JP6524487B2 - 給湯装置 - Google Patents

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Description

この発明は、給湯装置に関し、特に流量センサの出力に基づく加熱部の加熱制御に関する。
給湯装置においては、適温の湯を供給するために給湯温度を用いたフィードバック制御が行なわれている。しかし、給湯量によって加熱量も変化させる必要があるので正確な温度制御を行なうには、給湯温度だけではなく流量もフィードバック制御のパラメータとすることが望ましい。
特公平7−15336号公報(特許文献1)には、製造コストを低減させた簡単な給湯器において、出湯温度センサにおける開栓時からの検出温度の下り勾配に基づいて水量を推定し、加熱開始の早い時期に水量に応じて加熱量を制御することが記載されている。この制御によって、出湯温度の立ち上がりを早くすることができる。
特公平7−15336号公報
従来、ガス給湯器において、給湯停止後の再出湯時の温度安定性を悪化させる要因として、給湯停止時の消火遅れが挙げられる。この消火遅れの主因は、通水量検出用の羽根車式の流量センサにおいて、通水が停止した後も羽根車が慣性によってしばらく回転し続けるので、実流量の低下が出力信号に反映されることが遅れることである。
給湯停止時の消火遅れの時間が長いと、止栓後も、給湯器内に滞留した状態の水の加熱が継続されてしまい温度が急上昇し、設定温度を大きく超えることがある。この高温となった湯が再出湯時に給湯栓から吐出されてしまう虞があるため、給湯停止時にはなるべく短時間で加熱停止することが望ましい。
この発明はこのような問題点を解決するためになされたものであって、この発明の目的は、流量センサの出力の応答遅れを精度良く補正し、給湯停止後の再出湯時の温度安定性を向上させることである。
この発明に従う給湯装置は、水を加熱する加熱部と、加熱部を通過する水量の変化に応じて流量が変化する通水路の流量を検出するための流量センサと、流量センサの出力信号を受けて流量センサの応答遅れを補正した推定流量値を算出し、推定流量値に基づいて加熱部を加熱状態から加熱停止状態に切換える制御を行なう制御装置とを備える。制御装置は、所定周期ごとに流量センサの出力信号から測定値を取得し、今回取得された測定値と前回取得された測定値との偏差に係数を乗じた値を今回取得された測定値に対して加算して推定流量値を算出する。上記の係数は、測定値の実流量に対する応答遅れの時定数と、所定周期との比率に基づいて予め定められた値である。
上記給湯装置によれば、流量センサの応答遅れを補正した推定流量値に基づいて、加熱部への給水が停止されたことを判定し、加熱部を加熱停止状態とする。このため、ユーザが給湯停止操作を行なうと速やかに加熱部における湯の加熱が停止されるので、加熱部に滞留している湯の温度が急上昇することが避けられる。したがって、給湯再開時に湯温が設定温度よりも上昇しすぎることを緩和することができる。
好ましくは、制御装置は、推定流量値に基づいて、加熱部を加熱状態から加熱停止状態へと移行させる判定を行なう加熱停止判定部と、流量センサの出力信号から取得した測定値に基づいて、加熱部を加熱停止状態から加熱状態へと移行させる判定を行なう加熱開始判定部とを含む。
ユーザは、設定温度よりも高い温度の湯が最初に給湯栓から出てくることには慣れていない。上記のように制御装置が構成されているので、給湯停止操作時には流量センサの応答遅れが補正され加熱部に滞留した湯の温度の過剰な上昇を抑えられる。しかし、応答遅れを補正する処理は流量推定値が振動して不安定になることがある。一方、ユーザは、給湯開始操作をした場合に設定温度よりも低い温度の湯が最初に給湯栓から出てくることには慣れている。したがって、給湯再開操作時には流量センサの応答遅れに起因する湯温低下は許容されるので、給湯再開操作時にはそのまま測定値を使用することによって安定した加熱開始判定を行なうことができる。
より好ましくは、jを1以上の自然数とし、kをjよりも大きい自然数とすると、加熱開始判定部は、加熱停止判定部によって加熱部の加熱が停止してから所定時間以内は、測定値がj回加熱開始判定値を超えた場合に加熱部を加熱状態に移行させ、加熱開始判定部は、加熱停止判定部によって加熱部の加熱が停止してから所定時間より後は、測定値がk回連続して加熱開始判定値を超えた場合に加熱部を加熱状態に移行させる。
上記のように応答遅れを補正する処理は流量推定値が振動して不安定になることがある。したがって、加熱停止判定部が誤って加熱を停止させてしまう可能性もある。この場合には湯温が急に低下することになりユーザに不便をかけてしまう。したがって、流量推定値によって加熱停止された場合は、所定時間内は誤判定の場合に備え、流量センサの測定値が加熱開始判定値を超えたら直ちに加熱部における加熱を再開させ湯温の低下をなるべく少なくする。一方、流量推定値によって加熱停止された場合であっても、所定時間経過しても流量センサの測定値が加熱開始判定値を超えないときには、誤判定によって加熱が停止された可能性は低くなる。したがって、このときには加熱開始の判定を慎重に行なうことによって加熱部の誤動作を避けている。
好ましくは、給湯装置は、加熱部に水を供給する入水管と、加熱部から湯を出水する出湯管と、入水管から分岐し出湯管に合流するバイパス通路とをさらに備える。流量センサは、加熱部を通過する第1の流量と、バイパス通路を通過する第2の流量と、第1の流量と第2の流量の合計流量とのいずれかを検出する。
加熱部の加熱制御に用いる流量センサは、加熱部を通過する水の流量を直接検出するものでなくても良く、加熱部を通過する水の流量の増減に伴って増減する通水路に設けた流量センサであってもよい。したがって、流量センサの配置の自由度が増し、給湯装置の設計の自由度が増す。
本発明によれば、流量センサの出力の応答遅れが精度良く補正されることによって、給湯停止時に加熱部での加熱が直ちに停止されるため、再出湯時の温度安定性が向上する。
本発明の実施の形態に従う給湯装置の概略構成図である。 通水停止時における流量センサ150の検出値と実流量との差を示した波形図である。 検討例における給湯再開時の缶体内の加熱部における温度上昇について説明するための波形図である。 コントローラ300の構成を示すブロック図である。 コントローラ300が行なう流量推定処理および加熱停止処理の内容を説明するフローチャートである。 缶体流量の応答遅れを補正し、閉栓時の消火遅れを短縮した例を説明するための波形図である。 トータル流量の応答遅れを補正し、閉栓時の消火遅れを短縮した例を説明するための波形図である。 コントローラ300が行なう加熱開始処理の内容を説明するフローチャートである。
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は原則的に繰返さない。
図1は、本発明の実施の形態に従う給湯装置の概略構成図である。図1を参照して、給湯装置100は、加熱部20と、加熱部20を格納する燃焼缶体(以下、単に「缶体」とも称する)10と、送風ファン40と、入水管50と、バイパス管60と、出湯管70と、コントローラ300とを含む。加熱部20は、水を加熱して湯にする部分であり、一次熱交換器11、二次熱交換器21およびガスバーナ30を含む。
入水管50および出湯管70の間にはバイパス管60が配置される。入水管50には、バイパス管60への分流を制御するための分配弁80が介挿接続される。さらに、入水管50には、温度センサ110および流量センサ150が配置される。温度センサ110は、入水温度Twを検出する。入水管50には、水道水等が給水される。分配弁80の開度に応じて、給水量の一部が入水管50からバイパス管60へ分流される。全体給水量に対する分流の割合は、分配弁80の開度に応じて制御される。
入水管50の水は、まず二次熱交換器21によって予熱された後、一次熱交換器11において主加熱される。一次熱交換器11および二次熱交換器21によって所定温度まで加熱された湯は、出湯管70から出湯される。
出湯管70は、合流点75においてバイパス管60と接続される。したがって、給湯装置100からは、缶体10から出力された高温湯と、バイパス管60からの水を混合した適温の湯が、台所および浴室等の給湯栓190並びに、図示しない風呂への注湯回路などの所定の給湯箇所に供給される。
出湯管70には、流量調整弁90および温度センサ120,130が設けられる。温度センサ120は、出湯管70のバイパス管60との合流点75よりも上流側(缶体側)に配置されて、缶体10からの出力湯温(以下、缶体温度)を検出する。温度センサ130は、合流点75よりも下流側(出湯側)に設けられて、バイパス管60からの水が混合された後の出湯温度Thを検出する。流量調整弁90は、出湯流量を制御するために設けられる。
缶体10において、ガスバーナ30から送出された燃料ガスは、送風ファン40からの燃焼用空気と混合される。図示しない点火装置によって混合気が着火されることにより、燃料ガスが燃焼されて火炎が生じる。ガスバーナ30からの火炎によって生じる燃焼熱は、缶体10内で一次熱交換器11および二次熱交換器21へ与えられる。
一次熱交換器11は、ガスバーナ30による燃焼ガスの顕熱(燃焼熱)により入水を熱交換によって加熱する。二次熱交換器21は、ガスバーナ30からの燃焼排ガスの潜熱によって通流された水を熱交換によって加熱する。缶体10の燃焼ガスの流れ方向下流側には熱交換後の燃焼排ガスを排出処理するための排気経路15が設けられる。このように、缶体10では、ガスバーナ30での燃焼による発生熱量により、一次熱交換器11および二次熱交換器21で、入水管50から供給された水を加熱する。
ガスバーナ30へのガス供給管31には、元ガス電磁弁32、ガス比例弁33および、能力切換弁35a〜35cが配置される。元ガス電磁弁32は、ガスバーナ30への燃料ガスの供給をオンオフする機能を有する。ガス供給管31のガス流量は、ガス比例弁33の開度に応じて制御される。
コントローラ300は、各センサからの出力信号(検出値)およびユーザ操作を受けて、給湯装置100の全体動作を制御するために、各機器への制御指令を発生する。ユーザ操作には、給湯装置100の運転オン/オフ指令および設定湯温(Tr*)指令が含まれる。制御指令には、各弁の開閉および開度指令、送風ファン40への電気的入力指令(ファン駆動電圧指令)が含まれる。
給湯装置100では、合流点75よりも下流側(出湯側)に配置された流量調整弁90からは、缶体10からの加熱水(温度Tw+ΔT)と、バイパス管60からの非加熱水(温度Tw)とを混合した湯が出力される。
コントローラ300は、流量調整弁90の開度を制御することによって、流量Q(缶体流量)および出湯管70からの出湯流量を制御することができる。なお、図1に示された給湯装置において、流量Qは、給水圧力と流量調整弁90の開度によって決まる。
流量センサ150は、分配弁80よりも下流側(缶体側)に配置される。したがって、流量センサ150によって検出される流量Qは、缶体10に格納された加熱部20を通過する流量(缶体流量)を示している。流量センサ150は、代表的には、羽根車式流量センサによって構成される。
コントローラ300は、給湯装置100の運転指令がオンされると、流量センサ150によって検出される流量Qが最低作動流量(MOQ)を超えるのに応じて、缶体10での燃焼動作をオンする。燃焼動作がオンされると、元ガス電磁弁32が開放されて、ガスバーナ30への燃料ガスの供給が開始される。
図1から理解されるように、流量調整弁90は、入水管50から缶体10を通過して出湯管70へ至る通水路に介挿接続される。そして、流量センサ150は、当該通水路における「水」の流量を検出することができる。なお、図1のように、バイパス管60が設けられた構成によっても、分配弁80の開度によって決まる分流比を用いて、流量センサ150による検出値によって、流量調整弁90からの出力流量を検出することができる。
上記のように燃焼動作のオンオフ制御に使用されている流量センサ150の検出値は、通水が停止した後も羽根車が慣性によってしばらく回転し続けるので、出力信号に対して実流量の低下の反映が遅れることがある。
図2は、通水停止時における流量センサ150の検出値と実流量との差を示した波形図である。図2を参照して、時刻t1においてユーザが給湯停止操作をすることに伴って、入水管50の流量(真値)は9(L/min)からゼロに低下している。しかし、羽根車の慣性によって、流量センサ150の測定値は、時刻t2に至るまで最低作動流量MOQに到達しない。したがって時刻t1〜t2の間は、加熱部20におけるガスバーナ30の消火が遅れてしまう。この消火遅れの期間は、たとえば1(sec)に達する。
この消火遅れがそのまま加熱部20で発生すると仮定した検討例について、給湯再開時における消火遅れの影響を説明する。図3は、検討例における給湯再開時の缶体内の加熱部における温度上昇について説明するための波形図である。
図3を参照して、流量Qtは缶体の流量を示し、温度T1は、温度センサ120(缶体サーミスタ)で検出された温度を示し、温度T2は、出湯管に設けられた温度センサ130で検出された温度を示し、温度T3は、給湯装置100から5(m)先の給湯栓190において検出された温度を示す。
時刻t10以前において、給湯装置は給湯停止操作され、流量Qtは一旦ゼロとなっている。このときに消火遅れが発生していると、消火遅れによって加熱部20で滞留した状態で加熱され高温の湯となる。時刻t11において給湯再開動作がされた場合、加熱部20に滞留した高温の湯が、時刻t12のピークP1に示すように缶体10から温度センサ120の設置部分まで出てくる。その後バイパス管60からの冷水が混合されてピークの温度は時刻t13において低下しているが、給湯栓190の部分では時刻t14のピークP2に示すように目標温度を超える部分が残る。
以上のような給湯再開時の給湯温度の不安定を無くすため、本実施の形態では、コントローラ300は流量センサ150を補正して使用する。以下、コントローラ300の構成と動作について説明する。
コントローラ300は、流量センサ150の出力信号を受けて流量センサの応答遅れを補正した推定流量値を算出し、推定流量値に基づいて加熱部を加熱状態から加熱停止状態に切換える制御を行なう。
本実施の形態に係る給湯装置によれば、流量センサ150の応答遅れを補正した推定流量値に基づいて、加熱部20への給水が停止されたことを判定し、加熱部20を加熱停止状態とする。このため、ユーザが給湯停止操作を行なうと速やかに加熱部20における水の加熱が停止されるので、加熱部20に滞留している湯の温度が急上昇することが避けられる。したがって、給湯再開時に湯温が設定温度よりも上昇しすぎることを緩和することができる。
図4は、コントローラ300の構成を示すブロック図である。なお、コントローラ300は、CPU、記憶装置、入出力バッファ等を含み(いずれも図示せず)、各種センサおよび機器からの信号を受けるとともに、加熱部20の制御を行なう。この制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)により処理することも可能である。
図4を参照して、コントローラ300は、流量測定値算出部302と、推定流量値算出部304と、加熱停止判定部306と、加熱開始判定部308と、加熱指令発生部310とを含む。
流量測定値算出部302は、流量センサ150の出力Sqを受けてマップ等を参照したり、近似式を用いたりして、羽根車の回転数を流量の測定値y[n]に変換する。なお、流量測定値算出部302は、周期的に変換を行なっており、nは、測定回数が増えると増加する整数である。たとえば、測定値y[n]は今回の測定値であり、前回の測定値はy[n−1]、次回の測定値はy[n+1]である。
推定流量値算出部304は、測定値y[n]から推定流量値x[n]を算出する処理を実行する。
推定流量値算出部304は、所定周期ごとに流量センサ150の出力信号から測定値y[n]を取得し、今回取得された測定値y[n]と前回取得された測定値y[n−1]との偏差(y[n]−y[n−1])を算出する。そして推定流量値算出部304は、偏差に係数βを乗じた値を今回取得された測定値y[n]に対して加算して、推定流量値x[n]を算出する。上記の係数βは、測定値y[n]の実流量に対する応答遅れの時定数Tと、所定周期Tとの比率に基づいて予め定められた値である。これらの関係を数式で表すと以下のとおりである。なお、この数式の導出については、後述する。
x[n]=y[n]+β・(y[n]−y[n−1])
加熱停止判定部306は、推定流量値x[n]に基づいて、加熱部を加熱状態から加熱停止状態へと移行させる判定を行なう。一方、加熱開始判定部308は、測定値y[n]に基づいて、加熱部を加熱停止状態から加熱状態へと移行させる判定を行なう。加熱指令発生部310は、加熱停止判定部306によって加熱停止の判定が行われたときには、加熱部20の加熱を停止する指令を出力し、加熱開始判定部308によって加熱開始の判定が行なわれたときには、加熱部20の加熱を開始する指令を出力する。
ユーザは、給湯開始操作をした場合に設定温度よりも高い温度の湯が最初に給湯栓から出てくることには慣れていない。そこで、給湯停止操作時には、推定流量値算出部304によって流量センサ150の応答遅れを補正し、加熱停止判定部306によって加熱部20に滞留した湯の温度の過剰な上昇を抑える。
しかし、応答遅れを補正する処理は流量推定値x[n]が振動して不安定になることがある。一方で、ユーザは、給湯開始操作をした場合に設定温度よりも低い温度の湯が最初に給湯栓から出てくることには慣れている。そこで、給湯再開操作時には流量センサ150の応答遅れは許容されることに鑑みて、加熱開始判定部308は、そのまま測定値y[n]を使用することによって安定した加熱開始判定を行なう。以下、加熱停止判定処理と加熱開始判定処理の詳細について順に説明する。
[加熱停止処理の説明]
図5は、コントローラ300が行なう流量推定処理および加熱停止処理の内容を説明するフローチャートである。このフローチャートの処理は一定時間ごとにメインルーチンから呼び出されて実行される。
図5を参照して、コントローラ300は、ステップS1において流量センサ150からの測定値y[n]を取得する。続いて、コントローラ300は、ステップS2において前回取得した測定値y[n−1]と今回取得した測定値y[n]とを比較して、流量が減少しているか否かを判断する。
ステップS2において、y[n]≦y[n−1]が成立した場合(S2でYES)、ステップS3に処理が進められ流量x[n]を推定する処理が実行される一方で、y[n]≦y[n−1]が成立しない場合(S2でNO)、ステップS7に処理が進められ、制御はメインルーチンに戻される。
ステップS3では、コントローラ300は測定値y[n]から流量x[n]を推定する。このときx[n]=y[n]+β・(y[n]−y[n−1])という数式に基づいて流量x[n]を算出するが、この数式の導出について説明する。
時刻tにおける実流量をx(t)とし、閉栓時をt=0とする。このとき閉栓時の流量変化は、次式(1)、(2)で表されるステップ入力となる。
Figure 0006524487
ステップ入力に対する流量センサ150の回転速度から計算される流量y(t)の応答を一時遅れと仮定し、時定数をTとする。流量y(t)は次式(3)で表される。
Figure 0006524487
流量y(t)のサンプリング周期をTsとし、離散系y[n−1]、y[n]を上式(3)によって表すと、次式(4)、(5)が得られ、これらから関係式(6)が得られる。
Figure 0006524487
ここで、時刻[n]において推定されるXをX[n]と表示すると、次式(7)が得られる。
Figure 0006524487
次式(9)で表されるαを用いてさらに式(7)を変形すると次式(8)が得られる。
Figure 0006524487
さらに、αは、e-Ts/TをX=0の回りで展開した一次/一次のPade近似を適用することにより、以下の式(10)となる(式(8)は上に同じ)。
Figure 0006524487
ここでβ(=α+1)を用いて式変形を行なうと、次式(11)(12)が得られる。
Figure 0006524487
式(11)をβで括ると、式(13)が得られる。
Figure 0006524487
以上で、ステップS3において使用される数式が導出された。この式によって、サンプリング周期Ts毎に得られる今回の出力y[n]と、1サンプリング前の前回の出力y[n−1]から入力x[n]を推定できる。推定した入力x[n]は、ステップS4,S5において最低作動流量(MOQ)と比較され、加熱停止の判定に使用される。
具体的には、ステップS4において今回推定した入力x[n]がMOQよりも低下したと判断され(S4でYES)、かつステップS5において過去連続してa回入力x[n]がMOQよりも小であったと判定された場合(S5でYES)に、ステップS6において加熱停止が指示され、その後ステップS7に処理が進められる。
ステップS4でx[n]がまだMOQより低くなっていない場合(S4でNO)、または、ステップS5において、x[n]<MOQが過去連続してa回成立していなかった場合(S5でNO)には、ステップS6の処理は実行されずに、ステップS7に処理が進められる。
続いて、本実施の形態の給湯装置において、流量センサ150の応答遅れを補正した推定値を用いることによる消火遅れの短縮時間について説明する。図6は、缶体流量の応答遅れを補正し、閉栓時の消火遅れを短縮した例を説明するための波形図である。流量センサ150は、図1に示すように缶体10の加熱部20を通過する流量を測定している。このため、図6の縦軸は缶体流量が示され、横軸には時間が示されている。この例では、缶体流量9(L/min)、入水圧200(kPa)、時定数T=0.4、検出回数a=3とした場合の結果が示されている。
時刻t1において、給湯停止操作によって流量の真値は9(L/min)から0(L/min)にステップ状に変化している。流量センサの測定値y[n]とMOQを比較して加熱停止判断を行なった場合(比較例)では、時刻t2で消火が行なわれる。これに対して、応答遅れを補正した推定値x[n]とMOQを比較して加熱停止判断を行なった場合(実施の形態)では、時刻t2Aで消火が行なわれる。この場合消火遅れの時間は約1.0秒から約0.5秒に縮まった。
なお、給湯装置100は、加熱部に水を供給する入水管50と、加熱部から湯を出水する出湯管70と、入水管50から分岐し出湯管70に合流するバイパス管60とをさらに備えている。流量センサ150は、加熱部20を通過する流量(缶体流量)を計測するために入水管50に設けられているが、バイパス管60を通過する流量を計測するものであってもよく、缶体流量とバイパス管60の流量の合計流量(トータル流量)を計測するものであってもよい。トータル流量を検出するためには、流量センサ150の位置を合流点75から下流に設けるように移動すればよい。
図7は、トータル流量の応答遅れを補正し、閉栓時の消火遅れを短縮した例を説明するための波形図である。図7に示すように、時刻t20〜t21において、トータル流量14(L/min)が流れており、時刻t21において、給湯停止操作によって流量の真値は14(L/min)から0(L/min)にステップ状に変化している。流量センサの測定値y[n]とMOQを比較して加熱停止判断を行なった場合(比較例)では、時刻t22で消火が行なわれる。これに対して、応答遅れを補正した推定値x[n]とMOQを比較して加熱停止判断を行なった場合(実施の形態)では、時刻t22Aで消火が行なわれる。図7の場合も図6の場合と同様に、消火遅れの時間は約1.0秒から約0.5秒に縮まった。
図7に示したように、加熱部20の加熱制御に用いる流量センサ150は、加熱部20を通過する水の流量を直接検出するものでなくても良い。加熱部20を通過する水の流量の増減に伴って、水の流量が増減する通水路(入水管50、バイパス管60、給湯栓190等)に設けた流量センサであってもよい。したがって、流量センサの配置の自由度が増し、給湯装置の設計の自由度が増す。
以上説明したように、本実施の形態の給湯装置100は、流量センサ150の応答遅れを補正した推定値を加熱停止判定に用いることによって、消火遅れ時間を短縮することができる。これによって、給湯再開時の温度の安定性が増す。
[加熱再開処理の説明]
図6、図7の応答遅れを補正する処理は、消火遅れを短縮する点では好ましいが、流量推定値x[n]が振動して不安定になることがある。したがって、図4の加熱停止判定部306が誤って加熱を停止させてしまう可能性もある。この場合には突然に湯の温度が低下することになりユーザに不便をかけてしまう。
したがって、本実施の形態では、流量推定値x[n]によって加熱停止された場合は、所定時間内は誤判定の場合に備えて、加熱再開時間を短縮する。具体的には、流量センサ150の測定値y[n]が加熱開始判定値(MOQ)を超えたら、直ちに加熱部20における加熱を再開させ、湯温の低下をなるべく少なくする。一方、流量推定値x[n]によって加熱停止された場合であっても、所定時間経過しても流量センサ150の測定値y[n]が加熱開始判定値を超えないときには、誤判定によって加熱が停止された可能性は低くなる。したがって、この場合には加熱開始の判定を慎重に行なう(たとえば、a回連続して測定値y[n]が加熱開始判定値を超えないと開始しない)ことによって加熱部の誤動作を避けている。
このような処理のために図4に示したコントローラ300は以下の処理を行なう。コントローラ300の加熱開始判定部308は、加熱停止判定部306によって加熱部の加熱が停止してから所定時間(T秒)以内は、測定値y[n]がj回加熱開始判定値を超えた場合に加熱部20を加熱状態に移行させる。加熱開始判定部308は、加熱停止判定部306によって加熱部20の加熱が停止してから所定時間(T秒)より後は、測定値y[n]がk回連続して加熱開始判定値を超えた場合に加熱部を加熱状態に移行させる。なお、上記において、jは、1以上の自然数であり、kは、jよりも大きい自然数である。
以下、j=1、k=a+1である場合の例についてフローチャートを用いて説明するがk、jはこの値には限定されず、適宜の数値に変更することができる。図8は、コントローラ300が行なう加熱開始処理の内容を説明するフローチャートである。このフローチャートの処理は一定時間ごとにメインルーチンから呼び出されて実行される。
図8を参照して、コントローラ300は、ステップS11において流量推定値x[n]がMOQよりも低下し、加熱停止してからT(秒)以内であるか否かを判断する。もし、T(秒)以内であった時には(S11でYES)、加熱停止が誤りだった場合に備えてステップS13に処理が進められる。
ステップS13では、コントローラ300は、流量センサ150からの測定値y[n]が、MOQを超えたか否かを判断する。ステップS13において、y[n]>MOQが成立した場合(S13でYES)、ステップS14に処理が進められ、直ちに加熱部20による加熱が再開される。一方、ステップS13において、y[n]>MOQが成立しなければ(S13でNO)、ステップS14の処理は行なわれずに、ステップS15において、制御はメインルーチンに戻される。
一方、ステップS11において、T(秒)経過していた場合には(S11でNO)、加熱停止が誤りだった可能性は低いので、加熱再開を慎重に行なうように、ステップS12に処理が進められる。ステップS12では、測定値y[n]が所定回数(a+1回)連続してMOQを超えたか否かを判断する。ステップS12において、y[n]>MOQが所定回数連続して成立した場合(S12でYES)、ステップS14に処理が進められ、加熱部20による加熱が開始される。一方、ステップS12において、y[n]>MOQが所定回数連続して成立しない場合(S12でNO)、ステップS14の処理は行なわれずに、ステップS15において、制御はメインルーチンに戻される。
このように、処理を行なうことによって、流量推定値x[n]を用いて加熱停止判定を行なった場合に、仮に誤って加熱が停止された場合であっても、直ちに加熱が再開されるので、湯温の低下を小さく抑えることができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
10 缶体、11 一次熱交換器、15 排気経路、20 加熱部、21 二次熱交換器、30 ガスバーナ、31 ガス供給管、32 元ガス電磁弁、33 ガス比例弁、35a〜35c 能力切換弁、40 送風ファン、50 入水管、60 バイパス管、70 出湯管、75 合流点、80 分配弁、90 流量調整弁、100 給湯装置、110,120,130 温度センサ、150 流量センサ、190 給湯栓、300 コントローラ、302 流量測定値算出部、304 推定流量値算出部、306 加熱停止判定部、308 加熱開始判定部、310 加熱指令発生部。

Claims (4)

  1. 水を加熱する加熱部と、
    前記加熱部を通過する水量の変化に応じて流量が変化する通水路の流量を検出するための流量センサと、
    前記流量センサの出力信号を受けて前記流量センサの応答遅れを補正した推定流量値を算出し、前記推定流量値に基づいて前記加熱部を加熱状態から加熱停止状態に切換える制御を行なう制御装置とを備え、
    前記制御装置は、
    所定周期ごとに前記流量センサの出力信号から測定値を取得し、今回取得された測定値と前回取得された測定値との偏差に係数を乗じた値を今回取得された測定値に対して加算して前記推定流量値を算出し、
    前記係数は、前記測定値の実流量に対する応答遅れの時定数と、前記所定周期との比率に基づいて予め定められた値である、給湯装置。
  2. 前記制御装置は、
    前記推定流量値に基づいて、前記加熱部を加熱状態から加熱停止状態へと移行させる判定を行なう加熱停止判定部と、
    前記測定値に基づいて、前記加熱部を加熱停止状態から加熱状態へと移行させる判定を行なう加熱開始判定部とを含む、請求項1に記載の給湯装置。
  3. jを1以上の自然数とし、kをjよりも大きい自然数とすると、
    前記加熱開始判定部は、前記加熱停止判定部によって前記加熱部の加熱が停止してから所定時間以内は、前記測定値がj回加熱開始判定値を超えた場合に前記加熱部を加熱状態に移行させ、
    前記加熱開始判定部は、前記加熱停止判定部によって前記加熱部の加熱が停止してから前記所定時間より後は、前記測定値がk回連続して加熱開始判定値を超えた場合に前記加熱部を加熱状態に移行させる、請求項2に記載の給湯装置。
  4. 前記加熱部に水を供給する入水管と、
    前記加熱部から湯を出水する出湯管と、
    前記入水管から分岐し前記出湯管に合流するバイパス通路とをさらに備え、
    前記流量センサは、前記加熱部を通過する第1の流量と、前記バイパス通路を通過する第2の流量と、前記第1の流量と前記第2の流量の合計流量とのいずれかを検出する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の給湯装置。
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