JP6456786B2 - 球状酸化チタン粉末及びその製造方法 - Google Patents

球状酸化チタン粉末及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、光触媒用塗料、化粧品、屈折率調整材料として好適に使用できる新規な球状酸化チタン粉末及びその製造方法に関する。
酸化チタンは、化学的に安定な材料であり、屈折率が高く、また隠ぺい力・着色力にも優れており、その特性を生かして塗料やインキ、紙、プラスチック、繊維、ゴム、化粧品など広い分野に使用されている。(非特許文献1参照)
酸化チタンの大きな特性の一つとして光触媒機能が挙げられ、空気清浄器のフィルターや外壁の塗装等、様々な応用製品に使用されている。
光触媒機能を活かした酸化チタンの使用形態としては、外装材等の基材に酸化チタンを含む光触媒層を形成する用途が挙げられ、酸化チタン微粒子を樹脂やバインダー等と共に有機溶剤等の溶媒に分散し、塗料として用いる形態が挙げられる。
このような塗料に使用する酸化チタン微粒子には、以下の特性が求められる。
(1)酸化チタンの結晶相が光触媒機能の高いアナターゼ相がリッチであること、
(2)塗料として均一に塗膜するために、粒子間の凝集力が弱く溶媒に分散させ易いこと
(3)流動性等特性向上のために粒子は球状であること
(4)塗料の特性を低下させないために、塩素を含有しないこと
従来、酸化チタンの工業的な製造方法としては、火炎加水分解法や塩素法などの気相法が知られている。
上記火炎加水分解法は、燃焼して水を生成する可燃性ガスと酸素とを燃焼バーナーに供給して燃焼反応により火炎を形成させ、この火炎中に四塩化チタンを投入して加水分解することにより微粒子状酸化チタンを製造する方法である(特許文献1参照) また、塩素法は、ルチル鉱石を塩素化して四塩化チタンを取り出し、これを精製した後、約1000℃に予熱し、一方、酸素も同温度に予熱し、各々を反応炉内に噴出させ、両者を拡散して混合することにより酸化チタンを製造する方法である(非特許文献1、特許文献2参照)。
前記火炎加水分解法は原料となる四塩化チタンガスと可燃性ガスと酸素を予混合し燃焼させるため、1次粒子径が0.1μm以下の微粒子となり、1次粒子同士が融着した凝集粒子となる。そして、1次粒子同士が融着した凝集粒子として得られる酸化チタンを添加した塗料の粘度が高くなる為、高充填させることが困難である。また塩素法では、原料となる四塩化チタンガスと酸素がノズルから射出後に拡散しながら反応すること、また反応が発熱反応であり、炉内温度が1500℃程度と高温である為に粒子同士が凝集し、1次粒子同士が融着した凝集粒子となり易く、また粗大粒子も発生し易い。
前記塩素法で球状の酸化チタン粉末を得る方法は、例えば特許文献3には反応ガスの割合を所定の量に調整することで円形度の高い酸化チタン粒子を得る製造方法が開示されている。しかしながら前記火炎加水分解法や前記塩素法のように原料のチタン化合物として四塩化チタンを使用する方法では、原料中に含まれる塩素分が粒子内外に残存するため、塗料の性能を低下させるおそれがあり、特に樹脂に塗膜を形成した場合には塩素分の影響で樹脂を劣化させる場合がある。他にも、塩素の存在により装置の腐食が発生しやすく、その影響により不純物が混入し易いといった問題を誘発する。
一方、原料に塩素分を含まないチタニウムテトライソプロポキシド等の有機チタン化合物を原料として用い、火炎中で燃焼させる火炎燃焼法(非特許文献2参照)や、気相で加水分解させる気相加水分解法(非特許文献3参照)により、塩素を含まない酸化チタン粉末を製造する方法も報告されている。
しかしながら、前記火炎燃焼法では、原料有機チタン化合物は常温での蒸気圧分をキャリアガスと混合してバーナーノズルへ供給している。この方法では原料供給量が著しく小さい為、球状粒子を得るには原料以外の可燃性ガスや支燃性ガスの供給量を増加させて火炎温度を高くする必要がある。原料以外の可燃性ガスや支燃性ガスの供給量を増加させれば、原料濃度が著しく低下し、供給ガス中の原料濃度が低下すれば火炎中での粒子同士の衝突頻度が小さくなる為、一部の粒子径を大きくすることはできたとしても得られる酸化チタン粉末全体での平均粒子径は小さくなり、細孔容積も大きくなる。それ故、カーボンが残留しやすくなったり、塗料としての用途においてスラリー調整時の分散性が低下したりすることが懸念される。
また、上記気相加水分解法で製造される酸化チタンは、反応温度が低く、また粒子内に水分を取り込みやすい為に非晶質の形態で得られる。これを結晶性の酸化チタンとするためには、熱処理等の追加工程が必要となり、その際、粒子同士が凝集し、分散性の低下や、粗大粒子の発生を招く。
尚、上述の気相法に対して、ゾルーゲル法などの湿式法も知られているが、反応が水相で行われるため、乾燥粉を得る際に粒子同士が凝集し、解砕工程が必要となるなり、コスト高となってしまう、また得られる酸化チタン粒子を凝集の少ない粉状で得ることが困難であり、しかも、前記塗料用途において、溶媒として有機溶媒を使用した場合、表面に存在する表面の水酸基により、溶媒との親和性が悪く、分散性が悪いという問題を有する。
従って、従来の方法では塗料用途において要求される前記特性を十分達成する球状酸化チタン粉末を得るに至っていないのが現状である。
清野学著 「酸化チタン」 技報堂出版(株) Hsiao−Kang Ma,J ALLOYS COMPOUNDS VOL.504 No.1(2010) 115頁〜122頁 CHAN C K,J Am Ceram Soc VOL.82 No.3(1999) 566頁〜572頁
特許第5623497号 特許第4667271号 特許第3993956号
従って、本発明の目的は、(1)アナターゼ相がリッチであり、(2)粒子間の凝集力が弱く、(3)粒子が球状であり、(4)塩素を含有しない酸化チタン粉末を提供することにある。
本発明者等は、上記目的を達成すべく、鋭意研究を重ねた結果、チタニウムアルコキシドを原料として使用し、該原料と可燃性ガス、支燃性ガス等を混合させた混合ガスを燃焼せしめる、所謂、火炎法を採用すると共に、上記燃焼条件として特定の条件を採用することにより、前記目的を達成した球状酸化チタン粉末を得ることに成功し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明によれば、下記特性を満足することを特徴とする、球状酸化チタン粉末が提供される。
(1)アナターゼ相の割合が50重量%以上の結晶性酸化チタンであること
(2)メジアン径(D50)が10〜300nmであること
(3)比表面積が100m/g以下であること
(4)平均円形度が0.80以上であること
(5)塩素濃度が10ppmw以下であること
(6)画像解析法により得られた1次粒子の体積換算粒子径分布において、下記ロジン− ラムラー式で表される粒度分布の勾配nが1以上3未満の範囲にあること
R(Dp)=100exp(−b・Dp
(ただし、式中R(Dp)は最大粒子径から粒子径Dpまでの累積体積%、Dpは粒子径、b及びnは定数である。)
また、本発明の球状酸化チタン粉末においては、カーボン濃度が0.1質量%以下であり、細孔容積が0.2cm/g以下であることが好適である。
本発明によれば、前記球状酸化チタン粉末を製造するために好適な製造方法をも提供する。即ち、本発明は、原料チタン化合物としてチタニウムアルコキシドを使用し、チタニウムアルコキシド、酸素、及び水素を含むガスをバーナーに供給して火炎を形成し、該火炎中で酸化チタンを生成する方法であって、上記バーナーから射出されるガスの供給量から計算される前記火炎の断熱火炎温度が1500K以上であり、球状酸化チタン合成後に300℃/秒以上の冷却速度で酸化チタンの融点以下まで冷却し、捕集することを特徴とする球状酸化チタン粉末の製造方法が提供される。
また、本発明は、前記球状酸化チタン粉末の特性を利用し、これを含有した塗料組成物、樹脂組成物をも提供する。
上記本発明の球状酸化チタン粉末は、前記塗料組成物等において酸化チタンに要求される全ての特性を備えることにより、例えば、光触媒機能の高い塗料用組成物を得ることができる。
即ち、本発明の球状チタン粉末は、アナターゼ相の割合が50重量%以上の結晶性酸化チタンであることにより、それ自体の光触媒機能が高い上、メジアン径(D50)が10〜300nm、比表面積が100m/g以下であることにより、塗料を構成する溶媒に対して、極めて高い分散性を有しており、平均円形度が0.80以上であることにより、流動性にも優れる。また、塩素濃度が10ppmw以下であることにより、触媒機能の低下、樹脂の性能低下、接触する部材の腐食低減の効果をも発揮することができる。更に、本発明の球状酸化チタン粉末は、乾式で合成することにより適度な粒度分布を有しており、任意の割合で有機溶媒に分散させることができる。
また、上記の全ての特性を兼ね備えた球状酸化チタン粒子は、本発明によって初めて提供されるものであり、上記塗料組成物への用途以外の用途においても、その利用可能性を有する。
<球状酸化チタン粉末>
本発明の球状酸化チタン粉末は、アナターゼ相の割合が50重量%以上、好ましくは70重量%以上の結晶であることが必要である。上記アナターゼ相以外の結晶は、一般にルチル相である。即ち、上記粒子の結晶型としてルチル相の割合がアナターゼ相の割合よりも大きい場合には、光触媒性能を十分に高めることができない。
また、本発明の球状酸化チタン粉末のメジアン径は、画像解析法により求めた体積換算粒子径分布における1次粒子のメジアン径をいい、該メジアン径が10〜300nm、好ましくは50〜200nmの範囲にある。メジアン径が300nmを超える場合には、酸化チタンの性質として可視光散乱が大きくなり白色度が大きくなるため、用途が限られる。また粒子径が大きくなれば塗布層の膜厚を薄くすることが困難となる。一方、メジアン径が10nmより小さい場合には本製法では粒子相互の付着性が増加し、粗大な凝集粒子が生成するため塗料中に密に充填することが困難となる。また、メジアン径が10nm以上であることで、メジアン径が10nm未満の場合と比較して透明性は低下するものの、紫外線透過率が低下する。つまり、光触媒機能に必要な紫外線を十分に利用することができ、効率よく光触媒機能を発揮させることが可能である。なお本発明の球状酸化チタン粉末の粒子径が上記記載の粒子径範囲において、比表面積は、100m/g以下の範囲にあり、好ましくは10〜70m/gの範囲にある、さらに好ましくは10〜50m/gの範囲にある。
本発明の球状酸化チタン粉末の平均円形度は0.80以上であり、0.85以上であることが好ましい。即ち、平均円形度が0.80以上の球状粒子とすることにより、樹脂等に充填する際の粘度上昇が抑制され、高充填が出来、また、充填、成形における作業性を向上させることが可能である。
本発明の球状酸化チタン粉末は、塩素濃度が10ppmw以下であり、特に、5ppmw以下であることが好ましい。即ち、塩素濃度が10ppmw以下とすることにより、充填する樹脂、或いは、該樹脂が接触する部材の耐久性の低下を防止することができる。上記塩素の存在量の低減は、後述する原料として塩素を含有しないものを使用することにより達成することができる。
また、本発明の球状酸化チタン粉末は、後述する火炎法によって得られることより、適度に広い粒度分布を有している。因みに、画像解析法により得られた1次粒子の体積換算粒子径分布において、下記ロジン− ラムラー式で表される粒度分布の勾配nが1以上3未満の範囲、好ましくは、2〜2.9の範囲にある。
R(Dp)=100exp(−b・Dp
(但し、式中R(Dp)は最大粒子径から粒子径Dpまでの累積体積%、Dpは粒子径、b及びnは定数である。)
ここで、ロジン− ラムラー式で表される粒度分布の勾配nは、ロジン− ラムラー線図の最大粒子径から粒子径Dpまでの累積体積%が少なくとも15体積%と85体積%の範囲にある2点を結んだ直線で代表される勾配のことを言い、nの値が大きいと粒度分布がシャープであることを表している。また体積換算を用いたのは、代表的な用途が塗料であり、粒子の体積が塗料の粘度に影響を及ぼすことを考慮したためである。
本発明の乾式球状酸化チタン粉末において、nが1以上3未満であることが特徴であり、通常の火炎法により得られる物と比較してその粒度分布は明らかに広く、塗料用途において、溶媒への分散性が優れている。即ち、nが3よりも大きい場合には粒度分布がシャープとなり、酸化チタンを塗料中に多量分散させた際に、塗料の粘性が向上し易くなる。
本発明の球状酸化チタン粉末は、カーボン濃度が0.1質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以下であることがより好ましい。即ち、カーボン濃度が0.1質量%を超える場合、粒子の表面に原料由来のカーボン化合物もしくはカーボンが存在し、樹脂に充填するための表面処理の妨げになること、更に、樹脂に充填した際の透明性を低下させる原因となる。
また、本発明の球状酸化チタン粉末は、細孔容積が0.2cm/g以下であることが好ましく、0.15cm/g以下であることがより好ましく、0.1cm/g以下であることがさらに好ましい。上記細孔容積は、酸化チタン粒子内に形成される孔による特性であり、この細孔容積が0.2cm/gを超える場合、細孔中にカーボンが残留し易くなる。また、前記細孔容積が大きければ、粒子の表面に細孔が多く存在することになり、表面処理時に粒子の全面を処理することが困難となる為、粒子全体の濡れ性を低下させることになる。結果として酸化チタン粉末の分散性が低下することとなる為、好ましくない。
<球状酸化チタン粉末の製造>
本発明の球状酸化チタン粉末の製造方法は特に制限されないが、以下の方法が好適に採用される。
即ち、チタニウムアルコキシド、酸素、及び水素を含むガスをバーナーに供給して火炎を形成し、該火炎中で酸化チタンを生成する方法であって、上記バーナーから射出されるガスの供給量から計算される前記火炎の断熱火炎温度が1500K以上であり、酸化チタン合成後に300℃/秒以上の冷却速度で酸化チタンの融点以下まで冷却し、捕集することを特徴とする球状酸化チタン粉末の製造方法である。
上記製造方法において、チタン化合物よりなる原料をガス状で混合した状態で火炎中に供給して燃焼せしめる方法が挙げられる。
上記製造方法において、火炎法を採用することによって、球状とすること、結晶型を制御すること、更に、粒度分布を適度に広くすることが可能となり、上記火炎の断熱火炎温度を制御することで、得られる球状酸化チタン粉末のメジアン径を10〜300nmの範囲に調整可能である。その際、バーナーの中心管から供給されるガス中のチタニウムアルコキシドの濃度を0.6vol%以上とすることは、上記断熱火炎温度の制御と協働してメジアン径の制御に有効である。
また、原料のチタニウムアルコキシドをガス状で混合した状態で火炎中に供給して燃焼せしめることにより、均一燃焼が達成されるため、得られる球状酸化チタン粉末のカーボン濃度が0.1質量%以下とすることが可能であり、好ましい。
原料として使用されるチタニウムアルコキシドは、原料をガス状で使用するため、常温でガス状のもの、或いは、常温で液体であっても沸点が低い、具体的には、300℃以下のものが好適に使用される。例えば、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−s−ブトキシチタン、テトラ−t−ブトキシチタンなどの有機チタン化合物を原料チタニウムアルコキシドとして使用することができる。
特に、上記チタニウムアルコキシドとしてチタニウムテトライソプロポキシド等のアルコキシチタン化合物を使用することにより塩素等の不純物が著しく低減されたより高純度の球状酸化チタン粉末を得ることが可能であるため好ましい。
上記チタニウムアルコキシドはガス状の状態でバーナーに供給されるが、キャリアガスは200℃以上に予熱されていることが好ましい。また上記チタニウムアルコキシドを蒸発させる気化器の設定温度はチタニウムアルコキシドの沸点よりも高い必要があるが、沸点+80℃以下で気化を行うことが好ましく、沸点+50℃以下がさらに好ましい。気化器の設定温度を沸点+80℃以上とすると、配管内でチタニウムアルコキシドが重合し、固形物が析出し火炎が不安定となる原因となる為に好ましくない。上記の温度範囲で原料をガス化することにより、原料の供給量が制御可能となり、バーナーの中心管から供給されるガス中のチタニウムアルコキシドの濃度が0.6vol%以上とすることができる。チタニウムアルコキシドの濃度が0.6vol%以下の場合には原料濃度が著しく低い為、得られる球状酸化チタン粉末のメジアン径を10〜300nmの範囲に調整し、また、細孔容積が0.2cm/g以下とすることが難しい為、好ましくない。
本発明の製造方法は、バーナーノズルから射出されるガスの供給量から計算される断熱火炎温度が1500K以上とすることを特徴の一つとする。上記ガス状のチタニウムアルコキシドの火炎中での加水分解反応と酸化分解反応において、燃焼火炎の断熱火炎温度が高いほど急冷効果によりアナターゼ相がリッチであり、球状の酸化チタン粉末が得られる。即ち、燃焼火炎の温度を1500K以上とすることにより、本発明の球状酸化チタン粉末をより確実に得ることができるために必要であり、1800K以上であることがより好ましい。
また、上記断熱火炎温度を採用することにより、平均円形度が0.80以上を達成でき、更に、球状酸化チタン粉末同士の化学結合で形成された融着大粒子・粗大粒子や分散不可能であるほど物理的に強固に凝集した大粒子・粗大粒子の生成を防止することも出来る。
尚、前記断熱火炎温度は、中心管と中心管の外側にある環状管から形成されるバーナーノズルから射出される全てのガスの供給量から計算される温度である。上記生成熱ΔH(J/mol)、物質の比熱に関しては、“JANAF Thermochemiical Table SECOND Edition”,堀越研究所(1975)もしくはNIST Chemistry WebBOOK等のデータベースから得ることが可能である。なお、断熱火炎温度の計算で必要となる物質の比熱に関しては、その表式として、2000Kを境界にして、2000K未満、2000K以上それぞれの範囲での値を最小2乗法でフィッティングした温度の6次多項式を用いる。
前記本発明の球状酸化チタン粉末の製造方法において、ガス状のチタニウムアルコキシドによる火炎は、多重管バーナーを用いて形成することが好ましい。多重管バーナーは、中心管および中心管から同心円状に広がる複数の環状管より構成されることが好ましい。例えば、中心管および2本の環状管から構成される3重管バーナーが挙げられる。また、火炎については可燃性ガスと支燃性ガスをそれぞれ別のノズルから供給する拡散火炎と、可燃性ガスと支燃性ガスをあらかじめ混合した後にノズルへ供給する予混合火炎のいずれでも良いが、未燃焼によるカーボン濃度を低減させること、かつ火炎の温度分布を可能な限り均質にするために予混合火炎を用いることが好ましい。予混合ガスを使用して火炎を形成する場合には、火炎温度の調整は火炎の逆火、吹き消えの虞がない範囲で実施する必要がある。このため、中心管のガス流速は、10〜200Nm/sの範囲が好ましく、20〜180Nm/sの範囲であることがより好ましい。なお、流速の単位であるNm/sは、温度273K、大気圧で換算した場合の流速である。
本発明の製造方法において、バーナーノズルから火炎中へ供給されるガス中の酸素量の合計量が、原料と原料以外の可燃性ガスの合計量に対して等量以上3倍以下となるように、酸素の供給量を調整することが好ましい。前記酸素の供給量にはバーナーノズルから供給される空気中の酸素も含まれるが、バーナーノズル以外の箇所から供給する冷却空気は含まれない。アナターゼ相を50重量%以上含む球状酸化チタン粉末を得る為には火炎中の高温領域から融液を冷却する必要があり、バーナーノズルから火炎中へ供給されるガス中の酸素量が、原料と原料以外の可燃性ガスの合計量に対して等量以上3倍以下とすることにより、本発明の球状酸化チタン粉末を効果的に得ることができる。即ち、酸素の供給量が上記範囲より大きい場合には、酸素過剰により反応ゾーンが狭くなり、粒度分布がシャープになるため好ましくない。一方、酸素の供給量を前記範囲より小さくした場合には、酸素不足により周囲の酸素を取り込みながら燃焼する為、粒子が生成する反応ゾーンが広くなり、冷却効果が小さくなる影響でアナターゼ相の割合が低下するため好ましくない。
本発明の製造方法において、原料のチタニウムアルコキシドはそれぞれガス状で、且つ、混合された状態で、酸素と可燃性ガスにより形成される火炎中に供給されて、燃焼せしめられ、球状酸化チタン粉末が生成される。
それ故、上記可燃性ガスは、気体状のチタニウムアルコキシドの酸化反応に要する当量以上の量を混合することが必要であり、この際、酸素等の支燃性ガスを混合しても良く、さらには窒素などの不活性ガスを混合しても良い。
前記可燃性ガスは、水素、又はメタン、プロパン、ブタン等の炭化水素ガスのいずれでもよいが、生成した球状酸化チタン粉末へのカーボン濃度低減のため、また環境負荷の観点から水素を用いることが好ましい。
前記球状酸化チタン粉末の製造方法は、以下の条件を満足することがより好ましい。
即ち、本発明ではチタニウムアルコキシドよりなる原料をガス状で混合して火炎中に供給するに際し、上記混合をより確実に且つ均一に行うため、原料が沸点以上に加熱されてガス状態となったチタニウムアルコキシドであることが好ましく、原料であるチタニウムアルコキシドをその沸点以上の温度に維持された予混合室において他の原料と混合する工程を含むことが好ましい。また、上記原料と共に、その他原料と同時に供給するガスも混合しておくことはより好ましい。
上記予混合室としては、原料の沸点以上の温度に維持が可能で、ガスの混合ができる機能を有していれば、特に制限なく使用される。最も好適なのは、原料配管の途中に、例えば、スタティックミキサー、衝突型混合機などのような静的混合機を設ける態様である。上記混合機の外壁には、必要に応じてヒーターが設けられる。
上記のようにガス状で混合された原料は、前記多重管バーナーの中心管に供給される。また、中心管の外側にある環状管には、燃焼補助火炎形成のため水素や炭化水素などの可燃性ガスを導入する。このとき、窒素などの不活性ガス、および/または酸素などの支燃性ガスを混合してもよい。
多重管バーナーは、最も外側に最外環状管を設け、火炎冷却および火炎燃焼安定化のため酸素などの支燃性ガスを導入することが好ましい。このとき、窒素などの不活性ガスを混合しても良い。
本発明の球状酸化チタン粉末は火炎中および火炎近傍で生成・成長・凝集させることで得られるが、その回収は金属フィルター、セラミックフィルター、バッグフィルター等によるフィルター分離やサイクロン等による遠心分離で燃焼ガスと分離させて、回収することでなされる。
本発明の製造方法において、前記火炎中で生成した球状酸化チタン粉末は300℃/秒以上の冷却速度で酸化チタンの融点以下まで冷却し、捕集することが必要であり、特に、400℃/秒以上の冷却速度とすることが好ましい。即ち、前記断熱火炎温度を工業的に採用しようとすれば、上記冷却速度が300℃/秒未満であると、捕集までに十分冷却されず、粒子形を球状とすることが困難となる。また、捕集時に酸化チタン粒子同志の融着も起こり易くなり、粗大粒子の発生をも招く。
尚、上記冷却速度は断熱火炎温度と捕集箇所で実測されたガス温度の差を、バーナーノズルから捕集箇所までの距離と流速から算出される到達時間で割り、算出した値である。
前記冷却は、冷却用ガスを配管内に供給して行うことが好ましく、かかる冷却用ガスとしては、空気、窒素や二酸化炭素等の不活性ガス、水蒸気等が特に制限無く用いることができる。冷却用ガスの温度は常温でも、予備冷却されていても構わない。また、冷却用ガス中に水分やドライアイスを粉砕した固形物を含んでいても構わない。 回収後の球状酸化チタン粉末は表面に付着した水分を熱処理により除去しても構わない。
本発明の球状酸化チタン粉末は乾式で合成することにより、単粒子性の高い粉末の状態で扱うことができるため、任意の割合で任意の溶媒に含有させることができる。これに対して、ゾル−ゲル法などの湿式法によりで合成されたスラリーやゾルでは溶媒を含むため、酸化チタンの含有量を高めることが困難となる。また湿式法で合成された酸化チタン粉末を乾燥して使用することは、乾燥時に凝集し易く、粗大粒子の発生源となるため、好ましくない。本発明の球状酸化チタン粉末は乾燥粉として合成されるため、粗大粒子が発生し難く、塗料とした際に塗工性が向上する。
また本発明の球状酸化チタン粉末は湿式で合成された酸化チタンを含む塗料に酸化チタン濃度調整剤として添加することも可能である。本発明の球状酸化チタン粉末は球状であり粘度を上昇させにくいため、効果を発揮することが可能である。
本発明の球状酸化チタン粉末の粒度分布は、粉同志の混ぜ物では実現が困難な、上記ロジン− ラムラー式で表される粒度分布の勾配nが1以上3未満という比較的広い粒度分布を有しているため、本発明の製造方法によって初めて提供することが可能である。
上記のようにして得られる本発明の球状酸化チタン粉末は、塗料組成物、樹脂充填剤として好適に使用される。例えば、この球状酸化チタン粉末が充填材として配合された塗料組成物は、光触媒機能を有する外装材としての用途に好適である。
前記塗料組成物の溶媒としては、球状酸化チタン粉末が均一かつ安定に溶解または分散可能な溶媒を用いることが好ましい。溶媒としては水、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、ノルマルヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、石油類等のなどの一般的な溶媒が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上混合して使用しても構わない。
本発明の球状酸化チタン粉末含有分散液には、分散液の安定化、あるいは高分子膜への塗工性の向上のために、界面活性剤等の分散剤、増粘剤、湿潤剤、消泡剤、酸やアルカリを含むpH調製剤、等の各種添加剤を加えてもよい。
また、本発明の球状酸化チタン粉末は、そのまま樹脂に配合し或いは溶媒に分散することもできるが、表面処理剤により表面処理して使用に供することもできる。
本発明の球状酸化チタン粉末は、その用途に応じて、シリル化剤、シリコーンオイル、シロキサン類、金属アルコキシド、脂肪酸及びその金属塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の処理剤によって表面処理されていてもよい。
具体的なシリル化剤として、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、i−ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、i−ブチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン、へキサプロピルジシラザン、ヘキサブチルジシラザン、ヘキサペンチルジシラザン、ヘキサヘキシルジシラザン、ヘキサシクロヘキシルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、ジビニルテトラメチルジシラザン、ジメチルテトラビニルジシラザン等のシラザン類等が挙げられる。
また、シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、脂肪酸変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコキシ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、末端反応性シリコーンオイル等が挙げられる。
また、シロキサン類としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン等が挙げられる。
また、金属アルコキシドとしては、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリ−i−プロポキシアルミニウム、トリ−n−ブトキシアルミニウム、トリ−s−ブトキシアルミニウム、トリ−t−ブトキシアルミニウム、モノ−s−ブトキシジ−i−プロピルアルミニウム、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−s−ブトキシチタン、テトラ−t−ブトキシチタン、テトラエトキシジルコニウム、テトラ−i−プロポキシジルコニウム、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、ジメトキシ錫、ジエトキシ錫、ジ−n−ブトキシ錫、テトラエトキシ錫、テトラ−i−プロポキシ錫、テトラ−n−ブトキシ錫、ジエトキシ亜鉛、マグネシウムメトキシド、マグネシウムエトキシド、マグネシウムイソプロポキシド等が挙げられる。
また、更に脂肪酸及びその金属塩を具体的に例示すれば、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ドデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ペンタデシル酸、ステアリン酸、ヘプタデシル酸、アラキン酸、モンタン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸などの長鎖脂肪酸が挙げられ、その金属塩としては亜鉛、鉄、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、ナトリウム、リチウム等の金属との塩が挙げられる。
上記表面処理剤を使用した表面処理の方法は公知の方法が何ら制限無く使用できる。例えば、球状酸化チタン粉末を攪拌下に表面処理剤を噴霧するか、蒸気で接触させる方法が一般的である。
本発明の球状酸化チタン粉末は、分散性が良く塗料への含有量に調整できるため、前述した外装材等の建材としての用途に好適に使用されるが、かかる用途に限定されるものでなく、単独で或いは他の粒子と組み合わせて、その他の用途に使用することも可能である。例えば、半導体用途、焼結体材料、CMP等の研磨材、光反応性接着剤等の接着剤、化粧品、精密樹脂成形品充填材、歯科材用充填材、LED用シール剤、インクジェット紙コ−ト層、電子写真用感光体保護層、電子写真用感光体クリ−ニング材、各種の樹脂フィルム、塗料艶消し剤等の塗料添加剤、アンチブロッキング剤、ハードコート剤、反射用成型体の原材料、金属・セラミックス等への被膜材、反射防止膜用屈折率調整剤、トナー、チタン酸バリウム等の複合チタン酸化合物原料等の用途にも好適に使用することができる。
本発明を具体的に説明するために実施例及び比較例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例及び比較例における各種の物性測定等は以下の方法による。
(1)XRD測定:
結晶構造はX線回折装置(株式会社リガク製smartLab)を用いて測定した。測定条件はスキャン範囲2θ=10〜90°、スキャンスピ−ド1°/min、ステップ幅0.02°とした。
アナターゼ割合の算出方法は、アナターゼ型結晶酸化チタンの最強干渉線(面指数101)の強度(I)と、ルチル型結晶酸化チタンの最強干渉線(面指数110)の強度(I)と、を求め、次式により算出して求められる。
アナターゼ割合(重量%)=100/(1+1.265×I/I
式中、最強干渉線I及びIは、X線回折スペクトルの該当回折線におけるベースラインから突出した部分の面積をいい、その算出方法は公知の方法で行えばよい。
(2)BET比表面積測定:
BET比表面積は日本ベル製のBELSORP−maxにより窒素吸着BET法により測定した。
(3)画像解析法により求めるメジアン径測定:
電界放射型走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製S−5500)で粒子5000個を2次電子像で任意に撮影し、撮影した画像を画像解析装置(旭エンジニアリング社製IP−1000C)で粒子径解析を行い、体積平均により求めた。
(4)ロジン− ラムラー線図による勾配n
上記(3)によって得られた1次粒子の体積換算粒子径分布を元に、ロジン− ラムラー線図上に横軸に粒子径、縦軸に累積体積分布をとりプロットした。累積体積分布が15体積%から85体積%の範囲で最小二乗法により直線を求め、その直線の勾配からn値を求めた。
(5)平均円形度測定:
得られた球状酸化チタン粒子1000個の円形度を画像解析装置(旭エンジニアリング社製IP−1000C)により算出し、平均値を算出した。
(6)塩素濃度測定
超純水50gに球状酸化チタン5gを添加し、テフロン(登録商標)分解容器を用いて120℃で24時間加熱した。その後、遠心分離器を用いて酸化チタン固形分を分離し、イオンクロマト測定試料を得た。なお、超純水のみで前記操作を行い、ブランク試料を得た。得られた試料の塩素量をイオンクロマトグラフィー測定装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製Dionex ICS−2100)を用い、測定した。
(7)カーボン濃度測定:
NC量測定装置(住化分析センター製スミグラフNC−22F)を用い、カーボン濃度を測定した。なお、測定する球状酸化チタン試料は50〜100mgとした。
実施例1〜5、比較例1、2
中心管供給ガスとして水素、窒素、酸素と、原料となるチタニウムテトライソプロポキシドとを250℃に加熱した予混合室において混合し、気体状で均一に混合した。前記中心管供給ガスを同心円3重管バーナーで燃焼させ球状酸化チタン粉末を製造した。中心管の外側にある第1環状管には、水素と窒素を導入し、最外環状管には空気と窒素を導入した。合成した球状酸化チタン粉末はバッグフィルターで回収した。比較例1、2では火炎温度を1500K以下としとした。上記記載の製造方法で得られた球状酸化チタン粉末に対して物性測定を行った。表1に実施例1〜5の製造条件と球状酸化チタン粉末特性を、表2に比較例1、2の製造条件と球状酸化チタン粉末特性をそれぞれ示す。尚、表2に記載する各ガスの供給量は中心管〜最外環状管までのガスを合計した流量である。断熱火炎温度においても中心管〜最外環状管までのガスを考慮して算出した。チタニウムテトライソプロポキシドの標準生成熱はNIST Chemistry WebBookで得られる値を用いた。
実施例1〜5で合成した球状酸化チタン粉末は粉末特性が所望の範囲に該当する粉が得られた。比較例1、2では火炎温度が低い為にルチル相が多く生成し、また円形度が低下した。
Figure 0006456786
Figure 0006456786
<光触媒性能評価>
実施例1〜3と比較例3、4で得られた球状酸化チタン粉末について、光触媒性能評価を行った。光触媒性能評価はJIS R 1703−2(2007)ファインセラミックス−光触媒材料のセルフクリーニング性能試験方法‐第2部:湿式分解性能に準じて行った。球状酸化チタン粉末はイオン交換水とバインダーとしてシリコーン樹脂30vol%とをホモジナイザーで分散させて塗工液を作製した。全ての塗工液の粘度が同じになるように球状酸化チタン粉末の含有量を調整した。塗工液の粘度測定はレオメーター(AR2000EX、TA Instruments社製 商品名)を用い、測定温度は25℃、せん断速度は10s−1とした。塗工液は厚さ2mmのガラス板上にバーコーターで塗布し、120℃で乾燥させた。得られた塗膜の上に円筒状の試験セルを置き、筒内に0.01mmol/Lのメチレンブルー水溶液35mlを添加した。試験セル上にカバーガラスを載せ、紫外光を100分間照射して、経時のメチレンブルー濃度を波長664nmにおける吸光度測定により定量した。吸光度の変化に基づいて、紫外光照射によるメチレンブルー分解活性指数(単位:nmol/L/min)を算出した。塗工液中の球状酸化チタン粉末含有量とメチレンブルー分解活性指数の測定結果を表3に示す
Figure 0006456786
実施例1〜3で得られた球状酸化チタン粉末についてはいずれも高い光触媒性能を示したが、比較例1で得られた球状酸化チタン粉末ではルチル率が高い為、光触媒性能が低下した。
以上説明したように、本発明の球状酸化チタン粉末は、アナターゼ相が50%以上で光触媒性能が高く、球状でありまた細孔容積が0.2cm/g以下であることで塗工液の粘度が上昇しにくい為、光触媒としての用途に有効である。また塩素濃度が10ppmw以下であることで基材に対する耐久性が向上する。

Claims (9)

  1. 下記特性を満足することを特徴とする、球状酸化チタン粉末。
    (1)アナターゼ相の割合が50重量%以上の結晶であること
    (2)メジアン径(D50)が50〜300nmであること
    (3)比表面積が100m/g以下であること
    (4)平均円形度が0.80以上であること
    (5)塩素濃度が10ppmw以下であること
    (6)画像解析法により得られた1次粒子の体積換算粒子径分布において、下記ロジン−ラムラー式で表される粒度分布の勾配nが1以上3未満の範囲にあること
    R(Dp)=100exp(−b・Dp
    (但し、式中R(Dp)は最大粒子径から粒子径Dpまでの累積体積%、Dpは粒子径、b及びnは定数である。)
  2. カーボン濃度が0.1質量%以下である請求項1記載の球状酸化チタン粉末。
  3. 細孔容積が0.2cm/g以下である請求項1記載の球状酸化チタン粉末。
  4. チタニウムアルコキシド、酸素、及び水素を含むガスをバーナーに供給して火炎を形成し、該火炎中で酸化チタンを生成する方法であって、上記バーナーから射出されるガスの供給量から計算される前記火炎の断熱火炎温度が1500K以上であり、酸化チタン合成後に300℃/秒以上の冷却速度で酸化チタンの融点以下まで冷却し、捕集することを特徴とする球状酸化チタン粉末の製造方法。
  5. 上記バーナーの中心管から供給されるガス中のチタニウムアルコキシドの濃度が0.6vol%以上である請求項4記載の球状酸化チタン粉末の製造方法。
  6. チタニウムアルコキシドをキャリアガスと共に供給する請求項4又は5に記載の球状酸化チタン粉末の製造方法。
  7. 前記チタニウムアルコキシドを火炎中に供給する前に、チタニウムアルコキシドとキャリアガスとを、チタニウムアルコキサイドの沸点以上の温度に維持された、ガス混合機能を有する予混合室において混合する、請求項4〜6のいずれか一項に記載の球状酸化チタン粉末の製造方法。
  8. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の球状酸化チタン粉末を分散した状態で含有した塗料組成物。
  9. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の球状酸化チタン粉末を分散した状態で含有した、樹脂組成物。
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