JP6493313B2 - 全固体電池の製造方法 - Google Patents
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Description
全固体電池の安全な運搬のために、衝撃等による電池の内部短絡による、ジュール発熱を抑制するための試みがなされている。
特許文献1には、正極、負極、非電解質のうちの少なくとも1つが所定温度を超えると抵抗が上昇する正温度係数(PTC:Positive Temperature Coefficient)機能を有する非水系二次電池が開示されている。具体的には、結晶性の熱可塑性重合体が電極材料や非水電解液中の導電材と混合されることによってPTC機能が発揮されることが記載されている。
特許文献2には、集電体を構成する導電材の電解液ヘの溶出を抑制することで、耐久性を向上させるために、集電体を加熱処理して、表面に酸化膜を形成することが開示されている。
特許文献3には、活物質の剥離を防止するために、集電体表面にべーマイト処理又はクロメート処理し、厚み0.5〜5μmの酸化膜を形成することが開示されている。
本発明は上記実情を鑑みて成し遂げられたものであり、本発明の目的は、エネルギー密度を大きく低下させることなく、通常使用時には所望の出力を維持しつつ、外部衝撃等による異常発生時には電池の過度な温度上昇を抑制することができる全固体電池を提供することである。
前記アルミニウム基材を10〜50秒間アルマイト処理又はベーマイト処理することにより、当該アルミニウム基材表面に前記酸化アルミニウム層を形成する工程と、
前記正極、前記固体電解質層、及び、前記負極をこの順に積層し、積層方向に加圧する工程と、を含み、前記加圧により、前記全固体電池に200MPa以上のプレス圧が付与されることを特徴とする。
しかし、電極集電体の表面抵抗を増加させると出力が低下する。
そこで、特許文献1に開示されているように、導電材と樹脂からなるカーボンコート層を形成し、PTC機能を発揮させる方法などが検討されている。
しかし、機能発現の為には導電材の導電経路を樹脂の体積膨張により切断する必要があり、確率論により、ある程度の樹脂の厚さ(3〜10μm)が必要である。そのため、電池の体積が大きくなり、電池のエネルギー密度が低下してしまうという問題がある。
また、本発明の全固体電池は、外部衝撃負荷等による異常発生時(界面剥がれ等発生時)には、荷重抜けによって、アルミニウム基材の表面に形成された酸化アルミニウム層の抵抗が急激に高くなり、電池内の電流が抑制されるため、電池の過度な温度上昇を抑制することができる。
すなわち、本発明によれば、エネルギー密度を大きく低下させることなく、電池の通常使用時には所望の出力を維持しつつ、外部衝撃等による異常発生時には酸化アルミニウム層が電池機能停止効果を発揮することができる。
さらに、酸化アルミニウム層は、アルミニウム基材を酸化させて形成すると、製造工程を簡素化することも可能である。
本発明の全固体電池は、正極と、負極と、当該正極と当該負極との間に配設された固体電解質層とを備え、
前記正極及び/又は前記負極が、表面に厚さ0.01〜0.1μmの酸化アルミニウム層を有するアルミニウム基材と、当該酸化アルミニウム層上に形成された電極活物質層を有することを特徴とする。
15MPaでの加圧条件は、外部衝撃等による異常発生時に荷重抜けした際の圧力の一例であり、電池の異常発生時を想定した条件である。15MPaの荷重付与時の抵抗が2980mΩ/cm2以上であることにより、外部衝撃等の異常が発生した場合に、電池内の電流が抑制されるため、電池の過度な温度上昇を抑制することができる。
400MPaでの加圧条件は、全固体電池製造時のプレス圧の一例であり、電池の通常使用時を想定した条件である。400MPaの荷重付与時の抵抗が150mΩ/cm2以下であることにより、電池の通常使用時には、所望の出力を得ることができる。
なお、全固体電池製造時に電極と固体電解質層との間で、良好な界面が形成されれば、釘などの外部衝撃(異常衝撃)が加わらない限り、界面剥離は起こらないと考えられる。良好な界面を形成するためには少なくとも200MPa以上で加圧することが好ましい。
なお、15MPaのような低加圧時には酸化アルミニウム層表面の抵抗が高く、400MPaのような高加圧時には酸化アルミニウム層表面の抵抗が低くなるのは、高加圧(プレス)時に表面に形成された薄い酸化アルミニウム層を電極活物質が突き破ったり、酸化アルミニウム層が延びることにより、電極活物質層と酸化アルミニウム層表面の接触抵抗が荷重増加に伴い低下したりするためであると考えられる。
また、本発明の全固体電池は、単セルであってもよいが、単セルを複数備えるセル集合体であってもよい。セル集合体としては、例えば、平板セルを複数積層した電池スタックなどが挙げられる。
全固体電池100は、表面に酸化アルミニウム層10が形成されたアルミニウム基材14、及び、酸化アルミニウム層10上に形成された電極活物質層11を含む電極16と、対極層12、及び、対極層12の集電を行う集電体15を含む対極17と、電極活物質層11と対極層12の間に配設される固体電解質層13とを有している。
例えば、電極活物質層11として正極活物質層を固体電解質層13上に積層した場合は、対極層12として固体電解質層13上に負極活物質層を積層する。一方、電極活物質層11として固体電解質層13上に負極活物質層を積層した場合は、対極層12として固体電解質層13上に正極活物質層を積層する。
対極は、少なくとも、対極層と、対極層の集電を行う集電体を含むものでれば、特に限定されず、集電体が、表面に酸化アルミニウム層が形成されたアルミニウム基材であることが好ましく、この場合、対極層は当該酸化アルミニウム層上に形成されていることが好ましい。
電極活物質層は、少なくとも電極活物質を含有するものであれば特に限定されない。
なお、電極が正極であるか負極であるか、及び、電極活物質層が正極活物質層であるか負極活物質層であるかは、使用する電極活物質の電位によって決まる。また、電極が正極の場合は、対極が負極であり、電極活物質層が正極活物質層である場合、対極層が負極活物質層である。
電極活物質は、リチウムイオン等のイオンを吸蔵及び/又は放出できるものであれば、特に限定されない。
電極活物質の形状は特に限定されないが、粒子形状であることが好ましい。
電極活物質としては、LiCoO2、LiNiO2、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2、LiVO2、LiCrO2等の層状活物質、LiMn2O4、Li1+xMn2−x−yMyO4(MがAl、Mg、Co、Fe、Ni、Znから選ばれる一種以上)で表される組成の異種元素置換Li−Mnスピネル、Li2NiMn3O8等のスピネル型活物質、Li4Ti5O12等のチタン酸リチウム、LiMPO4(MがFe、Mn、Co、Ni)等のオリビン型活物質、Li3V2P3O12等のNASICON型活物質、三価バナジウム(V2O5)、酸化モリブデン(MoO3)等の遷移金属酸化物、硫化チタン(TiS2)等の遷移金属硫化物、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、グラファイト、高配向性熱分解グラファイト(HOPG)、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素材料、LiCoN等のリチウムコバルト窒化物、LixSiyOz等のリチウムシリコン酸化物、リチウム金属(Li)、LiM(MがSn、Si、Al、Ge、Sb、P等)等のリチウム合金、In、Al、Si、Sn等の金属、MgxM(MがSn、Ge、Sb)、NySb(NがIn、Cu、Mn)等のリチウム貯蔵性金属間化合物とそれらの誘導体等が挙げられる。これら電極活物質の中でも、正極活物質としては、LiCoO2、LiNi0.5Mn1.5O4、LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2、LiFePO4、LiMn2O4、LiMnPO4等を用いることが好ましい。負極活物質としては、グラファイト、高配向性熱分解グラファイト(HOPG)、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素材料を用いることが好ましい。
ここで、正極活物質と負極活物質には明確な区別はなく、2種類の化合物の充放電電位を比較して貴な電位を示すものを正極に、卑な電位を示すものを負極に用いて任意の電圧の電池を構成することができる。
本発明における電極活物質粒子の平均粒径は、特に限定されない。電極活物質粒子の平均粒径は、0.1〜30μmであることが好ましい。なお、電極活物質粒子が、複数の電極活物質結晶が結合した多結晶の電極活物質粒子である場合には、電極活物質粒子の平均粒径とは、多結晶の電極活物質粒子の平均粒径のことを指すものとする。
正極活物質層の厚さは、特に限定されず、例えば、下限としては2nm以上、特に100nm以上であることが好ましく、上限としては1000μm以下、特に500μm以下であることが好ましい。
導電性炭素材料としては特に限定されないが、反応場の面積や空間の観点から、高比表面積を有する炭素材料が好ましい。具体的には、導電性炭素材料は10m2/g以上、特に100m2/g以上、さらに600m2/g以上の比表面積を有することが好ましい。
高比表面積を有する導電性炭素材料の具体例として、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等)、活性炭、カーボン炭素繊維(例えば、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバー、気相法炭素繊維等)等を挙げることができる。
ここで、導電材の比表面積は、たとえばBET法によって測定することができる。
また、正極活物質層における導電材の含有割合は、導電材の種類によって異なるものであるが、正極活物質層の総質量を100質量%としたとき、通常、1〜30質量%であることが好ましい。
また、正極活物質層における結着剤の含有割合は、正極活物質等を固定化できる程度であれば良く、より少ないことが好ましい。結着剤の含有割合は、正極活物質層の総質量を100質量%としたとき、通常、0〜10質量%であることが好ましい。
混合方法は、特に限定されず、湿式混合、乾式混合のどちらでもよい。
湿式混合の場合、例えば、正極活物質粒子、導電材、結着剤、分散媒を混合してスラリーを作製し、当該スラリーを塗布、乾燥させる方法等が挙げられる。分散媒としては、酪酸ブチル、酢酸ブチル、ジブチルエーテル、ヘプタン等が挙げられる。スラリーの塗布方法としては、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、ダイコート法、ドクターブレード法、インクジェット法、メタルマスク印刷法、静電塗布法、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法等が挙げられる。具体的には、スラリーを後述する集電体又はキャリアフィルムに塗布した後、乾燥させ、必要に応じて、圧延、切断することで、正極活物質層を形成することができる。
乾式混合の場合、正極活物質粒子、導電材、結着剤を、乳鉢等を用いて混合する方法等が挙げられる。
負極活物質層における負極活物質の含有量は、例えば10質量%以上であることが好ましく、20質量%〜90質量%の範囲内であることがより好ましい。
なお、負極活物質層に用いられる導電材および結着剤については、上述した正極活物質層における場合と同様である。負極活物質層の厚さは、特に限定されず、例えば0.1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましい。
分散媒及び塗布方法は、上述した正極活物質層の製造方法と同様である。
アルミニウム基材は、正極集電体及び負極集電体の少なくともいずれか一方として用いられていればよく、正極集電体として用いられることが好ましい。また、正極集電体及び負極集電体の両方共がアルミニウム基材であってもよい。
アルミニウム基材としては、Al箔が挙げられる。
アルミニウム基材の厚さとしては、特に限定されず、6〜20μmが好ましく、抵抗を低くする観点、及び、作業効率の観点から10〜20μmであることがより好ましく、電池体積を小さくする観点から10〜15μmが特に好ましい。
アルミニウム基材以外の集電体の形状としては、例えば箔状、板状、メッシュ状等を挙げることができ、箔状が好ましい。
アルミニウム基材以外の集電体の厚さは、特に限定されないが、例えば、10〜1000μm、特に20〜400μmであることが好ましい。
また、アルミニウム基材を含む集電体は、外部との接続部となる端子を有していてもよい。
外部衝撃等による異常発生時に電池機能停止効果を発揮させるためには、酸化アルミニウム層は、少なくとも、アルミニウム基材の電極活物質層と接触する部分の表面に形成されていればよい。また、釘等の電導体が電池に刺さることで起きる内部短絡時には、釘等の電導体の周りに絶縁体である酸化アルミニウム層があると、温度上昇を効率的に抑制できる。そのため、アルミニウム基材は、当該アルミニウム基材の全表面に酸化アルミニウム層を有していることが好ましい。
酸化アルミニウム層の形成方法としては、ベーマイト処理、アルマイト処理等が挙げられる。
固体電解質層に含まれる固体電解質は、特に限定されず、本発明の全固体電池が全固体リチウム二次電池の場合は、例えば、Li2O−B2O3−P2O5系、Li2O−SiO2系、Li2O−B2O3系、Li2O−B2O3−ZnO系からなる群から単独または組み合わせて選ばれる酸化物系固体電解質、Li2S−SiS2系、Li2S−P2S3系、Li2S−P2S5系、Li2S−GeS2系、Li2S−B2S3系、Li3PO4−P2S5系、Li4SiO4−Li2S−SiS2からなる群から単独または組み合わせて選ばれる硫化物系固体電解質、LiI,LiI−Al2O3、Li3N、Li3N−LiI−LiOH等や、Li1.3Al0.3Ti0.7(PO4)3、Li1+x+yMxTi2−xSiyP3−yO12(MがAl、Ga、0≦x≦0.4、0≦x≦0.6)、[(M1/2Li1/2)1−zNz]TiO3(MがLa、Pr、Nd、Sm、NがSr、Ba、0≦x≦0.5)、Li5La3Ta2O12、Li7La3Zr2O12、Li6BaLa2Ta2O12、Li3PO4−3/2xNx(x<1)、Li3.6Si0.6P0.4O4等の結晶質硫化物・酸化物・酸窒化物が挙げられる。さらに、LiF、LiCl、LiBr、LiI、Li3PO4、Li4SiO4、Li4GeS4からなる群から単独または組み合わせて選ばれるリチウム化合物を混合して用いることができる。中でも、Li2S−P2S5系の硫化物系固体電解質が好ましく、一般式xLiI・(100−x)(0.75Li2S・0,25P2S5)(xは0<x<30)で表される硫化物系固体電解質が特に好ましい。
固体電解質層における固体電解質の含有量は、例えば60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。
なお、固体電解質層に用いられる結着剤については、上述した正極活物質層における場合と同様である。固体電解質層の厚さは、例えば0.1μm〜1000μmの範囲内、中でも0.1μm〜300μmの範囲内であることが好ましい。
固体電解質層の作製方法としては、特に限定されず、固体電解質の圧粉体を準備し、当該圧粉体を正極活物質層及び/又は負極活物質層上に配置した状態で加圧することで、正極活物質層及び/又は負極活物質層と積層した固体電解質層を作製することができる。
外装体の材質は、固体電解質に安定なものであれば特に限定されないが、Al、SUS等の金属体、ポリプロピレン、ポリエチレン、及び、アクリル樹脂等の樹脂が挙げられる。
外装体が金属体の場合は、外装体の表面のみが金属体で構成されるものであっても、外装体全体が金属体で構成されるものであってもよい。
本発明の全固体電池の製造方法は、前記全固体電池の製造方法であって、
前記アルミニウム基材を10〜50秒間アルマイト処理又はベーマイト処理することにより、当該アルミニウム基材表面に前記酸化アルミニウム層を形成する工程を有することを特徴とする。
ベーマイト処理時間、及び、アルマイト処理時間は、10〜50秒であればよい。
ベーマイト処理としては、従来公知の方法を用いることができ、例えば、高温の超純水等の水蒸気中でアルミニウム基材表面に酸化皮膜を生成させる方法等が挙げられる。なお超純水に少量のアンモニア水等のアルカリ溶液を添加してもよい。
アルマイト処理としては、従来公知の方法を用いることができ、例えば、アルミニウム基材を電極に接続し陽極酸化させる方法等が挙げられる。
[酸化アルミニウム層の形成]
アルミニウム基材としてAl箔(1N30H UACJ製 厚さ15μm)を用意し、ベーマイト処理を10秒行い、Al箔表面に酸化アルミニウム層を形成させた。酸化アルミニウム層の厚さは0.01μmであった。
出発原料として、硫化リチウム(Li2S、日本化学工業製、純度99.9%)、五硫化二リン(P2S5、Aldrich製、純度99%)およびヨウ化リチウム(LiI、高純度化学製、純度99%)を用いた。次に、Ar雰囲気下(露点−70℃)のグローブボックス内で、Li2SおよびP2S5を、75Li2S・25P2S5のモル比となるように秤量した。次に、LiIが10mol%となるように、LiIを秤量した。この混合物2gを、遊星型ボールミルの容器(45ml、ZrO2製)に投入し、脱水ヘプタン(水分量30ppm以下、4g 関東化学製)を投入し、さらにZrO2ボール(φ=5mm、53g)を投入し、容器を完全に密閉した(Ar雰囲気)。この容器を遊星型ボールミル機(フリッチュ製P7)に取り付け、台盤回転数500rpmで、1時間処理および15分休止のメカニカルミリングを40回行った。その後、得られた試料を、ホットプレート上でヘプタンを除去するように120℃で2時間乾燥させ、硫化物系固体電解質の粗粒原料を得た。得られた硫化物系固体電解質の組成は、一般式xLiI・(100−x)(0.75Li2S・0.25P2S5)における、x=10であった。
得られた粗粒原料と、脱水ヘプタン(関東化学製)及びジブチルエーテルとの合計質量が10gであり、且つ、当該合計質量に占める粗粒原料の質量の割合が10%となるように調整し、混合物を得た。
得られた混合物、及びジブチルエーテルと、ZrO2ボール(φ=1mm、40g)とを、遊星型ボールミルの容器(45ml、ZrO2製)に投入し、容器を完全に密閉した(Ar雰囲気)。この容器を遊星型ボールミル機(フリッチュ製P7)に取り付け、台盤回転数150rpmで、20時間、湿式メカニカルミリングを行うことにより、粗粒原料を粉砕し、硫化物系固体電解質の微粒子を得た。
得られた硫化物系固体電解質の微粒子を、アルミニウム製のシャーレの上に1g配置し、180℃に加熱したホットプレート上で2時間、保持することにより、硫化物系固体電解質の微粒子を結晶化させ、硫化物系固体電解質の結晶粒子を得た。
そして、上記硫化物系固体電解質の結晶粒子である10LiI・90(0.75Li2S・0.25P2S5)粒子1gと結着剤(PVdF)0.01gを混合し、得られた混合物をプレスし、固体電解質層の圧粉体を形成した。
まずLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2粒子(日亜化学工業製)を、LiNbO3により被覆した酸化物被覆活物質粒子(平均粒径D50=5μm)を準備した。
正極活物質として上記酸化物被覆活物質粒子52gと、硫化物系固体電解質として10LiI−15LiBr−75(0.75Li2S−0.25P2S5)粒子17gと、導電材として気相成長炭素繊維(VGCF 昭和電工製)1gと、脱水ヘプタン(関東化学製)15gを秤量し、十分に混合し、正極合材スラリーを得た。
得られた正極合材スラリーを、上記ベーマイト処理を行ったAl箔上に塗布、乾燥し、正極を得た。
負極活物質としてグラファイト(三菱化学製)36gと、硫化物系固体電解質として10LiI−15LiBr−75(0.75Li2S−0.25P2S5)粒子25gを秤量し、混合し、負極合材スラリーを得た。
得られた負極合材スラリーを、Cu箔上に塗布、乾燥し、負極を得た。
次に、上記固体電解質層の圧粉体の一方の面に正極を、他方の面に負極をそれぞれ配置し、プレス圧6ton/cm2(≒588MPa)、プレス時間1分間で平面プレスし、単セルを作製した。そして、上記単セルを20個積層し、当該積層体を、積層方向にプレス圧6ton/cm2(≒588MPa)の圧力で拘束した。その後、集電タブをセル端子と超音波溶接し、アルミラミネートで当該積層体を真空封入し、電池容量が2Ah級の全固体電池を得た。
アルミニウム基材としてAl箔を用意し、当該Al箔にベーマイト処理を20秒行い、Al箔表面に酸化アルミニウム層を形成させたこと以外は、実施例1と同様に全固体電池を製造した。酸化アルミニウム層の厚さは0.03μmであった。
アルミニウム基材としてAl箔を用意し、当該Al箔にベーマイト処理を30秒行い、Al箔表面に酸化アルミニウム層を形成させたこと以外は、実施例1と同様に全固体電池を製造した。酸化アルミニウム層の厚さは0.05μmであった。
アルミニウム基材としてAl箔を用意し、当該Al箔にベーマイト処理を40秒行い、Al箔表面に酸化アルミニウム層を形成させたこと以外は、実施例1と同様に全固体電池を製造した。酸化アルミニウム層の厚さは0.07μmであった。
アルミニウム基材としてAl箔を用意し、当該Al箔にアルマイト処理を10秒行い、Al箔表面に酸化アルミニウム層を形成させたこと以外は、実施例1と同様に全固体電池を製造した。酸化アルミニウム層の厚さは0.04μmであった。
アルミニウム基材としてAl箔を用意し、当該Al箔にアルマイト処理を50秒行い、Al箔表面に酸化アルミニウム層を形成させたこと以外は、実施例1と同様に全固体電池を製造した。酸化アルミニウム層の厚さは0.1μmであった。
アルミニウム基材としてAl箔を用意し、当該Al箔にベーマイト処理を行わず、Al箔表面に酸化アルミニウム層を形成させなかったこと以外は、実施例1と同様に全固体電池を製造した。
アルミニウム基材としてAl箔を用意し、当該Al箔にベーマイト処理を80秒行い、Al箔表面に酸化アルミニウム層を形成させたこと以外は、実施例1と同様に全固体電池を製造した。酸化アルミニウム層の厚さは0.13μmであった。
アルミニウム基材としてAl箔を用意し、当該Al箔にアルマイト処理を100秒行い、Al箔表面に酸化アルミニウム層を形成させたこと以外は、実施例1と同様に全固体電池を製造した。酸化アルミニウム層の厚さは0.2μmであった。
図2は、酸化アルミニウム層の表面抵抗測定の一例を示す模式図である。図2に示すように、比較例1で用いた表面処理を施していないAl箔、及び、実施例1〜6、比較例2〜3で用いた表面処理を施したAl箔を直径11.28cm(面積1cm2)になるように切り出し、SUS製の治具によって両面を加圧し、15MPa、及び、400MPa付与した時の表面抵抗値を測定した。なお、表面抵抗値は配線及び治具の抵抗値を除いた値で計測した。結果を表1、図3(15MPaの荷重付与時の表面抵抗)、図4(400MPaの荷重付与時の表面抵抗)に示す。
15MPaの荷重付与時の表面抵抗は、実施例1が、3900mΩ/cm2、実施例2が、4430mΩ/cm2、実施例3が、4490mΩ/cm2、実施例4が、8790mΩ/cm2、実施例5が、2980mΩ/cm2、実施例6が、3230mΩ/cm2、比較例1が、1210mΩ/cm2、比較例2が、5550mΩ/cm2であり、比較例3が、10kΩ/cm2より大きかった。
400MPaの荷重付与時の表面抵抗は、実施例1が、28mΩ/cm2、実施例2が、30mΩ/cm2、実施例3が、40mΩ/cm2、実施例4が、86mΩ/cm2、実施例5が、110mΩ/cm2、実施例6が、128mΩ/cm2、比較例1が、13mΩ/cm2、比較例2が、246mΩ/cm2であり、比較例3が、10kΩ/cm2より大きかった。
実施例1〜6、比較例1〜3で得られた全固体電池について、定電流充電−定電流放電(CCCV充放電)を行った。CC充放電レートは1/3C(0.67A)、CVカット電流は0.02A、充電停止電圧は4.55V、放電停止電圧は3.0Vの条件で電池容量を測定した。電池容量は、実施例1が、1.78Ah、実施例2が、1.77Ah、実施例3が、1.80Ah、実施例4が、1.80Ah、実施例5が、1.66Ah、実施例6が、1.75Ah、比較例1が、1.79Ah、比較例2が、1.70Ah、比較例3が、1.69Ahであった。この結果により、酸化アルミニウム層があっても電池容量に大きな影響はないことが確認できた。
実施例1〜6、比較例1〜3で得られた全固体電池について、電池電圧を3.6Vに調整し、定電力放電(40〜50Wh)を実施し、5秒間で放電可能な最大の電力値を電池出力として測定した。なお、放電停止電圧は3.0Vとした。電池出力は、実施例1が、51.3mW/cm2、実施例2が、52.4mW/cm2、実施例3が、52.3mW/cm2、実施例4が、53.0mW/cm2、実施例5が、51.3mW/cm2、実施例6が、51.2mW/cm2、比較例1が、55mW/cm2、比較例2が、34.7mW/cm2であり、比較例3は、充電ができなかったため評価できなかった。実施例1〜6は酸化アルミニウム層を有さない比較例1と同等の出力を確保できているのに対し、比較例2は比較例1よりも出力が大きく減少していることが分かる。したがって、酸化アルミニウム層の厚さが0.01μm以上0.1μm以下であれば、電池の通常使用時に所望の出力が得られることが分かる。
実施例1〜6、比較例1〜3で得られた全固体電池について、比較例1を基準とし、上記電池出力の測定値を基準で割った値から、出力維持率を算出した。結果を表1、図5に示す。なお、表1の実施例1〜6、比較例2〜3の出力維持率は、比較例1の出力維持率を100とした時の換算値である。
電池の出力維持率は、比較例1の出力維持率を100%とした時、実施例1が、93.2%、実施例2が、95.3%、実施例3が、95.0%、実施例4が、96.4%、実施例5が、94.0%、実施例6が、93.2%、比較例2が、63.0%であり、比較例3は、充電ができなかったため評価できなかった。
実施例1〜6は、酸化アルミニウム層を有さない比較例1と同等の出力維持率を確保できているのに対し、比較例2は、比較例1よりも出力維持率が大きく減少していることが分かる。したがって、酸化アルミニウム層の厚さが0.01μm以上0.1μm以下であれば、電池の通常使用時に充放電を繰り返しても所望の出力を得られることがわかる。
実施例1〜6、比較例1〜3で得られた全固体電池を事前に15MPaで拘束、4.18Vに充電し、温度を25℃にした状態で準備し、釘刺し試験機に設置した。
図6は、釘刺し時の全固体電池の一例を示す断面模式図である。図6には、電極活物質層11と表面に酸化アルミニウム層10を有するアルミニウム基材14を含む電極16と対極層12と集電体15を含む対極17と、当該電極活物質層11及び当該対極層12の間に配置される固体電解質層13を備える全固体電池に、釘18が刺さった状態が示されている。
図6に示すように、釘刺し時には、アルミニウム基材の表面に存在する酸化アルミニウム層によって、釘刺し時の短絡経路に高抵抗層である酸化アルミニウム層が介在する為、短絡抵抗が増加し、ジュール発熱量を低減させることができると考えられる。
釘刺し試験機にて、釘径Φ8mm、釘刺し速度25mm/secにて電池中央を釘刺しし、発熱温度を観測した。結果を表1、図7、図8(実施例1の発熱温度観測結果)、図9(実施例6の発熱温度観測結果)、図10(比較例1の発熱温度観測結果)に示す。
なお、温度計測は釘刺し部より上部7mmの位置を測定した。発熱温度ΔT(K)は計測温度(℃)−試験前電池温度(℃)から算出した。
表1に示すように、発熱温度は、実施例1が65K、実施例2が55K、実施例3が34K、実施例4が31K、実施例5が34K、実施例6が22K、比較例1が101K、比較例2が19.5Kであり、比較例3は、充電ができなかったため評価できなかった。
酸化アルミニウム層を有する実施例1〜6、比較例2は、酸化アルミニウム層を有さない比較例1と比較して、発熱温度が大きく低下していることがわかる。したがって、酸化アルミニウム層の厚さが0.01μm以上であれば、異常発生時に電池の過度な温度上昇を抑制することができることがわかる。
11 電極活物質層
12 対極層
13 固体電解質層
14 アルミニウム基材
15 集電体
16 電極
17 対極
18 釘
100 全固体電池
Claims (3)
- 正極と、負極と、当該正極と当該負極との間に配設された固体電解質層とを備え、且つ、前記正極及び/又は前記負極が、表面に厚さ0.01〜0.1μmの酸化アルミニウム層を有するアルミニウム基材と、当該酸化アルミニウム層上に形成された電極活物質層を有する全固体電池の製造方法であって、
前記アルミニウム基材を10〜50秒間アルマイト処理又はベーマイト処理することにより、当該アルミニウム基材表面に前記酸化アルミニウム層を形成する工程と、
前記正極、前記固体電解質層、及び、前記負極をこの順に積層し、積層方向に加圧する工程と、を含み、前記加圧により、前記全固体電池に200MPa以上のプレス圧が付与されることを特徴とする全固体電池の製造方法。 - 15MPaの荷重付与時の前記酸化アルミニウム層の表面抵抗が2980mΩ/cm2以上、400MPaの荷重付与時の前記酸化アルミニウム層の表面抵抗が150mΩ/cm2以下である、請求項1に記載の全固体電池の製造方法。
- 前記アルミニウム基材が、当該アルミニウム基材の全表面に前記酸化アルミニウム層を有している、請求項1又は2に記載の全固体電池の製造方法。
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