以下、本発明の一実施形態に係る防汚構造体、防汚構造体の製造方法及び自動車部品について詳細に説明する。なお、以下の実施形態で引用する図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態に係る防汚構造体について図面を参照しながら詳細に説明する。図1(A)は、本発明の第1の実施形態に係る防汚構造体を示す模式的な断面図であり、図1(B)は、図1(A)に示した多孔質体の包囲線Bで囲まれた部位を模式的に示す拡大図である。
図1に示すように、本実施形態の防汚構造体1は、基材20の上に形成された、多孔質体11からなる多孔質層10と、多孔質体11の空孔11aに保持され、多孔質層10の表面を被覆する潤滑油19とを備えたものである。そして、多孔質体11は、セラミックス微粒子13と、セラミックス微粒子13の材質と異なる材質を有する結着材15とを含有する。なお、多孔質体11は、未修飾の多孔質体11Aである。
このような構成を有することにより、潤滑油により防汚構造体の表面における摩擦係数を低減することが可能となり、多孔質層における応力発生が抑制され、耐摩耗性を向上させることができるため、優れた耐摺動性を有する防汚構造体となる。また、潤滑油の特性に応じて、撥水性や撥油性を付与することができるため、優れた防汚性能を有する防汚構造体となる。
さらに、たとえ、多孔質層の厚みを厚くした場合であっても、材質の異なるセラミックス微粒子と結着材とで多孔質体が形成されているため、摺動の際や多孔質層の作製の際において多孔質層における応力が緩和され易く、また、多孔質層の厚みを厚くした場合には、潤滑油が保持され易い。その結果、優れた防汚性能及び耐摺動性を有する防汚構造体となっているとも考えられる。但し、かかる作用によらないで上述のような効果が得られていたとしても、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
なお、本発明において、潤滑油としては、例えば、炭化水素系オイルやフッ素系オイルなど従来公知のものを適宜利用することができる。また、本発明において、基材としては、例えば、鋼板やガラスなどの樹脂を含まない基材や、樹脂自体や塗膜など樹脂を含む基材を適宜利用することができる。
また、本実施形態においては、セラミックス微粒子が金属酸化物を含むことが好ましい。なお、本発明において「セラミックス微粒子が金属酸化物を含む」という場合には、セラミックス微粒子が金属酸化物である場合が含まれる。例えば、セラミックス微粒子として水酸化酸化アルミニウム(ベーマイト)や酸化アルミニウム(アルミナ)などの金属酸化物を含むものを適用した場合、詳しくは後述する例えばフッ素処理などの表面改質処理がし易くなり、多孔質体における例えばフッ素系オイルの保持性を向上させることができる。その結果、耐摩耗性をさらに向上させることができるため、より優れた耐摺動性を有する防汚構造体となる。また、潤滑油の特性に応じて、撥水性や撥油性を付与させやすくなるため、より優れた防汚性能を有する防汚構造体となる。さらに、金属酸化物であるセラミックス微粒子を適用することにより、透明度が高い多孔質層を形成し易いという利点もある。
なお、本発明においては、セラミックス微粒子は金属酸化物に限定されるものではなく、例えば、炭化物、窒化ケイ素などの窒化物、ホウ化物、さらにはフッ化マグネシウムなどの非酸化物を適用してもよい。セラミックス微粒子における金属酸化物の具体例としては、水酸化酸化アルミニウム(ベーマイト)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ハフニウムなどの単純酸化物や、アンチモン酸亜鉛、チタン酸バリウムなどの複合酸化物、さらにガラスなどを挙げることができる。これらのセラミックス微粒子は、1種を単独で用いてもよく、複数種を適宜混合して用いてもよい。
さらに、本実施形態においては、セラミックス微粒子の形状が、ファイバー状、針状又は板状であることが好ましい。このような形状であるセラミックス微粒子を適用すると、より優れた耐摺動性を有する防汚構造体となる。なお、本発明において、セラミックス微粒子の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、球状であってもよく、非球状であってもよい。非球状の具体例としては、回転楕円体状等の針状、4角板状、6角板状、多角板状、鱗片状、円板状、楕円板状等の板状、ファイバー状、角柱状や円柱状等の柱状、角状、直方体状などを挙げることができる。これらのセラミックス微粒子は、1種を単独で用いてもよく、複数種を適宜混合して用いてもよい。
ここで、セラミックス微粒子の形状について図面を参照しながらさらに詳細に説明する。図2(A)は、鱗片状のセラミックス微粒子を適用した多孔質体を示す模式的な斜視図であり、図2(B)は、針状のセラミックス微粒子を適用した多孔質体を示す模式的な斜視図である。
図2(A)に示すように、形状が鱗片状のような板状であるセラミックス微粒子13を適用すると、多孔質層の作製の際に、セラミックス微粒子13の平坦部13aが基材(図示せず。)の表面と平行になるように配置され易い。これにより、セラミックス微粒子13を結着する結着材(図示せず。)の結着面が広くなり、摺動の際における矢印Xで示す水平方向の入力に対する強度を向上させることができる。そのため、より優れた耐摺動性を有する防汚構造体となる。
一方、図2(B)に示すように、形状が針状(又はファイバー状)であるセラミックス微粒子13を適用すると、各セラミックス微粒子13が複数のセラミックス微粒子13と結着する。これにより、不織布のような構造となり、強度を向上させることができる。そのため、より優れた耐摺動性を有する防汚構造体となる。
なお、図示しないが、形状が球状(特に真球に近い滑らかな曲面を有するもの。)であるセラミックス微粒子は、結着材との密着性が他の形状のものより低い傾向がある。
また、本実施形態においては、セラミックス微粒子の平均長径が、1000nm以下であることが好ましい。このような平均長径であるセラミックス微粒子を適用すると、より優れた耐摺動性を有する防汚構造体となる。セラミックス微粒子の平均長径が1000nmより大きいと、多孔質体の空孔が大きくなりすぎ、多孔質体における潤滑油の保持性が低下する傾向を示す。その結果、防汚構造体の表面における摩擦係数をより低減することが難しくなる。ただし、このような範囲に何ら制限されるものではなく、本発明の作用効果を発現できるものであれば、この範囲を外れていてもよいことは言うまでもない。
また、セラミックス微粒子の平均短径は、200nm以下であることが好ましい。さらに、多孔質層が透明であることを要する場合には、セラミックス微粒子の平均短径は100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることが好ましい。セラミックス微粒子の平均短径が大きいと、多孔質体が白く見えるなど、光の透過性に影響がある。また、光の透過性自体に問題がない場合でも、多孔質層によって干渉縞が形成され、透明性を確保できないことがある。ただし、このような範囲に何ら制限されるものではなく、本発明の作用効果を発現できるものであれば、この範囲を外れていてもよいことは言うまでもない。
ここで、本発明において「セラミックス微粒子の平均長径」とは、例えば、防汚構造体の上面からセラミックス微粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)により観察し、観察される複数のセラミックス微粒子を二つの平行線で挟み、2つの平行線の間隔が最大となるときの距離の平均値をいう。また、本発明において「セラミックス微粒子の平均短径」とは、平均長径を規定するときの二つの平行線に直角な方向の二つの平行線でセラミックス微粒子を挟むときの距離の平均値をいう。
さらに、本実施形態においては、結着材が金属酸化物を含むことが好ましい。なお、本発明において「結着材が金属酸化物を含む」という場合には、結着材が金属酸化物である場合が含まれる。例えば、酸化ケイ素(シリカ)などの金属酸化物を含む結着材を適用した場合、微粒子同士の結着強度を確保し易く、多孔質体の多孔質構造を維持し易いため、より優れた耐摺動性を有する防汚構造体となる。なお、結着材として樹脂などの柔らかい材料を適用した場合、結着材として金属酸化物を含む結着材を適用した場合と比較して、摺動の際の応力より微粒子が剥落し易い傾向がある。
なお、本発明においては、結着材は金属酸化物に限定されるものではなく、例えば、樹脂やゴムを適用してもよい。結着材における金属酸化物の具体例としては、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化ゲルマニウム、酸化鉄、酸化ガリウム、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化タンタル、酸化バナジウム、酸化亜鉛又はこれらの複合酸化物などを挙げることができる。これらの結着材は、1種を単独で用いてもよく、複数種を適宜混合して用いてもよい。
また、本実施形態においては、セラミックス微粒子が、水酸化酸化アルミニウム(ベーマイト)及び酸化アルミニウム(アルミナ)のいずれか一方又は双方を含み、結着材が、酸化ケイ素(シリカ)を含むことが、耐摺動性や透明性の観点から好ましい。ベーマイトやアルミナは強度が高いため、多孔質層の耐久性を向上させることができる。また、ベーマイトは、AlOOHの組成で示され、板状、針状、6角板状などの形状を有する。さらに、ベーマイトは、一般的に、形状やサイズの制御が容易であることから、より均一な形状の微粒子を作製することができる。多孔質体の作製において、より均一な微粒子を用いることは、より優れた防汚性能、耐摺動性、透明性を有する防汚構造体を得やすいという観点から好ましい。また、結着材がシリカであれば、ベーマイトやアルミナの表面の酸素と強固に結合させることが可能であり、より優れた防汚性能や耐摺動性を有する防汚構造体とすることが可能であるという観点から好ましい。さらに、ベーマイトやアルミナ、シリカはいずれも光の透過性が高いため、多孔質層を透明なものとすることができ、例えば、透明であることが必要である車体コーティングなどに適用することが特に好ましい。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る防汚構造体について図面を参照しながら詳細に説明する。図3(A)は、本発明の第2の実施形態に係る防汚構造体を示す模式的な断面図であり、図3(B)は、図3(A)に示した多孔質体の包囲線Bで囲まれた部位を模式的に示す拡大図である。なお、上記の実施形態において説明したものと同等のものについては、それらと同一の符号を付して説明を省略する。
図3に示すように、本実施形態の防汚構造体2は、基材20の上に形成された、多孔質体11からなる多孔質層10と、多孔質体11の空孔11aに保持され、多孔質層10の表面を被覆する潤滑油19とを備えたものである。そして、多孔質体11は、セラミックス微粒子13と、セラミックス微粒子13の材質と異なる材質を有する結着材15とを含有する。なお、多孔質体11は、その表面11bに潤滑油19との濡れ性が高い表面修飾基17を有する修飾された多孔質体11Bである。
このような構成を有することにより、多孔質体と潤滑油との濡れ性が良好なものとなり、多孔質体における潤滑油の保持性を向上させることができる。その結果、耐摩耗性をさらに向上させることができるため、より優れた耐摺動性を有する防汚構造体となる。また、潤滑油の特性に応じて、撥水性や撥油性を付与させやすくなるため、より優れた防汚性能を有する防汚構造体となる。なお、例えば、潤滑油が炭化水素系オイルの場合には、炭化水素基(例えば、メチル基、エチル基など。)を形成すればよく、例えば、潤滑油がフッ素系オイルの場合には、フッ化炭化水素基(例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基など。)を形成すればよい。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係る防汚構造体について図面を参照しながら詳細に説明する。図4(A)は、本発明の第3の実施形態に係る防汚構造体を示す模式的な断面図であり、図4(B)は、図4(A)に示した防汚構造体の包囲線Bで囲まれた部位を説明する説明図である。なお、上記の実施形態において説明したものと同等のものについては、それらと同一の符号を付して説明を省略する。
図4に示すように、本実施形態の防汚構造体3は、基材20の上に形成された中間層30と、中間層30の上に形成された、多孔質体11からなる多孔質層10と、多孔質体11の空孔11aに保持され、多孔質層10の表面を被覆する潤滑油19とを備えたものである。なお、多孔質体11は、その表面に潤滑油19との濡れ性が高い表面修飾基を有する修飾された多孔質体11Bである。また、中間層30は、例えば、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン(チタニア)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム、酸化ゲルマニウム、酸化鉄、酸化ガリウム、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化タンタル、酸化バナジウム、酸化亜鉛又はこれらの複合酸化物などの無機材料31からなるものである。さらに、基材20は、その表面部20aに樹脂21を含む。また、無機材料31の一部が、表面部20aに拡散した状態で含まれる。
無機材料からなる中間層を設けることにより、基材と多孔質層との接着強度を向上させることができるため、優れた防汚性能を有し、より優れた耐摺動性を有する防汚構造体となる。なお、本実施形態において、多孔質体が表面修飾基を有することは必ずしも必須でない。
さらに、表面部に樹脂を含む基材に対して、無機材料からなる中間層を設け、無機材料の一部を基材の表面部に拡散させることにより、基材と多孔質層との密着強度を向上させることができ、アンカー効果により中間層自体の密着強度を向上させることもできる。そのため、さらに優れた耐摺動性を有する防汚構造体となる。特に、このような中間層を設けると、多孔質層を形成する際にムラができにくく、防汚性能や耐摺動性が特に優れたものとなる。
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態に係る防汚構造体について図面を参照しながら詳細に説明する。図5(A)は、本発明の第4の実施形態に係る防汚構造体を示す模式的な断面図であり、図5(B)は、図5(A)に示した防汚構造体の包囲線Bで囲まれた部位を説明する説明図である。なお、上記の実施形態において説明したものと同等のものについては、それらと同一の符号を付して説明を省略する。
図5に示すように、本実施形態の防汚構造体4は、基材20の上に形成された中間層30と、中間層30の上に形成された、多孔質体11からなる多孔質層10と、多孔質体11の空孔11aに保持され、多孔質層10の表面を被覆する潤滑油19とを備えたものである。なお、多孔質体11は、その表面に潤滑油19との濡れ性が高い表面修飾基を有する修飾された多孔質体11Bである。また、中間層30は、有機シラン構造(R−Si−O)からなるものである。さらに、基材20は、その表面部20aに樹脂21を含む。
表面部に樹脂を含む基材に対して、例えば有機シランカップリング剤に由来する単分子膜である有機シラン構造からなる中間層を設けることにより、基材と多孔質層との密着強度を向上させることができるため、より優れた耐摺動性を有する防汚構造体となる。特に、このような中間層を設けると、多孔質層を形成する際にムラができにくく、防汚性能や耐摺動性が優れたものとなる。なお、基材の表面部におけるRは、樹脂に由来する有機基である。また、中間層におけるR−S−Oは、有機シランカップリング剤に由来するものであり、その中のRは例えば、末端にアミノ基を有する基などの有機シランカップリング剤に由来する有機基である。さらに、多孔質層におけるSiは、例えば結着材として酸化ケイ素を適用した場合の結着材に由来するものである。また、基材の表面部における有機基Rと中間層における有機基Rとは、必ずしも化学結合を形成している必要はなく、例えば分子間力により密着している場合も本発明の範囲に含まれる。さらに、本実施形態において、多孔質体が表面修飾基を有することは必ずしも必須でない。
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態に係る自動車部品について詳細に説明する。本実施形態の自動車部品は、上述した本発明の一実施形態に係る防汚構造体を有するものである。
ここで、自動車部品としては、例えば、カメラレンズ、ミラー、ガラスウィンドウ、ボディーなどの塗装面、各種ライトのカバー、ドアノブ、メーターパネル、ウィンドウパネル、ラジエーターフィン、エバポレーターなどを挙げることができる。しかしながら、これらに限定されるものではない。
上述のような構成とすることにより、自動車部品における防汚性能及び耐摺動性を優れたものとすることができるので、自動車の洗車や清掃の回数を減らすことができる。また、例えば、車載カメラやミラー、ウィンドウなどに適用すれば、雨天や悪路においてもクリアな視界を確保することができる。
(第6の実施形態)
次に、本発明の第6の実施形態に係る防汚構造体の製造方法について詳細に説明する。本実施形態の防汚構造体の製造方法は、例えば、上述した第1の実施形態に係る防汚構造体を製造する方法の一形態である。
本実施形態の防汚構造体の製造方法は、以下の工程(1A)及び(2A)を含む。まず、工程(1A)においては、セラミックス微粒子自体及びセラミックス微粒子の原料からなる群より選ばれた少なくとも1種と、シリコーンアルコキシオリゴマー、ポリシラザン及びシリケートからなる群より選ばれた少なくとも1種を含む酸化ケイ素原料と、酸化ケイ素原料を硬化させる触媒とを含む混合液を、基材の上に塗布し、塗布された混合液を乾燥させて、未修飾の多孔質体からなる多孔質層を得る。しかる後、工程(2A)においては、未修飾の多孔質体に潤滑油を含浸させる。
このような工程を経ることにより、常温で多孔質層を形成することができるため、融点が比較的低く、加熱が難しい樹脂などの基材表面にも、耐久性の高い多孔質層を形成することができる。そのため、基材が樹脂であっても、優れた防汚性能及び耐摺動性を有する防汚構造体を得ることができる。
ここで、各工程について詳細に説明する。
工程(1A)で用いるセラミックス微粒子自体やセラミックス微粒子の原料としては、上記の実施形態で説明したものを用いることができる。
また、工程(1A)で用いる結着材の一例である酸化ケイ素の原料としては、シリコーンアルコキシオリゴマー、ポリシラザン、シリケートなどを挙げることができ、これらの酸化ケイ素原料は、1種を単独で用いてもよく、複数種を適宜混合して用いてもよい。
シリコーンアルコキシオリゴマーとしては、市販品のものとして、例えば、信越化学工業株式会社製のKC−89S、KR−515、KR−500、X−40−9225、X−40−9246、X−40−9250、KR−401N、X−40−9227、KR−510、KR−9218、KR−213などのアルコキシシリル基のみを有するものやKR−517、X−41−1059A、X−24−9590、KR−516、X−41−1805、X−41−1818、X−41−1810、KR−513、X−40−9296、KR−511、X−41−1053などのアルコキシシリル基及び反応性官能基を有するもの、東レ・ダウコーニング株式会社製のSR−2400、SR−2402、AY−42−163、DC−3074、DC−3037などのアルコキシシリル基のみを有するものなどを挙げることができる。これらのシリコーンアルコキシオリゴマーは、1種を単独で用いてもよく、複数種を適宜混合して用いてもよい。
ポリシラザンとしては、例えば、パーヒドロポリシラザン、メチルヒドロポリシラザン、ジメチルポリシラザンなどを挙げることができる。これらのポリシラザンは、1種を単独で用いてもよく、複数種を適宜混合して用いてもよい。
シリケートとしては、例えば、メチルシリケート、エチルシリケート、プロピルシリケート、ブチルシリケートなどを挙げることができる。これらのシリケートは、1種を単独で用いてもよく、複数種を適宜混合して用いてもよい。
さらに、工程(1A)で用いる触媒としては、市販品のものとして、信越化学工業株式会社製のX−40−2309A(リン酸系)、D−25(チタン系)、D−20(チタン系)、DX−175(チタン系)、DX−9740(アルミ系)、CAT−AC(アルミ系)、KP−390(アミン系)などのアルコキシシリル基に作用させる場合に加熱を必要としないものを好適例として挙げることができる。
また、工程(1A)において混合液とするために用いる溶剤としては、例えば、2−プロパノールやキシレンを用いることができるが、キシレンのような溶解性が高いものを適用することが好ましい。しかしながら、これに限定されるものではなく、例えば、溶解性が高い、換言すれば樹脂への相溶性が高いものとして、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、トリエチルベンゼン等の芳香族化合物、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、n−ペンタン、i−ペンタン、n−ヘキサン、i−ヘキサン、n−ヘプタン、i−ヘプタン、n−オクタン、i−オクタン、n−ノナン、i−ノナン、n−デカン、i−デカン等の飽和炭化水素化合物、ジペンテン、シクロヘキセンなどの不飽和炭化水素化合物などを挙げることができる。
さらに、工程(1A)において、混合液を基材に塗布する際には、例えば、スプレー塗布、ロールコーター、フローコート、ディップコートなど従来公知の手法を用いることができる。
また、工程(1A)において、多孔質体からなる多孔質層を得るためには、例えば、塗布された混合液を、室温(25℃)〜150℃で30分間〜24時間程度乾燥すればよい。
さらに、工程(2A)で用いる潤滑油としては、上記の実施形態で説明したものを用いることができる。
また、工程(2A)において、潤滑油を多孔質体に含浸させる際には、例えば、潤滑油を滴下後、表面を布でなじませればよい。
(第7の実施形態)
次に、本発明の第7の実施形態に係る防汚構造体の製造方法について詳細に説明する。本実施形態の防汚構造体の製造方法は、例えば、上述した第2の実施形態に係る防汚構造体を製造する方法の一形態である。
本実施形態の防汚構造体の製造方法は、以下の工程(1B)〜(3B)を含む。まず、工程(1B)においては、セラミックス微粒子自体及びセラミックス微粒子の原料からなる群より選ばれた少なくとも1種と、シリコーンアルコキシオリゴマー、ポリシラザン及びシリケートからなる群より選ばれた少なくとも1種を含む酸化ケイ素原料と、酸化ケイ素原料を硬化させる触媒とを含む混合液を、基材の上に塗布し、塗布された混合液を乾燥させて、未修飾の多孔質体からなる多孔質層を得る。次いで、工程(2B)においては、未修飾の多孔質体の表面に潤滑油との濡れ性が高い表面修飾基を形成する表面改質剤を用いて表面改質処理をして、修飾された多孔質体からなる多孔質層を得る。しかる後、工程(3B)においては、修飾された多孔質体に潤滑油を含浸させる。
このような工程を経ることにより、常温で多孔質層を形成することができるため、融点が比較的低く、加熱が難しい樹脂などの基材表面にも、耐久性の高い多孔質層を形成することができる。そのため、基材が樹脂であっても、より優れた防汚性能及び耐摺動性を有する防汚構造体を得ることができる。
なお、工程(1B)及び工程(3B)においては、それぞれ上記工程(1A)及び上記工程(2A)と同様の操作をすればよいが、同一である必要はない。
また、工程(2B)で用いる表面改質剤としては、未修飾の多孔質体の表面に潤滑油との濡れ性が高い表面修飾基を形成することができるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、潤滑油が炭化水素系オイルの場合には、炭化水素基(例えば、メチル基、エチル基など。)を形成することができるもの、潤滑油がフッ素系オイルの場合には、フッ化炭化水素基(例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基など。)を形成することができるものなどの従来公知のものを挙げることができる。
さらに、工程(2B)において、表面改質処理をする際には、例えば、フッ素処理するためのフッ素コーティング剤の塗布や、パーフルオロポリエーテル(PFPE)のハイドロフルオロエーテル(HFE)溶液への浸漬など従来公知の手法により、塗布や浸漬を行い、例えば、塗布されたフッ素コーティング剤についてはそのまま乾燥、浸漬されたパーフルオロポリエーテル(PFPE)のハイドロフルオロエーテル(HFE)溶液については湿度100%、25℃の環境下に1日置く又は150℃のオーブンで1時間加熱するなどを行えばよい。
(第8の実施形態)
次に、本発明の第8の実施形態に係る防汚構造体の製造方法について詳細に説明する。本実施形態の防汚構造体の製造方法は、例えば、上述した第2の実施形態に係る防汚構造体を製造する方法の他の形態である。
本実施形態の防汚構造体の製造方法は、以下の工程(1C)及び(2C)を含む。まず、工程(1C)においては、セラミックス微粒子自体及びセラミックス微粒子の原料からなる群より選ばれた少なくとも1種と、シリコーンアルコキシオリゴマー、ポリシラザン及びシリケートからなる群より選ばれた少なくとも1種を含む酸化ケイ素原料と、酸化ケイ素原料を硬化させる触媒と、未修飾の多孔質体の表面に潤滑油との濡れ性が高い表面修飾基を形成する表面改質剤とを含む混合液を、基材の上に塗布し、塗布された混合液を乾燥させて、修飾された多孔質体からなる多孔質層を得る。しかる後、工程(2C)においては、修飾された多孔質体に潤滑油を含浸させる。
このような工程を経ることにより、常温で多孔質層を形成することができるため、融点が比較的低く、加熱が難しい樹脂などの基材表面にも、耐久性の高い多孔質層を形成することができる。そのため、基材が樹脂であっても、より優れた防汚性能及び耐摺動性を有する防汚構造体を得ることができる。また、多孔質体の形成と表面改質処理とを一つの工程とすることができるため、低コスト化を図ることができる。なお、工程(1C)より後で、かつ、工程(2C)より前に、未修飾の多孔質体の表面に潤滑油との濡れ性が高い表面修飾基を形成する表面改質剤を用いる表面改質処理をさらに行ってもよい。
なお、工程(1C)及び工程(2C)においては、それぞれ上記工程(1A)及び上記工程(2A)と同様の操作をすればよいが、同一である必要はない。また、工程(1C)で用いる表面改質剤としては、上記工程(2B)で用いる表面改質剤と同様のものを用いることができるが、同一である必要はない。
(第9の実施形態)
次に、本発明の第9の実施形態に係る防汚構造体の製造方法について詳細に説明する。本実施形態の防汚構造体の製造方法は、例えば、上述した第2の実施形態に係る防汚構造体を製造する方法のさらに他の形態である。
本実施形態の防汚構造体の製造方法は、以下の工程(1D)を含む。ここで、工程(1D)においては、セラミックス微粒子自体及びセラミックス微粒子の原料からなる群より選ばれた少なくとも1種と、シリコーンアルコキシオリゴマー、ポリシラザン及びシリケートからなる群より選ばれた少なくとも1種を含む酸化ケイ素原料と、酸化ケイ素原料を硬化させる触媒と、未修飾の多孔質体の表面に潤滑油との濡れ性が高い表面修飾基を形成する表面改質剤と、潤滑油とを含む混合液を、基材の上に塗布し、塗布された混合液を乾燥させる。
このような工程を経ることにより、常温で多孔質層を形成することができるため、融点が比較的低く、加熱が難しい樹脂などの基材表面にも、耐久性の高い多孔質層を形成することができる。そのため、基材が樹脂であっても、より優れた防汚性能及び耐摺動性を有する防汚構造体を得ることができる。また、多孔質体の形成と表面改質処理と潤滑油の含浸を一つの工程とすることができるため、より低コスト化を図ることができる。
なお、工程(1D)においては、上記工程(1A)と同様の操作をすればよいが、同一である必要はない。また、工程(1D)で用いる表面改質剤や潤滑油としては、それぞれ上記工程(2B)で用いる表面改質剤や上記工程(2A)で用いる潤滑油と同様のものを用いることができるが、同一である必要はない。
(第10の実施形態)
次に、本発明の第10の実施形態に係る防汚構造体の製造方法について詳細に説明する。本実施形態の防汚構造体の製造方法は、例えば、上述した第3又は第4の実施形態に係る防汚構造体を製造する方法の一形態である。
本実施形態の防汚構造体の製造方法は、以下の工程(1E)〜(3E)を含む。ここで、工程(1E)においては、表面部に樹脂を含む基材と相溶性のある有機溶剤と、ポリシラザン及びシリコーンアルコキシオリゴマーからなる群より選ばれた少なくとも1種とを含むか又は有機シランカップリング剤を含む前処理液を、表面部に樹脂を含む基材の上に塗布し、塗布された前処理液を乾燥させて、表面部に樹脂を含む基材の上に無機材料からなるか又は有機シラン構造からなる中間層を形成する。次いで、工程(2E)においては、セラミックス微粒子自体及びセラミックス微粒子の原料からなる群より選ばれた少なくとも1種と、シリコーンアルコキシオリゴマー、ポリシラザン及びシリケートからなる群より選ばれた少なくとも1種を含む酸化ケイ素原料と、酸化ケイ素原料を硬化させる触媒とを含む混合液を、基材の上に形成された無機材料からなるか又は有機シラン構造からなる中間層に塗布し、塗布された混合液を乾燥させて、多孔質体からなる多孔質層を得る。しかる後、工程(3E)においては、多孔質体に潤滑油を含浸させる。
このような工程を経ることにより、常温で中間層や多孔質層を形成することができるため、融点が比較的低く、加熱が難しい樹脂などの基材表面にも、耐久性の高い中間層や多孔質層を形成することができる。そのため、基材が樹脂であっても、より優れた防汚性能及び耐摺動性を有する防汚構造体を得ることができる。
なお、工程(1E)で用いる有機溶剤としては、基材の表面部の樹脂と相溶性を有するものであれば、特に限定されるものではない。このような有機溶剤は、樹脂に染みこむことが可能であり、これにより、樹脂を膨潤させることができる。その結果、後述するポリシラザンやシリコーンアルコキシオリゴマーに由来する無機材料を基材の表面部の樹脂に拡散させることができる。具体的には、上記工程(1A)で例示した溶剤を適用することができるが、同一である必要はない。
また、工程(1E)で用いるポリシラザンやシリコーンアルコキシオリゴマーとしては、工程(1A)で用いる結着材と同様のものを用いることができるが、同一である必要はない。
さらに、工程(1E)で用いる有機シランカップリング剤としては、例えば、アミノ基有するアミノシランを好適に用いることができるが、従来公知のものを適用することもできる。有機シランカップリング剤としては、市販品のものとして、例えば、信越化学工業株式会社製のKBM−1003、KBE−1003、東レ・ダウコーニング株式会社製のZ−6075、Z−6300、Z−6519、Z−6550、Z−6825、Z−6030、Z−6033、Z−6036などのビニル基を有するものや、信越化学工業株式会社製のKBM−303、KBM−402、KBM−403、KBE−402、KBE−403、東レ・ダウコーニング株式会社製のZ−6040、Z−6041、Z−6042、Z−6044などのエポキシ基を有するもの、信越化学工業株式会社製のKBM−1403などのスチリル基を有するもの、信越化学工業株式会社製のKBM−502、KBM−503、KBE−502、KBE−503などのメタクリル基を有するもの、信越化学工業株式会社製のKBM5103などのアクリル基を有するもの、信越化学工業株式会社製のKBM−602、KBM−603、KBM−903、KBE−903、KBE−9103、KBM−573、KBM−575、東レ・ダウコーニング株式会社製のZ−6011、Z−6020、Z−6023、Z−6026、Z−6032、Z−6050、Z−6094、Z−6610、Z−6883、AZ−720などのアミノ基を有するもの、信越化学工業株式会社製のKBM−9659などのイソシアヌレート基を有するもの、信越化学工業株式会社製のKBE−585などのウレイド基を有するもの、信越化学工業株式会社製のKBM−802、KBM−803、東レ・ダウコーニング株式会社製のZ−6062、Z−6911などのメルカプト基を有するもの、信越化学工業株式会社製のKBE−846、東レ・ダウコーニング株式会社製のZ−6920、Z−6940、Z−6948などのスルフィド基を有するもの、信越化学工業株式会社製のKBE−9007などのイソシアネート基を有するもの、東レ・ダウコーニング株式会社製のイソシアン基を有するものなどを挙げることができる。これらは適用する樹脂の種類に応じて適宜選択すればよく、1種を単独で用いてもよく、複数を適宜混合して用いてもよい。
また、工程(1E)において、前処理液を基材に塗布する際には、例えば、スプレー塗布、ロールコーター、フローコート、ディップコートなど従来公知の手法を用いることができる。
さらに、工程(1E)において、中間層を得るためには、例えば、塗布された前処理液を、室温(25℃)〜150℃で30分間〜24時間程度乾燥すればよい。
また、工程(2E)及び工程(3E)においては、それぞれ上記工程(1A)及び上記工程(2A)と同様の操作をすればよいが、同一である必要はない。
(第11の実施形態)
次に、本発明の第11の実施形態に係る防汚構造体の製造方法について詳細に説明する。本実施形態の防汚構造体の製造方法は、例えば、上述した第3又は第4の実施形態に係る防汚構造体を製造する方法の他の形態である。
本実施形態の防汚構造体の製造方法は、以下の工程(1F)〜(4F)を含む。ここで、工程(1F)においては、表面部に樹脂を含む基材と相溶性のある有機溶剤と、ポリシラザン及びシリコーンアルコキシオリゴマーからなる群より選ばれた少なくとも1種とを含むか又は有機シランカップリング剤を含む前処理液を、表面部に樹脂を含む基材の上に塗布し、塗布された前処理液を乾燥させて、表面部に樹脂を含む基材の上に無機材料からなるか又は有機シラン構造からなる中間層を形成する。次いで、工程(2F)においては、セラミックス微粒子自体及びセラミックス微粒子の原料からなる群より選ばれた少なくとも1種と、シリコーンアルコキシオリゴマー、ポリシラザン及びシリケートからなる群より選ばれた少なくとも1種を含む酸化ケイ素原料と、酸化ケイ素原料を硬化させる触媒とを含む混合液を、基材の上に形成された無機材料からなるか又は有機シラン構造からなる中間層に塗布し、塗布された混合液を乾燥させて、未修飾の多孔質体からなる多孔質層を得る。さらに、工程(3F)においては、未修飾の多孔質体の表面に潤滑油との濡れ性が高い表面修飾基を形成する表面改質剤を用いて表面改質処理をして、多孔質体からなる多孔質層を得る。しかる後、工程(4F)において、多孔質体に潤滑油を含浸させる。
このような工程を経ることにより、常温で中間層や多孔質層を形成することができるため、融点が比較的低く、加熱が難しい樹脂などの基材表面にも、耐久性の高い中間層や多孔質層を形成することができる。そのため、基材が樹脂であっても、さらに優れた防汚性能及び耐摺動性を有する防汚構造体を得ることができる。
なお、上記工程(1F)においては、上記工程(1E)と同様の操作をすればよいが、同一である必要はない。
また、上記工程(2F)〜(4F)においては、それぞれ上記工程(1B)〜(3B)と同様の操作をすればよいが、同一である必要はない。
(第12の実施形態)
次に、本発明の第12の実施形態に係る防汚構造体の製造方法について詳細に説明する。本実施形態の防汚構造体の製造方法は、例えば、上述した第3又は第4の実施形態に係る防汚構造体を製造する方法のさらに他の形態である。
本実施形態の防汚構造体の製造方法は、以下の工程(1G)〜(3G)を含む。ここで、工程(1G)においては、表面部に樹脂を含む基材と相溶性のある有機溶剤と、ポリシラザン及びシリコーンアルコキシオリゴマーからなる群より選ばれた少なくとも1種とを含むか又は有機シランカップリング剤を含む前処理液を、表面部に樹脂を含む基材の上に塗布し、塗布された前処理液を乾燥させて、表面部に樹脂を含む基材の上に無機材料からなるか又は有機シラン構造からなる中間層を形成する。次いで、工程(2G)において、セラミックス微粒子自体及びセラミックス微粒子の原料からなる群より選ばれた少なくとも1種と、シリコーンアルコキシオリゴマー、ポリシラザン及びシリケートからなる群より選ばれた少なくとも1種を含む酸化ケイ素原料と、酸化ケイ素原料を硬化させる触媒と、未修飾の多孔質体の表面に潤滑油との濡れ性が高い表面修飾基を形成する表面改質剤とを含む混合液を、基材の上に形成された無機材料からなるか又は有機シラン構造からなる中間層に塗布し、塗布された混合液を乾燥させて、多孔質体からなる多孔質層を得る。しかる後、工程(3G)において、多孔質体に潤滑油を含浸させる。
このような工程を経ることにより、常温で中間層や多孔質層を形成することができるため、融点が比較的低く、加熱が難しい樹脂などの基材表面にも、耐久性の高い中間層や多孔質層を形成することができる。そのため、基材が樹脂であっても、さらに優れた防汚性能及び耐摺動性を有する防汚構造体を得ることができる。また、多孔質体の形成と表面改質処理とを一つの工程とすることができるため、低コスト化を図ることができる。なお、工程(2G)より後で、かつ、工程(3G)より前に、未修飾の多孔質体の表面に潤滑油との濡れ性が高い表面修飾基を形成する表面改質剤を用いる表面改質処理をさらに行ってもよい。
なお、上記工程(1G)においては、上記工程(1E)と同様の操作をすればよいが、同一である必要はない。
また、上記工程(2G)及び(3G)においては、それぞれ上記工程(1C)及び(2C)と同様の操作をすればよいが、同一である必要はない。
(第13の実施形態)
次に、本発明の第13の実施形態に係る防汚構造体の製造方法について詳細に説明する。本実施形態の防汚構造体の製造方法は、例えば、上述した第3又は第4の実施形態に係る防汚構造体を製造する方法のさらに他の形態である。
本実施形態の防汚構造体の製造方法は、以下の工程(1H)及び(2H)を含む。ここで、工程(1H)においては、表面部に樹脂を含む基材と相溶性のある有機溶剤と、ポリシラザン及びシリコーンアルコキシオリゴマーからなる群より選ばれた少なくとも1種とを含むか又は有機シランカップリング剤を含む前処理液を、表面部に樹脂を含む基材の上に塗布し、塗布された前処理液を乾燥させて、表面部に樹脂を含む基材の上に無機材料からなるか又は有機シラン構造からなる中間層を形成する。しかる後、工程(2H)においては、セラミックス微粒子自体及びセラミックス微粒子の原料からなる群より選ばれた少なくとも1種と、シリコーンアルコキシオリゴマー、ポリシラザン及びシリケートからなる群より選ばれた少なくとも1種を含む酸化ケイ素原料と、酸化ケイ素原料を硬化させる触媒と、未修飾の多孔質体の表面に潤滑油との濡れ性が高い表面修飾基を形成する表面改質剤と、潤滑油とを含む混合液を、基材の上に形成された無機材料からなるか又は有機シラン構造からなる中間層に塗布し、塗布された混合液を乾燥させる。
このような工程を経ることにより、常温で中間層や多孔質層を形成することができるため、融点が比較的低く、加熱が難しい樹脂などの基材表面にも、耐久性の高い中間層や多孔質層を形成することができる。そのため、基材が樹脂であっても、さらに優れた防汚性能及び耐摺動性を有する防汚構造体を得ることができる。また、多孔質体の形成と表面改質処理と潤滑油の含浸を一つの工程とすることができるため、より低コスト化を図ることができる。
なお、上記工程(1H)においては、上記工程(1E)と同様の操作をすればよいが、同一である必要はない。
また、上記工程(2H)においては、上記工程(1D)と同様の操作をすればよいが、同一である必要はない。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
(参考例1−1)
まず、表1に示すセラミックス粒子の20質量%水分散液(ゾル)50μLと、メチル系シリコーンアルコキシオリゴマー50μLと、2−プロパノール20mLとを混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、I1−1液を調製した。
また、表1に示すチタンアルコキシド10μLと、2−プロパノール7mLとを混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、II1−1液を調製した。
次いで、得られたI1−1液及びII1−1液を混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、混合液1−1を得た。
さらに、得られた混合液1−1をガラス板からなる基材にフローコートにより塗布し、室温で24時間乾燥させて、未修飾の多孔質層を得た。
さらに、得られた多孔質層をパーフルオロポリエーテル(PFPE)のハイドロフルオロエーテル(HFE)溶液(株式会社フロロテクノロジー製、フロロサーフ)に1日浸漬した後、湿度100%、25℃の環境下に1日置き、多孔質体の表面改質処理を行って、修飾された多孔質層を得た。なお、この表面改質処理を表1中における表面改質処理工程において「(1)」と記載する。
しかる後、得られた多孔質層に対して、フッ素オイル(デュポン社製、KRYTOX(登録商標))を滴下後、表面を布でなじませて、含浸させ、本例の防汚構造体を得た。なお、この潤滑油含浸を表1中における潤滑油含浸工程において「(1)」と記載する(表3及び表5においても同様。)。
(実施例1−2)
まず、表1に示すセラミックス粒子の20質量%水分散液(ゾル)50μLと、メチル系シリコーンアルコキシオリゴマー50μLと、2−プロパノール20mLと、FAS−17(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシルトリメトキシシラン)2μLとを混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、I1−2液を調製した。
また、表1に示すチタンアルコキシド10μLと、2−プロパノール7mLとを混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、II1−2液を調製した。
次いで、得られたI1−2液及びII1−2液を混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、混合液1−2を得た。
さらに、得られた混合液1−2をガラス板からなる基材にフローコートにより塗布し、室温で24時間乾燥させて、多孔質層を得た。
さらに、得られた多孔質層をパーフルオロポリエーテル(PFPE)のハイドロフルオロエーテル(HFE)溶液(株式会社フロロテクノロジー製、フロロサーフ)に1日浸漬した後、湿度100%、25℃の環境下に1日置き、多孔質体の表面改質処理を行って、修飾された多孔質層を得た。
しかる後、得られた多孔質層に対して、フッ素オイル(デュポン社製、KRYTOX(登録商標))を滴下後、表面を布でなじませて、含浸させ、本例の防汚構造体を得た。
(参考例1−3)
まず、表1に示すセラミックス粒子の20質量%水分散液(ゾル)50μLと、エチルシリケート50μLと、2−プロパノール20mLとを混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、I1−3液を調製した。
また、表1に示すリン酸系硬化触媒10μLと、2−プロパノール7mLとを混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、II1−3液を調製した。
次いで、得られたI1−3液及びII1−3液を混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、混合液1−3を得た。
さらに、得られた混合液1−3をガラス板からなる基材にフローコートにより塗布し、室温で24時間乾燥させて、未修飾の多孔質層を得た。
さらに、得られた多孔質層をパーフルオロポリエーテル(PFPE)のハイドロフルオロエーテル(HFE)溶液(株式会社フロロテクノロジー製、フロロサーフ)に1日浸漬した後、湿度100%、25℃の環境下に1日置き、多孔質体の表面改質処理を行って、修飾された多孔質層を得た。
しかる後、得られた多孔質層に対して、フッ素オイル(デュポン社製、KRYTOX(登録商標))を滴下後、表面を布でなじませて、含浸させ、本例の防汚構造体を得た。
(実施例1−4)
まず、表1に示すセラミックス粒子の20質量%水分散液(ゾル)50μLと、エチルシリケート50μLと、2−プロパノール20mLと、FAS−17(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシルトリメトキシシラン)2μLとを混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、I1−4液を調製した。
また、表1に示すリン酸系硬化触媒10μLと、2−プロパノール7mLとを混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、II1−4液を調製した。
次いで、得られたI1−4液及びII1−4液を混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、混合液1−4を得た。
さらに、得られた混合液1−4をガラス板からなる基材にフローコートにより塗布し、室温で24時間乾燥させて、多孔質層を得た。
さらに、得られた多孔質層をパーフルオロポリエーテル(PFPE)のハイドロフルオロエーテル(HFE)溶液(株式会社フロロテクノロジー製、フロロサーフ)に1日浸漬した後、湿度100%、25℃の環境下に1日置き、多孔質体の表面改質処理を行って、修飾された多孔質層を得た。
しかる後、得られた多孔質層に対して、フッ素オイル(デュポン社製、KRYTOX(登録商標))を滴下後、表面を布でなじませて、含浸させ、本例の防汚構造体を得た。
(実施例1−5)
まず、表1に示すセラミックス粒子の20質量%水分散液(ゾル)50μLと、エチルシリケート50μLと、2−プロパノール20mLと、FAS−17(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシルトリメトキシシラン)2μLとを混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、I1−5液を調製した。
また、表1に示すリン酸系硬化触媒10μLと、2−プロパノール7mLとを混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、II1−5液を調製した。
次いで、得られたI1−5液及びII1−5液を混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、混合液1−5を得た。
さらに、得られた混合液1−5をガラス板からなる基材にフローコートにより塗布し、室温で24時間乾燥させて、多孔質層を得た。
さらに、得られた多孔質層をパーフルオロポリエーテル(PFPE)のハイドロフルオロエーテル(HFE)溶液(株式会社フロロテクノロジー製、フロロサーフ)に1日浸漬した後、湿度100%、25℃の環境下に1日置き、多孔質体の表面改質処理を行って、修飾された多孔質層を得た。
しかる後、得られた多孔質層に対して、フッ素オイル(デュポン社製、KRYTOX(登録商標))を滴下後、表面を布でなじませて、含浸させ、本例の防汚構造体を得た。
(実施例1−6)
まず、表1に示すセラミックス粒子の20質量%水分散液(ゾル)50μLと、エチルシリケート50μLと、2−プロパノール2mLと、FAS−17(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシルトリメトキシシラン)2μLと、ハイドロフルオロエーテル(HFE)18mLとを混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、I1−6液を調製した。
また、表1に示すリン酸系硬化触媒10μLと、2−プロパノール1mLと、ハイドロフルオロエーテル(HFE)6mLと、フッ素オイル(デュポン社製、KRYTOX(登録商標))200μLとを混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、II1−6液を調製した。
次いで、得られたI1−6液及びII1−6液を混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、混合液1−6を得た。
しかる後、得られた混合液1−6をガラス板からなる基材にフローコートにより塗布し、室温で24時間乾燥させて、本例の防汚構造体を得た。なお、多孔質層は、修飾されており、フッ素オイルは含浸されていた。
(参考例1−7)
まず、表1に示すセラミックス粒子の20質量%水分散液(ゾル)50μLと、エチルシリケート50μLと、2−プロパノール20mLとを混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、I1−7液を調製した。
また、表1に示すリン酸系硬化触媒10μLと、2−プロパノール7mLとを混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、II1−7液を調製した。
次いで、得られたI1−7液及びII1−7液を混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、混合液1−7を得た。
さらに、得られた混合液1−7を塗装板からなる基材にフローコートにより塗布し、室温で24時間乾燥させて、未修飾の多孔質層を得た。
さらに、得られた多孔質層をパーフルオロポリエーテル(PFPE)のハイドロフルオロエーテル(HFE)溶液(株式会社フロロテクノロジー製、フロロサーフ)に1日浸漬した後、湿度100%、25℃の環境下に1日置き、多孔質体の表面改質処理を行って、修飾された多孔質層を得た。
しかる後、得られた多孔質層に対して、フッ素オイル(デュポン社製、KRYTOX(登録商標))を滴下後、表面を布でなじませて、含浸させ、本例の防汚構造体を得た。
(参考例1−8)
まず、キシレン、ミネラルスピリット(石油留分又は残油の水素化精製又は分解により得られる軽油)、パーヒドロポリシラザン及び1−メチルピペラジンを質量比でキシレン:ミネラルスピリット:パーヒドロポリシラザン:1−メチルピペラジン=2:96.9:1:0.1の割合で混合して、前処理液1−8を調製した。
次いで、得られた前処理液1−8を塗装板からなる基材にフローコートにより塗布し、室温で24時間乾燥させて、無機材料(酸化ケイ素)からなる中間層を得た。
一方、表1に示すセラミックス粒子の20質量%水分散液(ゾル)50μLと、エチルシリケート50μLと、2−プロパノール20mLとを混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、I1−8液を調製した。
また、表1に示すリン酸系硬化触媒10μLと、2−プロパノール7mLとを混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、II1−8液を調製した。
さらに、得られたI1−8液及びII1−8液を混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、混合液1−8を得た。
さらに、得られた混合液1−8を得られた中間層にフローコートにより塗布し、室温で24時間乾燥させて、未修飾の多孔質層を得た。
さらに、得られた多孔質層をパーフルオロポリエーテル(PFPE)のハイドロフルオロエーテル(HFE)溶液(株式会社フロロテクノロジー製、フロロサーフ)に1日浸漬した後、湿度100%、25℃の環境下に1日置き、多孔質体の表面改質処理を行って、修飾された多孔質層を得た。
しかる後、得られた多孔質層に対して、フッ素オイル(デュポン社製、KRYTOX(登録商標))を滴下後、表面を布でなじませて、含浸させ、本例の防汚構造体を得た。
(参考例1−9)
まず、3−アミノプロピルトリメトキシシラン及び2−プロパノールを質量比で3−アミノプロピルトリメトキシシラン:2−プロパノール=1:99の割合で混合して、前処理液1−9を調製した。
次いで、得られた前処理液1−9を塗装板からなる基材にフローコートにより塗布し、室温で24時間乾燥させて、有機シラン構造からなる中間層を得た。
一方、表1に示すセラミックス粒子の20質量%水分散液(ゾル)50μLと、エチルシリケート50μLと、2−プロパノール20mLとを混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、I1−9液を調製した。
また、表1に示すリン酸系硬化触媒10μLと、2−プロパノール7mLとを混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、II1−9液を調製した。
さらに、得られたI1−9液及びII1−9液を混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、混合液1−9を得た。
さらに、得られた混合液1−9を得られた中間層にフローコートにより塗布し、室温で24時間乾燥させて、未修飾の多孔質層を得た。
さらに、得られた多孔質層をパーフルオロポリエーテル(PFPE)のハイドロフルオロエーテル(HFE)溶液(株式会社フロロテクノロジー製、フロロサーフ)に1日浸漬した後、湿度100%、25℃の環境下に1日置き、多孔質体の表面改質処理を行って、修飾された多孔質層を得た。
しかる後、得られた多孔質層に対して、フッ素オイル(デュポン社製、KRYTOX(登録商標))を滴下後、表面を布でなじませて、含浸させ、本例の防汚構造体を得た。
(比較例1−1)
まず、表1に示すセラミックス粒子の20質量%水分散液(ゾル)50μLと、エチルシリケート50μLと、2−プロパノール20mLとを混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、I1−1’液を調製した。
また、表1に示すリン酸系硬化触媒10μLと、2−プロパノール7mLとを混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、II1−1’液を調製した。
次いで、得られたI1−1’液及びII1−1’液を混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、混合液1−1’を得た。
さらに、得られた混合液1−1’をガラス板からなる基材にフローコートにより塗布し、室温で24時間乾燥させて、未修飾の多孔質層を得た。
さらに、得られた多孔質層をパーフルオロポリエーテル(PFPE)のハイドロフルオロエーテル(HFE)溶液(株式会社フロロテクノロジー製、フロロサーフ)に1日浸漬した後、湿度100%、25℃の環境下に1日置き、多孔質体の表面改質処理を行って、修飾された多孔質層を得た。
しかる後、得られた多孔質層に対して、フッ素オイル(デュポン社製、KRYTOX(登録商標))を滴下後、表面を布でなじませて、含浸させ、本例の防汚構造体を得た。
(比較例1−2)
まず、表1に示すセラミックス粒子(酸化ケイ素ゾル)(日産化学工業株式会社製、ST−O−40)24gと、メタノール114gとを混合し、10分間撹拌し、I1−2’液を調製した。
また、表1に示すネオフロンND(エチレン・四フッ化エチレン系共重合体分散液)2gと、メタノール40gとを混合し、10分間撹拌し、II1−2’液を調製した。
次いで、得られたI1−2’液及びII1−2’液を混合し、30分間撹拌し、混合液1−2’を得た。
さらに、得られた混合液1−2’にガラス板からなる基材を浸漬し、4mm/sで引き上げるディップコートにより混合液1−2’を塗布し、300℃で1時間加熱し、さらに500℃で1時間加熱して、本例の防汚構造体を得た。
(比較例1−3)
まず、表1に示すセラミックス粒子の20質量%水分散液(ゾル)50μLと、エチルシリケート50μLと、2−プロパノール20mLとを混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、I1−3’液を調製した。
また、表1に示すリン酸系硬化触媒10μLと、2−プロパノール7mLとを混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、II1−3’液を調製した。
次いで、得られたI1−3’液及びII1−3’液を混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、混合液1−1’を得た。
さらに、得られた混合液1−3’を塗装板からなる基材にフローコートにより塗布し、室温で24時間乾燥させて、未修飾の多孔質層を得た。
さらに、得られた多孔質層をパーフルオロポリエーテル(PFPE)のハイドロフルオロエーテル(HFE)溶液(株式会社フロロテクノロジー製、フロロサーフ)に1日浸漬した後、湿度100%、25℃の環境下に1日置き、多孔質体の表面改質処理を行って、修飾された多孔質層を得た。
しかる後、得られた多孔質層に対して、フッ素オイル(デュポン社製、KRYTOX(登録商標))を滴下後、表面を布でなじませて、含浸させ、本例の防汚構造体を得た。各例の仕様の一部を表1に示す。
<性能評価>
上記各例の防汚構造体の試験片を、下記の各性能評価に供した。得られた結果を表2に示す。
[防汚性能評価]
上記各例の防汚構造体の防汚性能評価を下記の水滴転落性及び油滴転落性により評価した。
(水滴転落性)
水20μLを試験片に滴下し、転落角が10°以下の場合を「◎」とし、転落角が10°より大きく15°以下の場合を「○」とし、転落角が15°より大きく30°以下の場合を「△」とし、転落角が30°より大きい場合を「×」とした。なお、転落角はDSA100(Kruss社製)を用いて計測した。
(油滴転落性)
オレイン酸20μLを試験片に滴下し、転落角が10°以下の場合を「◎」とし、転落角が10°より大きく15°以下の場合を「○」とし、転落角が15°より大きく30°以下の場合を「△」とし、転落角が30°より大きい場合を「×」とした。なお、転落角はDSA100(Kruss社製)を用いて計測した。
[耐摺動性評価]
上記各例の防汚構造体の耐摺動性評価を下記の耐摩耗試験における接触角保持率により評価した。具体的には、水20μL及びオレイン酸20μLを試験片に滴下し、初期の接触角を測定した。さらに、キャンパス布による耐摩耗試験を実施し、5000往復摺動させた後、水20μL及びオレイン酸20μLを試験片に滴下し、摩耗試験後の接触角を測定した。これらの測定結果から接触角保持率を算出した。接触角保持率が80%以上の場合を「◎」とし、接触角保持率が70%以上80%未満の場合を「○」とし、接触角保持率が50%以上70%未満の場合を「△」とし、接触角保持率が50%未満の場合を「×」とした。なお、接触角はDAS100を用いて計測し、θ/2近似にて静置接触角を算出した。
[透明性評価]
上記各例の防汚構造体の透明性評価を下記のヘイズ測定により評価した。具体的には、ヘイズメーター(株式会社村上色彩技術研究所製)により、試験片のヘイズを測定した。ヘイズが1%以下の場合を「◎」とし、ヘイズが1%より大きく3%以下の場合を「○」とし、ヘイズが3%より大きく10%以下の場合を「△」とし、ヘイズが10%より大きい場合を「×」とした。
表1及び表2により、本発明の範囲に属する実施例1−2、実施例1−4〜実施例1−6は、セラミックス微粒子と所定の結着材とを含有する多孔質体からなる多孔質層と、多孔質体の空孔に保持された潤滑油とを備えるため、本発明外の比較例1−1〜比較例1−3と比較して、優れた防汚性能及び耐摺動性を有することが分かる。また、表1及び表2により、本発明の範囲に属する実施例1−2、実施例1−4〜実施例1−6は、優れた透明性を有することも分かる。
また、表1及び表2により、本発明の範囲に属する実施例1−2、実施例1−4〜実施例1−6は、表面改質処理により、フッ素オイルとの濡れ性が高いフッ素化炭化水素基を有する皮膜を形成したことや、セラミックス微粒子や結着材を金属酸化物、特にそれぞれを酸化アルミニウムと酸化ケイ素としたことなどにより、本発明外の比較例1−1〜比較例1−3と比較して、優れた防汚性能及び耐摺動性を有することが分かる。
さらに、表1及び表2により、本発明の範囲に属する実施例1−2と実施例1−5から、セラミックス微粒子の形状が球状より所定の針状などであることが好ましいことが分かる。
また、参考例1−7〜参考例1−9から、特に、基材として樹脂を適用する場合には、基材と多孔質層との間に所定の中間層を設けることが、耐摺動性を向上させ得るという観点から好ましいことが分かる。
さらに、図6(A)は、参考例1−7の防汚構造体(多孔質層形成後)の上面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真であり、図6(B)は、参考例1−8の防汚構造体(中間層形成後)の上面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。図6(A)においては、基材20上に形成された多孔質層にムラがあり、多孔質体11が凝集した部分が観察された。一方、図6(B)においては、基材上20上に形成された中間層が分散されており、さらに、中間層を構成する無機材料31の一部が基材20に埋まっていることが観察された。
(参考例2−1)
まず、表3に示すセラミックス粒子の20質量%水分散液(ゾル)50μLと、メチル系シリコーンアルコキシオリゴマー50μLと、2−プロパノール20mLとを混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、I2−1液を調製した。
また、表3に示すチタンアルコキシド10μLと、2−プロパノール7mLとを混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、II2−1液を調製した。
次いで、得られたI2−1液及びII2−1液を混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、混合液2−1を得た。
さらに、得られた混合液2−1をガラス板からなる基材にフローコートにより塗布し、室温で24時間乾燥させて、未修飾の多孔質層を得た。
さらに、得られた多孔質層にフッ素樹脂コート剤(エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー分散液)をファイバークロスで塗布後、常温にて1時間乾燥させ、多孔質体の表面改質処理を行って、修飾された多孔質層を得た。なお、この表面改質処理を表3中における表面改質処理工程において「(2)」と記載する。
しかる後、得られた多孔質層に対して、フッ素オイル(デュポン社製、KRYTOX(登録商標))を滴下後、表面を布でなじませて、含浸させ、本例の防汚構造体を得た。
(実施例2−2)
まず、表3に示すセラミックス粒子の20質量%水分散液(ゾル)50μLと、メチル系シリコーンアルコキシオリゴマー50μLと、2−プロパノール20mLと、FAS−17(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシルトリメトキシシラン)2μLとを混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、I2−2液を調製した。
また、表3に示すチタンアルコキシド10μLと、2−プロパノール7mLとを混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、II2−2液を調製した。
次いで、得られたI2−2液及びII2−2液を混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、混合液2−2を得た。
さらに、得られた混合液2−2をガラス板からなる基材にフローコートにより塗布し、室温で24時間乾燥させて、多孔質層を得た。
さらに、得られた多孔質層にフッ素樹脂コート剤(エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー分散液)をファイバークロスで塗布後、常温にて1時間乾燥させ、多孔質体の表面改質処理を行って、修飾された多孔質層を得た。
しかる後、得られた多孔質層に対して、フッ素オイル(デュポン社製、KRYTOX(登録商標))を滴下後、表面を布でなじませて、含浸させ、本例の防汚構造体を得た。
(実施例2−3)
まず、表3に示すセラミックス粒子の20質量%水分散液(ゾル)50μLと、エチルシリケート50μLと、2−プロパノール20mLと、FAS−17(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシルトリメトキシシラン)2μLとを混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、I2−3液を調製した。
また、表3に示すリン酸系硬化触媒10μLと、2−プロパノール7mLとを混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、II2−3液を調製した。
次いで、得られたI2−3液及びII2−3液を混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、混合液2−3を得た。
さらに、得られた混合液2−3をガラス板からなる基材にフローコートにより塗布し、室温で24時間乾燥させて、多孔質層を得た。
さらに、得られた多孔質層にフッ素樹脂コート剤(エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー分散液)をファイバークロスで塗布後、常温にて1時間乾燥させ、多孔質体の表面改質処理を行って、修飾された多孔質層を得た。
しかる後、得られた多孔質層に対して、フッ素オイル(デュポン社製、KRYTOX(登録商標))を滴下後、表面を布でなじませて、含浸させ、本例の防汚構造体を得た。
(実施例2−4)
まず、表3に示すセラミックス粒子の20質量%水分散液(ゾル)50μLと、エチルシリケート50μLと、2−プロパノール20mLと、FAS−17(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシルトリメトキシシラン)2μLとを混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、I2−4液を調製した。
また、表3に示すリン酸系硬化触媒10μLと、2−プロパノール7mLとを混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、II2−4液を調製した。
次いで、得られたI2−4液及びII2−4液を混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、混合液2−4を得た。
さらに、得られた混合液2−4をガラス板からなる基材にフローコートにより塗布し、室温で24時間乾燥させて、多孔質層を得た。
さらに、得られた多孔質層にフッ素樹脂コート剤(エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー分散液)をファイバークロスで塗布後、常温にて1時間乾燥させ、多孔質体の表面改質処理を行って、修飾された多孔質層を得た。
しかる後、得られた多孔質層に対して、フッ素オイル(デュポン社製、KRYTOX(登録商標))を滴下後、表面を布でなじませて、含浸させ、本例の防汚構造体を得た。
(実施例2−5)
まず、表3に示すセラミックス粒子の20質量%水分散液(ゾル)50μLと、エチルシリケート50μLと、2−プロパノール2mLと、FAS−17(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシルトリメトキシシラン)2μLと、ハイドロフルオロエーテル(HFE)18mLとを混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、I2−5液を調製した。
また、表3に示すリン酸系硬化触媒10μLと、2−プロパノール1mLと、ハイドロフルオロエーテル(HFE)6mLと、フッ素オイル(デュポン社製、KRYTOX(登録商標))200μLとを混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、II2−5液を調製した。
次いで、得られたI2−5液及びII2−5液を混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、混合液2−5を得た。
しかる後、得られた混合液2−5をガラス板からなる基材にフローコートにより塗布し、室温で24時間乾燥させて、本例の防汚構造体を得た。なお、多孔質層は、修飾されており、フッ素オイルは含浸されていた。
(比較例2−1)
まず、表3に示すセラミックス粒子の20質量%水分散液(ゾル)50μLと、エチルシリケート50μLと、2−プロパノール20mLとを混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、I2−1’液を調製した。
また、表3に示すリン酸系硬化触媒10μLと、2−プロパノール7mLとを混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、II2−1’液を調製した。
次いで、得られたI2−1’液及びII2−1’液を混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、混合液2−1’を得た。
さらに、得られた混合液2−1’をガラス板からなる基材にフローコートにより塗布し、室温で24時間乾燥させて、未修飾の多孔質層を得た。
さらに、得られた多孔質層にフッ素樹脂コート剤(エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー分散液)をファイバークロスで塗布後、常温にて1時間乾燥させ、多孔質体の表面改質処理を行って、修飾された多孔質層を得た。
しかる後、得られた多孔質層に対して、フッ素オイル(デュポン社製、KRYTOX(登録商標))を滴下後、表面を布でなじませて、含浸させ、本例の防汚構造体を得た。
(比較例2−2)
まず、表3に示すセラミックス粒子(酸化ケイ素ゾル)(日産化学工業株式会社製、ST−O−40)24gと、メタノール114gとを混合し、10分間撹拌し、I2−2’液を調製した。
また、表3に示すネオフロンND(エチレン・四フッ化エチレン系共重合体分散液)2gと、メタノール40gとを混合し、10分間撹拌し、II2−2’液を調製した。
次いで、得られたI2−2’液及びII2−2’液を混合し、30分間撹拌し、混合液2−2’を得た。
さらに、得られた混合液2−2’にガラス板からなる基材を浸漬し、4mm/sで引き上げるディップコートにより混合液2−2’を塗布し、300℃で1時間加熱し、さらに500℃で1時間加熱して、本例の防汚構造体を得た。各例の仕様の一部を表3に示す。
<性能評価>
上記各例の防汚構造体の試験片を、上述した各性能評価に供した。得られた結果を表4に示す。
表3及び表4により、本発明の範囲に属する実施例2−2〜実施例2−5は、本発明外の比較例2−1〜比較例2−2とを比較すると、防汚性能や耐摺動性が優れていることが分かる。また、表1〜表4より、実施例2系列で適用した表面改質処理より実施例1系列で適用した表面改質処理の方が防汚性能や耐摺動性の向上効果が大きいことが分かる。
(参考例3−1)
まず、表5に示すセラミックス粒子の20質量%水分散液(ゾル)50μLと、メチル系シリコーンアルコキシオリゴマー50μLと、2−プロパノール20mLとを混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、I3−1液を調製した。
また、表5に示すチタンアルコキシド10μLと、2−プロパノール7mLとを混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、II3−1液を調製した。
次いで、得られたI3−1液及びII3−1液を混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、混合液3−1を得た。
さらに、得られた混合液3−1をガラス板からなる基材にフローコートにより塗布し、室温で24時間乾燥させて、未修飾の多孔質層を得た。
さらに、得られた多孔質層をパーフルオロポリエーテル(PFPE)のハイドロフルオロエーテル(HFE)溶液(株式会社フロロテクノロジー製、フロロサーフ)に1日浸漬した後、150℃のオーブンで1時間加熱して、多孔質体の表面改質処理を行って、修飾された多孔質層を得た。なお、この表面改質処理を表5中における表面改質処理工程において「(3)」と記載する。
しかる後、得られた多孔質層に対して、フッ素オイル(デュポン社製、KRYTOX(登録商標))を滴下後、表面を布でなじませて、含浸させ、本例の防汚構造体を得た。
(実施例3−2)
まず、表5に示すセラミックス粒子の20質量%水分散液(ゾル)50μLと、メチル系シリコーンアルコキシオリゴマー50μLと、2−プロパノール20mLと、FAS−17(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシルトリメトキシシラン)2μLとを混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、I3−2液を調製した。
また、表5に示すチタンアルコキシド10μLと、2−プロパノール7mLとを混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、II3−2液を調製した。
次いで、得られたI3−2液及びII3−2液を混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、混合液3−2を得た。
さらに、得られた混合液3−2をガラス板からなる基材にフローコートにより塗布し、室温で24時間乾燥させて、多孔質層を得た。
さらに、得られた多孔質層をパーフルオロポリエーテル(PFPE)のハイドロフルオロエーテル(HFE)溶液(株式会社フロロテクノロジー製、フロロサーフ)に1日浸漬した後、150℃のオーブンで1時間加熱して、多孔質体の表面改質処理を行って、修飾された多孔質層を得た。
しかる後、得られた多孔質層に対して、フッ素オイル(デュポン社製、KRYTOX(登録商標))を滴下後、表面を布でなじませて、含浸させ、本例の防汚構造体を得た。
(参考例3−3)
まず、表5に示すセラミックス粒子の20質量%水分散液(ゾル)50μLと、エチルシリケート50μLと、2−プロパノール20mLとを混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、I3−3液を調製した。
また、表5に示すリン酸系硬化触媒10μLと、2−プロパノール7mLとを混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、II3−3液を調製した。
次いで、得られたI3−3液及びII3−3液を混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、混合液3−3を得た。
さらに、得られた混合液3−3をガラス板からなる基材にフローコートにより塗布し、室温で24時間乾燥させて、未修飾の多孔質層を得た。
さらに、得られた多孔質層をパーフルオロポリエーテル(PFPE)のハイドロフルオロエーテル(HFE)溶液(株式会社フロロテクノロジー製、フロロサーフ)に1日浸漬した後、150℃のオーブンで1時間加熱して、多孔質体の表面改質処理を行って、修飾された多孔質層を得た。
しかる後、得られた多孔質層に対して、フッ素オイル(デュポン社製、KRYTOX(登録商標))を滴下後、表面を布でなじませて、含浸させ、本例の防汚構造体を得た。
(実施例3−4)
まず、表5に示すセラミックス粒子の20質量%水分散液(ゾル)50μLと、エチルシリケート50μLと、2−プロパノール20mLと、FAS−17(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシルトリメトキシシラン)2μLとを混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、I3−4液を調製した。
また、表5に示すリン酸系硬化触媒10μLと、2−プロパノール7mLとを混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、II3−4液を調製した。
次いで、得られたI3−4液及びII3−4液を混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、混合液3−4を得た。
さらに、得られた混合液3−4をガラス板からなる基材にフローコートにより塗布し、室温で24時間乾燥させて、多孔質層を得た。
さらに、得られた多孔質層をパーフルオロポリエーテル(PFPE)のハイドロフルオロエーテル(HFE)溶液(株式会社フロロテクノロジー製、フロロサーフ)に1日浸漬した後、150℃のオーブンで1時間加熱して、多孔質体の表面改質処理を行って、修飾された多孔質層を得た。
しかる後、得られた多孔質層に対して、フッ素オイル(デュポン社製、KRYTOX(登録商標))を滴下後、表面を布でなじませて、含浸させ、本例の防汚構造体を得た。
(実施例3−5)
まず、表5に示すセラミックス粒子の20質量%水分散液(ゾル)50μLと、エチルシリケート50μLと、2−プロパノール20mLと、FAS−17(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシルトリメトキシシラン)2μLとを混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、I3−5液を調製した。
また、表5に示すリン酸系硬化触媒10μLと、2−プロパノール7mLとを混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、II3−5液を調製した。
次いで、得られたI3−5液及びII3−5液を混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、混合液3−5を得た。
さらに、得られた混合液3−5をガラス板からなる基材にフローコートにより塗布し、室温で24時間乾燥させて、多孔質層を得た。
さらに、得られた多孔質層をパーフルオロポリエーテル(PFPE)のハイドロフルオロエーテル(HFE)溶液(株式会社フロロテクノロジー製、フロロサーフ)に1日浸漬した後、150℃のオーブンで1時間加熱して、多孔質体の表面改質処理を行って、修飾された多孔質層を得た。
しかる後、得られた多孔質層に対して、フッ素オイル(デュポン社製、KRYTOX(登録商標))を滴下後、表面を布でなじませて、含浸させ、本例の防汚構造体を得た。
(実施例3−6)
まず、表5に示すセラミックス粒子の20質量%水分散液(ゾル)50μLと、エチルシリケート50μLと、2−プロパノール2mLと、FAS−17(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシルトリメトキシシラン)2μLと、ハイドロフルオロエーテル(HFE)18mLとを混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、I3−6液を調製した。
また、表5に示すリン酸系硬化触媒10μLと、2−プロパノール1mLと、ハイドロフルオロエーテル(HFE)6mLと、フッ素オイル(デュポン社製、KRYTOX(登録商標))200μLとを混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、II3−6液を調製した。
次いで、得られたI3−6液及びII3−6液を混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、混合液3−6を得た。
しかる後、得られた混合液3−6をガラス板からなる基材にフローコートにより塗布し、室温で24時間乾燥させて、本例の防汚構造体を得た。なお、多孔質層は、修飾されており、フッ素オイルは含浸されていた。
(比較例3−1)
まず、表5に示すセラミックス粒子の20質量%水分散液(ゾル)50μLと、エチルシリケート50μLと、2−プロパノール20mLとを混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、I3−1’液を調製した。
また、表5に示すリン酸系硬化触媒10μLと、2−プロパノール7mLとを混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、II3−1’液を調製した。
次いで、得られたI3−1’液及びII3−1’液を混合し、超音波振動を利用して1分間撹拌し、混合液3−1’を得た。
さらに、得られた混合液3−1’をガラス板からなる基材にフローコートにより塗布し、室温で24時間乾燥させて、未修飾の多孔質層を得た。
さらに、得られた多孔質層をパーフルオロポリエーテル(PFPE)のハイドロフルオロエーテル(HFE)溶液(株式会社フロロテクノロジー製、フロロサーフ)に1日浸漬した後、150℃のオーブンで1時間加熱して、多孔質体の表面改質処理を行って、修飾された多孔質層を得た。
しかる後、得られた多孔質層に対して、フッ素オイル(デュポン社製、KRYTOX(登録商標))を滴下後、表面を布でなじませて、含浸させ、本例の防汚構造体を得た。
(比較例3−2)
まず、表5に示すセラミックス粒子(酸化ケイ素ゾル)(日産化学工業株式会社製、ST−O−40)24gと、メタノール114gとを混合し、10分間撹拌し、I3−2’液を調製した。
また、表5に示すネオフロンND(エチレン・四フッ化エチレン系共重合体分散液)2gと、メタノール40gとを混合し、10分間撹拌し、II3−2’液を調製した。
次いで、得られたI3−2’液及びII3−2’液を混合し、30分間撹拌し、混合液3−2’を得た。
しかる後、得られた混合液3−2’にガラス板からなる基材を浸漬し、4mm/sで引き上げるディップコートにより混合液3−2’を塗布し、300℃で1時間加熱し、さらに500℃で1時間加熱して、本例の防汚構造体を得た。各例の仕様の一部を表5に示す。
<性能評価>
上記各例の防汚構造体の試験片を、上述した各性能評価に供した。得られた結果を表6に示す。
表5及び表6により、本発明の範囲に属する実施例3−2、実施例3−4〜実施例3−6は、本発明外の比較例3−1〜比較例3−2とを比較すると、防汚性能や耐摺動性が優れていることが分かる。また、表1〜表6より、基材がガラス基板の場合には、所定の加熱による表面改質処理工程を行うことが好ましいが、耐熱性に難がある基板が塗装板の場合には、実施例1系列で適用した表面改質処理工程を行うことが好ましいことが分かる。
以上、本発明を若干の実施形態及び実施例によって説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。