遺伝子のクローン化のために、リブロースレダクターゼ(poRR)プロモータ及びターミネータを含むベクターを使用した。ターミネータをオロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ(poURA3)ターミネータにより交換してから、nat1遺伝子をプロモータ及びターミネータ配列の間に導入した。
この目的のために、以下:
−SphI部位(下線部)を含むプライマーEV3393
及び
−SacII部位(下線部)を含むプライマーEV3394
並びに
−鋳型としてのpEVE2523(図7)
を用いたPCRにより、オロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼターミネータを作製した。
増幅は、適切な1×バッファー中の0.02U/μlのiProof(商標)ポリメラーゼ(BIO−RAD,Hercules,California)と共に200μMの各dNTP及び0.5μMの各プライマーからなる反応混合物中で実施した。PCRは、98℃で30秒の最初の変性工程に続いて、98℃で10秒/59℃で10秒/72℃で10秒を30サイクルの後、72℃で5分の最終伸長工程により実施した。PCR産物を1%アガロースゲル上で分離して、抽出した後、Zymoclean(商標)Gel DNA Recovery Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いて精製した。239bp poURA3ターミネータは、SphI及びSacII酵素(New England Biola
bs,Ipswich,Massachusetts)で制限消化した後、SphI及びSacII制限酵素(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)で線状化され、且つZymoclean(商標)Gel DNA Recovery Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いてゲル精製されたpEVE2481の11kbベクターバックボーンに、T4DNAリガーゼ(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)を用いて、室温で2時間かけて連結させた。ライゲーション混合物によるXL10 Goldウルトラコンピテントセル(Agilent Technologies,Santa Clara,California)の形質転換後、Zyppy(商標)Plasmid Miniprep Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いて、プラスミドDNAを単離した後、これを制限消化及びシーケンシング(Microsynth,Balgach,Switzerland)によってさらに特性決定した。
2回目のクローン化工程では、SphI及びAscI制限酵素(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)を用いた制限切断によって、nat1遺伝子を12ABTV4P(図24)から放出させた。さらに、Blunting Enzyme Mixキット(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)を用いたSphI部位の平滑化を室温で15分間実施した後、SphI及びAscI消化の間に酵素の熱不活性化を70℃で10分間行った。次に、SphI及びAscI制限酵素(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)で切断した前述のゲル精製済10.5kbベクターバックボーンに、587bpゲル精製済断片(Zymoclean(商標)Gel DNA Recovery Kit − Zymo Research
Corporation,Irvine,California)を連結させた。
Blunting Enzyme Mixキット(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)を用いて、ベクターのSphI部位を室温で15分間にわたり平滑化した後、AscIでの消化の前に70℃で10分間の熱不活性化工程を行った。さらに、アンタークティックホスファターゼ(Antarctic phosphatase)(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)を用いて、ベクターを37℃で1時間脱リン酸化した。T4DNAリガーゼ(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)を用いて連結反応を室温で2時間実施した。
ライゲーション混合物によるXL10 Goldウルトラコンピテントセル(Agilent Technologies,Santa Clara,California)の形質転換後、Zyppy(商標)Plasmid Miniprep Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いて、プラスミドDNAを単離した後、これを制限消化及びシーケンシング(Microsynth,Balgach,Switzerland)によりさらに特性決定した。
得られたプラスミドpEVE2798(図25)は、ピチア・オウメリリブロースレダクターゼ(poRR)プロモータ及びオロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ(poURA3)ターミネータによりフランキングされるnat1薬剤耐性マーカを含む。
nat1発現カセットを用いて、組み込みベクター内のピチア・オウメリLEU2選択マーカを置換した。さらなるクローン化を促進するために、nat1カセットは、以下:
−プライマーEV3643
及び
−プライマーEV3644
を用いたPCRにより、XbaI(プライマーEV3643中の下線部)及びMluI(プライマーEV3644中の下線部)部位とフランキングさせなければならなかった。
プライマーEV3643は、XbaI部位の後に追加ClaI部位(点線部)を含む。pEVE2798は、鋳型として使用した(図25)。
増幅は、適切な1×バッファー中の0.02U/μlのiProof(商標)ポリメラーゼ(BIO−RAD,Hercules,California)と共に200μMの各dNTP及び0.5μMの各プライマーからなる反応混合物中で実施した。PCRは、98℃で30秒の最初の変性工程に続いて、98℃で10秒/54℃で10秒/72℃で25秒を30サイクルの後、72℃で5分の最終伸長工程により実施した。PCR産物を1%アガロースゲル上で分離して、抽出した後、Zymoclean(商標)Gel DNA Recovery Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いて精製した。1.3kb nat1発現カセットをMluI及びXbaI酵素(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)で制限消化した後、MluI及びXbaI酵素(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)で線状化され、且つZymoclean(商標)Gel DNA Recovery Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)でゲル精製されたpEVE2787(図23)の2.6kbベクターバックボーンに、T4DNAリガーゼ(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)を用いて、室温で2時間かけて連結させた(図26)。
ライゲーション混合物によるXL10 Goldウルトラコンピテントセル(Agilent Technologies,Santa Clara,California)の形質転換後、Zyppy(商標)Plasmid Miniprep Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いて、プラスミドDNAを単離した後、これを制限消化及びシーケンシング(Microsynth,Balgach,Switzerland)によってさらに特性決定した。
得られたプラスミドpEVE2852(図27)は、リブロースレダクターゼ(poRR)プロモータ及びオロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ(poURA3)ターミネータの制御下にあり、且つ2つのloxP部位によりフランキングされるnat1選択マーカを含む。
組み込みプラスミドは、これまでのところ、ゲノム中への部位特異的組み込みに必要なピチア・オウメリ相同断片を全く含まない。これらの部位は、次の工程で結合させた。
LEU2オープンリーディングフレーム上流の5’相同領域を以下:
−PstI部位(下線部)を含むプライマーEV3548
及び
−SphI部位(下線部)を含むプライマーEV3549
を用いて、50ngのpoARSベクターから増幅した(図6)。
PCRは、適切な1×バッファー中の0.02U/μlのiProof(商標)ポリメラーゼ(BIO−RAD,Hercules,California)と共に200μMの各dNTP及び0.5μMの各プライマーからなる反応混合物中で実施した。増幅は、98℃で30秒の最初の変性工程に続いて、98℃で10秒/61℃で10秒/72℃で15秒を30サイクルの後、72℃で5分の最終伸長工程により達成した。PCR産物を1%アガロースゲル上で分離して、抽出した後、Zymoclean(商標)Gel DNA Recovery Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いて精製した。567bp断片をPstI及びSphI酵素(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)で制限消化した後、PstI及びSphI制限酵素(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)で線状化され、且つZymoclean(商標)Gel DNA Recovery Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)でゲル精製されたpEVE2852(図27)の3.9kbベクターバックボーンに、T4DNAリガーゼ(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)を用いて、室温で2時間かけて連結させた(図29)。
ライゲーション混合物によるXL10 Goldウルトラコンピテントセル(Agilent Technologies,Santa Clara,California)の形質転換後、Zyppy(商標)Plasmid Miniprep Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いて、プラスミドDNAを単離した後、これを制限消化及びシーケンシング(Microsynth,Balgach,Switzerland)によってさらに特性決定した。
得られたプラスミドpEVE2855(図28)は、LEU2オープンリーディングフレーム上流の5’領域と相同性の断片、及び2つのloxP部位によりフランキングされるnat1マーカを含む。
LEU2オープンリーディングフレーム下流の3’相同領域を以下:
−NcoI部位(下線部)を含むプライマーEV3550
及び
−NheI部位(下線部)を含むプライマーEV3551
を用いて、50ngのpoARSベクターから増幅した(図6)。
PCRは、適切な1×バッファー中の0.02U/μlのiProof(商標)ポリメラーゼ(BIO−RAD,Hercules,California)と共に200μMの各dNTP及び0.5μMの各プライマーからなる反応混合物中で実施した。増幅は、98℃で30秒の最初の変性工程に続いて、98℃で10秒/51℃で10秒/72℃で25秒を30サイクルの後、72℃で5分の最終伸長工程により達成した。PCR産物を1%アガロースゲル上で分離して、抽出した後、Zymoclean(商標)Gel DNA Recovery Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いて精製した。1.3kb断片をNcoI及びNheI酵素(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)で制限消化した後、NcoI及びNheI制限酵素(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)で線状化され、且つZymoclean(商標)Gel DNA Recovery Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)でゲル精製されたpEVE2855(図28)の4.4kbベクターバックボーンに、T4DNAリガーゼ(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)を用いて、室温で2時間かけて連結させた(図29)。
ライゲーション混合物によるXL10 Goldウルトラコンピテントセル(Agilent Technologies,Santa Clara,California)の形質転換後、Zyppy(商標)Plasmid Miniprep Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いて、プラスミドDNAを単離した後、これを制限消化及びシーケンシング(Microsynth,Balgach,Switzerland)によってさらに特性決定した。
得られた最終LEU2欠失プラスミドpEVE2864(図30)は、LEU2オープンリーディングフレーム上流の5’領域と相同性の断片及び下流の3’領域と相同性の断片、並びに2つのloxP部位によりフランキングされるnat1マーカを含む。
実施例16.ロイシンに対して栄養要求性の変異体ピチア・オウメリ株の作製
作製したピチア・オウメリCNCM I−4605株は、これまでのところ、いずれの栄養要求性も呈示しなかったことから、遺伝子組み込みのためにLEU2選択マーカを使用することができるように、LEU2オープンリーディングフレームの欠失を実施した。
この目的のために、プラスミドpEVE2864(図30)をEcoRV及びPstI酵素(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)で、37℃にて2.5時間にわたり制限消化した後、混合物を用いて、実施例12に記載の手順に従って、Mut165株を形質転換した。
再生した細胞に、25μg/mlナタマイシンと一緒に、7mlの50℃の温かい上層寒天(1%酵母抽出物、2%ペプトン、2%グルコース、1Mソルビトール、pH5.8及び2.5%ノーブル(Noble)寒天)を添加してから、この混合物を、25μg/mlナタマイシンと一緒に、予め温めたソルビトール含有選択プレート(1%酵母抽出物、2%ペプトン、2%グルコース、1Mソルビトール、pH5.8及び2%寒天)上に均
等に注いだ。プレートを30℃で4日間インキュベートした。LEU2オープンリーディングフレームの欠失を、ロイシンを含まない選択プレート上での増殖しないことにより検証した後、以下:
−プライマーEV3393(CAAGCATGCGGGAATGATAAGAGACTTTG)(配列番号29)及び
−プライマーEV3795(CAAGTCGTGGAGATTCTGC)(配列番号37)
を用いたコロニーPCRにより確認した。
1.6kbの断片を、98℃で30秒の最初の変性工程に続いて、98℃で10秒/51℃で10秒/72℃で25秒を30サイクルの後、72℃で5分の最終伸長工程により増幅した。
得られた株は、CNCM I−4605バックグラウンドにおけるLEU2遺伝子の全オープンリーディングフレーム欠失を含み、これは、2015年2月5日にフランスで、パスツール国立微生物保存機関(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes[National Collection of Microorganism Cultures] of the
Institut Pasteur)(CNCM)(25 rue du Docteur Roux,75724 PARIS Cedex 15)に番号I−4955で寄託された。
実施例17.ピチア・スチピチスのNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼ及び大腸菌のNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼを含む二重発現プラスミドの構築
ロイシンだけに対して栄養要求性の変異体ピチア・オウメリ株において、ピチア・スチピチスのNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼ及び大腸菌のNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼの発現を可能にするためには、二重発現プラスミドの構築が必要であった。
ピチア・スチピチスのNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼを含む発現カセットを、SpeI及びSacII酵素(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)を用いた制限切断によって、pEVE2562(図12)から放出させた。Zymoclean(商標)Gel DNA Recovery Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いて、1.9kb断片をゲル精製してから、Blunting Enzyme Mixキット(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)で室温にて15分間平滑化した後、酵素の熱不活性化を70℃で10分間行った。次に、大腸菌のNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼを含む、12.1kbのSpeI線状化、平滑化、脱リン酸化(アンタークティックホスファターゼ(Antarctic phosphatase)(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)を用いて37℃で1時間)及びゲル精製済pEVE3157バックボーン(図21)に、T4DNAリガーゼ(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)を用い、室温で2時間かけて上記の挿入片を連結させた(図31)。
ライゲーション混合物によるXL10 Goldウルトラコンピテントセル(Agilent Technologies,Santa Clara,California)の形質転換後、Zyppy(商標)Plasmid Miniprep Kit(Zym
o Research Corporation,Irvine,California)を用いて、プラスミドDNAを単離した後、これを制限消化及びシーケンシング(Microsynth,Balgach,Switzerland)によりさらに特性決定した。
得られたプラスミドpEVE3318(図32)は、ピチア・オウメリリブロースレダクターゼプロモータ及びターミネータ(poRR)によりフランキングされるピチア・スチピチスのNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼと、ピチア・オウメリホスホグリセリン酸キナーゼ(poPGK1)プロモータ及びリブロースレダクターゼ(poRR)ターミネータの制御下にある大腸菌のNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼとの二重発現構築物、並びにpoLEU選択マーカを含む。
実施例18.ピチア・オウメリにおける大腸菌NAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼ遺伝子及びピチア・スチピチスNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼ遺伝子の発現のための組み込みベクターの構築
大腸菌のNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼ遺伝子及びピチア・スチピチスのNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼ遺伝子は、最終的にピチア・オウメリゲノムの必須部分になる必要がある。そのため、pEVE2852のnat1選択マーカを置換して、アラビトールオキシドレダクターゼ及びキシリトールデヒドロゲナーゼの二重発現構築物を組み込むことにより、LEU2選択マーカを含む組み込みベクターを構築しなければならなかった。
この目的のために、AscI及びSphI部位によりフランキングされるピチア・オウメリLEU2オープンリーディングフレームを、以下:
−プライマーEV3645
及び
−プライマーEV3646
を用いたPCRにより作製した。
増幅は、適切な1×バッファー中の0.02U/μlのiProof(商標)ポリメラーゼ(BIO−RAD,Hercules,California)と共に200μMの各dNTP及び0.5μMの各プライマーからなる反応混合物中で50ngのpoARS(図6)と共に実施した。PCRは、98℃で30秒の最初の変性工程に続いて、98℃で10秒/57℃で10秒/72℃で20秒を30サイクルの後、72℃で5分の最終伸長工程により実施した。PCR産物を1%アガロースゲル上で分離して、抽出した後、Zymoclean(商標)Gel DNA Recovery Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いて精製した。続いて、増幅したLEU2オープンリーディングフレームは、AscI及びSphI酵素(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)で制限消化した。
さらに、Blunting Enzyme Mixキット(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)を用いたSphI部位の平滑化を室温で15分間実施した後、SphI及びAscI消化の間に酵素の熱不活性
化を70℃で10分間行った。次に、SphI及びAscI制限酵素(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)で切断したpEVE2811のゲル精製済11kbベクターバックボーンに、1.1kbゲル精製済断片を連結させた。また、Blunting Enzyme Mixキット(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)を用いて、ベクターのSphI部位を室温で15分間にわたり平滑化した後、AscIでの消化の前に70℃で10分間の熱不活性化工程を行った。さらに、アンタークティックホスファターゼ(Antarctic phosphatase)(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)を用いて、ベクターを37℃で1時間脱リン酸化した。T4DNAリガーゼ(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)を用いて、LEU2オープンリーディングフレームとベクターバックボーンの連結反応を室温で2時間にわたり実施した。
ライゲーション混合物によるXL10 Goldウルトラコンピテントセル(Agilent Technologies,Santa Clara,California)の形質転換後、Zyppy(商標)Plasmid Miniprep Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いて、プラスミドDNAを単離した後、これを制限消化及びシーケンシング(Microsynth,Balgach,Switzerland)によりさらに特性決定した。
得られたプラスミドpEVE2862(図33)は、ピチア・オウメリリブロースレダクターゼ(poRR)プロモータ及びオロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ(poURA3)ターミネータによりフランキングされるピチア・オウメリLEU2選択マーカを含む。
続いて、以下:
−ClaI部位を含むプライマーEV3643
及び
−MluI部位(下線部)を含むプライマーEV3644
並びに鋳型としてのpEVE2862(図33)
を用いたPCRにより、LEU2選択マーカを増幅した。
増幅は、適切な1×バッファー中の0.02U/μlのiProof(商標)ポリメラーゼ(BIO−RAD,Hercules,California)と共に200μMの各dNTP及び0.5μMの各プライマーからなる反応混合物中で実施した。PCRは、98℃で30秒の最初の変性工程に続いて、98℃で10秒/54℃で10秒/72℃で30秒を30サイクルの後、72℃で5分の最終伸長工程により実施した。PCR産物を1%アガロースゲル上で分離して、抽出した後、Zymoclean(商標)Gel DNA Recovery Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いて精製した。増幅した長さ1.8kbのLEU2断片を、ClaI及びMluI酵素(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)で制限消化した後、pEVE285
2(図27)の2.6kbのClaI及びMluI(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)制限消化及びゲル精製済ベクターバックボーンに、T4DNAリガーゼ(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)を用いて、室温で2時間かけて連結させた(図34)。
ライゲーション混合物によるXL10 Goldウルトラコンピテントセル(Agilent Technologies,Santa Clara,California)の形質転換後、Zyppy(商標)Plasmid Miniprep Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いて、プラスミドDNAを単離した後、これを制限消化及びシーケンシング(Microsynth,Balgach,Switzerland)によりさらに特性決定した。
得られたプラスミドpEVE2865(図35)は、2つのloxP部位によりフランキングされるピチア・オウメリLEU2マーカを含む。
組み込みベクターのクローン化のために、pEVE2865をSalI酵素(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)で制限消化した後、Blunting Enzyme Mixキット(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)を用い、室温で15分間にわたり平滑化した後、70℃で10分間にわたる酵素の熱不活性化を行ってから、アンタークティックホスファターゼ(Antarctic phosphatase)(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)を用い、37℃で1時間かけて脱リン酸化した。
ベクターバックボーンの4.5kbのゲル精製済断片を結合に使用した。挿入片として、NdeI及びSacII酵素(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)での制限切断によりpEVE3318(図32)から放出させたピチア・スチピチスのNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼ遺伝子及び大腸菌のNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼの二重発現構築物を使用した。
Zymoclean(商標)Gel DNA Recovery Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いて、4.4kb断片をゲル精製してから、Blunting Enzyme Mixキット(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)で室温にて15分間平滑化した後、70℃で10分間の酵素の熱不活性化に続き、さらなるゲル精製を行った。T4DNAリガーゼ(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)を用いて、pEVE2865のベクターバックボーン及びpEVE3318の挿入片を室温で2時間かけて連結させた(図34)。
ライゲーション混合物によるXL10 Goldウルトラコンピテントセル(Agilent Technologies,Santa Clara,California)の形質転換後、Zyppy(商標)Plasmid Miniprep Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いて、プラスミドDNAを単離した後、これを制限消化及びシーケンシング(Microsynth,Balgach,Switzerland)によりさらに特性決定した。
得られたプラスミドpEVE3387(図36)は、ピチア・オウメリリブロースレダクターゼプロモータ及びターミネータ(poRR)によりフランキングされるピチア・スチピチスのNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼと、ピチア・オウメリホスホグリセリン酸キナーゼ(poPGK1)プロモータ及びトランスケトラーゼ(poTKL)ターミネータの制御下にある大腸菌のNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼとの二重発現構築物を含む。
実施例19.培地中にキシリトールを分泌する第1世代組み込みピチア・オウメリ株の構築
大腸菌のNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼ遺伝子とピチア・スチピチスのNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼ遺伝子をピチア・オウメリのゲノム中にランダムに組み込むために、以前記載したベクターを使用した。
この目的のために、実施例12に記載の手順に従って、ロイシンについて栄養要求性の株CNCM I−4955(実施例16)をNotI(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)で制限消化したpEVE3387(図36)で、37℃で3時間にわたり形質転換した。ロイシンを一切含まないソルビトールプレート上で、形質転換体を選択した。
得られた株は、ピチア・オウメリゲノム中にランダムに組み込まれた大腸菌のNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼ遺伝子とピチア・スチピチスのNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼ遺伝子を含有しており、2015年5月20日フランスで、パスツール国立微生物保存機関(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes[National Collection of Microorganism Cultures] of the Institut Pasteur)(CNCM)(25 rue du
Docteur Roux,75724 Cedex 15)に番号I−4982で寄託された。
実施例20.グルコノバクター・オキシダンスのNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼ及び大腸菌のNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼを含む二重/三重発現プラスミドの構築
ロイシンだけに対して栄養要求性の変異体ピチア・オウメリ株において、グルコノバクター・オキシダンスのNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼ及び大腸菌のNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼの発を可能にするためには、二重発現プラスミドの構築が必要であった。
グルコノバクター・オキシダンスのNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼを含む発現カセットは、SpeI及びSacII酵素(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)を用いた制限切断によって、pEVE3284(図10)から放出させた。Zymoclean(商標)Gel DNA
Recovery Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いて、1.6kb断片をゲル精製してから、Blunting Enzyme Mixキット(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)で室温にて15分間平滑化した後、酵素の熱不活性化を70℃で10分間行った。使用したベクターバックボーンは、大腸菌のNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼを含む、12.1kbのSpeI線状化(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)及びゲル精製済(Zymoclean(商標)Gel DNA R
ecovery Kit − Zymo Research Corporation,Irvine,California)pEVE3157から構成された。
このバックボーンを、Blunting Enzyme Mix キット(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)で室温にて15分間平滑化してから、70℃で10分間の酵素の熱不活性化の後、アンタークティックホスファターゼ(Antarctic phosphatase)(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)を用い、37℃で1時間脱リン酸化した。T4DNAリガーゼ(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)を用い、室温で2時間にわたり連結反応を実施した(図37)。
ライゲーション混合物によるXL10 Goldウルトラコンピテントセル(Agilent Technologies,Santa Clara,California)の形質転換後、Zyppy(商標)Plasmid Miniprep Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いて、プラスミドDNAを単離した後、これを制限消化及びシーケンシング(Microsynth,Balgach,Switzerland)によりさらに特性決定した。
得られたプラスミドpEVE3322及びpEVE3324(図38)は、ピチア・オウメリリブロースレダクターゼプロモータ及びターミネータ(poRR)によりフランキングされるグルコノバクター・オキシダンスのNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼと、ピチア・オウメリホスホグリセリン酸キナーゼ(poPGK1)プロモータ及びトランスケトラーゼ(poTKL)ターミネータの制御下にある大腸菌のNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼとの二重発現構築物、又はピチア・オウメリリブロースレダクターゼプロモータ及びターミネータ(poRR)によりフランキングされるグルコノバクター・オキシダンスの2つのNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼ遺伝子と、ピチア・オウメリホスホグリセリン酸キナーゼ(poPGK1)プロモータ及びトランスケトラーゼ(poTKL)ターミネータの制御下にある大腸菌のNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼとの三重発現構築物のいずれか、並びにpoLEU選択マーカを含む。
実施例21.ピチア・オウメリにおける大腸菌NAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼ遺伝子及びグルコノバクター・オキシダンスNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼ遺伝子の発現のための組み込みベクターの構築
ピチア・スチピチスのNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼと、大腸菌のNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼ遺伝子を含む組み込みベクター以外に、グルコノバクター・オキシダンスのNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼを含むプラスミドも作製した。
この目的のために、NdeI及びSacII酵素(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)を用いた制限切断によって、グルコノバクター・オキシダンスの1つ又は2ついずれかのNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼと、大腸菌のNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼとを含む二重及び三重発現カセットを、pEVE3322及びpEVE3324(図38)からそれぞれ放出させた。
Zymoclean(商標)Gel DNA Recovery Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を
用いて、4.1kb及び5.7kb断片をゲル精製してから、Blunting Enzyme Mixキット(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)で室温にて15分間にわたり平滑化した後、酵素の熱不活性化を70℃で10分間行った。ベクターとして、ゲル精製済(Zymoclean(商標)Gel DNA Recovery Kit−Zymo Research Corporation,Irvine,California)の5.7kb SalI/線状化pEVE2865を使用した(図35)。
さらに、Blunting Enzyme Mixキット(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)でベクターバックボーンを室温にて15分間平滑化してから、70℃で10分間にわたり酵素を熱不活性化した後、アンタークティックホスファターゼ(Antarctic phosphatase)(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)を用い、37℃で1時間脱リン酸化した。T4DNAリガーゼ(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)を用い、室温で2時間にわたり、ベクターと挿入片の連結反応を実施した(図39)。
ライゲーション混合物によるXL10 Goldウルトラコンピテントセル(Agilent Technologies,Santa Clara,California)の形質転換後、Zyppy(商標)Plasmid Miniprep Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いて、プラスミドDNAを単離した後、これを制限消化及びシーケンシング(Microsynth,Balgach,Switzerland)によりさらに特性決定した。
得られたプラスミドpEVE3390及びpEVE3392(図40)は、ピチア・オウメリリブロースレダクターゼプロモータ及びターミネータ(poRR)によりフランキングされるグルコノバクター・オキシダンスの1つ又は2ついずれかのNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼ遺伝子と、ピチア・オウメリホスホグリセリン酸キナーゼ(poPGK1)プロモータ及びトランスケトラーゼ(poTKL)ターミネータの制御下にある大腸菌のNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼとの二重若しくは三重発現構築物を含む。選択マーカとして、2つのloxP部位によりフランキングされるピチア・オウメリLEU2遺伝子を使用する。
実施例22.100g/L超のキシリトールを分泌することができる第2世代組み込み株の構築
大腸菌のNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼ遺伝子及びピチア・スチピチスNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼ遺伝子のランダムに組み込まれたコピーを含む第1世代株CNCM I−4982を用いて、2つの異種酵素のさらなるコピーを組み込んだ。
しかし、上記の構築物の組み込みを可能にするためには、LEU2選択マーカを除去しなければならなかった。この目的のために、実施例12に記載の手順に従って、第1世代株CNCM I−4982をベクターpEVE3163で形質転換した。ベクターpEVE3163は、ピチア・オウメリリブロースレダクターゼプロモータ及びターミネータ(poRR)によりフランキングされるバクテリオファージP1のCREリコンビナーゼ(表7に従いコドン最適化)を含む。LEU2選択マーカの除去は、ロイシンを含まないプレート上でのクローンが増殖ないことにより確認した。
得られた株EYS3842は、実施例12に記載の手順に従って、NotI(New
England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)で制限消化したpEVE3390又はpEVE3392(図40)で形質転換した。形質転換体は、ロイシンを一切含まないソルビトール上で選択した。
得られた第2世代株EYS3929は、ゲノム中にランダムに組み込まれた、大腸菌の2つのNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼ遺伝子と、2つのNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼ遺伝子(1つは、グルコノバクター・オキシダンス由来で、2つ目は、ピチア・スチピチス由来)を含む。これに対し、株EYE3930は、グルコノバクター・オキシダンスの追加NADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼ遺伝子を含む。
実施例23.大腸菌のNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼ及びグルコノバクター・オキシダンスのNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼの追加遺伝子コピーの組み込みのために用いられるさらなるベクターの構築
さらなる組み込みベクターを構築するために、以下:
−SmaI部位を含むプライマーEV4904
及び
−SmaI部位(下線部)を含むプライマーEV4905
並びに
鋳型としてのpEVE3321
を用いたPCRにより、大腸菌のNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼ及びグルコノバクター・オキシダンスのNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼの二重発現カセットを増幅した。
増幅は、適切な1×バッファー中の0.02U/μlのiProof(商標)ポリメラーゼ(BIO−RAD,Hercules,California)と共に200μMの各dNTP及び0.5μMの各プライマーからなる反応混合物中で実施した。PCRは、98℃で30秒の最初の変性工程に続いて、98℃で10秒/68℃で10秒/72℃75秒を30サイクルの後、72℃で5分の最終伸長工程により実施した。PCR産物を1%アガロースゲル上で分離して、抽出した後、Zymoclean(商標)Gel DNA Recovery Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いて精製した。
増幅した長さ3.9kbの断片を、SmaI(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)で制限消化した後、線状化された4.4kbのPvuII(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)、アンタークティックホスファターゼ(Antarctic
phosphatase)(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)で脱リン酸化され、且つゲル精製されたpEVE2865(図35)のベクターバックボーンに、T4DNAリガーゼ(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)を用いて、室温で2時間かけて連結させた(図41)。
ライゲーション混合物によるXL10 Goldウルトラコンピテントセル(Agil
ent Technologies,Santa Clara,California)の形質転換後、Zyppy(商標)Plasmid Miniprep Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いて、プラスミドDNAを単離した後、これを制限消化及びシーケンシング(Microsynth,Balgach,Switzerland)によりさらに特性決定した。
得られたプラスミドpEVE4390(図42)は、ピチア・オウメリホスホグリセリン酸キナーゼ(poPGK1)プロモータ及びトランスケトラーゼ(poTKL)ターミネータの制御下にある大腸菌のNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼと、ピチア・オウメリリブロースレダクターゼプロモータ及びターミネータ(poRR)によりフランキングされるグルコノバクター・オキシダンスのNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼ遺伝子との二重発現構築物を含む。選択マーカとして、2つのloxP部位によりフランキングされるピチア・オウメリLEU2遺伝子を使用する。
実施例24.グルコノバクター・オキシダンスのNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼ及びラルストニア・ソラナケアルムのNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼの組み込みのために用いられるベクターの構築
グルコノバクター・オキシダンスのNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼ及びラルストニア・ソラナケアルムのNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼの発現のための追加組み込みベクターを以下のように構築した:第1工程において、2つの上記遺伝子を含む二重発現ベクターを作製した。二重発現カセットを組み込みloxPベクターにクローン化した。
ラルストニア・ソラナケアルムのNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼ遺伝子をコードするDNA断片を、配列番号42の登録配列に従って、GeneArt(登録商標)Gene Synthesis(Life Technologies,Regensburg,Germany)により化学的に合成した。
dalD遺伝子をコードする配列AL646052.1(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/AL646052から入手)のヌクレオチド2310548〜2309151を鋳型として使用した後、http://genomes.urv.es/OPTIMIZER/から入手したオプティマイザー(Optimizer)プログラムを用いて、表7(上)に記載のピチア・オウメリATCC 20209での使用のためのコドン最適化に付した。さらなるクローン化を促進するために、得られた配列の5’及び3’末端に、制限酵素AscI(GGCGCGCC)及びSphI(GCATGC)の認識部位をコードするヌクレオチドを手作業でテキストファイルに付加した。加えて、酵母のコザック(Kozak)様配列における3位のアデノシンを構成するために、開始ATGの前にアデノシントリプレットを含有させた。
その後、最終配列(配列番号42)を合成のため、GeneArt(Regensburg,Germany)に提出した。dalD遺伝子をコードする合成DNA断片を、pMA−RQ由来のベクターに5μgの凍結乾燥プラスミドDNAとして送達した(13AB2EGP、図43)。
AscI及びSphI(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)での制限消化により、ラルストニア・ソラナケアルム由来のD−アラビトール4−オキシドレダクターゼの1.4kb断片を放出させた後、Zymoclean(商標)Gel DNA Recovery Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)でゲル精製
した。次に、AscI及びSphI(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)で線状化され、且つゲル精製されたpEVE2560(図8)の11.8kbバックボーンと、その挿入片を、T4DNAリガーゼ(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)を用いて連結させた(図44)。
ライゲーション混合物によるXL10 Goldウルトラコンピテントセル(Agilent Technologies,Santa Clara,California)の形質転換後、Zyppy(商標)Plasmid Miniprep Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いて、プラスミドDNAを単離した後、これを制限消化及びシーケンシング(Microsynth,Balgach,Switzerland)によりさらに特性決定した。
得られたプラスミドpEVE3898(図45)は、ピチア・オウメリのリブロースレダクターゼプロモータ及びターミネータによりフランキングされる、コドン最適化ラルストニア・ソラナケアルムNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼと、poLEU2選択マーカを含む。
次の工程において、ホスホグリセリン酸キナーゼプロモータ(poPGK)及びリブロースレダクターゼターミネータ(poRR)によりフランキングされるグルコノバクター・オキシダンスのNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼを含む発現カセットを、SpeI及びSacII(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)による制限消化により、pEVE3960から放出させた。1.8kb断片を、Zymoclean(商標)Gel DNA Recovery
Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いてゲル精製してから、Blunting Enzyme Mixキット(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)を用い、室温で15分間平滑化した後、酵素の熱不活性化を70℃で10分間行った。ベクターとして、ゲル精製済(Zymoclean(商標)Gel DNA
Recovery Kit−Zymo Research Corporation,Irvine,California)の13.2kb SalI線状化pEVE3898を使用した。さらに、Blunting Enzyme Mixキット(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)を用いて、ベクターバックボーンを室温で15分間平滑化した後、70℃で10分間の酵素の熱不活性化、続いて、アンタークティックホスファターゼ(Antarctic phosphatase)(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)を用いた脱リン酸化を37℃で1時間実施した。T4DNAリガーゼ(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)を用いて、ベクターと挿入片の連結反応を室温で2時間にわたり実施した(図44)。
ライゲーション混合物によるXL10 Goldウルトラコンピテントセル(Agilent Technologies,Santa Clara,California)の形質転換後、Zyppy(商標)Plasmid Miniprep Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いて、プラスミドDNAを単離した後、これを制限消化及びシーケンシング(Microsynth,Balgach,Switzerland)によりさらに特性決定した。
得られたプラスミドpEVE4077(図46)は、ピチア・オウメリホスホグリセリン酸キナーゼプロモータ(poPGK)及びリブロースレダクターゼターミネータ(poRR)によりフランキングされるグルコノバクター・オキシダンスのNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼと、ピチア・オウメリリブロースレダクターゼプロモータ及び(poRR)ターミネータの制御下にあるラルストニア・ソラナケアルムのNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼの二重発現構築物、並びにpoLEU2選択マーカを含む。
最後に、グルコノバクター・オキシダンスのNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼ及びラルストニア・ソラナケアルムのNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼの二重発現カセットを、SapI(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)を用いた制限切断により、pEVE4077から放出させた。5.9kb断片を、Zymoclean(商標)Gel DNA Recovery Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いてゲル精製してから、Blunting Enzyme Mixキット(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)を用い、室温で15分間平滑化した後、酵素の熱不活性化を70℃で10分間行った。ベクターとして、ゲル精製済(Zymoclean(商標)Gel DNA Recovery Kit−Zymo Research Corporation,Irvine,California)で、アンタークティックホスファターゼ(Antarctic phosphatase)(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)により37℃で1時間脱リン酸化した、4.4kb EcoRV線状化pEVE2865を使用した。T4DNAリガーゼ(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)を用いて、ベクターと挿入片の連結反応を室温で2時間にわたり実施した(図44)。
ライゲーション混合物によるXL10 Goldウルトラコンピテントセル(Agilent Technologies,Santa Clara,California)の形質転換後、Zyppy(商標)Plasmid Miniprep Kit(Zymo Research Corporation,Irvine,California)を用いて、プラスミドDNAを単離した後、これを制限消化及びシーケンシング(Microsynth,Balgach,Switzerland)によりさらに特性決定した。
得られたプラスミドpEVE4377(図47)は、グルコノバクター・オキシダンスのNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼと、ラルストニア・ソラナケアルムNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼとの二重発現構築物、並びに2つのloxP部位によりフランキングされるpoLEU2選択マーカを含む。
実施例25.キシリトールの生産性が増加した第3世代株の構築
第2世代株EYS3929及びEYS3930(実施例22)のLEU2マーカを、実施例18に記載したようにベクターpEVE3136を用いてロックスアウトした(loxed out)。得られた株EYS4118及びEYS4119をpEVE4377(図47)及びpEVE4390(図42)でそれぞれ形質転換した。実施例12に記載の手順に従って、NotI(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)で、37℃にて3時間ベクターを制限消化した。ロイシンを一切含まないソルビトールプレート上で、形質転換体を選択した。
得られた第3世代株EYS4353は、ランダムにゲノム中に組み込まれた、3つのN
AD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼ遺伝子(2つは大腸菌由来で、1つは、ラルストニア・ソラナケアルム由来)と、3つのNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼ遺伝子(2つはグルコノバクター・オキシダンス由来で、1つは、ピチア・スチピチス由来)を含む。
これに対し、2つ目の第3世代株は、大腸菌のNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼの3つのコピーと、グルコノバクター・オキシダンスのNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼの3つのコピーと、バックグラウンドであるピチア・スチピチス由来の1つのコピーとを含有し、2015年3月5日にフランスで、パスツール国立微生物保存機関(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes[National Collection of Microorganism Cultures] of the Institut Pasteur)(CNCM)(25 rue du Docteur Roux,75724 PARIS Cedex 15)に番号I−4960で寄託された。
実施例26.第4世代株の構築
第3世代株CNCM I−4960(実施例25)のLEU2マーカを、ベクターpEVE3163を用いて、実施例18に記載のようにロックスアウトした(loxed out)。得られた株EYS4955は、実施例12に記載の手順に従いNotI(New
England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)で37℃にて3時間制限消化したpEVE4377(図47)で形質転換した。ロイシンを一切含まないソルビトールプレート上で、形質転換体を選択した。
得られた第4世代株は、ゲノム中にランダムに組み込まれた、4つのNAD+特異的D−アラビトール4−オキシドレダクターゼ遺伝子(3つは大腸菌由来で、1つは、ラルストニア・ソラナケアルム由来)と、4つのNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼ遺伝子(3つはグルコノバクター・オキシダンス由来で、1つは、ピチア・スチピチス由来)を含有し、これは、2015年5月20日にフランスで、パスツール国立微生物保存機関(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes[National Collection of Microorganism Cultures] of the Institut Pasteur)(CNCM)(25 rue du Docteur Roux,75724 PARIS Cedex 15)に番号I−4981で寄託された。
実施例27.ピチア・オウメリ株を用いたポリオール生産(合成培地)
前述したように構築した酵母株CNCM I−4605、CNCM I−4982、CNCM I−4960及びCNCM I−4981を、以下のプロトコルに従って発酵させた。
発酵プロセスは、窒素制限下で実施し、増殖段階と生産成段階に分けることができる。増殖段階において、培地中のアンモニアは、バイオマスを生産するために完全に消費され、バイオマス形成が停止すると、生産段階が開始して、ポリオールレベルが増加する。記載する発酵工程に使用されるプラットフォームは、作業用量1Lの容器を用いた、INFORS HTからのMultifors2であった。発酵槽は、2つのRushton 6−ブレードディスクタービンを備えていた。発酵槽のスパージングのために空気を使用した。
培養全体を通して、温度、pH、攪拌、及び通気速度を制御した。温度は36℃に維持した。pHは、5M KOHの自動添加によって3に維持した。
通気速度は、1.0vmに維持し、初期撹拌機速度は、300rpmに設定した。溶存酸素(DO)が20%未満に降下しないように、自動攪拌カスケードを使用した。発酵工程に使用する運転条件を表10にまとめる。
発酵槽の接種のために、1段階増殖培養物を使用した。使用した増殖培地の組成を表11に掲載する。増殖培養物は、4つのバッフル(インデント)を備える500ml振盪フラスコ中の100mlの培地を接種することにより調製した。振盪フラスコは、30℃及び150rpmの振盪テーブル上でインキュベートした。細胞を約24時間にわたり増殖させて、中間指数増殖期に到らせた。
接種の前に、接種材料の量に相当する量の発酵槽中の培地を取り出し、発酵槽の接種のために、増殖培養物のアリコートを、1Lの最終量及び約0.2の開始時OD600(O
D600−at−start)(CDW約0.03g/L)まで使用した。発酵槽に使用した培地の組成を表12に記載する。
サンプルを一定の間隔で採取し、全発酵ブロスをグルコース消費及び細胞外ポリオール(キシリトール、アラビトール及びリビトール)形成について分析した。さらに、一般的発酵代謝物(グリセロール、酢酸塩、エタノール、ピルビン酸塩、リンゴ酸塩、フマル酸塩及びコハク酸塩)を決定した。バイオマスの増加は、一方で、OD600により、他方で、細胞乾燥重量(CDW)決定によって追跡した。前述した測定値は、ポリオール生産、アラビトール又はキシリトール収率及び生産性を決定するために使用し;結果を表13に示す。
ピチア・オウメリCNCM I−4605は、アラビトールのみを生産する。
ピチア・オウメリCNCM I−4982は、アラビトール、キシリトール及びリビトールを生産する。この株に、NAD+D−アラビトール4−オキシドレダクターゼ遺伝子の1つのコピーと、NADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼ遺伝子の1つのコピーを組み込んだ。このとき、修飾株は、アラビトールを消費することができるようになる。その結果、グルコースの完全な消費の後、アラビトール及びリビトールは、CNCM I−4982により再消費されて、より多くのキシリトールを生産する。
ピチア・オウメリCNCM I−4960(第3世代)及びCNCM I−4981(第4世代)は、キシリトール及びリビトールを生産するが、もはやアラビトールは生産しない。アラビトールのキシルロース及びキシリトールへの細胞内変換は、ブロス中へのアラビトールの排出を回避する上で十分効率的である。
NAD+特異的D−アラビトール−オキシドレダクターゼ、及びNADPH特異的キシリトールデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子のコピーがピチア・オウメリにより多く導入されるほど、キシリトールの力価、収率及び生産性は高くなる。