しかしながら、特許文献1に記載の量検知手段のうち、カンチレバー型の可動棒を備えたものは、中和剤を充填する容器の幅方向に向けて可動棒を設置する必要があるので、容器の幅寸法が大きくなるという問題がある。一方、容器に垂直棒を上下動自在に取り付けたものは、容器の幅寸法については小さくできるが、垂直棒の一端が容器の上面から外部に突出するので、容器及び垂直棒を含む中和装置の高さ寸法が大きくなる。
また、特許文献1に記載の量検知手段は、可動棒又は垂直棒を量検知用のプラス電極として用い、これら可動棒又は垂直棒の先端がドレン水に接触して、マイナス電極である水封電極と電気的に導通したことを制御装置が検知して、警報ランプを点灯するという構成になっている。このため、特許文献1に記載の量検知手段を備えた中和装置は、中和剤の残量が警報ランプを点灯するための所定の量となるまでは、可動棒又は垂直棒の先端がドレン水に接触しないようにするため、中和剤容器内にドレン水の水位以上の高さ位置まで中和剤を充填する必要がある。このため、特許文献1に記載の中和装置は、ドレン水の水位以上の高さ位置にある中和剤がドレン水の中和に関与できず、ドレン水の中和を効率的に行えないという問題もある。
さらに、特許文献1に記載の量検知手段は、中和剤の目詰まり等により、容器内の水位が異常に上昇して、可動棒又は垂直棒がドレン水に接触した場合、制御装置により中和剤の残量が少なくなったと判定されるので、中和剤の残量判定を正確に行うことができないという問題もある。
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、小型にして酸性液の中和を効率的に行うことができ、かつ、容器内の中和剤の残量を正確に検出できる中和処理器を提供することにある。
本発明は、上記の技術的課題を解決するため、酸性液の中和剤が収納された処理槽と、前記処理槽内に配置され、前記処理槽内に収納された前記中和剤の残量が予め設定された所定量に達したか否かを検知する残量センサとを備えた酸性液の中和処理器において、前記残量センサとして、前記処理槽の上部に所定の間隔を隔てて設定された2本の電極棒と、前記処理槽内に上下動のみ可能に配置され、前記中和剤の重量によって浮上高さが規制されるフロート部と、前記フロート部と一体に形成されたカップ部と、前記カップ部内に溜められた酸性液に前記2本の電極棒が接触したことを検出する検出器とからなるものを備えたことを特徴とする。
本構成によると、フロート部及びカップ部の上方に配置された中和剤の中和反応による減量に伴って、フロート部及びカップ部がフロート部の浮力によって処理槽内を上昇する。そして、カップ部が処理槽内の酸性液の水面まで上昇した段階で、カップ部内に溜められた酸性液に2本の電極部の先端が接触し、これら2本の電極棒が電気的に導通する。よって、検出部は、2本の電極棒が非導通状態から導通状態に変化したこと、ひいては、処理槽内の中和剤の残量が予め定められた所定量に達したことを検出できる。このように、本構成によると、フロート部及びカップ部を処理槽内で上下方向にのみ移動させることによって、処理槽内の中和剤の残量が予め定められた所定量に達したことを検出できるので、適切な中和剤の必要量のみを入れることができ、処理槽及び残量センサを含む中和処理器を小型に形成できる。また、本構成によると、処理槽内における酸性液の水位を中和剤の上面よりも上に設定できるので、全ての中和剤を常時酸性液の中和に関与させることができる。なお、中和剤の上部が酸性液の水面以上の高さにあったとしても、例えば中和剤の上方に酸性液の流れをコントロールする拡散プレートを設け、酸性液を中和剤の上方から処理槽内に均一に落下させるようにすれば、全ての中和剤を常時酸性液の中和に関与させることができ、酸性液の中和効率を高めることができる。
また本発明は、前記構成の酸性液の中和処理器において、前記処理槽は、前記フロート部及び前記カップ部を上下方向にのみ移動可能に案内するガイド部材を有し、当該ガイド部材は、その内側に形成される前記フロート部、前記カップ部及び前記中和剤の収納空間内に、前記処理槽内の酸性液が流通可能であるように形成されていることを特徴とする。
処理槽にガイド部材を形成すると、中和剤の消耗に伴うフロート部及びカップ部の上昇動作を円滑に行わせることができるので、残量センサの動作信頼性を高めることができる。また、処理槽内の酸性液導入口直下に拡散プレートを設け、拡散プレートに溝や孔などのガイドを付けて、前記収納空間も含めた処理槽内全体に酸性水がほぼ均一に流れ込むようにすると、中和剤モジュール及び寿命検知用中和剤モジュールの消耗度を均一化できるので、この点からも残量センサの動作信頼性を高めることができる。
また本発明は、前記構成の酸性液の中和処理器において、前記中和剤として、前記収納空間内及び前記収納空間を除く前記処理槽内に粒状中和剤を収納したことを特徴とする。
粒状中和剤は各種のものが市販されているので、これを用いることによって酸性液の中和処理器を安価に実施できる。
また本発明は、前記構成の酸性液の中和処理器において、前記収納空間内に収納される前記粒状中和剤は、個々の粒状中和剤がバインダを介して一体に結合され、前記収納空間内に収納可能な形状に成形された寿命検知用中和剤モジュールであることを特徴とする。
個々の粒状中和剤がバインダを介して一体に結合された寿命検知用中和剤モジュールを用いると、フロート部及びカップ部の上方に配置される中和剤の量を安定化できるので、中和処理器の寿命検知の信頼性を高めることができる。
また本発明は、前記構成の酸性液の中和処理器において、前記収納空間を除く前記処理槽内に収納される前記粒状中和剤は、個々の粒状中和剤がバインダを介して一体に結合され、前記収納空間を除く前記処理槽内に収納可能な形状に成形された中和剤モジュールであることを特徴とする。
個々の粒状中和剤がバインダを介して一体に結合された中和剤モジュールをフロート部及びカップ部の収納空間を除く処理槽内に収納すると、バインダで結合されていない粒状中和剤を該部に収納する場合に比べて、中和剤の充填作業を簡略化できるので、中和処理器の組立性を高めることができる。
また本発明は、前記構成の酸性液の中和処理器において、前記中和剤モジュールの一部に、前記フロート部、前記カップ部及び前記寿命検知用中和剤を配置するための切欠部を形成したことを特徴とする。
中和剤モジュールの一部に切欠部を形成すると、当該切欠部内に、フロート部、カップ部及び寿命検知用中和剤を配置できるので、本体部にこれらの部材を配置するためのスペースを形成する必要がなく、本体部の形状を単純化できる。また、中和剤モジュールと寿命検知用中和剤を同一の処理槽内に配置できるので、これら中和剤モジュールと寿命検知用中和剤の中和反応による消耗度合いを均一化することができる。これらにより、潜熱回収型給湯装置等の潜熱回収型熱交換器への適用を容易化できる。
本発明の酸性液の中和処理器は、処理槽内に収納された中和剤の残量センサとして、フロート式のものを用いたので、小型にして酸性液の中和を効率的に行うことができ、かつ、容器内の中和剤の残量を正確に検出できる。
以下、本発明に係る中和処理器の実施の形態を、図を用いて説明する。なお、以下に記載する実施の形態は、本発明を具体化する際の一例を示すものであって、本発明の範囲をその記載の範囲に限定するものではない。従って、本発明は、以下に記載する実施の形態に種々の変更を加えて実施することができる。
図1及び図2に示すように、実施の形態に係る酸性液の中和処理器1は、有底の筒状に形成された本体部2と、本体部2の上部開口端に被着される蓋部3と、本体部2内に収納される中和剤モジュール4と、中和剤モジュール4の寿命を検知するフロート式残量センサ5と、フロート式残量センサ5による中和剤モジュール4の寿命検知タイミングを調整する寿命検知用中和剤モジュール6と、蓋部3と中和剤モジュール4との間に配置され、蓋部3側から本体部2内に流入した酸性液Aを中和剤モジュール4の上面の面方向に均等に分配する拡散プレート7と、本体部2内における酸性液Aのオーバーフローを検知するオーバーフロー検知センサ8とから主に構成される。
本体部2は、所要の容積を有する直方状に形成されており、底板の中央部には、処理済み液Bの排出口21aを有する排出管21が下向きに突設されると共に、排出口21aに連通する中央開口22aを有する第1管体22が上向きに突設されている。また、本体部2の内面における底板の周縁部分には、中和剤モジュール4を載置するための段部23が形成されている。さらに、本体部2の内面の一隅部には、図1、図2及び図3に示すように、フロート式残量センサ5のフロート部51及び寿命検知用中和剤モジュール6を上下方向に案内する3本のガイド部材24が形成されており、これら3本のガイド部材24で囲まれた円形の部分が、フロート部51a、カップ部51b及び寿命検知用中和剤モジュール6の収納空間25になっている。このように、本体部2内にガイド部材24を形成すると、中和剤の消耗に伴うフロート部51a、カップ部51b及び寿命検知用中和剤モジュール6の上昇動作を円滑に行わせることができるので、残量センサ5の動作信頼性を高めることができる。また、3本のガイド部材24によってフロート部51a、カップ部51b及び寿命検知用中和剤モジュール6の収納空間25を形成すると、各ガイド部材24巻の隙間から収納空間25内に処理槽26内の酸性液Aを流通させることができるので、中和剤モジュール4及び寿命検知用中和剤モジュール6の消耗度を均一化でき、この点からも残量センサの動作信頼性を高めることができる。
蓋部3は、図1及び図2に示すように、本体部2の上部開口端を遮閉可能な大きさを有する矩形の板状に形成されており、その中央部には、酸性液Aの導入口31aを有する導入管31が上向きに突設されている。また、本体部2に形成されたガイド部材24と対向する蓋部3の一部には、フロート式残量センサ5を構成する2本の電極棒52を着脱可能に取り付ける第1電極取付部32が形成されると共に、酸性液の導入管31を介してその反対側には、オーバーフロー検知センサ8を構成する2本の電極棒81を着脱可能に取り付ける第2電極取付部33が形成されている。フロート式残量センサ5を構成する2本の電極棒52は、所要の間隔を隔てて第1電極取付部32に取り付けられ、オーバーフロー検知センサ8を構成する2本の電極棒81は、所要の間隔を隔てて第2電極取付部33に取り付けられる。
フロート式残量センサ5は、前出のフロート部51及び2本の電極棒52と、これら2本の電極棒52の導通状態を検出する検出器53とから構成される。フロート部51は、図4(a)、(b)に示すように、酸性液A及び処理済み液Bよりも比重が小さい気体、例えば空気が封入されたフロート本体51aと、フロート本体51aの上部に形成された液溜めカップ51bとから構成されており、液溜めカップ51bを上向きにして収納空間25内に設定される。初期状態においては、図4(a)に示すように、フロート部51の上方に長大な寿命検知用中和剤モジュール6が配置されており、フロート部51の浮力よりも寿命検知用中和剤モジュール6の重量の方が勝っているので、フロート部51は本体部2の底部に位置している。これに対して、酸性液Aの中和処理が進行し、中和剤の消耗に伴って寿命検知用中和剤モジュール6の重量が減少すると、寿命検知用中和剤モジュール6の重量よりもフロート部51の浮力が勝った段階で、フロート部51が浮上し、図4(b)に示すように、液溜めカップ51b内に2本の電極棒52が入る。液溜めカップ51b内には酸性液Aが溜められているので、これによって2本の電極棒52が電気的に導通する。中和剤モジュール4と寿命検知用中和剤モジュール6は、共に本体部2内に収納されているので、中和剤モジュール4も寿命検知用中和剤モジュール6と同一の比率で消耗する。よって、電極棒52の導通状態を検出器53で検出することにより、中和剤モジュール4の寿命を検知することができる。なお、中和剤モジュール4及び寿命検知用中和剤モジュール6の構成については、後に詳細に説明する。
このように、実施の形態に係る中和処理器1は、フロート部51a及びカップ部51bを収納空間25内で上下方向にのみ移動させることによって、処理槽26内の中和剤の残量が予め定められた所定量に達したことを検出できるので、処理槽26及び残量センサ5を含む中和処理器1を小型に形成できる。また、本構成によると、処理槽26内における酸性液の水位を中和剤モジュール4の上面よりも上に設定できるので、全ての中和剤を常時酸性液の中和に関与させることができる。また、中和剤の上部が酸性液の水面以上の高さにあったとしても、中和剤モジュール4及び寿命検知用中和剤モジュール6の上方に、蓋部3に開設された酸性液Aの導入口31aから本体部2内に流入した酸性液Aを中和剤モジュール4の上面の面方向に均一に分配する拡散プレート7を設けたので、全ての中和剤を常時酸性液の中和に関与させることができ、酸性液の中和効率を高めることができる。
一方、オーバーフロー検知センサ8は、前出の2本の電極棒81と、これら2本の電極棒81の導通状態を検出する検出器82とから構成される。実施の形態に係る中和処理器1は、潜熱回収型給湯装置等の潜熱回収型熱交換器に適用されるものであり、潜熱回収型熱交換器の排ガスから分離された酸性のドレン水(酸性液)を中和処理して、下水道法に定められたpH値(5.8〜8.6)の処理済み液にして排出するものである。潜熱回収型熱交換器を稼働したときのドレン水の発生量は既知であり、本体部2の容積は、最大流量のドレン水が発生した場合にもオーバーフローしないように設計される。しかし、例えば中和剤モジュールの目詰まり等の予期しない事態の発生により、本体部2内でドレン水がオーバーフローする場合も考えられる。ドレン水がオーバーフローした場合、潜熱回収型熱交換器は、エラー停止するように設計されており、エラー停止を解除するためには、メーカにサービスマンの派遣を依頼する等の手続が必要となる。オーバーフロー検知センサ8は、この潜熱回収型熱交換器のエラー停止を防止するためのものであり、ドレン水がオーバーフローすると、図5に示すように、2本の電極棒81がドレン水中に浸漬されて導通するので、これら2本の電極棒81の導通状態を検出器82で検出することにより、ドレン水のオーバーフローを検知することができる。
拡散プレート7は、図1及び図2に示すように、第2管体71の形成部を中心として、周縁部が下向きに湾曲している。拡散プレート7の周縁部は、拡散プレート7を本体部2内の所定位置に収納したとき、本体部2に形成されたフロート部51及び寿命検知用中和剤モジュール6の収納空間25と対向する部分を除いて、本体部2の内壁に密着するように形成される。そして、拡散プレート7を本体部2内に収納したときに中和剤モジュール4の上面と対向する部分には、複数の酸性液流通孔72が開設されている。これら複数の酸性液流通孔72は、中和剤モジュール4の上面に酸性液を均等に分配できるように開設される。また、中和剤モジュール4の上面に酸性液を均等に分配できるようにするため、拡散プレート7の上面に溝を形成することもできる。一方、第2管体71は、その下端部を本体部2の底板に突き当てたときに、拡散プレート7を蓋部3と中和剤モジュール4の間の所定の高さ位置に保持可能な長さに形成される。また、第2管体71は、その内径が、本体部2に形成された第1管体22の外径よりも大きく形成されており、図1に示すように、第1管体22の外周に配置される。さらに、第2管体71の下端部には、図2に明瞭に図示されているように、処理済み液Bの流通口となる切欠部73が第2管体71の周方向に等分に形成される。切欠部73の長さは、図1に示すように、本体部2に形成された段部23の高さと同等とする。
従って、第1管体22と第2管体71を同心に配置したとき、本体部2の内壁と、段部23の上面と、第2管体71の外周面とをもって、中和剤モジュール4の収納部である処理槽26が形成される。また、処理槽26の下方の段部23の周面と、本体部2の底板と、第2管体71の外周面とをもって、処理済み液Bの貯留部27が形成される。さらに、第1管体22の外周面と第2管体71の内周面との間には、処理済み液Bが下から上に流れる処理済み液の流通路28が形成される。処理済み液の貯留部27と流通路28は、切欠部73を介して連通される。
本体部2、蓋部3及び拡散プレート7は、適度の硬度と成形性を有する任意の材料を用いて製造可能であるが、比較的安価にして任意の形状を容易に成形可能であることから、プラスチック材料を用いて製造することが特に好ましい。また、本体部2及び蓋部3は、ボルトを用いて開閉可能に結合することもできるし、超音波融着、接着、溶接等の手段を用いて開閉不能に結合することもできる。
中和剤モジュール4及び寿命検知用中和剤モジュール6は、粒状の中和剤をバインダで一体に結合したものであり、それぞれ処理槽26内に収納可能な形状及び収納空間25内に収納可能な形状に成形してなる。なお、酸性液の中和剤としては、炭酸カルシウム、消石灰、苛性ソーダ、ソーダ灰、生石灰、石灰石、苦土石灰、酸化マグネシウム等を挙げることができる。これらの材質が異なる中和剤は、単体で用いることもできるし、混合して用いることもできる。酸性液の中和剤として炭酸カルシウムを用いる場合には、寒水石等と呼ばれる白色石灰石の砕石を用いることができる。
中和剤モジュール4は、図1及び図2に示すように、処理槽26内に密に収納可能な形状及び大きさに成形されており、フロート部51及び寿命検知用中和剤モジュール6の収納空間25に相当する部分には切欠部44が設けられ、第2管体71に相当する部分には上下に貫通するセンタ孔45が開設されている。中和剤モジュール4に切欠部44を形成すると、当該切欠部44内に、フロート部51a、カップ部51b及び寿命検知用中和剤モジュール6を配置できるので、本体部2にこれらの部材を配置するためのスペースを形成する必要がなく、本体部2の形状を単純化できて、潜熱回収型給湯装置等の潜熱回収型熱交換器への適用を容易化できる。また、切欠部44及びセンタ孔45を除く他の部分には、複数の上下に貫通するセンタ孔45よりも小径の貫通孔46が開設されている。中和剤モジュール4に貫通孔46を開設すると、中和剤モジュール4の上方に配置された酸性液の導入口31aから処理槽26内に流入した酸性液が、貫通孔46を通って中和剤モジュール4に浸透するので、仮に導入口31aから処理槽26内に流入した酸性液中に塵埃等の異物が混入している場合にも、中和剤モジュール4の目詰まりを防止でき、長期間にわたって高い中和効率を維持できる。さらに、酸性液Aと中和剤モジュール4の接触面積を拡大できるので、酸性液Aを効率よく中和処理できる。
なお、中和剤モジュール4を構成する中和剤の重量は、実施の形態に係る中和処理器1が適用される潜熱回収型熱交換器が寿命年数に達したとき、処理槽26内に少なくともドレン水を中和処理するに必要な最小限度の中和剤を残すことができる重量に調整される。必要な中和剤の重量は、実験やシミュレーションによって求める。また、寿命検知用中和剤モジュール6の重量は、潜熱回収型熱交換器の試用期間から中和剤の減少量を試算し、潜熱回収型熱交換器が寿命年数に達したときに、液溜めカップ51b内に溜められた酸性液Aに電極棒52が接する位置までフロート本体51aが上昇する重量に調整される。
バインダとしては、粒状中和剤を連結可能で、酸性液A中で使用可能な耐水性及び耐酸性を有し、かつ、酸性液Aと粒状中和剤との接触を阻害しないようにするため、親水性を有するものが用いられる、この種のバインダとしては、石膏、セメント、弱アルカリセメント、ケイ酸ナトリウム(水ガラス)等の無機系接着剤、でんぷんのり、ふのり、膠等の天然系有機接着剤、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブリラール樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、セルロース樹脂、変性シリコーン樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂を挙げることができる。
バインダには、本体部2内における菌やカビの繁殖を防止するため、抗菌・防カビ剤を添加することが望ましい。抗菌・防カビ剤には、無機系、有機系、天然有機系の3種がある。無機系の抗菌・防カビ剤としては、金属及び金属化合物、酸化物の光触媒がある。合成有機系の抗菌・防カビ剤としては、含窒素複素環系、アルデヒド系、フェノール系、ビグアナイド系、ニトリル系、ハロゲン系、アニリド系、ジスルフィド系、チオカーバメート系、有機ケイ素四級アンモニウム塩系、四級アンモニウム塩系、アミノ酸系、有機金属系、アルコール系、カルボン酸系、エステル系がある。天然有機系の抗菌・防カビ剤としては、ヒノキチオール系、キトサン系、カラシ抽出物系、ユーカリ系がある。実施の形態に係る中和処理器1には、これらの中から選択される1種又は複数種の抗菌・防カビ剤を用いることができる。バインダ中に抗菌・防カビ剤を添加することにより、本体部2内における菌やカビの繁殖を防止又は抑制できるので、菌やカビに汚染された処理済み液Bの排出を防止できると共に、本体部2内におけるバイオフィルムやゲル状粘性物の生成を防止できて、中和剤モジュール4の目詰まりを防止できる。
なお、無機系の抗菌・防カビ剤は、菌に対する即効性には優れるものの、カビに対しては効果が低く、抗菌効果の持続期間も3年程度と短い。また、無機系の抗菌・防カビ剤は、中和処理器の排水ラインを変色させる虞がある。これに対して、有機系の抗菌・防カビ剤は、菌及びカビの双方に高い効果を発揮し、効果の持続期間も長く、排水ラインを変色させることもない。よって、菌及びカビの双方に有効であること、長寿命であること、環境保護効果が高いことが要求される実施の形態に係る中和処理器1については、有機系抗菌・防カビ剤を用いることが特に望ましい。また、徐放性の有機系抗菌・防カビ剤をバインダ中に添加することにより、有効成分の減少をコントロールできるので、実施の形態に係る中和処理器1について、10年〜30年の長寿命を実現できる。
また、バインダには、繊維材料を添加することもできる。バインダ中に繊維材料を添加すると、繊維材料の補強効果により、中和剤モジュール中に含まれる粒状中和剤の結合強度が高められる。また、バインダの適用量を低減できるので、中和処理の効率化が図れる。また、バインダは、多孔質に形成することもできる。バインダの多孔質化は、上記のバインダ材料中に塩や石膏、発泡剤を添加することにより行うことができる。多孔質のバインダを用いると、非多孔質のバインダを用いる場合に比べて、中和剤モジュール4中の粒状中和剤と酸性液Aとの接触を増加できるので、酸性液の中和処理をより効率的に行うことができる。なお、多孔質のバインダ中に繊維材料を添加することも勿論可能である。
このように、中和剤モジュール4及び寿命検知用中和剤モジュール6を用いると、粒状中和剤を粒状のままの状態で用いる場合に比べて、処理槽26内への中和剤の収納作業を容易化できるので、中和処理器1の組立効率を高めることができる。特に、処理槽が複数の小室に分割され、小室毎に中和剤を収納するタイプの中和処理器の組立性を高めることができる。また、中和剤モジュール4及び寿命検知用中和剤モジュール6を用いると、粒状中和剤を粒状のままの状態で用いる場合に比べて、処理槽26内に収納される中和剤の量及び収納空間25内に収納される中和剤の量を、各中和処理器1について均一化できるので、中和処理器1の性能の均一化を図ることができる。
実施の形態に係る中和処理器1は、上記のように構成されているので、蓋部3に開設された導入口31aを通って本体部2内に流入した酸性液Aは、拡散プレート7の上面に沿ってその周縁方向に拡散され、拡散プレート7に開設された酸性液流通孔72を通って処理槽26内に入り、中和剤モジュール4の上面に至る。中和剤モジュール4の上面に至った酸性液Aは、中和剤モジュール4に開設された貫通孔46内に入り、中和剤モジュール4内に浸透する。そして、貫通孔46内に受け入れられた酸性液Aが中和剤モジュール4内を上から下に流れる過程で、中和剤モジュール4を構成する中和剤によって中和され、中性の処理済み液Bとなる。処理済み液Bは酸性液Aよりも比重が大きいので、中和剤モジュール4の下方に移動して、貯留部27に溜められる。貯留部27内に溜められた処理済み液Bは、第2管体71の下端部に形成された切欠部73を通って、流通路28を下から上に流れ、第1管体22の上端に至る。そして、第1管体22の上端に至った処理済み液Bは、第1管体22の中央開口22a内を上から下に流れ、排出口21aから外部に排出される。このように、実施の形態に係る中和処理器1は、処理済み液Bの流通経路が、いわゆるベルトラップ構造になっているので、処理済み液Bの流通経路に目詰まりが生じにくく、所要の中和性能を長期間にわたって発揮できる。
なお、実施の形態に係る中和処理器1においては、粒状の中和剤をバインダで一体に結合した中和剤モジュール4及び寿命検知用中和剤モジュール6を用いたが、本発明の要旨はこれに限定されるものではなく、中和剤モジュール4及び寿命検知用中和剤モジュール6の双方又は一方に代えて、粒状の中和剤をバインダで結合せずにそのままの状態で用いる構成とすることもできる。図6に、中和剤モジュール4及び寿命検知用中和剤モジュール6に代えて粒状の中和剤をそのままの状態で用いた場合における、中和処理器1の内部構造とフロート式残量検出装置の動作を示す。なお、図6中の符号41は、粒状の中和剤を示している。粒状の中和剤をそのままの状態で用いた場合にも、実施の形態に係る中和処理器1と同様の効果が得られる。