JP2021077445A - 非水電解質電池 - Google Patents
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Abstract
Description
電池の中でもリチウムイオン二次電池は、高い出力電圧が得られるという点で注目されている。
発熱を抑制する方法として、短絡時の電池抵抗を上昇させることが挙げられる。その一つとして、負極層にチタン酸リチウム(LTO)を含有させる技術がある。LTOはその構造からLi脱離状態、つまり放電状態において、抵抗が上昇する性質を有し、電池の内部短絡発生時はLTOが放電状態となり、短絡電流を抑制することが可能である。しかしLTOは単位質量当たりの容量が少ないことから、短絡電流を十分抑制するためには、負極層内のLTOの含有量を増やす必要があるため、電池容量が低下してしまい、所望の電池容量の確保と電池内部の温度上昇の抑制とを両立することが困難である。
本開示は、上記実情に鑑み、所望の電池容量の確保と電池内部の温度上昇の抑制とを両立することが可能な非水電解質電池を提供することを目的とする。
前記負極層は、非晶質相を含むチタン−ニオブ酸化物と、当該チタン−ニオブ酸化物よりもLi吸蔵放出電位が低い負極活物質を含み、
前記負極層は、前記負極活物質と前記チタン−ニオブ酸化物との合計を100質量%としたとき、前記チタン−ニオブ酸化物を2.0質量%以上含み、
前記チタン−ニオブ酸化物は、CuKα線によるX線回折測定により得られるスペクトルにおいて、回折角2θ=26°±0.5°で観測される最も強度の強い回折ピークの半値全幅が0.17°以上0.20°以下であることを特徴とする非水電解質電池を提供する。
前記負極層は、非晶質相を含むチタン−ニオブ酸化物と、当該チタン−ニオブ酸化物よりもLi吸蔵放出電位が低い負極活物質を含み、
前記負極層は、前記負極活物質と前記チタン−ニオブ酸化物との合計を100質量%としたとき、前記チタン−ニオブ酸化物を2.0質量%以上含み、
前記チタン−ニオブ酸化物は、CuKα線によるX線回折測定により得られるスペクトルにおいて、回折角2θ=26°±0.5°で観測される最も強度の強い回折ピークの半値全幅が0.17°以上0.20°以下であることを特徴とする非水電解質電池を提供する。
図1に示すように、非水電解質電池100は、正極層12及び正極集電体14を含む正極16と、負極層13及び負極集電体15を含む負極17と、正極層12と負極層13の間に配置される電解質層11とを備える。
負極は少なくとも負極層を含み、必要に応じて負極集電体を含む。
負極層は、非晶質相を含むチタン−ニオブ酸化物と、当該チタン−ニオブ酸化物よりもLi吸蔵放出電位が低い負極活物質を含む。なお、チタン−ニオブ酸化物のLi吸蔵放出電位は、約1.5V(vs.Li/Li+)程度である。
負極活物質としては、チタン−ニオブ酸化物よりもLi吸蔵放出電位が低ければ種類は特に限定されず、Li単体、リチウム合金、炭素、Si単体、及びSi合金等が挙げられ、リチウム合金としては、Li−Au、Li−Mg、Li−Sn、Li−Si、Li−Al、Li−B、Li−C、Li−Ca、Li−Ga、Li−Ge、Li−As、Li−Se、Li−Ru、Li−Rh、Li−Pd、Li−Ag、Li−Cd、Li−In、Li−Sb、Li−Ir、Li−Pt、Li−Hg、Li−Pb、Li−Bi、Li−Zn、Li−Tl、Li−Te、及びLi−At等が挙げられる。Si合金としては、Li等の金属との合金等が挙げられ、その他、Sn、Ge、及びAlからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属との合金であってもよい。
チタン−ニオブ酸化物は、CuKα線によるX線回折測定により得られるスペクトルにおいて、回折角2θ=26°±0.5°で観測される最も強度の強い回折ピークの半値全幅が0.17°以上0.20°以下である。2θ=26°±0.5°に現れるピークは、主に(003)面のピークであると考えられる。
チタン−ニオブ酸化物としては、例えば、TiNb2O7等が挙げられる。
チタン−ニオブ酸化物は、単斜晶型の結晶構造を有するものであってもよい。
チタン−ニオブ酸化物の結晶は、空間群C2/mに属するものであってもよい。
チタン−ニオブ酸化物は、非晶質相を含む。すなわち、本開示のチタン−ニオブ酸化物は、結晶の一部が非晶質化し、結晶と非晶質相の両方が混在している。チタン−ニオブ酸化物が、非晶質相を含むかどうかはチタン−ニオブ酸化物に対してCuKα線を使用した粉末X線回折測定を行うことにより確認することができる。
メカニカルミリングは、チタン−ニオブ酸化物を、機械的エネルギーを付与しながら混合する方法であれば特に限定されるものではないが、例えばボールミル、振動ミル、ターボミル、メカノフュージョン、及びディスクミル等が挙げられ、遊星型ボールミルを採用してもよい。
負極集電体の材料は、例えばSUS、銅、及び、ニッケル等を挙げることができる。負極集電体の形態としては、例えば、箔状、及び、板状等を挙げることができる。負極集電体の平面視形状は、特に限定されるものではないが、例えば、円状、楕円状、矩形状、及び、任意の多角形状等を挙げることができる。また、負極集電体の厚さは、形状によって異なるものであるが、例えば1μm〜50μmの範囲内であってもよい。
電解質層は、少なくとも電解質を含む。
電解質には、非水系電解液、ゲル電解質、及び固体電解質等を用いることができる。これらは、1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
リチウム塩としては、例えばLiPF6、LiBF4、LiClO4及びLiAsF6等の無機リチウム塩;LiCF3SO3、LiN(SO2CF3)2(Li−TFSI)、LiN(SO2C2F5)2及びLiC(SO2CF3)3等の有機リチウム塩等を挙げることができる。
非水溶媒としては、例えばエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、γ−ブチロラクトン、スルホラン、アセトニトリル(AcN)、ジメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,3−ジメトキシプロパン、ジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びこれらの混合物等を挙げることができ、高誘電率、低粘度を確保する観点から、高誘電率、高粘度を有するEC、PC、BC等の環状カーボネート化合物と、低誘電率、低粘度を有するDMC、DEC、EMC等の鎖状カーボネート化合物の混合物が好ましく、ECとDECの混合物がより好ましい。
非水系電解液におけるリチウム塩の濃度は、例えば0.3〜5Mであってもよい。
ゲル電解質として、具体的には、上述した非水系電解液に、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリアクリルニトリル、ポリビニリデンフロライド(PVdF)、ポリウレタン、ポリアクリレート、及びセルロース等のポリマーを添加し、ゲル化することにより得られる。
硫化物系固体電解質は、Li元素と、A元素(Aは、P、Ge、Si、Sn、B及びAlの少なくとも1種である)と、S元素とを有していてもよい。硫化物系固体電解質は、ハロゲン元素をさらに有していてもよい。ハロゲン元素としては、例えば、F元素、Cl元素、Br元素、I元素が挙げられる。また、硫化物系固体電解質は、O元素をさらに有していてもよい。
硫化物系固体電解質としては、例えば、Li2S−P2S5、Li2S−P2S5−LiI、Li2S−P2S5−GeS2、Li2S−P2S5−Li2O、Li2S−P2S5−Li2O−LiI、Li2S−P2S5−LiI−LiBr、Li2S−SiS2、Li2S−SiS2−LiI、Li2S−SiS2−LiBr、Li2S−SiS2−LiCl、Li2S−SiS2−B2S3−LiI、Li2S−SiS2−P2S5−LiI、Li2S−B2S3、Li2S−P2S5−ZmSn(ただし、m、nは正の数。Zは、Ge、Zn又はGaのいずれか。)、Li2S−GeS2、Li2S−SiS2−Li3PO4、Li2S−SiS2−LixMOy(ただし、x、yは正の数。Mは、P、Si、Ge、B、Al、Ga又はInのいずれか。)が挙げられる。なお、上記「Li2S−P2S5」の記載は、Li2SおよびP2S5を含む原料組成物を用いてなる材料を意味し、他の記載についても同様である。
硫化物系固体電解質における各元素のモル比は、原料における各元素の含有量を調整することにより制御できる。また、硫化物系固体電解質における各元素のモル比や組成は、例えば、ICP発光分析法で測定することができる。
硫化物系固体電解質の結晶状態は、例えば、硫化物系固体電解質に対してCuKα線を使用した粉末X線回折測定を行うことにより確認することができる。
熱処理温度は、硫化物ガラスの熱分析測定により観測される結晶化温度(Tc)よりも高い温度であればよく、通常、195℃以上である。一方、熱処理温度の上限は特に限定されない。
硫化物ガラスの結晶化温度(Tc)は、示差熱分析(DTA)により測定することができる。
熱処理時間は、ガラスセラミックスの所望の結晶化度が得られる時間であれば特に限定されるものではないが、例えば1分間〜24時間の範囲内であり、中でも、1分間〜10時間の範囲内が挙げられる。
熱処理の方法は特に限定されるものではないが、例えば、焼成炉を用いる方法を挙げることができる。
リチウム塩としては、上述した無機リチウム塩、有機リチウム塩等を使用できる。ポリマーとしては、リチウム塩と錯体を形成するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンオキシド等が挙げられる。
また、固体電解質の粒子の平均粒径(D50)は、特に限定されないが、下限が0.5μm以上であってもよく、上限が2μm以下であってもよい。
電解質層中の固体電解質の割合は、特に限定されるものではないが、例えば50質量%以上であり、60質量%以上100質量%以下の範囲内であってもよく、70質量%以上100質量%以下の範囲内であってもよく、100質量%であってもよい。
セパレータの材料としては、多孔質膜であれば特に限定されず、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、セルロース及びポリアミド等の樹脂を挙げることができ、中でもポリエチレン及びポリプロピレンが好ましい。また、上記セパレータは、単層構造であっても良く、複層構造であっても良い。複層構造のセパレータとしては、例えばPE/PPの2層構造のセパレータ、又は、PP/PE/PP若しくはPE/PP/PEの3層構造のセパレータ等を挙げることができる。
セパレータは、樹脂不織布、ガラス繊維不織布等の不織布等であっても良い。
正極は少なくとも正極層を含み、必要に応じて正極集電体を含む。
正極層は、正極活物質を含み、任意成分として、固体電解質、導電材、及びバインダー等が含まれていてもよい。
正極活物質の形状は特に限定されるものではないが、粒子状であってもよい。
正極活物質の表面には、Liイオン伝導性酸化物を含有するコート層が形成されていても良い。正極活物質と、固体電解質との反応を抑制できるからである。
Liイオン伝導性酸化物としては、例えば、LiNbO3、Li4Ti5O12、及び、Li3PO4等が挙げられる。コート層の厚さは、例えば、0.1nm以上であり、1nm以上であっても良い。一方、コート層の厚さは、例えば、100nm以下であり、20nm以下であっても良い。正極活物質の表面におけるコート層の被覆率は、例えば、70%以上であり、90%以上であっても良い。
正極層における固体電解質の含有量は、特に限定されないが、正極層の総質量を100質量%としたとき、例えば1質量%〜80質量%の範囲内であってもよい。
正極層における導電材の含有量は特に限定されるものではない。
例えば、正極活物質、及び、必要に応じ他の成分を溶媒中に投入し、撹拌することにより、正極層用スラリーを作製し、当該正極層用スラリーを正極集電体等の支持体の一面上に塗布して乾燥させることにより、正極層が得られる。
溶媒は、例えばメチルイソブチルケトン、n−デカン、酢酸ブチル、酪酸ブチル、ヘプタン、及びN−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。
正極集電体等の支持体の一面上に正極層用スラリーを塗布する方法は、特に限定されず、ドクターブレード法、メタルマスク印刷法、静電塗布法、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、及びスクリーン印刷法等が挙げられる。
支持体としては、自己支持性を有するものを適宜選択して用いることができ、特に限定はされず、例えばCu及びAlなどの金属箔等を用いることができる。
加圧方法としては、特に制限されないが、例えば、平板プレス、及びロールプレス等を用いて圧力を付加する方法等が挙げられる。
正極集電体としては、Cu、Ni、Al、V、Au、Pt、Mg、Fe、Ti、Co、Cr、Zn、Ge、及びInからなる群から選択される一又は二以上の元素を含む金属材料を例示することができる。
正極集電体の形態は特に限定されるものではなく、箔状、及びメッシュ状等、種々の形態とすることができる。
外装体の材質は、電解質に安定なものであれば特に限定されないが、ポリプロピレン、ポリエチレン、及び、アクリル樹脂等の樹脂等が挙げられる。
非水電解質電池の形状としては、例えば、コイン型、ラミネート型、円筒型、及び角型等を挙げることができる。
この場合、固体電解質材料の粉末、及び正極合剤の粉末を加圧成形する際のプレス圧は、通常1MPa以上600MPa以下程度である。
加圧方法としては、特に制限されないが、正極層の形成において例示した加圧方法が挙げられる。
酸化チタン(アナターゼ型、和光純薬製)、酸化ニオブ(キシダ化学製)をTiとNbのモル比が1:2となるよう秤量した。これらの原料とφ10mmのジルコニアビーズとエタノールを遊星型ボールミル(フリッチェ製)に投入し、回転数200rpmの条件で、2時間混合した。混合して得られた乾燥物を大気中、1100℃の条件で、12時間、焼成し、チタン−ニオブ酸化物(TNO)の結晶であるTiNb2O7の粉末を得た。
・TNOの一部非晶質化処理
得られたTNO粉末とφ1mmのジルコニアビーズとエタノールを遊星型ボールミルに投入し、回転数400rpmとし、12時間湿式粉砕し、乾燥し、結晶の一部を非晶質化処理したチタン−ニオブ酸化物の粉末を得た。
一部非晶質化処理したTNOの粉末について、X線回折装置(株式会社リガク製、RINT−TTR−III型)を用いてCuKα線を用いたX線回折測定を行った。得られたXRDスペクトルから回折角2θ=26°±0.5°で観測される最も強度の強い回折ピークの半値全幅を算出した。結果を表1に示す。また、実施例1の一部非晶質化処理したチタン−ニオブ酸化物のXRD測定により得られたXRDスペクトルを図2に示す。
一部非晶質化処理したTNOの粉末について、粉体抵抗(体積抵抗、Ωcm)を測定した。粉体抵抗は、島津製作所製EZGraph、エーディーシーデジタル超高抵抗/微小電流計5450を用い、14.1MPa荷重時の抵抗値を測定した。結果を表1に示す。
負極活物質として人造黒鉛と、一部非晶質化処理したTiNb2O7と、を負極材とした。
人造黒鉛とTiNb2O7の総質量を100質量%としたとき、人造黒鉛とTiNb2O7の質量比率は、人造黒鉛:TiNb2O7=97:3となるようにした。
そして、硫化物系固体電解質(10LiI−15LiBr−75(0.75Li2S−0.25P2S5)、自社合成品)の質量比率が負極材:硫化物系固体電解質=65:35となるように硫化物系固体電解質を秤量した。
負極材100質量部に対してPVDF−HFPバインダー(Solvay社製Soref(登録商標);21510)が1.5質量部となるように秤量した。
さらに、主溶媒(メチルイソブチルケトン(脱水グレード)、ナカライテスク株式会社製)、及び、モレキュラーシーブにて脱水処理した副溶媒(n−デカン、東京化成工業株式会社製)の体積比率が主溶媒:副溶媒=90:10となるように溶媒を調合した。
そして、負極材と硫化物系固体電解質とPVDF−HFPバインダーと溶媒を、超音波ホモジナイザーを用いて1分間に亘って混練することにより、スラリー状の負極組成物を作製した。
その後、負極集電体としてニッケル集電体の一面に、ドクターブレードを用いて、スラリー状の負極組成物を塗工し、30分間に亘って自然乾燥させたのち、100℃で30分間に亘って加熱乾燥し負極層を得て、ニッケル集電体と負極層を含む負極とした。
正極活物質としてLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(日亜化学工業株式会社製)及び硫化物系固体電解質として10LiI−15LiBr−75(0.75Li2S−0.25P2S5)(自社合成品)の質量比率が正極活物質:硫化物系固体電解質=75:25となるように秤量し、且つ、正極活物質100質量部に対してPVDF−HFPバインダー(Solvay社製Soref(登録商標);21510)が1.5質量部、及び、正極活物質100質量部に対して導電材として気相成長炭素繊維(昭和電工株式会社製)が3.0質量部となるように秤量した。
さらに、主溶媒(メチルイソブチルケトン(脱水グレード)、ナカライテスク株式会社製)、及び、モレキュラーシーブにて脱水処理した副溶媒(n−デカン、東京化成工業株式会社製)の体積比率が主溶媒:副溶媒=90:10となるように溶媒を調合した。
そして、正極活物質と硫化物系固体電解質とPVDF−HFPバインダーと導電材と溶媒を、超音波ホモジナイザーを用いて1分間に亘って混練することにより、スラリー状の正極組成物を作製した。
その後、正極集電体としてアルミニウム箔(昭和電工株式会社製)の一面に、ドクターブレードを用いて、スラリー状の正極組成物を塗工し、30分間に亘って自然乾燥させたのち、100℃で30分間に亘って加熱乾燥して正極層を得て、アルミニウム箔と正極層を含む正極とした。
Ar雰囲気中のグローブボックス内で、以下の方法により全固体金属リチウム対極セルとして、圧粉方式プレスセル(φ11.28mmの評価電池)を作製した。
マコール製のシリンダに前記硫化物系固体電解質(10LiI−15LiBr−75(0.75Li2S−0.25P2S5)(自社合成品))の粉末を65.0mg入れて1ton/cm2でプレスし固体電解質層を形成し、その上に前述で作製した負極(φ11.28mm)を、負極の負極層が固体電解質層と対向するように配置し、固体電解質層−負極接合体を1ton/cm2でプレスし、その後、固体電解質層の負極層とは反対側の面にLi−In合金を配置し、4.3ton/cm2でプレスした。その後、得られたLi−In合金−固体電解質層−負極積層体を、ボルト3本を用いてトルク6N・mで締結し、密閉容器に入れ、全固体金属リチウム対極セルを作製した。
作製した全固体金属リチウム対極セルについて、0.7V〜2.5Vの電圧範囲で、0.1Cで充電、0.1Cで放電を実施し0.1C放電容量を測定し、さらに、0.1Cで充電、2.0Cで放電を実施し2.0C放電容量を測定した。
そして、測定した放電容量から放電容量維持率[(0.1C放電容量/2.0C放電容量)×100(%)]を算出した。結果を表1に示す。
放電容量維持率が高いほど電池の内部短絡発生時に電池が放電状態に変化するのが早く、電池の安全性が高いと判断することができる。なお、放電維持率は80%以上であってもよい。
Ar雰囲気中のグローブボックス内で、前記硫化物系固体電解質(10LiI−15LiBr−75(0.75Li2S−0.25P2S5)(自社合成品))100質量部に対し、PVDF−HFPバインダー(Solvay社製Soref(登録商標);21510)1質量部を加え、さらに溶媒としてメチルイソブチルケトン(脱水グレード、ナカライテスク株式会社製)を、得られる固体電解質層形成用スラリー中の固形分が35質量%となるように加えたものを、超音波ホモジナイザーを用いて混練することにより、固体電解質層形成用スラリーを得た。
アルミニウム箔の一面にドクターブレードを用いて固体電解質層形成用スラリーを塗工して乾燥させ固体電解質層を得た。
正極の正極層側を固体電解質層と対向させ、室温、2.0ton/cm2でプレスを行い、固体電解質層のアルミニウム箔をはがし、正極層に固体電解質層を転写した。
更に負極の負極層側を固体電解質層と対向させ、135℃、4.3ton/cm2でプレスを行い、正極集電体、正極層、固体電解質層、負極層、負極集電体の順で積層された単位電池を得た。当該単位電池を10個積層し、得られた積層体をラミネートに封止することで全固体積層電池を得た。なお、単位電池は、正極の容量をA、負極の容量をBとした場合、A/Bが1.15となるようにした。全固体積層電池の容量は2.5Ahである。
全固体積層電池に対して0.1Cで充電を行い、室温の環境下で充電状態の全固体積層電池の上部中心にΦ3mmの鉄釘を3mm/秒の速度で貫通させ、全固体積層電池の負極タブに付けた熱電対により全固体積層電池の最高到達温度を確認した。上記釘刺試験を5回繰り返し、平均最高到達温度を算出した。結果を表1に示す。なお、釘刺時の最高到達温度は150℃未満であってもよい。
TNOの一部非晶質化処理において、得られたTNO粉末とφ1mmのジルコニアビーズとエタノールを遊星型ボールミルに投入し、回転数500rpmとし、12時間湿式粉砕し、乾燥したこと以外は実施例1と同様の方法で実施例2の一部非晶質化処理したチタン−ニオブ酸化物の粉末を得た。そして、実施例1と同様の方法で実施例2の一部非晶質化処理したチタン−ニオブ酸化物のXRD測定及び粉体抵抗の測定、全固体金属リチウム対極セルの作製及び評価、並びに、全固体積層電池の作製及び釘刺試験を行った。結果を表1に示す。
TNOの一部非晶質化処理において、得られたTNO粉末とφ0.7mmのジルコニアビーズとエタノールを遊星型ボールミルに投入し、回転数400rpmとし、12時間湿式粉砕し、乾燥したこと以外は実施例1と同様の方法で実施例3の一部非晶質化処理したチタン−ニオブ酸化物の粉末を得た。そして、実施例1と同様の方法で実施例3の一部非晶質化処理したチタン−ニオブ酸化物のXRD測定及び粉体抵抗の測定、全固体金属リチウム対極セルの作製及び評価、並びに、全固体積層電池の作製及び釘刺試験を行った。結果を表1に示す。
TNOの一部非晶質化処理において、得られたTNO粉末とφ0.7mmのジルコニアビーズとエタノールを遊星型ボールミルに投入し、回転数500rpmとし、12時間湿式粉砕し、乾燥したこと以外は実施例1と同様の方法で実施例4の一部非晶質化処理したチタン−ニオブ酸化物の粉末を得た。そして、実施例1と同様の方法で実施例4の一部非晶質化処理したチタン−ニオブ酸化物のXRD測定及び粉体抵抗の測定、全固体金属リチウム対極セルの作製及び評価、並びに、全固体積層電池の作製及び釘刺試験を行った。結果を表1に示す。
TNOの一部非晶質化処理において、得られたTNO粉末とφ0.7mmのジルコニアビーズとエタノールを遊星型ボールミルに投入し、回転数500rpmとし、12時間湿式粉砕し、乾燥したこと以外は実施例1と同様の方法で実施例5の一部非晶質化処理したチタン−ニオブ酸化物の粉末を得た。そして、実施例1と同様の方法で実施例5の一部非晶質化処理したチタン−ニオブ酸化物のXRD測定及び粉体抵抗の測定を行った。また、負極の作製において、人造黒鉛とTiNb2O7の総質量を100質量%としたとき、人造黒鉛とTiNb2O7の質量比率が、人造黒鉛:TiNb2O7=98:2となるようにしたこと以外は実施例1と同様の方法で実施例5の全固体金属リチウム対極セルの作製及び評価、並びに、全固体積層電池の作製及び釘刺試験を行った。結果を表1に示す。
TiNb2O7の代わりにLi4Ti5O12(平均粒径4μm)を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で比較例1のLi4Ti5O12のXRD測定及び粉体抵抗の測定、全固体金属リチウム対極セルの作製及び評価、並びに、全固体積層電池の作製及び釘刺試験を行った。結果を表1に示す。また、比較例1のLi4Ti5O12のXRD測定により得られたXRDスペクトルを図3に示す。
TNOの一部非晶質化処理において、得られたTNO粉末とφ3mmのジルコニアビーズとエタノールを遊星型ボールミルに投入し、回転数200rpmとし、3時間湿式粉砕し、乾燥したこと以外は実施例1と同様の方法で比較例2の一部非晶質化処理したチタン−ニオブ酸化物の粉末を得た。そして、実施例1と同様の方法で比較例2の一部非晶質化処理したチタン−ニオブ酸化物のXRD測定及び粉体抵抗の測定、全固体金属リチウム対極セルの作製及び評価、並びに、全固体積層電池の作製及び釘刺試験を行った。結果を表1に示す。
TNOの一部非晶質化処理において、得られたTNO粉末とφ3mmのジルコニアビーズとエタノールを遊星型ボールミルに投入し、回転数300rpmとし、3時間湿式粉砕し、乾燥したこと以外は実施例1と同様の方法で比較例3の一部非晶質化処理したチタン−ニオブ酸化物の粉末を得た。そして、実施例1と同様の方法で比較例3の一部非晶質化処理したチタン−ニオブ酸化物のXRD測定及び粉体抵抗の測定、全固体金属リチウム対極セルの作製及び評価、並びに、全固体積層電池の作製及び釘刺試験を行った。結果を表1に示す。
TNOの一部非晶質化処理において、得られたTNO粉末とφ3mmのジルコニアビーズとエタノールを遊星型ボールミルに投入し、回転数300rpmとし、3時間湿式粉砕し、乾燥したこと以外は実施例1と同様の方法で比較例4の一部非晶質化処理したチタン−ニオブ酸化物の粉末を得た。そして、実施例1と同様の方法で比較例4の一部非晶質化処理したチタン−ニオブ酸化物のXRD測定及び粉体抵抗の測定を行った。また、負極の作製において、人造黒鉛とTiNb2O7の総質量を100質量%としたとき、人造黒鉛とTiNb2O7の質量比率が、人造黒鉛:TiNb2O7=90:10となるようにしたこと以外は実施例1と同様の方法で比較例4の全固体金属リチウム対極セルの作製及び評価、並びに、全固体積層電池の作製及び釘刺試験を行った。結果を表1に示す。
TNOの一部非晶質化処理において、得られたTNO粉末とφ3mmのジルコニアビーズとエタノールを遊星型ボールミルに投入し、回転数400rpmとし、3時間湿式粉砕し、乾燥したこと以外は実施例1と同様の方法で比較例5の一部非晶質化処理したチタン−ニオブ酸化物の粉末を得た。そして、実施例1と同様の方法で比較例5の一部非晶質化処理したチタン−ニオブ酸化物のXRD測定及び粉体抵抗の測定、全固体金属リチウム対極セルの作製及び評価、並びに、全固体積層電池の作製及び釘刺試験を行った。結果を表1に示す。
TNOの一部非晶質化処理において、得られたTNO粉末とφ0.5mmのジルコニアビーズとエタノールを遊星型ボールミルに投入し、回転数500rpmとし、24時間湿式粉砕し、乾燥したこと以外は実施例1と同様の方法で比較例6の一部非晶質化処理したチタン−ニオブ酸化物の粉末を得た。そして、実施例1と同様の方法で比較例6の一部非晶質化処理したチタン−ニオブ酸化物のXRD測定及び粉体抵抗の測定、全固体金属リチウム対極セルの作製及び評価、並びに、全固体積層電池の作製及び釘刺試験を行った。結果を表1に示す。
XRD測定及び透過型電子顕微鏡での一部非晶質化処理した各TNOの粉末の粒子を観察した結果から、実施例1〜5、比較例2〜6の一部非晶質化処理したTNOは、単斜晶型の結晶構造を有し、C2/mの空間群に帰属できた。
XRDスペクトルにおいて実施例1〜5の一部非晶質化処理したTNOの粉末は、ハローピークが観察され、TNOの一部が非晶質であることを確認した。
また、実施例1〜5の場合のように、TNOの一部非晶質化処理においてTNOを12時間粉砕した粉末は、比較例2〜5の場合のように、TNOの一部非晶質化処理においてTNOを3時間粉砕した粉末と比較して、XRDスペクトルから求められる回折角2θ=26°±0.5°で観測される最も強度の強い回折ピークの半値全幅が増加し、更に粉体抵抗が増加した。これは粉砕を12時間行うことで、粒子表面のダメージが大きくなり、所望の割合で結晶の一部が非晶質化したためと考えられる。このように実施例1〜5の一部非晶質化処理したTNOは、一部に非晶質相が存在するため、回折角2θ=26°±0.5°で観測される最も強度の強い回折ピークの半値全幅が増加したと考えられる。
実施例1〜4の全固体金属リチウム対極セルは、比較例2〜3、5の全固体金属リチウム対極セルと比較して放電容量維持率の大きな変化はなかった。
比較例6のように粉砕条件を24時間とした一部非晶質化処理したTNOは、粉体抵抗は増加したが、全固体金属リチウム対極セルの放電容量維持率が低下した。これはTNOの過粉砕により、TNOの非晶質部分の割合が増加し過ぎたことで、TNOのLiイオン拡散能が大幅に低下したためと考えられる。
実施例1〜5の全固体積層電池は、比較例1〜6の全固体積層電池と比較して釘刺時の平均最高到達温度は142℃以下となり、低かった。
これは、実施例1〜5の場合、電池の内部短絡発生時には放電状態(絶縁状態)に移行しやすく、一部非晶質化処理したTNOの粉体抵抗が高いため、電池の発熱が発生しにくくなったと考えられる。
実施例1〜4の場合、一部非晶質化処理したTNOを含み、且つ、全固体金属リチウム対極セルの放電容量維持率が高いため、負極層中のTNOの含有量がLTOと同じ場合であっても電池の発熱を抑制することができ、TNOは、LTOよりも質量あたりの容量が大きいため、電池容量の低下も小さいと考えられる。
実施例5の結果から、一部非晶質化処理したTNOの含有量が実施例4よりも少ない場合であっても、電池の発熱を抑制することができることがわかる。
一方、比較例2、3、5の場合は、TNOの粉体抵抗が低いため、短絡電流の抑制が不十分となり、電池の発熱温度が上昇したと考えられる。
比較例4の場合は、TNOの粉体抵抗は低いが、比較例3よりもTNOの含有量が多いため、比較例3と比較して電池の発熱温度を低減することができた。しかし、天然黒鉛の含有量が相対的に少なくなるため電池容量が低下してしまうと考えられる。
比較例6の場合は、TNOの粉体抵抗は高いが、全固体金属リチウム対極セルの放電容量維持率が低いため、電池の短絡発生時に絶縁体(放電状態)になるまでの時間がかかるため、実施例1〜5の場合と比較して電池の発熱量が増加したと考えられる。
したがって、本開示によれば、所望の電池容量の確保と電池内部の温度上昇の抑制とを両立することが可能な非水電解質電池を提供することができることが実証された。
12 正極層
13 負極層
14 正極集電体
15 負極集電体
16 正極
17 負極
100 非水電解質電池
Claims (1)
- 正極層と、負極層と、当該正極層及び当該負極層の間に配置される電解質層と、を備える非水電解質電池であって、
前記負極層は、非晶質相を含むチタン−ニオブ酸化物と、当該チタン−ニオブ酸化物よりもLi吸蔵放出電位が低い負極活物質を含み、
前記負極層は、前記負極活物質と前記チタン−ニオブ酸化物との合計を100質量%としたとき、前記チタン−ニオブ酸化物を2.0質量%以上含み、
前記チタン−ニオブ酸化物は、CuKα線によるX線回折測定により得られるスペクトルにおいて、回折角2θ=26°±0.5°で観測される最も強度の強い回折ピークの半値全幅が0.17°以上0.20°以下であることを特徴とする非水電解質電池。
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