JP6517443B2 - ヒアルロン酸塩がコーティングされた高機能性縫合糸の製造方法及びこれにより製造された高機能性縫合糸 - Google Patents

ヒアルロン酸塩がコーティングされた高機能性縫合糸の製造方法及びこれにより製造された高機能性縫合糸 Download PDF

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Description

本発明は、ヒアルロン酸塩がコーティングされた高機能性縫合糸の製造方法及びこれにより製造された高機能性縫合糸に関し、より詳細には、生体適合性物質であるヒアルロン酸塩を従来の化学合成物質由来の内・外科用縫合糸にコーティングして生体適合性、機能性及び使用の利便性を向上させた高機能性縫合糸の製造方法及びこれにより製造された高機能性縫合糸に関する。
縫合糸(Suture)は、外傷により怪我をした傷口または手術などにより損傷した人体部位を縫う糸を意味する。縫合糸は、初期には羊、豚、馬のはらわたや腱などの臓器抽出物で作られた腸線(catgut)が広く用いられてきたが、低強度による使用不適合、組織拒絶反応及び動物由来疾病発生の懸念のために、その使用が徐々に減少した。以後、高物性の合成高分子物質であるナイロン、シルクなどの代替物質が開発されて広く用いられたが、これらの素材の人体内非分解性及び非生体適合性のため、施術から一定時間の経過後に追加の手術で除去しなければならない不便があって、使用の制限性があった。
これにより、1970年代以降、水溶性条件の下で長時間露出したときに分解されるエステル結合を有する合成高分子縫合糸の開発及び活用に関する研究が引き続き行われてきた。最近では、初期のポリグリコール酸(PGA)の代わりに、ポリジオキサノン(PDO)高分子などが縫合糸素材として広く用いられている。
縫合糸には、体内で自然に吸収され、傷修復後に除去の必要がない吸水性縫合糸と、傷修復後に除去が必要な非吸収性縫合糸とがある。
吸収性縫合糸は、主にPGA、PDOなどの分解性高分子材質であって内科用手術に採用され、非吸収性縫合糸は、主にシルク、ナイロンなどの非分解性高分子材質であって外科用手術に採用される。最近では、手術後の除去のための後処理過程が必要ない分解性縫合糸の使用が増加しているのが実情である。しかし、化学合成高分子からなるエステル結合を有する吸収性縫合糸は、使用初期には異物拒絶反応による副作用のおそれがあり、長期的には体内で体液などによって分解されるとしても、その分解残物が体内に長期間存在するため、生体適合性と安全性の確立とがさらに重要視されている状況である。
最近では、これらの分解性縫合糸を、内・外科用手術後の組織接合などの組織修復用材料としての本来の用途ではなく、美容関連、シワ改善のためのリフティング用縫合糸として活用することが非常に増加している。一般生分解性縫合糸は、kgあたり600〜1,000万ウォンであるが、これに対し、同じ材質であってもこれをリフティング用縫合糸として活用する場合、 高付加価値化されてkgあたりの価格が1億ウォン以上になり、これらの用途の開発及び活用への関心が増大しつつある。
ヒアルロン酸(HA)は、コンドロイチンとヘパリンととの中間体であるグリコースアミノグリカン(GAG)の一種であって、人体内皮膚、筋肉、軟骨、血管などに広範囲に存在する生体高分子物質である。HAは、人体内で各種細胞の増殖や活性化などの重要成分であり、特に加齢に伴って体内で減少して老化が促進される抗老化関連の核心要素として知られている。最近では、皮膚再生、保湿及び弾力維持によるシワ改善などに対する効果が確認され、美容関連、化粧品、食品及び医薬用フィラーなどの製品に対する需要が急激に増加している。
一般に、傷口の理想的な創傷治癒は、まず、外部からの汚染防止のための遮断後に傷口の細胞増殖、再生及び基質沈着、そして創傷の閉鎖が迅速に起こって癒着や瘢痕(Scar)なしで癒されることである。このような創傷治癒を促進することが可能な方法として、第一に、創傷治癒の主な物質たる基質の挿入、第二に、皮膚の再生細胞または治療細胞を高濃度に発現することが可能な成長因子の直接投与、第三に、炎症を抑える抗炎症物質の投与、第四に、感染の防止及び細菌抗菌物質の投与などがある。ここで、組織修復用材料としてHAなどの生体内基質(Matrix)だけを入れる場合、人体内基質としての効果を期待することができるが、成長因子を直接投与する場合、成長因子が高価であるため価格負担が存在し且つ投与の際に活性管理の困難さがあり、抗炎・抗菌物質の添加は安全性の立証が必要である。
したがって、HAなどの基質に抗炎・抗菌機能のあるキトサン、キチン、リシン、トリクロン酸などの化合物を導入すると、効果の面で非常に差別性がある方法であるといえるが、必ず物性低下、安全性への徹底した検討が必要である。
現在、分解性縫合糸として広く用いられている合成高分子PDO縫合糸は、人体内で内科手術用素材として使用するとき、または皮膚接合などの外科手術用素材として使用するときに、既存の非分解性素材に比べて体液などへの低い安定性により物性低下のおそれがあって使用の制限がある。また、内科手術用とリフティング用縫合糸として顔の皮膚などに使用する場合、投入後の初期体内異物反応による組織拒絶反応が発生するおそれがある。また、中長期的には投入後の分解残物による吸収と排出時の問題点発生などの副作用が発生するおそれがある。特に顔などの整形リフティング素材としての活用の際に、副作用の発生は、患者本人が当初の目標とした美容改善どころか、却って外観上大きな傷として残る非常に敏感な部分である。これらの部分を改善させようとするほとんどの研究は、分解性縫合糸の製造の際に抗菌・抗炎機能のある成分または機械的物性向上のための添加剤などを添加した後、溶融紡糸して縫合糸を製造する部分に限られている状況である。
HAは、皮膚充填剤としての役目、及び人体内の各種弾力やシワ改善などの効果のために、分解性高分子縫合糸の原料に添加して縫合糸に製造するか、或いは縫合糸製造後の後処理過程によってHAをコーティングして活用しようとする試みをしている。しかし、HAを既存の縫合糸原料に少量添加した後、紡糸して縫合糸を製造するときにHA自体の不溶により最終縫合糸の機械的物性が大幅に低下するおそれがある。また、縫合糸製造後の後処理過程によってHAをコーティングするときに高粘性のHAによって縫合糸の太さを調整することが難しく、コーティングの際に使用するHA水溶液内の水に起因して縫合糸が破損し、機械的物性が急激に減少するおそれがあるため、明確な成果がない状況である。
特開2011−31034号公報は、ヒアルロン酸及びビニルラクタムポリマーから誘導されたポリマーとラクトンポリマーから誘導されたポリマーとのブレンドを含有する、コーティングされた縫合糸を開示しているが、上述したように機械的物性が低下するという問題点があった。
そこで、本発明者らは、かかる問題点を解決するため、ヒアルロン酸塩を精製水に溶解させた後、有機溶媒を加えてヒアルロン酸塩有機溶媒水溶液を製造し、これを縫合糸にコーティングさせる場合、縫合糸の外観と機械的物性は維持しながら、生体適合性と人体内の様々な生理活性効果を増進することが可能な高機能性縫合糸を製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の目的は、生体適合性、皮膚内の緩衝性及び皮膚再生能力に優れた縫合糸及びその製造方法を提供することである。
本発明の他の目的は、生体適合性、皮膚内の緩衝性及び皮膚再生能力に優れた整形フィラー、リフティング用糸及び組織工学用スキャフォールド(Scaffold)を提供することである。
本発明は、(a)ヒアルロン酸塩を精製水に溶解させた後、有機溶媒を加えて、最終的に有機溶媒の濃度が50〜70体積%、ヒアルロン酸塩の濃度が0.5〜2体積%であるヒアルロン酸塩有機溶媒水溶液を製造する工程と、(b)前記ヒアルロン酸塩有機溶媒水溶液で縫合糸をコーティングした後、乾燥させる工程とを含んでなる、ヒアルロン酸塩がコーティングされた縫合糸の製造方法を提供する。
本発明において、前記ヒアルロン酸塩有機溶媒水溶液のヒアルロン酸塩は、5〜100kDaの重量平均分子量を有することを特徴とする。
本発明において、前記縫合糸は吸収性縫合糸または非吸収性縫合糸であることを特徴とする。
本発明において、前記コーティングは、ヒアルロン酸塩有機溶媒水溶液に縫合糸を浸漬させるか、或いはヒアルロン酸塩有機溶媒水溶液を縫合糸に噴射させることにより行われることを特徴とする。
また、本発明は、上記の方法で製造されたヒアルロン酸塩がコーティングされた縫合糸を提供する。
また、本発明は、前記ヒアルロン酸がコーティングされた縫合糸を含む整形フィラー、リフティング用糸及び組織工学用スキャフォールド(Scaffold)を提供する。
本発明のヒアルロン酸塩がコーティングされた縫合糸は、主物質が化学合成高分子物質であるが、表面がヒアルロン酸塩でコーティングされており、安全性及び生体適合性に優れる。加えて、水分吸収性に優れるので、人体内への適用の際に直ちに膨潤しながら吸収されて患者の苦痛を最小限に抑えることができ、様々な形態の組織修復用製剤として利用することができる。
本発明によってヒアルロン酸ナトリウムを精製水に溶解させた後、有機溶媒を加えて製造したヒアルロン酸ナトリウム有機溶媒水溶液の有機溶媒の濃度による溶解度の写真である。 ヒアルロン酸ナトリウムを有機溶媒水溶液に溶解させて製造したヒアルロン酸ナトリウム有機溶媒水溶液の有機溶媒の濃度による溶解度の写真である。 コーティング処理を施していないPDO縫合糸の表面を撮影した電子顕微鏡写真である。 精製水に浸漬させたPDO縫合糸の表面を撮影した電子顕微鏡写真である。 95%の有機溶媒に浸漬させたPDO縫合糸の表面を撮影した電子顕微鏡写真である。 本発明によってヒアルロン酸ナトリウムを精製水に溶解させた後、有機溶媒を加えて製造したヒアルロン酸ナトリウム有機溶媒水溶液(エタノール濃度:70%、ヒアルロン酸ナトリウム濃度:1%)でコーティングさせたPDO縫合糸の表面を撮影した電子顕微鏡写真である。
ヒアルロン酸塩は非常に優れる親水性を有し、分解性縫合糸は水に露出したときに徐々に溶解する。よって、ヒアルロン酸塩を縫合糸にコーティングさせるためには、ヒアルロン酸塩を溶解させ且つ縫合糸は溶解させない溶媒の開発が重要である。
本発明では、低分子ヒアルロン酸塩を精製水に溶解させた後、有機溶媒を加える場合、ヒアルロン酸塩を溶解させながら縫合糸の表面は損傷させない有機溶媒の濃度が50〜70体積%であり、ヒアルロン酸塩の濃度が0.5〜2体積%であるヒアルロン酸塩有機溶媒水溶液を製造することができ、これを用いて縫合糸に容易にコーティングすることができることを確認しようとした。
本発明の実施形態では、重量平均分子量10kDaのヒアルロン酸ナトリウムを精製水に溶解させた後、エタノールを加えて、エタノールの濃度が50〜70体積%、ヒアルロン酸ナトリウムの濃度が0.5〜2体積%であるヒアルロン酸ナトリウムエタノール水溶液を製造し、PDO縫合糸を浸漬させてヒアルロン酸ナトリウムをPDO縫合糸の表面にコーティングした。ヒアルロン酸ナトリウムが表面にコーティングされたPDO縫合糸の表面を顕微鏡で観察した結果、表面の破損なしに滑らかにコーティングされていることを確認した。
したがって、本発明は、一態様において、(a)ヒアルロン酸塩を精製水に溶解させた後、有機溶媒を加えて、最終的に有機溶媒の濃度が50〜70体積%、ヒアルロン酸塩の濃度が0.5〜2体積%であるヒアルロン酸塩有機溶媒水溶液を製造する工程と、(b)前記ヒアルロン酸塩有機溶媒水溶液で縫合糸をコーティングした後、乾燥させる工程とを含んでなる、ヒアルロン酸塩がコーティングされた縫合糸の製造方法に関する。
本発明において、ヒアルロン酸塩は、ヒアルロン酸に塩が結合しているものであって、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸カリウム、ヒアルロン酸カルシウムなどを例示することができるが、これに限定されるものではない。
前記ヒアルロン酸塩は、 5〜100kDaの重量平均分子量を有するものを使用することが好ましく、10〜20kDaの重量平均分子量を有するものを使用することがより好ましい。前記ヒアルロン酸塩の分子量が100kDaを超える場合には、0.5〜2%のヒアルロン酸塩濃度で50〜70%の有機溶媒水溶液に溶解させるときに、高分子量に起因した粘性を示すため、浸漬またはスプレー噴射法によって従来の縫合糸をコーティングさせるときに縫合糸の太さ調整がしにくいまた、50%の有機溶媒水溶液においても溶解が困難であるという傾向がある。すなわち、前記ヒアルロン酸塩の粘度は1%溶液を基準に20cps以下であることが好ましい。
前記ヒアルロン酸塩を精製水に溶解させるとき、ヒアルロン酸塩の分子量を下げ、より溶解がスムーズに行われるように熱を加えることができるが、40〜70℃で加熱することが好ましい。ヒアルロン酸塩が溶けると、有機溶媒を加えて有機溶媒濃度50〜70体積%、ヒアルロン酸塩濃度0.5〜2体積%のヒアルロン酸塩有機溶媒水溶液を製造する。
前記有機溶媒の濃度が50体積%未満である場合には、縫合糸へのコーティング時に縫合糸の表面に損傷を誘発することがあり、前記有機溶媒の濃度が70体積%を超える場合には、ヒアルロン酸塩が析出してコーティングを困難となる傾向がある。
前記有機溶媒としては、ヒアルロン酸塩を溶解させながら縫合糸は溶解させないものであれば、制限なく使用が可能であり、エタノール、アセトンなどを例示することができる。
このように精製水にヒアルロン酸塩を溶解させた後、有機溶媒を追加せず、50〜70%の有機溶媒水溶液に直接ヒアルロン酸塩を溶解させる場合には、ヒアルロン酸塩が全く溶解しないか或いは高濃度で溶解することができないため、縫合糸にコーティングすることが困難となる傾向がある。
本発明において、前記縫合糸は、通常使用される吸収性縫合糸または非吸収性縫合糸を用いることができる。
天然素材の吸収性縫合糸としてカットグット(catgut)、クロミックグット(chromicgut)があり、合成素材の吸水性縫合糸としてポリグリコール酸(DEXON、MAXON)、ポリグラチック910(VICRYL)及びポリジオキサノンなどを例示することができる。また、天然素材の非吸収性縫合糸として絹糸(シルク)があり、合成素材の非吸収性縫合糸としてポリエステル(ダクロン)、ポリプロピレン(プロリン)、ポリアミド(ナイロン)及びe−PTFE(ゴアテックス)などを例示することができるが、これに限定されるものではない。
前記ヒアルロン酸塩有機溶媒水溶液で縫合糸をコーティングさせる工程は、ヒアルロン酸塩有機溶媒水溶液に縫合糸を浸漬させるか、或いはヒアルロン酸塩有機溶媒水溶液を縫合糸に噴射させる方法で行うことができる。
本発明に係る縫合糸は、ヒアルロン酸塩単独コーティングも可能であるが、活用分野に応じて、当業分野で通常的に用いられる担体または賦形剤成分をさらに含むことができ、その種類及び含有量の範囲が特に限定されるものではない。
本発明の主な用途である内・外科手術用縫合と美容関連リフティングの用途として活用するとき、より強化された機能性の確保のために薬理学的に許容される生体適合性製剤であるキトサン、ポリ乳酸、その他の抗炎症素材も併用可能である。
本発明は、別の態様において、上記の方法で製造されたヒアルロン酸塩がコーティングされた縫合糸に関する。
本発明によって製造されたヒアルロン酸塩がコーティングされた縫合糸は、表面がヒアルロン酸塩でコーティングされており、安全性及び生体適合性に優れる。また、水分吸収性に優れるので、人体内への適用の際に直ちに膨潤しながら吸収されて患者の苦痛を最小限に抑えることができ、様々な形態の組織修復用製剤として利用することができる。さらに、溶媒として、50〜70%エタノール水溶液を使用する場合、既存の縫合糸自体の微生物汚染を最小限に抑えることができる。
したがって、本発明は、別の態様において、前記ヒアルロン酸塩がコーティングされた縫合糸を含む整形フィラー、リフティング用糸及び組織工学用スカフォールドに関する。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例は本発明を例示するためのものに過ぎない。本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されるものと解釈されないのは、当業分野における通常の知識を有する者にとって自明のことであろう。
実施例1:低分子ヒアルロン酸ナトリウム水溶液の製造
分子量0.3MDaのヒアルロン酸ナトリウム(Hi−Aqua(登録商標)、(株)ジンウバイオ)を精製水に1〜5%の濃度で溶解させた後、これを70℃で1時間熱処理して分子量50kDaのヒアルロン酸ナトリウム水溶液を製造した。
比較例1:低分子ヒアルロン酸ナトリウム水溶液の製造
分子量0.3MDaのヒアルロン酸ナトリウム(Hi−Aqua、(株)ジンウバイオ)を精製水に1〜5%の濃度で溶解させてヒアルロン酸ナトリウム水溶液を製造した。
実施例2:低分子ヒアルロン酸ナトリウム水溶液の製造
分子量10kDaのヒアルロン酸ナトリウム(Hi−Aqua、(株)ジンウバイオ)を精製水に1〜5%の濃度で溶解させてヒアルロン酸ナトリウム水溶液を製造した。
実施例3〜5:低分子0.5〜2%ヒアルロン酸ナトリウムエタノール水溶液の製造
実施例1、実施例2及び比較例1のヒアルロン酸ナトリウム水溶液にそれぞれエタノールを加えてヒアルロン酸ナトリウムエタノール水溶液(エタノール濃度:50〜70%、ヒアルロン酸ナトリウム濃度:0.5〜2%)を製造した。
比較例2:低分子0.5〜2%ヒアルロン酸ナトリウムエタノール水溶液の製造
実施例1〜3及び比較例1とは異なり、50〜70%エタノール水溶液に分子量10kDaのヒアルロン酸ナトリウム(Hi−AquaTM、(株)ジンウバイオ)を溶解して0.5〜2%のヒアルロン酸ナトリウムエタノール水溶液を製造した。
実験例1:低分子ヒアルロン酸ナトリウムの精製水と濃度別エタノール水溶液に対する溶解性の測定
実施例1〜2及び比較例1で製造されたヒアルロン酸ナトリウム水溶液、実施例3及び比較例2で製造されたヒアルロン酸ナトリウムエタノール水溶液の溶解度を目視で確認した。
図1に示すように、ヒアルロン酸ナトリウム(分子量10kDa)の水溶液(実施例2)にエタノールを加えてエタノール濃度が50〜70%であるヒアルロン酸ナトリウムエタノール水溶液(実施例4)の場合は、すべて溶解がうまくなされた。
一方、図2に示すように、50〜70%エタノール水溶液に直接ヒアルロン酸ナトリウム(分子量10kDa)を溶解させた比較例2の場合は、50%エタノール水溶液にはヒアルロン酸ナトリウムが溶解するが、60%エタノール水溶液には完全溶解しないことを確認することができた。
また、ヒアルロン酸ナトリウム(分子量0.3MDa)を精製水に1〜5%の濃度で溶解させた後、これを熱処理させたヒアルロン酸ナトリウム(分子量50kDa)水溶液(実施例1)にエタノールを加えてエタノール濃度が50〜70%であるヒアルロン酸ナトリウムエタノール水溶液(実施例3)の場合は、エタノール濃度60%まではヒアルロン酸ナトリウムが溶解するが、60%超過では結晶として析出して完全溶解しないことを確認した。
そして、ヒアルロン酸ナトリウム(分子量0.3MDa)水溶液(比較例1)にエタノールを加えてエタノール濃度が50〜70%であるヒアルロン酸ナトリウムエタノール水溶液(実施例5)の場合は、エタノール濃度50%まではヒアルロン酸ナトリウムが溶解するが、50%超過では結晶として析出して完全溶解しないことを確認した。
実験例2:PDO縫合糸の精製水と濃度別エタノール水溶液に対する安定性の側定
PDO縫合糸(メタバイオメド)を精製水と50、60、70、95%エタノール水溶液に浸漬した後、縫合糸の表面変化を電子顕微鏡測定によって観察し、その結果を図3から図5に示した。
図3及び図4に示されているように、コーティング処理を施していないPDO縫合糸の表面は滑らかな状態であるが、精製水に浸漬させたPDO縫合糸の場合は、表面が溶解して表面が非常に損傷したことを確認した。そして、50%〜60%エタノール水溶液では、PDO縫合糸の表面が一部破損したが、縫合糸として使用可能であり、70%エタノール水溶液では、表面破損が観察されなかった。
図5に示すように、95%エタノールに浸漬させたPDO縫合糸の場合には、PDO縫合糸の初期表面状態とほぼ同様の表面状態を示すことを確認することができた。
したがって、上記の結果から、ヒアルロン酸ナトリウムをPDO縫合糸にコーティングするために、ヒアルロン酸ナトリウムを精製水に溶解させたヒアルロン酸ナトリウム水溶液を使用する場合には、PDO縫合糸の表面損傷を誘発するので、効果的なコーティングが不可能であることを確認することができた。
実施例6:浸漬法による縫合糸のヒアルロン酸ナトリウムコーティング
実施例4で製造されたヒアルロン酸ナトリウムエタノール水溶液(エタノール濃度:70%、ヒアルロン酸ナトリウム濃度:1%)にはPDO縫合糸を1分間浸漬させることにより、ヒアルロン酸ナトリウムをコーティングさせた。
実験例3:70%のエタノール水溶液上でヒアルロン酸ナトリウムがコーティングされたPDO縫合糸の表面変化の確認
実施例6で製造したヒアルロン酸ナトリウムがコーティングされたPDO縫合糸の表面変化を電子顕微鏡で観察し、その結果を図6に示した。
図6から、70%エタノール水溶液の場合は、PDO縫合糸の表面が全く破損せず、ヒアルロン酸ナトリウムがPDO縫合糸の表面に部分的に球形または若干突出した形でコーティングされたことを確認することができた。
以上、本発明の内容の特定の部分を詳細に述べたので、当該分野における通常の知識を有する者にとって、このような具体的な記述は単に好適な実施形態に過ぎず、本発明の範囲を制限するものではないことは明らかである。よって、本発明の実質的な範囲は添付された請求の範囲とそれらの等価物によって定められるといえる。
本発明のヒアルロン酸塩がコーティングされた縫合糸は、整形フィラー、リフティング用糸及び組織工学用スカフォールドなどに活用可能である。

Claims (6)

  1. 下記の工程を含む、ヒアルロン酸塩がコーティングされたポリジオキサノン縫合糸の製造方法。
    (a)ヒアルロン酸塩を精製水に溶解させる工程と、
    (b)ヒアルロン酸塩溶解液にエタノールを加えて、最終的にエタノールの濃度が50〜70体積%、ヒアルロン酸塩の濃度が0.5〜2体積%、重量平均分子量が5〜100kDaであるヒアルロン酸塩エタノール水溶液を製造する工程、及び
    (c)前記ヒアルロン酸塩エタノール水溶液でポリジオキサノン縫合糸をコーティングした後、乾燥させる工程。
  2. 前記コーティングを、ヒアルロン酸塩エタノール水溶液に縫合糸を浸漬させるか、ヒアルロン酸塩エタノール水溶液を縫合糸に噴射することにより行う請求項1に記載のヒアルロン酸塩がコーティングされたポリジオキサノン縫合糸の製造方法。
  3. 重量平均分子量が5〜100kDaのヒアルロン酸塩の濃度が0.5〜2体積%であるヒアルロン酸塩の、エタノールの濃度が50〜70体積%のエタノール水溶液から誘導された、ヒアルロン酸塩がコーティングされたポリジオキサノン縫合糸。
  4. 請求項3に記載のヒアルロン酸塩がコーティングされたポリジオキサノン縫合糸を含む整形フィラー。
  5. 請求項3に記載のヒアルロン酸塩がコーティングされたポリジオキサノン縫合糸を含むリフティング用糸。
  6. 請求項3に記載のヒアルロン酸塩がコーティングされたポリジオキサノン縫合糸を含む組織工学用スカフォールド。
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