以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係る仮撚加工機1は、後述する糸加工部12を構成する各装置(後述の一次フィードローラ20、一次加熱ユニット21、撚止ガイド22、冷却ユニット23、加撚装置24、テンションセンサ30、二次フィードローラ25、合糸装置26、二次加熱ユニット27、三次フィードローラ28等)が、それぞれ、クリールスタンド11から糸加工部12を通って巻取部13に至る糸道が配置される糸の走行面(図1の紙面)と直交する、水平な機台長手方向(図1の紙面に垂直な方向)に複数配列された、機台長手方向に長尺の装置である。なお、以下では、機台長手方向と直交し且つ水平な方向(図1の左右方向)を「機台幅方向」、重力が作用する方向(図1の上下方向)を鉛直方向と定義して説明を行う。また、図1の紙面と直交する方向における手前側及び奥側を、それぞれ機台長手方向の「手前側」、「奥側」と定義し、図1の上側及び下側を、それぞれ鉛直方向の「上側」、「下側」を定義して説明を行う。また、仮撚加工機1では、クリールスタンド11、糸加工部12及び巻取部13が、クリールスタンド11側が外側となるように、機台幅方向に対称に配置されている。また、仮撚加工機1の動作は制御装置10によって制御されている。
クリールスタンド11は、複数のクリール11aを備えている。複数のクリール11aは、それぞれ給糸パッケージSを保持している。
糸加工部12は、一次フィードローラ20、一次加熱ユニット21、撚止ガイド22、冷却ユニット23、加撚装置24、テンションセンサ30、二次フィードローラ25、合糸装置26、二次加熱ユニット27、三次フィードローラ28などを備えている。
一次フィードローラ20は、給糸パッケージSから供給された複数の糸条Yに対して個別に複数設けられ、機台長手方向に配列されている。一次フィードローラ20は、対応する糸条Yを一次加熱ユニット21に向けて搬送する。一次加熱ユニット21は、糸条Yの糸道における、一次フィードローラ20の下流側に配置されている。一次加熱ユニット21は、一次フィードローラ20から送られてきた複数の糸条Yのうち隣接する4本の糸条Yに対して1つずつ設けられ、機台長手方向に配列されている。各一次加熱ユニット21は、対応する4本の糸条Yを加熱する。
一次加熱ユニット21の詳細な構成について説明する。一次加熱ユニット21は、図1〜図4に示すように、ボックス31、2つの第1加熱装置32a、2つの第2加熱装置32b、及び、複数の断熱材33を備えている。
ボックス31は、機台幅方向を長手方向とする直方体形状の部材である。ボックス31の内部には、下端及び機台幅方向両端において開口した収容空間31aが形成されている。
2つの第1加熱装置32a及び2つの第2加熱装置32bは、収容空間31aに収容されている。また、2つの第1加熱装置32aと2つの第2加熱装置32bとは、機台長手方向に交互に並んでいる。また、第1加熱装置32aと第2加熱装置32bとは、鉛直方向にずれて配置され、これにより、第2加熱装置32b全体が、第1加熱装置32aよりも上側に位置している。また、2つの第1加熱装置32a及び2つの第2加熱装置32bは、それぞれ同じ高さに位置している。これにより、2つの加熱装置32aと2つの加熱装置32bとが、千鳥状に配置される。
ここで、本実施の形態と異なり、例えば、後述の変形例2(図10(a)参照)のように、一次加熱ユニット21を、1つのボックス31の収容空間31aに1つの第1加熱装置32aと1つの第2加熱装置32bとが収容されたものとすることも考えられる。この場合には、2つの加熱装置(1つの第1加熱装置32aと1つの第2加熱装置32b)に対して1つのボックス31が必要となる。これに対して、本実施の形態では、1つのボックス31の収容空間31aに、2つの第1加熱装置32aと2つの第2加熱装置32bとが収容されている。そのため、本実施の形態では、4つの加熱装置(2つの第1加熱装置32aと2つの第2加熱装置32b)に対して1つのボックス31が必要となる。これにより、本実施の形態では、1つのボックス31の収容空間31aに1つの第1加熱装置32aと1つの第2加熱装置32bとが収容される場合と比較して、仮撚加工機1全体でのボックス31の数を少なくする(約半分にする)ことができ、仮撚加工機1を機台長手方向に小型化することができる。
各加熱装置32a、32bは、それぞれ、上流側加熱部34aと下流側加熱部34bとを備えている。下流側加熱部34bは、糸条Yの糸道における、上流側加熱部34aの下流側(機台幅方向の内側)に配置されている。また、上流側加熱部34a及び下流側加熱部34bは、それぞれ、加熱ブロック35と、発熱部材36と、温度センサ37とを備えている。
加熱ブロック35は、金属材料からなる、機台幅方向を長手方向とする直方体形状の部材である。ただし、下流側加熱部34bを構成する加熱ブロック35は、上流側加熱部34aを構成する加熱ブロック35よりも、機台幅方向の長さが長くなっている。また、上述したように、第2加熱装置32b全体が第1加熱装置32aの上側に位置している。これにより、第1加熱装置32aの加熱ブロック35と、第2加熱装置32bの加熱ブロック35とは、機台長手方向から見て部分的にも重ならない程度に、鉛直方向にずれて配置されている。
また、加熱ブロック35には、糸走行溝38が形成されている。糸走行溝38は、加熱ブロック35の機台長手方向における中央部に形成され、機台幅方向に加熱ブロック35の全長にわたって延びているとともに、下端及び機台幅方向の両端において開口している。また、糸走行溝38内には、セラミックス材料などからなり、機台幅方向に沿って任意の間隔に配列された、複数の糸ガイド71が設けられている。糸走行溝38を走行する糸条Yは、複数の糸ガイド71に案内されることで、加熱ブロック35に接触することなく糸走行溝38内を機台幅方向に走行する。
また、各加熱ブロック35の糸走行溝38の真上に位置する部分には、機台幅方向に加熱ブロック35の全長にわたって延びているとともに機台幅方向の両端において開口した、発熱部材36を挿通するための挿通孔39が形成されている。また、各加熱ブロック35の上面の、機台長手方向及び機台幅方向における中央部には、凹部40が形成されている。
ここで、加熱ブロック35は、機台長手方向における手前側半分を形成するブロック片35aと奥側半分を形成するブロック片35bとが接合されることによって形成されたものである。そして、ブロック片35aに糸走行溝38の手前側半分、挿通孔39の手前側半分及び凹部40の手前側半分が形成され、ブロック片35bに糸走行溝38の奥側半分、挿通孔39の奥側半分及び凹部40の奥側半分が形成されている。
発熱部材36は、ニクロム線ヒータ、シーズヒータなどであって、挿通孔39に挿通されている。また、発熱部材36は、挿通孔39から機台幅方向の両側に引き出され、電流付与回路29に接続されている。
電流付与回路29は、発熱部材36に電流を流すための回路である。そして、電流付与回路29によって発熱部材36に電流を流すと、発熱部材36が発熱し、加熱ブロック35が加熱される。また、電流付与回路29は、各第1加熱装置32a及び各第2加熱装置32bにおける各加熱ブロック35の発熱部材36に流れる電流を個別に変更することができるようになっている。
温度センサ37は、加熱ブロック35の凹部40内に収容されている。温度センサ37は、加熱ブロック35の温度を検出するためのものである。
複数の断熱材33は、2つの第1加熱装置32aと2つの第2加熱装置32bとが収容された収容空間31aの隙間を埋めるように配置されている。ただし、複数の断熱材33は、収容空間31aのうち、各加熱ブロック35の糸走行溝38の下側に位置する部分を避けるように配置されている。これにより、各加熱ブロック35の糸走行溝38の下側には、鉛直方向の下端及び機台幅方向の両端において開口したスリット19が形成されている。これにより、下側からスリット19を介して糸走行溝38に糸条Yを挿入することができるようになっている。
そして、1つの一次加熱ユニット21内を走行する4本の糸条Yのうち、機台長手方向の手前側から1、3番目の2本の糸条Yは、2つの第1加熱装置32aの糸走行溝38を走行する。また、これら4本の糸条Yのうち、機台長手方向の手前側から2、4番目の2本の糸条は、2つの第2加熱装置32bの糸走行溝38を走行する。そして、糸走行溝38を走行する糸条Yは、加熱ブロック35の糸走行溝38内の熱によって加熱される。
撚止ガイド22は、複数の糸条Yに対して個別に複数設けられ、糸条Yの糸道における一次加熱ユニット21のすぐ上流側に配置されている。また、これら複数の撚止ガイド22は、機台長手方向に配列されている。撚止ガイド22は、後述するように糸条Yに撚りを付与したときに、撚りが撚止ガイド22よりも上流側に伝達されないようにするためのものである。ここで、撚止ガイド22は、1本の糸条に対して1つずつ設けられている。
冷却ユニット23は、糸条Yの糸道における一次加熱ユニット21の下流側に配置されている。冷却ユニット23は、冷却装置41、第1共通ダクト42、第2共通ダクト43、第1接続用ダクト44及び第2接続用ダクト45を備えている。
冷却装置41は、複数の糸条Yに対して個別に複数設けられている。これら複数の冷却装置41は、複数の第1冷却装置41aと複数の第2冷却装置41bとが、機台長手方向に交互に配列されたものである。複数の第1冷却装置41a、及び、複数の第2冷却装置41bは、それぞれ、同じ高さにおいて、機台長手方向に配列されている。また、第1冷却装置41aと第2冷却装置41bとは、後述の共通ダクト42、43の下面と直交する方向にずれて配置されている(機台長手方向から見てずれて配置されている)ことによって、第2冷却装置41bが、第1冷却装置41よりも上側に位置している。
各冷却装置41は、図5〜8に示すように、一対の対向部材51a、51bと、個別ダクト52とを備えている。対向部材51a、51bは、機台幅方向に長尺であり、機台幅方向から見て略「コ」の字となるように折り曲げられた、金属材料からなる板状体である。対向部材51aと51bとは、機台長手方向に、糸条Yを走行させるための隙間51cをあけて対向している。
また、対向部材51aの対向部材51bとの対向面51a1には、隙間51cにおける糸Yの走行方向に沿って配列された複数の接触部71aが設けられている。また、対向部材51bの対向部材51aとの対向面51b1には、隙間51cにおける糸Yの走行方向に沿って配列された複数の接触部71bが設けられている。また、複数の接触部71aと、複数の接触部71bとは、上側から見て千鳥状に配列されている。そして、隙間51cを走行する糸条Yは、接触部71a、71bに接触することで、機台長手方向の振動が抑制される。
個別ダクト52は、対向部材51a、51bの真上に配置され、対向部材51a、51bの長手方向の全長にわたって延びている。個別ダクト52の内部には、個別ダクト52の長手方向におけるほぼ全長にわたって延びた内部空間52aが形成されている。そして、対向部材51a、51bは、個別ダクト52の下面に取り付けられている。また、個別ダクト52の下端部の、対向部材51aと51bとの間の隙間51cと重なる部分には、個別ダクト52の長手方向に沿ってほぼ等間隔に複数の連通孔52bが形成されている。これにより、隙間51cは、複数の連通孔52bを介して、個別ダクト52の内部空間52aと連通している。また、個別ダクト52の上端部には、個別ダクト52の長手方向における中央部に、後述するように接続用ダクト44、45との接続を行うための連通孔52cが形成されている。
ここで、対向部材51a、51bの個別ダクト52への取付構造について説明する。対向部材51aは、ボルト72によって個別ダクト52の下面に固定されている。また、対向部材51aの対向面51a1を形成する部分には、対向部材51aの長手方向の中央部及び両端部に、それぞれ、位置決め孔73aが形成されている。また、対向部材51aの各位置決め孔73aの下側に位置する部分には、ガイド挿通孔74aが形成されている。
対向部材51bの、各位置決め孔73aと対向する部分には、位置決め孔73bが形成されている。また、対向部材51aと対向部材51bとの間には、対向部材51a、51bの長手方向の中央部及び両端部と重なる部分に、それぞれ、スペーサ50が配置されている。スペーサ50には、位置決め孔73a、73bと重なる貫通孔50aが形成されている。位置決め孔73a、73b及び貫通孔50aには、位置決めピン76が挿通されている。これにより、対向部材51bは、位置決めピン76及び対向部材51aを介して個別ダクト52に取り付けられるとともに、対向部材51aに対する上下方向の位置決めが行われる。また、位置決めピン76は、対向部材51bに固定されている。
また、対向部材51bのガイド挿通孔74aと対向する部分には、ガイド挿通孔74bが形成されている。ガイド挿通孔74a、74bには、セラミックス材料からなるセラミックガイド77が挿通されている。セラミックガイド77は、隙間51cを走行する糸条Yよりも上方に位置し、後述するように、隙間51c内の空気の流れによって、鉛直方向に振動しようとする、隙間51cを走行する糸条Yと接触することで、糸条Yが鉛直方向に振動するのを抑制する。また、セラミックガイド77は、対向部材51bに固定されている。
一方、個別ダクト52には、3つのレバー81が設けられている。3つのレバー81は、個別ダクト52の長手方向における中央部及び両端部の、機台長手方向における奥側の側面に設けられ、機台長手方向に延びた揺動軸82に揺動自在に支持されているとともに、揺動軸82に設けられたバネ83によって、機台長手方向の手前側に付勢されている。
そして、レバー81は、通常、長手方向が鉛直方向と平行となるような向きに配置されている。これにより、図6(a)、図7(a)に示すように、バネ83に付勢されたレバー81が、位置決めピン76に接触するとともに、位置決めピン76を介して、対向部材51bを対向部材51aに向けて付勢する。その結果、対向部材51bは、対向部材51aとの間にスペーサ50を挟んだ状態で対向部材51aに向けて押し付けられ、対向部材51aに対する機台長手方向の位置決めが行われる。
一方、対向部材51a、51bの対向面51a1、51b1の清掃を行う際などには、図6(b)、図7(b)に示すように、レバー81を図6(a)、図7(a)に示す位置から反時計回り方向に約90°揺動させる。すると、レバー81は、自身の長手方向が機台幅方向と平行な向きに配置され、位置決めピン76と接触しなくなる。これにより、対向部材51bが機台幅方向に移動自在となる。そして、対向部材51bを対向部材51aから離す方向に移動させると、位置決めピン76が位置決め孔73aから抜け、セラミックガイド77がガイド挿通孔74aから抜ける。これにより、対向部材51bを個別ダクト52から取り外すことができるようになっている。そして、本実施の形態では、対向部材51bが取り外されることによって露出した対向部材51aの対向面51a1、及び、取り外された対向部材51bの対向面に51b1に付着した糸や油剤などを除去することができる。このとき、取り外した対向部材51bについては、丸ごと洗浄することも可能である。
第1共通ダクト42は、複数の冷却装置41の上方に配置され、複数の冷却装置41にまたがって機台長手方向に延びている。これにより、第2冷却装置41bよりも下方に配置された第1冷却装置41aは、第2冷却装置41bに対して、第1共通ダクト42と反対側に位置している。また、第1共通ダクト42の下面は、機台幅方向における内側の部分ほど上側に位置するように、機台幅方向に対して傾いている。第1共通ダクト42には、機台長手方向にその全長にわたって延びた内部空間42aが形成されている。また、第1共通ダクト42の内部空間42aには、第1ブロア46aが接続されている。第1ブロア46aを駆動すると、内部空間42aに機台長手方向の図5(a)に矢印W11で示したような空気の流れが生じる。また、第1共通ダクト42の下端部には、内部空間42aと連通する複数の連通孔42bが形成されている。ここで、複数の連通孔42bは、複数の第1冷却装置41aを、互いに隣接する2つの第1冷却装置41aの組に分けたときに、第1共通ダクト42の、機台長手方向における、各組を構成する2つの第1冷却装置41aの間に位置する部分に形成されている。ここで、機台幅方向に対称に配置された第1共通ダクト42は末端で1つに連結されて1つの第1ブロア46aに接続されていてもよい。
第2共通ダクト43は、複数の冷却装置41の上方に配置され、第1共通ダクト42の機台幅方向における外側に隣接するように配置され、複数の冷却装置41にまたがって、機台長手方向に延びている。これにより、第2冷却装置41bよりも下方に配置された第1冷却装置41aは、第2冷却装置41bに対して、第1共通ダクト42と反対側に位置している。また、第2共通ダクト43の下面は、機台幅方向における内側の部分ほど上側に位置するように、機台幅方向に対して傾いている。第2共通ダクト43には、機台長手方向の全長にわたって延びた内部空間43aが形成されている。また、第2共通ダクト43の内部空間43aには、第2ブロア46bが接続されている。第2ブロア46bを駆動すると、内部空間43aに図7(b)に矢印W21で示したような機台長手方向の空気の流れが生じる。また、第2共通ダクト43の下端部には、内部空間43aと連通する複数の連通孔43bが形成されている。ここで、複数の連通孔43bは、複数の第2冷却装置41bを、互いに隣接する2つの第2冷却装置41bの組に分けたときに、第2共通ダクト43の、機台長手方向における、各組を構成する2つの第2冷却装置41bの間に位置する部分に形成されている。ここで、機台幅方向に対称に配置された第2共通ダクト43は末端で1つに連結されて1つの第2ブロア46bに接続されていてもよい。
第1接続用ダクト44は、上述の隣接する2つの第1冷却装置41aの組に対して1つずつ設けられ、鉛直方向における第1冷却装置41aと第1共通ダクト42との間に配置されている。第1接続用ダクト44は、上端部において第1共通ダクト42の対応する連通孔42bに接続されている。また、第1接続用ダクト44は、連通孔42bとの接続部分から下側に延び、途中で、機台長手方向の両側に分岐して折れ曲がり、さらにその先端部において下側に折れ曲がって、第1冷却装置41aの個別ダクト52の連通孔52cと接続されている。これにより、上記2つの第1冷却装置41aの対向部材51aと51bとの間の隙間51cが、個別ダクト52の内部空間52a、第1接続用ダクト44の内部空間44aを介して、第1共通ダクト42の内部空間42aと連通している。
第2接続用ダクト45は、上述の隣接する2つの第2冷却装置41bの組に対して1つずつ設けられ、鉛直方向における第2冷却装置41bと第2共通ダクト43との間に配置されている。第2接続用ダクト45は、上端部において第2共通ダクト43の連通孔43bに接続されている。また、第2接続用ダクト45は、連通孔43bとの接続部分から下側に延び、途中で、機台長手方向の両側に分岐して折れ曲がり、さらにその先端部において下側に折れ曲がって第2冷却装置41bの個別ダクト52の連通孔52cと接続されている。これにより、上記2つの第2冷却装置41bの対向部材51aと51bとの間の隙間51cが、個別ダクト52の内部空間52a、及び、第2接続用ダクト45の内部空間45aを介して、第2共通ダクト43の内部空間43aと接続されている。
そして、冷却ユニット23では、ブロアモータ47a、47bによりブロア46a、46bを駆動して、第1共通ダクト42の内部空間42a及び第2共通ダクト43の内部空間43aに、それぞれ、図5(a)、(b)の矢印W11、W21のような機台長手方向の空気の流れを生じさせる。すると、これらの空気の流れに伴って、第1、第2冷却装置41a、41bの対向部材51aと51bとの間の隙間51cの空気が、それぞれ、図5(a)、(b)に矢印W12、W22で示したように、個別ダクト52の内部空間52a、及び、接続用ダクト44、45の内部空間44a、45aを介して共通ダクト42、43の内部空間42a、43aに流れ込む。これにより、隙間51cに空気の流れが生じ、隙間51cを走行する糸条Yが冷却される。
加撚装置24は、複数の糸条Yに対して個別に複数設けられており、冷却装置41の下流側に配置されている。また、これら複数の加撚装置24は、複数の第1加撚装置24aと複数の第2加撚装置24bとが、機台長手方向に沿って交互に配列されたものである。また、第2加撚装置24bは、第1加撚装置24aから機台幅方向外側及び上側にずれた位置に配置されている。これにより、第1加撚装置24aと第2加撚装置24bとをずらさずに機台長手方向から見て重なるように配置した場合と比較して、加撚装置24を高密度に配置することができる。
加撚装置24は、糸条Yに撚りを付与する。このとき、第1加撚装置24aと第2加撚装置24bとで、撚りの方向が反対向きとなっている。また、このとき、糸条Yのうち、撚止ガイド22と、第1、第2加撚装置24a、24bとの間の部分に撚りが付与される。また、このとき、糸条Yは、一次加熱ユニット21によって加熱された上で撚りが付与され、撚りが付与された糸条Yが冷却ユニット23によって冷却されることになる。なお、第1加撚装置24aと第2加撚装置24bとで、撚りの方向が同じ向きとなっていてもよい。
ここで、加熱装置32a、32bの配置と、冷却装置41a、41bの配置と、加撚装置24a、24bの配置との関係について説明する。糸加工部12では、糸条Yが、第1加熱装置32aの糸走行溝38、第1冷却装置41aの隙間51c及び第1加撚装置24aを順に走行する。そのため、糸加工部12においては、加熱装置32a、第1冷却装置41a及び第1加撚装置24aが、適切な糸条Yの屈曲角を維持することができるような糸道上に配置されるように、加熱装置32aと、第1冷却装置41aと、第1加撚装置24aとの位置関係を決める必要がある。また、糸加工部12では、糸条Yが、第2加熱装置32bの糸走行溝38、第2冷却装置41bの隙間51c及び第2加撚装置24bを順に走行する。そのため、糸加工部12においては、適切な糸道が形成されるように、第2加熱装置32bと、第2冷却装置41bと、第2加撚装置24bとの位置関係を決める必要がある。
このとき、本実施の形態とは異なり、例えば特開平11−107084号公報などに記載されているのと同様に、個別ダクト52及び接続用ダクト44、45がなく、各冷却装置41の対向部材51a、51bが共通ダクト42、43の下面に直接接合されることによって、隙間51cと共通ダクト42、43の内部空間42a、43aとが連通しているとすると、冷却装置41a、41bを、共通ダクト42、43から離して配置することができない。そのため、第1冷却装置41aと第2冷却装置41bとを、共通ダクト42、43の下面と直交する方向にずらして配置することができない。その結果、上述したように、第1加熱装置32aと第2加熱装置32b、及び、第1加撚装置24aと第2加撚装置24bとをそれぞれずらして配置したときに、第1冷却装置41a及び第2冷却装置41bを、加熱装置32a、32b及び加撚装置24a、24bの配置に応じて、適切な糸条Yの屈曲角を維持することができるような糸道上に配置することができない。
これに対して、本実施の形態では、第1冷却装置41a及び第2冷却装置41bが、共通ダクト42、43から離れて配置されているとともに、第1冷却装置41aと第2冷却装置41bとが、共通ダクト42、43の下面と直交する方向にずれて配置されている。そして、第1接続用ダクト44を介して、第1冷却装置41aの隙間51cと第1共通ダクト42の内部空間42aとが接続され、第2接続用ダクト45を介して、第2冷却装置41bの隙間51cと第2共通ダクト43の内部空間43aとが接続されている。
このように、本実施の形態では、第1冷却装置41aと第2冷却装置41bとを、共通ダクト42、43の下面と直交する方向にずらして配置することができるため、第1冷却装置41a及び第2冷却装置41bを、加熱装置32a、32b及び加撚装置24a、24bの配置に応じて、適切な糸条Yの屈曲角を維持することができるような糸道上に配置することができる。
また、本実施の形態では、第1冷却装置41a及び第2冷却装置41bが、それぞれ、第1共通ダクト42及び第2共通ダクト43から離れている。しかしながら、本実施の形態では、第1、第2冷却装置41a、41b及び第1、第2共通ダクト42、43がこのように配置されている場合でも、第1接続用ダクト44を介して、第1冷却装置41aの隙間51cと第1共通ダクト42の内部空間42aとを接続することができるとともに、第2接続用ダクト45を介して、第2冷却装置41bの隙間51cと第2共通ダクト43の内部空間43aとを接続することができる。
このとき、上述したように、第1冷却装置41aは、第2冷却装置41bに対して、第1共通ダクト42と反対側に配置されている。しかしながら、本実施の形態では、接続用ダクト44が、隣接する2つの第1冷却装置41aに対して1つずつ設けられている。したがって、第1接続用ダクト44を介して、第1冷却装置41aの隙間51cと第1共通ダクト42の内部空間42aとを接続することができる。
さらに、本実施の形態では、このように、第1冷却装置41a及び第2冷却装置41bの両方を、それぞれ、第1共通ダクト42及び第2共通ダクト43から離して配置することができるため、後述の変形例5のように、第2冷却装置41bの対向部材51a、51bが共通ダクト122(図13参照)の下面に直接接合される場合と比較して、第1冷却装置41aと第2冷却装置41bの配置の自由度が高い。これにより、第1冷却装置41a及び第2冷却装置41bを、より確実に、加熱装置32a、32b及び加撚装置24a、24bの配置に応じて、適切な糸条Yの屈曲角を維持することができるような糸道上に配置することができる。
テンションセンサ30は、複数の糸条Yに対して個別に複数設けられ、加撚装置24の下流側に配置されている。また、これら複数のテンションセンサ30は、第1加撚装置24aによって仮撚加工が施された糸条Yの張力を検出するための複数の第1テンションセンサ30aと、複数の第2加撚装置24bによって仮撚加工が施された糸条Yの張力を検出するための複数の第2テンションセンサ30bとが、機台長手方向に交互に並んだものである。また。第2テンションセンサ30bは、第1テンションセンサ30aよりも上側に配置されている。テンションセンサ30は、加撚装置24によって仮撚加工が施された糸条Yの張力を検出する。テンションセンサ30による糸条Yの張力の検出結果は、例えば、形成されたパッケージP1、P2(図9参照)の品質の判定などに用いられる。
二次フィードローラ25は、複数の糸条Yに対して個別に複数設けられ、糸条Yの糸道におけるテンションセンサ30の下流側に配置されている。また、これら複数の二次フィードローラ25は、機台長手方向に配列されている。二次フィードローラ25は、加撚装置24によって仮撚加工が施された糸条Yを、合糸装置26を経由させて二次加熱ユニット27に向けて搬送する、あるいは、合糸装置26を経由させずに直接二次加熱ユニット27に向けて搬送する。また、二次フィードローラ25による糸条Yの搬送速度は、一次フィードローラ20による糸条Yの搬送速度よりも速くなっており、糸条Yは、一次フィードローラ20と二次フィードローラ25による搬送速度の差によって延伸される。また、撚止ガイド22と加撚装置24との間で撚りが熱固定された糸条Yは、加撚装置24と二次フィードローラ25との間で解撚される。これにより、糸条Yの撚りが解かれるが、糸条Yは、撚りが熱固定されているため、各フィラメントが波状の形態をした仮撚りされた状態となっている。
合糸装置26は、隣接する2本の糸条Y(第1加撚装置24aによって仮撚加工が施された1本の糸条と、第2加撚装置24bによって仮撚加工が施された1本の糸条の合計2本の糸条Y)に対して1つずつ設けられ、二次フィードローラ25の下流側に機台長手方向に配列されている。合糸装置26は、対応する2本の糸条Yを合糸する。
二次加熱ユニット27は、合糸装置26の下流側に配置されている。二次加熱ユニット27は、例えば、熱媒により糸条走行部を均一温度に加熱する加熱装置であり、電流付与回路(図示せず)によって発熱部材(図示せず)に電流を流すことで熱媒が加熱されるように構成されている。そして、二次加熱ユニット27は、延伸、仮撚加工が施された糸条Yに、熱媒の熱を利用して所定の弛緩熱処理を施す。
三次フィードローラ28は、複数の糸条Yに対して個別に複数設けられ、糸条Yの糸道における二次加熱ユニット27の下流側に配置されている。また、これら複数の三次フィードローラ28は、機台長手方向に配列されている。三次フィードローラ28は、弛緩熱処理が施された糸条Yを、巻取部13に向けて搬送する。また、三次フィードローラ28は、二次加熱ユニット27と機台幅方向に間隔をあけて配置されている。二次加熱ユニット27と三次フィードローラ28との間の空間には、図示しない作業台又は作業台車が設けられ、作業者が、この作業台又は作業台車の上で、糸掛けなどの作業を行うことができるようになっている。
巻取部13は、複数の巻取装置60を備えている。また、これら複数の巻取装置60は、鉛直方向及び機台長手方向に並んでいる。また、巻取装置60は、図9(a)、(b)に示すように、クレードル61、巻取ローラ62、綾振装置63を備えている。
クレードル61には、図9(a)に示すように、1つのボビンB1を装着することができるようになっている。そして、合糸装置26において2本の糸条Yが合糸される場合に、クレードル61に1つのボビンB1が装着される。また、クレードル61には、図9(b)に示すように、1つのボビンB1の代わりに、軸方向の長さがボビンB1の約半分であり、軸方向に連結された2つのボビンB2を装着することができるようにもなっている。そして、合糸装置26において2本の糸条Yが合糸されない場合に、クレードル61に2つのボビンB2が装着される。
クレードル61に装着されたボビンB1、B2は、軸方向が機台長手方向と平行となるような向きに配置され、クレードル61によって回転自在に支持される。巻取ローラ62は、機台長手方向に延び、クレードル61に装着されたボビンB1、B2の表面、ボビンB1に2本の糸条Yの合糸Yaが巻き取られることによって形成されたパッケージP1、あるいは、ボビンB2に糸条Yが巻き取られることによって形成されたパッケージP2の表面に接触している。巻取ローラ62には、巻取モータ64が接続されている。そして、巻取モータ64を駆動すると、巻取ローラ62が回転し、これに連動して、巻取ローラ62と接触したボビンB1、B2あるいはパッケージP1、P2が回転する。これにより、合糸YaがボビンB1に巻き取られる、あるいは、糸条YがボビンB2に巻き取られる。ここで、巻取モータ64は、クレードル61に装着されたボビンB1、B2を直接駆動するものであってもよい。このとき、巻取ローラ62は、ボビンB1、B2の回転に連動して回転する従動ローラとなる。
綾振装置63は、糸条Yの糸道におけるクレードル61及び巻取ローラ62の上流側に配置されている。綾振装置63は、3つのプーリ66a〜66cと、無端状のベルト67と、2つの綾振ガイド68とを有している。プーリ66aとプーリ66bとは、機台長手方向に間隔をあけて配置されている。プーリ66cは、機台長手方向におけるプーリ66aと66bとの間に、プーリ66a、66bから機台幅方向の内側にずれた位置に配置されている。プーリ66cは、綾振モータ69に接続され、綾振モータ69を駆動すると、プーリ66cが回転する。ベルト67は、3つのプーリ66a〜66cに巻き掛けられている。2つの綾振ガイド68は、ベルト67のプーリ66aと66bとの間に位置する部分に、間隔をあけて取り付けられている。また、2つの綾振ガイド68のうち片方の綾振ガイド68は、ベルト67から取り外し可能となっている。
そして、合糸装置26において2本の糸条Yが合糸される場合には、図9(a)に示すように、上記片方の綾振ガイド68が予めベルト67から取り外されており、糸加工部12から巻取部13に送られてきた合糸Yaが、もう片方の綾振ガイド68に掛けられた上で巻取ローラ62に向けて送られる。一方、合糸装置26において2本の糸条Yの合糸が行われない場合には、図9(b)に示すように、2つの綾振ガイド68の両方がベルト67に取り付けられており、糸加工部12から巻取部13に送られてきた糸条Yのうち、第1加撚装置24aによって仮撚加工が施された糸条Yが、片方の綾振ガイド68に掛けられた上で巻取ローラ62に送られ、第2加撚装置24bによって仮撚加工が施された糸条Yが、もう片方の綾振ガイド68に掛けられた上で巻取ローラ62に送られる。
綾振装置63では、綾振モータ69を駆動してプーリ66cを正逆回転させると、ベルト67が走行するとともにプーリ66a、66bが従動回転する。これにより、綾振ガイド68がボビンB1、B2の軸方向(機台長手方向)に往復移動し、綾振ガイド68に掛けられた合糸Yaあるいは糸条YがボビンB1、B2の軸方向に綾振りされる。
そして、巻取装置60は、合糸YaをボビンB1の軸方向に綾振りしつつ、ボビンB1に巻き取ってパッケージP1を形成する、あるいは、2本の糸条YをボビンB2の軸方向に綾振りしつつ、2つのボビンB2に巻き取ってパッケージP2を形成する。
次に、仮撚加工機1の動作を制御する制御装置10について説明する。制御装置10は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などからなる。また、制御装置10は、図1、図5に示すように、インバータ回路54を介してブロア46a、46b(厳密にはブロア46a、46bを駆動するためのモータ)と接続されており、インバータ回路54に対する制御を行うことによって、ブロア46a、46b動作を制御する。ここで、インバータ回路54は、各ブロア46a、46bに対して個別に設けられたものであってもよいし、2以上のブロア46a、46bに対して共通に設けられたものであってもよい。
また、制御装置10は、図1、図3、図4に示すように、電流付与回路29を介して、各加熱装置32a、32bの発熱部材36と接続されており、電流付与回路29に対する制御を行うことによって、発熱部材36に流れる電流を制御する。ここで、電流付与回路29は、各発熱部材36に対して個別に設けられたものであってもよいし、2以上の発熱部材36に対して共通に設けられたものであってもよい。また、制御装置10は、図3、図4に示すように、温度センサ37に接続されており、温度センサ37から加熱ブロック35の温度に関する信号を受信する。
なお、詳細な説明は省略するが、制御装置10は、このほか、一次フィードローラ20、加撚装置24、テンションセンサ30a、30b、二次フィードローラ25、二次加熱ユニット27、三次フィードローラ28、巻取装置60(巻取モータ64、綾振モータ69)等とも接続されており、これらの動作を制御する。
次に、制御装置10による電流付与回路29の制御(加熱ブロック35の温度制御)について説明する。制御装置10のROMなどには、予め、例えば糸条Yの種類ごとに、各加熱装置32a、32bにおける、上流側加熱部34a及び下流側加熱部34bの加熱ブロック35に対する設定温度が記憶されている。そして、作業者が、図示しない操作部を操作するなどして、各加熱装置32a、32bにおいて加熱する糸条Yの種類を選択すると、選択された糸条Yの種類に応じて、各加熱装置32a、32bにおける上流側加熱部34a及び下流側加熱部34bの加熱ブロック35に対する設定温度が個別に決定される。
そして、制御装置10は、温度センサ37によって検出された温度に基づいて、各加熱ブロック35の温度を決定された設定温度に近づけるように、電流付与回路29を制御する。より詳細に説明すると、例えば、温度センサ37によって検出された温度が設定温度よりも低い場合には、設定温度との差が大きい場合ほど、対応する発熱部材36に流れる電流を大きくさせるように電流付与回路29を制御する。一方、温度センサ37によって検出された温度が設定温度よりも高い場合には、設定温度との差が大きい場合ほど、対応する発熱部材36に流れる電流を小さくさせるように電流付与回路29を制御する。
そして、このように、制御装置10により電流付与回路29を制御することによって、本実施の形態では、各加熱装置32a、32bにおける上流側加熱部34aの加熱ブロック35の温度、及び、各加熱装置32a、32bにおける下流側加熱部34bの加熱ブロック35の温度を個別に制御することができる。これにより、糸加工部12において、複数種類の糸条Y(例えば、材質や太さなどが異なる糸条)に撚りを付与する場合に、各糸条Yを個別に、その種類に応じた、加撚装置24によって撚りを付与するのに適切な温度に加熱することができる。
例えば、第1加熱装置32aの糸走行溝38を走行する糸条Yがカチオン可染ポリエステル糸(CD糸)であり、第2加熱装置32bの糸走行溝38を走行する糸条Yがポリエステル糸である場合に、第2加熱装置32bの上流側加熱部34aの加熱ブロック35の温度を、第1加熱装置32aの上流側加熱部34aの加熱ブロック35の温度よりも高くするとともに、第2加熱装置32bの下流側加熱部34bの加熱ブロック35の温度を、第1加熱装置32aの下流側加熱部34bの加熱ブロック35の温度よりも高くする。これにより、ポリエステル糸に付与する熱量をカチオン可染ポリエステル糸に付与する熱量よりも大きくすることができる。ここで、カチオン可染ポリエステル糸とは、カチオン染料に染まりやすい状態にしたポリエステル糸のことである。本実施の形態では、このように、カチオン可染ポリエステル糸に付与する熱量とポリエステル糸に付与する熱量とを異ならせることができるので、カチオン可染ポリエステル糸及びポリエステル糸をそれぞれ適切な温度まで加熱することができる。
また、本実施の形態では、上述したように、各加熱装置32a、32bにおいて、下流側加熱部34bの加熱ブロック35の機台幅方向の長さが、上流側加熱部34aの加熱ブロック35の機台幅方向の長さよりも長くなっている。また、上述したように、各加熱装置32a、32bにおいて、上流側加熱部34aの加熱ブロック35に対する設定温度は、下流側加熱部34bの加熱ブロック35に対する設定温度よりも高くなっている。これにより、各加熱装置32a、32bでは、糸条Yは、上流側加熱部34aの糸走行溝38を走行するときに短時間で急激に温度上昇し、その後、下流側加熱部34bの糸走行溝38を走行するときに、上流側加熱部34aの糸走行溝38を走行するときよりも長い時間をかけて緩やかに温度上昇する。
また、本実施の形態では、上述したように、第1加熱装置32aの加熱ブロック35と、第2加熱装置32bの加熱ブロック35とが、機台長手方向から見て部分的にも重ならない程度に、鉛直方向にずれて配置されている。そのため、第1加熱装置32aの加熱ブロック35と、第2加熱装置32bの加熱ブロック35とが、機台長手方向から見て完全に重なる場合や、後述の変形例3のように部分的に重なる場合と比較して、第1加熱装置32aの加熱ブロック35と、第2加熱装置32bの加熱ブロック35との間での熱の伝達が生じにくい。さらに、本実施の形態では、加熱装置32a、32bが収容された収容空間31aの隙間を埋めるように複数の断熱材33が配置されているため、第1加熱装置32aの加熱ブロック35と第2加熱装置32bの加熱ブロック35との間でさらに熱の伝達が生じにくい。
これらのことから、本実施の形態では、第1加熱装置32aの加熱ブロック35と第2加熱装置32bの加熱ブロック35との間での熱の干渉が生じにくい。したがって、各加熱装置32a、32bの加熱ブロック35の温度を、確実に設定温度とすることができる。
また、上述したように、加熱装置32a、32bでそれぞれカチオン可染ポリエステル糸及びポリエステル糸を加熱するために、第2加熱装置32bの上流側加熱部34aの加熱ブロック35の設定温度を、第1加熱装置32aの上流側加熱部34aの加熱ブロック35の設定温度よりも高くするとともに、第2加熱装置32bの下流側加熱部34bの加熱ブロック35の設定温度を、第1加熱装置32aの下流側加熱部34bの加熱ブロック35の設定温度よりも高くしたときには、第2加熱装置32bの加熱ブロック35の熱が、第2加熱装置32bよりも下側に位置する第1加熱装置32aの加熱ブロック35には伝達されにくい。したがって、この場合には、各加熱装置32a、32bの加熱ブロック35の温度をより確実に設定温度とすることができる。
また、第1加熱装置32aの糸走行溝38を走行する糸条Yと第2加熱装置32bの糸走行溝38を走行する糸条Yが種類の同じものである場合には、第1加熱装置32aと第2加熱装置32bとで、上流側加熱部34aの加熱ブロック35の設定温度を同じとし、下流側加熱部34bの加熱ブロック35の設定温度を同じとする。これにより、このような場合でも、糸条Yを適切な温度まで加熱することができる。
次に、制御装置10による、ブロア46a、46bの制御について説明する。第1冷却装置41aの隙間51cを走行する糸条Yと、第2冷却装置41bの隙間51cを走行する糸条Yとが同種のものである場合には、制御装置10は、ブロア46a、46bを同じ速度で回転させる。これにより、第1冷却装置41aの隙間51cと、第2冷却装置41bの隙間51cとで、同程度の空気の流れが生じ、第1冷却装置41aの隙間51cを走行する糸条Yと、第2冷却装置41bの隙間51cを走行する糸条Yとが、同程度に冷却される。
一方、第1冷却装置41aの隙間51cを走行する糸条Yと、第2冷却装置41bの隙間51cを走行する糸条Yとで種類(材質、太さなど)が異なっている場合には、制御装置10は、これらの糸条Yの種類に合わせて、ブロア46aと46bとを異なる回転速度で回転させることにより、第1共通ダクト42の内部空間42aにおける空気の流速と、第2共通ダクト43の内部空間43aにおける空気の流速とを異ならせる。これにより、第1冷却装置41aの隙間51cを流れる空気の流速と、第2冷却装置41bの隙間51cを流れる空気の流速とを異ならせることができ、第1冷却装置41aの隙間51cを走行する糸条Y、及び、第2冷却装置41bの隙間51cを走行する糸条Yを、糸条Yの種類に応じた適切な程度に冷却することができる。
例えば、第1冷却装置41aによって冷却される糸条Yがカチオン可染ポリエステル糸であり、第2冷却装置41bによって冷却される糸条Yがポリエステル糸である場合には、第2ブロア46bの回転速度を第1ブロア46aの回転速度よりも速くすることにより、ポリエステル糸から奪う熱量を、カチオン可染ポリエステル糸から奪う熱量よりも大きくすることができる。本実施の形態では、このようにカチオン可染ポリエステル糸から奪う熱量とポリエステル糸から奪う熱量とを異ならせることができるので、カチオン可染ポリエステル糸及びポリエステル糸をそれぞれ適切な温度まで冷却することができる。
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。
上述の実施の形態では、1つのボックス31に、2つの第1加熱装置32aと2つの第2加熱装置32bとが収容されていたが、これには限られない。例えば、変形例1では、図10(a)に示すように、1つのボックス31に、1つの第1加熱装置32aと1つの第2加熱装置32bとが収容されている。また、変形例2では、図10(b)に示すように、1つのボックス31に、3つの第1加熱装置32aと3つの第2加熱装置32bとが収容されている。なお、図10(a)、(b)では、図3で図示していた電流付与回路29及び制御装置10の図示を省略している。
これらの場合でも、第1加熱装置32aの加熱ブロック35の鉛直方向の位置と、第2加熱装置32bの加熱ブロック35の鉛直方向の位置とが異なっており、第1加熱装置32aの加熱ブロック35と、第2加熱装置32bの加熱ブロック35とが機台長手方向から見て重ならない。したがって、上述の実施の形態と同様、第1加熱装置32aの加熱ブロック35と第2加熱装置32bの加熱ブロック35との間で熱の干渉が生じにくく、各加熱ブロック35を確実に、設定温度に加熱することができる。また、1つのボックス31に4以上の第1加熱装置32aと、4以上の第2加熱装置32bとが収容されていてもよい。
また、上述の実施の形態では、第1加熱装置32aの加熱ブロック35と、第2加熱装置32bの加熱ブロック35とが、機台長手方向から見て重ならない程度に、鉛直方向にずれて配置されていたが、これには限られない。例えば、変形例3では、図11に示すように、第1加熱装置32aの加熱ブロック35と、第2加熱装置32bの加熱ブロック35とが、鉛直方向にずれて配置されているが、上述の実施の形態よりもそのずれ量が小さく、第1加熱装置32aの加熱ブロック35と、第2加熱装置32bの加熱ブロック35とが、機台長手方向から見て部分的に重なっている。ただし、変形例3では、第1加熱装置32aの加熱ブロック35と第2加熱装置32bの加熱ブロック35との直接の接触を避けるために、第1加熱装置32aの加熱ブロック35と第2加熱装置32bの加熱ブロック35とが機台長手方向に離れており、機台長手方向における第1加熱装置32aの加熱ブロック35と第2加熱装置32bの加熱ブロック35との間にも断熱材33が配置されている。なお、図11では、図3で図示していた電流付与回路29及び制御装置10の図示を省略している。
この場合でも、第1加熱装置32aの加熱ブロック35と第2加熱装置32bの加熱ブロック35とが、機台長手方向から見て完全に重なる場合と比較すれば、第1加熱装置32aの加熱ブロック35と第2加熱装置32bの加熱ブロック35との間での熱の干渉が生じにくい。
また、上述の実施の形態では、第1加熱装置32aと第2加熱装置32bとで、加熱ブロック35の設定温度を異ならせる例として、第2加熱装置32bの上流側加熱部34aの加熱ブロック35の設定温度を、第1加熱装置32aの上流側加熱部34aの加熱ブロック35の設定温度よりも高くし、第2加熱装置32bの下流側加熱部34bの加熱ブロック35の設定温度を、第1加熱装置32aの下流側加熱部34bの加熱ブロック35の設定温度よりも高くする例について説明したが、これには限られない。第2加熱装置32bの上流側加熱部34aの加熱ブロック35の設定温度を、第1加熱装置32aの上流側加熱部34aの加熱ブロック35の設定温度よりも低くしてもよい。また、第2加熱装置32bの下流側加熱部34bの加熱ブロック35の設定温度が、第1加熱装置32aの下流側加熱部34bの加熱ブロック35の設定温度よりも低くてもよい。
また、上述の実施の形態では、第1加熱装置32aと第2加熱装置32bとで、加熱ブロック35の設定温度を異ならせる例について説明したが、これには限られない。
例えば、2つの第1加熱装置32aの間、あるいは、2つの第2加熱装置32bの間で、加熱ブロック35の設定温度を異ならせてもよい。上述の実施の形態のように、機台長手方向において第1加熱装置32aと第2加熱装置32bとが交互に配置されている場合には、機台長手方向において、隣接する2つの第1加熱装置32aの間に第2加熱装置32bが配置され、隣接する2つの第2加熱装置32bの間に第1加熱装置32aが配置されるため、2つの第1加熱装置32aが機台長手方向に離隔して配置され、2つの第2加熱装置32b同士が機台長手方向に離隔して配置される。また、2つの第1加熱装置32aの間、及び、2つの第2加熱装置32bの間には断熱材33が介在する。これらのことから、2つの第1加熱装置32aの加熱ブロック35の間、及び、2つの第2加熱装置32bの加熱ブロック35の間での熱の伝達が生じにくい。したがって、この場合でも、各第1加熱装置32a及び各第2加熱装置32bにおいて、加熱ブロック35を確実に設定温度とすることができる。
また、上述の実施の形態では、加熱装置32a、32bが、上流側加熱部34aと下流側加熱部34bとを備えたものであったが、これには限られない。例えば、加熱装置32a、32bが、機台幅方向に、上流側加熱部34aの長さと下流側加熱部34bの長さとを足し合わせた1つの加熱部を有するものであってもよい。
また、上述の実施の形態では、合糸装置26において2本の糸条Yを合糸して、巻取装置60において1つのボビンB1に合糸Yaを巻き取ることと、2本の糸条Yを合糸せずに、2つのボビンB2にこれら2本の糸条Yを別々に巻き取ることとを切り替え可能であったが、これには限られない。巻取装置60が、常に1つのボビンB1に合糸Yaを巻き取るものであってもよい。あるいは、合糸装置26がなく、巻取装置60が、常に2つのボビンB2に糸条Yを巻き取るものであってもよい。また、この場合には、第1加撚装置24aと第2加撚装置24bとで、撚りの方向が同じ向きとなっていてもよい。
また、上述の実施の形態では、隣接する2つの加撚装置24(1つの第1加撚装置24aと1つの第2加撚装置24b)に対して1つの巻取装置60が設けられていたが、これには限られない。例えば、合糸装置26がなく、1つの加撚装置24に対して1つの巻取装置60が設けられていてもよい。また、この場合にも、第1加撚装置24aと第2加撚装置24bとで、撚りの方向が同じ向きとなっていてもよい。また、この場合には、二次加熱ユニット27を、一次加熱ユニット21と同様の構造を有するものとしてもよい。そうすれば、第1加撚装置24aによって仮撚加工が施された糸条Yと、第2加撚装置24bによって仮撚加工が施された糸条Yとを、糸条Yの種類に応じた適切な程度に加熱することができる。
また、上述の実施の形態では、第1冷却装置41aが第1共通ダクト42に接続されているのに対して、第2冷却装置41bが第2共通ダクト43に接続されていたが、これには限られない。変形例4では、図12に示すように、上述の実施の形態において第1共通ダクト42及び第2共通ダクト43が配置されていた領域にまたがるように、1つの共通ダクト111(本発明の「第1共通ダクト」)が配置されている。そして、接続用ダクト44、45は、いずれも共通ダクト111に接続されている。
この場合でも、上述の実施の形態と同様、第1冷却装置41a及び第2冷却装置41bを、加熱装置32a、32b及び加撚装置24a、24bの配置に応じて、適切な糸条Yの屈曲角を維持することができるような糸道上に配置することができる。なお、この場合には、上述の実施の形態とは異なり、第1冷却装置41aと第2冷却装置41bとで、隙間51cを流れる空気の流速を個別に変更することはできない。しかしながら、例えば、第1冷却装置41aによって冷却される糸条Yと、第2冷却装置41bによって冷却される糸条Yとが同じ種類のものであるなど、第1冷却装置41aと第2冷却装置41bとで糸条Yの冷却の程度を異ならせる必要のない場合には、問題はない。
また、上述の実施の形態では、第1冷却装置41aの隙間51cが第1接続用ダクト44を介して第1共通ダクト42の内部空間42aと連通し、第2冷却装置41bの隙間51cが第2接続用ダクト45を介して第2共通ダクト43の内部空間43aに接続されていたが、これには限られない。変形例5では、図13(a)、(b)に示すように、第1冷却装置41aの隙間51cが、上述の実施の形態と同様、個別ダクト52及び第1接続用ダクト44を介して、第1共通ダクト121の内部空間121aに接続されている。これに対して、第2冷却装置41bの対向部材51a、51bが、第2共通ダクト122の下面に直接取り付けられている。また、第2共通ダクト122の下面の、第2冷却装置41bの隙間51cと重なる部分には、複数の連通孔123が形成されている。これにより、第2冷却装置41bの隙間51cは、複数の連通孔123を介して、第2共通ダクト122の内部空間122aと接続されている。
また、変形例6では、図14(a)、(b)に示すように、共通ダクト131の側面に連通孔131bが形成され、第1接続用ダクト132が、連通孔131bに接続されることで、第1接続用ダクト132の内部空間132aが、共通ダクト131の内部空間131aと連通している。これにより、第1冷却装置41aの隙間51cが、個別ダクト52及び第1接続用ダクト132を介して、共通ダクト131の内部空間131aに接続されている。また、第2冷却装置41bの対向部材51a、51bは、共通ダクト131の下面に直接取り付けられている。また、共通ダクト131の下面の、第2冷却装置41bの隙間51cと重なる部分には、複数の連通孔131cが形成されている。これにより、第2冷却装置41bの隙間51cは、複数の連通孔131cを介して、共通ダクト122の内部空間122aと接続されている。
変形例5、6の場合には、第2接続用ダクト45が設けられていないため、第2冷却装置41bを、共通ダクト122、131から離して配置することはできない。すなわち、第2冷却装置41bの共通ダクト122、131の下面と直交する方向の位置を変更することはできない。しかしながら、この場合でも、上述の実施の形態と同様、第1冷却装置41aの共通ダクト122、131の下面と直交する方向の位置を変更することはできる。そして、第1冷却装置41aの共通ダクト122、131の下面と直交する方向の位置を変更すれば、共通ダクト122、131の下面と直交する方向における第1冷却装置41aと第2冷却装置41bとの位置関係が変更される。したがって、変形例5、6の場合でも、上述の実施の形態と比較すれば第1冷却装置41aと第2冷却装置41bの配置の自由度は低くはなるものの、第1冷却装置41aと第2冷却装置41bとの位置関係を調整することによって、第1冷却装置41a及び第2冷却装置41bを、加熱装置32a、32b及び加撚装置24a、24bの配置に応じて、適切な糸条Yの屈曲角を維持することができるような糸道上に配置することができる。
また、変形例5、6の場合でも、第1冷却装置41aは、第2冷却装置41bに対して共通ダクト122、131と反対側に位置している。しかしながら、変形例2でも、接続用ダクト44が、隣接する2つの第1冷却装置41aに対して1つずつ設けられている。したがって、第1接続用ダクト44を介して、第1冷却装置41aの隙間51cと共通ダクト122、131の内部空間122a、131aとを連通させることができる。
また、上述の実施の形態では、1つの第1接続用ダクト44が、2つの第1冷却装置41aの個別ダクト52の連通孔52cと接続され、1つの第2接続用ダクト45が、2つの第2冷却装置41bの個別ダクト52の連通孔52cと接続されていたが、これには限られない。1つの第1接続用ダクト44が、1つの第1冷却装置41aの個別ダクト52の連通孔52cに接続されていてもよい。あるいは、1つの第1接続用ダクト44が、3以上の第1冷却装置41aの個別ダクト52の連通孔52cに接続されていてもよい。第2接続用ダクト45についても同様である。
また、上述の実施の形態では、冷却ユニット23が、複数の冷却装置41の隙間51cが、共通ダクト42、43の内部空間42a、43aと接続されたものである。そして、内部空間42a、43a内に空気の流れを生じさせることによって、隙間51cに空気の流れを生じさせ、隙間51cを流れる空気によって糸条Yを冷却する。しかしながら、冷却ユニット23の構成はこれには限られない。冷却ユニット23は、例えば、共通ダクト42、43がなく、隙間51cを走行する糸条Yが、対向部材51a、51bと接触するように構成され、糸条Yの熱を対向部材51a、51bに伝達させることによって、糸条Yを冷却するものであってもよい。
また、上述の実施の形態では、第1冷却装置41aと第2冷却装置41bとが鉛直方向にずれて配置され、第1加撚装置24aと第2加撚装置24bとが鉛直方向にずれて配置されていたが、これには限られない。第1冷却装置41aと第2冷却装置41bとが鉛直方向にずれておらず、機台長手方向から見て完全に重なるように配置されていてもよい。また、第1加撚装置24aと第2加撚装置24bとは、鉛直方向にずれておらず、機台長手方向から見て完全に重なるように配置されていてもよい。
また、上述の実施の形態では、加熱装置32a、32bにおける糸Yの走行方向が、水平な方向であったが、これには限られない。例えば、特開平11−107084号公報に記載されているような、加熱装置における糸の走行方向が水平方向に対して大きく傾いた仮撚加工機に本発明を適用することも可能である。なお、この場合には、第1加熱装置32aの加熱ブロック35と、第2加熱装置32bの加熱ブロック35とが、鉛直方向とは異なる方向にずれる。
また、上述の実施の形態では、冷却装置41a、41bの冷却容量の調節は、ブロア46a、46bの回転速度をインバータ回路54で制御することで行う構成として説明したが、これには限らない。共通ダクト42、43に手動または制御装置10からの指令により自動で動作するバタフライバルブなどの流量調整装置を設けることで、冷却風量を調整することとしてもよい。また、インバータによるブロア46a、46bの制御とバルブ等による流量調整を組み合わせて行うこともできる。