JP3933777B2 - 基材の表面改質方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、金属、セラミックス、プラスチックスなどの各種基材(ガラスを除く。以下同じ)の表面を改質する方法に関し、より詳しくは、基材の表面に、撥水性、撥油性、低流体抵抗性、防錆性、防汚性、反射防止性、低摩擦抵抗性(潤滑性)などの機能性を付与し基材表面への密着性、耐候性および耐久性にも優れたコーティング層を形成する基材の表面改質方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、フッ素系樹脂やシリコーン系樹脂を基材の表面にコーティングすることにより、基材に対して撥水性を付与することが行われている。例えば、平滑な板材にそれらのコーティングを施した場合、対水接触角100°〜110°程度の撥水性が得られている。
【0003】
また、より複雑な方法として、例えば特開平4−285199号公報に開示されているように、めっき液中にポリテトラフルオロエチレンオリゴマー粒子が分散する複合めっき液により被処理物をめっきして、ポリテトラフルオロエチレンオリゴマー粒子が共析分散した複合めっき被膜を被処理物上に形成する方法や、特開平8−246163号公報に開示されているように、表面に微細な凹凸構造を有し、対水接触角が30°以下となる親水性金属表面にシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤などの疎水性物質をコーティングすることにより金属表面に撥水性を付与する方法、また、例えば特開平6−122838号公報に開示されているように、末端までフッ素化された低分子量の四フッ化エチレン粉末(フッ化物微粒子)をアクリルシリコン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂などの樹脂バインダ中に混入分散させた撥水性塗料を塗装することにより基材に撥水性を付与する方法などが提案されている。これらの方法によると、対水接触角140°以上の撥水性が得られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記したようにフッ素系樹脂やシリコーン系樹脂を基材の表面にコーティングして基材に対し撥水性を付与する従来の表面改質方法では、基材に対して十分に満足し得る程度の撥水性を付与することが困難であった。また、特開平4−285199号公報や特開平8−246163号公報、特開平6−122838号公報に開示されたそれぞれの表面改質方法は、工程が複雑であり、また、フッ素系粒子をコーティング剤に用いると、製品コストが高くなるという問題点があった。
【0005】
この発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、各種の基材の表面に対して十分に満足し得る程度の高い撥水性を付与することができて、安価かつ簡便に実施可能であり、また同様に、安価かつ簡便に、各種の基材の表面に対して高い撥油性、さらには撥水性および撥油性の応用として高い低流体抵抗性、防錆性、防汚性、反射防止性、低摩擦抵抗性(潤滑性)などを付与することができる基材の表面改質方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、各種基材の表面を改質する方法において、金属アルコキシドの重縮合物、金属酸化物微粒子、および、フルオロアルキル基を有するシラン化合物を含む処理液を、金属材料、セラミックス材料、プラスチックス材料、木材、石材、皮革、合成皮革、ファイバー、テクスチャー、不織布もしくは紙材で形成された基材の表面または塗装面に塗布し、乾燥させ、100℃〜350℃の温度で加熱して、フルオロアルキル基が露出した微細な凹凸構造を表面に有する多孔質の金属酸化物層を基材の表面に形成することを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の方法において、金属アルコキシドの重縮合物の出発原料である金属アルコキシドとして、テトラアルコキシシラン、テトラアルコキシチタン、テトラアルコキシジルコニウム、トリアルコキシアルミニウム、トリアルコキシイットリウムおよびペンタアルコキシタンタルからなる群より選ばれた1種もしくは2種以上の化合物を使用することを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2記載の方法において、金属酸化物微粒子として、酸化珪素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウムおよび酸化イットリウムからなる群より選ばれた1種もしくは2種以上の金属酸化物からなる微粒子を使用することを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の方法において、金属酸化物微粒子の直径を2nm〜100nmの範囲内とすることを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の方法において、処理液における金属アルコキシドの重縮合物と金属酸化物微粒子との混合比率を、金属アルコキシドの重縮合物の酸化物換算重量と金属酸化物微粒子の重量との比で1:5〜5:1の範囲内とすることを特徴とする。
【0011】
請求項6に係る発明は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の方法において、フルオロアルキル基を有するシラン化合物として、化1に示した一般式(式中、−X1、−X2、−X3:アルコキシ基、Clまたはアルキル基、n:整数)で表されるフルオロアルキルシランを用いることを特徴とする。
【0012】
【化1】
【0015】
請求項7に係る発明は、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の方法において、処理液におけるフルオロアルキル基を有するシラン化合物と金属アルコキシドの重縮合物および金属酸化物微粒子との混合比率を、フルオロアルキル基を有するシラン化合物の重量と金属アルコキシドの重縮合物の酸化物換算重量および金属酸化物微粒子の重量の合計重量との比で1:20〜1:1の範囲内とすることを特徴とする。
【0016】
請求項8に係る発明は、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の方法において、基材の表面に形成される金属酸化物層の厚さが0.01μm〜50μmの範囲内となるようにすることを特徴とする。
【0018】
請求項1ないし請求項8に係る各発明の基材の表面改質方法によると、撥水性を示すフルオロアルキル基が露出した微細な凹凸構造を表面に有し、表面に開口した多数の孔部を持つ多孔質の金属酸化物層が基材の表面に形成され、金属酸化物層は、金属酸化物のマトリックスに金属酸化物の微粒子の凝集体を固定化して形成されている。ここで、フラクタル的な凹凸構造を有する物体の表面は、それが撥水性物質(対水接触角>90°)によって形成されているときには超撥水性を示すことが知られている(例えば、「高分子」,vol.45,p.566(1996)参照)。したがって、この発明に係る方法によって基材の表面に形成された金属酸化物層は、極めて高い撥水性(超撥水性)を示すことになる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の好適な実施形態について説明する。
この発明に係る基材の表面改質方法は、金属アルコキシドの重縮合物、金属酸化物微粒子およびフルオロアルキル基を有するシラン化合物を混合し分散させることにより調製した処理液を、基材の表面または塗装面に塗布し、乾燥させ、その後に塗布層を100℃〜350℃の温度で加熱することにより、フルオロアルキル基が露出した微細な凹凸構造を表面に有し、表面に開口した多数の孔部を持つ多孔質の金属酸化物層を基材の表面に形成することを特徴とする。図1に、この発明に係る方法により形成されるコーティング層の断面構造を拡大して模式的に示す。図1に示すように、基材1の表面に形成された金属酸化物層2は、表面に開口した多数の孔部3を持つ多孔質の内部構造を有し、また、金属酸化物層2の表面は、撥水性を示すフルオロアルキル基(図1では、その図示を省略している)が露出した微細な凹凸構造4を有している。また、金属酸化物層2は、金属酸化物微粒子5の凝集体を含有しており、金属酸化物微粒子5の凝集体は、金属酸化物のマトリックス6で結合されて固定化されている。なお、図1には、金属酸化物層2の一部だけに金属酸化物微粒子5の凝集体が描かれているが、金属酸化物微粒子5の凝集体は、金属酸化物層2の全体に分布している。
【0020】
基材1の表面に塗布される処理液において、金属アルコキシドの重縮合物と金属酸化物微粒子との混合比率は、金属アルコキシドの重縮合物の酸化物換算重量と金属酸化物微粒子の重量との比で1:5〜5:1の範囲内とすることが好ましい。
【0021】
また、金属アルコキシドの重縮合物の出発原料である金属アルコキシドとしては、例えば、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラターシャリーブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン、テトラエトキシチタン、テトラメトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラターシャリーブトキシチタン等のテトラアルコキシチタン、テトラエトキシジルコニウム、テトラメトキシジルコニウム、テトラプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム等のテトラアルコキシジルコニウム、トリエトキシアルミニウム、トリメトキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリブトキシアルミニウム等のトリアルコキシアルミニウム、ブトキシイットリウム等のトリアルコキシイットリウム、および、ペンタプロポキシタンタル等のペンタアルコキシタンタルのうちから選ばれる1種の化合物が使用され、あるいは、2種以上の化合物が組み合わされて使用される。
【0022】
金属アルコキシドの重縮合物の出発原料としては、一般に、金属アルコキシドのほか、加水分解のための水、均質溶液を調製するためのメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類やエチレングリコール、エチレンオキシド、トリエタノールアミン、キシレン等の有機溶媒、触媒作用を持つ塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、フッ酸等の酸またはアンモニア等のアルカリ、および、重縮合物を安定化(重合停止)させるためのアセチルアセトン、アセト酢酸エチル等の添加物が用いられ、それらが金属アルコキシドと混合され、金属アルコキシドを含む混合溶液の加水分解および重合反応により、金属アルコキシドの重縮合物がゾル溶液として得られる。
【0023】
金属酸化物微粒子5としては、例えば酸化珪素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化イットリウムおよび酸化タンタルのうちからから選ばれる1種の金属酸化物の微粒子あるいは2種以上の金属酸化物の微粒子が組み合わされて使用される。金属酸化物微粒子5の直径は、2nm以上で100nm以下であることが好ましい。直径2nm以下の金属酸化物微粒子では、金属酸化物層2が十分に多孔質構造にならず、一方、直径100nm以上の金属酸化物微粒子では、多孔質構造にはなるが、膜(金属酸化物層2)の強度が小さくなり、剥離しやすくなる。
【0024】
基材1の表面に塗布される処理液において、フルオロアルキル基を有するシラン化合物と金属アルコキシドの重縮合物および金属酸化物微粒子との混合比率は、フルオロアルキル基を有するシラン化合物の重量と金属アルコキシドの重縮合物の酸化物換算重量および金属酸化物微粒子の重量の合計重量との比で1:20〜1:1の範囲内とすることが好ましい。
【0025】
フルオロアルキル基を有するシラン化合物としては、例えばヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン等のヘプタデカフルオロデシルトリアルコキシシランが用いられ、そのほか、化1に示した一般式(式中、−X1、−X2、−X3:アルコキシ基、Clまたはアルキル基、n:整数)で表されるフルオロアルキルシランが用いられる。X1、X2およびX3は、同じであってもそれぞれ異なっていてもよい。化1に示した一般式において、X1、X2およびX3がアルコキシ基であり、n=7のときが、ヘプタデカフルオロデシルトリアルコキシシランに相当する。また、化1に示したフルオロアルキルシランとはフルオロアルキル基のメチレンの位置が異なるシラン化合物や、アルコキシ基がフルオロアルキル基に代わりフルオロアルキル基を2個以上有するシラン化合物であってもよい。
【0026】
【化1】
【0029】
上記処理液は、金属アルコキシドの重縮合物、金属酸化物微粒子、および、フルオロアルキル基を有するシラン化合物を有機溶媒中で混合し分散させることにより調製される。均質溶液を調製するために、有機溶媒としてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類やエチレングリコール、エチレンオキシド、トリエタノールアミン、キシレンなどが使用される。混合分散方法としては、金属アルコキシドの重縮合物のゾル溶液、金属酸化物微粒子、および、フルオロアルキル基を有するシラン化合物を順次有機溶媒中へ投入した後、所定時間、例えばスターラ、マグネチックスターラ、ペイントシェーカー、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、サンドミル、3本ロール、ニーダーなどの混合分散用機器を使用して、混合溶液を混合し分散させる。また、金属アルコキシドの重縮合物のゾル溶液や金属酸化物微粒子、フルオロアルキル基を有するシラン化合物をそれぞれ有機溶媒中へ投入した時にも、所定時間だけ溶液を混合分散させることが好ましい。なお、有機溶媒中へ投入する順序は、変更しても差し支えない。
【0030】
基材1としては、金属、セラミックスおよびプラスチックスを始め、木材、石材、皮革、合成皮革、ファイバー、テクスチャー(織布)、不織布および紙、さらには塗装面にも適用可能である。この際、金属酸化物層2との密着性を向上させるために、シランカップリング剤、クロム系カップリング剤、有機チタン系カップリング剤などを下地処理として基材1の表面にコーティングするようにしてもよい。
【0031】
基材1表面への処理液の塗布方法としては、ディップコート、スピンコート、フローコート、スプレーコートなど、一般に実施されている各種の方法を利用することができる。また、処理液の塗布操作は、必要に応じて複数回行って、所望の厚さのコーティング層が得られるようにしてもよい。
【0032】
基材1の表面に塗布された処理液の乾燥・加熱は、100℃以上で350℃以下の温度で基材1を加熱して、基材1の表面に、フルオロアルキル基が露出した微細な凹凸構造を表面に有する多孔質の金属酸化物層2が形成されるようにすればよい。100℃以上の温度では、多孔質の金属酸化物層における三次元網目形成が進み、また、基板、例えば金属板との密着性の向上が認められる。一方、温度が350℃を超えると、フルオロアルキル基の飛散または分解が起こり、金属酸化物層2の表面の撥水性が低下することになる。
【0033】
この発明に係る表面改質方法により基材1の表面に形成されたコーティング層の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、図1に示した通り、表面に開口した多数の孔部3を持ち、微細な凹凸構造4を表面に有し、金属酸化物微粒子5の凝集体を含有した多孔質の金属酸化物層2が観察された。そして、金属酸化物層2の表面は超撥水性を示し、このため、表面には撥水性のフルオロアルキル基が露出していると推定される。
【0034】
基材1の表面に形成された金属酸化物層2の表面に付着した水は、撥水性のフルオロアルキル基を有し多数の孔部3が開口して微細な凹凸構造4を有する表面と、それにトラップされた空気とにより、蓮や里芋の葉の上の水滴のように、全く濡れ拡がらずに球形状の水滴となる。水と金属酸化物層2との接触角は大きく、金属酸化物層2上に滴下された水は、金属酸化物層2上に静止させることさえ困難であるほどの超撥水性の表面が得られた。
【0035】
乾燥・加熱の温度は、処理液に含まれる金属アルコキシドの重縮合物がさらに重縮合して、三次元の金属酸化物網目構造を形成する温度を適宜選択すればよい。この金属酸化物は、金属酸化物微粒子の凝集体のマトリックス(バインダ)となり、多孔質の金属酸化物層2を構成することになる。また、フルオロアルキル基を有するシラン化合物は、三次元の金属酸化物網目の形成に取り込まれ、有機−無機ハイブリッド化されると推定される。
【0036】
金属酸化物層2の厚さは、0.01μm以上で50μm以下であることが望ましく、0.05μm〜10μmであることがより好ましい。なぜならば、金属酸化物層2が薄過ぎると、表面の撥水性が不十分になりやすく、一方、厚過ぎると、金属酸化物層2が基材1から剥離しやすくなる。
【0037】
薄い金属酸化物層2は、処理液中の金属アルコキシドの重縮合物、金属酸化物微粒子、および、フルオロアルキル基を有するシラン化合物の総濃度を低くすることにより、基材1の表面に形成することが可能である。金属酸化物層2の厚さを上記した範囲内で薄くすることにより、金属酸化物層2に透明性を付与することも可能となる。一方、厚い金属酸化物層2は、処理液のコーティングを複数回繰り返して行うことにより、基材1の表面に形成することが可能である。
【0038】
また、処理液における金属アルコキシドの重縮合物と金属酸化物微粒子との混合比率は、金属アルコキシドの重縮合物の酸化物換算重量と金属酸化物微粒子の重量との比で1:5〜5:1であれば、得られる金属酸化物層2が、フルオロアルキル基が露出した微細な凹凸構造4を表面に有し表面に開口した多数の孔部3を持つ多孔質のものとなり、高い撥水性が得られる。また、前記混合比率であれば、金属酸化物層2と基材1との高い密着性も確保することができ、処理液を取扱いの容易な粘度に調製することができるため好ましく、さらには1:2〜2:1であることがより好ましい。
【0039】
金属アルコキシドの重縮合物としては、乾燥・加熱により金属酸化物を形成することができるものであればよく、金属アルコキシドの重縮合物に、金属酸化物微粒子、および、撥水性を示すフルオロアルキル基を有するシラン化合物を、それぞれ少なくとも1種以上混合した状態で、その混合溶液の塗布膜の乾燥・加熱処理を行うと、多孔質で撥水性の高いコーティング層を形成することができるのである。また、金属酸化物微粒子は、直径が2nm以上で100nm以下、さらには5nm〜50nmの範囲内であることが好ましく、この範囲内の粒径の金属酸化物微粒子であれば、処理液中における分散や粘度調整などに有効である。
【0040】
上記したように、この発明に係る表面改質方法によると、基材の表面に、フルオロアルキル基が露出した微細な凹凸構造を表面に有する多孔質の金属酸化物層を形成することができ、極めて高い撥水性を基材表面に付与することができる。また同様に、表面が高い撥油性を示す基材が得られる。さらに、撥水性および撥油性の応用として、高い低流体抵抗性、防錆性および防汚性をそれぞれ基材の表面に付与することも可能である。また、金属酸化物層は微細な凹凸構造を表面に有するため、高い反射防止性が得られる。さらに、微細な凹凸構造により物体との接触面積が小さくなり、また、フルオロアルキル基が潤滑性を有するため、低摩擦抵抗性(潤滑性)を基材に付与することも可能である。表1に、この発明に係る表面改質方法を適用することが可能である具体的製品例を示す。
【0041】
【表1】
【0042】
この発明に係る表面改質方法により形成されるコーティング層は、原料である金属アルコキシドの重縮合物、金属酸化物微粒子、フルオロアルキル基を有するシラン化合物および有機溶媒の選択や組合せ、混合比率、混合分散方法、処理液のコーティング条件、乾燥・加熱条件、下地処理などを適宜選ぶことにより、密着性、耐候性および耐久性に優れたものが得られる。
【0043】
【実施例】
次に、この発明のより具体的な実施例について、実験例により説明する。
基材としては、銅板、アルミニウム板および鋼板(以上、金属)、アルミナ板およびジルコニア板(以上、セラミックス)、ならびに、PETフィルムおよび塩ビ板(以上、プラスチックス)のほか、木材、御影石(石材)、皮革、合成皮革、テクスチャー、不織布、紙および塗装鋼板について検討した。
【0044】
基材の表面に塗布される処理液は、金属アルコキシドの重縮合物のゾル溶液、金属酸化物微粒子、および、フルオロアルキル基を有するシラン化合物を、順次エタノール、2−プロパノールなどの有機溶媒中に投入した後、超音波ホモジナイザーないしはマグネチックスターラを使用して、所定時間、例えば30分〜3時間だけ混合溶液を混合し分散させることにより調製した。また、金属アルコキシドの重縮合物のゾル溶液や金属酸化物微粒子、フルオロアルキル基を有するシラン化合物をそれぞれ有機溶媒中に投入した時にも、所定時間、例えば5分〜15分だけ混合分散させた。
【0045】
表2および表3に、基材の種類ならびに処理液の原料および各原料の重量比をまとめて示す。表2および表3中、Aは、金属アルコキシドの重縮合物の酸化物換算重量であり、BおよびCは、それぞれ金属酸化物微粒子の重量およびフルオロアルキル基を持つシラン化合物の重量である。また、表2および表3中に記載した原料、例えば「NSi−500」は、日本曹達(株)製アトロンNSi−500を示し、有機珪素化合物(シリコンアルコキシド)の重縮合物を二酸化珪素(SiO2)換算で5重量%含有するゾル溶液であり、それを含めて原料の具体的内容を表4にまとめて示す。
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
【表4】
【0049】
上記したようにして調製した処理液を基材の表面へディップコートないしはスピンコートし、処理液の塗布膜を乾燥・加熱することにより、基材表面にコーティング層(金属酸化物層)を形成した。表2および表3に、乾燥・加熱条件およびコーティング層の厚さもまとめて示す。
【0050】
表面にコーティング層が形成されたそれぞれの基材について、撥水性の尺度として、対水接触角を測定してその測定値の平均値を求め、また、撥油性、低流体抵抗性、防錆性、防汚性、反射防止性および低摩擦抵抗性(潤滑性)に関し、基材との定性的比較評価を行った。対水接触角は、マイクロシリンジを用いて蒸留水5μlを、コーティング層が形成された基材上にゆっくりと滴下させ、CCDカメラを備えた接触角測定装置を使用して測定した。また、諸特性関しては、次のようにして、基材と定性的な比較評価を行った。
【0051】
すなわち、撥油性に関しては、基材上およびコーティング層が形成された基材上にそれぞれサラダ油をゆっくりと滴下させ、目視により広がり具合を比較した。低流体抵抗性関しては、基材およびコーティング層が形成された基材のそれぞれ傾けた表面上に水を流下させ、目視により水の広がり具合を比較した。防錆性に関しては、基材およびコーティング層が形成された基材をそれぞれ水中に所定時間浸漬させた後、目視により基材の発錆具合を比較した。ただし、コーティング層が形成された基材の未コーティング部分は、エポキシ樹脂によりシールした。防汚性に関しては、基材およびコーティング層が形成された基材をそれぞれ屋外に所定時間放置した後、目視によりほこり等による汚れ具合を比較した。また、反射防止性に関しては、基材およびコーティング層が形成された基材のそれぞれの表面からの光の反射具合を斜め方向より目視することにより比較した。さらに、低摩擦抵抗性(潤滑性)に関しては、基材の表面同士およびコーティング層が形成された基材の表面同士をそれぞれ互いにすり合わせることにより滑り具合を比較した。
【0052】
表2および表3に、上記した実験条件と共に接触角の測定値および諸特性の定性的評価をまとめて示した。基材と比べて特性の改善が認められたものを良好と判定し、表2および表3中の定性的評価の欄に「○」印を付けた。
【0053】
実験の結果、この発明に係る表面改質方法により基材の表面にコーティング層(金属酸化物層)を形成すると、コーティング層が形成されていない基材の表面との比較において、対水接触角は、90°未満(親水性)から160°以上(超撥水性)へと大幅な向上が見られ、また、上述の諸特性にも改善が認められた。対水接触角が170°を超えると、滴下した水滴は、コーティング層上に静止させることさえ困難となる。
【0054】
なお、基材へのコーティング層の密着性は、加熱処理を100℃以上の温度で1時間行うことにより、より向上した。
【0055】
【発明の効果】
請求項1に係る発明の基材の表面改質方法によると、各種の基材の表面に対して十分に満足し得る程度の高い撥水性を付与することができ、この方法は、安価かつ簡便に実施することが可能であり、また同様に、安価かつ簡便に、各種の基材の表面に対して高い撥油性、さらには撥水性および撥油性の応用として高い低流体抵抗性、防錆性、防汚性、反射防止性、低摩擦抵抗性(潤滑性)などを付与することができる。
【0056】
請求項2ないし請求項8に係る各発明の方法によると、請求項1に係る発明が好適に実施されて、上記効果が確実に得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る基材の表面改質方法により基材の表面に形成された金属酸化物層の断面構造を示す拡大模式図である。
【符号の説明】
1 基材
2 コーティング層(金属酸化物層)
3 孔部
4 コーティング層(金属酸化物層)の表面の微細な凹凸構造
5 金属酸化物微粒子
6 金属酸化物のマトリックス
Claims (8)
- 金属アルコキシドの重縮合物、金属酸化物微粒子、および、フルオロアルキル基を有するシラン化合物を含む処理液を、金属材料、セラミックス材料、プラスチックス材料、木材、石材、皮革、合成皮革、ファイバー、テクスチャー、不織布もしくは紙材で形成された基材の表面または塗装面に塗布し、乾燥させ、100℃〜350℃の温度で加熱して、フルオロアルキル基が露出した微細な凹凸構造を表面に有する多孔質の金属酸化物層を基材の表面に形成することを特徴とする、基材の表面改質方法。
- 金属アルコキシドの重縮合物の出発原料である金属アルコキシドが、テトラアルコキシシラン、テトラアルコキシチタン、テトラアルコキシジルコニウム、トリアルコキシアルミニウム、トリアルコキシイットリウムおよびペンタアルコキシタンタルからなる群より選ばれた1種もしくは2種以上の化合物である請求項1記載の、基材の表面改質方法。
- 金属酸化物微粒子が、酸化珪素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウムおよび酸化イットリウムからなる群より選ばれた1種もしくは2種以上の金属酸化物からなる請求項1または請求項2記載の、基材の表面改質方法。
- 金属酸化物微粒子の直径が2nm〜100nmである請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の、基材の表面改質方法。
- 処理液における、金属アルコキシドの重縮合物の酸化物換算重量と金属酸化物微粒子の重量との比率が1:5〜5:1である請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の、基材の表面改質方法。
- フルオロアルキル基を有するシラン化合物がフルオロアルキルシランである請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の、基材の表面改質方法。
- 処理液における、フルオロアルキル基を有するシラン化合物の重量と金属アルコキシドの重縮合物の酸化物換算重量および金属酸化物微粒子の重量の合計重量との比率が1:20〜1:1である請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の、基材の表面改質方法。
- 基材の表面に形成される金属酸化物層の厚さが0.01μm〜50μmである請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の、基材の表面改質方法。
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