JP6500637B2 - 難燃性ポリエステル組成物の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は難燃性ポリエステル組成物の製造方法に関するものである。さらに詳しくは、重合反応における副生物の生成を抑制し、かつ得られたポリエステル組成物の融点降下をも抑制するとともに、生産性に優れた難燃性を有する難燃性ポリエステル組成物の製造方法に関するものである。
ポリエステルは優れた特性を有し、繊維、フイルム、樹脂として広く用いられて来ている。また、近年は防災意識の高まりで、難燃化の要求も強くなってきている。
ポリエステルに難燃性を付与する技術は、大きく分けて3つの研究・検討がなされてきている。詳しくは、ポリエステル組成物の成形品に後加工した後に成形品の表面あるいは内部にまで難燃剤を付着あるいはしみこませる方法、ポリエステル組成物の成形時に難燃剤を練り込む方法、ポリエステルポリマーの製造時に難燃剤を添加して共重合する方法が主として提案されており、繊維用途に用いる場合にもこれらの方法が採用されている。
上記の方法のうち、後加工により難燃化する方法は、例えば組成物が繊維製品の場合には、洗濯、摩擦により難燃剤が脱落して性能が低下したり、風合いが粗雑になったりする問題がある。難燃剤を練り込む方法では、難燃剤をポリエステルの製造工程、もしくは紡糸段階において練り込む方法であるが、ブリードアウトなどと表現される難燃剤のポリエステル組成物表面への滲み出し等のトラブルが発生し、生産化の障害となっている。
一方、ポリエステル製造時に難燃剤を共重合させる方法としては、リンを含む共重合系の難燃剤成分をポリエステルの重合工程で反応系に添加してポリエステルに共重合する方法として各種の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、優れた難燃性能を有し、耐加水分解性も改良されたポリエステル繊維が提案されている。しかしながら、このリン化合物をエステル化反応工程で添加する方法では、反応工程でジエチレングリコールが多量に副生され、このジエチレングリコールがポリエステルの融点降下に繋がり、組成物の物性低下が発生する。また、特許文献2には難燃性ポリエステル共重合体及び難燃性ポリエステル繊維に関し、耐ドリップ性(耐溶融滴下性)と自己消火性とに優れた新規な難燃性ポリエステル共重合体及び該ポリエステル共重合体からなる難燃性ポリエステル繊維が提案されている。確かに、接炎時の耐ドリップ性、自己消火性の改善効果は見られるものの、リン化合物をエチレングリコール溶液として添加する該方法では、ジエチレングリコールが多量に副生するという問題があった。
また、特許文献3には、製造時および燃焼時における環境負荷を軽減でき、ポリエステル系樹脂の諸物性の低下を抑えるため、二軸混練機を用いてリン化合物を添加し、ポリエステルフィルムを安定生産することが可能な難燃性ポリエステル系樹脂組成物に関する技術が開示されている。確かに、二軸混練機を用いてリン化合物を添加することにより、ポリエステル系樹脂の機械的特性の低下は抑制しつつ、多量のリン化合物を添加することが可能となるが、一方でリン化合物が局在化してポリマー組成が不均質となり、難燃性能に斑が生じるので、特に品質の均一性が厳しく求められる繊維用途には適さない。
また、特許文献4には、ポリエチレンテレフタレート或はポリブチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルを製造する際に、9−ホスファビシクロノナン誘導体の含リン化合物を添加共重合する技術が開示されている。しかし、難燃剤を得る過程において加熱反応工程を経ており、ジエチレングリコールが副生物として多量に発生する。
また、特許文献3,4とも特殊なリン化合物を用いており、技術的な汎用性も乏しく、個別の課題も存在し、大きな広がりが望めない。
以上の如く、難燃性ポリエステル組成物に関しては各種の検討がなされているが、その製造に関して、リン化合物を添加、反応させても副生物の生成が少なく、且つポリエステルの融点降下が少なく、かつ生産性良好な難燃性ポリエステル組成物は未だ得られておらず、開発が待ち望まれていた。
特開平07−197319号公報 特開2008−179715号公報 特開2012−251078号公報 特開平05−140283号公報
本発明の目的は、上記背景に鑑み成されたもので、難燃性ポリエステル組成物の製造段階におけるジエチレングリコールの副生を抑制し、ポリエステルの融点降下をきたすことなく、生産性が良好で、かつ難燃性ポリエステル組成物の物性面での低下が少ない、難燃性ポリエステル組成物の製造方法を提供することにある。
本発明者らは上記した従来技術では解決できなかった課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち本発明は、ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体と、ジオールを主たる原料としてポリエステルを製造するに際し、下記式(1)で示されるリン化合物とエチレングリコールとを重量比で、10:90〜50:50で分散させたスラリー状で、かつ重縮合反応を開始する前の80分以内に添加し、リン元素換算で0.3〜1.1wt%共重合させることを特徴とする難燃性ポリエステル組成物の製造方法により達成できる。
Figure 0006500637
(R1は炭素数1〜18のアルキル基、アリール基もしくは水酸基)
本発明によれば、従来成しえなかった難燃性ポリエステル組成物の製造段階におけるジエチレングリコールの副生を抑制することで、ポリエステルの融点降下を抑制し、高融点ポリマーとの複合成型や、固相重合などによる高粘度化を行う際の製造工程への支障が無く様々な使用環境が選択可能で、安全ネットや養生メッシュなどの産業用途やカーテン、インテリア、椅子張りなどのホーム・リビングテキスタイル用途、また衣料用途などに好適に用いることができる難燃性ポリエステル組成物の製造方法を提供することができる。
得られる難燃性ポリエステル組成物は優れた難燃性を発現するとともに、ジエチレングリコール含有量を3.0wt%以下に抑制できるとともに、融点を230℃以上とすることが可能となる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の難燃性ポリエステル組成物の製造方法は、ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体と、ジオール又はそのエステル形成性誘導体を主たる原料としてポリエステルを製造するに際し、下記式(1)で示されるリン化合物を、エチレングリコールとの重量比で、10:90〜50:50で分散させたスラリー状で、かつ重縮合反応を開始する前の80分以内に添加し、リン元素換算で0.3〜1.1wt%共重合させることを特徴とする製造方法である。
Figure 0006500637
(R1は炭素数1〜18のアルキル基、アリール基もしくは水酸基)
本発明におけるジカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸、鎖状脂肪族カルボン酸、脂環式ジカルボン酸等の種々のジカルボン酸成分を用いることができる。その中でもポリエステル組成物の機械的特性、耐熱性、耐加水分解性の観点から、芳香族ジカルボン酸であることが好ましい。特には、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸が重合性、機械的特性から好ましい。
本発明におけるジオール成分としては、各種ジオールを用いることができる。例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族ジオール、脂環式ジオールとしてはシクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジエタノール、デカヒドロナフタレンジメタノール、デカヒドロナフタレンジエタノール、ノルボルナンジメタノール、ノルボルナンジエタノール、トリシクロデカンジメタノール、トリシクロデカンジエタノール、テトラシクロドデカンジメタノール、テトラシクロドデカンジエタノール、デカリンジメタノール、デカリンジエタノールなどの飽和脂環式1級ジオール、2,6−ジヒドロキシ−9−オキサビシクロ[3,3,1]ノナン、3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(スピログリコール)、5−メチロール−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジオキサン、イソソルビドなどの環状エーテルを含む飽和ヘテロ環1級ジオール、その他シクロヘキサンジオール、ビシクロヘキシル−4、4’−ジオール、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシルプロパン)、2,2−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)シクロへキシル)プロパン、シクロペンタンジオール、3−メチル−1,2−シクロペンタンジオール、4−シクロペンテン−1,3−ジオール、アダマンタンジオールなどの各種脂環式ジオールや、ビスフェノールA、ビスフェノールS、スチレングリコール、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどの芳香環式ジオールが例示できる。また、上記成分の2種類以上を組み合わせて使用しても構わない。
さらに、必要に応じて耐熱安定剤や、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、顔料、蛍光増白剤、艶消し剤等の添加物を加えても構わない。
本発明の難燃性ポリエステル組成物の製造方法において、難燃剤として使用するリン化合物としては、例えば、2−カルボキシエチル(フェニル)ホスフィン酸、2−カルボキシエチル−tert−ブチルホスフィン酸、2−カルボキシエチル−1,1−ジメチルヘキシルホスフィン酸、2−カルボキシエチル(ナフチル)ホスフィン酸、2−カルボキシエチル(トルイル)ホスフィン酸、2−カルボキシエチル−2,5−ジメチルフェニルホスフィン酸、2−カルボキシエチル(シクロヘキシル)ホスフィン酸、2−カルボキシエチル−4−クロロフェニルホスフィン酸、3−カルボキシエチル(フェニル)ホスフィン酸、4−カルボキシエチル(フェニル)ホスフィン酸など固体の難燃剤が挙げられるが、特に好ましくは2−カルボキシエチル(フェニル)ホスフィン酸である。
また、前記リン化合物とエチレングリコールとを重量比で、10:90〜50:50で分散させたスラリー状で添加することが必要である。
ここで、本発明におけるスラリー状とは、液体の中に固体粒子が分散して存在した状態をいう。なお、溶液とは液体状態の混合物であって、固体状態での存在が無いものをいう。
すなわち、本発明においては固体であるリン化合物がエチレングリコールに固体状態で少なくともその一部が存在している状態であるスラリーをスラリー状という。
リン化合物をエチレングリコールとのスラリーで添加することは、リン化合物を反応前に反応系に直接、あるいは溶液として添加する場合に比較すると添加剤の調製時間を短縮することに繋がる。これにより、リン化合物によるスラリー調製槽内の酸性化を抑制することができ、酸性状態で発生しやすいジエチレングリコールの副生を抑制することができるので重要である。また、スラリー調製槽内での酸性化を抑制することは、重縮合反応系内の酸性化を抑制することにも効果があり、重縮合反応時に発生するジエチレングリコールの副生も抑制することが可能となるので好ましい。
本発明の難燃性ポリエステル組成物の製造方法において、リン化合物とエチレングリコールのスラリーは、スラリーに対するリン化合物の比率を10wt%以上とすることで、重縮合反応系内に過剰なエチレングリコールを添加しないため、ジエチレングリコールの副生を抑制できるので必要である。加えて重縮合反応時間の短縮効果もある。すなわち、重縮合反応に直接寄与しない過剰なエチレングリコールが存在しないため、この過剰なエチレングリコールを単に蒸発させて重縮合反応系の外に取り出すための時間とエネルギー負荷を軽減できるのである。さらには、過剰のエチレングリコールの存在は、ジエチレングリコール発生量の増加やポリエステルの色調悪化など、ポリエステルの品質などの低下に繋がる。
また、スラリーに対するリン化合物の比率を50wt%以下とすることでスラリーに十分な流動性を付与することができるので、添加系の配管中でのリン化合物の堆積と重縮合反応槽内の気相部への拡散を防ぐことができる。またスラリーとすることで重縮合反応系のジカルボン酸成分とジオール成分から成るポリエステル中間体との馴染み性が飛躍的に向上する。その結果として、これにより重縮合反応中に留去するエチレングリコールとの飛沫同伴による反応系外へのリン化合物の流出を防止できるので、ポリエステル中に共重合されるリン化合物の量が安定化する。すなわち難燃性ポリエステル組成物の物理的性質や難燃性能を安定品質にできるのである。リン化合物とエチレングリコールの重量比は、さらに好ましくは15:85〜45:55であり、特に好ましくは20:80〜40:60である。
なお、エチレングリコールとの飛沫同伴によりポリエステル反応系外へ流出するリン化合物の量は下記式1で求める。リン化合物の飛散率は10wt%以下であることが好ましい。
リン化合物飛散率(wt%)=(P1−P2)/P1・・・式1
(P1:リン化合物のリン元素換算での添加量、P2:得られる難燃性ポリエステル中のリン元素換算での含有量)
リン化合物の飛散率が10wt%以下であると、ポリエステル反応系外に排出されるリン化合物が少なくなるので、製造コスト面で優位である。また、重縮合反応工程で排出されるエチレングリコールを回収して再利用する場合には、重縮合反応を阻害するリン元素の残存量が少ないので、より高純度のエチレングリコールとして回収できる利点があるため好ましい。リン化合物飛散率は、さらに好ましくは8wt%以下であり、特に好ましくは6wt%以下である。
本発明における、リン化合物とエチレングリコールのスラリーは、重縮合反応を開始する前の80分以内に、重縮合反応系に添加することが必要である。80分以内であると、リン化合物による重縮合反応系内の酸性化を軽減し、酸性状態で副生するジエチレングリコールを抑制できるのである。スラリーを添加する時間帯は、さらに好ましくは重縮合反応を開始する前の60分以内であり、特に好ましくは50分以内である。
リン化合物の添加量は、難燃性ポリエステル組成物中に含有するリン元素の量として0.3〜1.1wt%共重合となる添加が必要である。共重合量がリン元素として0.3wt%以上であると十分な難燃性能を発現するのである。また、共重合量がリン元素として1.1wt%以下であると、ポリエステル組成物が本来有している物理的性質を維持したまま、重縮合反応性の低下などの製造工程の操業性に支障を来たすことがない。共重合量としてさらに好ましくは、リン元素として0.5〜1.0wt%であり、特に好ましくは0.6〜0.9wt%である。
本発明のリン化合物とエチレングリコールのスラリーは、重縮合反応系への添加を開始する前の90分以内に調製することが好ましい。リン化合物とエチレングリコールのスラリーの調製を、重縮合反応系への添加を開始する前の90分以内に行うことで、スラリーの酸性化を抑制し、酸性状態で副生するジエチレングリコールを抑制できるのである。スラリーを調製する時間帯は、さらに好ましくは重縮合反応系への添加を開始する前の70分以内であり、特に好ましくは60分以内である。
このように本発明は、特定量のリン化合物を共重合した難燃性ポリエステル組成物の製造に際して、リン化合物とエチレングリコールを特定の重量比のスラリーを、特定の時間帯で調製して添加することを特徴とする。
本発明の難燃性ポリエステル組成物の製造方法によれば、重縮合反応時のジエチレングリコールの副生を抑制でき、かつジエチレングリコール含有量が3.0wt%以下である難燃性ポリエステル組成物を製造することができる。本発明により得られる難燃性ポリエステル組成物のジエチレングリコール含有量は、さらに好ましくは2.5wt%以下であり、特に好ましくは2.0wt%以下である。
また、ジエチレングリコール含有量を少なくすることで、ポリエステルの融点降下を抑制し、融点が230℃以上の難燃性ポリエステル組成物を製造することができる。融点が230℃以上であると、高融点ポリマーとの複合成型や、固相重合などにより高粘度化する際に製造工程への支障が無く、すなわち様々な使用環境が選択可能な難燃性ポリエステル組成物が得られるのである。本発明により得られる難燃性ポリエステル組成物の融点は、さらに好ましくは233℃以上であり、特に好ましくは235℃以上である。
本発明で得られる難燃性ポリエステル組成物から繊維を製造する方法は、従来公知の方法を好適に使用することができる。例えばポリエステル組成物を溶融吐出したポリエステル未延伸糸を一旦巻き取った後に延伸する二工程法や、紡糸工程と延伸工程を連続して行う直接紡糸延伸法や、高速製糸法などの方法で製造できる。また、半延伸糸として巻き取った後に延伸する工程でもよい。さらに、必要に応じて仮撚りなどの糸加工を行うこともできる。
紡糸温度はポリエステルの融点よりも20〜80℃程度高い温度に設定することが一般的である。ポリエステルの融点よりも20℃以上高く設定することで、ポリマーが紡糸機配管内で固化して閉塞することを防ぐことができる。一方、80℃以下にすることでポリエステルの過度な劣化を抑制し、繊維強度などの物理的性質の低下を防ぐことができる。
また、紡糸工程での糸切れや毛羽の発生を抑制するために、延伸糸の残留伸度は10〜40wt%とするのが好ましい。
このようにして本発明で得られた難燃性ポリエステル組成物を用いて溶融紡糸法して製造された難燃性ポリエステル繊維は、優れた物理的性質と難燃性能を示す。
本発明により得られる難燃性ポリエステル組成物からなる繊維は、その用途を特に限定しないが、安全ネットや養生メッシュなどの産業用途や、カーテン、椅子張りなどのインテリア用途、また衣料用途などにも好適に用いることができる。
以下、実施例をあげて本発明を具体的に説明する。実施例中の物性値は以下の方法で測定した。
(1)難燃性ポリエステル組成物の固有粘度
試料0.8gをオルソクロロフェノール10mlに完全溶解させ、25℃で測定した。
(2)難燃性ポリエステル組成物の融点
示差走査熱量計(TAInstruments社製DSC2200(Differential Scanning Calorimeter)を用いて、20℃/分の昇温速度で280℃まで昇温した試料を0℃に冷却した試験管中で急冷し、非晶状態にした試料をさらに20℃/分の昇温速度で昇温し、JIS K7121に準じて融解ピークを測定し、その融解ピークの頂点の温度を融点とした。また、以下の基準で判定した。
230℃以上:合格
230℃未満:不合格 。
(3)リン元素量
試料7gを溶融し板状に成形し、蛍光X線分析(理学電気社製蛍光X線分析装置3270型)により強度を測定して、既知含有量のサンプルで予め作成した検量線を用いて、リン元素含有量とした。
(4)リン化合物飛散率
下記式1でリン化合物飛散率を算出し、以下の基準で判定した。
リン化合物飛散率(wt%)=(P1−P2)/P1・・・式1
(P1:リン化合物のリン元素換算での添加量、P2:得られる難燃性ポリエステル中のリン元素換算での含有量)
10wt%以下:合格
10wt%超 :不合格 。
(5)難燃性(3秒超残炎率)
後述する方法にて延伸糸を得た後、タテ25本/インチ、ヨコ20本/インチの密度で布帛を作製し、この筒編み地をJIS L1091 A−1法に従い3秒以上の残炎有無を32回測定し、3秒超残炎率として以下の基準で判定した。
10%未満 :◎ 合格 極めて良好
10以上15%未満:○ 合格
15%以上 :× 不合格 。
(6)ジエチレングリコール含有量
試料をモノメタノールアミンで加水分解後、1,6−ヘキサンジオール/メタノールで希釈し、テレフタル酸で中和した後、ガスクロマトグラフィーのピーク面積から求めた。また、ポリエステル組成物中のジエチレングリコール量として以下の基準で判定した。
3.0wt%以下:合格
3.0wt%超 :不合格 。
(7)繊度
延伸糸を長さ100m採取して重量(g)を測定し、その重量を100倍し、同様に測定して得た3回の値の平均値を繊度とした。
(8)強度および伸度
延伸糸をオリエンテックス社製テンシロン引張試験機を用い、初期試料長20cm、引張速度2cm/分にて破断した際の強度、伸度を測定し、それぞれ連続して5回測定した値の平均値を強度(cN/dtex)、伸度(%)とした。
実施例1
(重縮合方法)
ビスヒドロキシエチルテレフタレートが1950重量部仕込まれた温度245℃に保持されたエステル化反応槽にテレフタル酸1100重量部とエチレングリコール480重量部のスラリーを3時間かけて供給し、エステル化反応時に発生する水を反応系外に留去しながらエステル化反応を行った。反応の後の低重合体のうち1300重量部を重縮合反応槽に移送した。
次に、移送した低重合体に、予め調製した2−カルボキシエチル(フェニル)ホスフィン酸65重量部とエチレングリコール150重量部のスラリーを、重縮合反応を開始する40分前に添加し、次に三酸化二アンチモンを500ppm添加し、その後反応系を250℃から290℃まで徐々に昇温して、それと同時にエチレングリコールを留去しながら、反応系の圧力を50Paまで減圧した。
なお、2−カルボキシエチル(フェニル)ホスフィン酸とエチレングリコールのスラリーは、重縮合反応系内へのスラリー添加を開始する50分前に調製した。
所定の攪拌機トルク(電力値)となった時点で反応系に窒素を流入させ常圧に戻し重合反応を停止させ、重合缶の下部よりストランド状に吐出し、冷却固化後、カッティングして難燃性ポリエステル組成物のペレットを得た。得られたポリエステルは、固有粘度0.75、ジエチレングリコール含有量1.7wt%、融点239℃、リン元素量0.67wt%であり、良好な品質の難燃性ポリエステルを得た。なお、リン化合物飛散率は5.5wt%であった。
(紡糸方法)
得られたペレットをエクストルーダー紡糸機を用い300℃で溶融後ポンプによる計量を行い、紡糸温度300℃を保持したまま口金に流入させた。口金から吐出された糸条は、空冷装置により冷却、油剤付与後、そのまま引取ロールで引き取り、次いで6倍に延伸した後に巻き取り、1840dtex−144フィラメント、強度7.1cN/dtex、伸度20.0%の難燃性ポリエステル延伸糸を得た。難燃性(3秒超残炎率)は10%未満で極めて良好であった。
実施例2
リン化合物とエチレングリコールのスラリーについて、スラリーに対するリン化合物の濃度を10wt%に変更した以外は、実施例1と同様の方法で難燃性ポリエステル組成物を得た。リン化合物飛散率は実施例1に比べて低く抑えることができた。一方、エチレングリコールの添加量が多くなったことで、エチレングリコールの副生物であるジエチレングリコールの発生量が実施例1に比べてやや多かった問題なく、また繊維物性や難燃性も良好であった。
実施例3
リン化合物とエチレングリコールのスラリーについて、スラリーに対するリン化合物の濃度を50wt%に変更した以外は、実施例1と同様の方法で難燃性ポリエステル組成物を得た。リン化合物飛散率は実施例1に比べてやや高いものの、エチレングリコールの添加量が少なかった関係で、エチレングリコールの副生物であるジエチレングリコールの発生量は少なく、また繊維物性や難燃性も良好であった。
比較例1、2
リン化合物とエチレングリコールのスラリーについて、比較例1はスラリーに対するリン化合物の濃度を5wt%に、比較例2はスラリーに対するリン化合物の濃度を55wt%にそれぞれ変更した以外は実施例1と同様の方法で難燃性ポリエステル組成物を得た。比較例1はリン化合物飛散率は低いが、エチレングリコールの副生物であるジエチレングリコールの発生量が多く、比較例2はジエチレングリコールの発生量は少ないが、リン化合物飛散率が高く、いずれも不良であった。
比較例3
リン化合物を添加する際にスラリーではなく、エチレングリコールとの溶液にして添加した以外は実施例1と同様の方法で難燃性ポリエステル組成物を得た。結果は副生物であるジエチレングリコールの発生量が多く、またリン化合物飛散率も高く、不良であった。
なお、リン化合物とエチレングリコールの溶液は、リン化合物がエチレングリコールに対して30wt%になるように調整用容器に仕込み、撹拌しながら60℃に昇温し、60℃を保ったまま50分間撹拌して溶解することで、リン化合物のエチレングリコール溶液を得た。
実施例4、比較例4
実施例4はリン化合物とエチレングリコールのスラリー添加時期を反応開始の80分前、比較例4は110分前にそれぞれ変更した以外は実施例1と同様の方法で難燃性ポリエステル組成物を得た。実施例4は実施例1に比べてジエチレングリコールの発生量がやや多かったものの、繊維物性や難燃性は良好であった。一方、比較例4はジエチレングリコールの発生量が多く、これによりポリエステルの融点が低下し、不良であった。
実施例5〜7
リン化合物の共重合量を、実施例5はリン元素換算で0.30wt%、実施例6は0.75wt%、実施例7は1.10wt%にそれぞれ変更した以外は実施例1と同様の方法で難燃性ポリエステル組成物を得た。実施例5は、3秒超残炎率が実施例1に比べてやや高いものの、難燃性としては満足するものであった。実施例6は、リン化合物飛散率が実施例1に比べてやや高いものの、難燃性は十分であり、繊維物性も良好であった。
実施例7は、実施例1に比べてリン化合物飛散率がやや高く、重縮合反応性がやや低下したものの、難燃性、繊維物性とも良好であった。
比較例5、6
リン化合物の共重合量を、比較例5はリン元素換算で0.20wt%、比較例6は1.25wt%にそれぞれ変更した以外は実施例1と同様の方法で難燃性ポリエステル組成物を得た。比較例5は、リン化合物の共重合量を少なくしたことで難燃性が低下し、不良であった。比較例6は、リン化合物飛散率が高く、また重縮合反応性についても著しく低下し、不良であった。
実施例8、9
リン化合物とエチレングリコールとのスラリー調製時期について、実施例8は重縮合反応系内へのスラリー添加を開始する前の90分前にスラリーを調製し、実施例9は120分前にスラリーを調整した以外は実施例1と同様の方法で難燃性ポリエステル組成物を得た。実施例8および実施例9ともに、ジエチレングリコールの発生量が実施例1に比べてやや多かったものの、繊維物性や難燃性は良好であった。
比較例7
リン化合物の種類を、常温常圧下で液体状態の溶液である2−(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−イル)−メチルコハク酸ビス−(2−ヒドロキシエチル)−エステルに変更し、実施例1に記載のリン化合物とエチレングリコールのスラリーの代わりに重縮合反応系内へ添加した以外は実施例1と同様の方法で難燃性ポリエステル組成物を得た。ポリエステル製造時のリン化合物の飛散率が高く、また難燃性も、不良であった。
Figure 0006500637
Figure 0006500637

Claims (3)

  1. ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体と、ジオール又はそのエステル形成性誘導体を主たる原料としてポリエステルを製造するに際し、下記式(1)で示されるリン化合物とエチレングリコールとを重量比で、10:90〜50:50で分散させたスラリー状で、かつ重縮合反応を開始する前の80分以内に添加し、リン元素換算で0.3〜1.1wt%共重合させることを特徴とする難燃性ポリエステル組成物の製造方法。
    Figure 0006500637
    (R1は炭素数1〜18のアルキル基、アリール基もしくは水酸基)
  2. 式(1)で示されるリン化合物が、2−カルボキシエチル(フェニル)ホスフィン酸であることを特徴とする請求項1に記載の難燃性ポリエステル組成物の製造方法。
  3. 式(1)で示されるリン化合物とエチレングリコールのスラリーを重縮合反応系へ添加を開始する前の90分以内に調製することを特徴とする請求項1または2に記載の難燃性ポリエステル組成物の製造方法。
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