JP6531367B2 - 印刷装置、制御装置および画像処理方法 - Google Patents

印刷装置、制御装置および画像処理方法 Download PDF

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Description

本発明は、印刷装置、当該印刷装置の制御装置および画像処理方法に関する。
インクなどの液体を吐出して画像や文書を印刷する印刷装置には、圧電素子(例えばピエゾ素子)や発熱素子などを用いたものが知られている。圧電素子や発熱素子などは、印刷ヘッドにおいて複数のノズルのそれぞれに対応して設けられ、それぞれが駆動信号にしたがって駆動されることにより、ノズルから所定のタイミングで所定量のインクを吐出させて、これによりドットが形成される。
このような印刷装置に適用される技術としては、次のような技術が知られている。
例えば、当該印刷元データを抽出し、印刷データに加工処理してPRNファイルとして出力するかを選択可能な構成において、加工処理が正常に終了できなかった場合に、生成されたPRNファイルを削除する技術(例えば特許文献1参照)や、タイマクリーニング中に印刷命令がなされたときの印刷処理と、通常時の印刷処理とを同程度の処理時間で実行する技術(例えば特許文献2参照)、印刷結果に主走査方向のホワイトラインが現われないようにする技術(例えば特許文献3参照)などが知られている。
ところで、印刷装置において、例えば印刷ヘッドのノズル列を印刷媒体の搬送方向の直交方向に対して斜めに配列させた技術が知られている(特許文献4参照)。
特開2008−250435号公報 特開2008−246942号公報 特開2008−250799号公報 特開2002−103597号公報
このようにノズル列を斜めに配列させた構成では、印刷装置の画像処理の負荷が、ノズル列を搬送方向の直交方向に配列させた構成と比較して格段に重く、印刷速度の低下を招くなどの問題が想定される。
そこで、本発明のいくつかの態様の目的の一つは、印刷ヘッドのノズル列を印刷媒体の搬送方向の直交方向に対して斜めに配列させた場合の問題を解決することにある。
上記目的の一つを達成するために、本発明の一態様に係る印刷装置は、複数のノズルを有する印刷ヘッドに対して印刷媒体を所定の方向に相対移動させるとともに、前記複数のノズルの各々から、印刷データに基づいてそれぞれインクを吐出させる印刷装置であって、画素毎の画像データを、メモリに格納させる第1処理部と、前記第1処理部により格納された画像データに対し、前記印刷ヘッドの欠陥ノズルに対応した補完処理を施す第2処理部と、前記補完処理が施された画像データを回転処理して、前記印刷ヘッドが前記印刷媒体に対して一の地点に位置するときに前記複数のノズルの各々に対応する画像データを、前記メモリに対して当該メモリの読出順となるように格納させる第3処理部と、を備え、前記第3処理部により格納された画像データを読み出して前記印刷データとして出力することを特徴とする。
上記一態様に係る印刷装置によれば、欠陥ノズルによる欠陥画像の方向とメモリの読出方向とが揃った状態で補完処理を実行することができる。このため、回転処理後に補完処理を実行する場合と比較して、メモリに対するアドレス演算が単純化されて、処理に要する時間を短縮化することができる。また、この一態様では、第3処理部により格納された画像データを読み出して印刷データとして出力するので、印刷ヘッドのノズル列が印刷媒体の搬送方向の直交方向に対して斜めに配列させた場合にも適用することができる。
上記一態様に係る印刷装置において、前記メモリは、バースト転送が可能であり、前記第1処理部および前記第3処理部は、前記画像データを前記バースト転送によって格納し、前記第2処理部は、前記メモリから、前記バースト転送によって読み出した画像データを用いて前記補完処理を実行する構成としても良い。この構成によれば、バースト転送によってメモリから画像データを格納/読出するので、処理に要する時間を短縮化することができる。
上記構成において、前記第2処理部には、少なくとも前記欠陥ノズルを規定する情報が供給されても良い。この構成によれば、欠陥ノズルを規定する情報に基づいて直ちに補完処理に反映させることができる。
また、前記第2処理部は、少なくとも、前記欠陥ノズルの位置に対応する行を挟む2行の画像データを用いて前記補完処理を実行する構成が好ましい。
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば印刷装置の制御装置や画像処理方法などで概念することが可能である。
実施形態に係る印刷装置の概略構成を示す図である。 印刷装置における液体吐出モジュールの平面図である。 液体吐出ヘッドにおけるノズルの配列を示す図である。 液体吐出ヘッドにおけるノズルの配列を示す図である。 液体吐出ヘッドの部分断面図である。 液体吐出ヘッドのインク吐出により形成されるドットの説明図である。 印刷装置の電気的な構成を示すブロック図である。 制御信号、駆動信号等の波形を示す図である。 圧電素子に印加される駆動信号の波形を示す図である。 印刷装置における制御部の構成を示す図でブロック図である。 制御部による処理の概要を示す図である。 典型的な回転処理を説明するための図である。 配列変換処理を説明するための図である。 補完処理を説明するための図である。 補完処理を説明するための図である。 複数頁の処理を説明するための図である。 複数頁の処理を説明するための図である。
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、実施形態に係る印刷装置1の部分的な構成を示す図である。
この印刷装置1は、インク(液体)を吐出させることによって、紙などの印刷媒体Pにインクドット群を形成し、これにより、当該画像データに応じた画像(文字、図形等を含む)を印刷する印刷装置(インクジェットプリンター)である。
図に示されるように、印刷装置1は、制御ユニット10と搬送機構12と液体吐出モジュール20とを含む。また、この印刷装置1には、複数色のインクを貯留する液体容器(カートリッジ)14が装着される。この例では、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(Bk)の計4色のインクが液体容器14に貯留される。
制御ユニット10は、後述するように、外部のホストコンピューターから供給された画像を処理したり、印刷装置1の各要素を制御したりする。搬送機構12は、制御ユニット10による制御のもとで印刷媒体PをY方向に搬送する。液体吐出モジュール20は、液体容器14に貯留されたインクを、制御ユニット10による制御のもとで印刷媒体Pに吐出する。実施形態において液体吐出モジュール20は、Y方向に交差(典型的には直交)するX方向に長尺なラインヘッドである。
この印刷装置1では、液体吐出モジュール20が搬送機構12による印刷媒体Pの搬送に同期して当該印刷媒体Pにインクを吐出することで、当該印刷媒体Pの表面に画像を形成させる。
なお、X−Y平面(印刷媒体Pの表面に平行な平面)に垂直な方向を以下においてはZ方向と表記する。Z方向は、典型的には、液体吐出モジュール20によるインクの吐出方向である。
図2は、液体吐出モジュール20を、記録媒体Pからみたときの平面図である。
この図に示されるように、液体吐出モジュール20では、基本となる液体吐出ユニットUが複数、X方向に沿って配列された構成となっている。
液体吐出ユニットUは、さらにX方向に沿って配列された複数(6個)の液体吐出ヘッド30を包含する。液体吐出ヘッド30は、詳細については後述するが、印刷媒体Pの搬送方向であるY方向に対して傾斜した2列で配列した複数のノズルNを有する印刷ヘッドである。
図3は、液体吐出モジュール20におけるノズルNの配列を説明するための図であり、図2とは異なり、記録媒体Pの反対側からインク方向の吐出方向に向かって透視した場合の図である。
上述したように、1個の液体吐出ヘッド30は、傾斜した2列の複数のノズルNを有するが、ここではまず、傾斜を考慮しない液体吐出ヘッド30における単体のノズル配列について説明する。
図4は、液体吐出ヘッド30におけるノズルNの配列を示す図である。この図に示されるように、液体吐出ヘッド30のノズルNは、ノズル列Na、Nbに区分される。ノズル列Na、Nbでは、それぞれ複数のノズルNが、それぞれW1方向(第2方向)に沿ってピッチP1で配列する。また、ノズル列Na、Nb同士は、W1方向に直交するW2方向にピッチP2だけ離間する。ノズル列Naに属するノズルNとノズル列Nbに属するノズルNとは、W1方向に、ピッチP1の半分だけシフトした関係となっている。
ノズル列Naのうち、W1方向の正側端部(図の下端)において破線で示される丸印(符号Un)、および、ノズル列Nbのうち、W1方向の負側端部(図の上端)において破線で示される丸印(同じく符号Un)は、ノズルNが封鎖された部分(あるいは、開孔していない部分)を示す。すなわち、当該破線で示される丸印は、仮に封鎖されていなければ開孔部として設けられるであろうノズルNの位置を仮想的に示している。ノズルNの配列を簡略化して説明するための措置である。
なお、図3および図4では、説明を簡略化するために、ノズル列Na、NbにおけるノズルNの個数をそれぞれ「12」とし、ノズル列Na、Nbにおける仮想ノズルUnの個数をそれぞれ「2」としているが、実際には、ノズル列におけるノズルNの個数は例えば「480」(1列分)であり、仮想ノズルUnの個数は「10」(同じく1列分)である。
図4においては、以降においてノズルN等を特定するためのノズル番号が示されている。この例では、ノズル列Naについては、W1方向の負側端部に位置するノズルNからノズル番号として順番に1、2、…、11、12が付与される。ノズル列Nbについては、W1方向の負側の端部に位置するノズルNからノズル番号として順番に続番として13、14、…、23、24が付与される。
なお、ノズル列Naにおける仮想ノズルUnについては、W1方向の負側からノズル番号としてd3、d4が付与され、ノズル列Nbにおけるノズル列Nbについては、W1方向の負側からノズル番号としてd1、d2が付与される。
また、図4においては、ノズルNから吐出されるインクの色との対応関係についても示されている。この例では、ノズル番号が「1」から「6」までのノズルNはブラック(Bk)に対応し、ノズル番号が「7」から「12」までのノズルNはシアン(C)に対応し、ノズル番号が「13」から「18」までのノズルNはマゼンタ(M)に対応し、ノズル番号が「19」から「24」までのノズルNはイエロー(Y)に対応している。
複数のノズルNを有する液体吐出ヘッド30は、図3に示されるように、印刷媒体Pの搬送方向であるY方向に対して非直交かつ非平行の角度θで傾斜して配列する。このとき、図3の例ではノズル列Naに属するノズルNとノズル列Nbに属するノズルNとは、X方向の位置(座標)が共通する。
詳細には、1個の液体吐出ヘッド30に着目した場合、当該着目した液体吐出ヘッド30におけるノズル列NaのうちW1方向の負側端部に位置する1個のノズルN(ノズル番号が「1」のノズルN)と、ノズル列NbのうちW1方向の負側端部に位置する1個のノズルN(ノズル番号が「13」のノズルN)とは、印刷媒体Pの搬送方向であるY方向に平行な方向に延在する仮想線Lを通過するように角度θが設定される。
また、着目した液体吐出ヘッド30に対して、隣り合う液体吐出ヘッド30は、次のような位置関係となっている。すなわち、当該着目した液体吐出ヘッド30に対し、図において右隣に位置する液体吐出ヘッド30は、ノズル番号が「7」のノズルNと、ノズル番号が「19」のノズルNとは、仮想線Lを通過する位置関係となっている。
このため、印刷媒体PがY方向に搬送されたときに、ある液体吐出ヘッド30において、ノズル番号が「1」のノズルNから吐出されるブラック(Bk)のインクと、ノズル番号が「13」のノズルNから吐出されるマゼンタ(M)のインクと、当該液体吐出ヘッド30の左隣に位置する液体吐出ヘッド30において、ノズル番号が「7」のノズルNから吐出されるシアン(C)のインクと、ノズル番号が「19」のノズルNから吐出されるイエロー(Y)のインクと、を同じ位置に着弾させて、これによってカラーのドットを形成することが可能となっている。
図3では、「1」、「7」、「13」、「19」以外のノズル番号が省略されているが、着目した液体吐出ヘッドにおける例えばノズル番号「2」、「14」のノズルNと、当該着目した液体吐出ヘッド30に対して左隣の液体吐出ヘッド30におけるノズル番号「8」、「20」のノズルNとはX方向の位置が共通である。他のノズル番号についても対応関係を省略するが同様である。
図5は、液体吐出ヘッド30においてノズルNの1個分の構造を示す断面図であり、詳細には図4におけるg−g線で破断した場合の断面(W1方向に垂直な断面であって、W1方向の負側から正側方向を見た断面)を示す図である。
図5に示されるように、液体吐出ヘッド30では、流路基板42のうち、Z方向の負側の面上に圧力室基板44と振動板46と封止体52と支持体54とが設けられるとともに、流路基板42のうち、Z方向の正側の面上にノズル板62とコンプライアンス部64とを設置した構造体(ヘッドチップ)である。液体吐出ヘッド30の各要素は、概略的には上述したようにW1方向に長尺な略平板状の部材であり、例えば接着剤を利用して互いに固定される。また、流路基板42および圧力室基板44は、例えばシリコンの単結晶基板で形成される。
ノズルNは、ノズル板62に形成される。図4で概略説明したように、液体吐出ヘッド30では、ノズル列Naに属するノズルNに対応する構造と、ノズル列Nbに属するノズルNに対応する構造とは、W1方向にピッチP1の半分だけシフトした関係にあるが、それ以外では、略対称に形成されるので、以下においてはノズル列Nbに着目して液体吐出ヘッド30の構造を説明することにする。
流路基板42は、インクの流路を形成する平板材であり、開口部422と供給流路424と連通流路426とが形成される。供給流路424および連通流路426は、ノズルN毎に形成され、開口部422は、同色のインクを吐出する複数のノズルNにわたって連続するように形成される。
流路基板42のうちZ方向の負側の表面には、支持体54が固定される。この支持体54には、収容部542と導入流路544とが形成される。収容部542は、平面視で(すなわちZ方向からみて)、流路基板42の開口部422に対応した外形の凹部(窪み)であり、導入流路544は、収容部542に連通する流路である。
流路基板42の開口部422と支持体54の収容部542とを互いに連通させた空間が、液体貯留室(リザーバー)Srとして機能する。液体貯留室Srは、インクの色毎に互いに独立に形成され、液体容器14(図1参照)および導入流路544を通過したインクを貯留する。すなわち、1個の液体吐出ヘッド30の内部には、相異なるインクに対応する4個の液体貯留室Srが形成される。
この液体貯留室Srの底面を構成し、当該液体貯留室Srおよび内部流路におけるインクの圧力変動を抑制(吸収)する要素がコンプライアンス部64である。コンプライアンス部64は、例えばシート状に形成された可撓性の部材を含んで構成され、具体的には、流路基板42における開口部422と各供給流路424とが閉塞されるように流路基板42の表面に固定される。
圧力室基板44のうち流路基板42とは反対側の表面に振動板46が設置される。振動板46は、弾性的に振動可能な平板状の部材であり、例えば酸化シリコン等の弾性材料で形成された弾性膜と、酸化ジルコニウム等の絶縁材料で形成された絶縁膜との積層で構成される。振動板46と流路基板42とは、圧力室基板44の各開口部442の内側で互い間隔をあけて対向する。各開口部442の内側で流路基板42と振動板46とに挟まれた空間は、インクに圧力を付与する圧力室Scとして機能する。各圧力室Scは、流路基板42の連通流路426を介してノズルNに連通する。
振動板46のうち圧力室基板44とは反対側の表面には、ノズルN(圧力室Sc)に対応する圧電素子PztがノズルN毎に形成される。
圧電素子Pztは、振動板46の面上に圧電素子Pzt毎に個別に形成された駆動電極72と、当該駆動電極72の面上に形成された圧電体74と、当該圧電体74の面上に形成された駆動電極76とを包含する。なお、駆動電極72、76によって圧電体74を挟んで対向する領域が圧電素子Pztとして機能する。
圧電体74は、例えば加熱処理(焼成)を含む工程で形成される。具体的には、複数の駆動電極72が形成された振動板46の表面に塗布された圧電材料を、焼成炉内での加熱処理により焼成してから圧電素子Pzt毎に成形(例えばプラズマを利用したミーリング)することで圧電体74が形成される。
駆動電極72の一部は、封止体52および支持体54から露出しており、この露出部分において、配線基板(図示省略)が接続されて、駆動信号の電圧Voutが印加される構成となっている。一方、駆動電極76には、複数の圧電素子Pztにわたって共通の定電圧(例えば後述する電圧VBS)が印加される。なお、駆動電極76については複数の圧電素子Pztにわたって電気的に共通接続となるから、圧電素子Pzt毎に個別に形成して、共通配線に接続する構成としても良いし、複数の圧電素子Pztにわたって連続させた構成としても良い。
このような構成の圧電素子Pztにあっては、駆動電極72、76で印加された電圧に応じて、当該駆動電極72、76および振動板46とともに、図5において周辺に対して中央部分が両端部分に対して上または下方向に撓む。具体的には、圧電素子Pztは、駆動電極72を介して印加される駆動信号の電圧Voutが低くなると、上方向に撓む一方、当該電圧Voutが高くなると、下方向に撓む構成となっている。
ここで、上方向に撓めば、圧力室Scの内部容積が拡大するので、インクが液体貯留室Srから引き込まれる一方、下方向に撓めば、圧力室Scの内部容積が縮小するので、縮小の程度によっては、インク滴がノズルNから吐出される。
このように、圧電素子Pztに適切な駆動信号が印加されると、当該圧電素子Pztの変位によって、液体貯留室Srから引き込まれたインクがノズルNから吐出される構成となっている。
後述するように、1個の液体吐出ヘッド30において複数個(図4の例では24個)のノズルNからインクが吐出されるタイミングは共通である。このため、搬送方向であるY方向に対してノズル配列Na(Nb)が角度θで傾斜する構成において、Y方向に搬送される印刷媒体Pには、次のようにドットが形成される。
図6は、液体吐出ヘッド30のうち、例えばノズル番号が「1」から「6」までのノズルNに着目して、これらのノズルNから吐出されるインクによって形成されるドットを示す図である。
この図に示されるように、印刷媒体PがY方向にピッチDyだけ搬送される毎に、ノズル番号が「1」から「6」までのノズルNから、ショット#1、#2、#3、…、というタイミングで、ブラック(Bk)のインクが一斉に吐出される。ドットのX方向(すなわち印刷媒体Pの搬送方向と直交する方向)のドットのピッチDxは、
P1・sinθ
で表される。ここで、P1は、上述したように、W1方向に沿ったノズルNの配列ピッチである。
なお、図6では、説明のため、印刷媒体PがピッチDyだけ搬送された場合に、ノズルNからインクを1回吐出させてドットを形成する構成を例にとっているが、階調を表現するためには、後述するようにノズルNからインクを2回以上吐出させる構成もある。
ところで、複数のノズルNは、常にインクが吐出可能な状態(正常ノズル)となっていることはなく、何らかの理由、例えばノズル詰まりなどによってインクが吐出不可能な状態(欠陥ノズル)に陥る場合がある。欠陥ノズルとなってしまった場合、当該欠陥ノズルで形成すべきドットを、当該ドットの周辺ドット(典型的には隣り合うドット)によって補完して形成する、などの処理が必要となる。
また、一般に、ホストコンピューター等から入力されるビットマップ画像(画像データIMG)は、画素の直交配列(ドットマトリクス)で規定する。一方、本実施形態では、Y方向に対して角度θで傾斜して配列するノズルNからインクを一斉に吐出して画像を形成する。ここで、画像データIMGをメモリ(DRAM)に一時的に格納したときに、後述するように、上記直交配列を事前にノズルの傾斜に応じた配列に変換した上で、バースト転送しないと、高速印刷ができなくなる。
ここで、補完処理や配列変換処理などの前に、その前提となる印刷装置1の電気的な構成について説明する。
図7は、印刷装置1の電気的な構成を示すブロック図である。
この図に示されるように、印刷装置1は、制御ユニット10に液体吐出モジュール20が接続された構成となっている。
液体吐出モジュール20は、上述したように複数の液体吐出ユニットUで構成され、さらに液体吐出ユニットUは、複数(6個)の液体吐出ヘッド30を包含する。ここで、液体吐出ユニットUの個数を例えば整数のU個とすると、液体吐出ヘッド30は6・U個となる。
制御ユニット10は、6・U個の液体吐出ヘッド30をそれぞれ独立に制御するが、ここでは便宜的に1個の液体吐出ヘッド30の制御について代表して説明することにする。
図7に示されるように、制御ユニット10は、制御部100と、駆動回路50−a、50−bと、を有する。
このうち、制御部100は、概略すると、次のような処理を実行する。
すなわち、第1に、制御部100は、ホストコンピューターから供給された画像データIMGに対し、所定のプログラムを実行することによって上記補完処理等の画像処理や、配列変換処理を施して、一時的に保管する。
なお、印刷データSIとは、印刷装置1により印刷媒体Pに形成する1ドット分を規定するデータである。
第2に、制御部100は、一時的に保管した印刷データSIを読み出すとともに、当該読み出しに合わせて、クロック信号Sck、制御信号LAT、CHを印刷データSIとともに液体吐出ヘッド30に供給する。
第3に、制御部100は、駆動回路50−a、50−bのうち、一方の駆動回路50−aにデジタルのデータdAを供給し、他方の駆動回路50−bにデジタルのデータdBを供給する。ここで、データdAは、液体吐出ヘッド30に供給する駆動信号のうち、駆動信号COM−Aの波形を規定し、データdBは、駆動信号COM−Bの波形を規定する。
ここで、駆動回路50−aは、データdAをアナログ変換した後に、例えばD級増幅して、当該増幅した信号を駆動信号COM−Aとして液体吐出ヘッド30に供給する。同様に、駆動回路50−bは、データdBをアナログ変換した後に、D級増幅して、当該増幅した信号を駆動信号COM−Bとして液体吐出ヘッド30に供給する。また、駆動回路50−a、50−bについては、入力するデータ、および、出力する駆動信号が異なるのみであり、回路的な構成は同一である。
なお、制御部100は、このほかにも、搬送機構12を制御して、印刷媒体PのY方向への搬送を制御するが、このための構成については省略する。
一方、1個の液体吐出ヘッド30は、電気的には、上述した複数の圧電素子Pztのほか、インターフェイス(I/F)205と、選択制御部210と、圧電素子Pztの各々と対(つい)をなす複数個の選択部230とを有する。インターフェイス(I/F)205は、印刷データSIを入力し、選択制御部210に供給する。選択制御部210は、選択部230のそれぞれに対して駆動信号COM−A、COM−Bのいずれかを選択すべきか(または、いずれも非選択とすべきか)を、制御部100から供給される制御信号等によって指示し、選択部230は、選択制御部210の指示にしたがって、駆動信号COM−A、COM−Bを選択し、圧電素子Pztの一端に駆動信号として印加する。
なお、図7では、選択部230で選択された駆動信号の電圧を、駆動信号COM−A、COM−Bと区別する意味で、Voutと表記している。
また、圧電素子Pztのそれぞれにおける他端は、上述したように電圧VBSが共通に印加されている。
この例において、1つのドットについては、1つのノズルNからインクを最多で2回吐出させることで、大ドット、中ドット、小ドットおよび非記録の4階調を表現させる。この4階調を表現するために、この例では、2種類の駆動信号COM−A、COM−Bを用意するとともに、各々の1周期にそれぞれ前半パターンと後半パターンとを持たせている。そして、1周期のうち、前半・後半において駆動信号COM−A、COM−Bを、表現すべき階調に応じた選択して(または選択しないで)、圧電素子Pztに供給するする構成となっている。
そこで先に、駆動信号COM−A、COM−Bについて説明し、この後、印刷データSIに応じて、どのように選択されて、駆動信号の電圧Voutとして圧電素子Pztの一端に印加されるかについて説明する。
図8は、駆動信号COM−A、COM−Bの波形等を示す図である。
図において、Taは、1ドットの形成に要する単位期間、換言すれば印刷媒体PをY方向にピッチPyだけ搬送するのに要する期間であり、前半の期間T1と後半の期間T2とに分けられる。前半の期間T1は、制御信号LATが出力されて(立ち上がって)から制御信号CHが出力されるまでであり、後半の期間T2は、当該制御信号CHが出力されてから次の制御信号LATが出力されるまでである。
駆動信号COM−Aは、期間T1に配置された台形波形Adp1と、期間T2に配置された台形波形Adp2とを連続させた波形となっている。この例において台形波形Adp1、Adp2とは、互いにほぼ同一の波形であり、仮にそれぞれが圧電素子Pztの一端に供給されたとしたならば、当該圧電素子Pztに対応するノズルNから所定量、具体的には中程度の量のインクをそれぞれ吐出させる波形である。
駆動信号COM−Bは、期間T1に配置された台形波形Bdp1と、期間T2に配置された台形波形Bdp2とを連続させた波形となっている。この例において台形波形Bdp1、Bdp2とは、互いに異なる波形である。このうち、台形波形Bdp1は、ノズルNの付近におけるインクを微振動させてインクの粘度の増大を防止するための波形である。このため、仮に台形波形Bdp1が圧電素子Pztの一端に供給されたとしても、当該圧電素子Pztに対応するノズルNからインク滴が吐出されない。また、台形波形Bdp2は、台形波形Adp1(Adp2)とは異なる波形となっている。仮に台形波形Bdp2が圧電素子Pztの一端に供給されたとしたならば、当該圧電素子Pztに対応するノズルNから上記所定量よりも少ない量のインクを吐出させる波形である。
なお、台形波形Adp1、Adp2、Bdp1、Bdp2の開始タイミングと、終了タイミングでは、いずれも電圧Vcで共通である。すなわち、台形波形Adp1、Adp2、Bdp1、Bdp2は、それぞれ電圧Vcで開始し、電圧Vcで終了する波形である。
このような駆動信号COM−A、COM−Bを、ノズルNに対応する圧電素子Pztの一端に、印刷データSIに応じて選択して印加する構成が選択制御部210および選択部230である。
上述したように、液体吐出ヘッド30では、ショット#1、#2、#3、…というタイミングで、印刷媒体Pの搬送に合わせてノズルNからインクが吐出される。ここで、制御部100は、あるショットで複数のノズルNからインクを吐出させる場合(させない場合もある)に、当該ノズルNに対応する印刷データSIを、当該ショット前に選択制御部210に転送する一方、選択制御部210では、転送された各ノズルNに対応する印刷データSIをラッチする。そして、当該ショットに至ったときに、ラッチした印刷データSIに応じて、各ノズルN(各圧電素子Pzt)に対応する選択部230に、駆動信号COM−A、COM−Bのいずれかを選択して(または、いずれも選択しないで)、対応する圧電素子Pztの一端に印加する構成となっている。
図9は、あるノズルNに対応する印刷データSIに対して駆動信号の電圧Voutの波形がどのように選択されるかについて示す図である。
この図に示されるように、印刷データSIが(1、1)である場合、期間T1において駆動信号COM−Aの台形波形Adp1が選択され、期間T2において駆動信号COM−Aの台形波形Adp2が選択される。このように期間T1において台形波形Adp1が選択され、期間T2において台形波形Adp2が選択されて、駆動信号として圧電素子Pztの一端に供給されると、当該圧電素子Pztに対応したノズルNから、中程度の量のインクが2回にわけて吐出される。
このため、印刷媒体Pにはそれぞれのインクが着弾し合体して、結果的に、印刷データSIで規定される通りの大ドットが形成されることになる。
印刷データSIが(0、1)である場合、期間T1において駆動信号COM−Aの台形波形Adp1が選択され、期間T2において駆動信号COM−Bの台形波形Bdp2が選択される。このように期間T1において台形波形Adp1が選択され、期間T2において台形波形Bdp2が選択されて、駆動信号として圧電素子Pztの一端に供給されると、当該圧電素子Pztに対応したノズルNから、中程度および小程度の量のインクが2回にわけて吐出される。
このため、印刷媒体Pには、それぞれのインクが着弾し合体して、結果的に、印刷データSIで規定された通りの中ドットが形成されることになる。
印刷データSIが(1、0)である場合、期間T1において駆動信号COM−Aの台形波形Adp1、駆動信号COM−Bの台形波形Bdp1のいずれも選択されない。なお、選択部230が駆動信号COM−A、COM−Bのいずれも選択しないとき、選択部230の出力端から圧電素子Pztの一端までの経路は、電気的にどの部分にも接続されないハイ・インピーダンス状態になる。ただし、圧電素子Pztの一端は、自己が有する容量性によって直前の電圧Vcに保持される。また、この場合、期間T2において台形波形Bdp2が選択されて、駆動信号として圧電素子Pztの一端に供給される。
このため、ノズルNから、期間T2においてのみ小程度の量のインクが吐出されるので、印刷媒体Pには、印刷データSIで規定された通りの小ドットが形成されることになる。
印刷データSIが(0、0)である場合、期間T1において駆動信号COM−Bの台形波形Bdp1が選択され、期間T2においては、駆動信号COM−Aの台形波形Adp2、駆動信号COM−Bの台形波形Bdp1のいずれも選択されない。
このため、期間T1においてノズルN付近のインクが微振動するのみであり、インクが吐出されないので、結果的に、ドットが形成されない、すなわち、印刷データSIで規定された通りの非記録になる。
このように、選択部230は、選択制御部210による指示にしたがって駆動信号COM−A、COM−Bを選択し(または選択しないで)、圧電素子Pztの一端に印加する。このため、各圧電素子Pztは、印刷データSIで規定されるドットのサイズに応じて駆動されることになる。
なお、図8に示した駆動信号COM−A、COM−Bはあくまでも一例である。実際には、印刷媒体Pの搬送速度や特性などに応じて、予め用意された様々な波形が組み合わせられて用いられる。
また、ここでは、圧電素子Pztが、電圧Voutの低下に伴って上方向に撓む例で説明したが、駆動電極72、76の積層順を逆転させると、圧電素子Pztは、電圧の上昇に伴って上方向に撓むことになる。このように、圧電素子Pztが、電圧の上昇に伴って上方向に撓む構成では、図に例示した駆動信号COM−A、COM−Bが、電圧Vcを基準に反転した波形となる。
このように、印刷媒体Pに1ドットが単位期間Taにわたって(最多で)2回のインクの吐出により1ドットが形成されるが、図6に示したように、インクの1回の吐出により1ドットが形成されても良い。以降においては説明を簡略化するために、インクの1回の吐出により1ドットを形成する構成で説明することにする。なお、この構成では、印刷データSIは、インクの吐出/非吐出を指定することになるので、1ビットになる。また、特に図示しないが、この構成では、図8および図9から類推されるように、駆動回路50−bは駆動信号COM−Bの出力を停止し、駆動回路50−aは単位期間Taで1つの台形波形Adp1だけを出力する一方、印刷データSIに応じてノズルNからはインクが吐出される、または、非吐出となる。
図10は、制御部100の構成を示すブロック図である。この図においては、供給された画像データIMGから印刷データを出力するまでの機能を示し、データdA、dBや、クロック信号Sck、制御信号LAT、CHを出力する機能については省略している。
制御部100は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)110と、SRAM(Static Random Access Memory)112と、基礎処理部122と、傾斜処理部124と、補完処理部126と、回転処理部128と、を含む。このうち、DRAM110(第1メモリ)は、一時作業用のメモリとして用いられ、便宜的に第1領域から第4領域まで分けられる。また、SRAM112(第2メモリ)は、メモリアクセス時におけるバッファとして用いられ、DRAM110と比較して格納/読出が高速である。
制御部100の概略について説明すると、第1領域は、ホストコンピューターから供給された画像データIMGを格納する。基礎処理部122は、ノズル単位の個体差補正や誤差拡散処理などを、第1領域に格納された画像データIMGに施す。第2領域は、基礎処理部122により処理された画像データを格納する。本実施形態において、上記配列変換処理は、後述する理由により、第1次変換処理と第2次変換処理との2回に分けて実行する。傾斜処理部(第1処理部)124は、配列変換処理のうちの第1次変換処理を第2領域に格納された画像データに施す。第3領域は、傾斜処理部124により処理された画像データを格納する。補完処理部126は、液体吐出ヘッド30における欠陥ノズルの位置情報Pdを取得したとき、第3領域に格納された画像データに対し、当該欠陥ノズルによって形成できないドットを他のノズルによって補完して形成する補完処理を施して、第3領域に書き戻す。回転処理部128は、第3領域に格納された画像データを90度回転させる回転処理と、配列変換処理のうちの第2次変換処理とを実行する。第4領域は、回転処理部128により処理された画像データを格納する。第4領域に格納された画像データは、バースト転送により、すなわち連続アドレスで格納されたデータが1ショットでインクを吐出するノズル分読み出され、印刷データSIとして液体吐出ヘッド30側におけるインターフェイス205に供給される。
図11は、制御部100で実行される配列変換処理の概要を説明するための図である。
この図の(a)は、第2領域に格納された画像データ、すなわち、基礎処理部122により処理された画像データの例を示す図である。(a)では、当該画像データが順に横方向のラインL1、L2、L3、…で、第2領域に格納された状態が示されている。なお、図において、ラインLiとは、第2領域に格納された画像データのうち、任意のiライン目を示す。当該画像が1ラインから最終のmaxラインまでで構成される場合、iは、ラインを一般的に説明するためのライン番号であって、1からmaxまでのいずれかの整数である。また、DRAM110の各記憶領域については、右方向をカラム方向、すなわち格納・読出方向とし、下方向をロウ方向としている。
(b)は、第3領域に格納された画像データ、すなわち、第1次変換処理が施された画像データのマッピング例を示している。当該第1次変換処理では、各ラインが、ライン毎に、ライン番号で定まる量だけカラム方向にシフトされる。各ラインがいかなる量でシフトされるかについては後述することにする。
第1変換処理におけるシフト量は、図ではラインL1から最終ラインまで直線的に変化しているが、実際には後述するように、ライン番号で定まる端数だけシフトされるので、直線的に変化するわけではない。
ここでいうシフトは、入力画素において有意の画素を規定するデータの格納アドレスを、カラム方向(ライン方向)に移動させるとともに、当該移動に生じた番地に無意(NULL)のデータを書き込むことをいう。
図において左端側で、あるラインに無意データが書き込まれた場合に、右端側でも無意データが書き込まれるときがある。このとき、あるラインにおいて左端側で書き込まれる無意データと右端側で書き込まれる無意データとの和は、各ラインにわたって後述するように(p−1)という関係になっている。
第3領域に格納された画像データは、補完処理部126によって補完処理が施されて、当該第3領域に書き戻される。なお、当該補完処理については後述することにする。
(c)は、第4領域に格納された画像データ、すなわち、第2次変換処理が施された画像データの例を示している。
当該第2次変換処理では、第1次変換処理が施された画像データに対し、この例では、反時計回りに90度回転させるとともに、さらに、各ラインが、ライン毎に、所定の倍数分だけ、ライン方向に追加でシフトされる。なお、ここでいうライン方向は、90度回転後であるので、メモリの記憶領域でいえば図において縦方向(ロウ方向)である。
この例において、第2次変換処理後、最終的に、ライン番号が若いほど上方向へのシフト量が大きくなっている。
具体的には、ラインLiでの総シフト量は、次式(1)のようにライン番号のiを引数とする関数m(i)で表すことができる。
m(i)=n・(max−i) …(1)
ここで、nは、隣り合うライン同士でみたときのシフト量であり、例えば次式(2)のように表される。
n=(P1・cosθ)/Dy …(2)
この式において、P1は、図4および図6で説明したように隣り合うノズルN同士のピッチであり、Dyは、単位期間Taで搬送される印刷媒体Pのピッチ、すなわち、形成されるドットのY方向のピッチである。すなわち、シフト量nは、ピッチP1のY方向成分の距離がY方向に形成されるドットの何個分に相当しているかを示している。
なお、図6では説明のため、シフト量nが「2」となる例であるが、実際には例えば「3」〜「6」程度である。
(d)は、第4領域に格納された画像データの読み出し順を示す図である。詳細には、画像データが図において上からショット順に、連続アドレスであるカラム方向に読み出されて、印刷データSIとしてインターフェイス205に供給される(バースト転送)。
配列変換された印刷データSIが供給された液体吐出ヘッド30は、印刷媒体Pの搬送方向であるY方向と非直交に配列するノズルNから、当該印刷データSIに応じて一斉にインクを吐出する。これにより、結果的に入力画像が印刷媒体Pに形成されることになる。
次に、本実施形態において配列変換処理を、第1次変換処理と第2次変換処理とにわけて実行している点について説明する。
本実施形態では、ショット毎にノズル配列に応じたノズルNからインクを吐出するなどのために、入力した画像データを回転処理した上で読み出している。このような回転処理は、典型的には、次のような内容で実行される。
図12は、回転処理の例を説明するための図である。回転処理は、(a)で示されるように格納された画像データを、バッファメモリとしてSRAM112に、(b)で示されるように読み出して転送した後、(c)で示されるように、直交方向を入れ替えてSRAM112からDRAM110に書き戻して、並び替える処理となる。
SRAM112のデータ幅がpビットである場合に、pビットを単位とした処理は、具体的には、pビットの整数倍のデータ挿入(シフト)などの処理は、比較的簡単かつ高速に実行することができる。
上述したように、第4領域に格納される際の画像データのシフト量は、ライン毎に、式(1)のように表されるが、これを第2領域に格納された格納された画像データから、一度の処理で変換しようとすると、例えばシフト量が必ずしもSRAM112のデータ幅の整数倍関係とはならないので、非効率的となり、高速処理の妨げとなる。
そこで、本実施形態では各ラインに対して、式(1)で表される総シフト量のうち、SRAM112のデータ幅であるpビットの整数倍については、第2次変換処理で付加し、その残り分(端数分)については、事前に第1次変換処理で付加しておく構成とした。
詳細には、ライン番号が「i」であるラインに対して付加すべき総シフト量は式(1で示されるので、当該総シフト量をpで割ったときの商kと余りqとを予め求めておく一方、当該ラインに対しては、第1次変換処理においては端数である余りqだけ先にシフトし、第2次変換処理においては、pビットを商であるk倍でシフトする構成としている。
換言すれば、ライン番号が「i」であるラインに対して、第1次変換処理において、端数q(第1のオフセット量)だけシフトし、第2次変換処理において、pビットのk倍の量(第2のオフセット量)だけシフトする構成としている。
ところで、ライン番号が「i」であるラインにおける商kおよび余りqの各々は、当該ライン番号「i」で定まる総シフト量のm(i)をpで割ったとき値であるので、それぞれライン番号iを引数とする(非線形)関数k(i)、q(i)と表現することもできる。このとき、総シフト量のm(i)は、式(1)で表され、さらに式(1)におけるシフト量nは、角度θの関数であるので、第1変換処理のシフト量である端数q(i)も、第2変換処理のシフト量であるp・k(i)も、それぞれ角度θに応じた値ということができる。
なお、qは、ゼロ以上p未満の整数であるので、最大値は(p−1)となる。第1次変換処理(図11(b)または図13(b)参照)において、上述したように、各ラインにおいて左側で書き込まれる無意データと右端側で書き込まれる無意データとの和が(p−1)という関係になっている。
図13は、このような配列変換処理の内容を説明するための図である。
図13の(a)は、第2領域に格納された画像データであり、図11の(a)と同様である。図13の(b)は、第3領域に格納された画像データにおいて、各ラインが、ライン毎に、ライン番号で定まる余りだけカラム方向にシフト(端数シフト)された状態を示している。なお、ライン番号が「i」であるラインのシフト量は関数q(i)で規定されである。
(c)は、(b)の画像データが、図12で示した回転処理が施された例であり、(d)は、回転処理された(c)の画像データにおいて、各ラインが、ライン毎に、ライン番号で定まる倍率kでシフト(倍数シフト)された状態を示している。なお、ライン番号が「i」であるラインの倍率は関数k(i)で規定されるので、このときのシフト量は、p・k(i)である。
このような配列変換処理によれば、先に端数を付加してシフトし、SRAM112を用いた回転処理をしつつ、後にSRAM112のデータ幅であるpビットの整数倍でシフトするので、一括して処理する場合と比較して、簡単かつ高速に実行することができる。
なお、図13の例では、回転処理の後に、第2次変換処理(倍数シフト)を実行した例であるが、先に第2次変換処理を実行し、後に回転処理しても良い。
次に、欠陥ノズルに対する補完処理について説明する。
図14は、補完処理の概要を説明するための図である。
同図の(a)で示されるように、第4領域に格納された画像データは、図において上からショット順に、アドレスが連続するカラム方向で読み出されて、印刷データSIとしてインターフェイス205に供給される。
ここで、例えばノズル番号が「3」のノズルNにおいてノズル詰まりが発生した場合、当該ノズルNからインクが吐出されないので、例えば(b)に示されるように連続したドットを形成すべき場合であるのにもかかわらず、(c)に示されるように当該ノズルNに相当する位置ではドットが形成されない。
そこで、例えば(d)に示されるように、欠陥ノズルによって形成できないドットを、両隣のドットで、補完して形成する、というものである。
このような補完処理は、簡単にいえば、補完の対象となるラインと、それを補うために例えば隣に位置するラインのデータ同士を比較し、補完対象のラインのデータが非記録であれば無視する一方、補完対象のラインのデータが記録であれば、隣に位置するラインのデータを所定のデータに置換する、という処理である。
ここで、第4領域に格納された画像データにおいて各ラインは、DRAM110においてカラム方向の連続アドレスに格納された状態とはなっていないので、アクセスの際に、バースト処理することができない。
そこで本実施形態では、第3領域において第1次変換処理が施された画像データ(画像のライン方向とDRAM110のカラム方向とが一致している画像データ)で補完処理することとしている。
ただし、第3領域に格納された画像データでは、第1変換処理によって各ラインがライン番号の「i」に応じた端数だけシフトしている。このため、補完処理部126は、図15に示されるように補完処理を実行する。
図15は、補完処理の内容を説明するための図である。
詳細には、第1に、補完処理部126は、同図の(a)に示されるように、欠陥ノズルの位置情報Pdに相当するラインと当該ラインに隣り合うラインとを第3領域から、バースト処理により読み出す。この読み出しの開始アドレスは、図に示されるように、各ラインの左端、詳細には、端数シフトによって書き込まれた無意データを含めての左端である。これにより、各ラインは、シフトにより書き込まれた無意データも合わせて読み出される。なお、開始アドレスをシフトさせた状態で読み出すのは、DRAM110と補完処理部126との経路であるバスの仕様上、制約を受ける場合があるので、好ましくないと考えられている。
第2に、補完処理部126は、同図の(b)に示されるように、読み出した各ラインを、当該ライン番号に応じた端数分だけ逆シフトする。これにより、比較するライン同士の位置が揃えられる。
第3に、補完処理部126は、位置が揃えられたライン同士で比較、置換処理を実行する。
第4に、補完処理部126は、同図の(c)に示されるように、置換処理したラインを第3領域に、ライン番号に応じた端数分だけ再シフトして書き戻す。
本実施形態における補完処理によれば、第4領域に格納された画像データを処理する場合と比較して、DRAM110において連続するアドレスに格納されたラインのデータをバースト処理するので、処理時間の短縮化やアドレス演算の単純化を図ることができる。なお、第1次変換処理において、各ラインのシフト分は、SRAM112のデータ幅であるp未満であるので、シフトのために要する時間や構成の複雑化は抑えられる。
ところで、圧電素子Pztは、外部から電圧変化を与えれば変位を発生させるアクチュエーターとして機能するが、逆に変位が与えられれば、電圧変化を出力するセンサーとして機能する。詳細については省略するが、仮にノズル詰まりが発生すれば、圧電素子Pztの変位後において、圧力室Scの圧力変化が正常時と著しく異なるので、インク吐出後に検出期間を設けるとともに、圧電素子Pztの一端における電圧変化を判定することで、正常であるか、ノズル詰まりが発生したかを検出することができる。
このようにして検出した欠陥ノズルの位置情報Pdが補完処理部126に供給されると、直ちに補完処理に反映されるので、印刷物の不良が短期間で修正されることになる。
次に、複数頁の取り扱いについて説明する。
上述したように、本実施形態では、ノズルNが印刷媒体Pの搬送方向と直交する方向に対して傾斜して配列している。このために、上述したように画像データを第1次変換処理および第2次変換処理(回転含む)によって配列変換処理した上で、液体吐出ヘッド30に印刷データSIとして供給する構成となっている。
ただし、このような構成において、複数頁の画像データに対して頁単位で繰り返して実行すると、シフトや回転などの処理においてオーバーヘッドが大きくなる。
そこで、本実施形態では、複数頁の画像データを出力する場合に、概略すれば、当該複数頁の画像データを、1頁の画像データとして第1次変換処理および第2次変換処理を施し、液体吐出ヘッド30に供給する段階において頁単位で分割して出力する構成としている。
図16および図17は、この処理を説明するための図である。
図16の(a)は、処理対象となる画像データを示しており、この例では、第1頁、第2頁および第3頁から構成されている。
(b)は、第1頁、第2頁および第3頁の画像データに対し、傾斜処理(第1次変換処理)が施された例を示している。この図に示されるように、第1次変換処理が施されて第3領域に格納される画像データは、次のような構造となっている。詳細には、上述した第1次変換処理が施された各頁の画像データは、図において左から頁番号の順に第1頁、第2頁、第3頁で配列する一方、第1頁の先頭部分に、ヘッダが付与された構造となっている。ヘッダには、各ラインにおける頁分割情報、すなわち、各ラインにおける頁の区切りを示す地点の情報(中間データ)が記述される。図においてマークaが頁の区切りを示している。
図17の(c)に示されるように第2次変換処理が施される場合、各ラインが、ライン毎に、所定の倍数分だけライン方向にシフト(倍数シフト)される。このときマークaも倍数シフトに伴って移動する。
また、第2次変換処理が施された画像データは、(d)に示されるように、マークaで示される地点で頁毎に分割された状態で第4領域に格納される。なお、倍数シフトおよび回転以降においてヘッダは不要となるので、削除され、第4領域には格納されない。
第2次変換処理における最大のシフト量は、この例では1ライン目で発生する。このシフト量は、SRAM112のデータ幅であるpビットを、k(1)倍した値である。ここでは、k(1)は、関数k(i)にi=1を代入した値、すなわち、1ライン目の総シフト量をpで割ったときの商である。
第1頁から第3頁まで一括処理された画像データは、(d)に示されるように、頁毎に分割されて第4領域に格納された後、バースト転送により、印刷データSIとして液体吐出ヘッド30側におけるインターフェイス205に供給される。
このような構成によれば、複数頁の画像データに対しシフトや回転などの処理が一括して実行されるので、オーバーヘッドが小さくなる。このため、処理の負荷を減らすことができる。
なお、実施形態において、配列変換処理および補完処理については、説明の簡略化のために、印刷データSIを1ビットとして説明したが、多階調化のために2ビット以上であっても良い。例えば、印刷データSIを2ビットとして、図9で説明したように4階調を表現する場合、当該2ビットを上位ビットと下位ビットとに分けて、それぞれのビットについて同様な配列変換処理および補完処理を施すとともに、当該上位ビットおよび下位ビットを、インクを吐出させる単位期間Taの前に液体吐出ヘッド30に供給すれば良い。
また、実施形態では、複数のノズルNを有する液体吐出ヘッド30に対して印刷媒体PをY方向に移動させる構成であったが、逆に、印刷媒体Pに対して液体吐出ヘッド30を移動させる構成であっても良い。
1…印刷装置、10…制御ユニット、30…液体吐出ヘッド(印刷ヘッド)、100…制御部、110…DRAM、112…SRAM、124…傾斜処理部(第1処理部)、126…補完処理部(第2処理部)、128…回転処理部(第3処理部)。

Claims (6)

  1. 印刷媒体を搬送方向に相対移動させるとともに、ノズル列が前記搬送方向の直交方向に対して斜め方向に配列して、前記ノズル列における複数のノズルの各々から、印刷データに基づいてそれぞれインクを吐出させる印刷装置であって、
    前記直交方向に沿った複数のラインにスライスされた画像データをメモリに記憶させる第1処理部と、
    前記第1処理部により記憶された画像データに対し、前記ノズル列の欠陥ノズルに対応した補完処理を施す第2処理部と、
    前記補完処理が施された画像データを回転処理して前記メモリに格納させる第3処理部と、
    を備え、
    前記回転処理が施された複数のラインの画像データのうち、隣り合うラインに対応する画像データは、前記メモリにおいて、ノズル同士の前記搬送方向のシフト量でシフトされた状態であり、該状態で格納された画像データを読み出して前記印刷データとして出力する
    ことを特徴とする印刷装置。
  2. 一のライン番号で定まるシフト量前記メモリのデータ幅で割ったときの商がkであり、余りがqである場合に、
    前記第1処理部は、
    前記一のラインの画像データを、前記qのシフト量でシフトさせて記憶させ、
    前記第3処理部は、
    前記一のラインの画像データを、前記データ幅を前記k倍したシフト量でシフトさせて前記メモリに格納させる
    ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
  3. 前記メモリは、バースト転送が可能であり、前記第3処理部は、前記画像データを前記バースト転送によって格納する
    ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
  4. 前記第2処理部には、少なくとも前記欠陥ノズルを規定する情報が供給され、
    前記第2処理部は、
    少なくとも、前記欠陥ノズルの位置に対応する行を挟む2行の画像データを用いて前記補完処理を実行する
    ことを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
  5. 印刷媒体を搬送方向に相対移動させるとともに、ノズル列が前記搬送方向の直交方向に対して斜め方向に配列して、前記ノズル列における複数のノズルの各々から、印刷データに基づいてそれぞれインクを吐出させる印刷装置を制御する制御装置であって、
    前記直交方向に沿った複数のラインにスライスされた画像データをメモリに記憶させる第1処理部と、
    前記第1処理部により記憶された画像データに対し、前記ノズル列の欠陥ノズルに対応した補完処理を施す第2処理部と、
    前記補完処理が施された画像データを回転処理して前記メモリに格納させる第3処理部と、
    を備え、
    前記回転処理が施された複数のラインの画像データのうち、隣り合うラインに対応する画像データは、前記メモリにおいて、ノズル同士の前記搬送方向のシフト量でシフトされた状態であり、該状態で格納された画像データを読み出して前記印刷データとして出力する
    ことを特徴とする制御装置。
  6. 印刷媒体を搬送方向に相対移動させるとともに、ノズル列が前記搬送方向の直交方向に対して斜め方向に配列して、前記ノズル列における複数のノズルの各々から、印刷データに基づいてそれぞれインクを吐出させる印刷装置の画像処理方法であって、
    前記直交方向に沿った複数のラインにスライスされた画像データをメモリに記憶させ、
    前記メモリに記憶した画像データに対し、前記ノズル列の欠陥ノズルに対応した補完処理を施し、
    前記補完処理を施した画像データを回転処理して前記メモリに格納し、
    前記回転処理を施した複数のラインの画像データのうち、隣り合うラインに対応する画像データは、前記メモリにおいて、ノズル同士の前記搬送方向のシフト量でシフトされた状態であり、該状態で格納された画像データを読み出して前記印刷データとして出力する
    ことを特徴とする印刷装置の画像処理方法。
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