以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。図1は、本実施形態の電解コンデンサ1の例を示す概略図であり、部分断面図である。図2は、電解コンデンサ1をケース4の開口側から見た概略の図である。電解コンデンサ1は、巻回型で、電解質2eが導入されているコンデンサ素子2と、リード端子5及びリード端子6と、貫通穴3cが形成された封口体3と、コンデンサ素子2と封口体3とが収納されている有底形状のケース4とを備える。
ここで、電解コンデンサ1の各部の位置関係を説明し易くするため、図中にX,Y,Zの矢印で向きを示している。電解コンデンサ1を実際に使用する際には、これらの向きに限定されず、どのような向きで使用しても支障ない。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
図1の例では、ケース4の開口側の側面に横絞り部4bが形成され、なお且つ、開口端部4aが曲げられている。ケース4の開口側は、コンデンサ素子2が配設されておらず、図2に示すように、封口体3の第1面3aの一部や、リード端子5(6)の引出端子5f(6f)が露出している。封口体3は、ケース4の横絞り部4bと開口端部4aとによって支持固定されている。リード端子5(6)は、丸棒部5d(6d)が封口体3の貫通穴3cに嵌合しており、封口体3によって支持固定されている。
ケース4は有底筒状であり、アルミニウム等の金属からなる。封口体3は、水分の浸入や酸化皮膜修復物質の飛散を防止するために高気密性を有し、ケース4の内側形状に合わせた略円柱形状となっている。そして、第1面3aと第2面3bとには、リード端子5(6)の丸棒部5d(6d)が各々挿通される貫通穴3cが2個所に形成されている。ここで、第1面3aと第2面3bとは互いに逆向きとなっており、第1面3aを上面とした場合、第2面3bは下面となる。
封口体3は、絶縁性ゴム組成物からなる。一例として、封口体3は、イソブチレン・イソプレンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、フッ素ゴム、又はその他既知のエラストマーからなる。
先ず、本実施形態に係るコンデンサ素子2について概略の説明をする。なお、コンデンサ素子2の詳細な説明については後述する。図12は、本実施形態の電解コンデンサ1におけるコンデンサ素子2の要部を模式的に示す図である。陽極箔2aと陰極箔2cとはアルミニウム、タンタル、ニオブ等の弁金属から形成されている。陽極箔2aの表面は、エッチング処理により粗面化された後、化成処理によって酸化皮膜2bが形成されている。陰極箔2cの表面は、陽極箔2aと同様にエッチング処理により粗面化された後、自然酸化皮膜2hが形成されている。陽極箔2aと陰極箔2cとは、一例として、アルミニウムからなる。
陽極箔2aと陰極箔2cとの間にはセパレータ2dが配設されている。セパレータ2dは、導電性の高分子や水溶性の高分子と化学的に馴染み易いセルロース繊維、または、耐熱性に優れたナイロン、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の合成樹脂で形成されたものが適用される。セパレータ2dは、一例として、耐熱性セルロース紙である。
本実施形態は、陽極箔2aの酸化皮膜2bを修復可能な、電解液、水溶性高分子化合物、又はその他既知の酸化皮膜修復物質をコンデンサ素子2に導入することができる。
ここでは、導電性高分子化合物からなる電解質2eがコンデンサ素子2に導入されている。また、水溶性高分子化合物13がコンデンサ素子2に含浸されている。水溶性高分子化合物13は、陽極箔2aの酸化皮膜2bおよび陰極箔2cの酸化皮膜2hを修復可能な水分を保持しているので、陽極箔2aの酸化皮膜2bを修復できる。
一例として、電解質2eは、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリ(4−スチレンスルホン酸)をドープしたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT/PSS)、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、ポリピロール(PPy)、ポリアニリン(PANI)、ポリチオフェン(PT)、又はその他既知の導電性高分子化合物である。
前記導電性化合物は、導電性高分子分散液または導電性高分子溶液のいずれかないしは両方から形成された導電性高分子化合物であることが好ましい。これによれば、高耐電圧化が可能となり、一例として、耐電圧を100[V]まで高めることができる。
電解質2eは、ポリスチレンスルホン酸、トルエンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸のいずれか1種以上をドーパントとした導電性高分子化合物であることが好ましい。これによれば、導電性が安定する。
コンデンサ素子2は、陽極箔2aの酸化皮膜2bを修復可能なポリアルキレンオキサイド、水溶性シリコーン若しくは分岐ポリエーテル又はこれらの誘導体からなる酸化皮膜修復物質を1種以上含有していることが好ましい。これらは酸素原子を多く有し、高い酸化力を有するため、電解コンデンサ1を長時間使用した場合に、陽極箔2aの酸化皮膜2bに欠損が生じた場合でも高い酸化力を欠損部の修復に使用できるため、漏れ電流を抑制することができる。
水溶性高分子化合物13がポリアルキレンオキサイドの場合には、その分子量は100以上かつ1000以下であることが好ましい。分子量が100よりも小さい場合には封口体3を透過して外部に飛散し易くなる傾向がある。一方、分子量が1000よりも大きい場合には低温での等価直列抵抗(ESR)が大きくなる傾向がある。
水溶性高分子化合物13が水溶性シリコーン、分岐ポリエーテル、ポリアルキレンオキサイドの誘導体、水溶性シリコーンの誘導体、又は分岐ポリエーテルの誘導体の場合には、その分子量が200以上かつ3000以下であることが好ましい。分子量が200よりも小さい場合には封口体3を透過して外部に飛散し易くなる傾向がある。一方、分子量が3000よりも大きい場合には低温での等価直列抵抗(ESR)が大きくなる傾向がある。
コンデンサ素子2は、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基、ニトロ基、スルホン基、アミド基、またはリン酸エステル基からなる親水性の官能基を持つ、前記陽極箔の酸化皮膜を修復可能な酸化皮膜修復物質を1種以上含有していることが好ましい。これにより、主鎖に水素結合を発現する結合鎖を含む水溶性高分子化合物13が安定して得られる。
コンデンサ素子2は、分子量の異なる2種以上の水溶性高分子化合物の混合体からなる、陽極箔2aの酸化皮膜2bを修復可能な酸化皮膜修復物質を含有していることが好ましい。
ここで、電解コンデンサ1に水溶性高分子化合物13が溶解した水溶性高分子溶液を含有させる場合、低温における等価直列抵抗(ESR)を低くするという観点からは、分子量の小さい水溶性高分子化合物を用いるのが好ましい。分子量の大きい高分子は10[℃]以下の低温で凝固が始まるため、凝固が始まる時に固体電解質のネットワークを破壊して電解コンデンサの等価直列抵抗(ESR)の増大を引き起こす虞がある。一方、分子量の小さい水溶性高分子化合物は分子量の大きい水溶性高分子化合物よりも凝固点が低いことから、分子量の小さい水溶性高分子化合物を用いた電解コンデンサ1を10[℃]以下の低温状態においたときに水溶性高分子化合物が凝固しにくくなり、微粒子状の導電性高分子化合物からなる固体電解質のネットワークが破壊され難くなる。従って、等価直列抵抗(ESR)が高くなることを抑制できるとともに、低温での特性安定性に優れた電解コンデンサ1となる。その反面、分子量の小さい水溶性高分子化合物は、封口体3を透過しやすい性質があるため、単独でこれを用いたのでは、水溶性高分子溶液を長期にわたり保持しにくくなることがある。
そこで、本実施形態は、水溶性高分子化合物13として、分子量の異なる2種類以上の水溶性高分子化合物を用いる。これにより、分子量の小さい水溶性高分子化合物と、当該分子量の小さい水溶性高分子化合物よりも分子量の大きい水溶性高分子化合物とを混合して用いることにより、低温時の凝固ストレスを緩和することで低温における等価直列抵抗(ESR)を低くできる効果と水溶性高分子溶液が封口体3を透過して外部に飛散しにくくなるという効果が両方共に可能となり、その結果、本実施形態は、低温特性が良好であり、かつ、長寿命の電解コンデンサ1となる。
一例として、電解質2eは、微粒子状の導電性高分子からなる。ここで、導電性高分子化合物2eの平均粒子径は、1[nm]以上かつ300[nm]以下である。導電性高分子化合物2eの平均粒子径が1[nm]未満である場合には、微粒子状の導電性高分子化合物を作製するのが困難となる場合がある。一方、導電性高分子化合物2eの平均粒子径が300[nm]よりも大きい場合には、陽極箔2a表面のエッチングピット(凹部)に導電性高分子化合物2eを導入するのが困難となる場合がある。このような観点から言えば、導電性高分子化合物2eの平均粒子径は、2[nm]以上であることがより好ましく、3[nm]以上であることがより一層好ましい。また、導電性高分子化合物2eの平均粒子径は、200[nm]以下であることがより好ましく、100[nm]以下であることがより一層好ましい。
図3Aはリード端子5(6)の概略の正面図であり、図3Bはリード端子5(6)の概略の側面図である。リード端子5(6)は、扁平部5a(6a)と第1段差部5c(6c)と丸棒部5d(6d)と第2段差部5e(6e)と引出端子5f(6f)とが連なって一体化している構造体である。
陽極箔2aとリード端子5とは、扁平部5aにおける接合部5bで電気接続される。同様に、陰極箔2cとリード端子6とは扁平部6aにおける接合部6で電気接続される。リード端子5の引出端子5fの長さは、リード端子6の引出端子6fの長さよりも長くなっており、これにより、極性を容易に視認できる。リード端子5とリード端子6とは、引出端子5fと引出端子6fとの長さの違いを除くと、同じ構造である。リード端子5(6)の構造について、以下に説明する。
リード端子5(6)における扁平部5a(6a)と第1段差部5c(6c)と丸棒部5d(6d)とは、一例として、アルミニウムからなり、プレス加工によって成形される。なお、図3Aの例では、正面視において、扁平部5a(6a)のY方向の幅が、丸棒部5d(6d)の外径よりも大きくなっているが、この例に限定されない。例えば、正面視において、扁平部5a(6a)のY方向の幅と、丸棒部5d(6d)の外径とが、ほぼ同じ場合がある。
リード端子5(6)における引出端子5f(6f)は、一例として、錫めっきされた銅被覆鋼線(CP線)からなる。これにより、基板等への半田付けが容易となる。なお、引出端子5f(6f)は、丸ピンとする場合や角ピンとする場合がある。
引出端子5f(6f)は、一例として、第2段差部5e(6e)に既知の溶接技術によって溶接される。扁平部5a(6a)と第1段差部5c(6c)と丸棒部5d(6d)とは、一例として、ホウ酸やアジピン酸等を含む既知の化成液によって予め化成処理されて、酸化皮膜が形成されている。ここで、本実施形態は、絶縁性樹脂からなる絶縁膜7が形成されているものであるから、化成処理された酸化皮膜が形成されているもの、並びに、金属の酸化によって酸化皮膜が形成されているものとは、両者の構造は本質的に相違する。
図4Aは本実施形態に係る絶縁膜7が形成されたリード端子5(6)の概略の正面図であり、図4Bは絶縁膜7が形成されたリード端子5(6)の概略の側面図である。絶縁膜7は、丸棒部5d(6d)と第1段差部5c(6c)とに形成されている。それに加えて、絶縁膜7は、第1段差部5c(6c)から延設しており、扁平部5a(6a)における接合部5b(6b)と第1段差部5c(6c)との間の端部5g(6g)に形成されている。
本実施形態は、リード端子5(6)における絶縁膜7が形成される範囲W1は、丸棒部5d(6d)、第1段差部5c(6c)、及び端部5g(6g)である。この構成により、電解質2eが丸棒部5d(6d)、第1段差部5c(6c)、並びに端部5g(6g)に付着することを防止できる。
電解コンデンサ1の使用に際して、一例として、リード端子5(6)を半田付けする。半田付け方式には、リフロー炉等を使用するリフロー方式、又は、半田槽等を使用するフロー方式があり、若しくは、半田ごてを使用する方法がある。
ゴムの線膨張係数は、鋼の線膨張係数の5倍〜20倍ある。したがって、封口体3の線膨張係数は、リード端子5(6)の線膨張係数よりも遥かに大きい。このため、リード端子5(6)の半田付けの際に、加熱によって封口体3がリード端子5(6)よりも膨張して、封口体3の貫通穴3cにおける、第1段差部5c(6c)と封口体3との間や、丸棒部5d(6d)と封口体3との間に隙間が生じる。
本実施形態のリード端子5(6)は、少なくとも封口体3と接する部分に絶縁膜7が形成されていることが好ましい。この構成によれば、リード端子5(6)の封口体3と接する部分に絶縁膜7が形成されているので、外力が加わった際に、絶縁膜7の緩衝作用により第1段差部5c(6c)及び丸棒部5d(6d)へのストレスが生じ難くなり、漏れ電流を抑制できる。
例えば、丸棒部5d(6d)の封口体3と接する部分に絶縁膜7が形成されているとともに、第1段差部5c(6c)の封口体3と接する部分に絶縁膜7が形成されている場合がある。例えば、丸棒部5d(6d)の全周に亘って絶縁膜7が形成されているとともに、第1段差部5c(6c)の封口体3と接する部分に絶縁膜7が形成されている場合がある。例えば、丸棒部5d(6d)の全周に亘って絶縁膜7が形成されているとともに、第1段差部5c(6c)の全周に亘って絶縁膜7が形成されている場合がある。上記に加えて、扁平部5a(6a)における接合部5b(6b)と第1段差部5c(6c)との間の端部5g(6g)に絶縁膜7が形成されている場合がある。すなわち、本実施形態のリード端子5(6)は、第1段差部5c(6c)の外周の一部ないしは全部に樹脂からなる絶縁膜7が形成されているとともに、丸棒部5d(6d)の外周の一部ないしは全部に樹脂からなる絶縁膜7が形成されている構成となっている。
絶縁膜7を構成する絶縁性樹脂のASTM D638に準拠する引張試験にて試験片が示す引張破断伸度が小さすぎると、絶縁膜7が、外力によるストレスを受けた場合にクラックが生じやすくなってしまう。そこで、本実施形態は、ASTMD638に準拠する引張試験にて試験片が示す引張破断伸度が2[%]以上の絶縁性樹脂からなる絶縁膜7にする。この構成によれば、絶縁膜7に外力が加わってストレスが生じた場合においても、絶縁膜7にクラックが生じ難くなり、漏れ電流を抑制できる。本実施形態は、上記引張破断伸度は、好ましくは15[%]以上であり、より好ましくは50[%]以上であり、さらに好ましくは200[%]以上である。なお、ASTM D638と基本的には同様の規格であるISO527またはJISK7161に対応させて引張破断伸度を規定することも可能である。
本実施形態の絶縁膜7は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂からなることが好ましい。この構成によれば、これら樹脂の線膨張係数が、ゴムと鋼との中間レベルの線膨張係数を有しているので、半田付け等の加熱によって封口体3が膨張した場合でも、樹脂からなる絶縁膜7によって、封口体3の貫通穴3cにおける、第1段差部5c(6c)と封口体3との間や、丸棒部5d(6d)と封口体3との間に隙間が生じ難くなり、漏れ電流を抑制できる。
本実施形態の絶縁膜7は、熱可塑性樹脂からなることが好ましい。この構成によれば、製造時の熱処理、若しくは、使用時のリフロー、フロー、半田付け、又は熱衝撃等により封口体3が膨張した場合でも、絶縁膜7が軟化し融着して固着状態となるので、絶縁膜7の緩衝作用により第1段差部5c(6c)及び丸棒部5d(6d)へのストレスが生じ難くなり、漏れ電流を抑制できる。
本実施形態は、リード端子5(6)は、封口体3の貫通穴3cに挿通されており、樹脂からなる絶縁膜7は、リード端子5(6)と封口体3とに、固着または融着していることが好ましい。この構成によれば、製造時の熱処理、若しくは、使用時のリフロー、フロー、半田付け、又は熱衝撃等を経ることで、絶縁膜7が軟化し、封口体3の貫通穴3cにおける、第1段差部5c(6c)と封口体3との間や、丸棒部5d(6d)と封口体3との間に生じる隙間を塞ぎ、その後、融着して固着状態となる。したがって、使用時に漏れ電流が大きくなることを防止でき、繰り返し熱衝撃等が加わった場合でも、その都度、絶縁膜7が軟化し、融着して固着状態となるので、漏れ電流の抑制効果が持続する。
特に、微粒子状の導電性高分子からなる電解質2eは、サイズがナノメートルオーダーとなっているため、従来の電解コンデンサでは想定外であった微小なサイズの電解質2eの微量のリード端子5(6)への付着についても考慮する必要がある。本実施形態によれば、リード端子5(6)の第1段差部5c(6c)と丸棒部5d(6d)とには、絶縁膜7が予め形成されている。よって、製造プロセスにおいて、微量な電解質2eであっても、第1段差部5c(6c)、並びに、丸棒部5d(6d)の表面に電解質2eが付着するのを防止することができ、漏れ電流を抑制できる。
本実施形態は、樹脂からなる絶縁膜7は、融点が60[℃]以上の絶縁性樹脂からなることが好ましい。これによれば、熱処理を除く、製造時の温度域では、絶縁膜7が第1段差部5c(6c)及び丸棒部5d(6d)に固着状態となっているので、第1段差部5c(6c)並びに丸棒部5d(6d)の表面に電解質2eが付着するのを防止できる。
本実施形態は、樹脂からなる絶縁膜7は、融点が125[℃]以上の絶縁性樹脂からなることが好ましい。これによれば、使用時の温度域で、絶縁膜7が第1段差部5c(6c)及び丸棒部5d(6d)に固着状態となっているので、第1段差部5c(6c)並びに丸棒部5d(6d)の表面に電解質2eが付着するのを防止できる。
本実施形態は、樹脂からなる絶縁膜7は、融点が150[℃]以上の絶縁性樹脂からなることが好ましい。これによれば、電解コンデンサ1の使用時に電流が重畳され発熱している場合においても、絶縁膜7が第1段差部5c(6c)及び丸棒部5d(6d)に固着状態となっているので、第1段差部5c(6c)並びに丸棒部5d(6d)の表面に電解質2eが付着するのを防止できる。
本実施形態は、樹脂からなる絶縁膜7は、融点が260[℃]以下の絶縁性樹脂からなることが好ましい。これによれば、リード端子5(6)の半田付けとして、例えば、ピーク温度が260[℃]のリフローを実施すると、絶縁膜7が軟化し、その後、融着して固着状態となるので、第1段差部5c(6c)並びに丸棒部5d(6d)と、封口体3の貫通穴3cとに隙間が生じることを防止でき、緩衝作用により第1段差部5c(6c)及び丸棒部5d(6d)へのストレスが生じ難くなるとともに、漏れ電流の抑制効果が持続する。
本実施形態は、樹脂からなる絶縁膜7は、結晶性樹脂からなることが好ましい。これによれば、温度が−20[℃]を下回る低温域、温度が−20[℃]以上かつ100[℃]以下の温度域、及び温度が100[℃]を超える高温域に亘る広範囲の温度域で、絶縁膜7が第1段差部5c(6c)及び丸棒部5d(6d)に固着状態となっているので、第1段差部5c(6c)並びに丸棒部5d(6d)の表面に電解質2eが付着するのを防止できる。上記に加えて、結晶性樹脂は、耐薬品性に優れているので、特に、化成処理等の製造過程で使用される薬品と接触する場合や、電解質導入等の製造過程での酸化皮膜修復物質等と接触する場合においても、絶縁膜7による漏れ電流の抑制効果が持続する。そして、結晶性樹脂は、外力が繰り返し加わることによる歪みや摩耗に対する強度が高いので、製造時や使用時にリード端子5(6)にストレスが加わる場合や、封口体3の膨張・収縮等の変形によってストレスが加わる場合においても、絶縁膜7による漏れ電流の抑制効果が持続する。
本実施形態は、樹脂からなる絶縁膜7は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合樹脂(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合樹脂(ETFE)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリカーボネート(PC)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)のいずれか1種以上の絶縁性樹脂からなることが好ましい。これによれば、耐熱性に優れた絶縁膜7となる。
樹脂からなる絶縁膜7は、特に、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合樹脂(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)、又はテトラフルオロエチレン・エチレン共重合樹脂(ETFE)が好ましい。これによれば、耐熱性及び耐薬品性に優れた絶縁膜7となる。
絶縁性で熱可塑性樹脂からなる絶縁膜7は、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリスチレン(PS)、スチレン・アクリロニトリル共重合体(AS)、スチレン・ブタジエン・アクリロニトリル共重合体(ABS)、ポリエチレン(PE)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリプロピレン(PP)、ポリアセタール(POM)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、変成アクリル(MS)、酢酸セルロース(CA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PU)、三フッ化塩化エチレン(PCTFE)、四フッ化エチレン(PTFE)、四フッ化エチレン六フッ化プロピレン共重合(FEP)、四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合(PFA)、四フッ化エチレン・エチレン共重合(ETFE)、又はポリフッ化ビニリデン(PVDF)が挙げられる。
絶縁性で熱可塑性樹脂からなる絶縁膜7は、特に、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)、四フッ化エチレン(PTFE)、四フッ化エチレン六フッ化プロピレン共重合(FEP)、四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合(PFA)、四フッ化エチレン・エチレン共重合(ETFE)が好ましい。これによれば、リード端子5(6)の曲げ等のストレスに対する追従性及び耐薬品性に優れた絶縁膜7となる。
絶縁膜7は、その厚さが薄いほど貫通穴3cとの嵌合が容易となる。一方、絶縁膜7は、その厚さが薄すぎると、外力によるストレスを受けやすくなってしまう。そこで、本実施形態は、絶縁膜7の厚さを0.1[μm]以上にする。絶縁膜7の厚さは、好ましくは1[μm]以上であり、より好ましくは3[μm]以上である。
絶縁膜7は、その厚さが厚いほど強度が高くなる。一方、絶縁膜7は、その厚さが厚すぎると、貫通穴3cとの嵌合の容易性が低下してしまう。そこで、本実施形態は、絶縁膜7の厚さを500[μm]以下にする。絶縁膜7の厚さは、好ましくは100[μm]以下であり、より好ましくは50[μm]以下である。
続いて、本発明に係る電解コンデンサ1の製造方法について、以下に説明する。
図11は、電解コンデンサ1の製造手順を示すフローチャート図である。電解コンデンサ1は、一例として、図11に示すとおり、絶縁膜形成ステップS1、接合ステップS2、素子形成ステップS3、導入ステップS4、嵌合ステップS5、封口ステップS6、エージングステップS7の順に製造される。
なお、電解コンデンサ1の製造手順は、上記の手順に限定されず、上記以外に、絶縁膜形成ステップS1と接合ステップS2との順序を入れ替えることが可能であり、また、上記以外に、素子形成ステップS3の後に、絶縁膜形成ステップS1を設けることが可能である。そして、上記以外に、導入ステップS4と嵌合ステップS5との順序を入れ替えることが可能である。さらに、上記以外に、エージングステップS7の後に、封口ステップS6を設けることが可能であり、また、エージングステップS7の後に、嵌合ステップS5および封口ステップS6を設けることが可能である。
本実施形態は、絶縁膜形成ステップS1における塗布方法は、転写法、スプレーコート法、ディップコート法、スクリーン印刷法、インクジェット法、バーコート法、又はその他既知の塗布方法、若しくはこれら塗布方法の組み合わせが適用できる。
絶縁膜形成ステップS1は、一例として、熱可塑性樹脂が溶解している樹脂溶液を、リード端子5(6)の所定範囲に塗布することで、第1段差部5c(6c)と丸棒部5d(6d)と端部5g(6g)とに絶縁膜7を形成する。
図4Aと図4Bとに示すように、絶縁膜形成ステップS1は、少なくともリード端子5(6)の丸棒部5d(6d)と第1段差部5c(6c)とに、絶縁膜7を形成する。また、扁平部5a(6a)における接合部5b(6b)と第1段差部5c(6c)との間の端部5g(6g)にも絶縁膜7を形成する。
接合ステップS2は、一例として、図5に示すように、接合部5bと陽極箔2aとを重ね合わせて、針等で所定箇所を突き通して、出来たバリ部分をプレス加工して接続部2fを形成し、接続部2fによって接合部5bと陽極箔2aとを接合する。同様に、接合部6bと陰極箔2cとを接合する。
ここで、リード端子5(6)において、絶縁膜7が形成される範囲W1は、陽極箔2a(陰極箔2c)と重ならない範囲となっていることが好ましい。これによれば、接合部5b(6b)と陽極箔2a(陰極箔2c)とを密着でき、リード端子5(6)と陽極箔2a(陰極箔2c)との間の抵抗値を抑えることができる。
素子形成ステップS3は、一例として、図6に示すように、陽極箔2aと陰極箔2cとの間にセパレータ2dを挟んで両電極箔を隔離した状態とし、陽極箔2aと陰極箔2cとをセパレータ2dを介して巻回して円筒形状とする。そして、テープまたはフィルム等を円筒形状の外周部に貼り付けて巻回状態を保持する(不図示)。その後、図7A〜図7Cに示すように、化成処理を行う。
素子形成ステップS3における化成処理は、一例として、図7Aに示すように、化成液11を入れた化成液槽51を準備する。次に、図7Bに示すように、化成処理前段階のコンデンサ素子2iを化成液槽51内の化成液11に浸漬するとともに、引出端子5fと化成液11との間に所定電圧を所定時間印加する。一例として、100[V]の電圧を、5[分]印加して、陽極箔2aの端部に存在する酸化皮膜欠損部及び表面に存在することがある酸化皮膜欠損部を修復する(不図示)。そして、化成液槽51から引き上げて、乾燥し、化成処理された状態のコンデンサ素子2jにする。
化成液11は、例えば、アジピン酸アンモニウム、ホウ酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、グルタル酸アンモニウム、アゼライン酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム、セバシン酸アンモニウム、ピメリン酸アンモニウム、スベリン酸アンモニウム等の水溶液が挙げられる。
導入ステップS4は、化成処理された状態のコンデンサ素子2jに電解質2eを導入する。一例として、電解質2eとして導電性高分子化合物を導入する第1導入処理を行い、その後、電解質2eとして導電性高分子化合物が導入された状態のコンデンサ素子2に、陽極箔2aの酸化皮膜2bを修復可能な水溶性高分子化合物13を導入する第2導入処理を行う。
導入ステップS4における第1導入処理は、一例として、図8Aに示すように、分散液12を入れた分散液槽52を準備する。次に、図8Bに示すように、化成処理された状態のコンデンサ素子2jを分散液槽52内の分散液12に浸漬する。そして、分散液槽52から引き上げて、乾燥し、第1導入処理された状態のコンデンサ素子2kにする。
本実施形態は、電解質2eは、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリ(4−スチレンスルホン酸)をドープしたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT/PSS)、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、ポリピロール(PPy)、ポリアニリン(PANI)、ポリチオフェン(PT)、又はその他既知の微粒子状の導電性高分子化合物からなる。
微粒子状の導電性高分子化合物2eの平均粒子径は、一例として、1[nm]以上300[nm]以下である。導電性高分子化合物2eの平均粒子径が1[nm]未満である場合には、微粒子状の導電性高分子化合物を作製するのが困難となる場合がある。一方、導電性高分子化合物の平均粒子径が300[nm]よりも大きい場合には、陽極箔2a表面のエッチングピット(凹部)に導電性高分子化合物2eを導入するのが困難となる場合がある。このような観点から言えば、導電性高分子化合物2eの平均粒子径は、2[nm]以上であることがより好ましく、また、導電性高分子化合物2eの平均粒子径は、3[nm]以上であることがより一層好ましい。そして、導電性高分子化合物2eの平均粒子径は、200[nm]以下であることがより好ましく、また、導電性高分子化合物2eの平均粒子径は、100[nm]以下であることがより一層好ましい。
上述のとおり、本実施形態は、導入ステップS4の前段階で、少なくともリード端子5(6)の丸棒部5d(6d)と第1段差部5c(6c)とに、樹脂からなる絶縁膜7を形成する。これにより、導入ステップS4の第1導入処理において、電解質2eがリード端子5(6)の丸棒部5d(6d)や第1段差部5c(6c)に付着することを防止でき、漏れ電流を抑制できる。
本実施形態は、リード端子5(6)において、絶縁膜7が形成される範囲W1は、封口体3の厚さH1の0.1倍以上かつ2.5倍以下である。絶縁膜7が形成される範囲W1が封口体3の厚さH1の0.1倍よりも小さい場合には、リード端子5(6)の半田付け時において封口体3の熱膨張によるストレス等の影響で漏れ電流が大きくなる可能性がある。一方、絶縁膜7が形成される範囲W1が封口体3の厚さH1の2.5倍よりも大きい場合には、リード端子5(6)と陽極箔2a(陰極箔2c)との間の抵抗値が大きくなることでコンデンサ特性に影響する可能性がある。このような観点から言えば、絶縁膜7が形成される範囲W1は封口体3の厚さH1の0.3倍以上であることが好ましく、また、絶縁膜7が形成される範囲W1は封口体3の厚さH1の0.5倍以上であることがより好ましい。そして、絶縁膜7が形成される範囲W1は封口体3の厚さH1の2.0倍以下であることが好ましく、また、絶縁膜7が形成される範囲W1は封口体3の厚さH1の1.5倍以下であることがより好ましい。
本実施形態は、高分子分散液12における電解質2eの濃度は、一例として、0.1[vol%]以上かつ10[vol%]以下である。電解質2eの濃度が0.1[vol%]よりも低い場合には、電解質2eの量が少なく、所望のコンデンサ特性を発揮できない可能性がある。一方、電解質2eの濃度が10[vol%]よりも高い場合には、分散液12に電解質2eが均質に分散しない可能性がある。このような観点から言えば、電解質2eの濃度は、1[vol%]以上であることが好ましく、また、電解質2eの濃度は、2[vol%]以上であることがより好ましい。そして、電解質2eの濃度は、7[vol%]以下であることが好ましく、また、電解質2eの濃度は、3[vol%]以下であることがより好ましい。
導入ステップS4における第2導入処理は、一例として、図9Aに示すように、陽極箔2aの酸化皮膜2bを修復可能な水溶性高分子化合物13を入れた溶液槽53を準備する。次に、図9Bに示すように、第1導入処理された状態のコンデンサ素子2kを溶液槽53内の水溶性高分子化合物13に浸漬する。そして、溶液槽53から引き上げて、第2導入処理された状態のコンデンサ素子2にする。
本実施形態は、コンデンサ素子2は、微粒子状の導電性高分子化合物からなる電解質2eを含んでいる。尚且つ、陽極箔2aの酸化皮膜2bを修復可能な水溶性高分子化合物13がコンデンサ素子2に含浸している。
本実施形態は、コンデンサ素子2は、陽極箔2aの酸化皮膜2bを修復可能なポリアルキレンオキサイド、水溶性シリコーン若しくは分岐ポリエーテル又はこれらの誘導体からなる酸化皮膜修復物質を1種以上含有していることが好ましい。これらの水溶性高分子化合物は酸素原子を多く有し、高い酸化力を有するため、電解コンデンサ1を長時間使用した場合においても、その高い酸化力によって、陽極箔2aの酸化皮膜2bの欠損部を修復するので、漏れ電流を抑制できる。
嵌合ステップS5は、一例として、図10Aに示すように、ケース4と封口体3とを準備する。次に、図10Bに示すように、第2導入処理された状態のコンデンサ素子2をケース4に収納するとともに、リード端子5(6)において、絶縁膜7が形成された丸棒部5d(6d)及び第1段差部5c(6c)を、封口体3の貫通穴3cに嵌合する。これにより、図10Cに示すように、嵌合状態となる。
なお、電解コンデンサ1の製造手順は、上記の手順に限定されず、上記以外に、第2導入処理された状態のコンデンサ素子2をケース4に収納した後で、リード端子5(6)において、絶縁膜7が形成された丸棒部5d(6d)及び第1段差部5c(6c)を、封口体3の貫通穴3cに嵌合する場合がある。また、上記以外に、リード端子5(6)において、絶縁膜7が形成された丸棒部5d(6d)及び第1段差部5c(6c)を、封口体3の貫通穴3cに嵌合した後で、第2導入処理された状態のコンデンサ素子2をケース4に収納する場合がある。
封口ステップS6は、一例として、ケース4の開口側にカシメ加工を施して、ケース4の開口側の側面に横絞り部4bを形成し、尚且つ、開口端部4aを曲げる。このカシメ加工によって、図1に示すように、封口体3を、ケース4の横絞り部4bと開口端部4aとによって支持固定する。つまり、本実施形態は、封口体3とコンデンサ素子2とは、有底形状のケース4に収納されており、封口体3は、ケース4の開口側の成形加工によって支持固定されている。
エージングステップS7は、ケース4の開口側が封口体3とリード端子5(6)とによって封口された後に、外装スリーブをケース4に取り付ける等して、外装スリーブを熱加工するとともに、エージング処理を行う。エージング処理は、高温条件下で所定時間、電圧印加を行い、水溶性高分子化合物13の酸化皮膜修復作用を用いて、陽極箔2aの接続部2fや断面等の金属地金部分と酸化皮膜2bの弱い部分を再化成する。これにより、漏れ電流を安定させる。また、エージング処理には、予期しない初期不良の除去といったデバッキング効果もある。
上述した本実施形態の製造方法によって、実施例1として示す電解コンデンサ1を以下のとおり試作した。また、実施例1の試作と並行して、リード端子5(6)における絶縁膜7の条件を変更した比較例1〜3として示す比較用電解コンデンサを試作した。そして、実施例1、比較例1、比較例2、比較例3について、エージング時の漏れ電流の挙動を測定し評価した。さらに、リフローの前・後での漏れ電流の挙動を測定し評価した。
[実施例1]
リード端子5(6)における、丸棒部5d(6d)と第1段差部5c(6c)と端部5g(6g)とに、絶縁性樹脂であるポリプロピレンを塗布して絶縁膜7を形成した。そして、リード端子5の扁平部5aにおける接合部5bと、エッチング処理を施して誘電体酸化皮膜2bを形成したアルミニウム箔からなる陽極箔2aとを電気接続するためにカシメ接合した。また、リード端子6の扁平部6aにおける接合部6bと、エッチング処理を施したアルミニウム箔からなる陰極箔2cとを電気接続するためにカシメ接合した。
次に、接合部5bを接合した陽極箔2aと、接合部6bを接合した陰極箔2cとの間にセパレータ2dを介在させて巻回することにより、巻回形のコンデンサ素子2を形成した。
次に、コンデンサ素子2を化成液層中のアジピン酸アンモニウム水溶液に浸漬するとともに、陽極2a側のリード端子5と化成液の間に100[V]の電圧を5[分]印加して、陽極箔2aの端部に存在する酸化皮膜欠損部及び陽極箔2a表面の酸化皮膜欠損部を修復し、その後、105[℃]の温度で5[分]乾燥した。
次に、コンデンサ素子2における、陽極箔2aと陰極箔2cとの間の空隙に、微粒子状の導電性高分子化合物からなる固体電解質2eを導入した。固体電解質2eの導入工程においては、固体電解質2eを溶媒に分散させた固体電解質分散液12を空隙に充填した後、溶媒を除去することにより、陽極箔2aと陰極箔2cとの間の空隙に固体電解質2eを導入した。
次に、陽極箔2aと陰極箔2cとの間の空隙に、液体状の水溶性高分子化合物13を、固体電解質2eを取り囲むように導入した。
そして、イソブチレン・イソプレンゴムからなる封口体3を用いて、コンデンサ素子2のリード端子5(6)における、絶縁膜7が形成された丸棒部5d(6d)及び第1段差部5c(6c)を、封口体3の貫通穴3cに嵌合するとともに、コンデンサ素子2を金属ケース4に挿入し、その後、金属ケース4の開口端近傍にカシメ加工を施し、封口体3を支持固定した。
そして、約85[℃]の温度で、所定電圧を60[分]印加することでエージング処理を行って、電解コンデンサ1を作製した。
[比較例1]
リード端子5(6)における、丸棒部5d(6d)のみに、ポリプロピレンを塗布して絶縁膜7を形成した。それ以外は、実施例1と同様の製造条件で比較例1の電解コンデンサを作製した。
[比較例2]
リード端子5(6)における、第1段差部5c(6c)と端部5g(6g)のみに、ポリプロピレンを塗布して絶縁膜7を形成した。それ以外は、実施例1と同様の製造条件で比較例2の電解コンデンサを作製した。
[比較例3]
絶縁膜7を形成しない状態のリード端子5(6)を用いた。それ以外は、実施例1と同様の製造条件で比較例3の電解コンデンサを作製した。
上記のように作製した実施例1と、比較例1、比較例2、並びに比較例3の各電解コンデンサについて、エージング時の漏れ電流を測定した。図13は、各電解コンデンサにおける、エージング時の漏れ電流の挙動を示すグラフ図である。グラフ図の縦軸は漏れ電流値[μA]であり、グラフ図の横軸は時間[秒]である。
図13に示すように、実施例1は、エージング処理中の漏れ電流の急峻な変動(ノイズ)は見られず、良好な漏れ電流の減衰挙動を示した。一方、比較例1〜3は、いずれも、エージング処理中の漏れ電流の急峻な変動(ノイズ)が多発しており、漏れ電流が減衰するまでの時間が非常に長い。このような漏れ電流のノイズや減衰挙動の悪さが短絡故障や固体電解質2eの劣化等を引き起こす要因であると考えられる。
図13の結果から、実施例1のように、リード端子5(6)の丸棒部5d(6d)と第1段差部5c(6c)とに、絶縁性樹脂を塗布して絶縁膜7を形成することで固体電解質2eの付着を防止でき、その結果、漏れ電流波形におけるノイズや減衰挙動の悪さを大幅に改善できたものと考えられる。
次に、作製した各電解コンデンサについて、一般的な半田付け条件に合わせて、ピーク温度が260[℃]で時間が10[秒]のリフローを合計2回、実施した。そして、リフロー前とリフロー後とで、漏れ電流値を測定した。表1にその結果を示す。
表1に示すように、比較例1〜3はリフロー後の漏れ電流が大きく、リフロー前の9〜12倍程度だった。一方、実施例1はリフロー後の漏れ電流がリフロー前の2.5倍程度であり、比較例1〜3に比べて、リフローによる漏れ電流の増大が大幅に抑制されていた。
表1の結果から、実施例1のように、リード端子5(6)の丸棒部5d(6d)と第1段差部5c(6c)とに、熱可塑性樹脂を塗布して絶縁膜7を形成することで、リフローの際の熱により絶縁膜7が軟化し融着して固着状態となり、これにより、貫通穴3cと第1段差部5c(6c)、及び貫通穴3cと丸棒部5d(6d)との間の隙間を塞いで互いに密着した固着状態となっているものと考えられる。その結果、貫通穴3cと第1段差部5c(6c)、及び貫通穴3cと丸棒部5d(6d)との間に隙間が生じることを防止でき、緩衝作用により第1段差部5c(6c)及び丸棒部5d(6d)へのストレスが生じ難くなるとともに、漏れ電流の抑制効果が持続するものと考えられる。
本発明は、上述の実施例に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更が可能である。一例として、上述の実施例では、転写法によって、絶縁膜7を形成したが、この例に限定されない。絶縁膜7の形成は、例えば、スプレーコート法、ディップコート法、スクリーン印刷法、インクジェット法、バーコート法、又はその他既知の塗布方法が適用可能である。
また、上述の実施例では、陽極箔2aと陰極箔2cとの間の空隙に、酸化皮膜修復物質として、水溶性高分子化合物13を導入したが、この例に限定されない。例えば、酸化皮膜修復物質として、電解液を導入する場合がある。なお、酸化皮膜修復物質を導入しない場合もある。
また、上述の実施例では、製品化後に、リード端子5(6)を半田付けする際の加熱によって絶縁膜7が軟化し融着して固着状態となることにより、貫通穴3cと第1段差部5c(6c)、及び貫通穴3cと丸棒部5d(6d)との間の隙間を塞いで互いに密着した固着状態となっている、としたが、この例に限定されない。例えば、製造過程における、外装スリーブをケース4に取り付ける際の加熱によって絶縁膜7が軟化し融着して固着状態となるようにすることで、使用時に、貫通穴3cと第1段差部5c(6c)、及び貫通穴3cと丸棒部5d(6d)との間に隙間が出来ないようにする場合があり、また例えば、エージングステップS7における、エージング処理の際の加熱によって絶縁膜7が軟化し融着して固着状態となるようにすることで、使用時に、貫通穴3cと第1段差部5c(6c)、及び貫通穴3cと丸棒部5d(6d)との間に隙間が出来ないようにする場合がある。そして、製造時の熱処理、若しくは、使用時のリフロー、フロー、半田付け、又は熱衝撃等によって、絶縁膜7が軟化し融着して固着状態となるので、漏れ電流の抑制効果が持続する。