以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は原則的に繰返さないものとする。
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態に従う燃焼装置が適用された給湯装置の概略構成図である。
図1を参照して、給湯装置100は、熱交換器10および燃焼機構20等が格納された燃焼缶体(以下、単に「缶体」とも称する)5と、送風ファン40と、入水管50と、缶体配管55と、バイパス管60と、出湯管70と、バイパス弁80と、コントローラ300とを備える。本実施の形態では、燃焼機構20は、少なくとも1本のバーナ30を含んで構成される。
入水管50は、バイパス弁80を経由して、缶体配管55およびバイパス管60と接続される。入水管50には、水道水等の低温水が供給される。入水管50の低温水は、バイパス弁80を経由して、缶体配管55およびバイパス管60へ分配される。
缶体配管55は、熱交換器10に接続される。熱交換器10は、一次熱交換器11および二次熱交換器12を有する。入水管50から缶体配管55へ導入された低温水は、バーナ30の発生熱量により、熱交換器10を通過することによって加熱される。
バーナ30へのガス供給管31には、元ガス電磁弁32、ガス比例弁33および、能力切換弁35a〜35cが配置される。元ガス電磁弁32は、バーナ30への燃料ガスの供給をオンオフする機能を有する。ガス供給管31のガス流量は、ガス比例弁33の開度に応じて制御される。
能力切換弁35a〜35cは、燃焼機構20を構成するバーナ30のうちの、燃料ガスの供給対象となるバーナ本数を切換えるために開閉制御される。図1の構成例では、10本のバーナ30のうち、能力切換弁35aの開放により5本のバーナ30に対して燃料が供給され、能力切換弁35bの開放により2本のバーナ30に対して燃料が供給され、能力切換弁35cの開放により3本のバーナ30に対して燃料が供給される。
燃焼機構20の発生熱量は、燃料が供給されて燃焼対象となるバーナ本数(以下、単に「燃焼バーナ本数」とも称する)と、ガス流量との組み合わせによって決まる、バーナ30全体での燃焼ガス量に比例する。したがって、要求発生熱量に対応させて、能力切換弁35a〜35cの開閉パターン(燃焼バーナ本数)およびガス比例弁33の開度(ガス流量)の組み合わせを決定する設定マップを予め作成することができる。
缶体5において、バーナ30から出力された燃料ガスは、送風ファン40からの燃焼用空気と混合される。送風ファン40による送風量は、バーナ30全体からの供給ガス量との空燃比が所定値(たとえば、理想空燃比)となるように制御される。送風ファン40の送風量は、ファン回転数と比例するので、送風ファン40の回転数は、供給ガス量の変化に応じて設定される目標回転数に従って制御される。送風ファン40には、ファン回転数を検出するための回転数センサ45が設けられる。
燃料ガスと燃焼用空気との混合気が、図示しない点火装置によって着火されることにより、燃料ガスが燃焼されて火炎が生じる。バーナ30からの火炎によって生じる、燃焼機構20からの燃焼熱は、缶体5内で一次熱交換器11および二次熱交換器12へ与えられる。
二次熱交換器12は、燃焼機構20からの燃焼排ガスの潜熱によって、通流された低温水を熱交換によって予熱する。一次熱交換器11は、二次熱交換器12によって予熱された低温水を、燃焼機構20からの燃焼ガスの顕熱(燃焼熱)による熱交換によってさらに加熱する。これにより、熱交換器10によって加熱された高温水が、出湯管70へ出力される。缶体5の燃焼ガスの流れ方向下流側には熱交換後の燃焼排ガスを排出処理するための排気経路15が設けられる。
バイパス管60および出湯管70は、合流点75において接続される。したがって、給湯装置100からは、缶体5から出力された高温水と、バイパス管60からの低温水との混合によって調温された適温の温水が、台所や浴室等の給湯栓190や、図示しない風呂への注湯回路などの所定の給湯箇所に供給される。
図1に例示された給湯装置100は、熱交換器10を通過した高温水および熱交換器10をバイパスした低温水を混合する、いわゆるバイパスミキシング方式の構成を有している。
バイパス弁80は、コントローラ300からの制御指令に従って弁開度が制御されることにより、缶体配管55の流量およびバイパス管60の流量の比率を制御する。たとえば、バイパス弁80による流量比率は、図示しない弁体を開閉駆動するステッピングモータ(図示せず)のステップ数Xによって制御することができる。すなわち、バイパス弁80は「流量比率制御機構」の一実施例に対応し、バイパス弁80のステップ数Xは「操作量」に相当する。
以下では、入水管50から缶体配管55への缶体流量q1(すなわち、高温水流量)および、入水管50からバイパス管60へのバイパス流量q2(すなわち、低温水流量)の比を用いて、バイパス弁80によって制御される流量比率kを下記の式(1)に従って定義する。
k=q2/q1 …(1)
図2には、バイパス弁80におけるステップ数Xと流量比率kとの対応関係が示される。
図2を参照して、バイパス弁80では、ステップ数Xに従って弁開度が変化することに応じて、高温水および低温水の流量比率k(k=q2/q1)が変化する。ステップ数Xは、コントローラ300により、最小値X0から最大値X1までの範囲内で制御される。
図2の例では、バイパス弁80は、ステップ数Xの増加に応じて、流量比率kが低下(すなわち、バイパス流量q2が低下)するように構成される。最小ステップ数X0において、流量比率k=kmaxとなり、最大ステップ数X1において、流量比率k=kminとなる。
バイパス弁80の開度特性は、ステップ数Xおよび流量比率kの対応関係で示される。たとえば、事前の実機試験結果等に基づいて、ステップ数Xおよび流量比率kの間の基準となる対応関係を示す基準特性線400を予め定めることができる。
基準特性線400に従って、ステップ数Xから流量比率kを算出するための関数η(X)と、反対に、流量比率kからステップ数Xを算出するための逆関数η-1(k)とを設定することができる。基準特性線400に従う関数η(X)および逆関数η-1(k)を用いて、ステップ数Xから流量比率kへの換算、および、流量比率kからステップ数Xへの換算の両方が可能となる。
たとえば、基準特性線400に複数の基準点(X,k)を設定し、基準点間を線形補完する演算によって、上述の関数η(X)および逆関数η-1(k)の演算を実行することができる。基準特性線400、ならびに、関数η(X)および逆関数η-1(k)を規定するデータは、コントローラ300内のメモリ(図示せず)に予め記憶することができる。
たとえば、コントローラ300は、後述する出湯温度制御のために算出された所望の流量比率kを、基準特性線400に従う逆関数η-1(k)によって換算することで、ステップ数Xを設定することができる。たとえば、出湯温度制御のために流量比率k=kaに調整したい場面では、基準特性線400に従って、ステップ数X=Xaに設定される。
再び図1を参照して、温度センサ110は、缶体配管55に配置される。缶体配管55には、流量センサ150を配置することができる。流量センサ150は、代表的には、羽根車式流量センサによって構成することができる。
出湯管70には、温度センサ120,130が設けられる。温度センサ120は、出湯管70およびバイパス管60の合流点75よりも上流側(熱交換器10側)に配置される。温度センサ130は、合流点75よりも下流側(出湯側)に配置される。さらに、出湯管70には、出湯流量を制御するための流量調整弁90が設けられる。流量調整弁90の弁開度は、コントローラ300によって制御される。
たとえば、燃焼開始直後の加熱能力が不足する期間中において、出湯流量を絞るように流量調整弁90の開度が制御されることによって、出湯温度の低下を防止することができる。また、燃焼開始直後以外でも、最大発生熱量で運転する場合や、最大許容流量で運転する場合等において、目標温度に従って出湯するために、流量調整弁90によって出湯流量を絞る制御を実行することができる。
図1の構成例において、熱交換器10は「加熱器」の一実施例に対応する。さらに、缶体配管55と出湯管70のうちの合流点75よりも上流側(熱交換器10側)の部分とによって、「加熱流路」の一実施例が構成される。また、バイパス管60は「バイパス流路」の一実施例に対応する。
温度センサ110は、低温水の温度(以下、入水温度とも称する)を検出するために設けられる。温度センサ110は、図1に示されたように缶体配管55に設けることが可能であるが、入水管50またはバイパス管60に設けられてもよい。温度センサ120は、高温水の温度(以下、缶体温度とも称する)を検出するために、出湯管70のうちの合流点75よりも上流側(熱交換器10側)の部分に配置される。さらに、温度センサ130は、高温水および低温水の混合後の出湯温度を検出するために、出湯管70のうちの合流点75よりも下流側の部分に配置される。
温度センサ110によって検出された入水温度Tw、温度センサ120によって検出された缶体温度Tbおよび、温度センサ130によって検出された出湯温度Thは、コントローラ300へ伝送される。
図1および2に示された構成において、温度センサ110は「第1の温度検出器」に対応し、温度センサ120は「第2の温度検出器」に対応し、温度センサ130は「第3の温度検出器」に対応する。また、入水温度Tw、缶体温度Tbおよび出湯温度Thは、それぞれ、「第1の検出温度」、「第2の検出温度」および「第3の検出温度」に相当する。
コントローラ300は、たとえば、マイクロコンピュータによって構成することができる。コントローラ300は、各センサによる検出値およびユーザ操作を受けて、給湯装置100の全体動作を制御するために、各機器への制御指令を発生する。ユーザ操作には、リモートコントローラ(図示せず)に設けられた運転スイッチ(図示せず)の操作によって入力される給湯装置100の運転オン/オフ指令、および、出湯温度の設定値(出湯目標温度Tr*)の指令が含まれる。
図3には、給湯装置100のモード遷移図が示される。
図3を参照して、運転オフモードは、給湯装置100の電源オフ状態に相当する。給湯装置100は、運転オフモードにおいて運転スイッチ(図示せず)が操作されると、運転オンモードに遷移する。
運転オンモードでは、バーナ30に対する燃料供給は遮断されており、バーナ30の燃焼は連続的に停止される。この状態では、最小作動流量(MOQ)が検出されるまで、燃焼が待機される。以下では、給湯装置100での流量がMOQを超えている状態を「MOQオン」とも称し、MOQを超えていない状態を「MOQオフ」とも称する。
運転オンモードにおいて、所定の流量条件CD1の成立によりMOQオンが検出されると、燃焼モードが開始される。燃焼モードでは、元ガス電磁弁32等が開放されて、バーナ30へ燃料ガスが供給される。以下では、運転オンモードを「燃焼待機モード」とも称する。
燃焼モードでは、給湯装置100からの出湯目標温度Tr*に制御するための温度制御によって燃焼機構20(バーナ30全体)への要求発生熱量が設定され、この要求発生熱量に従ってバーナ30の作動状態が制御される。燃焼モードでの温度制御については、後程詳細に説明するが、その一環として、燃焼モードでは、バーナ30の燃焼期間が連続的に設けられる連続燃焼と、バーナ30の燃焼期間および非燃焼期間が繰り返し設けられる間欠燃焼とのいずれか一方が適用される。
たとえば、流量センサ150によって検出された缶体流量q1が基準値q1rを超えることにより(q1>q1r)、および/または、トータル流量qt(qt=q1+q2)が基準値qtrを超えることにより(qt>qtr)、流量条件CD1の成立が検知される。
なお、図1の構成例では、トータル流量qtは、流量センサ150による検出値と、バイパス弁80のステップ数Xから求められる流量比率kとを用いて算出することができる。また、図1とは異なり、流量センサ150を入水管50に配置することも可能であるが、この場合には、流量センサ150によってトータル流量qtを検出できるとともに、流量センサ150による検出値と、バイパス弁80による流量比率kとを用いて、缶体流量q1を算出することができる。
燃焼モードにおいて、流量の減少によって所定の流量条件CD2が成立すると、MOQオフが検出されて、運転モードは、燃焼が待機される運転オンモードへ遷移する。これにより、バーナ30による燃焼は連続的に停止される。
たとえば、q1<q1r♯、および/または、qt<qtr♯の成立時に、流量条件CD2の成立を検知することができる。ここで、MOQのオン検出およびオフ検出のハンチングを防ぐために、流量条件CD1,CD2では、q1rおよびq1r♯の間、ならびに、qtrおよびqtr♯の間にヒステリシスを設けることが好ましい(q1r♯<q1r,qtr♯<qtr)。
なお、MOQオン(流量条件CD1)を、q1>q1rおよびqt>qtrで判定し、MOQオフ(流量条件CD2)を、q1<q1r♯またはqt<qtr♯で判定することによって、不要な燃料消費を抑制することができる。
燃焼待機モードまたは燃焼モードで、運転スイッチ(図示せず)が操作されると、給湯装置100は、運転オフモードに遷移する。燃焼モードにおいて運転スイッチがオフされた場合には、併せて、バーナ30による燃焼が停止される。
図4は、コントローラ300による給湯装置100の燃焼モードにおける温度制御の機能ブロック図である。図4中の各ブロックの機能は、コントローラ300が予め格納されたプログラムを実行するソフトウェア処理によって実現することができる。あるいは、専用の電子回路を用いたハードウェア処理によって各ブロックの一部または全部を実現することも可能である。
図4を参照して、コントローラ300は、燃焼機構20の発生熱量による缶体温度制御部310を有する。缶体温度制御部310は、要求熱量算出部320と、バーナ制御部330とを有する。
要求熱量算出部320は、缶体流量q1(流量センサ150)と、入水温度Tw(温度センサ110)と、缶体温度Tb(温度センサ120)と、缶体温度Tbの目標温度Tb*とに基づいて、燃焼機構20への要求発生熱量Qrqを算出する。
このとき、熱交換器10で必要となる昇温量ΔTは、ΔT=Tb*−Twで示される。したがって、熱交換器10において上記昇温量ΔTを得るために必要な単位時間当たりの熱量は(q1・ΔT)で示される。したがって、式(2)に従って、要求発生熱量Qrqを算出することができる。
Qrq=(Tb*−Tw)・q1…(2)
なお、実際には、燃焼機構20(バーナ30)による発生熱量のうちの熱交換器10での昇温に用いられる熱量の比率(熱効率)を考慮する必要があるが、以下では、説明を簡略化するために、熱効率は1.0であるものとする。また、給湯装置では、要求発生熱量は「号数」を単位として演算されることが一般的である。号数=1は、q1=1(L/min)の流量下で湯温を25℃上昇させるのに必要な熱量に相当する。
バイパスミキシング方式の給湯装置では、温度制御における目標温度Tb*(缶体温度)は、出湯目標温度Tr*よりも高く設定することができる。たとえば、ユーザによって設定される出湯目標温度Tr*を用いて、下記の式(3)に従って、目標温度Tb*を設定することができる。なお、式(3)中のαは定数である(たとえば、α=15℃)。
Tb*=Tr*+α…(3)
あるいは、バイパス弁80での流量比率kの最大値kmax(バイパス流量最大側)に対応させて、下記の式(4)によって、目標温度Tb*を設定することも可能である。
Tb*=(Tr*−Tw)・kmax/(1−kmax)…(4)
式(4)の右辺は、バイパス弁80がバイパス流量の比率を最大としたときに、Th=Tr*とできるTb*の最小値に相当する。したがって、式(3)および式(4)でそれぞれ求められるTb*のうちの低い方の値を、式(2)でのTb*として要求発生熱量Qrqを算出することができる。式(4)を組み合わせることにより、入水温度Twの上昇に伴って目標温度Tb*(缶体温度)を低下させることができる。この結果、式(3)のみで目標温度Tb*を設定する制御と比較して、出湯温度の制御範囲を拡げることができる。
バーナ制御部330は、要求熱量算出部320からの要求発生熱量Qrqに従って、燃焼機構20の発生熱量を制御するためにバーナ30の作動状態(燃焼バーナ本数およびガス流量)を決定する。そして、決定されたバーナ30の作動状態に従って、能力切換弁35a〜35cおよびガス比例弁33への制御指令が生成される。バーナ制御部330による、バーナ30の燃焼制御、すなわち、図3に示した燃焼モードにおける燃焼制御の詳細については後程説明する。
このように、本実施の形態に従う燃焼装置は、図1に示された燃焼機構20(バーナ30)、ガス供給管31、元ガス電磁弁32、ガス比例弁33および能力切換弁35a〜35cと、コントローラ300によるバーナ制御部330の制御機能によって実現することができる。
さらに、給湯装置100では、缶体温度制御部310による燃焼装置の発生熱量を調整する温度制御に加えて、バイパス弁80による流量比率kの調整による温度制御を組み合せることができる。コントローラ300は、流量比率制御部340をさらに含む。
流量比率制御部340は、出湯目標温度Tr*と、温度センサ110〜130による検出温度(Tb,Th,Tw)とに基づいて、出湯温度Thを出湯目標温度Tr*に制御するためのバイパス弁80のステップ数Xを設定する。
図1に示されたミキシング方式の給湯装置100では、低温水から出湯温度への温度上昇に係る熱量と、高温水から出湯温度への温度低下に係る熱量とが均衡する。したがって、缶体流量q1、バイパス流量q2、缶体温度Tb、入水温度Twおよび、出湯温度Thの間には、下記の式(5)の関係が成立する。
q2・(Th−Tw)=q1・(Tb−Th) …(5)
式(5)から、式(1)に示した流量比率kは、缶体温度Tb、入水温度Twおよび、出湯温度Thによって、式(6)で示すことができる。
k=q2/q1=(Tb−Th)/(Th−Tw) …(6)
したがって、コントローラ300は、式(6)から算出される流量比率kに従ってバイパス弁80のステップ数Xを設定することにより、出湯温度Thを出湯目標温度Tr*に従って制御することができる。さらに、式(6)による算出値をフィードフォワード制御項とした上で、出湯温度の温度偏差ΔTh=(Tr*−Th)を補償するためのフィードバック制御項を算出し、両者の和に従って、流量比率k、すなわち、バイパス弁80のステップ数Xを設定することも可能である。
(燃焼モードでの温度制御の詳細)
図5は、燃焼モード中における制御状態の遷移図である。
図5を参照して、燃焼モードでは、連続燃焼および間欠燃焼を選択的に適用することによって、バーナ30から要求発生熱量Qrqに従った熱量を発生する。図5中の点線で囲まれた範囲が、図3に示された燃焼モードに相当する。
燃焼待機モードから燃焼モードに遷移すると、まず、バーナ30の点火制御が実行される。点火制御では、予め定められた点火条件(燃焼バーナ本数およびガス流量)に従って能力切換弁35a〜35cおよびガス比例弁33が制御された状態の下でイグナイタ(図示せず)が作動することにより、バーナ30の少なくとも一部が点火される。
点火が完了すると、要求発生熱量Qrqの大小によって、連続燃焼または間欠燃焼が開始される。
連続燃焼では、バーナ30は、要求発生熱量Qrqに従って設定された作動状態(燃焼バーナ本数およびガス流量)で連続的に燃焼される。たとえば、上述のように、予め作成された設定マップを参照することによって、バーナ30が、要求発生熱量Qrqに対応した熱量を発生するように、燃焼バーナ本数(能力切換弁35a〜35cの開閉パターン)およびガス流量(ガス比例弁33の開度)が決定される。
連続燃焼における最大発生熱量は、燃焼バーナ本数を最大(図1の構成例では、10本)とし、かつ、ガス流量を最大(ガス比例弁33が最大開度)とした状態での発生熱量である。一方で、連続燃焼における最小発生熱量Q1は、燃焼バーナ本数を最小(図1の構成例では、2本)とし、ガス流量を安定的な燃焼状態が確保できる下限値とした場合での発生熱量に相当する。すなわち、最小発生熱量Q1は、連続燃焼での発生熱量範囲の下限値である「第1の熱量」に対応する。
したがって、バーナ制御部330は、要求発生熱量QrqがQ1以上であるときには、連続燃焼を適用する一方で、要求発生熱量QrqがQ1よりも小さいときには、間欠燃焼を適用するように、バーナ30を制御する。これにより、要求発生熱量QrqがQ1よりも低い場合にも対応することが可能となる。したがって、点火制御後または連続燃焼中に、Qrq<Q1になると、間欠燃焼を適用して燃焼モードが継続される。
間欠燃焼では、最小発生熱量Q1を発生する作動状態でのバーナ30の燃焼が、間欠的に実行される。すなわち、最小発生熱量Q1を発生するための燃焼期間と、燃焼が一時的に停止された非燃焼期間とが繰返し設けられるように、バーナ30は消火および再点火される。
間欠燃焼中に要求発生熱量Qrqが上昇してQrq>Q1*が成立すると、間欠燃焼から連続燃焼への遷移が実行される。この際の判定値Q1*は、ハンチングを避けるために、上述のQ1よりも大きく設定することが好ましい。
一方で、間欠燃焼中において、要求発生熱量Qrqがさらに低下して予め定められた下限値Q2よりも低くなると、燃焼モードは終了されて、燃焼待機モードへの遷移が行われる(Q2<Q1)。下限値Q2は、燃焼モードの終了を判定するための「第2の熱量」に対応する。
また、連続燃焼および間欠燃焼の各々において、流量の減少により流量条件CD2が成立したときにも(MOQオフ)、燃焼待機モードへの遷移が行われる。燃焼待機モードへの遷移後は、流量の増加によって再び燃焼モードが開始されるまで、バーナ30の燃焼は停止される。
図6は、間欠燃焼モードでの基本的な制御動作例を示す概念図である。図6には、要求発生熱量Qrqが時間の経過に従って徐々に低下するときの動作例が示される。
図6を参照して、Qrq≧Q1である時刻t1まで連続燃焼が適用される一方で、Qrq<Q1となった時刻t1〜t8では間欠燃焼が適用される。
図6中において、各タイミングにおけるバーナ30の作動状態(たとえば、燃焼バーナ本数およびガス流量)に対応する熱量推定値Qbが、白抜き四角の記号でプロットされる。たとえば、バーナ30の作動状態毎に熱量推定値Qbを対応付けるテーブルを予め作成することにより、当該テーブルの参照によって各時点での熱量推定値Qbを求めることができる。
さらに、コントローラ300は、各タイミングでの熱量推定値Qbの移動平均を求めることによって、バーナ30からの推定発生熱量Qbnを逐次算出する。推定発生熱量Qbnは、図6中において、黒塗りの四角でプロットされている。
図6では、間欠燃焼中において、バーナ30が一時的に消火される非燃焼期間では、Qb=0である。一方で、各燃焼期間において、当該燃焼期間の開始時には、Qbは、点火条件によって定められた作動状態に対応する熱量であり、それ以外では、Qb=Q1である。
間欠燃焼中において、燃焼期間および非燃焼期間は、推定発生熱量Qbnおよび要求発生熱量Qrqの比較に従って切換えられる。基本的には、Qrq<Qbnの期間に対応して非燃焼期間が設定される一方で、Qrq>Qbnの期間に対応して燃焼期間が設定される。
したがって、時刻t1において間欠燃焼が開始されると、Qrq<Qbnであることに応じて、バーナ30が消火されて非燃焼期間が開始される。時刻t2では、Qbn<Qrqとなることにより、燃焼期間が開始されて、バーナ30が再点火される。以降では、Qrq>QbnからQrq<Qbnに変化する時刻t3,t5,t7において非燃焼期間が開始される一方で、Qrq<QbnからQrq>Qbnに変化する時刻t4,t6では、燃焼期間が開始される。このように、要求発生熱量Qrqの推移に対応させて、バーナ30の燃焼期間および非燃焼期間が繰り返し設けられる。
さらに、Qrq<Q2となった時刻t8以降では、燃焼モードから燃焼待機モードへの遷移によって、バーナ30は消火される。
図7および図8は、間欠燃焼運転におけるコントローラの制御動作を説明するためのフローチャートである。
図7および図8に示すフローチャートによる制御処理は、図5における間欠燃焼の適用中に、コントローラ300により一定の制御周期毎に実行することができる。図7および図8に従う制御処理によって、図4に示されたバーナ制御部330の間欠燃焼時の機能が実現される。
図7を参照して、コントローラ300は、ステップS100により、要求熱量算出部320によって算出された現時点での要求発生熱量Qrqを読込む。さらに、コントローラ300は、ステップS110により、バーナ30の現在の作動状態(燃焼本数およびガス流量)から、現時点でのバーナ30の熱量推定値Qbを算出する。
図6で説明したように、基本的には、非燃焼期間ではQb=0であり、燃焼期間ではQb=Q1である。また、バーナ30が再点火される燃焼期間の開始時には、当該制御周期におけるQbは、点火条件に従った熱量となる。
コントローラ300は、ステップS120により、ステップS110で算出された熱量推定値Qbの移動平均値に従って、推定発生熱量Qbnを算出する。たとえば、今回の制御周期での推定発生熱量Qbn[n]は(n:整数)、下記の式(7)に従って算出することができる。
Qbn[n]=K1・Qbn[n−1]+K2・Qb[n] …(7)
式(7)において、Qbn[n−1]は前回の制御周期における推定発生熱量Qbnを示し、Qb[n]は今回の制御周期のS110で求められた熱量推定値Qbである。また、係数K1,K2は、K1=L/(L+1)、および、K2=1/(L+1)で示される。K1,K2は、調整パラメータLによって、K1+K2=1.0を維持した上で適正値にチューニングすることができる。
なお、調整パラメータLについては、流量(たとえば、缶体流量q1)に応じて可変としてもよい。たとえば、流量が増えるほど、Lを小さく設定してK2を大きくすることで、QbがQbnに反映される速度を高めることが好ましい。
あるいは、調整パラメータLは、燃焼期間および非燃焼期間で異なる値を設定してもよい。たとえば、燃焼期間(加熱時)における湯の受熱量(単位時間当たり)は、非燃焼期間(放熱時)における湯の抜熱量(単位時間当たり)よりも大きいので、燃焼期間ではLを小さく(すなわち、K2を大きく)設定することが好ましい。したがって、式(7)での調整パラメータLは、図9に示すように可変設定することができる。
再び図7を参照して、コントローラ300は、ステップS130により、要求発生熱量Qrq(S100)と下限値Q2(図6)とを比較する。コントローラ300は、Qrq<Q2のとき(S130のYES判定時)には、ステップS190に処理を進めて、間欠燃焼を終了させる。さらに、これにより、バーナ30は消火されるとともに、燃焼待機モードへの遷移が実行されて、バーナ30の燃焼は連続的に停止される。
一方、コントローラ300は、Qrq≧Q2のとき(S130のNO判定時)には、間欠燃焼を継続するために、処理をステップS140に進めて、燃焼期間中であるか否かを判定する。
コントローラ300は、燃焼期間中(S140のYES判定時)には、ステップS150〜S180に処理を進める。コントローラ300は、ステップS150により、推定発生熱量Qbn(S120)を要求発生熱量Qrq(S110)と比較する。燃焼期間中においてQbn≦Qrqのとき(S150のNO判定時)には、処理はステップS170に進められて、燃焼期間が継続される。このとき、燃焼期間の長さを検出するためのカウンタ値T1がカウントアップされる。
一方で、燃焼期間中においてQbn>Qrqであると(S150のYES判定時)、コントローラ300は、ステップS160に処理を進めて、カウンタ値T1を最小時間T1minと比較する。
このとき、カウンタ値T1が最小時間T1min以上であれば(S160のYES判定時)、コントローラ300は、ステップS180に処理を進めて、非燃焼期間を開始するためにバーナ30を消火する。さらに、このタイミングで、次に開始される非燃焼期間の長さを計るためのカウンタ値T2をクリアする(T2=0)。
一方で、カウンタ値T1が最小時間T1minよりも短いとき(S160のNO判定時)には、コントローラ300は、ステップS170に処理を進めて、燃焼期間を継続させる。すなわち、Qbn>Qrqとなっても、燃焼期間の長さが最小時間T1minに達していないときには、非燃焼期間への遷移は禁止されて、燃焼期間が継続される。
コントローラ300は、非燃焼期間中(S140のNO判定時)には、図8に示されたステップS155〜S185に処理を進める。
図8を参照して、コントローラ300は、ステップS155により、ステップS120で算出された推定発生熱量Qbnを要求発生熱量Qrqと比較する。非燃焼期間中においてQbn≧Qrqのとき(S155のNO判定時)には、処理はステップS175に進められて、非燃焼期間が継続される。このとき、非燃焼期間の長さを検出するためのカウンタ値T2がカウントアップされる。
一方で、非燃焼期間中においてQbn<Qrqであると(S155のYES判定時)、コントローラ300は、ステップS165に処理を進めて、カウンタ値T2を最小時間T2minと比較する。
このとき、カウンタ値T2が最小時間T2min以上であれば(S165のYES判定時)、コントローラ300は、ステップS185に処理を進めて、燃焼期間を開始するためにバーナ30を再点火する。さらに、このタイミングで、次に開始される燃焼期間の長さを計るためのカウンタ値T1をクリアする(T1=0)。
一方で、カウンタ値T2が最小時間T2minよりも短いとき(S165のNO判定時)には、コントローラ300は、ステップS175に処理を進めて、非燃焼期間を継続させる。すなわち、Qbn<Qrqとなっても、非燃焼期間の長さが最小時間T2minに達していないときには、燃焼期間への遷移は禁止されて、非燃焼期間が継続される。
図10には、実施の形態1に従う燃焼装置での間欠燃焼運転における動作例を示す波形図が示される。
図10を参照して、要求発生熱量Qrqは、Q2<Qrq<Q1の領域で推移しているものとする。Qrq<Q1の熱量範囲に対応するために、バーナ30は、燃焼期間および非燃焼期間を繰返す間欠燃焼によって制御される。
燃焼期間が開始されると、時間遅れを持って、缶体温度Tbは上昇する。反対に、非燃焼期間が開始されると、時間遅れを持って缶体温度Tbは低下する。このように、間欠燃焼では、缶体温度Tbが上昇および低下することにより、Qrq<Q1の領域の発生熱量に対応させて缶体温度Tbの平均値を制御することができる。
さらに、バイパス弁80の操作量であるステップ数Xを調整する温度制御を組み合わせることによって、出湯温度Thは、目標温度Trに連続的に制御されている。
上述のように、間欠燃焼での燃焼期間および非燃焼期間は、基本的には、図10中に示された推定発生熱量Qbnと、要求発生熱量Qrqとの比較に従って切換えられる。
図10の例では、時刻taにおいて非燃焼期間が開始された後、時刻txにおいて、Qbn<Qrqとなるが、この時点では、非燃焼期間の開始(時刻ta)からの経過時間が最小時間T2minよりも短い。
したがって、時刻txでは非燃焼期間は終了されず、少なくとも、時刻taから最小時間T2minが経過した時刻tbまで、非燃焼期間は継続される。そして、時刻tbにおいて、Qbn<Qrqであることに応じて、バーナ30は再点火されて、燃焼期間が開始される。
時刻tbにおいて燃焼期間が開始された後、時刻tyにおいて、Qbn>Qrqとなるが、この時点では、燃焼期間の開始(時刻tb)からの経過時間が最小時間T1minよりも短い。
したがって、時刻tyでは燃焼期間は終了されず、少なくとも、時刻tbから最小時間T1minが経過した時刻tcまで、燃焼期間は継続される。そして、時刻tcにおいて、Qbn>Qrqであることに応じて、非燃焼期間を開始するためにバーナ30が消火される。
このように、実施の形態1に従う燃焼装置およびそれを搭載した給湯装置では、バーナ30の連続燃焼における最小発生熱量Q1よりも低い要求発生熱量Qrqに対して、間欠燃焼の適用によって対応することができる。さらに、間欠燃焼の適用時には、燃焼機構20の作動状態(たとえば、バーナ30の燃焼バーナ本数およびガス流量)に基づく推定発生熱量と、要求発生熱量との比較に従って燃焼期間および非燃焼期間を切換えることにより、1回ずつの燃焼期間および非燃焼期間の和に相当するサイクル値を固定して両者の比率を制御する場合と比較して、温度制御精度を向上することができる。
一方で、サイクル長を固定しないために燃焼期間および非燃焼期間が頻繁に切換わると、バーナ30の点火回数が増加することにより、機器の耐久性に問題が生じることが懸念される。これに対して、本実施の形態に従う燃焼装置では、最小時間T1min,T2minを設けて非燃焼期間および燃焼期間の切換えを制限することにより、低熱量時の温度制御精度の向上と、機器耐久性の向上とを両立することが可能となる。なお、最小時間T1min,T2minは、機器の耐久性を考慮して設計時に予め定めることができる。
さらに、バイパス弁80による温度制御を組み合わせることにより、最小時間T1min,T2minによって缶体温度Tbの制御性が制限されても、出湯温度Thの出湯目標温度Tr*への制御性の確保が容易となる。
[実施の形態2]
実施の形態1で説明した間欠燃焼制御では、バーナ30の作動状態が反映された推定発生熱量Qbnを用いて、燃焼期間および非燃焼期間の切換を制御している。
このため、缶体5の温度の低下時に対応するために、燃焼開始直後の要求発生熱量を増加させる制御を実行すると、燃焼開始直後に間欠燃焼が適用された場合には、非燃焼期間がすぐに設けられて、出湯温度が上がらないという問題点が発生する懸念がある。したがって、実施の形態2では、燃焼装置の燃焼開始直後の動作を以下のように制御する。
図11は、実施の形態2に従う燃焼装置での燃焼開始時における制御処理を説明するフローチャートである。
図11を参照して、コントローラ300は、流量条件CD1の成立によって燃焼モードが開始されると(S200のYES判定時)、ステップS210に処理を進めて、流量条件CD1が成立してからの経過時間を計測するためのタイマを起動する。すなわち、ステップS210の処理時点において、タイマ値Tst=0に設定されるとともに、以降では経過時間に応じて自動的にタイマ値Tstは増加される。
さらに、コントローラ300は、ステップS220により、所定の点火条件に従ったバーナ30の点火制御を実行する。バーナ点火制御が完了すると、コントローラ300は、ステップS230により、タイマ値Tstを判定値Tinhと比較する。
Tst<Tinhの期間中(ステップS230のNO判定時)には、コントローラ300は、ステップS250により、間欠燃焼の適用を禁止する。これにより、要求発生熱量Qrqに関わらず、連続燃焼運転が適用される。ステップS250は、時間経過に応じて増加されるタイマ値Tstが判定値Tinhに達するまで、すなわち、S230がYES判定となるまで繰返し実行される。
コントローラ300は、タイマ値Tstが判定値Tinhに達すると(S230のYES判定時)、ステップS240に処理を進めて、間欠燃焼運転の適用を許可する。これにより、以降では、実施の形態1と同様に、要求発生熱量Qrqおよび最小発生熱量Q1の比較に従って、間欠燃焼運転または連続燃焼運転が選択される。間欠燃焼運転および連続燃焼運転の各々における制御処理の詳細は、実施の形態1と同様であるので詳細な説明は繰返さない。
なお、ステップS250により、Qrq<Q1であっても連続燃焼運転が適用される場合には、バーナ30の作動条件は、間欠燃焼運転における燃焼期間と同様に、最小発生熱量Q1を発生するように設定される。
図12は、実施の形態2に従う燃焼運転開始時の制御処理の変形例を示すフローチャートである。
図12を参照して、コントローラ300は、流量条件CD1の成立によって燃焼モードが開始されると(S200のYES判定時)、ステップS220に処理を進めて、所定の点火条件に従ったバーナ30の点火制御を実行する。バーナ点火制御が完了すると、コントローラ300は、ステップS225に処理を進める。
コントローラ300は、ステップS225では、温度センサ120,130の検出値から、缶体温度Tbおよび/または出湯温度Thを読込む。コントローラ300は、ステップS235により、ステップS225で読み込まれた缶体温度Tbおよび/または出湯温度Thを、缶体温度の目標温度Tb*および/または出湯温度の目標温度Tr*と比較する。
ステップS235は、燃焼モードの開始から、Tb≧Tb*および/またはTh≧Tr*が初めて成立するまでの間(すなわち、湯温が一旦目標温度に上昇するまでの間)、NO判定に維持される。コントローラ300は、ステップS235のNO判定時には、図11と同様のステップS250により、間欠燃焼の適用を禁止する。これにより、要求発生熱量Qrqに関わらず、連続燃焼運転が適用される。
一方で、コントローラ300は、燃焼モードが開始されてから、Tb≧Tb*および/またはTh≧Tr*が成立することによって、湯温上昇を検知すると(S235のYES判定時)、図11と同様のステップS240に処理を進めて、間欠燃焼運転の適用を許可する。以降では、実施の形態1と同様に、要求発生熱量Qrqおよび最小発生熱量Q1の比較に従って、間欠燃焼運転または連続燃焼運転が選択される。
このように、実施の形態2に従う燃焼装置が適用された給湯装置では、バーナ30での燃焼開始からの経過時間、または、燃焼開始後における湯温(缶体温度Tbおよび/または出湯温度Th)の上昇が検知されるまでの間、間欠燃焼運転の適用を禁止することができる。これにより、バーナ30での燃焼開始直後において、間欠燃焼運転の適用によって出湯温度の上昇が遅れることを防止できる。
[実施の形態3]
実施の形態3では、間欠燃焼運転における燃焼期間の開始時におけるバーナ30の好ましい点火条件について説明する。
図13は、バーナ30での点火本数の切換えを説明する図表である。
図13を参照して、図1に示された能力切換弁35a〜35cの開閉を組合せることにより、たとえば、条件I〜VIの6段階に、バーナ30での点火本数を切換えることができる。
具体的には、能力切換弁35bのみが開放される条件Iでは、点火本数は2本であり、能力切換弁35cのみが開放される条件IIでは、点火本数は3本であり、能力切換弁35bおよび35cを開放する条件IIIでは、点火本数は5本である。さらに、能力切換弁35aおよび35bを開放することにより、条件IVでは、点火本数を7本とすることができ、能力切換弁35aおよび35cが開放される条件Vでは、バーナ30のうちの8本を点火することができる。また、35a〜35cをすべて開放すると、10本のバーナ30のすべてを点火することができる。
連続燃焼制御では、点火制御後に、要求発生熱量Qrqに応じて、燃焼バーナ本数が増加または減少する。このため、燃焼バーナ本数の増加および減少のどちらにも対応しやすいように、バーナ点火制御時の点火本数が中間的な値に設定されることが好ましい。
したがって、連続燃焼時には、条件IIIに従って、能力切換弁35aを閉止する一方で、能力切換弁35b,35cを開放するように、点火条件が設定される。点火条件のガス流量については、安定的に着火できるような流量を確保するように、ガス比例弁33の初期開度が設定されている。
図14は、実施の形態3に従う燃焼装置におけるバーナの点火制御における制御処理を説明するフローチャートである。
図14を参照して、コントローラ300は、ステップS300により、バーナ30の点火制御が起動されたかどうかを判定する。ステップS300は、図5の状態遷移図において待機モードから燃焼モードへ遷移したとき、または、間欠燃焼中において非燃焼期間から燃焼期間への切換えが指示されたときにYES判定とされる。
コントローラ300は、バーナ30の点火制御が起動されると(S300のYES判定時)、ステップS310により、間欠燃焼中であるかどうかを判定する。そして、コントローラ300は、間欠燃焼でのバーナ点火時には(S310のYES判定時)には、コントローラ300は、ステップS320により、バーナ30の点火条件として、図13に示された条件Iを選択する。これにより、点火バーナ本数が最小となる点火条件を選択することができる。
これに対して、コントローラ300は、連続燃焼でのバーナ点火時には(S310のNO判定時)には、ステップS330により、バーナ30の点火条件として、上述の条件IIIを選択する。これにより、燃焼バーナ本数の可変範囲の略中央に、バーナ30の点火本数を設定することができる。この結果、間欠燃焼における燃焼期間の開始時に点火されるバーナ本数を、連続燃焼の開始時に点火されるバーナ本数よりも少なく設定することができる。
さらに、コントローラ300は、ステップS340により、ステップS320またはS330で設定された点火条件に従って、バーナ30の指令(元ガス電磁弁32および能力切換弁35a〜35cの開閉指令ならびにガス比例弁33の開度指令)を生成する。
これにより、間欠燃焼において、燃焼期間での点火時の発生熱量を抑制できる。すなわち、図6の時刻t2,t4,t6でのバーナ30の再点火時における熱量推定値Qbを抑制することができる。
したがって、燃焼期間において、熱量推定値Qbの移動平均値である推定発生熱量Qbnの上昇速度を抑制できるので、最小時間T1minによる制限の下で、Qbn>Qrqであるのに非燃焼期間が適用できない期間を短くすることができる。
このように、実施の形態3に従う燃焼装置が適用された給湯装置によれば、間欠燃焼での燃焼期間開始時に点火されるバーナ本数を抑制することができる。この結果、燃焼期間から非燃焼期間への切換わりを、連続燃焼の開始時と点火されるバーナ本数を共通化する場合と比較して、遅らせることができる。したがって、機器保護のための最小時間T1minの制約によって、温度制御のための燃焼期間から非燃焼期間への遷移が妨げられる頻度を抑制することができるので、温度制御性を向上することができる。
[実施の形態4]
実施の形態4以降では、バイパス弁80による流量比率制御が適用される給湯装置への適用のための制御動作について説明する。
図15および図16には間欠燃焼におけるバイパス弁80による温度制御の動作例が示される。
図15を参照して、ステップ数Xは、出湯温度Thを目標温度Tr*に設定するための流量比率kに従って制御される。図10で説明したように、間欠燃焼では、燃焼期間および非燃焼期間の繰り返しに応じて缶体温度Tbが周期的に変化するので、ステップ数Xについても、周期的に増減する。ステップ数Xは、制御可能範囲の下限値X0および上限値X1の範囲内で変化させることができる。
図15の動作例では、ステップ数Xは、下限値X0に対するマージンXlmおよび上限値X1に対するマージンXumを確保して制御されている。この結果、出湯温度Thは、ほぼ目標温度Tr*に制御できている。
これに対して、図16の動作例では、ステップ数Xが下限値X0の近傍で制御されており、ステップ数Xの変化範囲について、下限値X0に対するマージンXlm=0となっている。
Xlm=0になると、ステップ数Xをさらに小さくしてバイパス流量q2の比率を増やすことができない。このため、出湯温度Thは、目標温度Tr*よりも高い領域で推移する結果となっている。
図16の動作例では、出湯温度Thを下げるためには、缶体温度Tbを低下させることが必要になる。すなわち、間欠燃焼では、燃焼期間を短くして、非燃焼期間を長くする必要がある。一方で、燃焼期間は、実施の形態1で設定した最小時間T1minよりも短くすることができない。このため、図16の動作例、すなわち、ステップ数Xの変化範囲の最小値に対するマージンが無い状態では、温度制御面からは、燃焼期間の最小時間T1minを長くすることが困難である。
一方で、図15の制御例では、ステップ数Xの変化範囲は、下限値X0に対しては十分なマージンを有している。したがって、缶体温度Tbが上昇しても、バイパス弁80によってバイパス流量q2の比率を増大させることにより、出湯温度Thを低下させる余地がある。したがって、燃焼期間を長く設定して缶体温度Tbが上昇しても、出湯温度を適切に制御することができる。すなわち、図15の動作例では、図16の動作例とは異なり、最小時間T1minを延ばすことが可能であることが理解される。
同様に、ステップ数Xの変化範囲の上限値X1に対するマージンXum=0である場合には、バイパス流量q2の比率をさらに低下させて、出湯温度Thを上昇させることが困難である。したがって、缶体温度を上昇するためには、燃焼期間を長くして、非燃焼期間を短くしなければ、出湯温度Thが目標温度Tr*よりも低くなることが懸念される。このため、温度制御面からは、非燃焼期間の最小時間T2minを長くすることが困難である。
したがって、実施の形態4に従う燃焼装置では、温度制御におけるバイパス弁80のステップ数Xの変化範囲(すなわち、流量比率kの変化範囲)の実績に対応させて、燃焼期間の最小期間T1minおよび非燃焼期間の最小時間T2minを可変に設定する。
図17は、実施の形態4に従う燃焼装置における間欠燃焼の燃焼期間および非燃焼期間の最小時間の設定のための制御処理を説明するフローチャートである。図17に示されるフローチャートは、間欠燃焼中の各制御周期において実行することができる。
図17を参照して、コントローラ300は、ステップS400により、現時点から遡った一定期間内におけるステップ数Xの変化範囲のデータを取得する。たとえば、ステップS400では、ステップ数Xの変化周期よりも長い一定期間内でのステップ数Xの変化範囲の最大値Xuおよび最小値Xlを求めることができる。
なお、変化範囲の最大値Xuは、ステップ数Xが増加から減少へ切換わるタイミング(極大点)毎に蓄積されるステップ数Xの移動平均値によって求めることも可能である。同様に、変化範囲の最小値Xlは、ステップ数Xが減少から増加へ切換わるタイミング(極小点)毎に蓄積されるステップ数Xの移動平均値によって求めることも可能である。
コントローラ300は、ステップS410により、ステップS400で求めたステップ数Xの変化範囲の最大値Xuおよび最小値Xlから、ステップ数Xの制御範囲の上限値X1および下限値X0に対するマージンXumおよびXlmを算出することができる。すなわちXum=X1−Xuであり、Xlm=Xl−X0である。
さらに、コントローラ300は、ステップS420により、ステップS410で算出されたマージンXlmに応じて、燃焼期間の最小時間T1minを設定する。たとえば、図18に示すように、マージンXlmが一定値Xm1以下であるときには、T1minをデフォルト値Td1に設定する一方で、Xlm≧Xm1の範囲では、Xlmの増加に応じて、最小時間T1minを長く設定することができる。あるいは、図18中に点線で示されるように、Xlmの増加に応じて、連続的に最小時間T1minを長く設定することも可能である。
このように、下限値X0に対するマージンXlmが確保されており、缶体温度Tbが今より上昇しても、バイパス弁80の制御によってカバーできる余力が大きいときには、最小時間T1minを長く設定することにより、バーナの消火/再点火回数を削減することができる。
さらに、コントローラ300は、ステップS430では、ステップS410で算出されたマージンXumに応じて、非燃焼期間の最小時間T2minを設定する。たとえば、図19に示すように、マージンXumが一定値Xm2以下であるときには、T2minをデフォルト値Td2に設定する一方で、Xum≧Xm2の範囲では、Xumの増加に応じて、最小時間T2minを長く設定することができる。あるいは、図19中に点線で示されるように、Xumの増加に応じて、連続的に最小時間T2minを長く設定することも可能である。
このように、上限値X1に対するマージンXumが確保されており、缶体温度Tbが今より低下しても、バイパス弁80の制御によってカバーできる余力が大きいときには、最小時間T2minを長く設定することにより、バーナの消火/再点火回数を削減することができる。
あるいは、マージンXlmおよびXumの組み合わせによって、両者に余裕があるか否かに応じて、最小時間T1minおよびT2minの両方をデフォルト値から延長するように制御することも可能である。
このように、実施の形態4に係る燃焼装置が適用された給湯装置では、温度制御のためのバイパス弁80のステップ数Xの変化範囲に対応させて、間欠燃焼での燃焼期間の最小時間T1minおよび非燃焼期間の最小時間T2minを可変に設定することができる。
したがって、バイパス弁80の制御によってカバー可能な缶体温度Tbの温度範囲の余裕に対応させて、最小時間T1minおよび/または最小時間T2minを延ばすことにより、間欠燃焼運転における温度制御の精度確保と、バーナ30の消火/再点火回数の減少による機器保護との両立を図ることが可能となる。
[実施の形態5]
実施の形態5においても、間欠燃焼の適用中におけるバイパス弁80の好ましい制御例が示される。
図20には、実施の形態5に従う燃焼装置が適用された給湯装置における燃焼モードでの状態遷移図が示される。
図20を図5と比較して、実施の形態5では、間欠燃焼中において、要求発生熱量Qrqがさらに低下して下限値Q2よりも低くなったときの制御が異なる。
具体的には、間欠燃焼中に、Qrq<Q2となったときには、燃焼待機モード(運転オンモード)に直接遷移するのではなく、一旦、間欠燃焼が停止されたバイパス弁固定状態に遷移する。バイパス弁固定状態では、バイパス弁80のステップ数Xは、遷移直前の値に維持された上で、バーナ30が消火される。
一方で、連続燃焼または間欠燃焼から燃焼待機モードへ遷移したときには、バーナ30が消火されるとともに、バイパス弁80のステップ数Xが、予め定められた初期ステップ数Xiniに制御される。たとえば、初期ステップ数Xiniは、実験結果等に基づいて、連続燃焼での範囲に適用した制御の最適値として予め決定することができる。
バイパス弁固定状態から要求発生熱量Qrqが判定値Q2♯よりも上昇すると、再び間欠燃焼が開始される。ここで、判定値Q2♯は、Q2<Q2♯≦Q1の範囲内に設定することができる。
このとき、間欠燃焼再開時のバイパス弁80の開度が、初期ステップ数Xiniに対応する初期開度に変化すると、缶体流量q1の変化に応じて要求発生熱量Qrqを増加することにより、間欠燃焼が再開される可能性がある。このように、初期開度に復帰するためのバイパス弁80のステップ数Xの変化に応じて要求発生熱量Qrqが増減することにより、間欠燃焼の開始および停止が頻繁に切換わる虞がある。
したがって、実施の形態5では、間欠燃焼中にQrq<Q2となって間欠燃焼が停止される場合には、燃焼待機モードとは異なり、バイパス弁80の操作量であるステップ数Xを固定することにより、間欠燃焼の開始および停止が頻繁に切換わることを防止できる。
なお、バイパス弁固定状態において、流量の減少に応じた流量条件CD2の成立によってMOQオフが検出されると、燃焼待機モードへの遷移が実行される。このときには、次回のMOQオンに対応するために、バイパス弁80の開度は、初期ステップ数Xiniに従って制御される。図20のその他の部分は、図5と同様であるので詳細な説明は繰り返さない。
このように、実施の形態5に従う燃焼装置を搭載した給湯装置によれば、間欠燃焼中に要求発生熱量がさらに低下したときの制御動作を安定化することができる。
なお、本実施の形態では、燃焼機構20についてガスを燃料とするバーナ30で構成される例を示したが、加熱のためのエネルギ源は任意とすることができる。また、本実施の形態では、燃焼装置がバイパス弁80の制御によるバイパスミキシング方式の給湯装置に適用される例を説明したが、実施の形態1〜3に係る燃焼装置については、バイパスミキシング方式ではない構成の給湯装置に適用することが可能である。
なお、以上で説明した複数の実施の形態について、明細書内で言及されていない組み合わせを含めて、不整合や矛盾が生じない範囲内で、各実施の形態で説明された構成を適宜組合わせることは出願当初から予定されている点についても、確認的に記載する。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。