JP6490413B2 - 繊維強化複合材料製シャフト - Google Patents

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Description

本発明は、繊維強化複合材料製シャフトに関する。
ゴルフクラブのシャフト等に用いられる繊維強化複合材料製シャフトがある。このようなシャフトは、軽量化されるとともに、曲げ強度を維持することが望まれている。特許文献1に記載の繊維強化複合材料製シャフトでは、ストレート層に補強層を設けることにより、軽量化に伴う曲げ強度の不足を補っている。
特開平9−141754号公報
ところで、所望の曲げ剛性を得るために、シャフトの曲げ剛性を調整することが望まれている。特許文献1に記載の繊維強化複合材料製シャフトでは、用いられる補強層によって曲げ剛性が決定されるので、曲げ剛性の調整は困難である。
本発明は、曲げ剛性の調整が可能な構造を有する繊維強化複合材料製シャフトを提供する。
本発明の一態様に係る繊維強化複合材料製シャフトは、軸方向に配向された強化繊維を有するストレート層と、ストレート層の外側に設けられ、第1炭素繊維を有する第1補強層と、第1補強層の外側に設けられ、第2炭素繊維を有する第2補強層と、を備える。第1炭素繊維の引張弾性率及び第2炭素繊維の引張弾性率は、互いに異なっており、ストレート層の強化繊維の引張弾性率よりも小さい。
この繊維強化複合材料製シャフトでは、第1補強層の第1炭素繊維の引張弾性率及び第2補強層の第2炭素繊維の引張弾性率は、互いに異なっている。このため、第1補強層の積層数及び第2補強層の積層数の比率を変えることより、繊維強化複合材料製シャフトの曲げ剛性を調整することができる。
第2炭素繊維の引張弾性率は第1炭素繊維の引張弾性率よりも小さくてもよい。この場合、より低弾性率の炭素繊維を含む層が外側に位置することになる。ところで、シャフトの曲げ破壊は、圧縮側から引き起こされることが知られている。また、層に含まれる炭素繊維の引張弾性率が小さいほど圧縮破壊が生じにくい。このため、第2炭素繊維の引張弾性率が第1炭素繊維の引張弾性率よりも小さい場合には、圧縮破壊が抑制され、曲げ強度のさらなる向上が可能となる。
第1炭素繊維の引張弾性率及び第2炭素繊維の引張弾性率は、10〜200GPaであってもよい。第1炭素繊維の引張弾性率及び第2炭素繊維の引張弾性率が10〜200GPaの範囲内にある場合でも、曲げ強度の向上とともに曲げ剛性の調整が可能となる。
本発明によれば、曲げ剛性の調整が可能となる。
一実施形態に係る繊維強化複合材料製シャフトを示す概略断面図である。 マンドレルの平面形状及び図1の繊維強化複合材料製シャフトの各層に用いられるプリプレグの裁断形状を示す図である。 繊維強化複合材料製シャフトの一変形例を示す概略断面図である。 マンドレルの平面形状及び図3の繊維強化複合材料製シャフトの各層に用いられるプリプレグの裁断形状を示す図である。 繊維強化複合材料製シャフトの別の変形例を示す概略断面図である。 マンドレルの平面形状及び図5の繊維強化複合材料製シャフトの各層に用いられるプリプレグの裁断形状を示す図である。 実施例1〜実施例5及び比較例1〜2の繊維強化複合材料製シャフトの試験装置の概略構成図である。
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
図1は、一実施形態に係る繊維強化複合材料製シャフトを示す概略断面図である。図1に示されるように、繊維強化複合材料製シャフト1は、軸方向AXに延びる長尺の管体であり、例えばゴルフクラブのシャフトに用いられる。繊維強化複合材料製シャフト1の幅は、例えば基端1aから先端1bに向かって漸減している。繊維強化複合材料製シャフト1がゴルフクラブ用シャフトに用いられる場合、基端1aはグリップ側の端部であり、先端1bはヘッド側の端部である。
繊維強化複合材料製シャフト1は、バイアス層3と、ストレート層4と、第1補強層5と、第2補強層6と、を備えている。
バイアス層3は、繊維強化複合材料製シャフト1の最内層であり、繊維強化複合材料製シャフト1の軸方向AXの全長に亘って設けられている。バイアス層3は、第1バイアス層31と、第2バイアス層32と、を備えている。バイアス層3では、第1バイアス層31及び第2バイアス層32が1層又は2層以上の複数層毎に交互に積層されている。一組のバイアス層3の積層数は、例えば1〜10層であってもよく、2〜8層であってもよい。ここで、積層数とは、バイアス層3等の特定の層が平均して何層積層されているか、つまり繊維強化複合材料製シャフト1の軸回りを何回巻回しているかを意味し、積層数が小数ということもあり得る。
第1バイアス層31は、正のバイアス層である。第1バイアス層31は、軸方向AXに対して傾斜して配向された強化繊維を有するプリプレグから構成されている。第1バイアス層31は、強化繊維の配向が軸方向AXに対して例えば15°〜75°、20°〜60°、又は30°〜50°になるように積層されている。
第2バイアス層32は、負のバイアス層である。第2バイアス層32は、軸方向AXに対して傾斜するとともに、第1バイアス層31の強化繊維の配向方向と交差するように配向された強化繊維を有するプリプレグから構成されている。第2バイアス層32は、強化繊維の配向が軸方向AXに対して例えば−15°〜−75°、−20°〜−60°、又は−30°〜−50°になるように積層されている。ここで、繊維強化複合材料製シャフト1の太径側から細径側にかけて左巻き、つまり左ネジ方向に積層されるプリプレグを正のバイアス層とし、繊維強化複合材料製シャフト1の太径側から細径側にかけて右巻き、つまり右ネジ方向に積層されるプリプレグを負のバイアス層とする。
第1バイアス層31及び第2バイアス層32を構成するプリプレグとしては、一方向プリプレグ又はクロスプリプレグが用いられる。一方向プリプレグはクロスプリプレグよりも配向角を制御しやすい。第1バイアス層31及び第2バイアス層32の強化繊維の引張弾性率は、例えば200〜1000GPa程度であってもよく、400〜800GPa程度であってもよい。このような強化繊維としては、軽量でかつ高引張弾性率であることから炭素繊維が用いられる。炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、及びピッチ系炭素繊維のいずれも用いられ得る。炭素繊維に代えて、金属繊維、炭化珪素繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、チタン酸カリウム繊維等が用いられてもよい。
ストレート層4は、バイアス層3の外側に設けられている。ストレート層4は、例えばバイアス層3の外周面に沿って、繊維強化複合材料製シャフト1の軸方向AXの全長に亘って設けられている。ストレート層4は、軸方向AXに配向された強化繊維を有するプリプレグから構成されている。つまり、ストレート層4は、強化繊維の配向が軸方向AXに対して例えば0°〜±5°になるように積層されている。ストレート層4の積層数は、例えば1〜10層であってもよく、2〜8層であってもよい。ストレート層4の積層厚さは、基端1a側と先端1b側とで異なってもよいが、一定であってもよい。
ストレート層4を構成するプリプレグとしては、一方向プリプレグが用いられる。ストレート層4の強化繊維の引張弾性率は、例えば200〜600GPa程度であってもよく、230〜300GPa程度であってもよい。このような強化繊維としては、軽量であることから炭素繊維が用いられる。炭素繊維としては、PAN系炭素繊維、及びピッチ系炭素繊維のいずれも用いられ得る。炭素繊維に代えて、金属繊維、炭化珪素繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、チタン酸カリウム繊維等が用いられてもよい。
第1補強層5は、ストレート層4の外側に設けられている。第1補強層5は、例えばストレート層4の外周面に沿って、繊維強化複合材料製シャフト1の先端1b側に設けられている。第1補強層5は、低引張弾性率の第1炭素繊維を有するプリプレグから構成されている。この第1炭素繊維は、例えば軸方向AXに対して略平行(例えば0°〜±5°程度)に配向されている。第1補強層5の積層数は、目的に応じて決定され、例えば1〜10層である。第1補強層5の積層数は、細径側で1〜10層とし、太径側では0〜1層となるように太径側の積層数を減少させてもよい。
第1補強層5を構成するプリプレグとしては、一方向プリプレグ又はクロスプリプレグが用いられる。第1補強層5を構成するプリプレグは、例えば1枚〜5枚程度の同一又は非同一の裁断形状を積層して成されてもよい。第1補強層5の炭素繊維の引張弾性率は、ストレート層4の強化繊維の引張弾性率よりも小さく、例えば10〜200GPa程度である。第1補強層5の炭素繊維の引張強度は、曲げ強度を向上させるために例えば0.5〜10GPaであってもよく、0.8〜10GPaであってもよく、1〜10GPaであってもよい。炭素繊維としては、例えばピッチ系炭素繊維が用いられる。なお、炭素繊維の引張弾性率及び引張強度は、JIS R 7608「炭素繊維−樹脂含浸ヤーン試料を用いた引張特性試験方法」に準じて測定される。
第2補強層6は、第1補強層5の外側に設けられている。第2補強層6は、例えば第1補強層5の外周面に沿って、繊維強化複合材料製シャフト1の先端1b側に設けられている。第2補強層6は、低引張弾性率の第2炭素繊維を有するプリプレグから構成されている。この第2炭素繊維は、例えば軸方向AXに対して略平行(例えば0°〜±5°程度)に配向されている。第2補強層6の積層数は、目的に応じて決定され、例えば1〜10層である。第2補強層6の積層数は、細径側で1〜10層とし、太径側では0〜1層となるように太径側の積層数を減少させてもよい。
第2補強層6を構成するプリプレグとしては、一方向プリプレグ又はクロスプリプレグが用いられる。第2補強層6を構成するプリプレグは、例えば1枚〜5枚程度の同一又は非同一の裁断形状を積層して成されてもよい。第2補強層6の炭素繊維の引張弾性率は、ストレート層4の強化繊維の引張弾性率よりも小さく、例えば10〜200GPaであってもよく、30〜200GPa程度であってもよい。第2補強層6の炭素繊維の引張強度は、曲げ強度を向上させるために例えば0.5〜10GPaであってもよく、0.8〜5GPaであってもよく、1〜3GPaであってもよい。第2補強層6の引張弾性率は、第1補強層5の引張弾性率と異なっている。第2補強層6の引張弾性率は、曲げ強度をさらに向上させるために第1補強層5の引張弾性率よりも小さくてもよい。炭素繊維としては、例えばピッチ系炭素繊維が用いられる。
第1補強層5及び第2補強層6は繊維強化複合材料製シャフト1の細径側(先端1b側)に位置している。第1補強層5及び第2補強層6の占有範囲の下限は、例えば先端1bから繊維強化複合材料製シャフト1の全長の1/20以上であってもよく、1/10以上であってもよい。第1補強層5及び第2補強層6の占有範囲の上限は、例えば先端1bから繊維強化複合材料製シャフト1の全長の2/3以下であってもよく、1/2以下であってもよい。第1補強層5及び第2補強層6は、例えば先端1bから繊維強化複合材料製シャフト1の全長の1/5〜1/3程度であってもよい。
第1補強層5及び第2補強層6の占有範囲が上述の範囲を超えると、補強を必要としない部分にも補強を施すことになり、繊維強化複合材料製シャフト1全体の重量を増加させる。また第1補強層5及び第2補強層6の占有範囲が上述の範囲に満たない場合には繊維強化複合材料製シャフト1の先端1b側の曲げ強度が不足するおそれがある。
次に、繊維強化複合材料製シャフト1の製造方法について説明する。図2は、マンドレルの平面形状及び繊維強化複合材料製シャフト1の各層に用いられるプリプレグの裁断形状を示す図である。図2に示されるように、まず、各層に用いられる強化繊維をプリプレグとして形成する。各プリプレグは、各強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させ、シート状にすることにより形成される。
各プリプレグに使用されるマトリックス樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂が用いられる。これらのプリプレグの強化繊維の目付は特に制限されないが、例えば30〜180g/mであってもよく、50〜150g/mであってもよい。プリプレグの強化繊維の目付が上述の範囲より大きい場合、シャフトの裁断形状及び重量設計における自由度が制限され、繊維強化複合材料製シャフト1の製造時におけるプリプレグのマンドレルMへの巻き付き性も劣ることがある。
続いて、各プリプレグを各層の積層数及び積層範囲(占有範囲)に従って裁断する。第1バイアス層31のプリプレグP31、第2バイアス層32のプリプレグP32及びストレート層4のプリプレグP4の裁断形状は、例えば繊維強化複合材料製シャフト1の全長と同じ高さを有する台形を呈している。第1補強層5のプリプレグP5及び第2補強層6のプリプレグP6の裁断形状は、例えば三角形を呈している。
続いて、第1バイアス層31のプリプレグP31及び第2バイアス層32のプリプレグP32を、金属製のマンドレルM(芯金)の円周の半分の長さで互いにずらして貼り合わせ、バイアス層3のプリプレグとしてマンドレルMに巻き付ける。そして、先に巻き付けたバイアス層3のプリプレグの外側にストレート層4のプリプレグP4を巻き付ける。そして、先に巻き付けたストレート層4のプリプレグP4の外側に第1補強層5のプリプレグP5を巻き付け、先に巻き付けた第1補強層5のプリプレグP5の外側に第2補強層6のプリプレグP6を巻き付ける。
その後、第2補強層6のプリプレグP6、第1補強層5のプリプレグP5、ストレート層4のプリプレグP4の外側に熱収縮テープを巻き付けて各層を固定する。この状態で、加熱炉の中に入れて加熱することによって、各層に含まれるマトリックス樹脂を硬化する。そして、室温まで冷却したのち、熱収縮テープを除去し、マンドレルMを抜き取ることにより、繊維強化複合材料製シャフト1が作製される。
以上のように構成された繊維強化複合材料製シャフト1では、第1補強層5の炭素繊維の引張弾性率及び第2補強層6の炭素繊維の引張弾性率は、互いに異なっている。そして、炭素繊維の引張弾性率が大きいほど、曲げ剛性は大きい。このため、第1補強層5の炭素繊維の引張弾性率と第2補強層6の炭素繊維の引張弾性率とが互いに異なる場合、第1補強層5の積層数と第2補強層6の積層数との比率を変更することにより、繊維強化複合材料製シャフト1の曲げ剛性を調整することができる。
また、第1補強層5の炭素繊維の引張弾性率及び第2補強層6の炭素繊維の引張弾性率はストレート層4の強化繊維の引張弾性率よりも小さい。さらに、第2炭素繊維の引張弾性率は、第1炭素繊維の引張弾性率よりも低いことが望ましい。ここで、第1補強層の第1炭素繊維、及び第2補強層の第2炭素繊維の圧縮破断ひずみに着目すると、引張弾性率が小さいほど大きい数値となる。言い換えると、より弾性率が低い炭素繊維ほど、圧縮破壊しにくい特性を有する(ここで、炭素繊維の圧縮破断ひずみを比較すると、日本グラファイトファイバーXN−05:2.9%、XN−10:2.1%、XN−15:1.75%、三菱レイヨンTR50S:1.2%、日本グラファイトファイバーXN−60:0.15%という値となる。)。繊維強化複合材料製シャフトが曲げ荷重を受けた場合、圧子直下で圧縮応力集中が発生し、この部分から圧縮破壊が起こしやすい。すなわち、繊維強化複合材料製シャフトの曲げ強度は、圧縮破断ひずみ支配であるといえる。このことから、最外部に、より弾性率が小さい炭素繊維、すなわち、圧縮破断ひずみが大きい圧縮破断ひずみを有する炭素繊維を配置するほど、繊維強化複合材料製シャフトの曲げ強度が向上する効果を得ることができることになる。ここで、高い曲げ強度を得ようとするため、より引張弾性率の小さい炭素繊維を補強層に使用した場合、曲げ強度は向上するものの、曲げ剛性も低くなり、曲げ剛性の調整範囲も狭くなる。これに対して、2種類の低弾性炭素繊維を使用し、外側の第2炭素繊維を有する第2補強層には、より引張弾性率が低い低弾性炭素繊維を使用し、内側の第1補強層の第1炭素繊維として、第2炭素繊維と比べて高い引張弾性率を有する炭素繊維を使用することにより、高い曲げ強度を得ながら、適度に高い曲げ剛性を得ること、また曲げ剛性を広い範囲で調整することが可能なる。
シャフトの曲げ破壊は、圧縮側から引き起こされることが知られている。また、層に含まれる炭素繊維の引張弾性率が小さいほど圧縮破壊が生じにくい。このため、第2補強層6の炭素繊維の引張弾性率が第1補強層5の炭素繊維の引張弾性率よりも小さい場合、より低弾性率の炭素繊維を含む層が外側に位置することになるので、圧縮破壊が抑制され、曲げ強度のさらなる向上が可能となる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、繊維強化複合材料製シャフト1はゴルフクラブ用シャフトだけでなく、様々なシャフトとして用いられ得る。
また、繊維強化複合材料製シャフト1は、バイアス層3、ストレート層4、第1補強層5及び第2補強層6に加えて、他の層をさらに備えていてもよい。他の層は、バイアス層3よりも内側又は各層の間に位置してもよい。他の層として、例えば、軸方向AXに対して略90°に配向された炭素繊維を有するフープ層等が挙げられる。
また、繊維強化複合材料製シャフト1は、第2補強層6の外側にさらに1以上の補強層を備えていてもよい。この1以上の補強層は、炭素繊維を有するプリプレグから構成されており、炭素繊維の引張弾性率はストレート層4の強化繊維の引張弾性率よりも小さい。
上記実施形態では、第1補強層5の軸方向AXにおける長さは、第2補強層6の軸方向AXにおける長さと略同じであるが、これに限定されない。
図3は、繊維強化複合材料製シャフトの一変形例を示す概略断面図である。図4は、マンドレルの平面形状及び図3の繊維強化複合材料製シャフトの各層に用いられるプリプレグの裁断形状を示す図である。図3及び図4に示されるように、上記実施形態と比較して、第1補強層5及び第2補強層6の軸方向AXに沿った長さの関係が異なる。具体的には、先端1bから軸方向AXに沿った第1補強層5の長さは、先端1bから軸方向AXに沿った第2補強層6の長さよりも大きい。この変形例においても、上記実施形態と同様の効果が奏される。
図5は、繊維強化複合材料製シャフトの別の変形例を示す概略断面図である。図6は、マンドレルの平面形状及び図5の繊維強化複合材料製シャフトの各層に用いられるプリプレグの裁断形状を示す図である。図5及び図6に示されるように、上記実施形態と比較して、第1補強層5及び第2補強層6の軸方向AXに沿った長さの関係が異なる。具体的には、先端1bから軸方向AXに沿った第1補強層5の長さは、先端1bから軸方向AXに沿った第2補強層6の長さよりも小さい。この変形例においても、上記実施形態と同様の効果が奏される。
(実施例)
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明がより具体的に説明されるが、本発明は以下の実施例に限定されない。
(プリプレグ)
実施例及び比較例の繊維強化複合材料製シャフトに用いた材料を以下に示す。表1は、実施例及び比較例の繊維強化複合材料製シャフトに用いた材料を示す表である。
Figure 0006490413
プリプレグA:炭素繊維プリプレグ E052AA−10N(日本グラファイトファイバー株式会社製、炭素繊維目付100g/m、樹脂含有率37重量%、プリプレグ厚さ0.109mm)
プリプレグB:炭素繊維プリプレグ E1026A−09N(日本グラファイトファイバー株式会社製、炭素繊維目付95g/m、樹脂含有率37重量%、プリプレグ厚さ0.102mm)
プリプレグC:炭素繊維プリプレグ E1526C−10N(日本グラファイトファイバー株式会社製、炭素繊維目付100g/m、樹脂含有率33重量%、プリプレグ厚さ0.094mm)
プリプレグD:炭素繊維プリプレグ NT61250−525S(日本グラファイトファイバー株式会社製、炭素繊維目付125g/m、樹脂含有率25重量%、プリプレグ厚さ0.093mm)
プリプレグE:炭素繊維プリプレグ F24N125(JX日鉱日石エネルギー株式会社製、炭素繊維目付125g/m、樹脂含有率25重量%、プリプレグ厚さ0.103mm)
プリプレグAは、XN−05(日本グラファイトファイバー株式会社製、引張弾性率54GPa、引張強度1.1GPa)の炭素繊維に、マトリックス樹脂としてエポキシ樹脂(JX日鉱日石エネルギー株式会社製、硬化温度130℃)を含浸させた炭素繊維プリプレグである。プリプレグBは、XN−10(日本グラファイトファイバー株式会社製、引張弾性率110GPa、引張強度1.7GPa)の炭素繊維に、マトリックス樹脂としてエポキシ樹脂(JX日鉱日石エネルギー株式会社製、硬化温度130℃)を含浸させた炭素繊維プリプレグである。プリプレグCは、XN−15(日本グラファイトファイバー株式会社製、引張弾性率155GPa、引張強度2.4GPa)の炭素繊維に、マトリックス樹脂としてエポキシ樹脂(JX日鉱日石エネルギー株式会社製、硬化温度130℃)を含浸させた炭素繊維プリプレグである。
プリプレグDは、XN−60(日本グラファイトファイバー株式会社製、引張弾性率620GPa、引張強度3.4GPa)の炭素繊維に、マトリックス樹脂としてエポキシ樹脂(JX日鉱日石エネルギー株式会社製、硬化温度130℃)を含浸させた炭素繊維プリプレグである。プリプレグEは、TR50S(三菱レイヨン株式会社製、引張弾性率240GPa、引張強度4.9GPa)の炭素繊維に、マトリックス樹脂としてエポキシ樹脂(JX日鉱日石エネルギー株式会社製、硬化温度130℃)を含浸させた炭素繊維プリプレグである。
(試験パイプの製造方法)
上述のプリプレグを用いて、繊維強化複合材料製シャフトの先端側を模擬した中空のCFRP試験パイプ(実施例1〜5及び比較例1〜2)を作製した。
まず、直径5.5mm、長さ1050mmのSUS304製のマンドレルに、以下の順序でプリプレグを巻き付けた。バイアス層プリプレグとして、+45°のプリプレグ及び−45°のプリプレグを、マンドレルの円周の半分の長さ(8.6mm)で互いにずらして貼り合わせ、マンドレルに巻き付けた。続いて、ストレート層プリプレグを、先に巻き付けたバイアス層プリプレグの外側に巻き付けた。そして、第1補強層プリプレグを、先に巻き付けたストレート層プリプレグの外側に巻き付けた。さらに、第2補強層プリプレグを、先に巻き付けた第1補強層プリプレグの外側に巻き付けた。
各層のプリプレグを巻き付け終わった後、ポリプロピレン及びPET(ポリエチレンテレフタレート)製の熱収縮テープを巻き付けて、プリプレグを固定した。この状態で、加熱炉のなかに入れ、130℃で1時間、加熱することにより、マトリックス樹脂であるエポキシ樹脂を硬化した。続いて、室温まで冷却した後、熱収縮テープを除去し、マンドレルを抜き取ることにより、長さ1050mmのCFRPパイプを作製した。このCFRPパイプを、長さ350mmで三等分に切断することにより、長さ350mmの試験パイプを得た。
(実施例1)
実施例1では、以下の積層構成とした。バイアス層プリプレグとしてプリプレグDを用い、+45°のプリプレグの積層数を2層、−45°のプリプレグの積層数を2層とした。ストレート層プリプレグとしてプリプレグEを用い、積層数を3層とした。第1補強層プリプレグとしてプリプレグCを用い、積層数を2層とした。第2補強層プリプレグとしてプリプレグAを用い、積層数を2層とした。バイアス層の厚さは0.37mm、ストレート層の厚さは0.31mm、第1補強層の厚さは0.19mm、第2補強層の厚さは0.22mmであった。パイプ内径は5.5mm、パイプ外形は7.7mmであった。
(実施例2)
実施例2では、以下の積層構成とした。バイアス層プリプレグとしてプリプレグDを用い、+45°のプリプレグの積層数を2層、−45°のプリプレグの積層数を2層とした。ストレート層プリプレグとしてプリプレグEを用い、積層数を3層とした。第1補強層プリプレグとしてプリプレグBを用い、積層数を2層とした。第2補強層プリプレグとしてプリプレグAを用い、積層数を2層とした。バイアス層の厚さは0.37mm、ストレート層の厚さは0.31mm、第1補強層の厚さは0.20mm、第2補強層の厚さは0.22mmであった。パイプ内径は5.5mm、パイプ外形は7.7mmであった。
(実施例3)
実施例3では、以下の積層構成とした。バイアス層プリプレグとしてプリプレグDを用い、+45°のプリプレグの積層数を2層、−45°のプリプレグの積層数を2層とした。ストレート層プリプレグとしてプリプレグEを用い、積層数を3層とした。第1補強層プリプレグとしてプリプレグCを用い、積層数を2層とした。第2補強層プリプレグとしてプリプレグBを用い、積層数を2層とした。バイアス層の厚さは0.37mm、ストレート層の厚さは0.31mm、第1補強層の厚さは0.19mm、第2補強層の厚さは0.20mmであった。パイプ内径は5.5mm、パイプ外形は7.6mmであった。
(実施例4)
実施例4では、以下の積層構成とした。バイアス層プリプレグとしてプリプレグDを用い、+45°のプリプレグの積層数を2層、−45°のプリプレグの積層数を2層とした。ストレート層プリプレグとしてプリプレグEを用い、積層数を3層とした。第1補強層プリプレグとしてプリプレグCを用い、積層数を3層とした。第2補強層プリプレグとしてプリプレグAを用い、積層数を1層とした。バイアス層の厚さは0.37mm、ストレート層の厚さは0.31mm、第1補強層の厚さは0.28mm、第2補強層の厚さは0.11mmであった。パイプ内径は5.5mm、パイプ外形は7.6mmであった。
(実施例5)
実施例5では、以下の積層構成とした。バイアス層プリプレグとしてプリプレグDを用い、+45°のプリプレグの積層数を2層、−45°のプリプレグの積層数を2層とした。ストレート層プリプレグとしてプリプレグEを用い、積層数を3層とした。第1補強層プリプレグとしてプリプレグCを用い、積層数を1層とした。第2補強層プリプレグとしてプリプレグAを用い、積層数を3層とした。バイアス層の厚さは0.37mm、ストレート層の厚さは0.31mm、第1補強層の厚さは0.09mm、第2補強層の厚さは0.33mmであった。パイプ内径は5.5mm、パイプ外形は7.7mmであった。
(比較例1)
比較例1では、以下の積層構成とした。バイアス層プリプレグとしてプリプレグDを用い、+45°のプリプレグの積層数を2層、−45°のプリプレグの積層数を2層とした。ストレート層プリプレグとしてプリプレグEを用い、積層数を3層とした。第1補強層プリプレグとしてプリプレグBを用い、積層数を4層とした。バイアス層の厚さは0.37mm、ストレート層の厚さは0.31mm、第1補強層の厚さは0.41mmであった。パイプ内径は5.5mm、パイプ外形は7.7mmであった。
(比較例2)
比較例2では、以下の積層構成とした。バイアス層プリプレグとしてプリプレグDを用い、+45°のプリプレグの積層数を2層、−45°のプリプレグの積層数を2層とした。ストレート層プリプレグとしてプリプレグEを用い、積層数を3層とした。第1補強層プリプレグとしてプリプレグEを用い、積層数を4層とした。バイアス層の厚さは0.37mm、ストレート層の厚さは0.31mm、第1補強層の厚さは0.41mmであった。パイプ内径は5.5mm、パイプ外形は7.7mmであった。
(静的三点曲げ試験)
図7は、実施例1〜実施例5及び比較例1〜2の繊維強化複合材料製シャフトの試験装置の概略構成図である。図7に示されるように、試験装置50は、静的三点曲げ試験を実施するための装置であって、一対の支持部材51と、圧子52と、を備えている。一対の支持部材51は、繊維強化複合材料製シャフトの試験パイプ10を支持する部材である。支持部材51の上端は半径が5mmの曲面を成している。一対の支持部材51間の距離、つまり支点間距離は300mmである。圧子52は、繊維強化複合材料製シャフトの試験パイプ10に上から荷重を加える部材である。圧子52の下端は半径が75mmの曲面を成している。各支持部材51と圧子52との距離、つまり支点と荷重点との距離は、150mmである。圧子52は、試験パイプ10に荷重を加えるために下方に移動する。
試験装置50を用いて静的三点曲げ試験を実施した。具体的には、一対の支持部材51上に試験パイプ10を載置し、圧子52により試験パイプ10に荷重を加えた。圧子52の移動速度は1mm/minとした。実施例1〜実施例5及び比較例1〜比較例2について、曲げ破壊荷重、破断たわみ、曲げ剛性及び吸収エネルギーを測定した。実施例1〜実施例5及び比較例1〜比較例2の繊維強化複合材料製シャフトの測定結果を表2に示す。
Figure 0006490413
実施例1〜実施例5及び比較例1〜比較例2では、いずれも補強層の積層数は4層であったが、実施例1〜実施例5では、補強層(第1補強層及び第2補強層)は引張弾性率の異なる2種類の炭素繊維を含んでいたのに対し、比較例1〜比較例2では、補強層は1種類の炭素繊維だけを含んでいた。表2に示されるように、実施例1〜実施例5の曲げ破壊荷重は、比較例1〜比較例2のいずれの曲げ破壊荷重よりも大きかった。また、実施例1〜実施例5の破断たわみは、比較例1〜比較例2のいずれの破断たわみよりも大きかった。さらに、実施例1〜実施例5の吸収エネルギーは、比較例1〜比較例2のいずれの吸収エネルギーよりも大きかった。このように、実施例1〜実施例5では、比較例1〜比較例2よりも曲げ強度(曲げ破壊荷重、破断たわみ及び吸収エネルギー)が向上されることが確認された。
また、実施例1、実施例4及び実施例5では、第1補強層及び第2補強層に同じプリプレグが用いられたが、各層の積層数の比率が異なっていた。このため、実施例1、実施例4及び実施例5の曲げ剛性は、互いに異なっていた。このように、第1補強層の積層数と第2補強層の積層数との比率を変更することにより、曲げ剛性を幅広い範囲で制御できることが確認された。
1…繊維強化複合材料製シャフト、3…バイアス層、4…ストレート層、5…第1補強層、6…第2補強層、AX…軸方向。

Claims (6)

  1. 軸方向に配向された強化繊維を有するストレート層と、
    前記ストレート層の外側に設けられ、第1炭素繊維を有する第1補強層と、
    前記第1補強層の外側に設けられ、第2炭素繊維を有する第2補強層と、
    を備え、
    前記第1炭素繊維の引張弾性率及び前記第2炭素繊維の引張弾性率は、互いに異なっており、前記ストレート層の前記強化繊維の引張弾性率よりも小さく、
    前記第2炭素繊維の引張弾性率は前記第1炭素繊維の引張弾性率よりも小さく、
    前記第2補強層の圧縮破断ひずみは、前記第1補強層の圧縮破断ひずみよりも大きい、繊維強化複合材料製シャフト。
  2. 前記軸方向における前記第1補強層の長さ及び前記軸方向における前記第2補強層の長さのそれぞれは、前記軸方向における前記ストレート層の長さよりも短い、請求項に記載の繊維強化複合材料製シャフト。
  3. 前記第1補強層は、前記ストレート層を覆っており、
    前記第2補強層は、前記第1補強層を覆っており、
    前記軸方向における前記第2補強層の長さは、前記軸方向における前記第1補強層の長さよりも長い、請求項1又は請求項2に記載の繊維強化複合材料製シャフト。
  4. 前記第1補強層は、前記ストレート層を覆っており、
    前記第2補強層は、前記第1補強層を覆っている、請求項1又は請求項2に記載の繊維強化複合材料製シャフト。
  5. 前記軸方向の回りに積層され、それぞれが強化繊維を有する複数の層を備え、
    前記複数の層は、前記ストレート層、前記第1補強層、及び前記第2補強層を含み、
    前記第2補強層は、前記複数の層のうちの最外層である、請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の繊維強化複合材料製シャフト。
  6. 前記第1炭素繊維の引張弾性率及び前記第2炭素繊維の引張弾性率は、10〜200GPaである、請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の繊維強化複合材料製シャフト。
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