JP5196710B2 - コーティング材とその用途 - Google Patents

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本発明は、高性能を有する光触媒膜用途に用いられる、コーティング材、その製造方法及びコーティング材を用いて製造された膜並びにその用途に関する。
一般的に製膜に用いられる手法としては、ドライプロセスとウェットプロセスとがある。ドライプロセスとしては、スパッタ等真空容器内で行うものなどが例として挙げられ、ウエットプロセスとしてはコーティング材を用いて成膜するもの、めっき法などを用いて電気分解析出、あるいは無電解によって成膜するものなどが例として挙げられる。この中でも特にコーティング材を用いて成膜する手法は、真空機器などの特別の設備が必要でないこと、後施工が容易であること、実験スケールから量産段階まで幅広い側面で類似の条件によって用いることができるなどの特長を持ち、インク、塗料などを用いて物品に意匠性を持たせたり、光触媒、防食などの機能を持たせる場合に用いられている。
このようなコーティング材には、多くの場合、光触媒能等の目的とする機能を持たせるために配合される粒子群Hと、膜としての強度を持たせるため前記粒子群Hを結着させるための成分Iと、さらにこれらを塗工材とするための溶剤等Jと、塗工材としての分散安定性、塗工性を上げるための添加剤Kなどが配合されている。
上記の結着成分Iは、特許文献1に記載のように粒子群Hが溶着するような比較的高温においては不必要であるが、この高温を用いる手法は粒子群Hの溶着する温度がセラミックスのように非常に高い場合にはそのような高温に耐え得る高い融点を持つ基材にしか適用可能ではない上に、製品がすでにある所望の状態にされている場合に当該膜により付加価値をつけたい場合や建材などの大型の部材に現場で施工する際には、300℃以上という成膜条件は現実的ではないという問題がある。
このように、結着成分Iを用いずに粒子群Hのみを用いて実用的な強度をもつ膜を得ることには困難が伴う場合があるため、一般的には、より低温で強度を出すことが可能な有機または無機の結着成分Iが用いられる。
特開平07−155598号公報 WO01/16027号パンフレット 特開平11―43327号公報 セラミック工学ハンドブック((社)日本セラミック協会編 第1版)第596〜598頁 Electrochemistry 70巻、418頁. 2002年 Journal of Material Chemistry 11巻、1116頁、2001年
粒子群Hに対して結着成分Iの割合が大きくなるほど、膜は強度を得ることが可能となる。しかし、結着成分Iの配合割合が増加するにつれ、一般的には本来目的とされていた粒子群Hの光触媒能は阻害される。さらに、光触媒機能発現のための粒子群Hの活性点は、化学的に特異点である場合が多く、特に結着成分Iが優先して付着してしまうことが多い。このため、粒子群Hと結着成分Iの量は、膜の強度と膜が目的とする機能を十分発揮するという目的においてトレードオフの関係にある。また、粒子群Hに対して結着成分Iは高価である場合が多く、多用は望ましくない。
このようにして、コーティング材を用いた成膜法は、有用であるにもかかわらず、膜強度を充分に上げようとすると、結着剤等、機能の発現とは無関係な物質の濃度をあげざるを得ず、粒子群Hの光触媒能を阻害するという問題があった。
本発明の課題は、十分な膜強度と、光触媒機能を兼ね備えた膜を、容易な手法によって形成できるコーティング材を提供することにある。
本発明者らは、上記課題の解決のためにコーティング材について鋭意検討を重ねた結果、ネッキングした粒子群Aとネッキングが少ない粒子群Bをそれぞれ検討、合成し、また配合は検討することによって、塗工性に優れ、粒子群Hの機能を十分発揮可能で、かつ、実用に耐えうる膜強度を形成することが可能なコーティング材が得られることを見出し、本発明を完成した。
こうして、本発明は、以下の発明を提供する。
(1)
粒子群Aと粒子群Bと溶剤を含み、粒子群Aのネッキング粒子の個数(ネッキングしあっている個々の粒子を単位とし、すべてのネッキング粒子を構成する粒子の合計数をいう。例えば、m個の粒子がネッキングしている粒子団とn個の粒子がネッキングしている粒子団とが1個づつあればネッキング粒子の個数はm+nである。以下同じ。)が、粒子群Bのネッキング粒子の個数より多いことを特徴とするコーティング材。
(2)
m個の粒子が連なってネッキング構造を持つ金属酸化物粒子群Aと、0.2m個以下の粒子しか連なっていない金属酸化物粒子群Bと、溶剤とを含むコーティング材。
(3)
粒子群AのBET比表面積換算値による平均一次粒子径が7nm以上200nm以下である、上記(2)に記載のコーティング材。
(4)
粒子群Aの粒度分布が、ロジンラムラー式による分布定数1.5以上である、上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載のコーティング材。
(5)
粒子群Aが酸化チタンを含む、上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載のコーティング材。
(6)
粒子群Aのレーザー回折式粒度分布測定器を用いて測定した平均粒子径が50nm〜3μmである、上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載のコーティング材。
(7)
粒子群Aが、四塩化チタンを酸化性ガスで高温酸化して製造する気相法によって合成された酸化チタンを含む、上記(1)〜(6)のいずれか1項に記載のコーティング材。
(8)
粒子群Aが、四塩化チタンを含有するガス及び酸化性ガスをそれぞれ500℃以上に予熱してから反応させて、BET比表面積換算値による平均一次粒子径が7nm以上500nm以下である超微粒子酸化チタンを含む、上記(1)〜(7)のいずれか1項に記載のコーティング材。
(9)
粒子群Aが、それぞれ500℃以上に予熱された四塩化チタンを含有するガス及び酸化性ガスをそれぞれ流速10m/秒以上で反応管に供給することにより合成された酸化チタンを含む、上記(1)〜(8)のいずれか1項に記載のコーティング材。
(10)
粒子群Aの酸化チタンが、前記反応管内に、該反応管内の温度が600℃を越える高温度条件で1.0秒以下の時間、前記四塩化チタンを含有するガス及び酸化性ガスを滞留させて反応させることによって合成された、上記(9)に記載のコーティング材。
(11)
粒子群Aの酸化チタンが、前記反応管内における前記ガスの平均流速を5m/秒以上にして合成された、上記(9)又は(10)に記載のコーティング材。
(12)
粒子群Aの酸化チタンが、予熱された四塩化チタンを含有するガス及び酸化性ガスが反応管内に供給されて乱気流を生じることによって合成された、上記(7)〜(11)のいずれか1項に記載のコーティング材。
(13)
粒子群Aの酸化チタンが、前記四塩化チタンを含有するガスに四塩化チタンを10〜100%含有させて合成された、上記(7)〜(12)のいずれか1項に記載のコーティング材。
(14)
粒子群Aの酸化チタンが、前記四塩化チタンを含有するガス及び前記酸化性ガスを予熱する温度が800℃以上で合成された、上記(7)〜(13)のいずれか1項に記載のコーティング材。
(15)
粒子群BのBET換算値による平均一次粒子径が4nm以上100nm以下である、上記(1)〜(14)のいずれか1項に記載のコーティング材。
(16)
粒子群Bのレーザー回折式粒度分布測定器による平均粒子径が4nm以上2000nm以下である、上記(15)に記載のコーティング材。
(17)
粒子群Bのレーザードップラー式粒度分布測定による平均粒子径が8nm以上100nm以下である、上記(16)に記載のコーティング材。
(18)
粒子群Bが、チタン化合物水溶液を水中で加水分解することによって合成された酸化チタンを含む上記(15)〜(17)のいずれか1項に記載のコーティング材。
(19)
粒子群Bが、四塩化チタン水溶液を水中に滴下する製法によって合成された酸化チタンを含む、上記(15)〜(18)のいずれか1項に記載のコーティング材。
(20)
粒子群Bの酸化チタンが、50℃から沸点までに昇温した水中に四塩化チタン水溶液を滴下する製法によって合成された、上記(19)に記載のコーティング材。
(21)
粒子群Aの質量Xと粒子群Bの乾燥質量Yの比X/Yが0.01以上0.2以下である、上記(1)〜(20)のいずれか1項に記載のコーティング材。
(22)
粒子群Aの質量Xと粒子群Bの乾燥質量Y、コーティング材全体の質量Zであるときに、固形分濃度(X+Y)/Zが0.005以上0.1以下である、上記(1)〜(21)のいずれか1項に記載のコーティング材。
(23)
金属酸化物を含むコーティング材であって、レーザードップラー法の質量粒度分布において、8nm以上400nm以下にピークを有する粒子群Ba、800nm以上5500nm以下にピークを有する粒子群Aaを含むコーティング材。
(24)
レーザードップラー法の質量粒度分布において、20nm以上300nm以下にピークを有する粒子群Ba、1200nm以上4000nm以下にピークを有する粒子群Aaを含む上記(23)に記載のコーティング材。
(25)
レーザードップラー法の質量粒度分布において、粒子群Baの積分面積をBaS、粒子群AaSの積分面積をAaSとしたときに、AaS/BaSの比が0.05以上1以下である上記(23)又は(24)に記載のコーティング材。
(26)
金属酸化物を含むコーティング材であって、レーザー回折法の質量粒度分布において、少なくとも1μ以上4μ以下にピークAbを有し、コーティング材の乾燥粉体のBET測定値より換算された一次粒子径が7nm以上50nm以下であるコーティング材。
(27)
四塩化チタンを酸化性ガスで高温酸化して製造する気相法によって合成された酸化チタンと、チタン化合物水溶液を水中で加水分解することによって合成された酸化チタンと、溶剤とを含むコーティング材。
(28)
四塩化チタンを酸化性ガスで高温酸化して製造する気相法によって合成された酸化チタンと、チタン化合物水溶液を水中で加水分解することによって合成された酸化チタンの乾燥質量の比が0.01以上0.2以下である上記(27)に記載のコーティング材。
(29)
無機系結着剤を含む、上記(1)〜(28)のいずれか1項に記載のコーティング材。
(30)
有機系結着剤を含む、上記(1)〜(29)のいずれか1項に記載のコーティング材。
(31)
無機結着剤にジルコニウム化合物を含む上記(29)に記載のコーティング材。
(32)
フッ素系樹脂を含む、上記(1)〜(31)のいずれか1項に記載のコーティング材。
(33)
フッ素系樹脂にポリテトラフルオロエチレンを含む上記(31)に記載のコーティング材。
(34)
フッ素系樹脂の粒径が0.01μm以上2μm以下である上記(32)または(33)に記載のコーティング材。
(35)
フッ素系樹脂の粒径が0.05μm以上0.5μm以下である上記(34)に記載のコーティング材。
(36)
フッ素系樹脂の重量に対して0.5質量%以上10質量%以下の界面活性剤をさらに含む、上記(32)〜(35)のいずれか1項に記載のコーティング材。
(37)
界面活性剤がノニオン系のものである上記(36)に記載のコーティング材。
(38)
200℃以下の加熱乾燥で鉛筆強度試験でH以上強度を持つ膜を成膜する事が可能な上記(1)〜(37)のいずれか1項に記載のコーティング材。
(39)
コーティング材中の固形分の濃度が10質量%以上である上記(1)〜(38)のいずれか1項に記載のコーティング材。
(40)
固形分の50質量%以上が酸化チタンである上記(1)〜(39)のいずれか1項に記載のコーティング材。
(41)
固形分の60質量%以上が酸化チタンである上記(40)に記載のコーティング材。
(42)
コーティング材中に配合される結着剤の内、無機系のものが120℃乾燥固形物換算でIw[g]、フッ素系樹脂が120℃乾燥固形物換算でFw[g]であるとしたとき、Iw/Fwが0.05以上20.0以下である上記(32)〜(41)のいずれか1項に記載のコーティング材。
(43)
アニオン系界面活性剤を10ppm以上2000ppm未満含む上記(1)〜(42)のいずれか1項に記載のコーティング材。
(44)
カチオン系界面活性剤を10ppm以上2000ppm未満含む上記(1)〜(42)のいずれか1項に記載のコーティング材。
(45)
ノニオン系界面活性剤を2ppm以上2000ppm未満含む上記(1)〜(42)のいずれか1項に記載のコーティング材。
(46)
ノニオン系界面活性剤を2ppm以上50ppm未満含む上記(45)に記載のコーティング材。
(47)
固形分として酸化チタンと、アルコキシシランの部分加水分解物とを含む上記(1)〜(46)のいずれか1項に記載のコーティング材。
(48)
無機結着剤と、酸化チタンに対して5質量%以上100質量%以下の直径0.5μm以上10μm以下の直径を持つセラミックス繊維を含む、上記(1)〜(47)のいずれか1項に記載のコーティング材。
(49)
56.25cmの面積に塗布し、20℃、相対湿度50%、5L、50ppmの空気希釈SO2ガス中で10000ルクスで12時間照射環境下で汚染を行い、20℃、相対湿度50%、500ml、500ppmのアセトアルデヒドガス除去試験を行い、汚染前の除去率をa%、汚染後の除去率をb%としたときに、b/aが0.5以上になる光触媒膜を作成可能なコーティング材。
(50)
光触媒微粒子を含み、かつ、活性アルミナ、A型ゼオライト、Y型ゼオライトおよび活性炭からなる群から選択される少なくとも1種の物理吸着剤を光触媒微粒子に対して10質量%以上200質量%以下配合してある、上記(1)〜(49)のいずれか1項に記載のコーティング材。
(51)
活性アルミナ、A型ゼオライト、Y型ゼオライトおよび活性炭の粒径が5nm以上5μm以下である、上記(50)に記載のコーティング材。
(52)
光触媒微粒子を含み、かつ、酸化銅、酸化鉄、酸化マンガン、酸化亜鉛の内一種類以上を化学捕捉材として、光触媒微粒子に対して金属換算で0.01質量%200質量%以下含む、上記(1)〜(51)のいずれか1項に記載のコーティング材。
(53)
光触媒微粒子を含み、かつ、アルカリ土類金属塩化物、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸水素塩の内一種類以上を化学捕捉材として、光触媒微粒子に対して金属換算で0.01質量%200質量%以下含む、上記(1)〜(52)のいずれか1項に記載のコーティング材。
(54)
アルカリ土類金属塩化物が、カルシウム、ストロンチウムまたはバリウムの塩化物である、上記(53)に記載のコーティング材。
(55)
光触媒微粒子を含み、かつ、ニッケル酸化物、コバルト酸化物、モリブデン酸化物のうち1種類以上を光触媒粒子に対して0.1質量%以上200質量%以下含む、上記(1)〜(54)のいずれか1項に記載のコーティング材。
(56)
白金金属又は白金化合物をさらに含み、白金に対して、ニッケル酸化物、コバルト酸化物、モリブデン酸化物のうち1種類以上の重量の和が、20質量%以上10000質量%以下である、上記(55)に記載のコーティング材。
(57)
白金及びその化合物、遷移金属酸化物のd50粒子径が10nm以上10μm以下である、上記(55)または(56)に記載のコーティング材。
(58)
m個の粒子が連なってネッキング構造を持つ金属酸化物粒子群Aと、0.2m個以下の粒子しか連なっていない金属酸化物粒子群Bと、溶剤とを混合する工程を含むコーティング材の製造方法。
(59)
固形分濃度が5質量%以上35質量%未満の上記(1)〜(56)のいずれか1項に記載のコーティング材を、塗布、乾燥した後、固形分濃度が一回目塗布材の1/2質量%以下の粒子群Bと結着剤を含むコーティング材を嵩ね塗布、乾燥する、膜の製造方法。
(60)
上記(1)〜(57)のいずれか1項に記載されたコーティング材より作られた膜。
(61)
膜が、50nm以上30000nm以下の平均膜厚を有する、上記(60)に記載の膜。
(62)
膜が、50nm以上2000nm以下の平均膜厚を有する、上記(60)に記載の膜。
(63)
膜が、粒子群Aの凝集粒子径の1/10倍以上5倍以下の平均膜厚である、上記(60)に記載の膜。
(64)
上記(60)〜(63)のいずれか1項に記載の膜を表面または内部に備えた物品。
(65)
物品が、消臭、防汚、抗菌などの光触媒機能のうち、少なくとも1つの機能を有する物品。
(66)
物品が、建材、照明器具、意匠性窓ガラス、機械、車両、ガラス製品、家電製品、農業資材、電子機器、携帯電話、工具、食器、風呂用品、純水製造装置、トイレ用品、家具、衣類、布製品、繊維、革製品、紙製品、樹脂製品、スポーツ用品、布団、容器、眼鏡、看板、配管、配線、金具、衛生資材、自動車用品、文房具、ワッペン、帽子、鞄、靴、傘、ブラインド、バルーン、配管、配線、金具、蛍光灯、LED、信号機、街灯、玩具、道路標識、装飾品、テント、クーラーボックスなどのアウトドア用品、造花、オブジェ、フィルタ、消臭用フィルタからなる群より選ばれた少なくとも1種である上記(64)または(65)に記載の物品。
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明の好ましい実施態様のコーティング材は、ネッキング構造を多く持つ粒子からなる粒子群Aと、粒子群Aと比較してネッキング構造が少ない、または全く持たない粒子群Bと、これらの粒子を含んでいる溶剤を含んでなる。すなわち粒子群Aと粒子群Bと溶剤を含み、粒子群Aのネッキング粒子の個数が、粒子群Bのネッキング粒子の個数より多いことを特徴とするコーティング材を提供する。また、本発明の好ましい実施態様のコーティング材においては、四塩化チタンを酸化性ガスで高温酸化して製造する気相法によって合成された酸化チタンと、チタン化合物水溶液を水中で加水分解することによって合成された酸化チタンと、溶剤を含んでなる。本発明の好ましい実施態様における特徴は、粒子同士がネッキングした構造を持つ粒子群Aをコーティング材中に最適量配合したことにある。粒子群Aがネッキングしていることを判断する指標のひとつとして、図1に示すようにTEMで粒子群を観察した場合に、「イ」においては単に粒子同士が点で接触しているだけであるが、それだけでなく、「ア」のように粒子が面で接触し、酸化チタンが連続している粒子として観察される部分が見られるということがある。
本発明の好ましい実施態様におけるコーティング材を用いると、以下に記すように、光触媒膜を形成するために望ましい特徴を持つコーティング材を製造することが可能である。
(a)強度が高い膜を形成可能
光触媒膜として要求される特性の一つに、膜強度が高いことが挙げられる。光触媒は、既に基材あるいは製品がある状態に為されている場合において、その基材あるいは製品に付加価値をつけるために表面に付与されることが多い。この場合、光触媒膜は外部と接触する環境にさらされるため、十分な強度を持たないと剥離してしまい、その効果が持続しないばかりか、剥離の仕方によっては意匠性を損なうことがある。
本発明の好ましい実施態様におけるコーティング材は、粒子群Aがネッキング構造を持つことが好ましく、この場合のコーティング材から得られた光触媒膜は図2に示されるように、粒子群Aはネッキング構造のある点が基材表面と接触して基材に対して固定される。このようにアンカーとしての効果をもつ粒子群Aが配合されることによって、膜強度は向上する。もう一つの効果として、粒子群Aは、3次元構造を持つことにより粒子群Bの自由度を小さくするという働き、すなわち膜全体の構造を支持する骨組みとしての作用もあると考えられる。
(b)結着成分量の低減が可能
ネッキング構造を有する粒子群を含む場合、ネッキング構造を有する分だけ、結着成分量を減らすことができ、かつ膜の強度は向上する。また、膜の強度は前述の理由からも向上する。このため、結着成分Iの量を従来の成膜より減らし又は全く使わずして成膜することが可能である。この結果、粒子群Hの特性に対する結着成分の阻害を最小限にあるいは無くすることができる。
(c)光触媒能の高い膜を形成可能
本発明の好ましい実施態様におけるコーティング材ではバインダー量の低減が可能であるため、粒子群Hの光触媒能を十分発揮させることができる。光触媒膜は、分解する対象となる液体または気体が光触媒粒子群Hと接触する必要があり、このためには膜が多孔質であることが必要である。さらに、光触媒が励起して生じた正孔及び電子の電荷分離の効率を高めるため、結晶性が高いことも必要である。本発明の好ましい実施態様におけるネッキングを有する粒子は、粒子としての特性を失わずに表面の結晶が隣接する粒子と連続しているので、単独の粒子よりも長距離の結晶秩序を持つ光触媒膜を形成することを可能にする。連続した光触媒成分としては、金属酸化物ナノチュ−ブ(非特許文献2)などを添加する手法もある。しかし、ナノチューブによれば結晶性は向上するが、チューブ構造の側壁では一般的に化学的に活性な特性が出にくい。従って、粒子がネッキング構造をとっている粒子群Aの形態の方が、光触媒として活性な面が表に出ており、光触媒膜としてより望ましい。また、本発明の好ましい実施態様における粒子群Aは、平均膜厚よりも凝集粒子径が大きいという特徴を持つことができ、その一部が膜から突出して光触媒能の高い粒子群が膜に対して頭出しされて、膜としての光触媒性能が高いことも可能であると考えられる。
(d)透明性が高く、干渉色の無い膜を形成可能
一般的に成膜時に配合される粒子の寸法が光の波長の1/2を越えると、光の干渉や散乱が起こり、干渉色が現れたり、白味がかったりする。本発明における粒子群Aは、ネッキングによって凝集粒子の平均粒子径が1μm〜2μmのように大きくなっても、一次粒子径D1としては可視光領域の波長に対して十分小さいため、実用上それほど白味を帯びて見えない。さらに、本発明のコーティング材を用いて成膜した場合、膜に干渉色が現れないということは特筆すべきことである。ネッキングの少ない粒子群Bのみを用いて成膜し、100 nm以上1μm以下の厚さに成膜する場合には、干渉色の発生を免れることが難しい。本発明におけるコーティング材を用いると、詳細な機構は不明であるが、本来干渉色が非常に強く観察される範囲である200nm以上800nm以下の膜厚においても干渉色が出ないという特徴を持つ。これは、粒子群Aの中に凝集粒子径として1μmを越える直径を持つ粒子が含まれているからであると考えられ、成膜された面から突出している凝集粒子の一部が表面の粗度を適切に制御することにより、平滑な膜である場合には起こる光の干渉を防ぐ働きをしていると考えられる。
(e)塗工性の向上
光触媒コーティング材に求められる特徴として、これまで上記の各項目を説明したが、光触媒としての性能と同時に、濡れやすさ、また、塗りむらができないようなチキソトロピー性、レベリング性も必要である。濡れや粒子群の分散を考慮すると、粒子群Hが例えば酸化チタン系である場合にはアルコールのような常温での蒸気圧が比較的高い溶媒が用いられることが多い。この際、粒子群Bのみを固形分換算で5%程度のように含むものであると、塗工後のコーティング材の乾燥を制御することが困難で、液垂れ跡、塗りむら跡などが残りやすく、強度低下、意匠性の低下につながる。これに対して、本発明の好ましい実施態様における粒子群Aを含むコーティング材では、チキソトロピー性、レベリング性、塗工後の液の保持性に優れ、部分によって乾燥むらができることによる液ダレ跡の発生を防ぐことができる。粒子群Aを配合した場合に上記のような特性を改善できる要因や急速な乾燥を防ぐことができる要因は定かではないが、粒子群Aがもつ複雑なネッキング構造がコーティング材の塗工性の改善及び液の保持を担っていると考えられる。
(f)タック性の低減
一般に光触媒膜はタック性が高く、手で膜表面をなぞると、引っ掛かりを感じる。これは光触媒表面と手との化学的な親和性、物理的な相互作用によるものであると考えられる。このため、光触媒膜がタック性の高いものであると、手のように柔らかいものであっても剥離の原因となることがある。光触媒膜の強度試験としては尖ったものに接触されることを想定した鉛筆強度試験などがあるが、この鉛筆強度試験では充分に強度がある膜であっても、タック性があると手で擦ると剥離することがある。本発明の粒子群Aを含む膜ではこのタック性が低減し、面によって擦られた際の剥離が起こりにくくなる。タック性が低減する機構については明確ではないが、粒子群Aの一部が膜から突出することによって、粒子群Bによる平滑な膜と擦る媒体、例えば手のひらが面同士で接触するのを妨げる機構が働くと考えられる。
以上に述べてきたように、本発明の好ましい実施態様において特徴的な点はコーティング材に粒子群Aが含まれていることである。コーティング材は、スプレー塗布、ディップ塗布、フロー塗布のできるような低粘度のものでもよく、スキージ法、ドクターブレーディング法で塗布できるような高粘度のものでもよい。
粒子群Aおよび粒子群Bは適切なネッキングの程度であることが好ましい。粒子群A,粒子群B及びバインダー成分が存在する系においては、レーザードップラー型の粒度分布測定器を用いると、少なくとも二つの粒度分布のピークを持つことが確認できる。本発明においては、この粒度の分布を、ELS−800(大塚電子(株))を用いて定義することが好ましい。以下に測定法を示す。測定サンプルは粉体濃度が0.07質量%になるように特級エタノール(関東化学(株))で希釈し、この液を200mlPYLEX製ガラス容器に150mlとり、超音波洗浄機iuchi ultrasonic cleaner VS−70U(出力65W、水槽容量800ml)を用いて1分間照射を行いサンプルを得る。液体サンプルを内寸10mm四方のポリスチレン製角形セルUltra−Vu Disposable Cuvettes(Elkay社製)にセルに示された規定量まで入れ、測定を行う。測定の際に設定した各変数は以下の通りである。
測定系は25℃恒温とし、分布解析にはマルカット法を用いる。積算回数は100とする。測定モードはタイムインターバル法を用いる。サンプリングタイムは20μsec、取り込みチャンネル数は512とする。ホモダイン法を用い、最適光量を10000、最低光量を5000,最高光量を20000に設定する。エタノールの粘度は1.10cP、屈折率1.3595、比誘電率24.5、として解析を行う。装置の初期設定においては、ダストカット機能によって、粗粒側の結果が小さくなってしまうが、本測定においては粒子群Aが数μmの部分に現れることがあるため、このダストカット機能はオフにする。散乱強度モニターを用いて強度のばらつきが100カウントで20%以内になったところで測定を開始する。粒子群AとBの比率は、粒子の質量分布を、面積積分する事によって判断する。
上記の手法によって定義される、比較的大きな粒径を持つ粒子群A(Aa)は、構造を保持し、これまで述べてきたような特性を示すために、コーティング材中での粒度分布として800nm以上であることが望ましい。また、あまり大きいと膜中から突出し、膜はがれの要因となってしまうため、5500nm以下にピークを持つような粒度分布をコーティング材中で示すことが望ましい。ただし、これらの粒度分布を示した粒子群は、塗工時に剪断、邂逅されるため、塗膜中にはこれ以下の粒子としてしか存在しない可能性がある。また、比較的小さな粒径を持つ粒子群B(Ba)は、8nm以上400nm以下でコーティング材中に存在することが望ましい。この粒子群は、粒子群Aの空隙に入る役目を果たすため、一次粒子に近いことが望ましいが、本コーティング材にはバインダー成分が存在するため、実際には完全に一次粒子の状態で存在させることが困難であり、凝集を伴って一次粒子の数十倍の粒径となって測定されることもあり得る。粒子群Aの粒度分布のピーク位置はより望ましくは、1200nm以上4000nm以下であることが望ましく、粒子群Bの粒度分布のピーク位置はより望ましくは20nm以上300nm以下にあることが望ましい。
コーティング材中に含まれる粒子群A(Aa)に関しては、レーザー回折型粒度分布計SALD−2000J(島津製作所製)を用いて、粒度分布を定義することも可能である。レーザードップラー式粒度分布計を用いた際に観察された粒子群Bによるピークは、レーザー回折型分布計を用いた際には粒径の測定下限に近いためか、明確には観察されないこともあるが少なくともコーティング材中に含まれる粒子群A(Aa)の規定は可能である。回折型粒度分布計の測定方法は以下の通りである。
サンプルを0.05質量%となるように特級エタノールで希釈し、SALD−2000Jで回折光強度が測定領域に達するまで該希釈サンプルを測定系に投入する。この際、あらかじめ測定系もエタノールで充分に置換し、満たしておく。粉体の屈折率としては、2.50−0.1i(iは虚数)で解析を行った。
本発明における粒子群を上記手法によって測定すると、体積粒度分布において少なくとも1μ以上4μ以下にピークを持つ。1μ以上にピークを持つとコーティング材が本発明における(a)〜(f)までの特性を発揮しやすい。ただし、4μmを越えると、コーティング材から作成された膜から粒子が突出し、はがれの原因となることがある。(a)〜(f)までの特性を十分に発揮するためには、1.2μm以上3μm以下であることがより望ましい。
本発明の好ましい実施態様におけるコーティング材中の粒子は、ネッキング構造を多く持つものと、あまり多く持たないものより構成されるが、コーティング材の乾燥粉体、すなわち粒子群Aと粒子群Bの混合物のBET比表面積より換算された平均一次粒子が、7nm以上50nm以下であることが好ましい。算出方法は以下の式(2)によって示す。7nm未満の粒子を作ろうとすると、生産上の困難が伴う場合がある。50nmを越えるとコーティング材より作成された膜のヘイズが高まり、膜の特性が損なわれる場合がある。
これらのコーティング材を製造する手法としては、粒子群Aの原料と粒子群Bの原料を配合することによって行うことが可能である。
粒子群Aがm個連なってネッキング構造を持っている場合には、粒子群Bはその1/2以下の個数の粒子(0.5m個以下の個数の粒子)でしか連なっていないものであることが好ましく、より好ましくは1/5以下の個数の粒子(0.2m個以下の個数の粒子)でしか連なっていないものが良い。粒子群Bに関しては、まったくネッキングせず、一次粒子がそのまま存在していている場合においても本発明における目的は達成される。つまり、粒子群Bのネッキング粒子の個数は平均0.000000001m〜0.2m個が好ましく、平均0.0000001m〜0.1m個がさらに好ましい。粒子群Aのネッキングしている個数は、TEMやSEMなどの顕微鏡で観察し判断してもよいが、個数が極めて多く、かつ、顕微鏡の視野も限られる。このため、レーザー回折式粒度分布計による粒子径DL(いわゆるD50値)、タップ密度Ρ(JIS K−5101−20.2による測定値)、BET法による一次粒子径D1、チタニアの真密度をρとしたとき、ネッキングしている個数mを以下の手法で決定する。
原料粉体のDLの値の測定においては、コーティング材の粒度分布を測定した際と機器としては同様にレーザー回折式粒度分布計を用いるが、対象が粉体であるため手法としては以下に示すような異なるものを用いる。
酸化チタンが粉体換算で0.05g含まれる水スラリー50mlに10%ヘキサメタリン酸ソーダ水溶液100μlを加え、3分間超音波照射(46KHz、65W)する。このスラリーについてレーザー回折式粒度分布測定装置((株)島津製作所 SALD−2000J)を用いて、粒度分布を測定する。
また、粒子群Aまたは粒子群Bの一次粒子の粒径D1は、BET法で求めた比表面積を、粒子を球形に換算して式(2)より求めた平均の一次粒径をいう。
D1=6/ρS(式中、ρは粒子の真密度、Sは粒子の比表面積) …(2)
粒子群Bのネッキングしている粒子の個数は、粒度分布、TEMなどによって分析可能であるが、粒度分布を測定することが好ましい。粒子群Bの粒子の粒径はレーザー回折式での測定範囲の下限値に近いことがあり、正確な分析を行うためには、先述のレーザードップラー式の粒度分布測定装置を用いる。試料準備方法も先述のELS−800を用いたときと同様にして行う。ただしゾルは乾燥粒子とせず、ゾル状態のまま希釈して規定濃度としたものを測定試料として使用する。散乱光強度が最強となる粒子径をDL、乾燥粉のタップ密度をΡとし、式(1)よりネッキングしている個数mを求める。
本発明における粒子群A及びBは、粒子群Aとして単独で粒度分布を測定した際と、粒子群A,B,及び必要であればバインダーを混合して粒度分布を測定した際には、凝集状態が異なる場合が多い。
式(2)より算出された粒子群Aの平均一次粒子径は7nm以上200nm以下であることが望ましい。7nm未満であっても使用は可能であるが、粒子群Aの生産性が悪くなり高コストなものとなってしまう場合がある。また200nm超の粒子径であっても使用は可能であるが光の散乱の度合いが強くなり、これを含むコーティング材から透明な膜を得ることが難しくなってしまう場合がある。
粒子群Aと粒子群Bの粒度は異なる分布を持っていることが多く、充填や、膜の均一性などを考慮した際に特に粒子群Aの原料についてはある程度の均一性を持つことが望ましい。
粒度の均一性については、ロジン・ラムラー(Rosin−Rammler)式を用い、その分布定数(n)で規定することができる。以下に、ロジン・ラムラー式について簡単に説明するが、その詳細については非特許文献1に記載されている。
ロジン・ラムラー式は下記式(3)で表される。
R=100exp(−bDn) …(3)
ただし式中、Dは粒径を表し、RはD(粒径)より大きな粒子の数の全粒子数に対する百分率であり、nは分布定数である。
ここで、b=1/Denとおくと、(3)式は
R=100exp{−(D/De)n } …(4)
のように書き換えられる。ただし、Deは粒度特性数、nは分布定数と呼ばれる定数である。
式(3)または式(4)から下記式(5)が得られる。
log{log(100/R)}=nlogD+C …(5)
ただし、式中、Cは定数を表す。上記式(5)から、x軸にlogD、y軸にlog{log(100/R)}の目盛をつけたロジン・ラムラー(RR)線図にそれらの関係をプロットするとほぼ直線となる。その直線の勾配(n)は粒度の均一性の度合いを表し、nの数値が大きいほど粒度の均一性に優れていると判断される。
本発明に用いる原料となる微粒子酸化チタンは、90%累積質量粒度分布径D90が4μm以下であることが好ましく、より好ましくは3μm以下であり、ロジン・ラムラー式による分布定数nが1.5以上であることが好ましく、より好ましくは1.8以上20以下である。
ハロゲン化金属等を高温で酸素等の酸化性ガスと反応させる、いわゆる気相法によって得られる金属酸化物粒子群は、合成時の熱履歴が高いため結晶性が高く、かつネッキング結合を持つ。また、気相法は他の製造方法に比べ、比較的一次粒子の粒度分布の狭い粉末が得られるため、粒子群Aまたは粒子群Bとして用いたとき、本発明の金属酸化物構造体として好ましい一次粒子の粒度分布を得やすい。本発明で用いられる粒子群Aの一次粒径は、特に制限はないが、7〜200nm、好ましくは7〜150nm、さらに好ましくは10〜100nmである。粒子群Aは光触媒能を示す金属化合物粒子であれば酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム、硫化カドミウム、タンタル酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、セレン化カドミウム、酸化ニオブ、酸化鉄、酸化タングステン、酸化スズ等、特に制限は無いが、触媒能が高く毒性の低い酸化チタンであることが望ましい。
本発明で好ましく用いられる気相法酸化チタンは、特に制限はないが、アナターゼ型結晶やブルッカイト型結晶を含有するものが好ましい。アナターゼ型結晶を含有する場合には、アナターゼ型の酸化チタン単独のほか、ルチル型の酸化チタンも含んでいてもよい。アナターゼ型の酸化チタンのほかにルチル型の酸化チタンを任意に含む場合、酸化チタン中のアナターゼ型の割合は、特に制限はないが、通常1〜100質量%であり、好ましくは20〜100質量%、より好ましくは50〜100質量%である。これは、アナターゼ型の酸化チタンの方が、液中への分散が容易であり、コーティング材の原料として用いやすいからである。
気相法による一般的な酸化チタンの製造方法は公知であり、特に制限されるものではないが、四塩化チタンを酸素又は水蒸気のような酸化性ガスを用いて、約1,000℃の反応条件下で酸化させると微粒子酸化チタンが得られる。好ましい反応形態として、特許文献2による製法などを例示することができる。以下、本発明における原料となる酸化チタンの製造方法について、さらに具体的に説明する。
気相法における粒子の成長機構には大別して2種類あり、一つは、CVD(化学的気相成長)であり、もう一つは粒子の衝突(合体)や焼結による成長である。本発明の目的とするような超微粒子状の酸化チタンを得るためには、いずれの粒子成長時間も短くすることが好ましい。すなわち、前者の成長においては、予熱温度を高めておいて化学的反応性(反応速度)を高めること等により成長を抑えることができる。後者の成長においては、CVDが完結した後速やかに冷却、希釈等を行い、高温滞留時間を極力小さくすることにより、焼結等による成長を抑えることができる。
四塩化チタンを含有するガスを酸化性ガスで高温酸化することによって酸化チタンを製造する気相法において、四塩化チタンを含有するガスおよび酸化性ガスをそれぞれ500℃以上に予熱しておくと、CVDの成長を抑えることができるので好ましい。BET比表面積が3〜200m2/g、より好ましくは50〜150m2/gの微粒子酸化チタンを得、それを原料とすることができる。
原料となる四塩化チタンを含有するガスは、該ガス中の四塩化チタン濃度が10〜100%であることが好ましく、さらに好ましくは20〜100%である。四塩化チタン濃度が10%以上のガスを原料として用いると、均一核の発生が多くなり、または反応性が高くなるので、CVD支配による成長した粒子が形成されにくくなり、粒度分布の狭い粒子が得られる。
また、四塩化チタンを含有するガス中の四塩化チタンを希釈するガスは四塩化チタンと反応せず、かつ酸化されないものを選択することが好ましい。具体的には、好ましい希釈ガスとして、窒素、アルゴン等が挙げられる。
四塩化チタンを含有するガスと酸化性ガスの予熱温度は500℃以上であることが好ましく、より好ましくは800℃以上である。予熱温度が500℃より低いと、均一核の発生が少なく、かつ反応性が低いため粒度分布のブロードな粒子となってしまう。
四塩化チタンを含有するガスと酸化性ガスを反応管に導入する際の流速は10m/秒以上であることが好ましい。流速を大きくすることによって、両者のガスの混合が促進されるからである。より好ましくは20m/秒以上200m/秒以下であり、さらに好ましくは50m/秒以上150m/秒以下である。反応管へのガスの導入温度が500℃以上であれば、混合と同時に反応は完結するので均一核の発生が増進され、かつ、CVD支配による成長した粒子が形成されるゾーンを短くすることができる。
反応管に導入されたガスが十分に混合されるように、原料ガスが反応管へ導入されることが好ましい。ガスが十分に混合されれば、反応管内におけるガスの流体状態については特に制限はないが、好ましくは、例えば、乱流が生じる流体状態である。また、渦巻き流が存在していてもよい。
なお、原料ガスを反応管に導入する導入ノズルとしては、同軸平行流、斜交流、十字流等を与えるノズルが採用されるが、これらに限定されない。一般に同軸平行流ノズルは、斜交流や十字流を与えるノズルに比べて混合の程度は劣るが、構造が簡単なので設計上好ましく用いられる。
例えば、同軸平行流ノズルの場合は、内管に四塩化チタンを含有するガスを導入することが好ましい。ただし、内管径は50mm以下、より好ましくは30mm以下であることが、ガスの混合の観点から好ましい。
反応管内に導入されたガスの反応管内における流速はガスの混合を完全に行うためには大きいことが好ましく、特に、平均流速で5m/秒以上、より好ましくは8m/秒以上であることが好ましい。反応管内のガスの流速が5m/秒以上であれば、反応管内における混合を十分に行うことができ、CVD支配による成長した粒子の発生が少なく、粒度分布のブロードな粒子が生成されることがない。
反応管内におけるこの反応は発熱反応であり、反応温度は製造された微粒子酸化チタンの焼結温度より高温である。反応装置からの放熱はあるものの、反応後、急冷しないかぎり製造された微粒子は焼結が進行し、成長した粒子になってしまう。10m2/g未満の超微粒子酸化チタンを得る場合には、反応管内の600℃を越える高温滞留時間は1秒以下、より好ましくは0.5秒以下とし、その後急冷することが好ましい。反応後の粒子を急冷させる手段としては、反応後の混合物に多量の冷却空気や窒素等のガスを導入したり、水を噴霧したりすること等が採用される。
合成された酸化チタンの先述の測定法による粒度分布の90%累積質量粒度分布径D90の値が小さければ、親水性溶媒に対して良好な分散性を示していると判断される。さらに、このような方法で製造された微粒子酸化チタンは粒度の均一性に優れている。また、本発明に用いる原料となる微粒子酸化チタンは、アナターゼ型結晶やブルッカイト型結晶を主相することが好ましい。
本発明の好ましい実施態様における粒子群Aの原料は、その酸化チタン合成過程において、連続的に生産されることが望ましい。一つの理由は生産コスト上の都合である。また、1000℃前後で酸化チタン結晶が発生する際に連続的にネッキングを行うと、隣接した粒子がほぼ同一の条件で合成され、そのままネッキングされることによって、より結晶が連続した状態の粒子群Aが好ましく形成されると予測される。粒子を連続工程でなく、容器に入れて焼成を行う場合には、溶着して塊となってしまいやすいので、多孔体という目的が達成されにくい。
本発明の好ましい実施態様におけるコーティング材は、これまで述べてきた粒子群Aと粒子群Bとの相互作用によってその特性が発揮される。
粒子群Bの原料として好ましく用いられる酸化チタンは、特に制限はないが、以下に記載した合成方法を例示することができる。
粒子群Bの原料は、特許文献3に記載の方法により製造することができる。この中でも分散性が良好なブルッカイト結晶を含むゾルの合成は、非特許文献3にも記載されているように中間体が塩化物を経由することが推定されていて、塩素濃度と合成時の温度制御が重要である。このため、加水分解によって塩化水素が発生する四塩化チタンを原料としたものを用いることが好ましく、より好ましくは四塩化チタン水溶液を用いることが好ましい。合成時の塩素濃度を最適値に保つため、加圧などの手法によって系外への塩化水素の飛散を防止してもよいが、最も効果的な方法は加水分解の反応槽に還流冷却器を用いて加水分解を行う手法である。有機溶媒中においても塩酸分濃度、水分濃度を調節することによって、金属アルコキシド原料などからブルッカイト結晶型酸化チタンを得ることはできるが、反応制御の容易性、また、原料の価格などから考えて、反応媒は水であることが好ましい。
加水分解における温度は50℃以上、四塩化チタン水溶液の沸点までの温度であることが好ましい。50℃未満では加水分解反応に長時間を要する。加水分解は上記の温度に昇温し、10分から12時間程度保持して行われる。この保持時間は加水分解の温度が高温側にある程短くてよい。四塩化チタン水溶液の加水分解は四塩化チタンと水との混合溶液を反応槽中で所定の温度に加熱してもよく、また水を反応相中であらかじめ加熱しておき、これに四塩化チタンを添加し、所定の温度にしてもよい。この加水分解によりブルッカイト結晶含有酸化チタンを得ることができる。その中でブルッカイト型の酸化チタンの含有率を高めるためには、水を反応槽であらかじめ75℃から沸点に加熱しておき、これに四塩化チタンを添加し、75℃から沸点の温度範囲で加水分解する方法が適する。ブルッカイト結晶含有酸化チタンゾルの酸化チタン粒子は細かい方が酸化チタン薄膜の透明性はよくなる。また親溶剤作用の点から結晶質であることが好ましい。
しかし、あまり細かい酸化チタン粒子を得ることは製造上の困難を伴う場合があるので、ゾル中の酸化チタン粒子のBET比表面積は20〜400m2/gであることが好ましい。より好ましくは50〜350m2/gであり、さらにより好ましくは120m2/g〜300m2/gである。また、BET比表面積より算出される平均一次粒子径は4nm〜100nmが好ましく、5nm〜70nmがより好ましい。さらに好ましくは5nm〜40nmである。粒子群Bはコーティング材に配合される際にゾルのまま配合しても、いったん乾燥したものを配合してもかまわないが、コーティング材全体の分散性の観点からはゾルのままコーティング材に配合されることが望ましい。
合成直後のブルッカイト結晶含有酸化チタンゾルは液中に残留しているイオン強度が大きい場合、凝集沈降する場合があるが、合成されたブルッカイト結晶含有酸化チタンを、電気透析脱塩装置、あるいは限外濾過膜を使用した濾過などの洗浄工程を経由させることによって、分散性をより完全なものとすることが可能である。粒子群Bは図2のように成膜時に粒子群Aの空隙に入り込み、膜を形成すると考えられるため、凝集粒子径がある程度小さいことが好ましい。ただし、一次粒子が数nm〜数10nmとなってくると、凝集しやすくなり、これを必要以上に分散することが困難になるので、凝集粒子径には好ましい範囲が存在する。すなわち、好ましい凝集粒子径の範囲については、先述の測定法を用いたレーザードップラー式粒径分布測定器による光散乱強度のピークが、4nm以上2000nm以下が好ましく、7nm以上1000nm以下がさらに好ましく、10nm以上500nm以下がさらに好ましい。
本発明におけるコーティング材は粒子群Aのネッキングという特徴が非常に大きいが、そのネッキングのために、一次粒子と比較して凝集粒子が大きくなり1μm以上となってしまうことがある。このような場合に粒子群Aが多すぎると、コーティング材が水系、あるいは粘性の低い有機溶剤であるときに、粒子群Aの沈降が起こりやすい。粒子群が沈降しても、コーティング材を振とうすると容易に分散状態となるため、塗工には問題ないが、あまりにも沈降速度が速すぎると取り扱いが面倒である。また構造の支持を担っている粒子群Aのみによっては十分な膜強度を得ることが困難であり、膜中に分布している粒子群Aの空隙に粒子群Bが充填されるためにはある程度の量の粒子群Bが必要である。このため粒子群Aは、コーティング材中の粒子群Aの質量をX、粒子群Bの乾燥質量をYとしたときにX/Yが0.2以下であることが望ましい。この際乾燥質量とは粒子群Bを含むゾルを120℃で24時間乾燥した際に残留した固体の質量として定義される。また、粒子群Aによる塗工性向上、膜強度向上、高い光触媒能をもつ膜の作成という特性を発揮するためには、コーティング材中の粒子群Bに対する粒子群Aの割合X/Yが0.01以上であることが望ましい。より好ましくはX/Yは0.1以上0.18以下である。
粒子群Aの質量Xと粒子群Bの乾燥質量Y、コーティング材全体の質量Zであるときに、固形分濃度(X+Y)/Zは0.005以上0.1以下が好ましい、この比(X+Y)/Zが0.005未満である場合には、成膜後、充分な量の光触媒粒子を基材上に残すことができず、充分な光触媒性能を発揮することが難しい場合がある。また、本発明のコーティング材は在来品と比較して高濃度においても塗工性に優れるが、固形分濃度が0.25を超える値である場合には、成膜時に厚くなり、膜の最表面と、基材側接触面との乾燥速度の差などにより応力が生じ膜にクラックが入りやすく、充分な膜強度を維持することが難しい。より好ましくは(X+Y)/Zは0.01以上0.15以下である。
また、本発明の好ましい実施態様におけるコーティング材において、X/Yが0.01以上0.2以下、(X+Y)/Zが0.005以上0.1以下を満たすように粒子群A及び粒子群Bが存在すれば、m個と0.2m個の中間の個数の粒子が連なったネッキング構造をもつ金属酸化物粒子群Cが追加的に存在しても、本発明の効果は奏される。ただし、粒子群Cは存在することが好ましい場合もあるが、必要ではなく、粒子群Cの質量Pであるとき、P/Xは1.5以下、さらに1以下であることが望ましい。粒子群Cの量があまり多いと、配合される粒子群A、B、Cを総じた凝集粒子径が大きくなり、均一な膜を得難くなる場合がある。また、粒子群Aが多く配合されすぎたときと同様の弊害が生じる場合がある。
本発明において、無機系結着剤を用いれば、膜そのものの耐溶剤性、耐高温特性が良好なものを作成することが可能である。無機結着剤としては、Zr化合物、Si化合物、Ti化合物、Al化合物が例示される。具体的にはオキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム、プロピオン酸ジルコニウム等のジルコニウム化合物、アルコキシシラン、アルコキシシランの鉱酸による部分加水分解生成物、珪酸塩等の珪素化合物、或いはアルミニウムやチタンやジルコニウムの金属アルコキシドやそれらの鉱酸による部分加水分解生成物等が挙げられる。また、アルミニウム、シリコン、チタンやジルコニウムのアルコキシドから、複数金属種のアルコキシドを選択し複合化したり加水分解させたものも挙げられる。中でも、ジルコニウム化合物が望ましい。膜強度は、人工ガラス繊維、ロックウール、スラグウールなどを配合することによってさらに改善することがある。これらのセラミックス繊維の平均直径は、0.5μm以上10μm以下であることが望ましく、より好ましくは2μm以上6μm以下であることが好ましい。また、成膜後の膜厚に対して繊維の直径が1/11以上1/1以下であることが好ましく、より好ましくは1/4以上1/2以下であることが好ましい。これらの繊維は膜に機能を持たせる主成分である金属酸化物粒子に対して、5質量%以上であると膜強度の向上につながり、100質量%を超える量を配合すると、膜機能が低下したり、金属酸化物粒子に対してサイズが著しく大きいために、膜が疎になり強度の低下につながることがあるため、100質量%以下であることが好ましい。より好ましくは15質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
さらに、分散シリカ(コロイダルシリカ)、分散アルミナ(アルミナゾル)を液中に含んでも良い。これらの粒子は特に8nm以上50nm以下の超微粒子であることがのぞましく、より好ましくは9nm以上30nm以下であることが好ましい。また、これらのゾルは、pHが5以下であると、光触媒機能を持つ金属酸化物微粒子が酸化チタンであったときにその凝集を防ぐことが可能であり、好ましい。コロイダルシリカ、アルミナゾルなど補助的に添加される金属酸化物微粒子は膜に機能を持たせる主成分である金属酸化物粒子に対して、5質量%以上であると膜強度の向上につながり、200質量%を超える量を配合すると、膜機能の低下につながったりするため、200質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、10質量%以上90質量%以下であることが好ましい。
セラミックス繊維、または、コロイダルシリカや、アルミナゾルのように補助的に添加される金属酸化物粒子に対して、アルキルシリケートやマグネシウムアルコキシドやアルミニウムアルコキシド、チタンアルコキシド、リン酸アルミニウム、リン酸マグネシウムを加温して部分的に重合し、架橋構造を持つ金属酸化物を作成して、この重合を降温や試薬の投入などで中断し、セラミックス繊維、あるいはコロイダルシリカ、アルミナゾルのような成膜性が高い微粒子と複合化された結着剤を作成し、コーティング材に配合することができる。また、別途ラダーシリコーンを入手し、添加することによって状機構かを果たしてもかまわない。この際のラダーシリコーンは1000程度の分子量を持つオリゴマーに近いものでも良く、数万の分子量を持つものを用いてもかまわない。
この際、水には溶解しない有機化合物を用いることもあるので、溶剤にはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールに代表されるアルコールなどの有機溶剤を用いる。さらに縮合を止めて液を保存するために、酢酸やアセチルアセトン、イソシアネート構造を持つ化合物を配合しても良い。
テトラメチルオルソシリケートやテトラエチルオルソシリケートに例示されるアルキルシリケート類を単体又は、セラミックス繊維または金属アルコキシドの共存下で加熱して重合を進める際には、鉱酸でpHを酸性に維持しつつ行うことが好ましい。この際のpHは1以上3以下であると反応が安定するが、あまり酸性が強いと、配合されたコーティング材を使って塗布をする際に腐食が問題となるため、2以上3以下であることが好ましい。またアルキルシリケートをシリカ換算で濃度を1質量%以上10質量%以下で重合を行うことが好ましい。1質量%未満の濃度で重合を行うと、バインダーとして配合する際に、主成分である金属酸化物を希釈しすぎてしまい、10質量%以上で反応を行うと重合の制御を行うのが困難である。より好ましくは2質量%以上6質量%以下である。
重合温度については、生産の効率から考えると高いことが好ましいが、分子量を小さいままにとどめて、結着剤液粘度を低いままに保ちたい場合は、30℃以上50℃未満という比較的低温で進めることが好ましい。この際、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)を移動相テトラヒドロフランを用いて測定した際にPEG換算で1000以上2000以下のものを用いることが望ましい。
反応温度と反応時間はトレードオフの関係にあるが、例えば40℃で反応させた場合、反応時間を1時間以上2時間以下で止め、冷却して反応を停止させることが好ましい。この際、該液の動粘度は1.0cSt以上2.0cSt以下となる。逆にコーティング材の粘度を上げ、該結着剤を用いて厚膜を作成させたい場合には、その必要に応じて温度を上げたり、反応時間の延長をはかったりして、動粘度を1.2cSt以上とする事が好ましい。また、このようにして粘度が上昇したサンプルにおいては、重合度が上がったことにより、低分子量のものと比較して応力に対して強くなるという利点がある。ただし30cStを越えるようになると、膜が不均一になり易く、30cSt以下であることが好ましい。
これらの結着剤を、有機無機を問わず、混合物として相互の特性を向上させることも可能である。
本発明において、有機系結着剤を用いれば、膜そのものの可橈性が比較的良好なものを作成することが可能である。ポリビニールアルコール、メラミン樹脂、セルロイド、キチン、澱粉シート、ポリアクリルアミド、アクリルアミド、ポリN−ビニルアセトアミド、N−ビニルアセトアミド−アクリル酸ナトリウム共重合体、N−ビニルアセトアミド−アクリルアミド共重合体、ポリアクリルアミド、アクリルアミド−アクリル酸ナトリウム共重合体、ポリN−ビニルホルムアミド、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ポリフッ化プロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ポリフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリビニルピリジン、ビニルピリジン−メタクリル酸メチル共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂から選ばれる高分子化合物の一つもしくはそれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、ポリN−ビニルアセトアミド、ポリアクリルアミド、N−ビニルアセトアミド−アクリル酸ナトリウム共重合体、アクリルアミド−アクリル酸ナトリウム共重合体およびポリテトラフルオロエチレン、ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂が対候性の面から好ましい。これらの結着剤を、有機無機を問わず、混合物として使用することにより相互の特性を向上させることも可能である。
この、有機物と無機物の結着剤の組み合わせとして、優れたものの一つに、フッ素系樹脂と先述の無機系結着剤との組み合わせが挙げられる。この組み合わせは少なくとも三つの側面を持ち、無機系結着剤、有機系結着剤の相互の欠点を補完しあい、相乗的な特性を持つことから、光触媒のコーティング材と用いることがきわめて有効である。
第一に、フッ素樹脂は、従来から知られているように、耐候性が高く、酸化チタンの強力な酸化力に耐えうる特性を持つ。他の有機系バインダは、無機化合物及び酸化チタンとの混合物として配合し、これを塗膜とした際に、その酸化されやすい特性から、環境によっては塗膜全体が黄変したり、チョーキングしたりすることが起こりうる。これに対して、フッ素系樹脂を無機系バインダに加えて配合した際には、膜全体の耐候性を阻害しない。
さらに、第二として、その樹脂としての特性を生かし、各種要因によって膜に生じる応力を緩和する働きがある。一般的にコーティング剤を用いて、1.0μm以上の厚さの膜を重ね塗りでなく一回塗布で成膜しようとすると、膜の乾燥過程、すなわち溶媒乾燥時に膜厚方向への組成の不均一から起こる応力によるひび割れなどが生じることが多く、膜強度の低下を招きやすい。平板上への塗布でもこの強度低下は起こるが、基材が曲面形状、凹凸形状時には、この現象が顕著である。これに対して、前記の通りフッ素系樹脂を添加することによって、膜中の応力を緩和することが可能になるため、この無機物+フッ素系樹脂の組み合わせを持つコーティング材は特に厚膜作成時に有効である。
第三として、弾性を持ちつつ、同時に強い対摩耗性を持たせることが可能である。樹脂のみによって強度を出そうとすると、表層から摩耗してしまうことがあるが、本発明の膜は金属酸化物粒子である粒子群Hと、さらに無機系結着剤をある好ましい比率で配合しているため、適度な堅さを持つ。
本発明において無機系結着剤と相乗的に用いるフッ素系樹脂は、特に制限はないが、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリクロロトリフルオロエチレンなどを用いることができる。この中でも、多種にわたる粒径のものが入手しやすく、経済的な面からも、ポリテトラフルオロエチレンが好ましい。また、フッ素系樹脂の存在形態としては、パウダー状になっているもの、スラリー状に分散されたもの等、特に制限はないが、陰イオン系、ノニオン系の界面活性剤等で高度に分散したディスパージョンを用いると、コーティング剤として加工することが容易であり好ましい。本発明におけるコーティング材は、膜厚を上げても強度を保つことが可能であるが、1μm以下の膜厚の膜を作成することもある。このため、添加するフッ素樹脂の粒子径は先のレーザー散乱法を用いて測定した際に、d50が2μm以下となるものが好ましい。より好ましくは、膜の中に収まるように1μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは酸化チタンネッキング粒子の隙に入り込めるように0.4μm以下であることが好ましい。
本発明におけるフッ素樹脂及び酸化チタン分散体を含むコーティング材は、分散性が高く、且つ、光触媒活性が高いことを特徴とするコーティング材である。以下に沈降成分量、固形分量について説明する。
コーティング材中の固形分とは、該コーティング材100gをパイレックス(登録商標)製ビーカーに秤取り、120℃の恒温乾燥器に24時間以上入れておき、残った固形分の質量を秤量することで測定される。固形分質量より、コーティング材の固形分濃度の算出も行うことができる。
フッ素系樹脂は本来300℃以上、例えばポリテトラフルオロエチレンの場合330℃以上での加温によって初めて融点を迎え成膜することが可能であるが、本発明においては、200℃という比較的低温においても、充分な膜強度を得ることが可能である。200℃以下の硬化温度であると、強化ガラスの特性を損なうことなく成膜が可能であり、またポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート等の中程度の耐熱性を持つ汎用樹脂上への適用が可能となるため、基板の選択範囲が著しく増大する。膜がフッ素樹脂の融点以下でも硬化する機構は不明であるが、考えられる原因として、(i)本発明に用いる気相法、あるいは液相法合成の酸化チタンをコーティング材の主成分として用いた場合その表面が、化学的、物理的にフッ素樹脂の表面と相互作用を持ち、膜強度の達成につながっている。(ii)成膜時に加温を行うが、この際にコーティング材に含まれる溶媒が揮発するなどして、塗布直後と比較して乾燥後は数分の一の体積になる。この際に、粒子群Bが10nm程度の超微粒子であるため、液体橋効果による強い凝集力が働き、この力により、フッ素樹脂をプレス圧着した際のような効果が起こり、強度が達成される。という二つが挙げられる。上記の膜硬化の効果が起こるためには、先述と同様、フッ素系樹脂が2μm以下、より好ましくは0.4μm以下という微粒子であることが好ましい。ただし、0.01μm以下のものは入手が困難である。さらに、フッ素系樹脂が液中に分散性がよい状態で存在することが好ましい。この際、分散剤を用いることによって、コーティング材中に含まれるフッ素系樹脂を分散させることが必要な場合があるが、この際用いる分散剤は、アニオン系、ノニオン系等を問わず用いることが可能であるが、この中でも特にノニオン系を用いることが好ましい。これは、ノニオン系であれば比較的添加量を減らした状態においても、フッ素系樹脂の微粒子を分散すことが可能であり、またノニオン系には200度程度で揮発させることが可能なタイプが存在するためである。膜中に、界面活性剤が残留すると、その界面活性作用により、膜強度の低下が起こったり、光触媒性能に悪影響を与えることが危惧される。本発明で、フッ素系樹脂を分散させるために用いることができるノニオン系界面活性剤は、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、エチレンオキサイドープロピレンオキサイド共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルグリコシド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルグリコシド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等を用いることができる。これらは配合されるフッ素系樹脂の重量に対して、0.5%以上10%以下添加されることが好ましい。コーティング材に直接これらの界面活性剤を配合してもかまわないが、フッ素系樹脂を先に界面活性剤を溶解した液に投入の後分散し、これをコーティング材に配合した方がよりコーティング材全体の分散性を向上することが可能である。
本発明の意図に、充分な膜強度と、光触媒機能の両立があるが、このためには、コーティング材中の固形分の濃度が10質量%以上であることが望ましく、この中で特に光触媒性能を発揮させたい場合、過剰な結着剤は好ましくないため、固形分の50質量%以上が酸化チタンであることが好ましい。より好ましくは、60質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上である。膜に光触媒機能を持たせるために配合される成分が上記のように高い割合で配合され、且つ、1μm以上の厚膜を形成しようとすると、従来技術では膜強度を維持することが困難であるが、本発明のネッキングしている粒子群A、粒子群B、無機系結着剤と、さらにフッ素系樹脂を用いることによって膜強度のさらなる向上を達成することが可能である。コーティング材中に配合される結着剤の内、無機系のものが120℃乾燥固形物換算でIw[g]、フッ素系樹脂が120℃乾燥固形物換算でFw[g]であるとすると、Iw/Fwが0.05以上20.0以下であると、無機系、フッ素樹脂双方の特性を相乗させた塗膜を得ることができる。より好ましくは、0.2以上3以下、さらに好ましくは0.5以上1以下であることが好ましい。
コーティング材に含まれる結着剤の割合は、本発明においては、前述の通り従来型のコーティング材と比較して結着剤の量を低減できることが特徴の一つである。ただし、より大きな強度、可撓性を膜に与えたい場合、上記の無機、あるいは有機の結着成分を配合することを妨げない。この際には、全固形分質量Zに対して0.01以上0.5以下であることが望ましい。さらに、強度を維持できるのであれば、結着剤成分量は光触媒性能の発揮のためにより少ない割合であることが望ましく、0.01以上0.4以下であること、さらには0.1以上0.35以下であることが望ましい。
さらにコーティング材に塗工性の観点から界面活性剤を適宜添加することもできる。界面活性剤としては縮合リン酸塩、リグニンスルホン酸塩、カルボキシメチルセルローズ、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、ポリアクリル酸塩、アクリル酸−マレイン酸塩コポリマー、オレフィン−マレイン酸塩コポリマー、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸及びその塩、非イオン性界面活性剤などが用いられる。好ましくはポリアクリル酸の界面活性剤がよい。
コーティング材に用いる界面活性剤の量は、コーティング材の全質量に対して界面活性剤質量が5ppm以上2000ppm以下であることが望ましい。界面活性剤の量が少なすぎると、基材上に微量の汚れの残留があったり、基材の表面エネルギーが非常に小さい場合に、液はじきや、塗工ムラの原因となる場合がある。逆に界面活性剤の量が多すぎると粒子同士の結着を阻害し、膜強度の低下につながるばかりでなく、光触媒粒子表面に吸着し、触媒性能の発現を阻害することがある。このためさらに望ましくは、10ppm以上500ppm以下である。
コーティング材に用いる溶剤は、粒子群A、Bを分散させるとともに、結着剤を分散、溶解あるいは膨潤させることにより、金属酸化物微粒子と結着剤との混合を促進することができる揮発性液体であれば制限なく使用できる。具体的には、その骨格中に水酸基、カルボキシル基、ケトン基、アルデヒド基、アミノ基、アミド基を有する揮発性液体が好ましい。例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、エチレングリコール、酢酸、アセチルアセトン、テレピン油、メチルピロリドンの単体あるいはそれらの混合物が使用できる。この中でもエタノールを40質量%以上含む水溶液を溶剤として用いると、各種基材との濡れ性がよく、さらに50質量%以上含むと塗布後の乾燥速度を早くすることが可能であり、生産性が高い。また、ブタノールと相溶性のあるアルコール類やアセトニトリル等を含む揮発性溶剤中にブタノールを50質量%以上含む液を光触媒コーティング材の溶剤として用いると、常温で高粘度、且つ、各種基材との親和性が高く、且つ、100℃付近で溶剤を気化して成膜する事が可能であり、目的とする基板上にスキージ法やスクリーン印刷法等の手法を用いて成膜するコーティング材として用いることが可能であり望ましい。
本発明においては、溶剤に対する分散性のよい粒子群A、粒子群Bを用いるため、コーティング材の調製、配合に関して困難は伴わない。ただし必要であれば、ボールミル、ビーズミル、ペイントシェイカーなどを用いて混合する事を妨げない。しかしながら、本発明において奏ぜられる各種効果を発揮するためには粒子群Aのネッキング構造が極端に破壊されないような混合方法を採ることが望ましい。具体的には、粒子に衝撃を与えてネッキング構造を壊したり結晶表面を非晶質にしたりする事の少ない、自転公転混練機などを用いることが望ましい。また、超音波分散機のうち、発振子近傍を分散対象液が流れることによって分散が促進される対流式、分散対象液の入った容器の中に発振子を投入して分散を行う投げ込みタイプの分散機を用いてもよい。この際、28kHz、40kHz、100kHzいずれの周波数で分散を行ってもよく、これらの波が混合、あるいは交互に発振される分散機を用いて分散を行ってもよい。
コーティング材を用いて成膜する際には、スプレーコート、スピンコート、ドクターブレード、フローコート、ロールコートなどで塗工し、乾燥により溶剤を除去、バインダーが熱硬化型の場合にはさらに加熱するという手法でもよい。スピンコート、フローコートによって得られた光触媒膜は、緻密であり、透視性に優れ、クリアコートとして基材の意匠性を損なわない。これに対して、スプレーコート、ドクターブレード、ロールコートは工業的に用いることが可能であり、中でもスプレーコートはコートしながら連続的に乾燥させることが可能であり膜厚のコントロールも、塗布時間や時間あたり噴霧量で調節可能であるため、好ましい。
本発明の液を塗布する際には、以下に示すような特徴的な塗布の手法を行うと、特に膜厚が大きくなった際にも安定的な強度を持たせることが可能になる。まず、コーティング材中の金属酸化物微粒子濃度が5質量%以上25質量%以下となるような中程度の濃度となるように液を作製し(この際、金属酸化物粒子はネッキング粒子、すなわち粒子群Aを含むことが望ましい)、これを基材上にフローコートや、ディップコートなどで塗布、150℃程度で乾燥を行う。
上記厚膜を塗布した上に、さらにその膜の上から重ねて、固形分濃度が一回目塗布材の1/2以下の、粒子群Bと結着剤を含むコーティング材を塗布、乾燥してもよい。このとき重ね塗り材の固形分濃度は、0.5質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
また、一回目塗布材においては、レーザードップラー粒度分布計で測定した粒度分布が二山になるのに対して、重ね塗り用塗布材においては、一山になる。一回目塗布に用いる材の粒度分布におけるピークの個数が、重ね塗り塗布材の粒度分布のピークの個数よりも多いことが好ましい。
この結果、単位面積当たりの酸化チタン粒子の付着量を上げるのと同時に、厚膜を一層塗布したのと比較して、さらに膜強度を向上させることが可能であった。これは、厚膜を作成した際に生じている空隙に分散性の良好な粒子群Bが浸透し、空隙を補填しているためであると考えられる。
乾燥、硬化は75℃以上500℃以下で行うことが望ましい。乾燥温度を上げていくことによってより確実に膜中に残留した有機溶剤性分を揮発させることができるが、500℃以上に加熱をしていくと、金属酸化物粒子同士の溶着が始まり、十分な多孔体としての膜の特性を維持することができないことがある。加熱はホットプレート、電気炉、ドライヤー、乾燥器等を用いて行うことができるが、一定の温度で、十分な熱量を成膜時に与えることができるドライヤーまたは熱風対流型乾燥器を用いて硬化を行うことが望ましい。熱風乾燥を行った場合、溶剤の沸点以下の温度で十分に溶剤を揮発させ、成膜する事が可能であり、基材の耐熱性が低い場合にきわめて有用な手法である。乾燥時間は、基材の温度が溶剤の揮発する温度まで上昇し、溶剤が確実に揮発するまで、さらに結着剤を含む場合には、結着剤の硬化する温度まで上昇し、硬化反応が終了するまで必要である。一般的に無機、有機バインダーともに、硬化反応は温度が上昇した後、15分程度硬化温度を維持すれば十分である。必要以上の加熱は、基材の劣化、またエネルギーコストの増大につながる場合がある。
乾燥、硬化後の膜厚が50nm未満であると、防汚、消臭、抗菌等の性能が十分発揮されないため成膜は50nm以上行うことが望ましい。30000nmを超える膜厚であると、先述のとおり十分な膜強度を出すことが困難であり望ましくない。また、粒子群Aのネッキングが、コーティング材中で構造支持体、骨組みとして有効に働くためには、膜厚が粒子群Aの凝集粒子径の5倍以下であることが望ましい。また、粒子群Aの凝集粒子径は、平均膜厚よりも大きくてもかまわないが、平均膜厚が粒子群Aの凝集粒子径の1/3倍よりも小さくなると、膜に対して粒子群Aが大きすぎて膜からの脱落が起こりやすくなるため、平均膜厚は粒子群Aの凝集粒子径の1/3倍以上であることが望ましい。
光触媒は、有機物を水と二酸化炭素に分解可能であるため、一般に光が当たる環境下においては従来型の触媒よりも有機物への耐性がある。しかしながら無機系の汚染、すなわち金属や窒素酸化物、硫黄酸化物による汚染は、光触媒の表面で酸化されても除去されることなく残留し、光触媒性能に悪影響を与えることがある。特に窒素酸化物および硫黄酸化物は、空気中に存在する無機分として多く、さらにNO3 -またはSO4 2-が安定的に酸化チタンに吸着され、さらに硫黄酸化物は全く揮発しないため、酸化チタン表面に経時的に蓄積する。
被毒された酸化チタンは、本来目的とする分解対象物を吸着することが困難となる。有機化合物の分解はほとんどが酸化チタンに基質が吸着されてから起こり、吸着サイトが、被毒物質でふさがれると、性能低下が著しい。本発明のコーティング材を酸化チタン濃度で1質量%とし、7.5cm四方(56.25cm2)のガラス板に塗布、乾燥を行い、20℃、湿度50%に調節した5Lの50ppmの汚染源ガス中に該ガラス板を入れ、外部より東芝ライテック(株)製蛍光灯「メロウホワイト」をもちいて、サンプル位置で10000ルクスになるように位置を調節し、12時間汚染試験を行った。汚染を行わなかったサンプル、NOで汚染を行ったサンプル、SO2で汚染を行ったサンプルをそれぞれ、20℃、湿度50%、アセトアルデヒド500ppmに調整した500mlのガス中に入れ、外部より、「メロウホワイト」を用いて、ガラスサンプル位置で10000ルクスとなるように照射を行い、アセトアルデヒドガス濃度の経時変化をガスクロクロマトグラフィーを用いて観察した。
表1に示すように、SO2で汚染したサンプルでのみ、著しい性能低下が見られた。また、これらのサンプルを水洗したところ、汚染を行わなかったサンプルと同等なアセトアルデヒド減少曲線を描くことがわかった。このサンプル洗浄に用いた水をイオンクロマトグラフィーで測定したところ、SO4 2-溶出量がサンプル酸化チタンに対して、1質量%に達し、少なく見積もってもこの濃度で汚染が起こっていることがわかった。これらの結果により、薄膜においては、硫黄酸化物で汚染されることにより、性能低下が起こることが確認された。また、空気中に含まれているSO2においても、経時によって酸化チタン表面にSO4 2-の形で硫黄酸化物被毒の蓄積が起こるということが推測される。実環境下においても光触媒をサンプルに塗布し、15000ルクス程度の強い光の照射下におき、2ヶ月程度大気開放下に放置すると、その後にアセトアルデヒド分解を確認した場合消臭性能について低下が見られる。このサンプルについてXPSで深さ方向分析を行うと、膜全体に均一な濃度での硫黄化合物での汚染が確認され、溶出試験を行うと酸化チタンに対して1質量%前後のSO4 2-で汚染されていることが確認された。
その他にも、硫黄化合物と比較すると、影響は不明瞭であるが、基材中に比較的軽金属のイオンが含まれていたり、硫黄化合物等の汚染源が存在している場合、大気からだけではなく、基材側からも汚染が起こる。
この、汚染対策として、大きく分けて3つの手法が挙げられる。第一に、単位面積当たりに膜の付着量を増やし、汚染濃度を下げること、第二に汚染原因物質を捕捉する(アンダーコート・化学・物理)こと、第三に汚染物質を膜の外に出すこと(触媒・水洗・白金)である。
第一の対策について、付着量を増やすことは容易な作業と認識されがちであるが、実際には困難が伴う。光触媒塗膜は、酸化チタンが光照射下で強い酸化力を持つため、数年間に及ぶ耐候性が要求される場合、無機物を中心とした酸化を受けても破壊されない成分で塗膜を作成する必要がある。この際、その無機成分由来の堅さより、厚膜にすると、乾燥時の濃度不均一から応力が発生し、ひび割れなどが生じて、強度の低下が起こることもある。さらに基材に可撓性がある場合、この一般的な無機成分による膜はわずかなひずみによっても膜強度の低下が起こりやすい。本発明の粒子群A、及び粒子群Bを含む膜は、通常の一山の粒度分布を持つコーティング材と比較して、厚膜化をしても強度が維持されやすい。また、先述のように、人工ガラス繊維、ロックウール、スラグウールなどをコンクリートに対する鉄筋のように配備してもよい。また、アルキルシリケート類単体や、セラミックス繊維又は金属アルコキシドと複合化し、先述のような手法で部分重合したサンプルを最低限の量、結着剤として用いてもかまわない。この際、粘度の上昇が確認できるサンプルを用いても膜の付着量の増加が見込まれて良い。また、フッ素系樹脂と複合したコーティング材を最低限添加しても良い。
汚染物質の希釈という観点からは、光触媒機能を持たない金属微粒子を、光触媒粒子に対してある程度配合してもかまわない。具体的には、親水性が高く、微粒子で、且つ重量当たりの比表面積の多いシリカ、アルミナなどを用いて、酸化チタンの硫黄酸化物等による汚染濃度を該添加物に分配、分散するという手法をとってもかまわない。添加するサンプルは、中心粒子径が5nm以上3μm以下であることが望ましく、成膜性、コストの面を考慮に入れると、8nm以上1μmであることが好ましい。特にシリカ微粒子には1g当たりの比表面積が1000m2を越えるものが入手可能であり、汚染物質の濃度を分散するためには好ましい。この中でもコスト、吸着、分散まで考慮すると、300m/g以上1000m/g以下であることが好ましい。また、コロイダルシリカ、アルミナゾルは、酸化チタン微粒子と比較して成膜性に優れるものがあるため、これらによって単位面積当たりの膜の付着量を増やし、膜中の汚染物質濃度を下げることが可能である。
塗布の手法によって、厚膜且つ高膜強度を達成するためには、先述のように一次的に厚膜を塗布した上に、さらに固形分で0.5質量%以上2質量%以下の、コーティング材で、塗布、乾燥を上塗りとして行うとさらに高強度な膜を作成することができる。
第二の汚染対策として、汚染物質を添加剤上に吸着、又は固定化し、光触媒粒子表面への被毒を防ぐという方法がある。
物理吸着によって、汚染物質を捕捉し、光触媒表面への被毒を防ぐためには、活性アルミナやA型,Y型ゼオライト、活性炭等、吸着能力が高いものを用いることができる。この中でも、色調、微粒品の入手のしやすさ、硫黄酸化物の吸着容量などの観点から、特に活性アルミナを用いても良い。これらの物理吸着剤は光触媒微粒子に対して、膜の耐被毒性を高めるためには10質量%以上200%以下配合することが好ましい。初期の光触媒性能を重視する場合には、光触媒微粒子に対して物理吸着剤の濃度を5質量%以上150質量%以上とすることが好ましい。さらに好ましくは20質量%以上50質量%以下であることが好ましい。また、これらの物理吸着剤は必要に応じてボールミル、ビーズミル、ロッキングミル、ペイントシェーカー等を用いて破砕し、5nm以上5μm以下の粒径にすると、成膜性が向上して好ましい。汚染物質を固定化する方法としては、化学物質として非イオン化とする方法が挙げられる。これを以降、化学捕捉剤と呼ぶ。例えば、遷移金属の酸化物、酸化銅、酸化鉄、酸化マンガン、酸化亜鉛の微粒子には硫黄酸化物を捕捉する強い作用がある。また、アルカリ土類金属の化合物、特に塩化物、例を挙げると、塩化マグネシウム無水物、塩化マグネシウム六水和物、塩化カルシウム無水物、塩化カルシウム二水和物、塩化ストロンチウム、塩化ストロンチウム六水和物、塩化バリウム無水和物、塩化バリウム二水和物は硫酸イオンの存在下で難溶性の硫酸塩となり、光触媒粒子表面に硫酸イオンが吸着されることを防ぐことが可能になる。また、コーティング材がアルカリ性の場合は添加するアルカリ土類金属塩が、例示された金属の炭酸塩、炭酸水素塩でもかまわない。これらの化学捕捉剤は、塩化物の状態においては水溶性であり、アルコール等の一部の有機溶剤にもある程度の量が溶解するため、光触媒コーティング材に添加し、光触媒粒子と混合した状態で一度に塗布、成膜する事が可能になる。または、添加剤を含まない光触媒コーティング材を塗布、成膜したのち、アルカリ土類金属の化合物を溶解または分散させた水、又は有機溶剤を上塗り塗布し、成膜する手法によっても、光触媒粒子表面に添加剤を付与することが可能である。光触媒塗膜を100℃以上という高い温度で焼成硬化しなくてはいけない場合、アルカリ土類金属を含む状態で高温にしてしまうと、反応性の高いナノサイズ粒子である光触媒粒子とアルカリ土類金属イオンが反応し、性能が低下してしまうことがある。このため、膜の硬化時に高温が必要な場合には、化学捕捉剤を含まない光触媒コーティング材を塗布した後に、上塗りとして化学捕捉剤を塗布する手法が有効である。
これらの、物理吸着剤及び化学捕捉剤の添加量は、光触媒の使用される環境及び効果が維持されなければならない期間によって異なる。光触媒塗膜が、雨水等によって一ヶ月に一度以上洗い流される環境においては、被毒している無機物の汚染が洗い流されるために、これらの化学捕捉剤や物理吸着剤は少量で満足される。逆に硫黄酸化物などの汚染が強い環境、例を挙げると交通量の多い道路や、硫黄を多く含有するガスを燃焼する炉の付近等の付近に配備される光触媒で、且つ、雨水等の水分による洗浄が期待できない場合には物理吸着剤および化学捕捉剤はより多くの量が必要となる。また、直射日光に照射される場所、照明の付近及び照明そのものに光触媒を適応する場合には、光量が多いために、光触媒表面での汚染ガスの酸化速度が増し、硫黄酸化物等による汚染の蓄積が顕著になる。このため、より多くの添加剤が必要となる。また、上記のような汚染が蓄積しやすい環境下で光触媒効果が長期間維持されるためには、より多くの量の物理吸着剤、化学捕捉剤が必要になる。コーティング材に配合される酸化銅、酸化鉄、酸化マンガン、酸化亜鉛の微粒又はアルカリ土類金属化合物は、金属換算で光触媒粒子に対して0.01質量%以上であると、このような効果が認められ、200%を超える量配合すると光触媒性能を損なってしまうことがあるため、200質量%以下であることが好ましい。初期性能を十分に発揮させるためには、光触媒粒子に対して1質量%以上50質量%以下であることが好ましい。要求される光触媒性能の寿命、及び使用環境によって上記の値は左右されるが、波長310nm以上390nm以下の紫外線量を積分して定量する紫外線光量計で0.1mW/cm2以上の光が12時間/日照射、SOx濃度が50ppb、1年以上の光触媒寿命、というモデル仕様であれば、5質量%以上20質量%以下であることが好ましい。アルカリ土類金属は、光触媒コーティング材に配合する際に、単体で用いてもかまわないし、2種類以上の化合物を混合して溶解、又は分散して用いてもかまわない。
物理吸着剤及び化学捕捉剤を用いて、汚染物質を除去する際には、膜の組成に対して、成分濃度が均一である必要はない。膜厚方向に対して、汚染物質を捕捉する成分濃度について勾配を付けることも可能であるし。上塗りをしたり、アンダーコートとして用いて局在化してもかまわない。例えば、汚染が外部由来であることが判明している場合には、先述のように先に光触媒塗膜を作成し、物理吸着剤、あるいは化学捕捉剤を上塗りしてもかまわない。逆に汚染物質が基材由来のものであることが判明している際には、物理吸着剤、化学捕捉材をアンダーコート材として加工し、塗布成膜してから、光触媒膜を作成しても良い。物理吸着剤や化学捕捉材も光触媒性能に対して若干の悪影響がある際には、膜中で光触媒成分とこれらの捕捉材が偏在しているほうが、初期の光触媒性能が高くなり、好ましいことがある。
第三の汚染物質への対策手法として、膜の外に汚染物質を排出することが挙げられる。一番容易な手法は、水洗である。汚染物質が蓄積してきた際には、基材ごと水洗し、無機被毒物質を溶出させる。しかしながら、光触媒が適用される部分が、電子機器など水によって使用不能になってしまうものであったり、巨大なものであったりすると、水洗はどこにでも適用可能であるとはいえない。このため、水洗以外の手法によっても、光触媒膜から、汚染物質を取り除く手法を用いる必要がある。
光触媒半導体は主に酸化分解用途で用いられることが多いが、同時に光還元作用も持つ。非常に遅い速度ではあるが、助触媒を伴って水を水素ガスまで還元できることが知られている。本検討においては、光触媒粒子に対して、白金金属、ニッケル金属、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化モリブデンに着目して添加し、検討を行った。この遷移金属あるいはその酸化物を添加したコーティング材を塗布したガラス板サンプルについて、強制的に硫黄酸化物で汚染して検討を行ったところ、添加しなかったものと比較して性能の低下を防ぐことができた。これらの遷移元素金属、又はその酸化物の添加量は、光触媒微粒子に対して0.1質量%以上200質量%以下が好ましい。酸化物には着色しているものもあり、意匠性を要求される場合には、添加量を光触媒粒子に対して0.1質量%以上1質量%以下に調節する必要がある。コーティング材として用いる溶剤、pHよって溶解してしまうものもあるため、このような場合は溶媒のpHをアンモニアやリン酸塩、炭酸塩などを用いて弱酸性からアルカリ性にしてもよい。より効果を発現させるためには、遷移金属の中でも白金金属、及びその化合物が好ましく、これらと複合させて、ニッケル酸化物、コバルト酸化物、モリブデン酸化物を用いることが好ましい。白金金属と、その他の遷移金属酸化物の配合比としては、白金金属に対して20質量%から10000質量%であることが好ましい。白金金属が高価であることを考慮に入れると、白金金属をなるべく少量にさせつつ効果を発揮させるためには、遷移金属酸化物が白金金属に対して100質量%以上900質量%以下、さらに好ましくは300質量%以上600質量%以下であることが好ましい。白金金属と遷移金属酸化物の和が、先述のように光触媒微粒子に対して0.1質量%以上200質量%未満、より好ましくは0.5質量%以上1質量%以下であることが好ましい。ただし、1年以上の長期にわたり、水洗浄されず、かつ汚染の程度が高い環境下においては5質量%以上100質量%以下であることが好ましい。添加される白金及びその化合物、遷移金属酸化物は、コーティング材への分散性の観点から、10μm以下の微粒子であることが好ましい。より好ましくは5μm以下であることが好ましい。
本発明の好ましい実施態様におけるコーティング材から成形された光触媒膜は、消臭、防汚、抗菌などの機能を持つ。一般的に防汚、抗菌と比較して消臭に関しては分解しなくてはいけない物質の量が多く大きな反応速度、触媒量を必要とし、在来品と比較して高強度を維持したまま厚膜化が可能な本コーティング材は消臭機能を付与するコーティング材として非常に望ましい。また、本発明のコーティング材によって得られる光触媒膜は、大気中、あるいは基材由来の汚染に対する耐久性が強いことも大きな特徴である。本発明の好ましい実施態様におけるコーティング材を各種の材料、成形体等の基材に塗布し、基材の表面に光触媒膜を形成することができる。基材としてはセラミックス、ガラス、金属、プラスチック、木材、紙等殆ど制限無く対象とすることができる。また、この基材がフィルターの形状になっていると、本コーティング材を塗布した際に効率的に空気浄化に用いることができ、好ましい。さらに、フィルターが光源と組み合わされていてデバイスとなり、フィルター位置における紫外線光量について310nm以上390nm以下での積分値が0.05mW/cm2以上であると、光照射時間当たりの光触媒膜中への汚染物質の蓄積が著しく、本発明のように光触媒膜に対汚染性能を持たせることが特に有効である。フィルターを設置当初の揮発性有機化合物の分解性能は、自明であるが光量が大きいほど高いため、通常フィルター位置における上記紫外線光量は0.1mW/cm2以上に設計される。すなわち、本発明のコーティング材は、光触媒付フィルターの耐汚染性、耐久寿命を延ばすためにきわめて有効である。基材をアルミナ、ジルコニア等からなる触媒担体とし、これに酸化チタン薄膜の触媒を担持して触媒として使用することもできる。また蛍光ランプ等の照明器具のガラスやそのプラスチックカバー等を基材としてこれに酸化チタン薄膜を形成すれば薄膜は透明性を維持でき、かつ光触媒作用を有するので光を遮断することなく油煙等の有機物を分解することができ、ガラスやカバーの汚れを防止するのに有効である。また建築用ガラスや壁材に酸化チタン薄膜を形成すれば同様に汚れを防止することが可能になるので、高層ビルなどの窓材や壁材に用いることができ、清掃作業を必要としなくなるためビル管理コスト削減に約立つ。
このような光触媒機能を有した物品の例としては、例えば、建材、照明器具、意匠性窓ガラス、機械、車両、ガラス製品、家電製品、農業資材、電子機器、携帯電話、工具、食器、風呂用品、純水製造装置、トイレ用品、家具、衣類、布製品、繊維、革製品、紙製品、樹脂製品、スポーツ用品、布団、容器、眼鏡、看板、配管、配線、金具、衛生資材、自動車用品、文房具、ワッペン、帽子、鞄、靴、傘、ブラインド、バルーン、配管、配線、金具、照明、蛍光灯、LED、信号機、街灯、玩具、道路標識、装飾品、テント、クーラーボックスなどのアウトドア用品、造花、オブジェ、フィルタ、その中でも消臭を目的としたフィルタからなる群を挙げることができる。
また、シックハウス対策や、水・大気・土壌中のPCBやダイオキシン類のような有機塩素化合物の分解、水・土壌中の残留農薬や環境ホルモンの分解などに有効な環境浄化機器・装置にも応用できる。その際には、物品上に成膜して使用することが可能である。上記の中でも特に蛍光灯に対して本発明を適用した場合、光源近傍に光触媒粒子が存在することになり、非常に大きい光量のエネルギーを得ることができる。さらに、ほぼすべての家庭、オフィス、店舗その他に蛍光灯は普及しているため、室内環境に悪影響を与える有機及び無機物質の濃度の低減に多大な貢献をすることができる。また、純水製造器に用いた場合、本発明のコーティング材によって成膜される光触媒膜は、非常に強い酸化力を持つため、水中に微量に含まれる有機不純物を分解するのに最適である。
また、物品が効果的にその光触媒性や親水性を発現することができる光源として、太陽、蛍光灯、白熱電球、水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、水銀キセノンランプ、メタルハライドランプ、発光ダイオード、レーザー、有機物の燃焼炎などを例示することができる。また蛍光灯としては、紫外線吸収膜付き蛍光灯、白色蛍光灯、昼白色蛍光灯、昼光色蛍光灯、温白色蛍光灯、電球色蛍光灯、ブラックライト、などを例示することができるが、特にこれらに限定されない。
本コーティング材は光触媒膜用だけではなく、誘電体膜、色素増感型太陽電池の光電極膜、UV遮蔽膜、腐蝕防止膜耐候性付与膜などの形成にも応用可能である。本発明のネッキングを持つ粒子を配合したコーティング材を用いると、強度が高く、結晶性が高いため漏れ電流の小さい電気的特性の優れたチタン含有ペロブスカイト型酸化物膜を形成することができ、電子機器の小型化を可能とする小型のコンデンサに必要な薄膜の誘電体磁器、誘電体フィルム、誘電体塗膜などの薄膜形成物を成形可能である。さらに、ネッキング粒子は結晶性が高く電子の導通が良好であり、且つ、電極として適切な空孔度を持ち、さらに強度が強いため、本発明のコーティング材は、多孔体電極として、工業用酸化電極、あるいは還元電極、小型一次、二次電池用の正極、負極、なかでも色素増感型太陽電池の色素吸着側電極を形成するためにきわめて有用である。上記のような用途に限定されず、本発明の好ましい実施態様におけるコーティング材においては、バインダー量が少なく、且つ、膜強度が高いということから、金属酸化物の塗膜において、金属酸化物の機能を最大限に発現させることが可能であり、紫外線遮蔽や腐食防止、耐候性付与等の機能を果たす膜を成形することが可能である。
以下、金属酸化物分散物について実施例及び比較例にて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
(消臭試験法)
コーテイング剤を塗工したガラスサンプル(20cm×20cm)について、アセトアルデヒドガスの消臭試験を行う手法を以下に示す。
ガラスサンプルは光照射下用、ブランク(暗所)用の2種類を準備し、ガラスサンプル及び20体積ppmのアセトアルデヒドガスを含む空気を容量5Lのテドラー(登録商標)バック(ジーエル サイエンス(株)製)中に封入し、一つには外部から昼白色蛍光灯(東芝ライテック(株)社製メロウホワイト(登録商標))を10000ルクスになるように照射し、一つは暗所に保持した。1時間経過後のテドラー(登録商標)バック内のアセトアルデヒド濃度をガス検知管((株)ガステック、92L)で測定した。初期濃度20ppmに対してガスが減少した割合をガス除去率[%]でという値で定義した。
(膜強度試験法A)
コーティング材を塗工したガラスサンプル(20cm×20cm)について、膜強度の試験方法を以下に示す。
光触媒がコーティングされたガラスサンプルを、移動しないようにゴム板の上に固定し、乾燥した手で約5kgの加重をかけ、擦った。
(膜強度試験法B)
JIS―K5400に準拠した鉛筆引掻き試験を行った。
(液相法粒子合成)
蒸留水9.1Lを還流冷却器付きの反応槽に装入し、95℃に加温してそれを維持した。攪拌速度を約200rpmに保ちながら、ここに四塩化チタン水溶液(Ti含有量16.5質量%、比重1.52、住友チタニウム(株)製)水溶液0.9Lを約10mL/minの速度で反応槽に滴下した。このとき、反応液の温度が下がらないように注意した。この結果、反応相中の四塩化チタン濃度が0.5moL/L(酸化チタン換算4質量%)であった。反応槽中では反応液が滴下直後から、白濁し始めたがそのままの温度で保持を続け、滴下終了後さらに昇温し沸点付近の温度(101℃)で60分間維持した。得られたゾルについて限外濾過膜(旭化成(株)製マイクローザACP−1050孔径約6nm)を用いて洗浄液の伝導度が100μS/cmになるまで純水で洗浄を行い、120℃乾燥時における固形分濃度が15質量%になるように濃縮を行った。前述の方法を採用し、レーザードップラー式の粒度分布計で測定したところ、図3に示されるように22nmにピークを持つ分布となることがわかった。得られた固形分のBET比表面積をBET比表面積計(Simadzu製FlowSorb2300)を用いて測定したところ150m2/gであり、この値から(2)式に基づいて算出される平均一次粒子径は約10nmであることがわかった。またこの固形分をめのう乳鉢で粉砕し、粉末X線回折の測定を行った。測定装置としてRigaku−Rint Ultima+を使用した。X線源はCuKα1を使用し、出力は40kV−40mA、発散スリットは1/2°、発散縦制限スリットは10mm、散乱スリットは1/2°、受光スリットは0.15mmで測定を行った。スキャンのステップは0.04°、計数時間は25秒とし、FT条件でのX線回折パターンの測定を行った。得られたX線パターンについて、前記したリートベルト解析法を用いて解析すると、ブルッカイト結晶75質量%、アナターゼ結晶20質量%、ルチル結晶5質量%を含むブルッカイト結晶含有酸化チタン粉末であった。めのう乳鉢で粉砕した乾燥粉体のタップ密度を粉体特性総合装置PT−D(細川ミクロン製)を使用し、JIS K−5101−20.2に示される方法に基づき測定した結果、タップ密度Ρは、1.2g/cm3であった。チタニアの真密度ρは4.0g/cm2とし(1)式に基づいて算出すると、この液相法によって得られた粒子のネッキング個数mは3.2個となった。また透過型電子顕微鏡(JEOL製JEM−200CX)で観察したところ、一次粒子径は約10nmであった。
(汚染による性能低下確認)
調製したコーティング材を、7.5cm四方のガラス板に塗布、乾燥を行い、20℃、湿度50%に調節した5Lの50ppmのSO2ガス中に該ガラス板を入れ、外部より東芝ライテック(株)製蛍光灯「メロウホワイト」をもちいて、サンプル位置で10000ルクスになるように位置を調節し、12時間汚染試験を行った。
汚染を行わなかったサンプル、上記の汚染を行ったサンプルをそれぞれ、20℃、湿度50%、アセトアルデヒド500ppmに調整した500mlのガス中に入れ、外部より、「メロウホワイト」を用いて、ガラスサンプル位置で10000ルクスとなるように照射を行い、アセトアルデヒドガス濃度の4時間後の減少率をガスクロクロマトグラフィーを用いて測定した。
実施例1
(1.1)粒子群A−1の合成:
ガス状四塩化チタン4.7Nm3/時間(Nは標準状態を意味する。以下同じ)と窒素16Nm3/時間とを混合してなる四塩化チタンを含有するガスを1,100℃に、空気20Nm3/時間と水蒸気25Nm3/時間をと混合してなる酸化性ガスを1,000℃にそれぞれ予熱し、同軸平行流ノズルを用いて、それぞれ流速92m/秒、97m/秒で反応管に導入した。同軸平行流ノズルの内管径は20mmとし、内管に四塩化チタンを含有するガスを導入した。
反応管の内径は100mmであり、反応温度1,250℃における管内流速は計算値で13m/秒であった。反応管内における高温滞留時間が0.2秒となるように、反応後冷却空気を反応管に導入し、その後、テフロン(登録商標)製バグフィルターを用いて超微粒子粉末を捕集した。
得られた微粒子酸化チタンについて先述の手法によりRIETAN―2000によって解析を行うと、アナターゼ型結晶を92%、ルチル型結晶を8%含有していた。また、得られた微粒子酸化チタンについて、レーザー回折式粒度分布測定法により測定した粒度分布における90%累積質量粒度分布径D90は2μmであり、D50は1.3μmであった。ロジン・ラムラー式におけるn値は1.9であった。なお、n値はレーザー回折において得られた3点データ、D10,D50、D90をそれぞれRR線図においてR=90%、50%、10%としてプロットし、それら3点の近似直線から求めた。
得られた気相法酸化チタンの比表面積をBET法により測定し、98m2/gという値を得た。この比表面積値より、(2)式で求めた一次粒径は、15nmであった。タップ密度は、0.12g/cm3であった。(1)式に基づき、mを算出すると19500個であった。
(1.2)コーティング材の調製(無機バインダー):
パイレックス(登録商標)製容器に、粒子群Bとして(液相法粒子合成)で得られたゾルを、30g入れた。続いて、水を5g、塩化ヒドロキシジルコニウム水溶液(酸化ジルコニウム換算で8質量%)を10g、アルコールを55g、(1.1)で合成した粒子群A−1を0.5g入れ、よく混合し、容器を水冷しながら、容器ごと卓上型超音波洗浄機に30分間かけ、コーティング材を得た。このようにして得られたコーティング材をレーザードップラー式粒度分布計を用いて測定した結果を図4に示す。62nm、1260nmにそれぞれ質量粒度分布のピークを持ち、62nmのピークの面積は69%、1260nmのピークの面積は31%であった。レーザー回折法を用いて測定した際には、2.6μmに一山のピークを持つ質量粒度分布となった。また、得られたコーティング材を乾燥し、得られた粉体のBET比表面積から求められた平均一次粒子径は11nmであった。
20cm四方の清浄なガラス板にこのコーティング液を片面が十分濡れるまで垂らし、垂直に1時間ほど液が切れるまで保持し、150℃に維持された恒温乾燥機中で15分間硬化を行ったところ、ほぼ無色透明の膜が得られた。
(1.3)コーティング材の調製(有機バインダー):
パイレックス(登録商標)製容器に、粒子群Bとして(液相法粒子合成)で得られたゾルを、30g入れた。続いて、水を55g、水分散系ウレタン樹脂(VONDIC1040NS、大日本インキ化学工業(株)製、ウレタン樹脂固形換算で20質量%)を15g、(1.1)で合成した粒子群A−1を0.5g入れ、よく混合しコーティング材を得た。このようにして得られたコーティング材をレーザードップラー式粒度分布計を用いて測定した結120nm、2110nmにそれぞれ質量粒度分布のピークを持ち、120nmのピークの面積は61%、2110nmのピークの面積は39%であった。レーザー回折法を用いて測定した際には、2.8μmに一山のピークを持つ質量粒度分布となった。また、得られたコーティング材を乾燥し、得られた粉体のBET比表面積から求められた平均一次粒子径は11nmであった。20cm四方の清浄なガラス板にこのコーティング液を片面が十分濡れるまで垂らし、垂直に1時間ほど液が切れるまで保持し、120℃に維持された恒温乾燥機中で15分間硬化を行った。
(1.4)光触媒膜の評価:
(1.2)(1.3)で得られたガラス板サンプルについて、(消臭試験)(強度試験A)(強度試験B)を行い、結果を表2に示した。
実施例2
(2.1)粒子群A−2の合成:
ガス状四塩化チタン9.4Nm3/時間と窒素6Nm3/時間とを混合してなる四塩化チタンを含有するガスを1,000℃に、酸素10Nm3/ 時間と水蒸気30Nm3/時間をと混合してなる酸化性ガスを1,000℃にそれぞれ予熱し、同軸平行流ノズルを用いて、それぞれ流速63m/秒、73m/秒で反応管に導入した。同軸平行流ノズルの内管径は20mmとし、内管に四塩化チタンを含有するガスを導入した。
反応管の内径は100mmであり、反応温度1,310℃における管内流速は計算値で13m/秒であった。反応管内における高温滞留時間が0.2秒となるように、反応後冷却空気を反応管に導入し、その後、テフロン(登録商標)製バグフィルターを用いて微粒子粉末を捕集した。
得られた超微粒子酸化チタンは、BET比表面積が26m2/g、一次粒子径60nmであった。また、アナターゼ型結晶を80%、ルチル型結晶を20%含有していた。また、得られた微粒子酸化チタンについてレーザー回折式粒度分布測定法により測定した粒度分布における90%累積質量粒度分布径D90は0.82μm、D50は0.56μmであり、ロジン・ラムラー式におけるn値は2.6であった。タップ密度Ρは0.28であった。これらの値より(1)式より算出されたネッキング個数mは57個であった。
(2.2)コーティング材の調製及び成膜(無機バインダー):
粒子群A−1に変えて(2.1)で合成した粒子群A−2を用いた以外は(1.2)と同様にコーティング材の調製及び成膜を行った。コーティング材をレーザードップラー式粒度分布計を用いて測定したところ、73nm、1140nmにそれぞれ質量粒度分布のピークを持ち、73nmのピークの面積は64%、1140nmのピークの面積は36%であった。レーザー回折法を用いて測定した際には、2.2μmに一山のピークを持つ質量粒度分布となった。コーティング材を乾燥し、得られた粉体のBET比表面積から求められた平均一次粒子径は12nmであった。
(2.3)コーティング材の調製及び成膜(有機バインダー):
粒子群A−1に変えて(2.1)で合成した粒子群A−2を用いた以外は(1.3)と同様にコーティング材の調製及び成膜を行った。コーティング材をレーザードップラー式粒度分布計を用いて測定したところ、140nm、2200nmにそれぞれ質量粒度分布のピークを持ち、140nmのピークの面積は62%、2200nmのピークの面積は38%であった。レーザー回折法を用いて測定した際には、2.5μmに一山のピークを持つ質量粒度分布となった。コーティング材を乾燥し、得られた粉体のBET比表面積から求められた平均一次粒子径は12nmであった。
(2.4)光触媒膜の評価:
(2.2)(2.3)で得られたガラス板サンプルについて、(消臭試験)(強度試験A)(強度試験B)を行い、結果を表2に示した。
実施例3
(3.1)粒子群A−3の合成:
濃度100%のガス状四塩化チタン11.8Nm3/時間を含有するガスを1,000℃に、8Nm3/時間の酸素および20Nm3/時間の水蒸気の混合ガスを1,000℃にそれぞれ予熱して、同軸平行流ノズルを用いて、それぞれ流速49m/秒、60m/秒で反応管に導入した。同軸平行流ノズルの内管径は20mmとし、内管に四塩化チタンを含有するガスを導入した。
反応管の内径は100mmであり、反応温度1,320℃における管内流速は計算値で10m/秒であった。反応管内の高温滞留時間が0.3秒以下となるように、反応後冷却空気を反応管に導入し、その後、テフロン(登録商標)製バグフィルターを用いて製造された微粒子粉末を捕集した。
得られた微粒子酸化チタンは、BET比表面積が16m2/g、一次粒径は90nmであった。また、アナターゼ型結晶を80%、ルチル型結晶を20%含有していた。また、得られた微粒子酸化チタンについてレーザー回折式粒度分布測定法により測定した粒度分布における90%累積質量粒度分布径D90は0.80μm、D50は0.56であり、ロジン・ラムラー式におけるn値は2.8であった。タップ密度Ρは0.32であった。これらの値より(1)式より算出されたネッキング個数mは19個であった。
(3.2)コーティング材の調製及び成膜:
粒子群A−1に変えて(3.1)で合成した粒子群A−3を用いた以外は(1.2)と同様にコーティング材の調製及び成膜を行った。コーティング材をレーザードップラー式粒度分布計を用いて測定したところ、65nm、1100nmにそれぞれ質量粒度分布のピークを持ち、65nmのピークの面積は70%、1100nmのピークの面積は30%であった。レーザー回折法を用いて測定した際には、2.0μmに一山のピークを持つ質量粒度分布となった。コーティング材を乾燥し、得られた粉体のBET比表面積から求められた平均一次粒子径は12nmであった。
(3.3)コーティング材の調製及び成膜(有機バインダー):
粒子群A−1に変えて(3.1)で合成した粒子群A−2を用いた以外は(1.3)と同様にコーティング材の調製及び成膜を行った。コーティング材をレーザードップラー式粒度分布計を用いて測定したところ、120nm、2810nmにそれぞれ質量粒度分布のピークを持ち、120nmのピークの面積は71%、2810nmのピークの面積は29%であった。レーザー回折法を用いて測定した際には、2.1μmに一山のピークを持つ質量粒度分布となった。コーティング材を乾燥し、得られた粉体のBET比表面積から求められた平均一次粒子径は12nmであった。
(3.4)光触媒膜の評価:
(3.2)(3.3)で得られたガラス板サンプルについて、(消臭試験)(強度試験A)(強度試験B)を行い、結果を表2に示した。
比較例1
(4.1)粒子群Aのみによる成膜:
パイレックス(登録商標)製容器に水を25g入れ、続いて粒子群A−1を5g、塩化ヒドロキシジルコニウム水溶液(酸化ジルコニウム換算で8質量%)を10g、アルコールを55g入れ、よく混合しコーティング材を得た。20cm四方の清浄なガラス板にこのコーティング液を片面が十分濡れるまで垂らし、垂直に1時間ほど液が切れるまで保持し、150℃に維持された恒温乾燥機中で15分間硬化を行った。コーティング材をレーザードップラー式粒度分布計を用いて測定したところ、1300nmに一山の質量粒度分布のピークが観察された。
(4.2)コーティング材の調製(有機バインダー):
パイレックス(登録商標)製容器に、水を80g入れ、続いて粒子群A−1を5g、水分散系ウレタン樹脂(VONDIC1040NS、大日本インキ化学工業(株)製、ウレタン樹脂固形換算で20質量%)を15g入れ、よく混合しコーティング材を得た。20cm四方の清浄なガラス板にこのコーティング液を片面が十分濡れるまで垂らし、垂直に1時間ほど液が切れるまで保持し、120℃に維持された恒温乾燥機中で15分間硬化を行った。コーティング材をレーザードップラー式粒度分布計を用いて測定したところ、2200nmに一山の質量粒度分布のピークが観察された。
(4.3)光触媒膜の評価:
(3.2)(3.3)で得られたガラス板サンプルについて、(消臭試験)(強度試験A)(強度試験B)を行い、結果を表2に示した。
比較例2
(5.1)粒子群Bのみによる成膜:
パイレックス(登録商標)製容器に(液相法粒子合成)で得られた粒子群Bを33g入れ、水を2g入れ、塩化ヒドロキシジルコニウム水溶液(酸化ジルコニウム換算で8質量%)を10g、アルコールを55g入れ、よく混合しコーティング材を得た。コーティング材をレーザードップラー式粒度分布計を用いて測定したところ、90nmに一山の質量粒度分布のピークを持っていた。レーザー回折法を用いて測定した際には、0.2〜2.0μmに明確なピークを持たないブロードな分布が観察された。20cm四方の清浄なガラス板にこのコーティング液を片面が十分濡れるまで垂らし、垂直に1時間ほど液が切れるまで保持し、150℃に維持された恒温乾燥機中で15分間硬化を行った。
(5.2)コーティング材の調製(有機バインダー):
パイレックス(登録商標)製容器に(液相法粒子合成)で得られた粒子群Bを33g入れ、水を52g入れ、水分散系ウレタン樹脂(VONDIC1040NS、大日本インキ化学工業(株)製、ウレタン樹脂固形換算で20質量%)を15g入れ、よく混合しコーティング材を得た。コーティング材をレーザードップラー式粒度分布計を用いて測定したところ、160nmに一山の質量粒度分布のピークを持っていた。レーザー回折法を用いて測定した際には、0.2〜2.6μmに明確なピークを持たないブロードな分布が観察された。20cm四方の清浄なガラス板にこのコーティング液を片面が十分濡れるまで垂らし、垂直に1時間ほど液が切れるまで保持し、120℃に維持された恒温乾燥機中で15分間硬化を行った。
(5.3)光触媒膜の評価:
(5.1)(5.2)で得られたガラス板サンプルについて、(消臭試験)(強度試験A)(強度試験B)を行い、結果を表2に示した。
参考例1:PTFEを含むコーティング材
(6.1):コーティング材の調製
パイレックス(登録商標)製容器に(液相法粒子合成)で得られた粒子群を70g入れ、水を12g入れ、塩化ヒドロキシジルコニウム水溶液(酸化ジルコニウム換算で15質量%濃度)を12g、粒子径0.25μmのポリテトラフルオロエチレンディスパージョン(粉体固形分濃度60質量%濃度、旭硝子(株)製、AD911)を4g、ドデシルベンゼンスルホン酸1質量%水溶液を1g入れ、(1−1)で合成した粒子群A−1を1.0g入れよく混合しコーティング材を得た。
(6.2)コーティング材の成膜:
7.5cm四方の清浄なガラス板にこのコーティング液を片面が十分濡れるまで垂らし、垂直に1時間ほど液が切れるまで保持し、150℃に維持された恒温乾燥機中で15分間硬化を行った。
(6.3)光触媒膜の評価:
(6.2)で得られたガラス板サンプルについて、(汚染による性能低下確認)(強度試験A)(強度試験B)を行い、結果を表3に示した。
実施例5:粒度分布の異なるコーティング材の二度塗り
(7.1):コーティング材の調製
パイレックス(登録商標)製容器に、粒子群Bとして(液相法粒子合成)で得られたゾルを、46.7g入れた。続いて、水を1.3g、塩化ヒドロキシジルコニウム水溶液(酸化ジルコニウム換算で20質量%)を6g、アルコールを40g、(1.1)で合成した粒子群A−1を5g入れ、よく混合し、容器を水冷しながら、容器ごと卓上型超音波洗浄機に30分間かけ、コーティング材を得た。
(7.2):上塗り用コーティング材の調製
パイレックス(登録商標)製容器に(液相法粒子合成)で得られた粒子群を10g入れ、水を15.8g入れ、塩化ヒドロキシジルコニウム水溶液(酸化ジルコニウム換算で10質量%濃度)を2.2g、アルコールを70g、ドデシルベンゼンスルホン酸1質量%水溶液を1g入れ、よく混合しコーティング材を得た。
(7.3)コーティング材の成膜:
7.5cm四方の清浄なガラス板にこのコーティング液(7.1)を片面が十分濡れるまで垂らし、垂直に1時間ほど液が切れるまで保持し、150℃に維持された恒温乾燥機中で15分間硬化を行った。
塗膜が室温まで低下した後、さらに上塗り用コーティング液(7.2)を塗膜上に充分塗れるまで垂らし、垂直に1時間ほど液が切れるまで保持し、150度に維持された高温乾燥機中で15分間硬化を行った。
(7.4)光触媒膜の評価:
(7.3)で得られたガラス板サンプルについて、(汚染による性能低下確認)(強度試験A)(強度試験B)を行い、結果を表3に示した。
参考例2
(8.1)活性アルミナを含むコーティング材:
(8.1):コーティング材の調製
パイレックス(登録商標)製容器に、粒子として(液相法粒子合成)で得られたゾルを、16g入れた。続いて、水を8.7g、塩化ヒドロキシジルコニウム水溶液(酸化ジルコニウム換算で10質量%)を4.5g、アルコールを70g、活性アルミナを0.4g(住友化学工業(株)製、KC−501)、(1.1)で合成した粒子群A−1を0.4g入れ、容器を水冷しながら、容器ごと卓上型超音波洗浄機に30分間かけ、コーティング材を得た。
(8.2)コーティング材の成膜:
7.5cm四方の清浄なガラス板にこのコーティング液(8.1)を片面が十分濡れるまで垂らし、垂直に1時間ほど液が切れるまで保持し、150℃に維持された恒温乾燥機中で15分間硬化を行った。
(8.3)光触媒膜の評価:
(8.2)で得られたガラス板サンプルについて、(汚染による性能低下確認)(強度試験A)(強度試験B)を行い、結果を表3に示した。
実施例7:化学捕捉材を含むコーティング材
(9.1):コーティング材の調製
パイレックス(登録商標)製容器に、粒子として(液相法粒子合成)で得られたゾルを、16g入れた。続いて、水を8.7g、塩化ヒドロキシジルコニウム水溶液(酸化ジルコニウム換算で10質量%)を4.5g、アルコールを70g、塩化カルシウム2水和物を0.4g(関東化学(株)製、特級)、(1.1)で合成した粒子群A−1を0.4g入れ、容器を水冷しながら、容器ごと卓上型超音波洗浄機に30分間かけ、コーティング材を得た。
(9.2)コーティング材の成膜:
7.5cm四方の清浄なガラス板にこのコーティング液(9.1)を片面が十分濡れるまで垂らし、垂直に1時間ほど液が切れるまで保持し、150℃に維持された恒温乾燥機中で15分間硬化を行った。
(9.3)光触媒膜の評価:
(9.2)で得られたガラス板サンプルについて、(汚染による性能低下確認)(強度試験A)(強度試験B)を行い、結果を表3に示した。
実施例8:白金及び遷移金属酸化物を含むコーティング材
(10.1):添加剤の調整
酸化ニッケル(関東化学(株)、鹿特級)0.08g、酸化コバルト(関東化学(株)、鹿1級)0.12g、酸化モリブデン(関東化学(株)、鹿特級)0.6gをロッキングミル用100ml容器にとり、水を13.6g、ドデシルベンゼンスルホン酸1質量%水溶液を2.0g、0.2mm径のジルコニアボールを20g入れ、ロッキングミルを用い600rpmで3時間分散を行った。
(10.2):コーティング材の調製
パイレックス(登録商標)製容器に、粒子として(液相法粒子合成)で得られたゾルを、16g入れた。続いて、アルコールを70g、ヘキサクロロ白金酸六水和物を白金金属換算で酸化チタンに対して0.2質量%添加し、良く混合した後、直径12cmのシャーレにサンプルを入れて、シャーレに蓋をし、外部よりマグネチックスターラーで攪拌しながら、波長310nm以上390nm以下の紫外線量の積分値が20mW/cmになるように高圧水銀ランプの光を2時間照射し、酸化チタンの光還元作用を利用して、酸化チタン表面に白金金属を析出させた。この白金が付着した酸化チタンゾルに、(10.1)で作成したスラリーサンプルのうち8.2gを加え、塩化ヒドロキシジルコニウム水溶液(酸化ジルコニウム換算で10質量%)を4.5g加えて、さらに(1.1)で合成した粒子群A−1を0.4g入れ、良く攪拌した。容器を水冷しながら、容器ごと卓上型超音波洗浄機に30分間かけ、コーティング材を得た。
(10.3)コーティング材の成膜:
7.5cm四方の清浄なガラス板にこのコーティング液(10.2)を片面が十分濡れるまで垂らし、垂直に1時間ほど液が切れるまで保持し、150℃に維持された恒温乾燥機中で15分間硬化を行った。
(10.4)光触媒膜の評価:
(10.3)で得られたガラス板サンプルについて、(汚染による性能低下確認)(強度試験A)(強度試験B)を行い、結果を表3に示した。
実施例9:セラミックス繊維とアルコキシシランの部分加水分解物を含むコーティング材
(11.1):バインダーの調整
テトラエチルオルソシリケートを7gを80質量%エタノール水溶液38gに溶解させて、0.5mmに裁断された綿状の4μm径石英ガラス繊維を5g加え、自転公転混練機で30分間混練した。これを硝酸添加でpH=2として、攪拌しながら40℃に4時間維持して重合させ、結着剤液を得た。この液の動粘度は8.0cStであった。
(11.2):コーティング材の調整
パイレックス(登録商標)製容器に、粒子として(液相法粒子合成)で得られたゾルを、43g入れ、(1.1)で合成した粒子群A−1を1g入れ、ドデシルベンゼンスルホン酸1質量%水溶液を1.0g加えた。容器を水冷しながら、容器ごと卓上型超音波洗浄機に30分間かけ、さらにこれを(11.1)で調製したバインダー全量と混合しコーティング材を得た。
(11.3)コーティング材の成膜:
7.5cm四方の清浄なガラス板にこのコーティング液(11.2)を片面が十分濡れるまで垂らし、垂直に1時間ほど液が切れるまで保持し、150℃に維持された恒温乾燥機中で15分間硬化を行った。
(11.4)光触媒膜の評価:
(11.3)で得られたガラス板サンプルについて、(汚染による性能低下確認)(強度試験A)(強度試験B)を行い、結果を表3に示した。
比較例3
(12.1)粒子群Bのみによる成膜(低濃度):
パイレックス(登録商標)製容器に(液相法粒子合成)で得られた粒子群を6.7g入れ、塩化ヒドロキシジルコニウム水溶液(酸化ジルコニウム換算で10質量%)を1.5g入れ、水を90.8g入れ、ドデシルベンゼンスルホン酸1質量%水溶液を1g入れ、よく混合しコーティング材を得た。
(12.2)コーティング材の成膜:
7.5cm四方の清浄なガラス板にこのコーティング液(12.1)を片面が十分濡れるまで垂らし、垂直に1時間ほど液が切れるまで保持し、150℃に維持された恒温乾燥機中で15分間硬化を行った。
(12.3)光触媒膜の評価:
(12.2)で得られたガラス板サンプルについて、(汚染による性能低下確認)(強度試験A)(強度試験B)を行い、結果を表3に示した。
比較例4
(13.1)粒子群Bのみによる成膜(高濃度):
パイレックス(登録商標)製容器に(液相法粒子合成)で得られた粒子群を87g入れ、塩化ヒドロキシジルコニウム水溶液(酸化ジルコニウム換算で20質量%)を9.8g入れ、水を2.2g入れ、ドデシルベンゼンスルホン酸1質量%水溶液を1g入れ、よく混合しコーティング材を得た。
(13.2)コーティング材の成膜:
7.5cm四方の清浄なガラス板にこのコーティング液(12.1)を片面が十分濡れるまで垂らし、垂直に1時間ほど液が切れるまで保持し、150℃に維持された恒温乾燥機中で15分間硬化を行った。
(13.3)光触媒膜の評価:
(13.2)で得られたガラス板サンプルについて、(汚染による性能低下確認)(強度試験A)(強度試験B)を行い、結果を表3に示した。
ネッキング粒子のSEM写真である。 本発明の膜の概念図である。 液相法粒子の質量粒度分布である。 本発明実施例1(1.2)、コーティング材の質量粒度分布である。
符号の説明
イ 接触点
ア ネッキング

Claims (18)

  1. 粒子群Aと粒子群Bと溶剤を含み、粒子群Aと粒子群Bは酸化チタンであり、粒子群Aは四塩化チタンを酸化性ガスで高温酸化して製造する気相法によって合成された酸化チタンを含み、粒子群AのBET比表面積換算値による平均一次粒子径が7nm以上200nm以下であり、粒子群Bはチタン化合物水溶液を水中で加水分解することによって合成された酸化チタンを含み、粒子群BのBET比表面積換算値による平均一次粒子径が5nm以上70nm以下であり、粒子群Aのネッキング粒子の個数(ネッキングしあっている個々の粒子を単位とし、すべてのネッキング粒子を構成する粒子の合計数をいう。以下同じ。)が、粒子群Bのネッキング粒子の個数より多く、粒子群Aの質量をX、粒子群Bの乾燥質量をYとしたときにX/Yが0.01以上0.2以下であることを特徴とするコーティング材。
  2. 粒子群Aはm個の粒子が連なってネッキング構造を持ち、粒子群Bは0.2m個以下の粒子しか連なっていない、請求項1に記載のコーティング材。
  3. 粒子群Aの粒度分布が、ロジンラムラー式による分布定数1.5以上である、請求項1又は2に記載のコーティング材。
  4. 粒子群Aのレーザー回折式粒度分布測定器を用いて測定した平均粒子径が50nm〜3μmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のコーティング材。
  5. 粒子群Bのレーザー回折式粒度分布測定器による平均粒子径が4nm以上2000nm以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のコーティング材。
  6. 粒子群Bのレーザードップラー式粒度分布測定による平均粒子径が8nm以上100nm以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のコーティング材。
  7. レーザードップラー法の質量粒度分布において、8nm以上400nm以下にピークを有する粒子群B、800nm以上5500nm以下にピークを有する粒子群Aを含む請求項1〜4のいずれか1項に記載のコーティング材。
  8. レーザードップラー法の質量粒度分布において、粒子群Bの積分面積をBS、粒子群Aの積分面積をASとしたときに、AS/BSの比が0.05以上1以下である請求項7に記載のコーティング材。
  9. レーザー回折法の質量粒度分布において、少なくとも1μ以上4μ以下にピークAbを有し、コーティング材の乾燥粉体のBET測定値より換算された一次粒子径が7nm以上50nm以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載のコーティング材。
  10. 無機系結着剤を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載のコーティング材。
  11. 有機系結着剤を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載のコーティング材。
  12. 200℃以下の加熱乾燥で鉛筆強度試験でH以上強度を持つ膜を成膜する事が可能な請求項1〜11のいずれか1項に記載のコーティング材。
  13. 固形分として酸化チタンと、アルコキシシランの部分加水分解物とを含む請求項1〜12のいずれか1項に記載のコーティング材。
  14. 粒子群AおよびBが光触媒微粒子であり、かつ、56.25cm2の面積に塗布し、20℃、相対湿度50%、5L、50ppmの空気希釈SO2ガス中で10000ルクスで12時間照射環境下で汚染を行い、20℃、相対湿度50%、500ml、500ppmのアセトアルデヒドガス除去試験を行い、汚染前の除去率をa%、汚染後の除去率をb%としたときに、b/aが0.5以上になる光触媒膜を作成可能な請求項1〜13のいずれか1項に記載のコーティング材。
  15. 粒子群AおよびBが光触媒微粒子であり、かつ、活性アルミナ、A型ゼオライト、Y型ゼオライトおよび活性炭からなる群から選択される少なくとも1種の物理吸着剤を光触媒微粒子に対して10質量%以上200質量%以下配合してある、請求項1〜14のいずれか1項に記載のコーティング材。
  16. 粒子群AおよびBが光触媒微粒子であり、かつ、酸化銅、酸化鉄、酸化マンガン、酸化亜鉛の内一種類以上を化学捕捉材として、光触媒微粒子に対して金属換算で0.01質量%200質量%以下含む、請求項1〜15いずれか1項に記載のコーティング材。
  17. 粒子群AおよびBが光触媒微粒子であり、かつ、アルカリ土類金属塩化物、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸水素塩の内一種類以上を化学捕捉材として、光触媒微粒子に対して金属換算で0.01質量%200質量%以下含む、請求項1〜16のいずれか1項に記載のコーティング材。
  18. 粒子群AおよびBが光触媒微粒子であり、かつ、ニッケル酸化物、コバルト酸化物、モリブデン酸化物のうち1種類以上を光触媒粒子に対して0.1質量%以上200質量%以下含む、請求項1〜17のいずれか1項に記載のコーティング材。
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