以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は原則的に繰返さないものとする。
[給湯装置の構成]
図1は、本発明の実施の形態に従う給湯装置の概略構成図である。
図1を参照して、給湯装置100は、一次熱交換器11、二次熱交換器21および燃焼バーナ30等が格納された燃焼缶体10(以下、単に「缶体」とも称する)と、送風ファン40と、入水管50と、バイパス管60と、出湯管70と、給湯管90と、コントローラ300とを備える。
入水管50には、水道水等の低温水(非加熱水)が給水される。入水管50および出湯管70の間には、缶体10をバイパスして、入水管50からの非加熱水を通流するためのバイパス管60が配置される。入水管50およびバイパス管60の間は、バイパス管60の流量を制御するための分配弁80が介挿接続される。
分配弁80の開度に応じて、給水量の一部が入水管50からバイパス管60へ分流される。全体給水量に対するバイパス管60の流量の比率を示す分配率K(0≦K≦1.0)は、分配弁80の開度に応じて制御される。分配率Kを用いて、バイパス管60および出湯管70の流量比率は、K:(1−K)で示される。
分配弁80を経由して缶体10へ供給された低温水は、まず二次熱交換器21によって余熱された後、一次熱交換器11によって主加熱される。一次熱交換器11および二次熱交換器21によって所定温度まで加熱された高温水は、出湯管70から出力される。
出湯管70は、合流部75においてバイパス管60と接続される。したがって、給湯装置100では、缶体10によって加熱された出湯管70からの高温水(加熱水)と、バイパス管60を通過した低温水(非加熱水)とが合流部75で混合されて、給湯管90から出力される。これにより、給湯管90から、台所や浴室等の給湯栓190や図示しない風呂への注湯回路などの所定の給湯箇所に、適温の湯が供給される。
いわゆるバイパスミキシング式の給湯装置100において、高温水および低温水の混合比率は、分配弁80の開度に応じた分配率Kに対応する。したがって、分配弁80によって、上記混合比率が制御される。
入水管50には、温度センサ110および流量センサ150が配置される。温度センサ110は、低温水の温度(以下、入水温度)Twを検出する。流量センサ150は、分配弁80よりも下流側(缶体側)に配置される。流量センサ150によって検出される流量Qは、缶体10を通過する流量(以下、缶体流量)に相当する。流量センサ150は、代表的には、羽根車式流量センサによって構成される。
出湯管70には、温度センサ120が設けられる。温度センサ120は、出湯管70とバイパス管60との合流部75よりも上流側(缶体側)に配置されて、缶体10からの出力温度Tb(以下、缶体温度)を検出する。
給湯管90には、流量調整弁95および温度センサ130が設けられる。流量調整弁95は、缶体10での加熱能力の不足により、設定湯温Tr*に従って給湯することが困難な場合に、給湯流量を絞るように制御される。たとえば、燃焼開始直後、あるいは、燃焼開始直後以外でも最大号数で運転する場合や最大許容流量で運転する場合等に、給湯流量を制限するように、コントローラ300が流量調整弁95の開度を制限することができる。
温度センサ130は、高温水および低温水が混合された後の給湯温度Thを検出する。温度センサ110,120,130は、代表的には、温度に依存して電気抵抗が変化するサーミスタによって構成される。
缶体10において、燃焼バーナ30から出力された燃料ガスは、送風ファン40からの燃焼用空気と混合される。図示しない点火装置によって混合気が着火されることにより、燃料ガスが燃焼されて火炎が生じる。燃焼バーナ30からの火炎によって生じる燃焼熱は、缶体10内で一次熱交換器11および二次熱交換器21へ与えられる。
一次熱交換器11は、燃焼バーナ30による燃焼ガスの顕熱(燃焼熱)により入水を熱交換によって加熱する。二次熱交換器21は、燃焼バーナ30からの燃焼排ガスの潜熱によって通流された水を熱交換によって加熱する。缶体10の燃焼ガスの流れ方向下流側には熱交換後の燃焼排ガスを排出処理するための排気経路15が設けられる。このように、缶体10では、燃焼バーナ30での燃焼による発生熱量により、一次熱交換器11および二次熱交換器21で、入水管50から供給された水を加熱する。
燃焼バーナ30へのガス供給管31には、元ガス電磁弁32、ガス比例弁33および、能力切換弁35a〜35cが配置される。元ガス電磁弁32は、燃焼バーナ30への燃料ガスの供給をオンオフする機能を有する。ガス供給管31のガス流量は、ガス比例弁33の開度に応じて制御される。
能力切換弁35a〜35cは、複数の燃焼バーナ30のうちの、燃料ガスの供給対象となるバーナ本数を切換えるために開閉制御される。缶体10での発生熱量は、バーナ本数およびガス流量の組み合わせによって決まる、燃焼バーナ30全体への供給熱量Gに比例する。したがって、要求発生熱量に対応させて、能力切換弁35a〜35cの開閉パターン(バーナ本数)およびガス比例弁33の開度(ガス流量)の組み合わせを決定する設定マップを予め作成することができる。
送風ファン40による送風量は、燃焼バーナ30全体からの供給熱量との空燃比が所定値(たとえば、理論空燃比)となるように制御される。送風ファン40の送風量は、ファン回転数と比例するので、送風ファン40の回転数は、供給熱量の変化に応じて設定される目標回転数に従って制御される。送風ファン40には、ファン回転数を検出するための回転数センサ45が設けられる。
コントローラ300は、各センサからの出力信号(検出値)およびユーザ操作を受けて、給湯装置100の全体動作を制御するために、各機器への制御指令を発生する。ユーザ操作には、給湯装置100の運転オン/オフ指令および設定湯温(Tr*)指令が含まれる。制御指令には、各弁の開閉および開度指令、送風ファン40への電気的入力指令(ファン駆動電圧指令)等が含まれる。
コントローラ300は、給湯装置100の運転指令がオンされると、流量センサ150によって検出される流量Qが最低作動流量(MOQ)を超えるのに応じて、缶体10での燃焼動作をオンする。燃焼動作がオンされると、元ガス電磁弁32が開放されて、燃焼バーナ30への燃料ガスの供給が開始される。
コントローラ300は、燃焼オン時には、給湯温度Thが設定湯温Tr*に制御されるように、分配弁80の開度および、缶体10での発生熱量(すなわち、燃焼バーナ30への供給熱量)を制御する。
[給湯装置の制御構成]
図2は、図1に示した給湯装置100における分配弁80、ガス比例弁33および能力切換弁35a〜35cの制御構成を説明するための機能ブロック図である。図2に示された各機能ブロックの機能は、コントローラ300によるソフトウェア処理ないしハードウェア処理によって実現することができる。
図2を参照して、コントローラ300は、分配弁制御部200と、缶体温度制御部400とを含む。分配弁制御部200は、給湯温度Thを設定湯温Tr*に一致させるように、分配弁80の開度を制御する。缶体温度制御部400は、給湯温度Thを設定湯温Tr*に一致させるように、燃焼バーナ30全体への供給熱量(燃料供給量)によって缶体10での発生熱量を制御する。
(分配弁の制御構成)
図3は、図1に示した給湯装置100における分配弁80の制御構成を説明するための概略図である。
図3を参照して、分配弁80の開度に応じて、バイパス管60の流量が制御される。これにより、入水管50からの全体給水量に対する、バイパス管60の流量と出湯管70の流量(すなわち、熱交換器11,21の通過流量)との比率(分配率K)が制御される。出湯管70からの高温水(加熱水)およびバイパス管60からの低温水(非加熱水)は、合流部75で混合されて、給湯管90から出力される。給湯温度Thは、入水温度Tw、缶体温度Tbおよび分配率Kを用いて、下記(1)式に従って算出される。
Th=K・Tw+(1−K)Tb ・・・(1)
すなわち、出湯管70は「第1の通水路」に対応し、バイパス管60は「第2の通水路」に対応する。また、分配弁80は「バイパス流量調整器」を実現する。
入水温度Twを検出する温度センサ110は「第1の温度検出器」に対応する。また、流量センサ150によって検出される流量Qは、熱交換器11,21および出湯管70の流量に相当する。すなわち、流量センサ150は「流量検出器」に対応する。
合流部75における、出湯管70からの高温水(加熱水)およびバイパス管60からの低温水(非加熱水)の混合比率(分配率K)は、分配弁80の開度によって制御できる。図4は、分配弁80の開度と分配率Kとの関係を説明するための図である。図4において、横軸は分配弁80の開度を示し、縦軸は分配率Kを示す。分配弁80が全開状態のとき、分配率K=1.0となり、全体給水量がバイパス管60の流量に一致する。一方、分配弁80が全閉状態のとき、分配率K=0となり、全体給水量が出湯管70の流量(熱交換器11,21の通過流量)に一致する。
分配弁80が、たとえばステッピングモータによって開度が調整されるように構成された電気式膨張弁である場合、分配弁80の開度は、ステッピングモータにおけるステップ数(すなわち、ステータの各相巻線を励磁するパルス信号の数)によって表される。分配弁80の絶対開度は(全閉または全開等の基準開度からの差)は、開度を変化させるごとに変化量(ステップ数)を累積加算することによって算出される。
図4を参照して、ステッピングモータにおけるステップ数を増加させると、分配弁80の開度が閉側に変化することにより、分配率Kが減少する。図4において、黒丸は分配弁80の開度に対する分配率Kの測定値を表しており、直線は測定値から演算された近似直線を表している。図4に示される関係に従って分配弁80の開度を制御することにより、給湯温度Thを制御することができる。具体的には、バイパス管60の流量を増加させるように分配率Kを上昇すると給湯温度Thは低下する。これに対して、バイパス管60の流量を減少させるように分配率Kを低下すると給湯温度Thは上昇する。
図5は、図2に示した分配弁制御部200による分配弁制御を説明するための機能ブロック図である。本実施の形態では、分配弁制御の一形態として、設定湯温Tr*に対する給湯温度Thの偏差に基づいて、分配弁80の開度(分配率K)、すなわちバイパス管60の流量をフィードバック制御する。
図5を参照して、分配弁制御部200は、流量制御部210と、開度指令生成部220とを含む。なお、以下では、分配弁制御部200が制御周期毎に分配弁80の開度を制御するものとして、現在の制御周期を第n番目(n:自然数)の制御周期として表記する。
流量制御部210は、制御周期毎に、設定湯温Tr*に対する給湯温度Thの検出値の温度偏差ΔTh(ΔTh=Tr*−Th)に基づいて、今回の制御周期における分配率K[n]を算出する。たとえば、流量制御部210はPI演算によって、下記(2)式に従って分配率K[n]を設定する。
K[n]=Kp・ΔTh+Σ(Ki・ΔTh) …(2)
式(2)中のKpは比例制御ゲインであり、Kiは積分制御ゲインである。式(2)に従って分配率K[n]を設定することにより、温度偏差ΔThを低減するためのフィードバック制御を実現できる。なお、フィードバック制御による制御量は、温度センサ130によって検出される給湯温度Thの温度偏差ΔThに基づく、P制御、PI制御または、PID制御等の公知の制御演算によって算出することができる。
開度指令生成部220は、分配弁80の開度と分配率Kとの関係(図4)を参照することにより、流量制御部210によって設定された分配率K[n]に基づいて、分配弁80の開度の目標値である開度指令を生成する。開度指令生成部220は、生成した開度指令を分配弁80(ステッピングモータ)へ出力する。これにより、分配弁80の開度は、分配率K[n]を実現するように制御される。
(供給熱量の制御構成)
缶体温度制御部400(図2)は、燃焼バーナ30全体への供給熱量Gによって缶体10での発生熱量を制御する。燃焼バーナ30全体への供給熱量Gは、給湯温度Thを設定湯温Tr*に一致させるように設定される。当該供給熱量Gを実現するようなバーナ本数およびガス流量の組み合わせが実現されるように、缶体温度制御部400は、ガス比例弁33の開度および能力切換弁35a〜35cの開閉を制御する。なお、以下では、缶体温度制御部400が制御周期毎に供給熱量Gを制御するものとして、現在の制御周期を第n番目の制御周期として表記する。
一般的に、缶体10における燃焼動作の制御において、供給熱量Gは、缶体温度Tbの目標値Tb*(以下、缶体目標温度Tb*)および缶体10の通過流量(缶体流量)Qに基づいてフィードフォワード制御することができる。たとえば、供給熱量Gは、缶体温度Tbを缶体目標温度Tb*に一致させるための、缶体10での要求発生熱量に基づいて設定される。具体的には、缶体10での必要昇温量ΔTは、缶体目標温度Tb*と、温度センサ110によって検出された入水温度Twとの差で示される(ΔT=Tb*−Tw)。したがって、今回の制御周期における供給熱量G[n]は、缶体流量Qおよび必要昇温量ΔTとに基づいて、下記(3)式に従って算出される。
G[n]=(Tb*−Tw)・Q …(3)
しかしながら、缶体目標温度Tb*に基づく供給熱量Gのフィードフォワード制御を、バイパスミキシング式の給湯装置に適用した場合には、以下のような問題が生じる。
詳細には、バイパスミキシング式の給湯装置においては、分配弁80の開度(分配率K)の変動によって缶体流量Qが変動する。さらに、給湯温度Thを設定湯温Tr*に制御するためには、缶体流量Qの変動に合わせて缶体目標温度Tb*を変動させる必要が生じる。この結果、分配弁80の開度の変動に応じて缶体流量Qおよび缶体目標温度Tb*がともに変動することになり、供給熱量G[n]が安定しない。その結果、缶体10での発生熱量を安定的に制御することが困難となる。
したがって、本実施の形態では、缶体目標温度Tb*および缶体流量Qに代えて、設定湯温Tr*および給湯流量Qtlに基づいて供給熱量Gをフィードフォワード制御する。すなわち、供給熱量Gは、給湯温度Thを設定湯温Tr*に一致させるための、缶体10での要求発生熱量に基づいて設定される。
具体的には、缶体10での必要昇温量ΔTは、設定湯温Tr*と、温度センサ110によって検出された入水温度Twとの差で示される(ΔT=Tr*−Tw)。そして、今回の制御周期における供給熱量G[n]は、給湯管90における給湯流量Qtl(以下、トータル流量Qtl)と必要昇温量ΔTとに基づいて、下記(4)式に従って算出される。
G[n]=(Tr*−Tw)・Qtl …(4)
式(4)において、トータル流量Qtlは、給湯栓190の開度や給湯管90に設けられた流量調整弁95の開度によって決まるため、分配弁80の開度(分配率K)の変動によってもトータル流量Qtlには変動が生じない。したがって、供給熱量G[n]は、分配弁80の開度(分配率K)の変動が生じたときにも安定している。これにより、缶体10での発生熱量を安定的に制御することができる。
ここで、給湯温度Thを設定湯温Tr*に一致させるために設定される供給熱量Gは、式(3)に従って缶体目標温度Tb*および缶体流量Qを用いて算出しても、式(4)に従って設定湯温Tr*およびトータル流量Qtlを用いて算出しても、理論上は常に同じ値となるはずである。しかしながら、上記のように、缶体目標温度Tb*および缶体流量Qを用いて算出される供給熱量Gは、分配弁80の開度の変動の影響を受け易いのに対して、設定湯温Tr*およびトータル流量Qtlを用いて算出される供給熱量Gは、分配弁80の開度の変動の影響を受け難くなる。このため、バイパスミキシング式の給湯装置においても、缶体10での発生熱量を安定的に制御することができる。
しかしながら、一方で、設定湯温Tr*およびトータル流量Qtlに基づいたフィードフォワード制御においては、缶体温度Tbが設定湯温Tr*よりも低い場合に缶体10での加熱能力が不足してしまうという課題がある。
詳細には、缶体温度Tbが設定湯温Tr*よりも低い場合には、設定湯温Tr*に対する給湯温度Thの偏差ΔTh(ΔTh=Tr*−Th)が大きくなるため、分配弁制御部200は、バイパス管60の流量を減少させるように分配率Kを低下させる。これにより、分配弁80の開度は略全閉位置(分配率K≒0)に制御されるため、バイパス管60の流量が減少して略零となる。したがって、トータル流量Qtlが缶体流量Qに略一致するようになる(Qtl≒Q)。このような場合、式(4)に従えば、設定湯温Tr*が実質的に缶体温度Tbの目標値となり、缶体温度Tbが設定湯温Tr*に一致するように供給熱量Gが設定されることになる。
一方、缶体10での発生熱量の制御は、基本的に、缶体目標温度Tb*を設定湯温Tr*よりも高く設定することにより(たとえば、Tb*=Tr*+α)、バイパス管60の低温水との混合によって、給湯温度Thを設定湯温Tr*に制御できるものである。これに反して、設定湯温Tr*を実質的な目標値として式(4)に従って算出される供給熱量Gは、設定湯温Tr*よりも高い缶体目標温度Tb*に基づいて式(3)に従って算出される供給熱量Gに比べて大幅に減少することになる。このような供給熱量Gの減少は、缶体10での加熱能力の不足へと繋がる。
缶体温度Tbが設定湯温Tr*よりも低くなる場面としては、缶体10の冷間状態から給湯を開始させるコールドスタート時や、給湯装置100が運転オン状態のままでカランが再び開栓された再出湯時などがある。たとえば、コールドスタート時には、供給熱量Gが減少することにより、分配弁80を経由して缶体10へ供給された低温水の加熱速度が遅くなるため、給湯温度Thが設定湯温Tr*に到達するまでに時間がかかってしまう。
また、再出湯時には、供給熱量Gが減少することによって、給湯温度Thが設定湯温Tr*に対してアンダーシュートする可能性がある。さらに、コールドスタート時および再出湯時のそれぞれにおいて、缶体10での発生熱量が抑えられるため、給湯温度Thが設定湯温Tr*に向けて速やかに上昇することができず、分配弁80の開度が全閉位置近傍で貼り付いてしまう可能性がある。
したがって、本実施の形態では、設定湯温Tr*およびトータル流量Qtlに基づいて供給熱量Gを算出するフィードフォワード制御において、分配弁80の開度(分配率K)に応じて、算出された供給熱量Gを補正する。具体的には、上記のように分配率Kの低下に伴って供給熱量Gが減少するという現象を回避するために、分配率Kが予め定められた下限値を下回る場合には、式(4)に従って算出された供給熱量Gをより高い値に補正する。
図6は、図2に示した缶体温度制御部400による供給熱量の制御を説明するための機能ブロック図である。
図6を参照して、缶体温度制御部400は、補正部410と、供給熱量演算部420と、供給ガス量制御部430とを含む。
補正部410は、制御周期毎に、分配弁制御部200の流量制御部210(図5)から分配弁80の分配率K[n]を受ける。補正部410は、分配率K[n]を上方または下方に補正可能に構成される。補正部410は、補正された分配率K[n](以下、補正分配率K♯[n])を供給熱量演算部420へ出力する。
図7は、補正部410による分配率Kの補正を説明するための概念図である。
図7を参照して、波形701は、分配弁80の開度と分配率Kとの関係(図4)における近似直線をプロットしたものであり、分配弁80の開度ごとに実際に実現される分配率K(実績値)を示している。波形702は、補正分配率K♯を示している。補正分配率K♯は、供給熱量演算部420における供給熱量Gの算出に用いられるものである。
分配率Kには、上限値Kmaxおよび下限値Kminが予め設定されている(0<Kmin<Kmax<1)。現在の分配弁80の開度に対応する分配率K(実績値)が下限値Kminを下回る場合には、補正部410は、分配率Kをより高い値に補正する。たとえば、補正部410は、図7に示すように、分配率Kを下限値Kminに補正する。これにより、分配弁80の開度が下限値Kminに対応する所定開度S2よりも閉側に位置するときには、補正分配率K♯は下限値Kminに固定される。したがって、分配弁80の開度が全閉位置(K=0)に近付くに従って(すなわち、バイパス管60の流量が減少するに従って)、分配率K(実績値)に対する補正量(増加量)が大きくなる。
さらに、補正部410は、現在の分配弁80の開度に対応する分配率K(実績値)が上限値Kmaxを超える場合には、分配率Kをより低い値に補正する。たとえば、補正部410は、分配率Kを上限値Kmaxに補正する。これにより、分配弁80の開度が上限値Kmaxに対応する所定開度S1よりも開側に位置するときには、補正分配率K♯は上限値Kmaxに固定される。したがって、分配弁80の開度が全開位置(K=1.0)に近付くに従って(すなわち、バイパス管60の流量が増加するに従って)、分配率K(実績値)に対する補正量(減少量)が大きくなる。
なお、現在の分配弁80の開度に対応する分配率K(実績値)が下限値Kmin以上であって、かつ上限値Kmax以下である場合には、補正部410は、分配率Kの補正を行なわない。したがって、補正分配率K♯は分配率K(実績値)に一致している。
再び図6を参照して、供給熱量演算部420は、制御周期毎に、設定湯温Tr*、流量センサ150により検出された缶体流量Q、温度センサ110によって検出された入水温度Tw、および補正分配率K♯[n]に基づいて、今回の制御周期における供給熱量G[n]を算出する。
具体的には、供給熱量演算部420は、まず、流量センサ150により検出された缶体流量Qおよび補正分配率K♯に基づいて、給湯流量(トータル流量)Qtl♯を算出する。なお、トータル流量Qtl♯は、補正分配率K♯に基づいて算出されるので、以下では、補正トータル流量Qtl♯と表記する。今回の制御周期における補正分配率K♯[n]を用いて、今回の制御周期における補正トータル流量Qtl♯[n]は、下記(5)式に従って算出される。
Qtl♯[n]=Q/(1−K♯[n]) …(5)
次に、供給熱量演算部420は、設定湯温Tr*、温度センサ110によって検出された入水温度Tw、および今回の制御周期における補正トータル流量Qtl♯[n]を式(4)に代入することにより、今回の制御周期における供給熱量G[n]を算出する。すなわち、供給熱量G[n]は、下記(6)式に従って算出される。
G[n]=(Tr*−Tw)・Qtl♯[n] …(6)
供給ガス量制御部430は、今回の制御周期における供給熱量G[n]を実現するようなバーナ本数およびガス流量の組合せが実現されるように、ガス比例弁33の開度および能力切換弁35a〜35cの開閉を制御する。
供給熱量演算部420では、分配弁80の開度が所定開度S2よりも閉側に位置するときには、補正分配率K♯[n]が分配率K(実績値)よりも高い値を示すため(図7参照)、式(5)において、補正トータル流量Qtl♯[n]は、分配率K(実績値)に基づくトータル流量Qtl(実績値)よりも高い値を示すことになる。そして、補正トータル流量Qtl♯[n]がトータル流量Qtl(実績値)よりも高い値に補正された結果、式(6)において、供給熱量G[n]は、トータル流量Qtl(実績値)に基づく供給熱量G[n]よりも高い値に補正されることになる。
すなわち、分配率K(実績値)が下限値Kminを下回る場合には、分配率K(実績値)を上方に補正した補正分配率K♯を用いて供給熱量G[n]を算出することで、供給熱量G[n]は、分配率K(実績値)に基づいて算出される供給熱量G[n]よりも高い値をとることになる。これにより、分配率Kの低下に伴って供給熱量Gが減少するという現象を回避することができる。したがって、缶体温度Tbが設定湯温Tr*よりも低い場合であっても、分配弁80を経由して缶体10へ供給された低温水の加熱速度を速めて、缶体温度Tbを速やかに上昇させることができる。この結果、コールドスタート時や再出湯時において給湯温度Thを速やかに制御することが可能となる。
なお、缶体温度Tbが上昇するに従って、設定湯温Tr*に対する給湯温度Thの偏差ΔTh(ΔTh=Tr*−Th)が小さくなると、分配弁制御部200は、バイパス管60の流量を増加させるように分配率Kを増加させる。やがて、分配率K(実績値)が下限値Kmin以上になると、補正部410は、補正分配率K♯を分配率K(実績値)に一致させるため(図7参照)、補正分配率K♯に基づいて算出される供給熱量G[n]と、分配率K(実績値)に基づいて算出される供給熱量G[n]とは等しい値をとることになる。したがって、本来の設定湯温Tr*およびトータル流量Qtlに基づいて供給熱量Gを制御するフィードフォワード制御が実行されることになり、供給熱量G[n]は、分配弁80の開度の変動の影響を受けることなく、安定的に制御される。以上のようにして、本実施の形態によれば、給湯温度Thを安定的かつ速やかに制御することができる。この結果、バイパスミキシング式の給湯装置100の出湯特性を向上させることが可能となる。
なお、図6の構成においては、補正部410を、分配率K(実績値)が下限値Kminを超える場合に分配率Kを下限値Kminに補正する構成としたが、少なくとも補正分配率K♯が分配率K(実績値)よりも高い値であれば、供給熱量G[n]が分配率K(実績値)に基づく供給熱量G[n]よりも高い値に補正されるため、本発明の効果を享受することが可能である。したがって、補正部410は、補正分配率K♯を下限値Kminより高い値としても、下限値Kminより低い値としてもよい。
さらに、図6の構成において、補正部410は、分配弁80の開度が所定開度S1よりも開側に位置するときには、補正分配率K♯[n]を、分配率K(実績値)よりも低い値に補正する(図7参照)。これにより、式(5)において、補正トータル流量Qtl♯[n]は、分配率K(実績値)に基づくトータル流量Qtl(実績値)よりも低い値を示すことになる。そして、補正トータル流量Qtl♯[n]がトータル流量Qtl(実績値)よりも低い値に補正された結果、式(6)において、供給熱量G[n]は、トータル流量Qtl(実績値)に基づく供給熱量G[n]よりも低い値に補正されることになる。
すなわち、分配率K(実績値)が上限値Kmaxを超える場合には、分配率K(実績値)を下方に補正した補正分配率K♯を用いて供給熱量G[n]を算出することで、供給熱量G[n]は、分配率K(実績値)に基づいて算出される供給熱量G[n]よりも低い値をとることになる。
缶体温度Tbが缶体目標温度Tb*を超えることによって、給湯温度Thが設定湯温Tr*よりも高くなった場合には、分配弁制御部200は、給湯温度Thを低下させるために、バイパス管60の流量を増加させるように分配率Kを上昇させる。これにより、分配弁80を経由して缶体10へ供給される低温水が制限されるため、缶体10を通過する流量(缶体流量)Qが減少する。缶体流量Qが少なくなることで缶体10での加熱が促進されることにより、缶体温度Tbが更に上昇する可能性がある。
本実施の形態によれば、このような場合においても、分配率K(実績値)が上限値Kmaxを超えると、供給熱量G[n]がより低い値に補正されるため、缶体10での発生熱量を抑えることができる。これにより、缶体温度Tbの更なる上昇を抑制することが可能となる。なお、缶体10での発生熱量を抑えることで、設定湯温Tr*に対する給湯温度Thの偏差ΔTh(ΔTh=Tr*−Th)が小さくなると、分配弁制御部200は、バイパス管60の流量を減少させるように分配率Kを減少させる。やがて、分配率K(実績値)が上限値Kmax以下になると、補正部410は、補正分配率K♯を分配率K(実績値)に一致させるため(図7参照)、補正分配率K♯に基づいて算出される供給熱量G[n]と、分配率K(実績値)に基づいて算出される供給熱量G[n]とは等しい値をとることになる。したがって、本来の設定湯温Tr*およびトータル流量Qtlに基づいて供給熱量Gを制御するフィードフォワード制御が実行されることになり、供給熱量G[n]は、分配弁80の開度の変動の影響を受けることなく、安定的に制御される。
なお、図6の構成においては、補正部410を、分配率K(実績値)が上限値Kmaxを超える場合に分配率Kを上限値Kmaxに補正する構成としたが、少なくとも補正分配率K♯が分配率K(実績値)よりも低い値であれば、供給熱量G[n]が分配率K(実績値)に基づく供給熱量G[n]よりも低い値に補正されるため、本発明の効果を享受することが可能である。したがって、補正部410は、補正分配率K♯を上限値Kmaxより高い値としても、上限値Kmaxより低い値としてもよい。
以上説明したように、本実施の形態に従う給湯装置によれば、設定湯温Tr*および給湯流量Qtlに基づいたフィードフォワード制御によって供給熱量Gを制御することにより、分配弁80の開度の変動の影響を受けることなく、供給熱量Gを安定的に制御することができる。さらに、上述したフィードフォワード制御において、缶体温度Tbが設定湯温Tr*よりも低いために分配弁80の開度(分配率K)が下限値Kminを下回る場合には、供給熱量Gが、分配率K(実績値)に基づいて算出される供給熱量Gよりも高い値に補正されるため、コールドスタート時や再出湯時において缶体温度Tbを速やかに上昇させることができる。この結果、バイパスミキシング式の給湯装置100において、給湯温度Thを安定的かつ速やかに制御することが可能となる。
さらに、本実施の形態に従う給湯装置によれば、上述したフィードフォワード制御において、缶体温度Tbの上昇によって分配弁80の開度(分配率K)が上限値Kmaxを超える場合には、供給熱量Gを、分配率K(実績値)に基づいて算出される供給熱量G[n]よりも低い値に補正されるため、缶体流量Qの減少に伴う缶体温度Tbの更なる上昇を抑制することができる。
なお、缶体温度制御部400は、上述したフィードフォワード制御に対して、フィードバック制御をさらに組み合わせることによって、今回の制御周期における供給熱量G[n]を算出してもよい。
たとえば、フィードバック制御による制御量は、温度センサ120によって検出される缶体温度Tbの温度偏差ΔTb(ΔTb=Tb*−Tb)に基づく、P制御、PI制御または、PID制御等の公知の制御演算によって算出することができる。この場合には、缶体温度制御部400は、フィードバック制御による制御量と、上述したフィードフォワード制御による制御量との加算によって、供給熱量G[n]を算出することができる。フィードバック制御を組み合わせることにより、缶体温度Tbをより高精度に制御することが可能となる。
また、図1では、熱交換器11,21の上流側に分配弁80を配置する構成を示したが、バイパス弁の配置はこのような例に限定されるものではない。たとえば図8に示されるように、入水管50から分岐部74でバイパス管60を分岐させた後、バイパス管60および出湯管70の合流部に分配弁80を配置することも可能である。このような構成においても、設定湯温Tr*およびトータル流量Qtlに基づいて供給熱量Gを制御するフィードフォワード制御を同様に実行することができる。さらに、フィードフォワード制御における供給熱量を、分配弁80の開度(分配率K)に応じて補正することができる。これにより、給湯温度Thを安定的かつ速やかに制御することができる。
なお、給湯装置の構成は図1の例示に限定されるものではなく、バイパス管の配置によって、高温水(加熱水)および低温水(非加熱水)を混合するミキシング式の給湯装置における高温水および低温水の混合比率の制御に対して、本発明を共通に適用することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。