以下添付図面を参照して本発明の好適な実施例について、さらに具体的かつ詳細に説明する。
なお、この明細書において、「記録」(「プリント」という場合もある)とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わない。さらに人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かも問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、または媒体の加工を行う場合も表すものとする。
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表すものとする。
また、「インク」とは、上記「記録」の定義と同様広く解釈されるべきもので、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成又は記録媒体の加工、或いはインクの処理に供され得る液体を表すものとする。インクの処理としては、例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固又は不溶化させることが挙げられる。
またさらに、「記録要素(記録素子又はノズル)」とは、特にことわらない限り吐出口ないしこれに連通する液路およびインク吐出に利用されるエネルギーを発生する素子を総括して言うものとする。
以下に用いる記録ヘッド用基板(ヘッド基板)とは、シリコン半導体からなる単なる基体を指し示すものではなく、各素子や配線等が設けられた構成を差し示すものである。
さらに、基板上とは、単に素子基板の上を指し示すだけでなく、素子基板の表面、表面近傍の素子基板内部側をも示すものである。また、本発明でいう「作り込み(built-in)」とは、別体の各素子を単に基体表面上に別体として配置することを指し示している言葉ではなく、各素子を半導体回路の製造工程等によって素子板上に一体的に形成、製造することを示すものである。
<記録装置の構成(図1)>
図1は本発明の代表的な実施例であるインクジェット記録装置(以下、記録装置)の概略構成を示す外観斜視図である。
記録装置100は、紙などの記録媒体を装置本体内へと自動的に給送する自動給送部101と自動給送部101から1枚ずつ送出される記録媒体を所定の記録位置へと導くとともにそれを記録位置から排出部102へと導く搬送部103を備える。また、記録位置に搬送された記録媒体に所望の記録を行う記録部と、記録部に対して回復処理を行う回復部108とを備える。
記録部は、キャリッジ軸104によって矢印Xの方向(主走査方向)に移動可能に支持されたキャリッジ105と、キャリッジ105に着脱可能に搭載される記録ヘッド(不図示)とから構成される。従って、主走査方向とはキャリッジ移動方向に相当する。なお、記録ヘッドは、複数の記録素子が配列された記録素子列を有し、矢印Xの主走査方向は、この記録素子の配列方向と交差する方向に相当する。なお、記録媒体は自動給送部101によりキャリッジ移動方向(主走査方向)とは直角方向に給送され、搬送機構により搬送される。記録媒体の給送・搬送方向は副走査方向と呼ばれる。記録ヘッドがキャリッジ105に搭載された場合、記録素子の配列方向は副走査方向に対して所定の角度になるが、種々の要因により、通常の取付角度に対して傾く場合がある。
本発明では、矢印Xの主走査方向と記録素子の配列方向とが斜めに交差するように記録ヘッドが装着されている場合の記録装置における傾き誤差を補正する。
キャリッジ105には、キャリッジ105と係合して、記録ヘッドをキャリッジ105上の所定の装着位置に案内するためのキャリッジカバー106が設けられている。また、記録ヘッドのタンクホルダーと係合して記録ヘッドを所定の装着位置にセットさせるよう押圧するヘッドセットレバー107が設けられる。
キャリッジ105の上部にヘッドセットレバー軸に対して回動可能に設けられるとともに、記録ヘッドとの係合部には、ばねにより付勢されるヘッドセットプレート(不図示)が備えられている。そのばね力によって、ヘッドセットレバー107は、記録ヘッドを押圧しながら、それをキャリッジ105に装着する構成となっている。
<記録ヘッドの構成(図2〜図3)>
図2は図1に記録ヘッド11の構成を示す分解斜視図である。図2において、(A)は記録ヘッド11の詳細な分解斜視図であり、(B)は記録ヘッド11の概略分解斜視図である。記録ヘッド11はインクジェット記録ヘッドであり、記録素子ユニット111とインク供給ユニット112とタンクホルダー113とから構成される。また、記録素子ユニット111は、第1の素子基板114、第2の素子基板115、第1のプレート116、電気配線テープ119、第2のプレート117で構成されている。
また、インク供給ユニット112は、インク供給部材120、流路形成部材121、ジョイントゴム122、フィルター123、シールゴム124から構成されている。
次に、記録素子ユニット111について説明する。
記録素子ユニット111は、図2(B)に示されるように、第1のプレート116と第2のプレート117の接合によるプレート接合体125の形成、第1の素子基板114と第2の素子基板115のプレート接合体125へのマウントの順に実装される。そして、さらに電気配線テープ119の積層、第1の素子基板114と第2の素子基板115との電気接合、その電気接続部等の封止の順に実装される。
液滴の吐出方向に影響するため平面精度を要求される第1のプレート116は、厚さ0.5〜10mmのアルミナ(Al2O3)材料で構成されている。第1のプレート116には、第1の素子基板114と第2の素子基板115にインクを供給するためのインク供給口126が形成されている。
第2のプレート117は、厚さ0.5〜1mmの1枚の板状部材であり、第1のプレート116に接着固定される第1の素子基板114と第2の素子基板115の外形寸法よりも大きな窓状の開口部127を有する。第2プレート117は第1プレート116に接着剤を介して積層固定され、プレート接合体125を形成する。
第1の素子基板114と第2の素子基板115とは、第1のプレート116の表面に接着固定されるが、このマウントする際の精度や、接着剤の動きなどにより精度良く実装することが極めて難しい。このため、本発明の課題となる記録ヘッドを組み立てる際の誤差の要因の一つとして挙げられる。
複数のインク吐出口から成るインク吐出口列を有する第1の素子基板114と第2の素子基板115は、サイドシュータ型バブルジェット(登録商標)基板として公知の構造である。第1の素子基板114と第2の素子基板115は、厚さ0.5〜1mmのSi基板にインク流路として長溝状の貫通口から成るインク供給口と、インク供給口を挟んだ両側にそれぞれ1列ずつ千鳥状に配列されたエネルギー発生手段であるヒータ列を有している。さらに、このヒータ列に直交する第1の素子基板114と第2の素子基板115の辺には、ヒータに接続され基板の両外側に接続パッドが配列された電極部を有する。
電気配線テープ119として、TABテープが採用される。TABテープは、テープ基材(ベースフィルム)、銅箔配線、カバー層の積層体である。
第1の素子基板114と第2の素子基板115の電極部に対応するデバイスホールの2つの接続辺には、接続端子としてインナーリード129が延出する。電気配線テープ119は、カバー層の側を第2プレート117の表面に熱硬化型エポキシ樹脂接着層を介して接着固定され、電気配線テープ119のベースフィルムは、記録素子ユニット111のキャッピング部材が当接する平滑なキャッピング面となる。
電気配線テープ119と2つの素子基板114及び115は、それぞれ熱超音波圧着法や異方性導電テープを介して電気的に接続される。TABテープの場合は、熱超音波圧着法によるインナーリードボンディング(ILB)が好適である。記録素子ユニット111では、電気配線テープ119のリードと第1の素子基板114と第2の素子基板115上のスタッドバンプとがILB接合される。
電気配線テープ119と2つの素子基板114及び115の電気接合の後、電気接続部分をインクによる腐食や外的衝撃から保護するため、第1の封止剤130及び第2の封止剤H1303により封止される。第1の封止剤130は、主にマウントされた素子基板の外周部を封止し、第2の封止剤H1303は、電気配線テープ119と素子基板114及び115の電気接続部の表側を封止している。
図3は記録ヘッド11をインク吐出口面から見た複数のインク吐出口の配列を示す図である。図3に示されるように、インク吐出口13が128個ずつ配列され、4つのインク吐出口列141、142、143、144を形成する。それぞれのインク吐出口列からは、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロのインク滴が吐出される。
なお、本発明では、記録ヘッド11の構成に特徴を有するものでなく、例えば、各色のインク吐出口列141、142、143、144が、副走査方向にインク吐出口13を交互に配置した2列から成る構成であってもよい。また、ブラックのインク吐出口列141におけるインク吐出口13の数が、他色のインク吐出口列142、143、144におけるインク吐出口13の数よりも多い構成であってもよい。
これ以降、1つのインク吐出口列(黒のインク吐出口列141)に注目して説明を行うが、他のインク吐出口列142、143、144についても、同様に、傾きずれ補正を行うことが可能である。
また、図3から分かるように、4つのインク吐出口列それぞれは、複数のインク吐出口が直線状に配列されてインク吐出口列が形成されているのではなく、3個又は4個のインク吐出口を単位としてジグザグ状に配置してインク吐出口列を形成している。このようにしてインク吐出口は後述の時分割駆動の駆動タイミングに従ってインクを吐出すれば記録媒体上におけるインク液滴の着弾位置が記録媒体の搬送方向に沿って揃うように配置される。
この配置について図面を参照して説明する。
図4は記録ヘッド11のインク吐出口列141の上部16個のインク吐出口を16のブロックに分割して時分割駆動する様子を示す図である。
図4(A)は16個のインク吐出口の配置を示しており、隣接するインク吐出口が1つのノズルグループとして定義される。この例では、隣接する8個のインク吐出口が1つのノズルグループを構成し、上側がノズルグループ0、下側がノズルグループ1と定義される。なお、記録ヘッド11では各インク吐出口列は128個のインク吐出口から構成されるので、その一端から他端に向かって、ノズルグループ0、ノズルグループ1、……、ノズルグループ7が定義される。
図4(B)は時分割駆動の駆動タイミングの一例を示している。この例では16個のインク吐出口(0〜15)それぞれに異なる駆動タイミング(0〜15)を割り当てる。このように16個のブロックの時分割駆動を行う場合、16個のブロックの時分割駆動に必要な時間、もしくは、その時間に相当する長さがキャリッジ移動方向の記録解像度(1カラム)に相当する。そして、駆動タイミングごとの割り当てに従い、インク吐出口および記録素子を選択し、選択された記録素子を駆動することによりインクを吐出して画像の記録を行う。図4(B)から分かるように、駆動タイミング0〜15それぞれにおいて、吐出口番号0〜15のいずれか1つの記録要素が駆動され、インク液滴が吐出される。従って、各駆動タイミングでの同時駆動される記録要素の数(同時吐出数)は1である。
ここで、時分割駆動のタイミングが異なっても記録媒体上ではインク液滴の着弾位置がキャリッジ移動方向に関して揃うように、図4(A)に示されるように駆動タイミングに対応した位置にインク吐出口を配置する。これにより、図4(C)に示されるように記録媒体上においてインク液滴の着弾位置を揃えることができる。また、図4(B)の下部には駆動タイミング毎の同時吐出数が示されており、16の駆動タイミングそれぞれの同時吐出数は“1”で均等分布となっている。
<記録ヘッド傾き補正のための時分割駆動タイミングの変更>
図5は傾いた記録ヘッドにより記録媒体に記録されるドットの位置を示す図である。
図5(A)〜図5(C)において、縦軸は副走査方向を示し、横軸は主走査方向を示している。また、説明を簡単にするために、主走査方向の記録解像度(1カラム)を8つに時分割したタイミングで記録を行う例を示している。
図5(A)は特許文献1に従う補正方法に従って時分割駆動を実行して記録されたドットの配置を示している。図5(A)おいて、実線の格子は傾いて取り付けられた記録ヘッドを時分割駆動して記録されたドットの記録媒体上の位置を示している。また、縦の実線は記録解像度(1カラム)の幅の目標印刷エリアを示している。
特許文献1に従う補正方法に従えば、図5(A)に示されるようにインク吐出口ごとに対応する記録データを主走査方向に記録解像度単位でずらすことにより記録位置の補正を行う。図5(A)において、白丸は補正前のドット記録位置、黒丸は補正後のドット記録位置を示す。
図5(B)は図4に示したように時分割駆動のタイミングが異なっても記録媒体上のドット記録位置が揃うようにインク吐出口を配置した記録ヘッドを用い、特許文献1に従う補正方法に適用してヘッド傾きを補正して記録した場合のドット配置を示している。図5(B)において、白丸は補正前のドット記録位置を、黒丸は補正後のドット記録位置を示している。この場合、記録ヘッドのインク吐出口が駆動タイミングに対応した配置になっているため、補正前のドット記録位置が一列に揃うため、ヘッド傾きの補正により図5(B)に示すように記録されるドット配置にずれが発生する。このため、記録ヘッドの時分割駆動によるインク液滴の着弾位置をインク吐出口の配置で補正しても、真直ぐな線の記録はできない。またさらに、記録ヘッド傾きが異なる色のインクを吐出する記録ヘッドにより記録されたドット群と記録媒体上で重なった時、上記のようにドット配置に局所的なずれが発生すると、互いのドット被覆にずれが発生しバンドムラが発生する場合がある。
図5(C)は本発明の実施例に従って時分割駆動を行い、記録ヘッド傾きを補正した場合の記録ドットの配置を示している。この例では、記録ヘッドの傾きに対して、複数の吐出口を複数のノズルグループに分割し、1カラム分のドットを記録するのに要するより短い時間間隔でインク吐出タイミングを変更している。これにより、1カラムに相当する長さより細かい長さで記録媒体上のドット配置の補正を行う。
ここで、図5(C)の例に適用される吐出タイミングの変更について、図6〜図7を参照して説明する。なお、図6〜図7を図4と比較すると分かるように、記録ヘッドのインク吐出口の配置や時分割駆動の分割数やタイミングも同じであるので、図4で既に説明した構成についての説明は省略し、ここでは図6〜図7に特徴的な構成についてのみ説明する。
図6は図4で説明した条件から、記録ヘッドが傾いているが記録ヘッド傾きの補正を行わずに記録を行った状況を示している。従って、図6(A)に示すノズル吐出口の位置も図4(A)に示されるものと比べて傾き、その結果、図6(C)に示される記録媒体上におけるインク液滴の着弾位置も異なり、記録されるドットの配置も傾く。
これに対して、図7は図4で説明した条件から、記録ヘッドが傾いているので記録ヘッド傾きの補正を行って記録を行った状況を示している。
図7(B)と図4(B)とを比較すると分かるように、ノズルグループ1の駆動タイミングを時分割駆動の駆動タイミング単位でずらすことによりインク液滴の記録媒体上の着弾位置を補正する。これにより、図7(C)で示されるように記録されるドット位置が変化し、先に図5(C)を参照して概説した記録ヘッド傾きの補正を行うことができる。
なお、以下の説明では時分割駆動1周期で用いるノズルグループをセットと呼ぶ。図3に示した構成の記録ヘッド11の場合、インク吐出口(ノズル)0〜15がセット0、インク吐出口(ノズル)16〜31がセット1、インク吐出口(ノズル)112〜127がセット7となる。
<記録装置の制御回路(図8〜図10)>
図8は図1に示した記録装置100における制御回路の構成を示すブロック図である。
記録装置100において、201はCPU、202はCPU201が実行する制御プログラムを格納するROMである。ホスト200などの外部装置から受信したラスタ単位の画像データは、まず受信バッファ203に格納される。受信バッファ203に格納された画像データはホスト200からの送信データ量を削減するために圧縮されている。このため、CPU201或いは圧縮データ展開用回路(不図示)により画像データの展開が行われ記録バッファ204に格納される。記録バッファ204は、例えば、DRAMで構成される。記録バッファ204に格納されるデータの形式は、ラスタ形式のデータである。記録バッファ204の容量は、1回の走査記録の幅に対応したラスタ数のデータを格納できる容量を備えている。
記録バッファ204に格納された画像データは、HV変換回路205によってHV変換処理が行われ、ASIC206に備えられたノズルバッファ211に格納される。なお、ASIC206の詳細な構成については後述する。即ち、ノズルバッファ(カラムバッファ)211にはカラム形式のデータが格納される。このデータの形式は、ノズルの配置に対応している。なお、このノズルバッファ(カラムバッファ)211は、例えばSRAMである。
図9は記録バッファ204における画像データの配置を模式的に示す図である。
記録バッファ204における格納位置は、縦方向は128個の記録素子に対応したアドレス000〜0fe、横方向は解像度と記録媒体のサイズとの積に対応した数のアドレスのメモリ領域となる。なお、このアドレスは、図中のh(ヘキサデシマル)が示すとおり16進法表示である。ここでは、記録解像度を1200dpi、記録媒体のサイズを8inch(インチ)とした場合9600dot分のデータを格納することが可能なメモリ領域となる。
図9において、アドレス000のb0には、インク吐出口(ノズル)番号0の記録素子に対応する記録データが保持されている。アドレス000におけるb0の横のb1にはノズル番号0の次のカラムに記録する記録データが保持されており、同様に横方向に移動するに従い、次のカラムに記録する記録データが保持されている構成となっている。同様に、アドレス0feには、インク吐出口(ノズル)番号127の記録素子の記録データが保持されている。
この様に、記録バッファ204の各アドレスには同一のノズル番号の記録素子に対応する記録データが保持されている。しかし、実際にはアドレス000から0feまでのb0の記録データに基づいて第1カラムが記録され、次にアドレス000から0feまでのb1の記録データに基づいて第2カラムが記録される。
そこで、HV変換回路205は、記録バッファ204にラスタ方向に格納されていた記録データをHV変換し、ノズルバッファ211にカラム方向に格納する。
図10はHV変換の動作を示す図である。
HV変換は16ビット×16ビットのデータ単位で行われる。記録バッファ204からアドレスN+0からN+1Eの各b0のデータを読み出し、ノズルバッファ211のアドレスM+0に書き込む。次に、記録バッファ204からアドレスN+0からN+1Eの各b1のデータを読み出し、ノズルバッファ211のアドレスM+2に書き込む。以下同様の読み出し動作と書き込み動作の処理を16回繰り返し行う。これにより、1回のHV変換(16ビット×16ビットのHV変換)が完成する。なお、HV変換は時分割駆動のノズルグループ単位で行われ、グループ0からグループ7まで順に行われる。
図11はノズルバッファ211の内部構成を示す図である。
HV変換は記録動作中に行われる為、ノズルバッファ211への書き込み動作とノズルバッファ211からの読み出し動作が排他動作となる様に、図11に示すように2つのバンクを備えている。1つのバンクには16カラム分の記録データを格納できる領域を備えている。この書き込みがバンク0に行われる時、読み出しみはバンク1から行われ、書き込みがバンク1に行われる時、読み込みはバンク0から行われる。
また、図12はノズルバッファ211に保持されている記録データを示す図である。図12に示されるように、ノズルバッファ211に保持される記録データは、128個の記録素子(即ち、インク吐出口(ノズル)0〜127)に対応付けられるように保持されている。
次に、図13に示すASIC206の内部ブロック図を参照して、時分割された記録素子を順次駆動するための構成について説明する。
データ並び替え回路212は記録データを並び替えるための回路である。この回路は、128個の記録素子に対応付けられてノズルバッファ211に保持されている記録データを、同時に記録されるブロック(駆動タイミング)毎の8ビットの記録データにまとめて転送バッファ213に書き込みを行う。転送バッファ213に格納されるデータは同じブロック番号のノズルに対応するデータが同じアドレスに格納されている。なお、転送バッファ213は、例えば、SRAMである。
図14は転送バッファ213の構成を示す図である。
図14を参照し、例えば、バンク0について説明すると、アドレスAd0hからAdfhまでにはブロック0から15までの記録データが順番に保持されている。ブロック0にはセット0からセット7までのb0の記録データが保持されており、同様にブロック1には、セット0からセット7までのb1の記録データが保持されている。同様に、バンク1を構成するアドレスAd10hからアドレスAd1fh、バンク2を構成するアドレスAd20hからアドレスAd2fhにも、それぞれ記録データが保持されている。図14に示すように、転送バッファ213はブロックに対応して複数の領域が割当られ、記録データがブロックに対応して保持されている。
転送バッファ213は書き込み動作と読み出し動作とが排他動作となるように、図14に示すように16ブロック分の記録データを1個のバンクとした3個のバンクからなる構成となっている。
書き込みがバンク0に行われる時、読み出しはバンク1とバンク2から行われる。書き込みがバンク1に行われる時、読み出しはバンク2とバンク0から行われる。書き込みがバンク2に行われる時、読み出しはバンク0とバンク1から行われる。
なお、各バンクは、記録素子列の1列分に相当する記録データを保持し、転送バッファ213は、記録素子列の3列分の記録データが保持していることになる。このように、転送バッファは複数列分(複数カラム分)の記録データを格納する構成となっている。そして、読み出し時に2個のバンクを使用し、記録素子列の2列分の記録データを読み出す。つまり、記録素子列の1列分に相当する記録データを保持する列データ領域(バンク)を複数有する転送バッファからこの列データ領域の数より小さい複数の領域(バンク)を選択し、選択したバンクから各列データの読出しを行う。
図13の説明に戻ると、転送回数カウンタ216は記録タイミング信号の回数を計数するカウンタ回路であり、記録タイミング信号毎にインクリメントされる。転送回数カウンタ216は0から15までカウントして0に戻る。また、転送回数カウンタ216は転送バッファ213のバンク値をカウントしており、転送回数カウンタ216が16回カウントされるとバンク値を+1インクリメントする。
ブロック駆動順データメモリ214は、16分割されたブロック番号0から15の記録素子を順次駆動する場合の順番がアドレス0から15に記録されている。また、タイミングシフトデータメモリ220はノズルグループ0から15の記録タイミングをシフトする量が格納されている。
ブロック駆動順変更回路221はブロック駆動順データメモリ214とタイミングシフトデータメモリ220に格納されたデータから所定ノズル領域毎(16インク吐出口毎)の同時吐出数をカウントし、同時吐出数が均等でないとブロック駆動順を変更する。変更されたブロック駆動順は、ブロック駆動順データメモリ214に格納される。なお、ブロック駆動順の変更については、図27、図28、図32を参照して後で詳細に説明する。
記録データ転送回路219は、例えば、光学式リニアエンコーダに基づいて生成される記録タイミング信号をトリガに、転送回数カウンタ216のインクリメントを行う。データ選択回路215は、記録タイミング信号を起点にブロック駆動順データメモリ214の値と転送回数カウンタ216のカウントしたバンク値に応じた記録データとを転送バッファ213より読み出す。そして、補正値メモリ217に保持されている補正量に応じて補正された記録データを、データ転送CLK生成器218によって生成されたデータ転送CLK信号(HD_CLK)に同期して、記録ヘッド11に転送する。
図15はブロック駆動順データメモリ214のアドレス0〜アドレス15に書き込まれたブロック駆動順データの一例を示す図である。
図15において、ブロック駆動順データメモリ214のアドレス0とアドレス1にはそれぞれ、ブロック0とブロック5を示すブロックデータが記憶されている。同様にして、アドレス2〜アドレス15には、それぞれ対応するブロックを示すブロックデータが順次記憶されている。
図16はタイミングシフトデータメモリ220に格納されたノズルグループ0から15の記録タイミングをシフトするデータが格納されている例を示す図である。なお、図16ではメモリ内のデータを示すので2進数表記されている。このデータは記録ヘッドの傾きにより異なる数値が設定される。図16はノズルグループ0は0、ノズルグループ1は−1、ノズルグループ15は−15の数値が設定された例を2進数表示している。
図17はノズルグループとノズル番号と記録ヘッド傾き量測定後の補正値との関係を示す図である。なお、図17では記録ヘッド傾き量測定後の補正値を表すために−符号を付けた10進数で補正値を表示している。
データ選択回路215は、記録タイミング信号をトリガに、ブロック駆動順データメモリ214のアドレス0からブロックイネーブル信号としてブロックデータ0000(ここでは、ブロック0を示す数値)を読み出す。ただし、タイミングシフトデータメモリ220に格納されたノズルグループ毎のタイミングシフト値が0でない場合にはその分ブロック駆動順データメモリ214の読み出しアドレスをシフトする。例えば、ノズルグループ1の場合にはタイミングシフト値(補正値)は−1であり、ブロック駆動順データメモリ214の読み出しアドレスをシフトしてアドレス15のブロックデータ0111を読み出す。続いてこれに対応した記録データを転送バッファ213から読み出し記録ヘッド11に転送する。
同様にして、次の記録タイミング信号で、ブロック駆動順データメモリ214のアドレス1からブロックイネーブル信号としてブロックデータ0101(ここでは、ブロック5を示す数値)を読み出す。そして、ブロックデータ0011に対応した記録データを転送バッファ213から読み出し記録ヘッド11に転送する。
同様にして、次の記録タイミング信号をトリガに、ブロック駆動順データメモリ214のアドレス2からアドレス15まで順にブロックデータを読み出す。そして、各ブロックデータに対応した記録データを転送バッファ213から読み出し、記録ヘッド11に転送する。
このようにして、記録データ転送回路219は、ブロック駆動順データメモリ214のアドレス0から15までに設定されたブロックデータを読み出す。そして、それぞれのブロックデータに対応した記録データを転送バッファ213から読み出して記録ヘッド11に転送することで1カラム分の記録を行う。つまり、16回の記録タイミング信号が出力されると、1カラム分のブロックデータが転送バッファ213から読み出される。
図18は、記録ヘッド11に設けられた駆動回路の構成を示す回路図である。
この駆動回路により128個の記録素子15を近傍に存在する16個のノズルグループに分割し、各ノズルグループに割り当てられた8個の記録素子を時分割駆動する。従って、時分割駆動の同じブロックに割当てられた16個の記録素子が同じタイミングで駆動される。この駆動回路へのデータ信号や駆動信号などは、図13に示した記録データ転送回路219から送られる。
記録データ信号(DATA)はクロック信号(HD_CLK)に従って記録ヘッド11へシリアル転送される。記録データ信号(DATA)は16ビットシフトレジスタ301で受信後、16ビットラッチ302にてラッチ信号(LATCH)の立ち上がりでラッチされる。
ノズルグループごとに記録タイミングを分割ヒートタイミング単位で変更する量は記録データ信号(DATA)に含まれTSデコーダ330でデコードされ、TSラッチ331で保持される。なお、TSラッチ331によるラッチタイミングはTSリセット信号(RESET)の入力に従う。
時分割駆動の基本となるブロック信号は記録データ信号(DATA)に含まれデコーダ303でデコードされる。さらに、TSラッチ331に保持されている数値に応じて駆動タイミングをずらしてブロックイネーブル信号(BLK_ENB)を生成し、駆動すべき記録素子15を選択する。
ブロックイネーブル信号(BLK_ENB)と記録データ信号(DATA)の両方で指定された記録素子15のみが、ヒータ駆動パルス信号(HENB)によって駆動され、インク滴を吐出して記録が行われる。
図19は記録ヘッド傾きの補正を行っていない場合のブロックイネーブル信号(BLK_ENB)の駆動タイミングの例と、記録ヘッド傾きの補正を行った場合のブロックイネーブル信号(BLK_ENB)の駆動タイミングの例を示す図である。
図19において、(A)は記録ヘッド傾きの補正を行っていない場合、(B)は記録ヘッド傾きの補正を行った場合のブロックイネーブル信号(BLK_ENB)の駆動タイミングの例を示す。
図19(A)ではノズルグループごとにデコーダ303で展開されるブロックイネーブル信号(BLK_ENB)で選択される数値の例を示している。ノズルグループ0ではブロックイネーブル信号(BLK_ENB)が“0”の場合、記録素子15のSEG0が、ブロックイネーブル信号が“1”場合、記録素子15のSEG1が選択される。また、ノズルグループ1ではブロックイネーブル信号が“0”の場合、記録素子15のSEG8が、ブロックイネーブル信号が“1”の場合、記録素子15のSEG9が選択される。なお、図19(A)において、黒く塗りつぶしている枠は画像の記録に使用しないタイミングである。
図19(A)に示した記録ヘッド傾きの補正を行っていない記録素子の駆動タイミングは、図6に示された状態に対応している。この状態では図6に示されるようにノズルグループ0とノズルグループ1のブロック選択は補間的であるため、図19(A)に示したブロックイネーブル信号(BLK_ENB)も補間的となっている。
図19(B)は、図7に示した駆動タイミングに対応する記録ヘッド傾きの補正を行った場合のブロックイネーブル信号(BLK_ENB)の駆動タイミングの例を示す図である。
図19(B)に示した例では、ノズルグループ1の記録素子に対する駆動タイミングは分割タイミング1つ分だけ図19(A)に示した駆動タイミングの状態から前に進める。この設定はノズルグループ1のTSラッチ331の設定値である。これにより、デコーダ303はブロック駆動順データメモリ214に格納されているブロック駆動順データから前記設定値分だけ分割タイミングがずれるよう動作する。このようにして記録素子の駆動タイミングを分割タイミング単位でノズルグループ毎に設定することができる。
また、片方向記録及び双方向記録の際の往走査記録では、駆動タイミングを示すブロックイネーブル信号(BLK_ENB)は記録ヘッド11に対して、次の駆動順序となる。即ち、ブロック0→5→10→15→4→9→14→3→8→13→2→7→12→1→6→11となる。
<傾きずれ補正の概要>
次に、上述した構成のインクジェット記録装置において実行する傾きずれ補正の概略について説明する。このインクジェット記録装置は、ドットの傾きずれを補正する点に特徴を有する。従って、傾きずれに関する情報(傾き情報)の検出についてはどのような方法によって行っても構わないが、ここでは光学式センサを用いて傾きずれに関する情報を取得する例について説明する。
図20は、ドットの傾きずれ値検出の概略を示すフローチャートである。
まず、ステップS11では、テストパターン記録を行う。テストパターンは吐出タイミングを異ならせて複数のテストパッチを記録媒体上に記録することにより作成される。ここでは、光学式センサを用いてテストパターンを読取るので、各テストパッチの光学特性の差を利用することで、傾きずれに関する情報を取得することができる。
次に、ステップS120では、光学式センサを用いてそれぞれのテストパッチの光学特性を測定し、傾きずれに関する情報を検出する。ここでは、光学特性の測定としてテストパッチの反射光学濃度を測定し、傾きずれに関する情報を検出する。そして、ステップS13では、検出した傾きずれに関する情報から補正情報を決定し、補正値メモリ217にその情報を設定する。
さらに、ステップS14では、補正値メモリ217に設定された補正情報に基づいて記録データの読み出し位置を変更し、ステップS15により記録媒体に画像を記録する。
次に、ステップS11におけるテストパターンの作成と、ステップS120における光学特性測定による傾きずれに関する情報の検出について説明する。ここでは、傾きずれに関する情報としてインク吐出口列141の両端部である副走査方向に関して上流側と下流側のそれぞれ3個のインク吐出口13により形成されるドットの主走査方向に対するずれ量を検出する。
図21はステップS11で記録媒体12に形成されたテストパターンの一例と記録されたテストパッチに含まれるドット配列とを示す図である。図21において、(a)はステップS11で記録媒体12に形成されたテストパターンの一例を示した図である。(b)は記録されたテストパッチに含まれるドット配列を示す図である。
図21(a)に示されるように、テストパターンは7つのテストパッチ401〜407から成る。各テストパッチは、以下のように形成される。
まず、記録ヘッド11による1回目の記録走査で副走査方向に関し、上流側3個のインク吐出口13を用いて、副走査方向3ドット×主走査方向4ドットからなる画像411を主走査方向に4ドット分の間隔を空けて2個記録する(図21(b)の(A))。
次に、記録媒体12を搬送して、2回目の記録走査で、1回目の記録走査で間隔を空けた副走査方向3ドット×主走査方向4ドット分の領域に下流側3個のインク吐出口を用いて画像412を記録する。なお、テストパッチの作成の際、1回目と2回目の走査を異なる走査方向で記録すると、この走査方向の違いによってドットの形成位置にずれが生じることがあるため、1回目と2回目を同一方向の走査で記録することが望ましい。ここでは、1回目と2回目の走査をともに図面の左から右へと記録ヘッドを走査させて記録している(片方向記録)。
図21(a)に示した7つのテストパッチのうち基準のテストパッチ404は、1回目の記録走査で間隔を空けた領域をちょうど埋めるように2回目の記録走査で記録する。一方、テストパッチ405、406、407については、2回目の記録走査で下流側のインク吐出口13の駆動タイミングを遅らせて画像を記録する。下流側のインク吐出口13の記録素子の駆動タイミングを早めて記録する。つまり、下流側のインク吐出口により記録される画像が1回目の記録走査で間隔を空けた領域から図中の主走査方向の右側方向に、夫々1/2画素、1画素、3/2画素ずれるように作成する。また、テストパッチ403、402、401については、2回目の記録走査で下流側インク吐出口13の駆動タイミングを早めて画像を記録する。つまり、下流側のインク吐出口13により記録される画像が1回目の記録走査で間隔を空けた領域から図中で主走査方向の左方向に、夫々1/2画素、1画素、3/2画素ずれるように作成する。
図22は傾きずれがある場合のテストパッチの画像とそのときのドット配列、主走査方向のずれ、黒スジと白スジが発生しない一様な記録濃度の画像を示す図である。
図22において、(a)は傾きずれがある場合のテストパッチの画像と、そのときのドット配列を示しており、図22(a)の(A)が記録されたテストパッチの画像を示し、(B)はそのドット配列を示している。
図22(a)の(A)から分かるように、傾きずれがあるとテストパッチ404には黒スジ409と白スジ410が発生する。そして、図22(a)の(B)に示すように、黒スジ409と白スジ410に対応して、ドットの重なった部分413とドットのない部分414が生じる。傾きずれがある場合、図22(b)で示すように、副走査方向の上流側のドット415と副走査方向の下流側のドット408で主走査方向に関しずれLが生じる。
テストパッチ404では、1回目の記録走査で間隔を空けた領域隔をちょうど埋めるように、2回目の記録走査で下流側インク吐出口13を用いて画像を記録している。そのため、図22(a)の(B)に示すように、1回目の記録走査による画像411と2回目の記録走査による画像412との間に重複部413や空白部414が発生する。その結果、そのテストパッチは、図22(a)の(A)に示すような黒スジ409と白スジ410のあるテストパッチとなってしまう。このように、傾きずれが発生すると基準のテストパッチ404には黒スジ及び白スジが発生してしまう。
次に、傾き量(上流側ドットと下流側ドットに関する主走査方向のずれ量)の検出について説明する。この説明では、図22(c)に示すように、7つのテストパッチのうちテストパッチ402が、黒スジと白スジが発生しない一様な記録濃度の画像であるとする。なお、図22(c)の(A)が一様な記録濃度の画像を示すテストパッチ402を示し、図22(c)の(B)がそのテストパッチのドット配置の詳細を示している。
テストパッチ402の記録では、下流側のインク吐出口13の記録素子の駆動タイミングを早めて、1回目の記録走査で間隔を空けた領域から図中の主走査方向の左側に1画素ずれるように2回目の記録走査により画像412を記録する。
そのため、傾きずれがなければ、間隔を空けた領域の左側では上流側ドット415と下流側ドット408が重なって黒スジが表れ、また右側では上流側ドット415と下流側ドット408が存在しない白スジが表れるはずである。しかし、傾きずれが発生しているために、図22(b)で示したように、上流側ドット415と下流側ドット408との間に主走査方向のずれLが発生している。そして、このずれLが下流側のインク吐出口13の駆動タイミングを早めた際にできるはずのドットの位置ずれを相殺して、一様な記録濃度のテストパッチとなる。このようにして、上流側ドット415と下流側ドット408の主走査方向のずれLがL=1画素であり、このような主走査方向のずれを有する反時計回り方向の傾きずれが発生していることが検出できる。
以上のようにして、下流側のインク吐出口の駆動タイミングを遅らせて、または早めて形成したテストパッチの中から、一様な記録濃度の画像を選択することにより、傾きずれに関する情報としての主走査方向のドットずれ量を検出することができる。
なお、ステップS12では、これら7つのテストパッチについて、光学式センサを用いて反射光学濃度を測定している。そして、光学式センサを用いた光学測定で、反射光学濃度の高い出力値を得ることのできたテストパッチを選択することにより、黒スジ、白スジがなく、ドット配置が一様なテストパッチを検出することができる。
また、ここでは、説明の簡略化のために、上述したようなテストパターンの作成と傾きずれに関する情報の検出の構成を示した。つまり、上述の説明では、単純にドット配置が最も一様なテストパッチを光学センサにより選択し、そのテストパッチを形成した際の上流側のドットと下流側のドットの主走査方向のずれ量に基づいて傾きずれに関する情報を検出している。
しかしながら、この構成に限らず、例えば、次のようにしても良い。即ち、各パッチの光学特性を測定し、反射光学濃度の最も高いテストパッチと2番目に高いテストパッチを選択し、この2つのテストパッチの反射光学濃度差を算出する。そして、この反射光学濃度差が所定値以上であれば反射光学濃度の最も高いテストパッチのずれ量をそのまま傾きずれに関する情報として採用し、所定値以下であれば最も高いテストパッチと2番目のテストパッチのずれ量の平均を採用するのである。またさらには、反射光学濃度の最も高いテストパッチの左右それぞれで、各テストパッチの光学特性のデータから直線近似や多項式近似によって近似直線または近似曲線を求め、これら左右2つの直線または曲線の交点から傾きずれに関する情報を検出しても良い。
なお、以降の説明では、吐出タイミングを基準テストパッチから“−2”としたテストパッチ402が最も一様な画像として検出されたものとして、そのときの補正方法を説明する。
ステップS13では、ステップS12の光学特性の測定によって検出した主走査方向に対するドット配置のずれ量に応じて、傾きずれを補正するための補正情報を補正値メモリ217に設定する。ここでは、セット0からセット7の各セットに対して、記録データの読み出し位置を変更する記録素子数(補正値)を対応づけた情報を補正情報としている。
この補正情報は、図17に示すように補正値メモリ217にテーブル形式で設定される。上述の構成で“−2”、即ち、L=1の傾きずれが生じた場合の補正情報によれば、基準となるノズルグループ0に対して0、ノズルグループ1に対して−1というような補正値が設定される。同様にして、ノズルグループ2に―2、ノズルグループ3に−3、同様にノズルグループ15に−15が補正値として設定される。
なお、補正情報の決定方法、つまり各ノズルグループに対する補正値の決定方法としては、傾きずれに関する情報に応じた複数のテーブル情報を予め保持しておく方法がある。また、基準のノズルグループ0の補正値を0とし、傾きずれに関する情報からノズルグループ15における補正値を決定し、簡易計算によって中間に位置するセットの補正値を決定するようにしてもよい。
図15に示す例は、ノズル番号が0から127まである、即ち、128個のノズル(インク吐出口)を備えた記録ヘッドの例であり、この例はノズル(インク吐出口)数が128個の記録ヘッドにおいてL=1画素の傾きが生じた場合の補正例となっている。
ステップS14では、以上のようにして補正値メモリ217に設定された補正情報に基づいて記録データの読み出し位置が変更される。そして、ステップS15では、読出し位置の変更された記録データに基づいて記録媒体に画像が記録される。
図23は記録ヘッドの傾きが−1の場合のノズルグループ0〜15の記録素子に割り当てられるノズル番号、ブロック、ノズルグループ毎のタイミングシフト量、記録データ、ドット配置を示す図である。
図23において、記録データは各記録素子に割り当てられた1〜3カラム目の記録データを読み出すタイミングを示すものであり、ドット配置は傾きずれがない場合にこのタイミングで記録を行った場合に記録媒体に形成されるドット配置を模式的に示している。記録データの読み出し位置を変更した場合、傾きずれがなければ図23に示すようなドット配置となるが、後述するように、傾きずれによってそれぞれのドットが本来配置されるべきカラムに収まるようになる。
図24はノズルグループ0〜15の記録素子を備える記録ヘッドにおいてヘッド傾き+3から−3に対しノズルグループ毎の駆動タイミングのシフト量(タイミングシフト)とデータの読み出し位置変更(データシフト)を示す図である。
ノズルグループ毎のタイミングシフト値は図13に示したタイミングシフトデータメモリ220に格納される。また、そのタイミングシフト値は図18〜図19で示した記録データ信号(DATA)で記録ヘッド11に転送され、TSデコーダ330でデコードされ、TSラッチ331で保持される。
次に以上の説明した構成を共通実施例とし、記録ヘッドの時分割駆動におけるインク液滴の記録媒体上での着弾位置の補正と記録ヘッド傾きによるインク液滴の着弾位置の補正についての実施例について説明する。
以上説明した構成では、記録ヘッドの時分散駆動による着弾位置ずれをインク吐出口の位置で補正し、記録ヘッドの傾きによる着弾位置ずれをノズルグループ単位の駆動タイミングのシフトで補正すると次のような問題が生じることがある。即ち、駆動ブロック順やノズルグループを構成するインク吐出口の数によっては同時吐出数が均等にならない場合がある。この実施例では、そのような場合でも、同時吐出数が均等になるような補正を行う例について説明する。なお、この実施例では、記録ヘッド傾きが“−1”として説明する。
図7(B)に示すように、ノズルグループ1の駆動タイミングを時分割駆動の駆動タイミング単位でずらすことによりインク液滴の記録媒体上の着弾位置を補正すると、駆動タイミング0〜15までの各時間領域で同時吐出数は均等ではない。例えば、駆動タイミング0での同時吐出数は2であるのに対し、駆動タイミング2での同時吐出数は0である。同時吐出数を均等にするためには、同時吐出数が多いノズルに対応する駆動タイミングを同時吐出数が少ない駆動タイミングに変更する必要がある。
図25は実施例1に従ってインク吐出口毎の記録素子の駆動タイミングを変更する様子を示す模式図である。なお、図25において、既に図4などを参照して説明したのと同様の構成要素や制御についての説明は省略し、ここではこの実施例に特有の特徴についてのみ説明する。図25(B)は図7(B)に示した状態から各駆動タイミングにおける同時吐出数を均等にするために、インク吐出口毎の記録素子の駆動タイミングを変更した例である。
図25(B)において、点線の波形は変更前の状態、実線の波形は変更後の状態を示している。具体的には、インク吐出口番号0の駆動タイミングを0から2へ、インク吐出口番号1の駆動タイミングを5から8へ、インク吐出口番号2の駆動タイミングを10から13へ変更することによって、同時吐出数を均等にしている。
この制御の詳細な説明は図26〜図28を参照して説明する。
図26はヘッド傾き量の検知から駆動タイミングのシフト量の決定までの処理を示すフローチャートである。
まず、ステップS101では図20を用いて説明した方法で、記録ヘッドの傾き量を検知する。次に、ステップS102では図17を用いて説明した方法で、ノズルグループ毎のタイミングシフト量とデータシフト量を設定する。ステップS103では、16個のインク吐出口毎(2つのノズルグループ毎)に同時吐出数をカウントする。その同時吐出数のカウント値の例は図25(B)に図示されたとおりである。
なお、同時吐出数をカウントするインク吐出口の数は16個に限らない。この実施例では、図25(A)が示すように1つのノズルグループを構成するインク吐出口の数が8であり、少なくとも2つのノズルグループ毎に同時吐出数をカウントする。その理由は、駆動タイミングのシフトはノズルグループ単位で行うので、ノズルグループ間でしか同時吐出が発生しないからである。
ステップS104では、ステップS103でカウントされた同時吐出数が16個の駆動タイミングにわたって均等に分布しているかどうかを調べる。ここで、同時吐出数の分布が均等であると判定された場合、処理はステップS106に進む。これに対して、同時吐出数の分布が均等でないと判定された場合、処理はステップS105に進み、図25を参照して説明した方法でノズルグループ内の記録素子の駆動順序を変更する。その後、処理はステップS103に戻り、同時吐出数をカウントし、さらにステップS104では、再び、同時吐出数が均等に分布しているかどうかを調べる。ここで、同時吐出数の分布が均等であると判断されれば、処理はステップS106に進む。
そして、ステップS106では最終的に、時分割駆動におけるブロック駆動順序を決定する。
図27はステップS105における時分割駆動でのブロック駆動順序の変更の詳細を説明したフローチャートである。
まず、ステップS201では、
・同時吐出数が均等割付よりも多い(N=N1)駆動タイミング、インク吐出口番号
・同時吐出数が均等割付よりも少ない(N=N2)駆動タイミング、インク吐出口番号
を取得する。図7(B)に示す例の場合、同時吐出数がN=1であれば均等割付であり、多いならN1=2、少ないならN2=0となる。この例の取得結果を表1、表2に示す。
[表1] N1=2の取得結果
┌−−−−−−−−−┬−−−−−−−−−−−−−−−−−┐
| 駆動タイミング | インク吐出口番号 |
├−−−−−−−−−┼−−−−−−−−−−−−−−−−−┤
| 0 | 0,13 |
├−−−−−−−−−┼−−−−−−−−−−−−−−−−−┤
| 5 | 1,14 |
├−−−−−−−−−┼−−−−−−−−−−−−−−−−−┤
| 10 | 2,15 |
└−−−−−−−−−┴−−−−−−−−−−−−−−−−−┘
(注)N1=2の場合、駆動タイミングに対応するインク吐出口番号は2つ存在する。
[表2] N2=0の取得結果
┌−−−−−−−−−┬−−−−−−−−−−−−−−−−−┐
| 駆動タイミング | インク吐出口番号 |
├−−−−−−−−−┼−−−−−−−−−−−−−−−−−┤
| 2 | − |
├−−−−−−−−−┼−−−−−−−−−−−−−−−−−┤
| 8 | − |
├−−−−−−−−−┼−−−−−−−−−−−−−−−−−┤
| 13 | − |
└−−−−−−−−−┴−−−−−−−−−−−−−−−−−┘
(注)N2=0の場合、駆動タイミングに対応するインク吐出口番号は存在しない。
次に、ステップS202では同時吐出数がN=N1の駆動タイミングと、同時吐出数がN=N2の駆動タイミングの差分が最小になる組み合わせを探索する。図7(B)に示す例の場合、N1=2、N2=0なので、同時吐出数が2の駆動タイミングと同時吐出数が0の駆動タイミングの差分を探索すればよい。探索結果を表3に示す。
[表3] N1=2、N2=0の探索結果
┌−−−−−−−−−┬−−−−−−−−−┬−−−−−−−−−┐
| 同時吐出数が2の| 同時吐出数が0の| 駆動タイミングの|
| 駆動タイミング | 駆動タイミング | 差分 |
├−−−−−−−−−┼−−−−−−−−−┼−−−−−−−−−┤
| 0 | 2 | 2 |
├−−−−−−−−−┼−−−−−−−−−┼−−−−−−−−−┤
| 5 | 8 | 3 |
├−−−−−−−−−┼−−−−−−−−−┼−−−−−−−−−┤
| 10 | 13 | 3 |
└−−−−−−−−−┴−−−−−−−−−┴−−−−−−−−−┘
駆動タイミングの差分が最小になる組み合わせを探索するアルゴリズムに関しては、同時吐出数が2の駆動タイミングと同時吐出数が0の駆動タイミングの差分を全ての組み合わせで計算し、駆動タイミングの差分の合計が最小となる組み合わせを選択する。この実施例では駆動タイミングの差分の合計が8(=2+3+3)の場合に最小になる。
最後に、ステップS203では同時吐出数がN=N1のインク吐出口を選択し、そのインク吐出口の記録素子の駆動タイミングをステップS202で探索された組み合わせに対応した同時吐出数がN=N2の駆動タイミングに変更する。変更結果を表4に示す。
[表4] N1=2、N2=0の変更結果
┌−−−−−┬−−−−−−−┬−−−−−−−┬−−−−−−−−−┐
|ノズル番号| 変更前の | 変更後の | 駆動タイミング |
| |駆動タイミング|駆動タイミング| の差分 |
├−−−−−┼−−−−−−−┼−−−−−−−┼−−−−−−−−−┤
| 0 | 0 | 2 | 2 |
├−−−−−┼−−−−−−−┼−−−−−−−┼−−−−−−−−−┤
| 1 | 5 | 8 | 3 |
├−−−−−┼−−−−−−−┼−−−−−−−┼−−−−−−−−−┤
| 2 | 10 | 13 | 3 |
└−−−−−┴−−−−−−−┴−−−−−−−┴−−−−−−−−−┘
インク吐出口番号を選択するアルゴリズムに関して、この実施例では同時吐出数が2の駆動タイミングに対応するインク吐出口番号の中で、その番号が小さい方のインク吐出口を選択する。ただし、その選択はこの方法に限定されるものではない。例えば、インク吐出口番号が大きい方のノズルを選択してもよいし、その番号に関係なくランダムでインク吐出口を選択してもよい。この実施例では、駆動タイミング0、5、10にそれぞれ対応するインク吐出口番号は0と13、1と14、2と15なので、それら番号が小さい方の0、1、2を選択している。
以上のような処理により、図25(A)に示す記録ヘッド11のインク吐出口の配置において、図25(B)に示す駆動タイミングに従って記録素子を駆動し記録を行うと、図25(C)に示した記録媒体上のドット配置になる。
なお、図25はノズルグループ0とノズルグループ1(16個のインク吐出口)の構成に限定して説明しているので、ノズルグループ0からノズルグループ15(128個のインク吐出口)の全体構成に関しては、別の図を参照して説明する。
図28は図23に示した状態からブロック駆動順序を変更して時分割駆動における1カラムの記録において各駆動タイミングの同時吐出数を均等割付にした場合のドット配置を示す図である。
図28では、図23と同様に、記録ヘッドの傾きが−1の場合のノズルグループ0からノズルグループ15の記録素子に割り当てられるインク吐出口番号、ブロック、ノズルグループ毎のタイミングシフト量、記録データ、ドット配置を示している。図28における図23との相違点は同時吐出数が均等割付になるように、タイミングシフト量、データシフト量を変更した点である。
従って以上説明した実施例に従えば、ブロック駆動順序を変更することにより時分割駆動における1カラムの記録において各駆動タイミングの同時吐出数を均等にすることができる。これにより、時分割駆動における消費電力の変動を抑え、電源電圧の降下が抑制され、その結果、全ての記録素子に対して安定的な電源電圧の印加を行うことができ、これにより高品位な記録を達成することができる。
実施例1では記録ヘッドの時分割駆動において同時吐出数が多い駆動タイミングに対応するインク吐出口の記録素子の駆動タイミングを、同時吐出数が少ない駆動タイミングに対応するインク吐出口の記録素子に変更する方法について説明した。この実施例では、同時吐出数が多い駆動タイミングに対応するインク吐出口の記録素子の駆動タイミングを同時吐出数が均等割付となる駆動タイミングに変更する。さらに、同時吐出数が均等割付であった駆動タイミングに対応するインク吐出口の記録素子の駆動タイミングを同時吐出数が少ない駆動タイミングに変更する例について説明する。
この実施例でも同様に、記録ヘッドの傾きが−1の場合について説明する。
図29は実施例2に従ってインク吐出口毎の記録素子の駆動タイミングを変更する様子を示す模式図である。なお、図29において、既に図4、図25などを参照して説明したのと同様の構成要素や制御についての説明は省略し、ここではこの実施例に特有の特徴についてのみ説明する。図29(B)は図7(B)に示した状態から各駆動タイミングにおける同時吐出数を均等割付にするために、インク吐出口毎の記録素子の駆動タイミングを変更した例である。
図29(B)において、点線の波形は変更前の状態、実線の波形は変更後の状態を示している。図29(B)の例では、インク吐出口番号0、1、2、8、9、10の記録素子の駆動タイミングをそれぞれ、0から2へ、5から7へ、10から12へ、7から8へ、12から13へ、1から2へ変更する。これによって、実施例1に従う図25(B)に示した場合よりも駆動タイミングのシフト量を小さくしつつ、同時吐出数の分布を均等にすることができる。なお、この制御の詳細は図30〜図31を参照して説明する。
この実施例において、ヘッド傾き量の検知から駆動タイミングのシフト量の決定までの処理は図26を参照して説明した実施例1と同じなので省略する。実施例1との相違点は図26のステップS105におけるインク吐出口毎の記録素子の駆動タイミングのシフト量の設定の部分(即ち、ブロック駆動順序の変更)である。
図30は図26のステップS105のブロック駆動順序の変更について、実施例2に従う処理の詳細を示すフローチャートである。
まず、ステップS301では、
・同時吐出数が均等割付よりも多い(N=N1)駆動タイミング、インク吐出口番号
・同時吐出数が均等割付よりも少ない(N=N2)駆動タイミング、インク吐出口番号
・同時吐出数が均等割付(N=N3)駆動タイミング、インク吐出口番号
を取得する。
図7(B)に示す例の場合、同時吐出数が1であれば均等割付であり、N1=2、N2=0、N3=1である。この場合の取得結果を表5に示す。ただし、N1=2、N2=0の場合は実施例1と同じなので、その説明は省略する。
[表5] N3=1の取得結果
┌−−−−−−−−−┬−−−−−−−−−−−−−−−−−┐
| 駆動タイミング | インク吐出口番号 |
├−−−−−−−−−┼−−−−−−−−−−−−−−−−−┤
| 1 | 10 |
├−−−−−−−−−┼−−−−−−−−−−−−−−−−−┤
| 3 | 7 |
├−−−−−−−−−┼−−−−−−−−−−−−−−−−−┤
| 4 | 4 |
├−−−−−−−−−┼−−−−−−−−−−−−−−−−−┤
| 6 | 11 |
├−−−−−−−−−┼−−−−−−−−−−−−−−−−−┤
| 7 | 8 |
├−−−−−−−−−┼−−−−−−−−−−−−−−−−−┤
| 9 | 5 |
├−−−−−−−−−┼−−−−−−−−−−−−−−−−−┤
| 11 | 12 |
├−−−−−−−−−┼−−−−−−−−−−−−−−−−−┤
| 12 | 9 |
├−−−−−−−−−┼−−−−−−−−−−−−−−−−−┤
| 14 | 6 |
├−−−−−−−−−┼−−−−−−−−−−−−−−−−−┤
| 15 | 3 |
└−−−−−−−−−┴−−−−−−−−−−−−−−−−−┘
次に、ステップS302では、同時吐出数がN1の駆動タイミングと、同時吐出数がN2の駆動タイミングの差分が最小になる組み合わせを探索する。この結果は実施例1と同じなので、その説明は省略する。
ステップS303では、同時吐出数N1の駆動タイミングと同時吐出数N3の駆動タイミングの差分と同時吐出数N3の駆動タイミングと同時吐出数N2の駆動タイミングの差分が、ステップS302で探索された組み合わせの差分より小さくなるかを探索する。その探索結果を次に表6示す。
[表6] N1=2、N2=0、N3=1の探索結果
┌−−−−−−−−┬−−−−−−−−┬−−−−−−−−┬−−−−−−−−┐
|同時吐出数が2の|同時吐出数が1の|同時吐出数が0の|駆動タイミングの|
|駆動タイミング |駆動タイミング |駆動タイミング | 差分の最大値 |
├−−−−−−−−┼−−−−−−−−┼−−−−−−−−┼−−−−−−−−┤
| 0 | 1 | 2 | 1 |
├−−−−−−−−┼−−−−−−−−┼−−−−−−−−┼−−−−−−−−┤
| 5 | 7 | 8 | 2 |
├−−−−−−−−┼−−−−−−−−┼−−−−−−−−┼−−−−−−−−┤
| 10 | 12 | 13 | 2 |
└−−−−−−−−┴−−−−−−−−┴−−−−−−−−┴−−−−−−−−┘
駆動タイミングの差分が最小になる組み合わせを探索するアルゴリズムでは、まず同時吐出数が2の駆動タイミングと同時吐出数が0の駆動タイミングとその間にある同時吐出数が1の駆動タイミングの差分を全ての組み合わせで計算する。そして、駆動タイミングの差分の最大値の合計が最小となる組み合わせを選択する。この実施例では駆動タイミングの差分の最大値の合計が5(=1+2+2)の場合に最小になる。
さて、この実施例ではステップS302で探索された組み合わせの差分よりも、ステップS303で探索された組み合わせの差分が小さいものが存在するので、処理がステップS304に進んで実行されることはない。つまり、処理はステップS305に進む。仮に、ステップS302で探索された組み合わせの差分よりも、ステップS303で探索された組み合わせの差分が小さいものが存在しない場合、処理はステップS304を実行する。従って、インク吐出口毎の記録素子の駆動タイミングのシフト量の設定は実施例1と同じになる。
最後に、ステップS305では同時吐出数がN1のインク吐出口を1つ選択し、そのインク吐出口の記録素子の駆動タイミングをステップS303で探索された組み合わせの差分より小さくなる同時吐出数がN3の駆動タイミングに変更する。さらに、同時吐出数がN3の駆動タイミングに対応するもう1つのインク吐出口の記録素子の駆動タイミングをステップS303で探索された組み合わせに対応した同時吐出数がN2の駆動タイミングに変更する。その変更結果を表7に示す。
[表7] N1=2、N2=0、N3=1の変更結果
┌−−−−−┬−−−−−−−┬−−−−−−−┬−−−−−−−−−┐
|ノズル番号| 変更前の | 変更後の | 駆動タイミング |
| |駆動タイミング|駆動タイミング| の差分 |
├−−−−−┼−−−−−−−┼−−−−−−−┼−−−−−−−−−┤
| 0 | 0 | 1 | 1 |
├−−−−−┼−−−−−−−┼−−−−−−−┼−−−−−−−−−┤
| 1 | 5 | 7 | 2 |
├−−−−−┼−−−−−−−┼−−−−−−−┼−−−−−−−−−┤
| 2 | 10 | 12 | 2 |
├−−−−−┼−−−−−−−┼−−−−−−−┼−−−−−−−−−┤
| 8 | 7 | 8 | 1 |
├−−−−−┼−−−−−−−┼−−−−−−−┼−−−−−−−−−┤
| 9 | 12 | 13 | 1 |
├−−−−−┼−−−−−−−┼−−−−−−−┼−−−−−−−−−┤
| 10 | 1 | 2 | 1 |
└−−−−−┴−−−−−−−┴−−−−−−−┴−−−−−−−−−┘
ノズル番号を選択するアルゴリズムに関して、同時吐出数が2の駆動タイミングに対応するインク吐出口の記録素子の中でインク吐出口番号が小さい方のノズルを選択する。また、同時吐出数が1の駆動タイミングに対応するインク吐出口は1つだけなので、そのインク吐出口の記録素子を選択する。ここで、同時吐出数が2の駆動タイミングに対応するインク吐出口番号の記録素子を選択することは実施例1と同じである。しかしながら、同時吐出数が2の駆動タイミングと同時吐出数が0の駆動タイミングの間にある同時吐出数が1の駆動タイミングに対応するインク吐出口番号の記録素子の駆動タイミングを変更する点が実施例1とは異なる。
以上のような処理により、図29(A)に示した記録ヘッド11のインク吐出口の配置において、図29(B)に示した駆動タイミングで記録すると、図29(C)に示す記録媒体上のドット配置になる。なお、図29はノズルグループ0とノズルグループ1(16個のインク吐出口)の構成に限定した説明しているので、ノズルグループ0からノズルグループ15(128個のインク吐出口)の構成に関しては、別の図を参照して説明する。
図31は図23に示した状態から駆動タイミングのシフト量を小さくして時分割駆動における1カラムの記録において各駆動タイミングの同時吐出数を均等割付にした場合のドット配置を示す図である。
図31では、図23と同様に、記録ヘッドの傾きが−1の場合のノズルグループ0からノズルグループ15の記録素子に割り当てられるインク吐出口番号、ブロック、ノズルグループ毎のタイミングシフト量、記録データ、ドット配置を示している。図31における図23との相違点は同時吐出数が均等割付になるように、タイミングシフト量、データシフト量を変更した点である。
従って以上説明した実施例に従えば、実施例1に従う効果に加えて、さらに駆動タイミングのシフト量を小さくしつつブロック駆動順序を変更することができる。
実施例1、2では記録ヘッドの傾きに応じたブロック駆動順序の変更情報を記録装置の本体で随時計算したが、この実施例では、記録ヘッドの傾きに応じたブロック駆動順序を予め計算しテーブルとして保持し、そのテーブルから読出す例について説明する。
即ち、この実施例では、図13に示したブロック駆動順変更回路221を不要とし、ブロック駆動順データメモリ214に同時吐出数を均等割付になるようなブロック駆動順序の情報を記録ヘッドの傾き毎に格納する。そして、ブロック駆動順データメモリ214から記録ヘッド傾きに応じたブロック駆動順序の情報を読出す。
図32は実施例3に従うヘッド傾き量の検知から駆動タイミングのシフト量の決定まで処理を示すフローチャートである。
まずステップS401では、図20を参照して説明した方法で記録ヘッドの傾き量を検知し、次にステップS402では、図17を参照して説明した方法でノズルグループ毎のタイミングシフト量とデータシフト量を設定する。そして、ステップS403では、記録ヘッド11の傾きに応じてブロック駆動順序を決定する。
ブロック駆動順序の設定については図33〜図34を参照して説明する。
図33は実施例1に従う処理を実行する場合における変更前後のブロック駆動順序と駆動タイミングの差分を示した表である。図33に示されているように、記録ヘッドの傾きに応じてブロック駆動順序が変更されている。図33に示したテーブルに従ってブロック駆動順序を設定し、図24に示したテーブルに従ってタイミングシフトとデータシフトを設定すれば、記録ヘッドの傾きずれ補正をした状態で同時吐出数を均等割付することができる。
この場合、タイミングシフト量、データシフト量、ブロック駆動順序の設定は実施例1で説明したのと同じになるが、ブロック駆動順序の設定方法が実施例1とは異なる。
図34は実施例2に従う処理を実行する場合における変更前後のブロック駆動順序と駆動タイミングの差分を示した表である。図34に示されているように、記録ヘッドの傾きに応じてブロック駆動順序が変更されている。図34に示したテーブルに従ってブロック駆動順序を設定し、図24に示したテーブルに従ってタイミングシフトとデータシフトを設定すれば、記録ヘッドの傾きずれ補正をした状態で同時吐出数を均等割付することができる。
この場合、タイミングシフト量、データシフト量、ブロック駆動順序の設定は実施例2で説明したのと同じになるが、ブロック駆動順序の設定方法が実施例2とは異なる。
<実施例の効果に関する補足説明>
ここでは、以上説明した実施例によれば同時吐出数を均等割付にできる一方で、インク吐出口毎にドットの着弾ずれが発生する可能性があるが、その着弾ずれが記録画像の品質には実質的に影響を与えないことについて説明する。
図35はインク液滴を記録媒体上において直線的に着弾させることを意図した場合に着弾づれが生じる様子を説明するための模式図である。
図35において、(A)は着弾ずれがない場合、(B)は着弾ずれがドット径に対して1/8の場合、(C)は着弾ずれがドット径に対して1/4の場合、(D)は着弾ずれがドット径に対して1/2の場合のドット配置を示している。
これらの図の比較から分かるように、着弾ずれがドット径に対して1/8より小さければ、人間の目には視認されづらく、実質的に問題ないと考えられる。
ここで、128個のインク吐出口を備える記録ヘッド11において、ドット径を30μm、記録解像度を1200dpi、時分割駆動ブロック数を16(即ち、1ノズルグループは8個のインク吐出口からなる)とする。この場合、ドット径に対して1/8の着弾ずれ量(ΔS)の距離は、30÷8≒3.8なので、
ΔS=3.8μm
である。また、駆動タイミングのシフト量の最小単位(SMIN)は、25.4÷1200×1000÷16≒1.3より、
SMIN=1.3μmである。
従って、実質的に問題のない駆動タイミングのシフト量(PS)は、3.8÷1.3≒3より駆動タイミングの数で約3以下(即ち、ドット径で1/8以下)であると判断できる。
以上の理由から、既に説明した実施例1、2では共に駆動タイミングのシフト量は3以下であるので、インク吐出口毎の記録素子の駆動タイミングのシフトによる着弾ずれは記録画像の品質に実質的に影響を与えるものではないと判断できる。