JP5894871B2 - 紡糸延伸装置 - Google Patents

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Description

本発明は、紡糸機から紡出された糸を引き取り、延伸する複数のローラを備える紡糸延伸装置に関する。
紡糸機から紡出された糸を引き取り、延伸し、熱固定する複数のローラを備える紡糸延伸装置、紡糸延伸装置により延伸された糸を巻き取ってパッケージを形成する糸巻取装置などを備える紡糸巻取機が知られている。
特許文献1に記載の紡糸延伸装置では、延伸前の糸を予備加熱するための予備加熱用の2個のローラが上下方向に並べて配置され、延伸後の糸を熱固定するための熱固定用の2個のローラが上下方向に並べて配置されるとともに、予備加熱用の2個のローラと熱固定用の2個のローラとが左右方向に並べて配置されている。予備加熱用の2個のローラは同じ温度に設定され、また、熱固定用の2個のローラも同じ温度に設定され、熱固定用のローラの方が、予備加熱用のローラよりも温度が高く設定される。紡糸機から紡出された糸は、それぞれのローラに360度以内の巻き掛け角度で、下方から上方の順に予備加熱用の2個のローラに巻き掛けられた後、下方から上方の順に熱固定用の2個のローラに巻き掛けられている。上流の予備加熱用の2個のローラは、ほぼ同じ周速度で回転され、また、下流の熱固定用の2個のローラは、上流の予備加熱用の2個のローラよりも速いほぼ同じ周速度で回転される。これらのローラを走行する糸は、予備加熱用のローラによりガラス転移点まで加熱され、熱固定用のローラが予備加熱用のローラよりも糸送り速度が速くなるから、予備加熱用のローラと熱固定用のローラとの間で延伸され、熱固定用のローラにより熱固定される。
国際公開第2011/009498号(Fig.1)
特許文献1に記載の構成では、温められた空気は上昇するため、熱の対流現象の影響を受け、上下方向に並べられた予備加熱用のローラの周囲の温度がそれぞれ異なるから、予備加熱用の2個のローラの温度を同一に調整することが困難である。熱固定用の2個のローラについても同様である。また、設定温度の異なる予備加熱用のローラと熱固定用のローラとが、左右方向に並べて密集配置されているため、高温の熱固定用ローラが発する熱により、低温の予備加熱用ローラの周囲温度が上昇することで、特に、予備加熱用のローラの温度調整が困難である。特に、特許文献1に記載の構成のように、360度以内の巻き掛け角度でローラに糸が巻き掛けられる構成で、設定温度の異なるローラが同一の保温箱内に近接して配置される場合は、特に顕著である。
本発明の目的は、安定したローラの温度調整が可能である紡糸延伸装置を提供することを目的とする。
第1の発明に係る紡糸延伸装置は、紡糸機から紡出された糸を引き取り、前記糸を延伸する複数のローラを備える紡糸延伸装置であって、前記複数のローラには、延伸された糸を熱固定するための第1加熱ローラが含まれ、前記複数のローラには、それぞれ360度以内の巻き掛け角度で、下方から上方の順に糸が巻き掛けられており、前記第1加熱ローラは、延伸前の糸が通過する他のローラよりも上方に位置するよう配置され、前記複数のローラを収容する保温箱をさらに備えることを特徴とする。
本発明によると、延伸前の糸が通過する他のローラよりも上方に位置するよう高温の第1加熱ローラが配置されることから、熱の対流現象の影響を受けることが少ないので、安定したローラの温度調整が可能である。
また、本発明によると、複数のローラが保温箱に収容されていることから、ローラが発する熱が外部に逃げないので、例えば、延伸前の糸が通過する他のローラが加熱ローラである場合、このローラが発する熱を、第1加熱ローラの加熱に利用することができる等、ローラが発する熱を有効に利用することができる。
第2の発明に係る紡糸延伸装置は、第1の発明に係る紡糸延伸装置において、前記複数のローラには、最も下方のローラから最も上方のローラの順に糸が巻き掛けられていることを特徴とする。
第3の発明に係る紡糸延伸装置は、第1又は第2の発明に係る紡糸延伸装置において、前記保温箱は、糸を進入させるための第1スリットと、前記第1スリットよりも上方に配置された、糸を導出させるための第2スリットと、を有し、前記複数のローラの軸芯が水平方向に対して傾斜し、前記第1スリットと前記第2スリットとが前記水平方向にずれるように、前記保温箱が傾斜して配置されていることを特徴とする。
本発明では、保温箱が鉛直面に対して傾斜して配置されているため、保温箱内の複数のローラへ、紡糸機から紡出された糸の糸道側から糸を進入させ、保温箱内の複数のローラから、紡糸機から紡出された糸の糸道側へ糸を導出させる場合に、保温箱に進入する糸と保温箱から導出する糸とが接触しない。従って、ガイド等により糸を屈曲させることなく、保温箱内に糸を進入させ、保温箱内から糸を導出させることができる。
第4の発明に係る紡糸延伸装置は、第1〜第3の発明に係るいずれかの紡糸延伸装置において、前記複数のローラへは、前記紡糸機から紡出された糸の糸道側から糸が進入し、前記複数のローラからは、前記紡糸機から紡出された糸の糸道側へ糸が導出することを特徴とする。
本発明によると、複数のローラへは、紡糸機から紡出された糸の糸道側から糸が進入し、複数のローラからは、紡糸機から紡出された糸の糸道側へ糸が導出するから、紡糸機の下方に延伸後の糸を巻き取る糸巻取装置を配置できるので、スペースの無駄がない。
第5の発明に係る紡糸延伸装置は、第1〜第4の発明に係るいずれかの紡糸延伸装置において、前記他のローラは、前記第1加熱ローラよりも設定温度が低い第2加熱ローラであることを特徴とする。
本発明によると、第2加熱ローラにより延伸前の糸が加熱されるため、ポリエステル繊維等のガラス転移点が高い樹脂の延伸糸を安定して生産することができる。
第6の発明に係る紡糸延伸装置は、第5の発明に係る紡糸延伸装置において、前記第1加熱ローラ及び前記第2加熱ローラは、配置される数が変更可能であることを特徴とする。
本発明によると、第1加熱ローラ及び第2加熱ローラが、配置される数が変更可能であるため、太い糸や伸度の低い糸など、生産する糸の品種に応じて、配置される第1加熱ローラ及び第2加熱ローラの数を変更することにより、同一の装置で生産可能な糸の品種の範囲を広げることができる。
第7の発明に係る紡糸延伸装置は、第5の発明に係る紡糸延伸装置において、前記第2加熱ローラは、前記第1加熱ローラよりも多く配置されることを特徴とする。
本発明によると、第2加熱ローラが第1加熱ローラよりも多く配置されることから、特に、360度以内の巻き掛け角度でローラに糸が巻き掛けられる構成において、太い糸を生産する場合には、第2加熱ローラによる加熱が不足し、糸の安定した延伸ができないという問題があるが、第1加熱ローラよりも延伸前の糸が通過する第2加熱ローラの数を多くして対処することができる。
第8の発明に係る紡糸延伸装置は、第5の発明に係る紡糸延伸装置において、前記第1加熱ローラは、前記第2加熱ローラよりも多く配置されることを特徴とする。
本発明によると、第1加熱ローラが第2加熱ローラよりも多く配置されることから、特に、360度以内の巻き掛け角度でローラに糸が巻き掛けられる構成において、伸度が非常に低い糸を生産する場合には、第1加熱ローラによる熱固定が不足し、充分に伸度が低い糸が生産できないという問題があるが、第2加熱ローラよりも高温の第1加熱ローラの数を多くして対処することができる。
第9の発明に係る紡糸延伸装置は、第1〜第8の発明に係るいずれかの紡糸延伸装置において、前記複数のローラは、奇数個であることを特徴とする。
本発明によると、複数のローラが奇数個であることから、例えば、複数のローラをジグザグに配置すれば、180度以上270度未満の巻き掛け角度で糸を複数のローラに接触させることができるとともに、複数のローラへは、紡糸機から紡出された糸の糸道側から糸を進入させ、複数のローラからは、紡糸機から紡出された糸の糸道側へ糸を導出させることができる。
本発明によれば、延伸前の糸が通過する他のローラよりも上方に位置するよう高温の第1加熱ローラが配置されることから、熱の対流現象の影響を受けることが少ないので、安定したローラの温度調整が可能である。
本発明の実施の形態に係る紡糸巻取機の構成を示す正面図である。 本発明の実施の形態に係る紡糸巻取機の側面図である。 一変形例の紡糸巻取機の構成を示す正面図である。 一変形例の紡糸巻取機の側面図である。 ゴデットローラの配置の他の例を示す図である。 ゴデットローラの配置の他の例を示す図である。
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る紡糸延伸装置を備えた紡糸巻取機の構成を示す正面図、図2は、紡糸巻取機の側面図である。紡糸巻取機1は、図1及び図2に示すように、紡糸延伸装置2と、糸巻取装置3と、を備え、上方にある紡糸機4から紡出されて連続的に供給される複数の糸Yを紡糸延伸装置2を介して糸巻取装置3に送り、この糸巻取装置3で複数の糸Yを巻き取っている。糸Yは、延伸のための予備加熱が必要なポリエステル繊維である。
紡糸延伸装置2は、紡糸機4から紡出された糸Yを引き取り、延伸するゴデットローラ14〜18などを備えている。詳細については後述する。
糸巻取装置3は、紡糸機4の下方に配置されており、紡糸延伸装置2を介して紡糸機4から供給された複数の糸Yを、複数のボビンBにそれぞれ巻き取って複数のパッケージPを形成する。糸巻取装置3は、案内ローラ5、6と、複数の支点ガイド7と、2台の巻取ユニット8と、を備える。
案内ローラ5、6は、図示しないモータによって駆動される駆動ローラであって、それらの軸方向が左右方向と平行に設けられている。案内ローラ6は、案内ローラ5よりも後方かつ上方に配置されている。紡糸延伸装置2から送られてくる複数の糸Yは、案内ローラ5、6により、下方の複数の支点ガイド7に送られる。
複数の支点ガイド7は、案内ローラ6の下方であって、複数のトラバースガイド12の上方において、複数のトラバースガイド12及びボビンホルダ11に装着された複数のボビンBの真上に、巻取軸方向に沿って複数のボビンホルダ11の間隔と同じ間隔で並んで配置されている。
巻取ユニット8は、本体フレーム9、本体フレーム9に回転可能に設けられた円板状のターレット10、ターレット10に片持ち支持され、巻取軸が水平に延びており、複数のボビンBが巻取軸の軸方向に沿って直列に装着される2本のボビンホルダ11、糸の綾振りを行うトラバースガイド12、本体フレーム9に対して上下方向に移動可能であり、ボビンホルダ11に装着されたボビンBに対して離接するコンタクトローラ13などを有している。
巻取ユニット8は、ボビンホルダ11が図示しないモータの駆動により回転することで、このボビンホルダ11に装着された複数のボビンBを回転させ、回転する複数のボビンBに複数の糸Yを巻き取る。このとき、ボビンBに巻き取られる糸Yは、複数のボビンBの上方にそれぞれ配置されたトラバースガイド12によって、支点ガイド7を支点としてボビンBの軸方向に綾振りされる。
そして、支点ガイド7を支点としてトラバースガイド12に綾振られた糸Yは、ボビンBに巻き取られてパッケージPを形成する。このとき、コンタクトローラ13は、ボビンBへの巻き取り時に、パッケージPの外周面に接触して、所定の接圧を付与しながら回転して、パッケージPの形状を整える。そして、ボビンホルダ11に装着された複数のパッケージPは、満巻きになると図示しないプッシャーで前方へ押し出されてボビンホルダ11から取り外される。
次に、紡糸延伸装置2について説明する。紡糸延伸装置2は、紡糸機4から紡出された糸Yを引き取り、延伸するゴデットローラ14〜18(複数のローラ)、ゴデットローラ14〜18を収容する保温箱19、案内ローラ20、21を備え、紡糸機4の下方に配置されている。なお、図1においては、保温箱19の内部が見えるように図示している。
ゴデットローラ14〜18は、図示しないフレームによって片持ち支持された図示しないモータにより回転される駆動ローラであって、内部にヒータを備えている。ゴデットローラ14〜16(第2加熱ローラ)は、延伸前の糸Yが通過する、延伸前の糸Yを加熱するための予備加熱用のゴデットローラであり、80〜100℃の温度に設定される。糸Yはポリエステル繊維であるから、延伸するにはガラス転移点までの加熱が必要となる。なお、ガラス転移点は、高分子によって異なる。ゴデットローラ17、18(第1加熱ローラ)は、延伸された糸Yを熱固定するための熱固定用のゴデットローラであり、120〜150℃の温度に設定される。このように、ゴデットローラ14〜16は、ゴデットローラ17、18よりも設定温度が低い。
ゴデットローラ14〜18は、それぞれの軸芯が互いに平行であって、例えば直径が220〜300mmの範囲内であり、略同じ直径となっている。ゴデットローラ14、15、16、17、18の順に下方から配置されており、熱固定用のゴデットローラ17、18は、予備加熱用のゴデットローラ14〜16よりも上方に位置するよう配置される。ゴデットローラ14、16、18は、上下方向にほぼ同一線上に軸芯が位置するように配置されており、ゴデットローラ15、17は、ゴデットローラ14、16、18に対して左右方向にずれた位置(右側)に、上下方向にほぼ同一線上に軸芯が位置するよう配置され、ゴデットローラ14〜18は、ジグザグに配置されている。また、予備加熱用のゴデットローラ14〜16は、熱固定用のゴデットローラ17、18よりも多く配置されている。紡糸延伸装置2においては、予備加熱用のゴデットローラ14〜16と熱固定用のゴデットローラ17、18とを駆動するモータは同一の仕様であり、また、予備加熱用のゴデットローラ14〜16と熱固定用のゴデットローラ17、18とは略同じ直径で、同一の仕様であるから、設定温度の変更、及び、ゴデットローラの簡単な組み換えにより、生産する糸の仕様に合わせて、配置される予備加熱用のゴデットローラ及び熱固定用のゴデットローラの数を変更可能である。
ゴデットローラ14〜18には、それぞれ360度以内の巻き掛け角度で、下方から上方の順に、すなわち、ゴデットローラ14、15、16、17、18の順に糸Yが巻き掛けられている。ゴデットローラ14〜18に巻き掛けられる糸Yの巻き掛け角度θ1〜θ5は、180度以上360度未満、さらには、180度以上270度未満であることが好ましい。本実施の形態においては、巻き掛け角度θ1〜θ5は、180度以上270度未満である。
ゴデットローラ14〜18へは、紡糸機4から紡出された糸Yの糸道側(ゴデットローラ14〜18の右側)から糸Yが進入し、ゴデットローラ14〜18からは、紡糸機4から紡出された糸Yの糸道側(ゴデットローラ14〜18の右側)へ糸Yが導出する。詳述すると、ゴデットローラ14へは、糸Yが右側から進入し、180度以上270度未満の巻き掛け角度で糸Yが巻き掛けられているから、ゴデットローラ14の右側へ糸Yが導出する。また、ゴデットローラ14の右上方に位置するゴデットローラ15へは、糸Yが左側から進入し、180度以上270度未満の巻き掛け角度で糸Yが巻き掛けられているから、ゴデットローラ15の左側へ糸Yが導出する。また、ゴデットローラ15の左上方に位置するゴデットローラ16へは、ゴデットローラ16の右側から糸Yが進入し、180度以上270度未満の巻き掛け角度で糸Yが巻き掛けられているから、ゴデットローラ16の右側へ糸Yが導出する。また、ゴデットローラ16の右上方に位置するゴデットローラ17へは、糸Yが左側から進入し、180度以上270度未満の巻き掛け角度で糸Yが巻き掛けられているから、ゴデットローラ17の左側へ糸Yが導出する。最後に、ゴデットローラ17の左上方に位置するゴデットローラ18へは、ゴデットローラ18の右側から糸Yが進入し、180度以上270度未満の巻き掛け角度で糸Yが巻き掛けられているから、ゴデットローラ18の右側へ糸Yが導出する。このように、ゴデットローラ14〜18を5個(奇数個)、ジグザグに配置すれば、180度以上270度未満の巻き掛け角度で糸Yをゴデットローラ14〜18に接触させることができるとともに、ゴデットローラ14〜18へは、紡糸機4から紡出された糸Yの糸道側から糸Yを進入させ、ゴデットローラ14〜18からは、紡糸機4から紡出された糸Yの糸道側へ糸Yを導出させることができる。
保温箱19は、ゴデットローラ14〜18を収容する断熱材からなる略直方体形状の箱である。保温箱19により、ゴデットローラ14〜18により発せられる熱が外部に逃げないようになっている。保温箱19の内部は、設定温度が高い熱固定用のゴデットローラ17、18が上方に配置されていることや熱の対流により、下方に比べて上方の温度が高くなっている。
保温箱19は、鉛直面に対して前側に約10度傾斜して配置されている。ゴデットローラ14〜18は、それぞれの軸芯が保温箱19と平行して配置されており、ボビンホルダ11に対して軸芯が傾いている。これは、案内ローラ20、21を前後(軸方向)に位置をずらして、保温箱19に進入する糸と保温箱19から導出する糸とが、接触しないようにするためである。
保温箱19には、同一側面の上方及び下方にスリット22、23が設けられており、下方のスリット22を通過して、保温箱19の内部に複数の糸Yが進入し、上方のスリット23を通過して、保温箱19の内部から複数の糸Yが導出する。すなわち、保温箱19へは、保温箱19の紡糸機4から紡出された糸Yの糸道側(保温箱19の右側)から糸Yが進入し、保温箱19からは、紡糸機4から紡出された糸Yの糸道側(保温箱19の右側)へ糸Yが導出する。
案内ローラ20は、保温箱19のスリット22から左右方向にずれた位置(右側)に保温箱19の外部に配置されており、紡糸機4から紡出される複数の糸Yの糸道を変更し、保温箱19の方へ複数の糸Yを導く。案内ローラ20には、上方から複数の糸Yが進入する。案内ローラ21は、保温箱19のスリット23から左右方向にずれた位置(右側)に保温箱19の外部に配置されており、保温箱19から導出する複数の糸Yの糸道を変更し、案内ローラ5の方へ複数の糸Yを導く。案内ローラ21からは、複数の糸Yは下方へ導出する。保温箱19へ進入する複数の糸Yの水平方向に対する傾きθ6、保温箱19から導出する複数の糸Yの水平方向に対する傾きθ7は、60度以下、さらには、30度以下であることが好ましい。また、案内ローラ20、21に巻き掛けられる複数の糸Yの巻き掛け角度θ8、θ9が180度以下であり、且つ、巻き掛け角度θ8とθ9との合計が240度以下であることが好ましい。なお、案内ローラ20、21は従動ローラであっても駆動ローラであってもよいが、駆動ローラであれば、糸Yの糸道の変更が容易となる。
紡糸機4から紡出される複数の糸Yは、予備加熱用のゴデットローラ14〜16に接触することによりガラス転移点まで予備加熱され、予備加熱用のゴデットローラ14〜16の回転駆動により、下流の熱固定用のゴデットローラ17、18に送られる。ここで、例えば、上流の予備加熱用のゴデットローラ14、15は、ほぼ同じ周速度で回転するとともに、下流の熱固定用のゴデットローラ16〜18が上流の予備加熱用のゴデットローラ14、15よりも速いほぼ同じ周速度で回転している。したがって、下流のゴデットローラ17、18は、上流のゴデットローラ14〜16に比べて、糸送り速度が速くなるから、ゴデットローラ14〜16とゴデットローラ17、18の間において、複数の糸Yが延伸される。延伸された複数の糸Yは、熱固定用のゴデットローラ17、18に接触することにより、熱固定され、熱固定用のゴデットローラ17、18の回転駆動により、案内ローラ20へ送られる。
以上説明したように、本実施の形態に係る紡糸延伸装置2は、紡糸機4から紡出された糸Yを引き取り、延伸するゴデットローラ14〜18を備え、ゴデットローラ14〜18には、延伸された糸Yを熱固定するためのゴデットローラ17、18が含まれ、ゴデットローラ14〜18には、それぞれ360度以内の巻き掛け角度で、上方から下方の順に糸Yが巻き掛けられており、ゴデットローラ17、18は、延伸前の糸が通過するゴデットローラ14〜16よりも上方に位置するよう配置される。
このように構成された本発明の実施の形態に係る紡糸延伸装置2によると、延伸された糸を熱固定するための高温のゴデットローラ17、18が、延伸前の糸が通過する低温のゴデットローラ14〜16よりも上方に位置するよう配置されることから、熱の対流現象の影響を受けることが少ないので、安定したゴデットローラ14〜18の温度調整が可能である。特に、ゴデットローラ14〜16は、予備加熱用のゴデットローラであり、ゴデットローラ17、18は、熱固定用のゴデットローラであるから、ゴデットローラ14〜16は、ゴデットローラ17、18よりも低温であるが、ゴデットローラ17、18よりも下方にあるため、熱の対流現象の影響を受けることが少なくなり、安定した温度調整が可能である。また、ゴデットローラ14〜16の放熱により、熱の対流現象が発生するから、ゴデットローラ14〜16の放熱を上方に配置されるゴデットローラ17、18の加熱に有効に利用することができる。
また、ゴデットローラ14〜18を収容する保温箱19をさらに備えることから、ゴデットローラ14〜18が発する熱が外部に逃げないので、ゴデットローラ14〜18が発する熱を有効に利用することができる。
また、保温箱19は、鉛直面に対して傾斜して配置されるため、本実施の形態のように、保温箱19内のゴデットローラ14〜18へ、紡糸機4から紡出された糸Yの糸道側から糸Yを進入させ、また、保温箱19内のゴデットローラ14〜18から、紡糸機4から紡出された糸Yの糸道側に糸Yを導出させる場合に、保温箱19に進入する糸Yと保温箱19から導出する糸Yとが接触しない。従って、ガイド等により糸Yを屈曲させることなく、保温箱19内に糸Yを進入させ、保温箱19内から糸Yを導出させることができる。
また、ゴデットローラ14〜18へは、紡糸機4から紡出された糸Yの糸道側から糸Yが進入し、ゴデットローラ14〜18からは、紡糸機4から紡出された糸Yの糸道側へ糸Yが導出するから、紡糸機4の下方に糸巻取装置3を配置できるので、スペースの無駄がない。
また、熱固定用のゴデットローラ17、18よりも設定温度が低い予備加熱用のゴデットローラ14〜16があるため、予備加熱用のゴデットローラ14〜16により延伸前の糸Yが加熱される。従って、ガラス転移点の高いポリエステル繊維である糸Yを安定して生産することができる。
また、予備加熱用のゴデットローラ及び熱固定用のゴデットローラは、配置される数が変更可能であるため、太い糸や伸度の低い糸など、生産する糸の品種に応じて、配置される予備加熱用のゴデットローラ及び熱固定用のゴデットローラの数を変更することにより、同一の装置で生産可能な糸の品種の範囲を広げることができる。
また、予備加熱用のゴデットローラ14〜16が熱固定用のゴデットローラ17、18よりも多く配置されることから、本実施の形態のように、特に、360度以内の巻き掛け角度でゴデットローラに糸が巻き掛けられる構成において、太い糸を生産する場合には、予備加熱用のゴデットローラによる加熱が不足し、糸の安定した延伸ができないという問題があるが、熱固定用のゴデットローラ17、18よりも予備加熱用のゴデットローラ14〜16の数を多くして対処することができる。
また、ゴデットローラ14〜18は、奇数個(5個)であるから、本実施の形態のように、ゴデットローラ14〜18をジグザグに配置し、180度以上270度未満の巻き掛け角度で糸Yをゴデットローラ14〜18に接触させることができるとともに、ゴデットローラ14〜18へは、紡糸機4から紡出された糸Yの糸道側から糸Yを進入させ、ゴデットローラ14〜18からは、紡糸機4から紡出された糸Yの糸道側へ糸Yを導出させることができる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明を適用可能な形態は、上述の実施の形態には限られるものではなく、以下に例示するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることが可能である。
上述の実施の形態においては、案内ローラ20、21を前後(軸方向)に位置をずらして、保温箱19に進入する糸と保温箱19から導出する糸とが接触しないようにするため、保温箱19は、鉛直面に対して前側に傾斜して配置されており、ゴデットローラ14〜18は、それぞれの軸芯が保温箱19と平行して配置され、ボビンホルダ11に対して軸心が傾いている。これに替えて、図3及び図4に示すように、ガイド24、25を設け、ガイド24、25により、保温箱19に進入する糸と保温箱19から導出する糸とが接触しないよう複数の糸Yを屈曲させ、案内ローラ20に複数の糸Yを導く構成としてもよい。ガイド24は、複数の糸Yを後側から前側に向けて屈曲し、屈曲した糸Yは、ガイド25に導出する。ガイド25は、複数の糸Yを上方から下方に向けて屈曲し、屈曲した糸Yは、案内ローラ20に導出する。
また、上述の実施の形態においては、ゴデットローラ14〜18を5個(奇数個)、ジグザグに配置し、それぞれのゴデットローラ14〜18に180度以上270度未満の巻き掛け角度で糸Yを巻き掛けて、ゴデットローラ14〜18へは、紡糸機4から紡出された糸Yの糸道側(ゴデットローラ14〜18の右側)から糸Yが進入し、ゴデットローラ14〜18からは、紡糸機4から紡出された糸Yの糸道側(ゴデットローラ14〜18の右側)へ糸Yが導出するようになっている。これに替えて、図5に示すように、4個(偶数個)のゴデットローラ26〜29をジグザグに配置し、下方のゴデットローラ26に180度未満の巻き掛け角度で糸Yを巻き掛け、右側から進入した糸が左側に導出するようにし、他の3個のゴデットローラ27〜29に180度以上270度未満の巻き掛け角度で糸Yを巻き掛けて、ゴデットローラ26〜29へは、紡糸機4から紡出された糸Yの糸道側(ゴデットローラ26〜29の右側)から糸Yが進入し、ゴデットローラ26〜29からは、紡糸機4から紡出された糸Yの糸道側(ゴデットローラ26〜29の右側)へ糸Yが導出するようにすることも可能である。この場合、ゴデットローラ26における糸Yの巻き掛け角度が小さくなり、ゴデットローラ26における糸Yの接触長が小さくなる。ここでの例では、下方のゴデットローラ26への糸の巻き掛け角度のみを他のゴデットローラ27〜29よりも減少させているが、上方のゴデットローラ29への糸の巻き掛け角度のみを他のゴデットローラ26〜28よりも減少させてもよいし、また、複数のゴデットローラへの糸の巻き掛け角度を他のゴデットローラよりも減少させてもよい。また、図6に示すように、4個(偶数個)のゴデットローラ30〜33をジグザグに配置し、180度以上270度未満の巻き掛け角度で糸Yを巻き掛け、ゴデットローラ30〜33へは、紡糸機4から紡出された糸Yの糸道側(ゴデットローラ30〜33の右側)から糸Yが進入し、ゴデットローラ33からは、紡糸機4から紡出された糸Yの糸道と反対側(ゴデットローラ30〜33の左側)へ糸Yが導出するようにしてもよい。この場合は、ゴデットローラにおける糸の接触長が小さくなるという問題は発生しないが、糸巻取装置3を紡糸機4の下方に配置できないため、紡糸巻取機の左右方向の幅が広くなる。
また、ゴデットローラの直径、個数は、糸の加熱温度、巻き掛け角度等に応じて適宜変更可能である。
例えば、上述の実施の形態においては、予備加熱用のゴデットローラ14〜16が熱固定用のゴデットローラ17、18よりも多く配置されているが、予備加熱用のゴデットローラよりも熱固定用のゴデットローラを多く配置してもよい。特に、360度以内の巻き掛け角度でゴデットローラに糸が巻き掛けられる構成において、伸度が非常に低い糸を生産する場合には、熱固定用のゴデットローラによる熱固定が不足し、充分に伸度が低い糸を生産できないという問題があるが、予備加熱用のゴデットローラよりも高温の熱固定用のゴデットローラの数を多くして対処することができる。また、熱固定用のゴデットローラと予備加熱用のゴデットローラとを同数(例えば2個ずつ以上)としてもよい。
例えば、上述の実施の形態においては、配置されるゴデットローラの数を5個とし、熱固定用のゴデットローラを2個とし、予備加熱用のゴデットローラを3個とし、予備加熱用のゴデットローラが熱固定用のゴデットローラよりも多く配置されているが、熱固定用のゴデットローラを1個とし、予備加熱用のゴデットローラを2個としてもよいし、熱固定用のゴデットローラを3個以上とし、予備加熱用のゴデットローラを4個以上として、予備加熱用のゴデットローラが熱固定用のゴデットローラよりも多く配置されるようにしてもよい。
例えば、上述の実施の形態においては、ゴデットローラ14〜16を加熱用のゴデットローラとしたが、生産する糸種、例えば常温で延伸可能なナイロンなどでは、ヒータを備えない非加熱のゴデットローラとしたり、また、ヒータの電源を切断して非加熱状態で使用したりすることもできる。また、最も下流のゴデットローラ18もヒータの電源を切断して非加熱状態で使用することもできる。
例えば、上述の実施の形態においては、ゴデットローラ14〜18の直径が同じであったが、予備加熱用のゴデットローラ14〜16と、熱固定用のゴデットローラ17、18と、で直径を異ならせてもよい。例えば、予備加熱用のゴデットローラ14〜16の直径を、熱固定用のゴデットローラ17、18よりも大きくしてもよい。この場合、予備加熱用のゴデットローラ14〜16は、周速度が遅いため、直径を大きくしても熱損失が大きく変動しない。このため、予備加熱用のゴデットローラ14〜16の直径を大きくして個数を減少させることができれば、熱エネルギーの消費を抑制することができる。
1 紡糸巻取機
2 紡糸延伸装置
3 糸巻取装置
4 紡糸機
14〜16 ゴデットローラ(第2加熱ローラ)
17、18 ゴデットローラ(第1加熱ローラ)
19 保温箱

Claims (9)

  1. 紡糸機から紡出された糸を引き取り、前記糸を延伸する複数のローラを備える紡糸延伸装置であって、
    前記複数のローラには、延伸された糸を熱固定するための第1加熱ローラが含まれ、
    前記複数のローラには、それぞれ360度以内の巻き掛け角度で、下方から上方の順に糸が巻き掛けられており、
    前記第1加熱ローラは、延伸前の糸が通過する他のローラよりも上方に位置するよう配置され
    前記複数のローラを収容する保温箱をさらに備えることを特徴とする紡糸延伸装置。
  2. 前記複数のローラには、最も下方のローラから最も上方のローラの順に糸が巻き掛けられていることを特徴とする請求項1に記載の紡糸延伸装置。
  3. 前記保温箱は、
    糸を進入させるための第1スリットと、
    前記第1スリットよりも上方に配置された、糸を導出させるための第2スリットと、を有し、
    前記複数のローラの軸芯が水平方向に対して傾斜し、前記第1スリットと前記第2スリットとが前記水平方向にずれるように、前記保温箱が傾斜して配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の紡糸延伸装置。
  4. 前記複数のローラへは、前記紡糸機から紡出された糸の糸道側から糸が進入し、
    前記複数のローラからは、前記紡糸機から紡出された糸の糸道側へ糸が導出する
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の紡糸延伸装置。
  5. 前記他のローラは、前記第1加熱ローラよりも設定温度が低い第2加熱ローラであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の紡糸延伸装置。
  6. 前記第1加熱ローラ及び前記第2加熱ローラは、配置される数が変更可能であることを特徴とする請求項5に記載の紡糸延伸装置。
  7. 前記第2加熱ローラは、前記第1加熱ローラよりも多く配置されることを特徴とする請求項5に記載の紡糸延伸装置。
  8. 前記第1加熱ローラは、前記第2加熱ローラよりも多く配置されることを特徴とする請求項5に記載の紡糸延伸装置。
  9. 前記複数のローラは、奇数個であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の紡糸延伸装置。
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