しかしながら、従来の中和処理器は、処理槽内に粒状の中和剤をそのままの状態で収納しているので、処理槽にのみ所定量の中和剤を正確かつ効率良く投入することが困難で、組立効率が悪いという問題がある。特に、特許文献2に記載の中和処理器のように、中和反応に必要な酸性液の流路を長くするため、処理槽内を複数の小室に分割して酸性液の流路を複雑に入り組ませ、小室毎に所定量の中和剤を個別に投入するタイプの中和処理器では、このような不都合が顕著になる。
また、従来の中和処理器は、処理槽内に比較的粒径の大きな中和剤が収納されるので、中和処理器の小型化に限界がある。即ち、従来の中和処理器の設計においては、処理槽からの中和剤の流出を抑制できて処理済み液排出流路の目詰まりを防止できること、及び、必要な中和速度が得られる表面積を有すること、を考慮して使用する中和剤の粒径が選択されており、一般的には平均粒径が10mm〜25mmの中和剤が用いられている。このように、従来の中和処理器においては、使用する中和剤の粒径、ひいては処理槽内に収納された中和剤のかさ密度が一義的に定まるので、その小型化を図ることが困難である。
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、中和器に収納しやすい中和剤モジュールを提供すること、及び、小型にして組立効率が高く、しかも小型化した場合にも従来品と同等かそれ以上の中和効率が得られる酸性液の中和処理器を提供することにある。
本発明は、従来技術の課題を解決するため、酸性液の処理槽内に、酸性液を中和処理する個々の粒状中和剤をバインダを介して一体に結合し、所要形状の成形体とした中和剤モジュールを収納してなる酸性液の中和処理器において、前記処理槽及び処理済み液の排出口が形成された有底筒状の本体部と、酸性液の導入口が形成された蓋部と、前記処理槽内に収納された前記中和剤モジュールの上面と前記蓋部の下面との間に配置され、前記導入口から前記本体部内に流入した酸性液を前記中和剤モジュールの上面の面方向に均等に分配する拡散プレートとを備え、前記本体部の底板から上向きに、下端部が前記処理済み液の排出口と連通する第1管体を形成すると共に、前記拡散プレートの下面から下向きに、内径が前記第1管体の外径よりも大きな第2管体を形成し、前記第1管体の外面と前記第2管体の内面との間に、前記処理槽から流出した処理済み液を下から上に流して前記第1管体に導く処理済み液の流通経路を形成したことを特徴とする。
本構成によると、予め所定の形状及び大きさに成形された中和剤モジュールを処理槽内に収納するという方法で中和処理器を製造できるので、処理槽内に粒状中和剤をそのままの状態で投入する場合のように、中和処理器の組立時に作業員が処理槽内への粒状中和剤の投入量を加減したり、処理槽以外の部分に粒状中和剤が入り込まないように注意する必要がなく、中和処理器の組立効率を高めることができる。特に、中和剤モジュールは、任意の形状及び大きさに成形可能であるので、処理槽が複数の小室に分割され、各小室内に中和剤を収納するタイプの中和処理器の組立効率を格段に高めることができる。また、バインダを用いて複数の中和剤を一体に結合すると、個々の中和剤が中和処理の進行に伴って微細化した場合にも、個々の中和剤どうしの結合が保たれるので、外部への流出が防止され、中和剤の寿命を延長することができる。さらに、中和剤の流出を防止できることから、微細化した中和剤を最後まで中和反応に寄与させることができ、中和剤の無駄を防止できると共に、処理済み液排出流路の目詰まりを防止できる。加えて、本構成によると、本体部、蓋部及び拡散プレートを組み合わせることにより、中和剤モジュールを収納するための1つの処理槽が形成されるので、用意すべき中和剤モジュールの数及び処理槽内への中和剤モジュールの挿入作業数を最小にすることができ、中和処理器の低コスト化を図ることができる。また、本体部の底板から上向きに形成した第1管体と、拡散プレートの下面から下向きに形成した第2管体との間に、処理槽から流出した処理済み液を下から上に流して第1管体に導く処理済み液の流通経路を形成したので、仮に中和剤モジュールから分解の進んだ粒状中和剤が脱落した場合にも、脱落した粒状中和剤は本体部の底面に溜まり、第1管体と第2管体との間に形成される処理済み液の流通経路内に入り込むことがない。このため、処理済み液の流通経路に目詰まりが生じにくく、所要の中和性能を長期間にわたって発揮できる。
また本発明は、前記構成の中和剤モジュールにおいて、前記粒状中和剤は、予め定められた粒径の範囲毎に分級されたものであり、前記成形体は、異なる級に分類される2種類以上の前記粒状中和剤を含むことを特徴とする。
上記したように、潜熱回収型熱交換器に備えられる中和処理器においては、天然の白色石灰石の砕石が中和剤として一般的に用いられているが、この種の砕石は、予め定められた粒径の範囲毎に分級されたものが市販されているので、異なる級に分類される2種類以上の粒状中和剤を容易に混合できる。そして、異なる級に分類される2種類以上の砕石を混合すると、平均粒径が大きな級に属する砕石間に形成される隙間に、平均粒径が小さな級に属する砕石を入れ込むことができるので、平均粒径が大きな級に属する1種類の砕石を用いる場合に比べて、処理槽内に収納された砕石のかさ密度を高めることができる。よって、同一重量の砕石を処理槽内に収納する場合、径金粒径が大きな級に属する砕石のみを用いる場合に比べて、中和処理器を小型化できる。また、同一重量の砕石を比較した場合、平均粒径が小さな級に属する複数の砕石の総表面積は、平均粒径が大きな級に属する1又は複数の砕石の総表面積よりも大きいので、平均粒径が大きな級に属する1種類の砕石を単体で用いる場合に比べて、酸性液の中和処理速度を高めることができる。なお、酸性液の中和剤としては、炭酸カルシウム以外にも、消石灰、苛性ソーダ、ソーダ灰、生石灰、石灰石、苦土石灰、酸化マグネシウムなどがあり、これらの中和剤を用いる場合にも、天然の白色石灰石の砕石を用いる場合と同様に、予め定められた粒径の範囲毎に分級されたものが用いられる。また、材質が異なる2種類以上の中和剤を混合して用いることもできる。
また本発明は、前記構成の中和剤モジュールにおいて、前記粒状中和剤として、平均粒径が異なる級に分類される2種類以上の粒状中和剤を用い、前記平均粒径が最も大きな級に分類される粒状中和剤の平均粒径をRmax、前記平均粒径が最も小さな級に分類される粒状中和剤の平均粒径をRminとしたとき、Rmax/Rmin≧5となるように前記2種類以上の粒状中和剤を組み合わせたことを特徴とする。
平均粒径が異なる級に分類される2種類以上の粒状中和剤を混合する場合、各粒状中和剤の平均粒径の差が大きいほど、平均粒径が大きな級に属する砕石間に形成される隙間に多くの平均粒径が小さな級に属する砕石を入れ込むことができるので、処理槽内に収納された砕石のかさ密度を高めることができ、中和処理器を小型化できる。実験によると、Rmax/Rmin≧5となるように大小2種類の粒状中和剤を組み合わせると、平均粒径が大きな級に分類される粒状中和剤のみを単体で処理槽内に収納した中和処理器に比べて、その容積を15%以上小型化できる。
また本発明は、前記構成の中和剤モジュールにおいて、前記平均粒径が最も小さな級に分類される粒状中和剤の総重量が、前記粒状中和剤の全重量の30%〜70%となるように、前記2種類以上の粒状中和剤を混合したことを特徴とする。
実験によると、平均粒径が異なる2種類以上の中和剤を混合した中和剤モジュールは、平均粒径が最も小さな級に分類される粒状中和剤の総重量を30%〜70%の範囲としたときにかさ密度が最大になると共に、中和剤モジュールに含まれる粒状中和剤の総表面積が最大値に近い値になる。従って、中和剤モジュールに含まれる平均粒径が最も小さな級に分類される粒状中和剤の混合率をこの範囲に調整することにより、中和処理器の容積を最小化できると共に、酸性液の中和反応速度を高めることができる。
また本発明は、前記構成の中和剤モジュールにおいて、前記中和剤モジュールに、酸性液の導入側から処理済み液の排出側に貫通する複数の貫通孔を開設したことを特徴とする。
本構成によると、酸性液が貫通孔を通って中和剤モジュールに浸透するので、仮に酸性液中に塵埃等が混入している場合にも、中和剤モジュールの目詰まりを防止できる。また、酸性液と中和剤モジュールの接触面積を拡大できるので、酸性液を効率よく中和処理できる。
また本発明は、前記構成の中和剤モジュールにおいて、前記バインダ中に、抗菌・防カビ剤を分散したことを特徴とする。
本構成によると、バインダ中に抗菌・防カビ剤を分散するだけで、中和処理器内における菌やカビの発生を防止又は抑制できるので、抗菌・防カビ用のイオン発生器を備える場合に比べて、抗菌・防カビ機能を有する中和処理器を小型かつ低コストに実施できる。
また本発明は、前記構成の中和剤モジュールは、多孔質であることを特徴とする。
中和剤モジュールを多孔質化すると、非多孔質の中和剤モジュールを用いる場合に比べて、中和剤モジュール中の粒状中和剤と酸性液との接触を増加できるので、酸性液の中和処理をより効率的に行うことができる。
また本発明は、前記構成の中和剤モジュールにおいて、前記バインダ中に、繊維材料を添加したことを特徴とする。
前記バインダ中に繊維材料を添加すると、繊維材料の補強効果により、中和剤モジュール中に含まれる粒状中和剤の結合強度が高められる。また、バインダの適用量を低減できるので、中和処理の効率化が図れる。
また本発明は、前記構成の酸性液の中和処理器において、前記拡散プレートは、前記第2管体の形成部を中心として、その周縁部が下向きに湾曲されており、前記中和剤モジュールの上面と対向する部分には、酸性液流通孔が開設されていて、前記第2管体の形成部と前記蓋部に形成された酸性液の導入口とが対向に配置されていることを特徴とする。
本構成によると、拡散プレートの周縁部が下向きに湾曲しているので、導入口から導入された酸性液を拡散プレートの中心部分から周縁部に向けて展開できる。また、中和剤モジュールの上面と対向する部分に所要の配列で酸性液流通孔を開設することにより、中和剤モジュールの上面の各部に流入する酸性液の量を適宜調整できる。よって、中和剤モジュールの上面の偏った消耗を防止することが可能になり、長期間にわたって安定な中和性能を発揮できる。
また本発明は、前記構成の酸性液の中和処理器において、前記中和剤モジュールの外周面と前記処理槽の内壁面との間に、充填物を充填したことを特徴とする。
中和剤モジュールの外周面と処理槽の内壁面との間に流入した酸性液は、中和剤モジュールと接触しにくいので、中和剤による中和処理が不十分になって、未処理の酸性液が外部に漏出しやすい。これに対して、中和剤モジュールの外周面と処理槽の内壁面との間に充填物を充填すると、中和剤モジュールの外周面と処理槽の内壁面との間への酸性液の流入を防止又は抑制できるので、未処理の酸性液の漏出を防止又は抑制できる。
本発明の中和剤モジュールは、多数の粒状中和剤をバインダを介して一体に結合すると共に、その外観形状を所要の形状に成形するので、酸性液の中和処理器に設けられた処理槽内への中和剤の収納を容易化でき、中和処理器の組立効率を改善できる。
本発明の酸性液の中和器は、多数の粒状中和剤の結合体である中和剤モジュールを処理槽内に収納したので、小型にして組立効率が高く、しかも小型化した場合にも従来品と同等かそれ以上の中和効率を得ることができる。
〈中和剤モジュール〉
以下、本発明に係る中和剤モジュールの実施の形態を、図を用いて説明する。なお、以下に記載する実施の形態は、本発明を具体化する際の一例を示すものであって、本発明の範囲をその記載の範囲に限定するものではない。従って、本発明は、以下に記載する実施の形態に種々の変更を加えて実施することができる。
中和剤モジュール40は、図1に模式的に示すように、粒径が大きな粒状中和剤41と粒径が小さな粒状中和剤42をバインダ43で一体に結合したものであり、所要の形状に成形されている。なお、図1の例では、粒径が異なる2種類の粒状中和剤41、42の混合体をもって中和剤モジュール40が構成されているが、3種類以上の粒状中和剤の混合体をもって中和剤モジュール40を構成することも可能である。
酸性液の中和剤41、42としては、炭酸カルシウム、消石灰、苛性ソーダ、ソーダ灰、生石灰、石灰石、苦土石灰、酸化マグネシウム等を挙げることができる。これらの材質が異なる中和剤は、単体で用いることもできるし、混合して用いることもできる。酸性液の中和剤41、42として炭酸カルシウムを用いる場合には、寒水石等と呼ばれる白色石灰石の砕石を用いることができ、白色石灰石の砕石としては、予め定められた粒径毎に分級されて市販されているものを利用できる。従って、中和剤41、42として白色石灰石の砕石を用いる場合、大きさが異なる粒状中和剤41、42とは、異なる級に分類される白色石灰石の砕石を意味する。なお、予め定められた粒径とは、砕石を分級する際のメッシュの大きさを意味し、1つの級に含まれる砕石の中にも、大きさが異なる砕石が含まれる。このため、本明細書においては、各級に属する砕石の大きさを平均粒径で表記する。
即ち、白色石灰石の砕石は、従来、例えば10分、5分、3分、2分、1分5厘、1分2厘、1分、8厘、6厘、5厘、3厘、2厘、1厘等の各呼び寸法に分級されたものが市販されており、これら各級の砕石の中から所要の大きさのものを選択して用いることができる。各級の砕石には、例えば呼び寸法が3分の級には7.0mm〜10.0mmの砕石が含まれ、呼び寸法が1分5厘の級には5.0mm〜7.0mmの砕石が含まれるという具合に、大きさが異なる各種の砕石が含まれる。
いずれの級に属する白色石灰石の砕石をどの程度の割合で混合するかは、中和剤モジュール40のかさ密度と総表面積を考慮して選択される。中和剤モジュール40のかさ密度が大きいほど、中和処理器の小型化を図ることができるし、中和剤モジュール40の総表面積が大きいほど、酸性液の中和処理速度を速くできて、酸性液の中和効率が高められるからである。図2に、白色石灰石の砕石の粒径と、pH2.5の酸性液が下水道法で定められた下水道に排水可能な最低基準であるpH5.8の処理済み液になるまでに要する時間(酸性液中への砕石の浸漬時間)を示す。この図から明らかなように、粒径が20〜25mmの砕石を用いた場合には、pH5.8に達するのに約50分間かかるのに対して、粒径が10〜15mmの砕石を用いた場合には約10分間、粒径が1〜2mmの砕石を用いた場合には約2分間でpH5.8に達する。図2のデータから、粒径が小さな白色石灰石の砕石を用いるほど、酸性液の中和効率が高められることが判る。
平均粒径が大きな級に分類される粒状中和剤41と平均粒径が小さな級に分類される粒状中和剤42の2種類を用いて中和剤モジュール40を構成する場合においては、平均粒径が大きな級に分類される粒状中和剤41の平均粒径をRmax、平均粒径が小さな級に分類される粒状中和剤42の平均粒径をRminとしたとき、Rmax/Rmin≧5となるように2種類の粒状中和剤を組み合わせる。また、この場合においては、中和剤モジュール40中に含まれる平均粒径が小さな級に分類される粒状中和剤42の総重量が、中和剤モジュール40中に含まれる粒状中和剤41、42の全重量の30%〜70%となるように、各粒状中和剤41、42の混合比を調整することが望ましい。その理由を以下に説明する。
現状において、潜熱回収型給湯装置等の潜熱回収型熱交換器に適用される中和処理器には、容積比で15%以上の小型化が求められている。中和処理器を容積比で15%以上小型化するためには、1つの級に属する1種類の砕石を中和剤として用いたときの中和剤モジュール40のかさ密度に対する、平均粒径が異なる2つの級に属する2種類の砕石の混合体を中和剤として用いたときの中和剤モジュール40のかさ密度との比を、115%以上とする必要がある。また、実用的な中和剤モジュール40とするためには、総表面積についても十分に高いものとする必要がある。そこで出願人は、1つの級に属する1種類の砕石を中和剤として用いたときの中和剤モジュール40のかさ密度及び総表面積と、平均粒径が異なる2つの級に属する2種類の砕石の混合体を中和剤として用いたときの中和剤モジュール40のかさ密度及び総表面積とを実験やシミュレーションにより求めて図3(a)〜(h)に示すデータを得た。
なお、中和剤モジュール40のかさ密度は、以下に記載の方法で求めた。まず、1種類の砕石からなる中和剤モジュール40については、100mlのビーカに砕石を摺り切りに入れて重量を測定する作業を3回繰り返し平均値を求めた。そして、水の密度を1g/cm3とし、100mlのビーカに摺り切りに入れた砕石の重量と100mlの水の重量の比から、中和剤モジュールのかさ密度を求めた。一方、平均粒径が異なる2種類の砕石からなる中和剤モジュール40については、平均粒径が大きな砕石と平均粒径が小さな砕石との混合体であって、平均粒径が小さい砕石の混合率が20重量%、40重量%、50重量%、60重量%、80重量%である混合体を作製し、それぞれについて上記の方法で中和剤モジュール40のかさ密度を求めた。
また、総表面積については、以下に記載の方法で求めた。まず、重量が測定された10個のガラスビーズ(株式会社コスモスビート社製のガラスビーズNo.15、φ14.5〜15.5mm)を流動パラフィンに浸漬し、取り出されたガラスビーズの重量を測定して、その平均値を出す。同じように、重量が測定された10個の白色石灰石の砕石を流動パラフィンに浸漬し、取り出された砕石の重量を測定して、その平均値を出す。ガラスビーズの表面積と、ガラスビーズの表面に付いた流動パラフィンの重量を基準として、それぞれの砕石の表面に付いた流動パラフィンの重量から、砕石の表面積を算出する。試験は平均粒径が5mm、10mm、25mmの砕石について行い、平均粒径が1mm、4mm、15mmの砕石については、上記試験結果に基づいて計算により求めた。
図3(a)は、1つの級に属する1種類の砕石を単独で用いたときの砕石の平均粒径と中和剤モジュール40のかさ密度及び総表面積との関係を示すデータである。この図から明らかなように、砕石の平均粒径と中和剤モジュール40のかさ密度及び総表面積との間には明確な相関があり、平均粒径が15mmの砕石を用いた場合に中和剤モジュール40のかさ密度が最も小さくなり、その前後では中和剤モジュール40のかさ密度が大きくなる。砕石の平均粒径と中和剤モジュール40の総表面積との関係もこれとほぼ同様であり、平均粒径が15mm〜20mmの砕石を用いた場合に中和剤モジュール40の総表面積が最も小さくなり、その前後では中和剤モジュール40の総表面積が大きくなる。
図3(b)〜(h)は、異なる級に分類される2種類の砕石を混合して用いたときのデータである。図3(b)は、平均粒径が5mmの砕石と平均粒径が10mmの砕石の混合体中に占める平均粒径が5mmの砕石の割合(重量比)と、中和剤モジュール40のかさ密度及び総表面積との関係を示している。図3(c)は、平均粒径が4mmの砕石と平均粒径が10mmの砕石の混合体中に占める平均粒径が4mmの砕石の割合と、中和剤モジュール40のかさ密度及び総表面積との関係を示している。図3(d)は、平均粒径が10mmの砕石と平均粒径が25mmの砕石の混合体中に占める平均粒径が10mmの砕石の割合と、中和剤モジュール40のかさ密度及び総表面積との関係を示している。図3(e)は、平均粒径が1mmの砕石と平均粒径が4mmの砕石の混合体中に占める平均粒径が1mmの砕石の割合と、中和剤モジュール40のかさ密度及び総表面積との関係を示している。図3(f)は、平均粒径が1mmの砕石と平均粒径が5mmの砕石の混合体中に占める平均粒径が1mmの砕石の割合と、中和剤モジュール40のかさ密度及び総表面積との関係を示している。図3(g)は、平均粒径が5mmの砕石と平均粒径が25mmの砕石の混合体中に占める平均粒径が5mmの砕石の割合と、中和剤モジュール40のかさ密度及び総表面積との関係を示している。図3(h)は、平均粒径が1mmの砕石と平均粒径が10mmの砕石の混合体中に占める平均粒径が1mmの砕石の割合と、中和剤モジュール40のかさ密度及び総表面積との関係を示している。図3(b)〜(h)のデータから明らかなように、異なる級に分類される2種類の砕石を混合した場合、中和剤モジュール40のかさ密度は、平均粒径が大きな砕石と平均粒径が小さな砕石の混合比率を約50重量%としたときに最も大きくなる。また、このときに中和剤モジュール40の総表面積も最大値に近い値となる。
図3(a)のデータと図3(b)〜(h)のデータとから、1つの級に属する1種類の砕石を中和剤として用いたときの中和剤モジュール40のかさ密度と、平均粒径が異なる2つの級に属する2種類の砕石を50重量%ずつ混合してなる混合体を中和剤として用いたときの中和剤モジュール40のかさ密度との比を求めることができる。そこで、この比を縦軸とし、Rmax/Rminの値を横軸とするグラフに図3(b)〜(h)のデータをプロットすると、図4のデータが得られる。このデータから明らかなように、Rmax/Rmin≧5とすることにより、容積比で15%以上のかさ密度の低下ひいては中和処理器の小型化を図ることができることが判る。
なお、上記の実施の形態では、平均粒径が大きな級に分類される粒状中和剤と平均粒径が小さな級に分類される粒状中和剤を重量比で50%ずつ混合したが、図3のデータから明らかなように、中和剤モジュール40中に含まれる粒状中和剤の全重量に対する平均粒径が小さな級に分類される粒状中和剤の混合比が30%〜70%の範囲にあれば、ほぼ同様の効果が得られる。また、上記の実施の形態では、平均粒径が大きな級に分類される粒状中和剤と平均粒径が小さな級に分類される粒状中和剤の2種類を混合した場合を例にとって説明したが、平均粒径が異なる3種類以上の粒状中和剤を混合した場合にも、ほぼ同様の結果が得られる。
酸性液の中和剤41、42として、消石灰、苛性ソーダ、ソーダ灰、生石灰、石灰石、苦土石灰、酸化マグネシウム等を用いる場合にも、予め定められた粒径毎に分級されたものが用いられる。
バインダ43としては、粒状中和剤41、42を連結可能で、酸性液中で使用可能な耐水性及び耐酸性を有し、かつ、酸性液と粒状中和剤41、42との接触を阻害しないようにするため、親水性を有するものが用いられる、この種のバインダとしては、石膏、セメント、弱アルカリセメント、ケイ酸ナトリウム(水ガラス)等の無機系接着剤、でんぷんのり、ふのり、膠等の天然系有機接着剤、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブリラール樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、セルロース樹脂、変性シリコーン樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂を挙げることができる。
バインダ43には、本体部2内における菌やカビの繁殖を防止するため、抗菌・防カビ剤を添加することが望ましい。抗菌・防カビ剤には、無機系、有機系、天然有機系の3種がある。無機系の抗菌・防カビ剤としては、金属及び金属化合物、酸化物の光触媒がある。合成有機系の抗菌・防カビ剤としては、含窒素複素環系、アルデヒド系、フェノール系、ビグアナイド系、ニトリル系、ハロゲン系、アニリド系、ジスルフィド系、チオカーバメート系、有機ケイ素四級アンモニウム塩系、四級アンモニウム塩系、アミノ酸系、有機金属系、アルコール系、カルボン酸系、エステル系がある。天然有機系の抗菌・防カビ剤としては、ヒノキチオール系、キトサン系、カラシ抽出物系、ユーカリ系がある。中和処理器には、これらの中から選択される1種又は複数種の抗菌・防カビ剤を用いることができる。バインダ43中に抗菌・防カビ剤を添加することにより、中和処理器内における菌やカビの繁殖を防止又は抑制できるので、菌やカビに汚染された処理済み液Bの排出を防止できると共に、中和処理器内におけるバイオフィルムやゲル状粘性物の生成を防止できて、中和剤モジュール40の目詰まりを防止できる。
なお、無機系の抗菌・防カビ剤は、菌に対する即効性には優れるものの、カビに対しては効果が低く、抗菌効果の持続期間も3年程度と短い。また、無機系の抗菌・防カビ剤は、中和処理器の排水ラインを変色させる虞がある。これに対して、有機系の抗菌・防カビ剤は、菌及びカビの双方に高い効果を発揮し、効果の持続期間も長く、排水ラインを変色させることもない。よって、菌及びカビの双方に有効であること、長寿命であること、環境保護効果が高いことが要求される中和処理器については、有機系抗菌・防カビ剤を用いることが特に望ましい。また、徐放性の有機系抗菌・防カビ剤をバインダ43中に添加することにより、有効成分の減少をコントロールできるので、中和処理器について、10年〜30年の長寿命を実現できる。
また、バインダ43には、繊維材料を添加することもできる。バインダ43中に繊維材料を添加すると、繊維材料の補強効果により、中和剤モジュール40中に含まれる粒状中和剤の結合強度が高められる。また、バインダの適用量を低減できるので、中和処理の効率化が図れる。
中和剤モジュール40は、多孔質に形成することができる。中和剤モジュール40を多孔質化すると、酸性液と粒状中和剤41、42の接触面積を増加できるので、酸性液の中和効率をより高めることができる。中和剤モジュール40の多孔質化は、粒状中和剤41、42として多孔質の粒状中和剤を用いる方法と、バインダ43を多孔質化する方法とがある。バインダ43を多孔質化する方法には、液状のバインダ材料中に塩や石膏、発泡剤を添加して発泡させる方法、液状のバインダ材料の使用量を制限して、隣接して配置される粒状中和剤41、42の間に隙間を形成する方法、及び、微粒子状のバインダ樹脂を用いて、隣接して配置される粒状中和剤41、42を局部的に接合する方法等がある。なお、多孔質のバインダ43中に繊維材料を添加することも勿論可能である。
〈酸性液の中和器〉
次に、本発明に係る酸性液の中和処理器の実施の形態を、図を用いて説明する。酸性液の中和処理器についても、以下に記載する実施の形態は、本発明を具体化する際の一例を示すものであって、本発明の範囲をその記載の範囲に限定するものではない。従って、本発明は、以下に記載する実施の形態に種々の変更を加えて実施することができる。
図5及び図6に示すように、実施の形態に係る酸性液の中和処理器1は、有底の筒状に形成された本体部2と、本体部2の上部開口端に被着される蓋部3と、本体部2内に収納される主中和剤モジュール4と、主中和剤モジュール4の寿命を検知するフロート式残量センサ5と、フロート式残量センサ5による主中和剤モジュール4の寿命検知タイミングを調整する寿命検知用中和剤モジュール6と、蓋部3と主中和剤モジュール4との間に配置され、蓋部3側から本体部2内に流入した酸性液(未処理液)Aを主中和剤モジュール4の上面の面方向に均等に分配する拡散プレート7と、本体部2内における酸性液Aのオーバーフローを検知するオーバーフロー検知センサ8とから主に構成される。
本体部2は、所要の容積を有する直方状に形成されており、底板の中央部には、処理済み液Bの排出口21aを有する排出管21が下向きに突設されると共に、排出口21aに連通する中央開口22aを有する第1管体22が上向きに突設されている。また、本体部2の内面における底板の周縁部分には、主中和剤モジュール4を載置するための段部23が形成されている。さらに、本体部2の内面の一隅部には、図5、図6及び図7に示すように、フロート式残量センサ5のフロート部51及び寿命検知用中和剤モジュール6を上下方向に案内する3本のガイド部材24が形成されており、これら3本のガイド部材24で囲まれた円形の部分が、フロート部51及び寿命検知用中和剤モジュール6の収納空間25になっている。
蓋部3は、図5及び図6に示すように、本体部2の上部開口端を遮閉可能な大きさを有する矩形の板状に形成されており、その中央部には、酸性液Aの導入口31aを有する導入管31が上向きに突設されている。また、本体部2に形成されたガイド部材24と対向する蓋部3の一部には、フロート式残量センサ5を構成する2本の電極棒52を着脱可能に取り付ける第1電極取付部32が形成されると共に、酸性液の導入管31を介してその反対側には、オーバーフロー検知センサ8を構成する2本の電極棒81を着脱可能に取り付ける第2電極取付部33が形成されている。フロート式残量センサ5を構成する2本の電極棒52は、所要の間隔を隔てて第1電極取付部32に取り付けられ、オーバーフロー検知センサ8を構成する2本の電極棒81は、所要の間隔を隔てて第2電極取付部33に取り付けられる。
主中和剤モジュール4及び寿命検知用中和剤モジュール6としては、〈中和剤モジュール〉の欄で説明した中和剤モジュール40をそれぞれ所要の形状に成形したものが用いられる。
即ち、主中和剤モジュール4は、図5及び図6に示すように、処理槽26内に密に収納可能な形状及び大きさに成形されており、フロート部51及び寿命検知用中和剤モジュール6の収納空間25に相当する部分には切欠部44が設けられ、第2管体71に相当する部分には上下に貫通するセンタ孔45が開設されている。また、切欠部44及びセンタ孔45を除く他の部分には、複数の上下に貫通するセンタ孔45よりも小径の貫通孔46が等分に開設されている。主中和剤モジュール4に貫通孔46を開設すると、主中和剤モジュール4の上方に配置された酸性液の導入口31aから処理槽26内に流入した酸性液は、貫通孔46を通って主中和剤モジュール4に浸透し、中和される。また、仮に導入口31aから処理槽26内に流入した酸性液中に塵埃等の異物が混入している場合には、その異物を貫通孔46を通して処理槽26外に排出できるので、主中和剤モジュール4の目詰まりを防止でき、長期間にわたって高い中和効率を維持できる。さらに、酸性液Aと主中和剤モジュール4の接触面積を拡大できるので、酸性液Aを効率よく中和処理できる。
なお、主中和剤モジュール4を構成する中和剤の重量は、実施の形態に係る中和処理器1が適用される潜熱回収型熱交換器が寿命年数に達したとき、処理槽26内に少なくともドレン水を中和処理するに必要な最小限度の中和剤を残すことができる重量に調整される。必要な中和剤の重量は、実験やシミュレーションによって求める。
一方、寿命検知用中和剤モジュール6は、本体部2に形成されたフロート部51及び寿命検知用中和剤モジュール6の収納空間25内に収納可能な形状に形成される。寿命検知用中和剤モジュール6を構成する中和剤の重量は、実施の形態に係る中和処理器1が適用される潜熱回収型熱交換器の寿命を、フロート式残量センサ5が正確に検出可能な重量に調整される。必要な中和剤の重量は、実験やシミュレーションによって求める。なお、寿命検知用中和剤モジュール6については、長さ方向に直交する面の断面積が小さく、貫通孔46を開設しても、導入口31aから流入した酸性液Aの受け入れ量の増加にほとんど貢献できないので、貫通孔46の開設を省略することもできる。
主中和剤モジュール4の外周と処理槽26の内壁面との間には、図8に示すように、充填物90を充填することもできる。その他の部分については、実施の形態に係る中和処理器1と同じであるので、対応する部分に同一の符号を付して説明を省略する。
主中和剤モジュール4は、処理槽26内に収納したときに、その外周面が処理槽26の内壁面に密着するように成形されることが理想的である。その理由は、主中和剤モジュール4の外周面と処理槽26の内壁面との間に隙間が生じていると、当該隙間内を酸性液Aが流通して、未処理の酸性液Aが外部に漏出しやすくなるからである。しかしながら、主中和剤モジュール4は、白色石灰石の砕石41、42をバインダ43で結合したものからなるので、主中和剤モジュール4の外周面を高精密に成形することは実際上困難であり、主中和剤モジュール4の外周面と処理槽26の内壁面との間には、隙間が生じやすい。そこで、主中和剤モジュール4の外周と処理槽26の内壁面との間に充填物90を充填すると、前記隙間内への酸性液Aの侵入を防止又は抑制できるので、未処理の酸性液の漏出を防止又は抑制できる。なお、充填物90は、必ずしも不透水性材料からなるものだけでなく、透水性材料からなるものを用いることもできる。前記隙間内への酸性液Aの侵入を抑制できれば、実用上十分な効果が得られるからである。
以下、フロート式残量センサ5、オーバーフロー検知センサ8及び拡散プレート7の構成及び効果について説明する。
フロート式残量センサ5は、前出のフロート部51及び2本の電極棒52と、これら2本の電極棒52の導通状態を検出する検出器53とから構成される。フロート部51は、図9(a)、(b)に示すように、酸性液A及び処理済み液Bよりも比重が小さい気体、例えば空気が封入されたフロート本体51aと、フロート本体51aの上部に形成された液溜めカップ51bとから構成されており、液溜めカップ51bを上向きにして収納空間25内に設定される。初期状態においては、図9(a)に示すように、フロート部51の上方に長大な寿命検知用中和剤モジュール6が配置されており、フロート部51の浮力よりも寿命検知用中和剤モジュール6の重量の方が勝っているので、フロート部51は本体部2の底部に位置している。これに対して、酸性液Aの中和処理が進行し、中和剤の消費に伴って寿命検知用中和剤モジュール6の重量が減少すると、寿命検知用中和剤モジュール6の重量よりもフロート部51の浮力が勝った段階で、フロート部51が浮上し、図9(b)に示すように、液溜めカップ51b内に2本の電極棒52が入る。液溜めカップ51b内には酸性液Aが溜められているので、これによって2本の電極棒52が電気的に導通する。主中和剤モジュール4と寿命検知用中和剤モジュール6は、共に本体部2内に収納されているので、主中和剤モジュール4も寿命検知用中和剤モジュール6と同一の比率で消費される。よって、電極棒52の導通状態を検出器53で検出することにより、主中和剤モジュール4の寿命を検知することができる。
一方、オーバーフロー検知センサ8は、前出の2本の電極棒81と、これら2本の電極棒81の導通状態を検出する検出器82とから構成される。実施の形態に係る中和処理器1は、潜熱回収型給湯装置等の潜熱回収型熱交換器に適用されるものであり、潜熱回収型熱交換器の排ガスから分離された酸性のドレン水(酸性液)を中和処理して、下水道法に定められたpH値(5.8〜8.6)の処理済み液にして排出するものである。潜熱回収型熱交換器を稼働したときのドレン水の発生量は既知であり、本体部2の容積は、最大流量のドレン水が発生した場合にもオーバーフローしないように設計される。しかし、例えば主中和剤モジュール4の目詰まり等の予期しない事態の発生により、本体部2内でドレン水がオーバーフローする場合も考えられる。ドレン水がオーバーフローした場合、潜熱回収型熱交換器は、エラー停止するように設計されており、エラー停止を解除するためには、メーカにサービスマンの派遣を依頼する等の手続が必要となる。オーバーフロー検知センサ8は、この潜熱回収型熱交換器のエラー停止を防止するためのものであり、ドレン水がオーバーフローすると、図10に示すように、2本の電極棒81がドレン水中に浸漬されて導通するので、これら2本の電極棒81の導通状態を検出器82で検出することにより、ドレン水のオーバーフローを検知することができる。
拡散プレート7は、図5及び図6に示すように、第2管体71の形成部を中心として、周縁部が下向きに湾曲している。拡散プレート7の周縁部は、拡散プレート7を本体部2内の所定位置に収納したとき、本体部2に形成されたフロート部51及び寿命検知用中和剤モジュール6の収納空間25と対向する部分を除いて、本体部2の内壁に密着するように形成される。そして、拡散プレート7を本体部2内に収納したときに主中和剤モジュール4の上面と対向する部分には、複数の酸性液流通孔72が開設されている。これら複数の酸性液流通孔72は、主中和剤モジュール4の上面に酸性液を均等に分配できるように開設される。また、主中和剤モジュール4の上面に酸性液を均等に分配できるようにするため、拡散プレート7の上面に溝を形成することもできる。一方、第2管体71は、その下端部を本体部2の底板に突き当てたときに、拡散プレート7を蓋部3と主中和剤モジュール4の間の所定の高さ位置に保持可能な長さに形成される。また、第2管体71は、その内径が、本体部2に形成された第1管体22の外径よりも大きく形成されており、図5に示すように、第1管体22の外周に配置される。さらに、第2管体71の下端部には、図6に明瞭に図示されているように、処理済み液Bの流通口となる切欠部73が第2管体71の周方向に等分に形成される。切欠部73の長さは、図5に示すように、本体部2に形成された段部23の高さと同等とする。
従って、第1管体22と第2管体71を同心に配置したとき、本体部2の内壁と、段部23の上面と、第2管体71の外周面とをもって、主中和剤モジュール4の収納部である処理槽26が形成される。また、処理槽26の下方の段部23の周面と、本体部2の底板と、第2管体71の外周面とをもって、処理済み液Bの貯留部27が形成される。さらに、第1管体22の外周面と第2管体71の内周面との間には、処理済み液Bが下から上に流れる処理済み液の流通路28が形成される。処理済み液の貯留部27と流通路28は、切欠部73を介して連通される。
本体部2、蓋部3及び拡散プレート7は、適度の硬度と成形性を有する任意の材料を用いて製造可能であるが、比較的安価にして任意の形状を容易に成形可能であることから、プラスチック材料を用いて製造することが特に好ましい。また、本体部2及び蓋部3は、ボルトを用いて開閉可能に結合することもできるし、超音波融着、接着、溶接等の手段を用いて開閉不能に結合することもできる。
実施の形態に係る中和処理器1は、上記のように構成されているので、蓋部3に開設された導入口31aを通って本体部2内に流入した酸性液Aは、拡散プレート7の上面に沿ってその周縁方向に拡散され、拡散プレート7に開設された酸性液流通孔72を通って処理槽26内に入り、主中和剤モジュール4の上面に至る。主中和剤モジュール4の上面に至った酸性液Aは、主中和剤モジュール4に開設された貫通孔46内に入り、主中和剤モジュール4内に浸透する。そして、貫通孔46内に受け入れられた酸性液Aが主中和剤モジュール4内を上から下に流れる過程で、主中和剤モジュール4を構成する中和剤によって中和され、中性の処理済み液Bとなる。処理済み液Bは酸性液Aよりも比重が大きいので、主中和剤モジュール4の下方に移動して、貯留部27に溜められる。貯留部27内に溜められた処理済み液Bは、第2管体71の下端部に形成された切欠部73を通って、流通路28を下から上に流れ、第1管体22の上端に至る。そして、第1管体22の上端に至った処理済み液Bは、第1管体22の中央開口22a内を上から下に流れ、排出口21aから外部に排出される。このように、実施の形態に係る中和処理器1は、処理済み液Bの流通経路が、いわゆるベルトラップ構造になっているので、処理済み液Bの流通経路に目詰まりが生じにくく、所要の中和性能を長期間にわたって発揮できる。