JP6497605B2 - 雌蚕致死カイコ系統 - Google Patents
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Description
(2)前記変異がカイコMasc遺伝子におけるFem piRNA認識配列内の1409位及び1410位を含む連続する15塩基からなる領域内、又はカイコMasc遺伝子のチョウ目昆虫のオルソログにおける対応する領域内に存在する、(1)に記載の変異型Masc遺伝子。
(3)前記塩基置換がサイレント変異である、(1)又は(2)に記載の変異型Masc遺伝子。
(4)ユビキタスな発現誘導型プロモーターの下流に機能的に連結した(1)〜(3)のいずれかに記載の変異型Masc遺伝子を発現可能な状態で含む変異型Masc遺伝子発現ベクター。
(5)前記ユビキタスな発現誘導型プロモーターが熱ショックタンパク質70プロモーターである、(4)に記載の変異型Masc遺伝子発現ベクター。
(6)ユビキタスなプロモーター及び該プロモーターの下流に機能的に連結した転写調節因子をコードする遺伝子を含む第1発現ユニット、及び該転写調節因子の標的プロモーター及び該標的プロモーターの下流に機能的に連結した(1)〜(3)のいずれかに記載の変異型Masc遺伝子を含む第2発現ユニットから構成される変異型Masc遺伝子発現ベクター。
(7)前記ユビキタスなプロモーターがアクチン3プロモーター、熱ショックタンパク質70プロモーター、又は伸長因子プロモーターである、(6)に記載の変異型Masc遺伝子発現ベクター。
(8)前記転写調節因子をコードする遺伝子がGAL4遺伝子であり、かつ該転写調節因子の標的プロモーターがUASプロモーターである、(6)又は(7)に記載の変異型Masc遺伝子発現ベクター。
(9)前記(4)又は(5)に記載の変異型Masc遺伝子発現ベクターを含む雌蚕致死カイコ系統。
(10)前記(6)に記載の第2発現ユニットのみを含む雌蚕致死カイコ系統。
(11)前記(8)に記載の第2発現ユニットのみを含む雌蚕致死雄蚕不妊カイコ系統。
(12)前記(9)に記載の雌蚕致死カイコ系統において、発生初期の胚に発現誘導処理を施す工程を含む雌蚕致死カイコの作出方法。
(13)前記(6)又は(7)に記載の第1発現ユニットを有する遺伝子組換えカイコ系統と(10)に記載の雌蚕致死カイコ系統とを交配させる工程、及び前記第1及び第2発現ユニットを有する雌蚕致死カイコを選択する工程を含む雌蚕致死カイコの作出方法。
(14)前記(8)に記載の第1発現ユニットを有する雌蚕致死雄蚕不妊カイコ系統と(11)に記載の雌蚕致死雄蚕不妊系統とを交配させる工程、及び前記第1及び第2発現ユニットを有する雌蚕致死雄蚕不妊カイコを選択する工程を含む雌蚕致死雄蚕不妊カイコの作出方法。
1−1.概要
本発明の第1の態様は変異型Masc遺伝子である。本発明の変異型Masc遺伝子は、Fem piRNA-Siwi複合体に対して切断耐性を有することを特徴とする。
本明細書で使用する以下の主要な用語について定義する。
「piRNA(PIWI-interacting RNA)」とは、生殖細胞形成や性決定に関与する23〜30塩基長の非コーディング小分子RNAである。piRNAは、前駆体の状態で発現し、切断及び修飾等のプロセシングを経た後、標的RNAに相補的な塩基配列からなる認識領域を有する成熟piRNAとなる。その後、piRNAは、PIWI(P-element Induced Wimpy Testis)タンパク質と複合体を形成し、認識領域を介して標的RNAと結合することによって、一本鎖RNAの切断活性を有するPIWIタンパク質を標的RNAに誘導する。piRNA-PIWI複合体は、標的RNAをpiRNAの5’末端から10位と11位の塩基間を切断することが知られている(Brennecke, J., et al., Cell, 2007, 128, 1089-1103;Gunawardane, L. S., et al., 2007, Science, 315, 1587-1590)。
本発明の変異型Masc遺伝子は、Fem piRNA-Siwi複合体に対する切断耐性と野生型Masc遺伝子の活性を有する変異型Masc遺伝子である。
前記Fem piRNA認識配列内で、切断耐性変異が存在する位置として好ましい領域は、Fem piRNAと相補結合によって直接塩基対合を形成する領域である。例えば、カイコの場合には、Masc遺伝子の1409位及び1410位を含む15塩基からなる領域、特にMasc mRNAの切断に重要な1407位〜1418位の12塩基からなる領域が該当する。またカイコ以外のチョウ目昆虫の場合も、カイコMasc遺伝子オルソログにおいて前記領域に対応する塩基配列が該当する。
「塩基置換(変異)」は、野生型遺伝子の塩基の一部が他の塩基と置き換わる変異である。本明細書では、野生型Masc遺伝子の塩基の一部が他の塩基と置き換わった変異が該当する。
「欠失(変異)」とは、野生型遺伝子の塩基が失われる変異である。欠失変異には、フレームシフトを生じる欠失と生じない欠失がある。本発明のMascR遺伝子においては、フレームシフトを生じない欠失変異が対象となる。
「付加(変異)」とは、野生型遺伝子の塩基配列中に塩基が挿入される変異である。付加変異には、欠失変異と同様に、フレームシフトを生じる付加と生じない付加がある。本発明のMascR遺伝子においては、フレームシフトを生じない付加変異が対象となる。
2−1.概要
本発明の第2の態様は、変異型Masc遺伝子発現ベクター(本明細書では、しばしば「MascR遺伝子発現ベクター」と表記する)である。本発明のMascR遺伝子発現ベクターは、第1態様のMascR遺伝子を発現可能な状態で含むことを特徴とする。本発明のMascR遺伝子発現ベクターによれば、宿主に導入することで、MascR遺伝子を過剰発現させることができる。
本明細書で「発現ベクター」とは、目的の遺伝子を発現可能な状態で含み、その遺伝子の発現を制御することのできる一つの発現系単位をいう。本発明で対象となる目的の遺伝子は、第1態様に記載したMascR遺伝子である。
MascR遺伝子発現ベクターは、宿主細胞内でMascR遺伝子を発現できるように構成されている。MascR遺伝子発現ベクターの構成要素には、第1態様のMascR遺伝子及びユビキタスなプロモーターを必須構成要素として含む。また、マルチクローニングサイト、5’UTR、3’UTR、ターミネーター、エンハンサー、標識遺伝子、インスレーター、及びトランスポゾンの逆位末端反復配列等を選択構成要素として含む。さらに、MascR遺伝子発現ベクターが、後述する第1発現ユニットと第2発現ユニットの2つのユニットで構成される場合には、転写調節因子の遺伝子及び該転写調節因子の標的プロモーターを必須の構成要素として包含する。以下、本発明のMascR遺伝子発現ベクターの各構成要素について具体的に説明をする。
MascR遺伝子の構成については、第1態様に詳述しており、ここでの説明は省略する。
本発明のMascR遺伝子発現ベクターに包含されるプロモーターは、ユビキタスなプロモーターである。
「マルチクローニングサイト」は、複数のクローニング用制限酵素部位からなるクラスター配列である。マルチクローニングサイトを構成する塩基配列や包含する制限酵素部位の種類及び数については、特に制限はしない。また、MascR遺伝子発現ベクターにおけるマルチクローニングサイトの数や配置される位置についても、制限はしないが、前記ユビキタスなプロモーターの制御領域範囲内に配置することが好ましい。そのような位置に配置することで、MascR遺伝子を本発明のMascR遺伝子発現ベクター内に容易に挿入できるからである。
「5’UTR及び3’UTR」は、いずれもそれ自身がタンパク質やその断片、又は機能性核酸をコードしない非翻訳領域からなるポリヌクレオチドである。各UTRを構成する塩基配列は、限定はしないがMasc遺伝子に由来する5’UTR及び3’UTRであることが好ましい。特に好ましいのはMasc遺伝子自身の5’UTR及び3’UTR由来の塩基配列である。MascR遺伝子発現ベクターにおいて5’UTRは、前記MascR遺伝子の開始コドンの上流(5’末端側)に配置され、3’UTRは、MascR遺伝子の終止コドンの下流(3’末端側)に配置される。なお、3’UTRは、ポリAシグナルを含むことができる。
「ターミネーター」は、本発明のMascR遺伝子発現ベクターにおいて、MascR遺伝子の3’末端側、好ましくは終止コドンの下流に配置される塩基配列で、MascR遺伝子の転写を終結できる塩基配列で構成されている。例えば、配列番号9で示す塩基配列からなるhsp70ターミネーターや配列番号10で示す塩基配列からなるSV40ターミネーターが挙げられる。
「エンハンサー」は、本発明のMascR遺伝子発現ベクターにおいて、ユビキタスなプロモーターの制御によるMascR遺伝子の発現をさらに増強することができる塩基配列からなる。
「標識遺伝子」は、選抜マーカーとも呼ばれる標識タンパク質をコードする遺伝子である。「標識タンパク質」とは、その活性に基づいて標識遺伝子の発現の有無を判別することのできるポリペプチドをいう。したがって、MascR遺伝子発現ベクターが標識遺伝子を含んでいる場合、標識タンパク質の活性に基づいて、MascR遺伝子発現ベクターを保有する宿主、すなわち形質転換体を容易に判別することができる。ここで「活性に基づいて」とは、活性の検出結果に基づいて、という意味である。活性の検出は、標識タンパク質の活性そのものを直接的に検出するものであってもよいし、色素のような標識タンパク質の活性によって発生する代謝物を介して間接的に検出するものであってもよい。検出は、化学的検出(酵素反応的検出を含む)、物理的検出(行動分析的検出を含む)、又は検出者の感覚的検出(視覚、触覚、嗅覚、聴覚、味覚による検出を含む)のいずれであってもよい。
「インスレーター」は、周囲の染色体のクロマチンによる影響を受けることなく、その配列に挟まれた遺伝子の転写を、安定的に制御できる塩基配列である。例えば、ニワトリのcHS4配列やショウジョウバエのgypsy配列などが挙げられる。
「トランスポゾンの逆位末端反復配列(ITRs:inverted terminal repeat sequence)」は、本発明のMascR遺伝子発現ベクターを相同組換え可能な発現ベクターとする場合に含まれ得る選択構成要素である。逆位末端反復配列は、通常は2個1組で使用され、トランスポゾンとしては、piggyBac、mariner、minos等を用いることができる(Shimizu,K. et al., 2000, Insect Mol. Biol., 9, 277-281;Wang W. et al.,2000, Insect Mol Biol 9(2):145-55)。
「転写調節因子の遺伝子」は、後述する第1発現ユニットの必須構成要素である。本明細書でいう「転写調節因子」とは、後述する標的プロモーターに結合して、その標的プロモーターを活性化することのできるタンパク質因子をいう。例えば、酵母のガラクトース代謝活性化タンパク質であるGAL4タンパク質、及びテトラサイクリン制御性トランス活性化因子であるtTA及びその変異体等が挙げられる。
「転写調節因子の標的プロモーター」とは、後述する第2発現ユニットの必須要素であって、第1発現ユニットにコードされた転写調節因子が結合することよって、その制御下にある遺伝子発現を活性化することのできるプロモーターをいう。前記転写調節因子とその標的プロモーターは、前記転写調節因子とは対応関係にあり、通常、転写調節因子が定まれば、その標的プロモーターも必然的に定まる。例えば、転写調節因子がGAL4タンパク質の場合には、UAS(Upstream Activating Sequence)が使用される。
MascR遺伝子発現ベクターは、1つの遺伝子発現ユニットで構成される場合と、2つの遺伝子発現ユニットで構成される場合がある。以下、それぞれの場合について説明をする。
MascR遺伝子発現ベクターが1つの遺伝子発現ユニットで構成される場合、MascR遺伝子発現ベクターは、MascR遺伝子を宿主細胞内で発現させる上で必要な全ての構成要素を1つの遺伝子発現ベクター内に含む。具体的には、必須の構成要素であるユビキタスなプロモーター及びそのプロモーターの下流に機能的に結合したMascR遺伝子を含む。
MascR遺伝子発現ベクターが第1発現ユニット及び第2発現ユニットの2つの遺伝子発現ユニットで構成される場合、MascR遺伝子を発現する上で必須の構成要素は2つのユニットに分割されて存在する。本構成では、第1及び第2発現ユニットが宿主細胞内に併存してはじめて1つのMascR遺伝子発現ベクターとして機能する。すなわち、同一細胞内で第1発現ユニットに含まれるプロモーターの活性化により第1発現ユニットから転写調節因子が発現し、それが第2発現ユニットの標的プロモーターを活性化することによって目的のMascR遺伝子を発現することができる。第1及び第2発現ユニットは、以下の構成を有する。
MascR遺伝子発現ベクターの宿主導入方法について、説明をする。
MascR遺伝子発現ベクターを導入する宿主は、チョウ目昆虫個体、チョウ目昆虫由来の細胞(株化細胞を含む)、又はチョウ目昆虫由来の組織である。特に好ましいのはチョウ目昆虫個体である。細胞若しくは組織に導入する場合、採取された個体の発生ステージは、特に限定はしない。個体に導入する場合も、発生ステージや雌雄の限定は特になく、胚、幼虫、蛹、又は成虫のいずれのステージであってもよい。好ましくは、より高い効果が期待できる胚時期である。
本発明の変異型Masc(MascR)遺伝子発現ベクターをチョウ目昆虫の宿主に導入することで、その宿主を雌性致死にすることができる。また、2つの遺伝子発現ユニットで構成されるMascR遺伝子発現ベクターを用いることで、作出した雌性致死系統を容易に維持及び管理することが可能となる。それ故、2つの遺伝子発現ユニットで構成されるMascR遺伝子発現ベクターは、雌性致死系統を作出する上で、コストや労力を削減することができる。
3−1.概要
本発明の第3の態様は、雌蚕致死カイコ系統である。本態様の雌蚕致死カイコ系統は、第2態様に記載のMascR遺伝子発現ベクターを有する遺伝子組換えカイコ系統である。本系統を用いることで、雌蚕致死カイコを容易に得ることができる。
本明細書で「雌蚕致死カイコ」とは、メス個体が発生開始後5齢幼虫ステージまでに死亡するカイコをいう。
「雌蚕致死カイコ系統」とは、メス個体を致死化する潜在性を有する継代可能な遺伝子組換えカイコ又はその後代をいう。
本発明の雌蚕致死カイコ系統の作出方法は、組換えカイコを作出できるあらゆる方法を利用することができることから、特に限定はしない。組換えカイコを作出する方法として、例えば、MascR遺伝子発現ベクターをカイコに導入する方法が挙げられる。その具体的な方法は、第2態様の「2−3.MascR遺伝子発現ベクターの宿主導入方法」の項に記載した方法に準ずる。
本発明の雌蚕致死カイコ系統を用いて、オス個体群のみから構成される雌蚕致死カイコを作出するには、例えば、(1)雌蚕致死カイコ系統に発現誘導処理を施す方法、及び(2)MascR遺伝子発現ベクターの第1発現ユニットと第2発現ユニットをそれぞれ有する2つの遺伝子組換えカイコの系統を交配して第1発現ユニットと第2発現ユニットの両方を有するF1個体を得る方法が挙げられる。以下、それぞれの方法について説明をするが、これらの方法に限定はされない。
この方法は、雌蚕致死カイコ系統が有するMascR遺伝子発現ベクターに包含されるユビキタスなプロモーターが発現誘導型プロモーターの場合に実施される。主として、雌蚕致死カイコ系統が1つの遺伝子発現ユニットで構成されるMascR遺伝子発現ベクターを有する場合、又はMascR遺伝子発現ベクターを構成する第1及び第2発現ユニットの2つの遺伝子発現ユニットが同一のカイコ個体又はカイコ系統の染色体上に存在する場合に用いられる。
この方法は、MascR遺伝子発現ベクターが第1及び第2発現ユニットの2つの遺伝子発現ユニットで構成され、かつ第1発現ユニットを有する遺伝子組換えカイコ系統と第2発現ユニットを有する雌蚕致死カイコ系統が存在する場合に実施される。2つの遺伝子組換えカイコ系統を交配させることによって、F1個体で第1及び第2発現ユニットを有する雌蚕致死カイコを作出することができる。
4−1.概要
本発明の第4の態様は、雌蚕致死雄蚕不妊カイコ系統である。本発明の雌蚕致死雄蚕不妊カイコ系統は、第3態様の雌蚕致死カイコ系統の一形態と解することもできる。本系統を用いることで、メス個体が致死となるだけでなく、生存するオス個体が不妊となったカイコ集団を得ることができる。
本態様の基本構成は、第3態様の構成と同じであることから、ここでは本態様に特徴的な構成について以下で説明する。
本発明の雌蚕致死雄蚕不妊カイコ系統の作出方法は、第3態様の雌蚕致死カイコ系統の作出方法に準ずる。ただし、本態様の作出方法では、MascR遺伝子発現ベクターが第1及び第2発現ユニットの2つの遺伝子発現ユニットで構成される場合のみが該当する。
本発明の雌蚕致死雄蚕不妊カイコ系統を用いて、不妊オス個体群のみから構成される雌蚕致死カイコを作出するには、第3態様の雌蚕致死カイコの作出方法における「2つの遺伝子組換えカイコの系統を交配させる方法」に準じて行えばよい。
(目的)
本発明のMascR遺伝子発現ベクターを構築する。
本実施例では、第1発現ユニットと第2発現ユニットの2つの遺伝子発現ユニットからなるMascR遺伝子発現ベクターを構築した。第1発現ユニットとしては、ユビキタスなプロモーターであるアクチン3プロモーターと、転写調節因子の遺伝子であるGAL4遺伝子を有する既知の形質転換用遺伝子発現ベクターpBac[A3-GAL4: 3xP3-DsRed](Uchino et al., 2006, J. Insect Biotechnol. Sericology 75: 89-97)を用いたことから、ここでは、第2発現ユニットとしてpUAS-MascRベクターを構築した。また第2発現ユニットの対照用として野生型カイコMusc遺伝子を含むpUAS-Mascベクターを構築した。
本発明のMascR遺伝子発現ベクター第2発現ユニットとしてpBacMCS[UAS-MascR-SV40,3xP3-EGFP](本明細書ではしばしば「pUAS-MascR」と表記する)と、その対照用第2発現ユニットとしてpBacMCS[UAS-Masc-SV40, 3xP3-EGFP](本明細書ではしばしば「pUAS-Masc」と表記する)を得た。pUAS-MascR及びpUAS-Mascの構成を図3に示す。
(目的)
実施例1で構築したMascR遺伝子発現ベクターを用いて本発明の雌蚕致死カイコ系統を作出する。
実施例1で構築したMascR遺伝子発現ベクター第2発現ユニットpUAS-MascRとその対照用第2発現ユニットpUAS-Mascを、Qiagen Plasmid Midi Kit (Qiagen)を用いて精製した。具体的な生成方法は、キットに添付のプロトコルに従った。精製後のpUAS-MascRとpUAS-Mascを、それぞれトランスポゾン転移酵素をコードするpiggyBacヘルパープラスミドと共に、非休眠系統であるカイコw1, pnd系統の産卵後2〜8時間の卵に顕微注入した(Tamura et al. 2000;前述)。注入後の卵は、加湿状態下、25℃で孵化するまでインキュベートした。孵化後、12時間明期と12時間暗期の光条件で25℃の飼育室にて、全齢を人工飼料(シルクメイト原種1-3齢S、日本農産工)で飼育した。人工飼料は2〜3日毎に交換した(Uchino K. et al., 2006;前述 )。羽化後、兄妹交配を行い、得られたF1卵を孵化させて、3xP3-EGFPマーカーによる眼の蛍光の有無で選抜し、目的の遺伝子組換えカイコ系統を作出した。遺伝子組換えカイコ系統は、休眠系統であるw-cと交配させて系統を維持した。
pUAS-MascRが染色体に組込まれた雌蚕致死カイコ系統として「sumi13系統」(sumi13-1及びsumi13-3の2系統)と、UAS-Mascが染色体に組込まれた対照用系統として「sumi12系統」(sumi12-1及びsumi12-2の2系統)を得た。なお、雌蚕致死カイコ系統の2系統について、pUAS-MascRの染色体への挿入は、サザンブロッティングにより確認した(図示せず)。
(目的)
本発明の雌蚕致死カイコ系統を用いて作出される雌蚕致死カイコがオス個体のみとなることを検証する。
実施例2で樹立したsumi13系統(UAS-MascR系統;雌蚕致死カイコ系統)とsumi12系統系統(UAS-Masc;対照用系統)のオス個体を、それぞれ193-2系統(BmA3-GAL4系統)(Uchino et al., 2006;前述)のメス個体と交配させてF1個体を得た。193-2系統は、カイコアクチン3プロモーターとGAL4遺伝子を連結した第1発現ユニットの構成を有する既知遺伝子発現ベクターを染色体に組込んだ遺伝子組換えカイコ系統である。
表2に、各遺伝子型の胚数、孵化率及び5齢(終齢)幼虫の雌雄個体数を、図4に各系統における遺伝子型の性比を示す。
(目的)
実施例3で得られた第1発現ユニットと第2発現ユニットを有するF1個体(G+R)において、致死個体がメスであることを確認する。
実施例3の表2の結果からMascR遺伝子を発現する雌蚕致死カイコ(G+R)は、5齢ステージまでに約半数の個体が飼育中に死亡した。そこで、死亡した個体からゲノムを抽出後、性染色体を検出するPCRによって個体性別を判定した。
図5Aに結果を示す。sumi13-1×193-2(G+R)区、sumi13-3×193-2(G+R)区ともに、死亡個体の大多数がメスであることが明らかとなった。また、これらの死亡個体では、2齢以降の生育が、正常に生育したオス個体と比較して著しく遅延していた(図示せず)。したがって、MascRタンパク質は、メス個体において幼虫期の生育遅延を引き起こし、メス致死を誘導することが示唆された。
(目的)
本発明の雌蚕致死カイコ系統から作出される雌蚕致死カイコが形成する繭の形態等について検証する。
実施例3のsumi13-1×193-2(G+R)区、及びsumi13-3×193-2(G+R)区で得られた雌蚕致死カイコの生存個体は、全てオスであった。これらの個体が性染色体レベルでオスであることを確認するために各個体の核型を調べた。sumi13-1×193-2(G+R)区から5齢幼虫11個体、sumi13-3×193-2(G+R)区から5齢幼虫3個体を選択して、各個体からゲノムDNAを抽出した後、核型を判定するためのPCRを行った。具体的な方法は、実施例4に記載の方法に準じた。
図5B及び図6に結果を示す。
図5Bは、雌蚕致死カイコの5齢幼虫における性染色体の核型を示している。雌蚕致死カイコの生存個体は、全て性染色体型がZZ型のオスであることが確認された。
(目的)
実施例3で作出した雌蚕致死カイコ系統は、193-2系統が転写調節因子の遺伝子としてGAL4遺伝子を包含し、sumi13系統がGAL4の標的プロモーターであるUASとMascR遺伝子を包含することから雌蚕致死カイコ系統だけでなく、生存するオスが不妊となる雌蚕致死雄蚕不妊カイコ系統でもある。
193-2系統がオス不妊系統であることは、Uchinoら(Uchino et al., 2008, JIBS, Insect biochem. Mol. Biol., 38: 1165-1173)に記載されている。そこで、193-2系統のメスと白/C系統のオスを交配させた場合、及び白/C系統のメスと193-2系統のオスを交配させた場合、それぞれのメスの産卵数を確認した。
図7及び図8に結果を示す。
図7は、193-2系統と白/C系統を相互交配させた時のメスの産卵状態を示している。Aは193-2系統のメスと白/C系統のオスを交配させた場合、Bは白/C系統のメスと193-2系統のオスを交配させた場合である。193-2系統のメスは正常に産卵し、次世代を得ることができたが、193-2系統のオスと交配した白/C系統のメスは、正常産卵数の1/4以下しか産卵できず、しかもそれらは全て孵化しなかった。
3は白/C系統メス×w1-pnd系統オス、及び4は白/C系統メス×白/C系統オスの結果である。同系統のメスを使用した場合であっても193-2系統オスを使用した場合には、未交尾メスの産卵数をも下回り、またその卵も全て孵化しなかった。
Claims (14)
- Fem piRNA-Siwi複合体に対する切断耐性と野生型Masc遺伝子の活性を有する変異型Masc遺伝子であって、
配列番号1で示される塩基配列からなるカイコMasc遺伝子において1391位〜1419位のFem piRNA認識配列内、又は
カイコMasc遺伝子のカイコガ属昆虫のオルソログにおいて前記Fem piRNA認識配列に対応する塩基配列内
に1又は2以上の、ナンセンス変異以外の塩基置換、フレームシフトを生じない欠失、及び/又はフレームシフトを生じない付加の変異を有し、かつ前記遺伝子の転写産物とFem piRNA-Siwi複合体との結合が該変異によって抑制される前記変異型Masc遺伝子。 - 前記変異が
カイコMasc遺伝子におけるFem piRNA認識配列内の1409位及び1410位を含む連続する15塩基からなる領域内、又は
カイコMasc遺伝子のカイコガ属昆虫のオルソログにおける対応する領域内
に存在する、請求項1に記載の変異型Masc遺伝子。 - 前記塩基置換がサイレント変異である、請求項1又は2に記載の変異型Masc遺伝子。
- ユビキタスな発現誘導型プロモーターの下流に機能的に連結した請求項1〜3のいずれか一項に記載の変異型Masc遺伝子を発現可能な状態で含む変異型Masc遺伝子発現ベクター。
- 前記ユビキタスな発現誘導型プロモーターが熱ショックタンパク質70プロモーターである、請求項4に記載の変異型Masc遺伝子発現ベクター。
- ユビキタスなプロモーター及び該プロモーターの下流に機能的に連結した転写調節因子をコードする遺伝子を含む第1発現ユニット、及び
該転写調節因子の標的プロモーター及び該標的プロモーターの下流に機能的に連結した請求項1〜3のいずれか一項に記載の変異型Masc遺伝子を含む第2発現ユニット
から構成される変異型Masc遺伝子発現ベクター。 - 前記ユビキタスなプロモーターがアクチン3プロモーター、熱ショックタンパク質70プロモーター、又は伸長因子プロモーターである、請求項6に記載の変異型Masc遺伝子発現ベクター。
- 前記転写調節因子をコードする遺伝子がGAL4遺伝子であり、かつ該転写調節因子の標的プロモーターがUASプロモーターである、請求項6又は7に記載の変異型Masc遺伝子発現ベクター。
- 請求項4又は5に記載の変異型Masc遺伝子発現ベクターを含む雌蚕致死カイコ系統。
- 請求項6に記載の第2発現ユニットのみを含む雌蚕致死カイコ系統。
- 請求項8に記載の第2発現ユニットのみを含む雌蚕致死雄蚕不妊カイコ系統。
- 請求項9に記載の雌蚕致死カイコ系統において、発生初期の胚に発現誘導処理を施す工程を含む雌蚕致死カイコの作出方法。
- 請求項6又は7に記載の第1発現ユニットを有する遺伝子組換えカイコ系統と請求項10に記載の雌蚕致死カイコ系統とを交配させる工程、及び
前記第1及び第2発現ユニットを有する雌蚕致死カイコを選択する工程
を含む雌蚕致死カイコの作出方法。 - 請求項8に記載の第1発現ユニットを有する雌蚕致死雄蚕不妊カイコ系統と請求項11に記載の雌蚕致死雄蚕不妊系統とを交配させる工程、及び
前記第1及び第2発現ユニットを有する雌蚕致死雄蚕不妊カイコを選択する工程
を含む雌蚕致死雄蚕不妊カイコの作出方法。
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