以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は原則的に繰返さないものとする。
図1は、本発明の実施の形態に従う流量制御装置が適用された給湯装置の概略構成図である。
図1を参照して、給湯装置100は、熱交換器10および燃焼バーナ30等が格納された燃焼缶体(以下、単に「缶体」とも称する)5と、送風ファン40と、入水管50と、缶体配管55と、バイパス管60と、出湯管70と、バイパス弁80と、コントローラ300とを備える。
入水管50は、バイパス弁80を経由して、缶体配管55およびバイパス管60と接続される。入水管50には、水道水等の低温水が供給される。入水管50の低温水は、バイパス弁80を経由して、缶体配管55およびバイパス管60へ分配される。
缶体配管55は、熱交換器10に接続される。熱交換器10は、一次熱交換器11および二次熱交換器12を有する。入水管50から缶体配管55へ導入された低温水は、燃焼バーナ30の発生熱量により、熱交換器10を通過することによって加熱される。
燃焼バーナ30へのガス供給管31には、元ガス電磁弁32、ガス比例弁33および、能力切換弁35a〜35cが配置される。元ガス電磁弁32は、燃焼バーナ30への燃料ガスの供給をオンオフする機能を有する。ガス供給管31のガス流量は、ガス比例弁33の開度に応じて制御される。
能力切換弁35a〜35cは、複数の燃焼バーナ30のうちの、燃料ガスの供給対象となるバーナ本数を切換えるために開閉制御される。缶体5での発生熱量は、バーナ本数およびガス流量の組み合わせによって決まる、燃焼バーナ30全体からの供給ガス量に比例する。したがって、要求発生熱量に対応させて、能力切換弁35a〜35cの開閉パターン(バーナ本数)およびガス比例弁33の開度(ガス流量)の組み合わせを決定する設定マップを予め作成することができる。
缶体5において、燃焼バーナ30から出力された燃料ガスは、送風ファン40からの燃焼用空気と混合される。送風ファン40による送風量は、燃焼バーナ30全体からの供給ガス量との空燃比が所定値(たとえば、理想空燃比)となるように制御される。送風ファン40の送風量は、ファン回転数と比例するので、送風ファン40の回転数は、供給ガス量の変化に応じて設定される目標回転数に従って制御される。送風ファン40には、ファン回転数を検出するための回転数センサ45が設けられる。
燃料ガスと燃焼用空気との混合気が、図示しない点火装置によって着火されることにより、燃料ガスが燃焼されて火炎が生じる。燃焼バーナ30からの火炎によって生じる燃焼熱は、缶体5内で一次熱交換器11および二次熱交換器12へ与えられる。
二次熱交換器12は、燃焼バーナ30からの燃焼排ガスの潜熱によって通流された水を熱交換によって予熱する。一次熱交換器11は、二次熱交換器12によって予熱された低温水を、燃焼バーナ30による燃焼ガスの顕熱(燃焼熱)による熱交換によってさらに加熱する。これにより、熱交換器10によって加熱された高温水が、出湯管70へ出力される。缶体5の燃焼ガスの流れ方向下流側には熱交換後の燃焼排ガスを排出処理するための排気経路15が設けられる。
バイパス管60および出湯管70は、合流点75において接続される。したがって、給湯装置100からは、缶体5から出力された高温水と、バイパス管60からの低温水を混合によって調温された適温の温水が、台所や浴室等の給湯栓190や、図示しない風呂への注湯回路などの所定の給湯箇所に供給される。
このように、給湯装置100は、熱交換器10を通過した高温水および熱交換器10をバイパスした低温水を混合する、いわゆるバイパスミキシング方式の温水調温装置を含んで構成されている。
バイパス弁80は、コントローラ300からの制御指令に従って弁開度が制御されることにより、缶体配管55の流量およびバイパス管60の流量の比率を制御する。たとえば、バイパス弁80による流量比率は、特許文献1と同様に、図示しない弁体を開閉駆動するステッピングモータ(図示せず)のステップ数によって制御することができる。
温度センサ110は、缶体配管55に配置される。缶体配管55には、流量センサ150がさらに配置される。流量センサ150は、代表的には、羽根車式流量センサによって構成することができる。
出湯管70には、温度センサ120,130が設けられる。温度センサ120は、出湯管70およびバイパス管60の合流点75よりも上流側(熱交換器10側)に配置される。温度センサ130は、合流点75よりも下流側(出湯側)に配置される。さらに、出湯管70には、出湯流量を制御するための流量調整弁90が設けられる。流量調整弁90の弁開度は、コントローラ300によって制御される。
たとえば、燃焼開始直後の加熱能力が不足する期間中において、出湯流量を絞るように流量調整弁90の開度が制御されることによって、出湯温度の低下を防止することができる。また、燃焼開始直後以外でも、最大号数で運転する場合や、最大許容流量で運転する場合等において、目標温度に従って出湯するために、流量調整弁90によって出湯流量を絞る制御を実行することができる。
コントローラ300は、たとえば、マイクロコンピュータによって構成することができる。コントローラ300は、各センサによる検出値およびユーザ操作を受けて、給湯装置100の全体動作を制御するために、各機器への制御指令を発生する。ユーザ操作には、給湯装置100の運転オン/オフ指令および、出湯温度の目標値に相当する目標温度(Tr*)の指令が含まれる。
コントローラ300は、給湯装置100の運転指令がオンされると、流量センサ150によって検出される流量Qが最低作動流量(MOQ)を超えるのに応じて、缶体5での燃焼動作をオンする。燃焼動作がオンされると、元ガス電磁弁32が開放されて、燃焼バーナ30への燃料ガスの供給が開始される。これに応じて、本実施の形態に従う温水調温装置の運転が開始される。温水調温装置の運転時において、コントローラ300は、目標温度Tr*に従って出湯温度を制御する。
反対に、給湯装置100の運転指令がオフされたとき、または、運転指令のオン中に流量Qが最低作動流量(MOQ)よりも低下したときには、燃焼バーナ30への燃料ガスの供給が停止される。これに応じて、本実施の形態に従う温水調温装置の運転も終了される。
図2は、給湯装置100の出湯温度を制御するための本実施の形態に従う温水調温装置の構成を説明するためのブロック図である。
図2を参照して、入水管50からの低温水の一部は、バイパス弁80を経由して、缶体配管55へ導入される。この一部の低温水は、熱交換器10の通過によって加熱されて高温水となった後、出湯管70へ出力される。一方で、バイパス弁80を経由してバイパス管60へ導入された低温水は、熱交換器10をバイパスするので、加熱されることなく、低温水のまま合流点75へ導入される。そして、高温水および低温水が合流点75で混合された温水が、給湯装置100から出力される。すなわち、給湯装置100の出湯温度は、高温水および低温水によって制御することができる。
図2に示された本実施の形態に従う温水調温装置において、熱交換器10は「加熱要素」の一実施例に対応し、缶体配管55と出湯管70のうちの合流点75よりも上流側(熱交換器10側)の部分とによって、「加熱流路」の一実施例が構成される。さらに、バイパス管60は「バイパス流路」の一実施例に対応する。
温度センサ110は、低温水の温度(以下、入水温度とも称する)を検出するために設けられる。温度センサ110は、図1に示されたように缶体配管55に設けることが可能であるが、入水管50またはバイパス管60に設けられてもよい。温度センサ120は、高温水の温度(以下、缶体温度とも称する)を検出するために、出湯管70のうちの合流点75よりも上流側(熱交換器10側)の部分に配置される。さらに、温度センサ130は、高温水および低温水の混合後の出湯温度を検出するために、出湯管70のうちの合流点75よりも下流側の部分に配置される。
温度センサ110によって検出された入水温度Tw、温度センサ120によって検出された缶体温度Tbおよび、温度センサ130によって検出された出湯温度Thは、コントローラ300へ伝送される。
図1および2に示された構成において、温度センサ110は「第1の温度検出器」に対応し、温度センサ120は「第2の温度検出器」に対応し、温度センサ130は「第3の温度検出器」に対応する。また、入水温度Tw、缶体温度Tbおよび出湯温度Thは、それぞれ、「第1の検出温度」、「第2の検出温度」および「第3の検出温度」に相当する。
コントローラ300は、出湯温度Thの目標値である目標温度Tr*と、温度センサ110〜130による検出温度(Th,Tw,Tb)に基づいて、高温水および低温水の流量比率を制御するためのバイパス弁80のステップ数Xを設定する。すなわち、バイパス弁のステップ数は「操作量」に相当する。
バイパス弁80は、コントローラ300から指令されたステップ数Xに従った弁開度の制御により、入水管50から缶体配管55への缶体流量Q1(すなわち、高温水流量)および、入水管50からバイパス管60へのバイパス流量Q2(すなわち、低温水流量)の比率を制御する。以下では、缶体流量Q1およびバイパス流量Q2の比を用いて、高温水および低温水の流量比率kを下記の式(1)に従って定義する。
k=Q2/Q1 …(1)
したがって、流量比率kは、コントローラ300によって設定された、バイパス弁80のステップ数Xによって制御することができる。すなわち、バイパス弁80は「流量比率制御機構」の一実施例に対応する。
このように、コントローラ300は、バイパス弁80によって高温水および低温水の流量比率を制御することによって、出湯温度Thを目標温度Tr*に従って制御することができる。
なお、図2に示されたミキシング方式の温水調温装置では、低温水から出湯温度への温度上昇に係る熱量と、高温水から出湯温度への温度低下に係る熱量とが均衡する。したがって、缶体流量Q1、バイパス流量Q2、缶体温度Tb、入水温度Twおよび、出湯温度Thの間には、下記の式(2)の関係が成立する。
Q2・(Th−Tw)=Q1・(Tb−Th) …(2)
式(2)から、式(1)に示した流量比率kは、缶体温度Tb、入水温度Twおよび、出湯温度Thによって、式(3)で示すことができる。
k=Q2/Q1=(Tb−Th)/(Th−Tw) …(3)
図3は、コントローラ300による給湯装置100の出湯温度制御を説明する機能ブロック図である。
図3を参照して、コントローラ300は、流量比率制御部310と、缶体温度制御部320とを有する。たとえば、流量比率制御部310および缶体温度制御部320の各機能は、コントローラ300が予め格納されたプログラムを実行するソフトウェア処理によって実現することができる。あるいは、専用の電子回路を用いてハードウェア処理を用いて、流量比率制御部310および缶体温度制御部320の各機能の一部または全部を実現することも可能である。
流量比率制御部310は、図2でも説明したように、目標温度Tr*と、温度センサ110〜130による検出温度(Tb,Th,Tw)とに基づいて、出湯温度Thを目標温度Tr*に制御するためのバイパス弁80のステップ数Xを設定する。ステップ数Xに従って流量比率kが調整されることによって、出湯温度Thを目標温度Tr*に制御することが可能である。
さらに、流量比率制御部310によるバイパス弁80の制御に、缶体温度制御部320による缶体温度Tbの一定制御を組み合わせることができる。缶体温度制御部320は、熱交換器10の出力温度(すなわち、缶体温度Tb)を所定温度に維持するように燃焼バーナ30の発生熱量を制御するための、燃焼バーナ30への制御指令(バーナ指令)を生成する。
具体的には、缶体温度制御部320は、流量センサ150によって検出された缶体流量Q1と、温度センサ110によって検出された入水温度Twと、温度センサ120によって検出された缶体温度Tbと、缶体温度Tbの目標温度Tb*とに基づいて、缶体温度Tbを目標温度Tb*に維持するためのバーナ指令を生成する。バーナ指令は、燃焼バーナ30による発生熱量を制御するための、ガス比例弁33の開度および能力切換弁35a〜35cの開閉の制御指令である。
熱交換器10での昇温量ΔTは、ΔT=Tb*−Twで示される。したがって、熱交換器10において上記昇温量ΔTを得るための単位時間当たりの熱量は、Q1・ΔTとなる。したがって、熱交換器10での熱効率を考慮して、Q1・ΔTに従って、燃焼バーナ30に対する要求発生熱量P*を求めることができる。あるいは、缶体温度Tbの偏差(Tb*−Tb)をさらに反映して、要求発生熱量P*を算出することも可能である。
缶体温度制御部320は、算出された要求発生熱量P*に応じて、燃焼バーナ30全体からの供給ガス量を設定する。たとえば、コントローラ300には、各供給ガス量を実現するためのバーナ本数およびガス流量の組合せを予めテーブル化されている。缶体温度制御部320は、上述のように算出された要求発生熱量P*に対応するバーナ本数およびガス流量が実現されるように、ガス比例弁33の開度および能力切換弁35a〜35cの開閉を制御するバーナ指令を生成することができる。
缶体温度制御部320によって缶体温度Tbの変化を抑制することにより(Tb=Tb*)、Th=Tr*を実現するための流量比率の変動要因を少なくすることができる。これにより、流量比率制御部310によるバイパス弁80を用いた出湯温度制御を安定化することができる。
以下では、流量比率制御部310による、流量比率の制御のためのバイパス弁80の制御について、さらに詳細に説明する。
図4は、バイパス弁80におけるステップ数Xと流量比率kとの対応関係を説明するグラフである。
図4を参照して、バイパス弁80では、ステップ数Xに従って弁開度が変化することに応じて、高温水および低温水の流量比率k(k=Q2/Q1)が変化する。図2の例では、バイパス弁80は、ステップ数Xの増加に応じて、流量比率kが低下(すなわち、バイパス流量Q2が低下)するように構成される。
バイパス弁80の開度特性は、ステップ数Xおよび流量比率kの対応関係で示される。本実施の形態に従う温水調温装置では、バイパス弁80について、ステップ数Xおよび流量比率kの間の基準となる対応関係が、基準特性線400として予め定められる。たとえば、事前の実機試験結果等に基づいて、基準特性線400を予め求めることが可能である。
さらに、基準特性線400に従って、ステップ数Xから流量比率kを算出するための関数η(X)と、反対に、流量比率kからステップ数Xを算出するための逆関数η-1(k)とを設定することができる。基準特性線400に従う関数η(X)および逆関数η-1(k)を用いて、ステップ数Xから流量比率kへの換算、および、流量比率kからステップ数Xへの換算の両方が可能となる。
たとえば、基準特性線400に複数の基準点(X,k)を設定し、基準点間を線形補完する演算によって、上述の関数η(X)および逆関数η-1(k)の演算を実行することができる。基準特性線400、ならびに、関数η(X)および逆関数η-1(k)を規定するデータは、コントローラ300内のメモリ(図示せず)に予め記憶することができる。
バイパス弁80のステップ数Xは、所望の流量比率を基準特性線400に従う逆関数η-1(k)によって換算することで設定される。したがって、出湯温度制御のために流量比率k=kaに調整したい場面では、基準特性線400に従って、ステップ数X=Xaに設定される。
しかしながら、バイパス弁80の実際の開度特性は、部品ばらつきによる個体差や稼働環境の差異等によって、基準特性線400とは異なるものとなる可能性がある。このような場合には、基準特性線400からの開度特性のずれによって、想定した流量比率を正確に得ることが困難になる。たとえば、図4に示すように、実際の開度特性線405が、基準特性線400と一致していない場合には、ステップ数Xaが設定されたときの実際の流量比率kはkaではなくkbとなる。この結果、流量比率誤差Δk(ここではΔk>0)が生じるため、出湯温度Thに目標温度Tr*からの誤差が生じることが懸念される。すなわち、Δk>0となることによってTh<Tr*となる虞がある。
特許文献1の温度制御では、上記の式(3)に従って、検出温度から実際の流量比率(ρ′)を求め、目標温度から求められた目標流量比率(ρ)に対する偏差(Δρ=ρ′−ρ)をPI演算するフィードバック制御によって、補正ステップ数を算出している。そして、目標流量比率から逆算された目標ステップ数と上記補正ステップ数との和によって、バイパス弁の実際のステップ数を設定している。
したがって、特許文献1による制御では、流量比率誤差Δkによって発生する偏差Δρに基づいて演算された補正ステップ数Xfbを用いて、基準特性線400に従う目標ステップ数(図4ではXaに相当)を補正する。これにより、実際の流量比率kがkaとなるような、ステップ数X=Xz(Xz=Xa+Xfb)に従ってバイパス弁80が制御されることになる。これにより、Th=Tr*に制御された状態を形成することができる。すなわち、特許文献1による制御は、基準特性線400に対する実際の開度特性の誤差について、図4の縦軸方向の誤差を補償するようにフィードバック制御が作用する。
一旦Th=Tr*に制御された状態から、流量変化等の動作状態の変化に伴う出湯温度の変化によって、Th=Tr*とするための流量比率が変化したケースを想定する。この場合には、Th=Tr*とするための目標流量比率が変化する。さらに、変更後の目標流量比率に基づき基準特性線400に従って目標ステップ数が変更される。そして、変更後の目標ステップ数と、現時点での補正ステップ数との和に従ってバイパス弁80のステップ数が変更されることになる。
特許文献1では、補正ステップ数は、ある動作状態での図4の縦軸方向の誤差を補償するように設定される。このため、動作状態が変化すると、Th=Tr*とするための補正ステップ数も変化する傾向にある。したがって、動作状態の変化毎に、再び出湯温度を目標温度に一致させる際の制御精度は、フィードバックゲイン(PゲインおよびIゲイン等)に左右される。
フィードバックゲインの設定に対しては、オーバーシュートまたはアンダーシュートの抑制と、整定速度の短縮とがトレードオフの関係となることが知られており、両者をバランスさせた最適なゲイン調整が必要となる。さらに、動作状態が異なると、最適なゲイン値も変化することが懸念される。しかしながら、動作状態の変化に応じて異なるゲイン値を設定すると、制御式の複雑化や調整の困難化が懸念される。
このように、特許文献1のような、バイパス弁80の開度特性の誤差を、検出温度から算出された流量比率のフィードバック制御によって補償する制御方式では、出湯温度の制御精度に改善の余地がある。
したがって、本実施の形態に従う温水調温装置では、バイパス弁80の開度特性の誤差を、等価的に学習することによって、バイパス弁80による出湯温度制御を実行する。
図5は、本実施の形態に従う温水調温装置におけるバイパス弁80のステップ数の補正処理を説明するための概念図である。
図5を参照して、バイパス弁80の実際の開度特性は、基準特性線400とは異なる、開度特性線420または425によって示されるものとする。開度特性線420では、同一の流量比率を実現するステップ数Xは、基準特性線400よりも小さくなる。反対に、開度特性線425では、同一の流量比率を実現するステップ数Xは、基準特性線400よりも大きくなる。
特許文献1にも記載されるように、現在のステップ数に対する実際の流量比率は、式(3)に従って、温度センサ110〜130による検出温度を用いて算出することができ、さらに、算出された流量比率については、逆関数η-1(k)によってステップ数Xに換算することができる。
ここで、実際の開度特性が開度特性線420に従う場合には、検出温度に基づく実際の流量比率がkaであるとき、現在のステップ数はX=X1となっている。したがって、流量比率kaを逆関数η-1(k)によって換算したステップ数Xaと現在のステップ数X1との差分(X1−Xa)を、開度特性誤差に起因するステップ偏差ΔXと定義する。開度特性線420の下では、ΔX<0である。
一方で、実際の開度特性が開度特性線425に従う場合には、検出温度に基づく実際の流量比率がkaであるとき、現在のステップ数はX=X2となっている。したがって、流量比率kaを換算したステップ数Xaと現在のステップ数X2とのステップ偏差ΔX=(X2−Xa)>0である。
本実施の形態に従う温水調温装置では、このようにステップ偏差ΔXに基づいて、目標ステップ数に対する補正ステップ数Xcを算出する。すなわち、開度特性線420を有するバイパス弁80では、ΔX<0に対応して、Xc<0に設定される。この結果、流量比率kaを得るためには、η-1(k)によって換算されたステップ数Xaと、補正ステップ数Xc(Xc<0)との和に従って、バイパス弁80のステップ数Xが算出される。これにより、開度特性線420でk=kaとなるステップ数X1に対応させて、ステップ数Xを設定することができる。
同様に、開度特性線425を有するバイパス弁80では、ΔX>0に対応して、Xc>0に設定される。この結果、流量比率kaを得るためには、ステップ数Xaと、補正ステップ数Xc(Xc>0)との和に従って、開度特性線425でk=kaとなるステップ数X2に対応させて、ステップ数Xを設定することができる。
このように本実施の形態に従う温水調温装置では、バイパス弁80による流量比率kの誤差をバイパス弁80の操作量(ステップ数)での偏差に換算することで、基準特性線400からのステップ数の誤差(図4での横軸方向の誤差)を直接補正するように、バイパス弁80が制御される。
図6は、本実施の形態に従う温水調温装置における流量比率制御の処理を説明するフローチャートである。図6に示されるフローチャートの処理は、コントローラ300によって周期的に実行することができる。この結果、図3に示された流量比率制御部310の機能が実現される。
図6を参照して、コントローラ300は、ステップS100により、目標温度Tr*、ならびに、温度センサ110〜130によって検出された、入水温度Tw、缶体温度Tbおよび出湯温度Thを読込む。
コントローラ300は、ステップS110により、下記の式(4)に従って、Th=Tr*とするための目標流量比率ktを算出する。
kt=Q2/Q1=(Tb−Tr*)/(Tr*−Tw) …(4)
式(4)は、式(3)において、Th=Tr*としたものである。流量比率k=ktであれば、高温水からの温度低下に係る熱量(単位時間当たり)であるQ1・(Tb−Th)と、低温水からの温度上昇に係る熱量(単位時間当たり)であるQ2・(Th−Tw)とが均衡することにより、Th=Tr*に制御することができる。
さらに、コントローラ300はステップS120により、ステップS110で算出された目標流量比率ktを、基準特性線400に従って目標ステップ数Xtに換算する。目標ステップ数Xtは、基準特性線400に従う逆関数η-1(k)において、k=ktとすることで算出できる。目標ステップ数Xtは「目標操作量」に対応する。
コントローラ300は、ステップS130により、温度センサ110〜130による検出温度を、式(3)に代入することによって、バイパス弁80での実際の流量比率(実績流量比率)kaを算出する。
さらに、コントローラ300は、ステップS140により、ステップS130で算出された実績流量比率kaを、基準特性線400に従ってステップ数Xaに換算する。ステップ数Xaについても、逆関数η-1(k)において、k=kaとすることで算出できる。ステップ数Xaは、「換算操作量」に相当する。
さらに、コントローラ300はステップS150により、バイパス弁80の現在のステップ数Xoと、ステップS140で求められたステップ数Xaとのステップ偏差ΔXを求める。
図7は、ステップ偏差ΔXの算出処理を説明するための概念図である。
図7を参照して、バイパス弁80では、現在のステップ数Xoにおいて、実際の流量比率k=kaとなっている(S130)。バイパス弁80の実際の開度特性が、基準特性線400からのずれを有する開度特性線400♯に従っているため、基準特性線400に従って流量比率kaを換算したステップ数Xaと、現在のステップ数Xoとの間にはステップ偏差ΔX(ΔX=Xo−Xa)が生じる。
再び図6を参照して、コントローラ300は、ステップS160により、このように算出されるステップ偏差ΔXを用いて、補正ステップ数Xcを算出する。たとえば、各制御周期で算出されるステップ偏差ΔXの推移を時間軸方向に平滑化することによって、補正ステップ数Xcを求めることができる。
たとえば、ステップS150で算出されたステップ偏差ΔXを、今回の制御周期でのΔX[i]とすると、各制御周期での補正ステップ数Xcを下記式(5)に従って設定することができる。
Xc[i+1]=L・Xc[i]+(1.0−L)・ΔX[i] …(5)
式(5)は、各制御周期でのステップ偏差ΔXの指数移動平均によって平滑化することで、補正ステップ数Xcを逐次更新するものである。すなわち、次回の制御周期で用いられる補正ステップ数Xc[i+1]は、今回の制御周期でのステップ偏差ΔX[i]を反映して、今回の制御周期での補正ステップ数Xc[i]を更新することによって得られる。
式(5)中のLは、0<L<1.0の範囲内で設定される、平滑化の速度を調整するためのパラメータ値であり、Lの値が大きいほど、ステップ偏差ΔXの変化を反映した補正ステップ数Xcの変化が緩やかとなる。反対に、Lの値が小さいほど、補正ステップ数Xcの変化は急峻になる。このように、指数移動平均に代表される平滑化処理を伴って、ステップ偏差ΔXから補正ステップ数Xcを算出することにより、補正ステップ数Xcの急変を抑制して、制御を安定化することができる。
コントローラ300は、ステップS170により、ステップS120により算出された目標ステップ数Xtと、前回の制御周期のステップS160で算出された補正ステップ数Xc[i]とを加算して、今回の制御周期でのステップ数X[i]を算出する。このように、各制御周期において、目標ステップ数Xtを、補正ステップ数Xcによって補正することで、バイパス弁80の操作量であるステップ数X[i]が設定される。すなわち、補正ステップ数Xcは「補正操作量」に相当する。
なお、次回の制御周期(i+1)における現在のステップ数Xo(ステップS150)は、今回の制御周期(i)で設定されたステップ数X[i]に相当する。すなわち、各制御周期におけるステップ偏差ΔXの演算(S150)では、過去(代表的には前回)の制御周期(S170)で設定されたステップ数Xを、現在のステップ数Xoとして用いることができる。
このように、本実施の形態に従う温水調温装置によれば、バイパス弁80による流量比率kの誤差をバイパス弁80の操作量(ステップ数)での偏差に換算して目標ステップ数からの補正量(補正ステップ数)が設定される。この結果、補正ステップ数によって、等価的に、基準特性線400からの実際の開度特性のずれ量(図4での横軸方向の誤差)を学習することができる。
したがって、流量変化等に伴う出湯温度の変化によってTh=Tr*とするための目標流量比率ktが変化した場合でも、基準特性線400に従う目標ステップ数Xtを、これまでの補正ステップ数Xcによって補正することにより、これまで学習した基準特性線400からのずれ量を反映して、バイパス弁80のステップ数Xを設定することができる。この結果、目標流量比率ktが変化した場合に、出湯温度Thを目標温度Tr*に再び一致させるまでの制御精度(整定時間およびオーバーまたはアンダーシュート)を改善することができる。
また、上述のように、本実施の形態に従う温水調温装置では、補正ステップ数Xcは、基準特性線400からの実際の開度特性のずれ量と等価であるため、動作状態が変化してもそれ程大きく変わらない。このため、補正ステップ数Xcは、給湯装置100の運転がオフされて、温水調温装置による給湯が停止された際にもクリアせずに維持することができる。すなわち、給湯終了時には、補正ステップ数Xcの最終値をコントローラ300内のメモリ(図示せず)に記憶することにより、当該記憶値を次回の給湯開始時における補正ステップ数Xcの初期値としてそのまま用いることができる。この結果、本実施の形態に従う温水調温装置によれば、給湯開始直後においても、バイパス弁80の開度特性の誤差を反映して流量比率を適切に制御できるため、出湯温度Thの制御精度を高めることができる。
以下に、本実施の形態に従う温水調温装置の変形例について説明する。
(平滑化処理の速度調整)
式(5)の指数移動平均のような平滑化処理においては、平滑化の速度、すなわち、ステップ偏差ΔXの変化を反映した補正ステップ数Xcの変化速度を、流量に応じて調整することが好ましい。
たとえば、図8に示されるように、温水調温装置での流量Qが小さいほど、式(5)でのLを大きく設定して、ステップ偏差ΔXの変化を反映した補正ステップ数Xcの変化を緩やかにすることが好ましい。反対に、流量Qが大きいほど、式(5)でのLを小さく設定して、補正ステップ数Xcの変化を急峻にすることができる。この結果、バイパス弁80での開度特性の誤差が、出湯温度Thに反映されて実績流量比率ka(ステップS130)に現れるまでの無駄時間の長短に対応して、補正ステップ数Xcを適切に設定することが可能となる。
図8の横軸に示された流量Qとしては、図1に示された流量センサ150によって検出された缶体流量Q1を用いることができる。ただし、バイパス流量Q2または、給水流量または出湯流量(Q1+Q2)を検出するように、流量センサ150は、入水管50、バイパス管60または、出湯管70(合流点75よりも下流側)に配置された場合にも、流量センサ150による流量検出値を用いて、図8に従って平滑化処理の速度を調整することが可能である。
(全体流量の算出)
たとえば、給湯装置100によって浴槽の自動湯張り運転を行う場合には、出湯流量の積算値を用いて、自動的に給湯を停止する機能が必要となる。この際に、図1の構成例のように、高温水の流量(缶体流量Q1)のみを検出するように流量センサ150が配置された構成では、温水調温装置が適用された給湯装置100からの出湯流量については、演算で求めることが必要となる。あるいは、低温水の流量(バイパス流量Q2)のみを検出するように流量センサ150が配置される場合も同様である。
図9は、図1の構成例において温水調温装置からの出湯流量を算出するための制御処理を説明するフローチャートである。
図9を参照して、コントローラ300は、ステップS200によって、流量センサ150の検出値から缶体流量Q1を読込む。
さらに、コントローラ300は、ステップS210により、缶体流量Q1を目標流量比率ktによって除算したバイパス流量の計算値(Q1/kt)と、缶体流量Q1との和に従って、全体の出湯流量Qt(Qt=Q1+Q2)を算出する。すなわち、出湯流量Qtは、缶体流量Q1(検出値)および目標流量比率ktを用いて、式(6)に従って算出することができる。
Qt=Q1+Q2=Q1+Q1・kt=Q1・(1+kt) …(6)
また、流量センサ150が低温水の流量(バイパス流量Q2)のみを検出するように配置されている場合には、下記の式(7)に従って、出湯流量Qtを算出することができる。
Qt=Q1+Q2=Q2/kt+Q2=Q2・(kt+1)/kt …(7)
本実施の形態に従う温水調温装置では、補正ステップ数Xcを用いることによって、バイパス弁80による実際の流量比率と、目標流量比率ktとの差を抑制できる効果を活用して、目標流量比率ktを用いた簡易な演算によって、高温水および低温水の一方の検出流量から全体の出湯流量Qtを高精度に算出することができる。
(バイパス弁配置の変更例)
本実施の形態に従う温水調温装置おいて、高温水および低温水の流量比率の制御要素であるバイパス弁80の配置位置は、図1の構成例に限定されるものではない。
図10および図11には、バイパス弁の配置位置の変形例が示される。
図10を参照して、バイパス弁80は、バイパス管60および出湯管70の合流点75に対応して配置することも可能である。図10の構成においても、混合される高温水および低温水の流量比率を、バイパス弁80のステップ数Xによって制御することが可能である。
図11を参照して、バイパス弁80は、缶体配管55およびバイパス管60の分岐点65よりも下流側において、バイパス管60に介挿接続することも可能である。図11の構成においても、バイパス弁80のステップ数Xによってバイパス流量Q2を制御することによって、高温水および低温水の流量比率を、制御することが可能である。
なお、図10および図11の構成では、図4等に示した基準特性線400が、図1の構成例から変化する可能性がある。すなわち、基準特性線400については、バイパス弁80の配置位置が異なる構成毎に予め作成することが好ましい。図10および図11に示された構成においても、予め作成された基準特性線400を用いて、図6に示された制御処理による流量比率制御によって、出湯温度を制御することができる。
また、本実施の形態では、高温水および低温水の流量比率kをk=Q2/Q1と定義したが、流量比率は、全体の出湯流量(Q1+Q2)に対する缶体流量Q1の比であるk1(k1=Q1/(Q1+Q2)または、全体の出湯流量(Q1+Q2)に対するバイパス流量Q2の比であるk2(k2=Q2/Q1+Q2))としてもよい。
これらの場合には、流量比率k1,k2の定義に従って、式(2)〜(4)および基準特性線400を変形する必要があるが、変形された式(2)〜(4)および基準特性線400を用いることによって、本実施の形態で説明したのと同様にバイパス弁80のステップ数Xを制御することができる。
また、バイパス弁80(すなわち、流量比率制御機構)の操作量についても、ステップ数とは異なる任意の定量値とすることができる。すなわち、当該定量値と流量比率との関係について、予め基準特性関係を定めることが可能であれば、本実施の形態と同様の補正を用いて、バイパス弁80(流量比率制御機構)の操作量を設定することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。