JP6482494B2 - 断熱構造体およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ガス配管などの断熱対象物の温度環境を維持するための断熱構造体に関し、例えば、半導体製造装置ガス排気配管に使用される断熱構造体に関する。
半導体集積デバイスや液晶パネル等のマイクロ・エレクトロニクス・デバイスを製造するためには、基板上に様々な材料の膜を成膜する必要がある。この成膜方法としてはPVD(物理的気相堆積)法、CVD(化学的気相堆積)法、ALD(原子層堆積)法等が広く知られている。
CVD法、ALD法等を用いる成膜装置からは、成膜に用いた前駆体およびその反応物等が排出されるが、これらは危険性および毒性の強いものが多いため除害装置で無害化してから大気へ放出されている。半導体装置から除害装置までの配管は加温しない場合もあるが、配管内での前駆体等の凝縮または堆積を防止するため100℃程度に加温することもある。
配管を加温する場合に、例えば特許文献1のような配管加温用ヒーターが知られている。この配管加温用ヒーターは、配管の外周に形成された絶縁膜と、この絶縁膜の外周に形成されたヒーター(抵抗発熱膜)と、このヒーターの外周に形成された絶縁膜と、抵抗発熱膜に接続した電源端子とで構成されている。このように膜状のヒーターの他に、線状のヒーターも知られており、線状のヒーターを配管に巻き付けて使用される。ヒーターを巻き付けた後で、保温装置(例えば、特許文献2、3、4)を巻き付けて保温することもある。特許文献2の保温材としては、ロックウール、グラスウールの使用が記載されている。特許文献3の断熱材として、ガラス繊維、ロックウール、セラミック繊維、ケイ酸カルシウムなどの無機材料の使用が記載されている。特許文献4の断熱部材として、ロックウールをガラスクロスで包んだ構成が記載されている。
特開平10−134947号公報 特開平11−280990号公報 特開2003−254495号公報 特開2003−287192号公報
近年、成膜に使用する前駆体の有する蒸気圧は低くなる傾向にある。そこで成膜装置から排出された前駆体を除害装置に排気する配管内での凝縮や固化に起因する配管閉塞を防止するために、より高い温度での排気配管の加温が必要とされるようになっている。
現在、一般に排気配管加温に用いられているヒーターの断熱構造体は、100℃程度のヒーター温度で使用されている。この温度下においてはヒーター断熱構造体からのガス発生は微小であり、これに起因する問題は確認されていなかった。
しかしながら、近年の成膜材料の低蒸気圧化に伴い配管加温温度が高温化すると、ヒーター断熱構造体からガス成分が発生し、発生したガスは半導体装置近傍に備え付けられているガス検知器の検知対象ガス以外のガスであるにもかかわらず、検知器の指示値に影響を及ぼし、誤作動の要因となるという問題を生ずるようになった。
ガス検知器が誤作動によって発報した場合には、実際には検知対象であるガスの漏洩が生じていない場合であっても半導体製造装置を停止させ、あるいは半導体製造装置が設置されている室内から作業員を退避させる必要があり、半導体製造工程の停止時間(ダウンタイム)を増大させることになっていた。
また、ガス検知器の誤作動はヒーターの断熱構造体を新規に設置した場合に特に多くみられることから、新規に断熱構造体を設置した際の初期動作試験時に誤作動が起きることによる検収作業の中断、遅れが顕著化していた。
上記状況から、ガス検知器の誤作動抑制のため、使用される配管に断熱構造体を設置して、実際の使用温度よりも高い温度で一定時間加温させ、ガス成分を取り除くことも考えられるが、誤作動を充分に抑制できるまでに要する時間の予測が困難であり、作業負担も大きく、現実的ではない。このため、ガス検知器の誤作動の原因となるガス成分が発生しない断熱構造体の開発が強く望まれている。
本発明の目的は、上記実情に鑑み、ガス検知器の誤作動の原因となるガス発生を低減させた断熱構造体およびその製造方法を提供することにある。
本発明の断熱構造体は、
断熱対象物と接する側の内装材と、
前記断熱対象物と接触しない側の外装材と
前記内装材と前記外装材とで覆われる断熱材と、を有する断熱構造体であって、
前記断熱材が、繊維状物質の基材と前記繊維状物質を結束する処理剤である結束剤とを含み、200℃以下の環境において前記断熱材から発生する所定ガスの濃度が0.01ppm以下となるように、加温加工されている断熱材であることを特徴とする。
「結束剤」は、繊維状物質の種類によって異なるため、ガス成分が発生しない結束剤を選択したり、使用される結束剤を分析して対応するよりも、加温加工させることでガス成分を除去した方が簡単で作業効率がよく好ましい。
上記発明の一実施形態として、前記断熱材の前記繊維状物質の基材が、セラミックファイバー、ガラスファイバー、生体溶解性繊維およびシリカファイバーから選択される1種または2種以上を含んでいてもよい。前記断熱材の前記繊維状物質の基材が、アルカリアースシリケートウールであってよい。
上記発明の一実施形態として、前記断熱材が、セラミックブランケット、ガラスマット、生体溶解性繊維ブランケットおよびシリカファイバーから選択される1種または2種以上を含んでいてもよい。断熱材は、単層の構造でもよく、2層以上の積層構造でもよい。
断熱材は、密度が80〜150Kg/m、厚さが8〜50mmであってもよい。厚さが8〜20mmの2層構造でもよい。
ガラスマットとしては、例えば、密度が90〜120Kg/m3、厚さが10〜14mmの2層構造が挙げられる。
生体溶解性繊維ブランケットとしては、例えば、密度が80〜110Kg/m、厚さが10〜14mmの2層構造が挙げられる。
上記発明の一実施形態として、前記内装材が、繊維状物質の基材と前記繊維状物質を結束する処理剤である結束剤とを含み、200℃以下の環境において前記内装材から発生する所定ガスの濃度が0.01ppm以下となるように、加温加工されている内装材であってもよい。
「結束剤」は、繊維状物質の種類によって異なるため、ガス成分が発生しない結束剤を選択したり、使用される結束剤を分析して対応するよりも、加温加工させることでガス成分を除去した方が簡単で作業効率がよく好ましい。
上記発明の一実施形態として、前記内装材が、セラミッククロス、ガラスクロス、シリカクロスおよびアルミナクロスから選択される1種または2種以上を含んでいてもよい。
上記発明の一実施形態として、前記内装材が、ステンレス鋼の糸で織られた生地であるSUSクロスであってもよい。SUSクロスには、結束剤が含まれていないため加温加工する必要がないため好ましい。
上記発明の一実施形態として、前記断熱構造体は、前記断熱対象物と前記内装材との間、前記内装材の内部または前記内装材と前記断熱材との間に、ヒーターを有していてもよい。ヒーターの形状は、線状でもよく、面状でもよい。
上記発明の一実施形態として、前記断熱構造体は、断熱対象物に対し着脱自在の構造を有していることが好ましい。前記断熱構造体は、断熱構造体を断熱対象物(例えば、配管、継手、バルブなど)に固定する固定手段を有していてもよい。断熱構造体とは別体の固定手段であってもよい。固定手段は、例えば、面ファスナー、ベルト、紐であってもよい。
上記発明の一実施形態として、前記断熱構造体は、断熱対象物の形状に沿う形状に構成されていてもよく、断熱対象物の形状に沿うように変形可能であってもよい。
「ガス検知器」は、例えば、ゲルマン(GeH)検知器である。
「所定ガス」は、例えば、シロキサンガスである。
他の本発明は、
断熱対象物と接する側の内装材と、
前記断熱対象物と接触しない側の外装材と
前記内装材と前記外装材とで覆われる断熱材と、を有する断熱構造体の製造方法であって、
前記断熱材が、繊維状物質の基材と前記繊維状物質を結束する処理剤である結束剤とを含み、200℃以下の環境において前記断熱材から発生する所定ガスの濃度が0.01ppm以下となるように、前記断熱材を加温する断熱材加温工程を含むことを特徴とする。
上記発明の一実施形態として、前記断熱材が、セラミックブランケット、ガラスマット、生体溶解性繊維ブランケットおよびシリカフマットから選択される1種または2種以上を含み、
前記断熱材加温工程が、300℃以上600℃以下の温度で、1時間以上10時間以内で、前記断熱材を加温することを特徴とする。
前記断熱材加温工程における温度条件は、断熱材の種類によって設定することが好ましく、加温条件300℃以上600℃以下が好ましく、340℃以上550℃以下がより好ましく、加温時間は、1時間以上10時間以内が好ましく、2時間以上9時間以内がより好ましく、3時間以上8時間以内がさらに好ましい。
前記断熱材が、ガラスマットである場合に、300℃以上440℃以下の加温温度で、1時間以上10時間以内の加温時間で、前記断熱材を加温することが好ましい。
前記断熱材が、セラミックブランケットである場合に、300℃以上600℃以下の加温温度で、1時間以上10時間以内の加温時間で前記断熱材を加温してもよく、500℃以上600℃以下の加温で、2時間以上4時間以内の加温時間で前記断熱材を加温してもよい。
低温かつ短時間では、ガス成分が除去されにくく、高温かつ長時間では繊維状物質が脆弱化してしまう。低温かつ長時間または高温かつ短時間においては、ガス成分の除去率が低くなるため、温度と時間の設定は適切に行う必要がある。
上記発明の一実施形態として、前記内装材が、繊維状物質の基材と前記繊維状物質を結束する処理剤である結束剤とを含み、200℃以下の環境において前記内装材から発生する所定ガスの濃度が0.01ppm以下となるように、前記内装材を加温する内装材加温工程を含むことを特徴とする。
前記内装材が、セラミッククロス、ガラスクロス、シリカクロスおよびアルミナクロスから選択される1種または2種以上を含み、
前記内装材加温工程が、200℃以上450℃以下の加温温度で、1時間以上10時間以内の加温時間で、前記内装材を加温することでもよい。
前記内装材加温工程における加温温度条件は、内装材の種類によって設定することが好ましく、200℃以上450℃以下が好ましく、240℃以上450℃以下がより好ましく、加温時間は、1時間以上10時間以内が好ましく、2時間以上9時間以内がより好ましく、3時間以上5時間以内がさらに好ましい。
前記内装材が、ガラスクロスである場合に、240℃以上440℃以下の加温温度で、1時間以上10時間以内の加温時間で、前記内装材を加温することが好ましい。
前記内装材が、セラミッククロスである場合に、300℃以上450℃以下の加温温度で、1時間以上10時間以内の加温時間で前記内装材を加温してもよく、300℃以上450℃以下の温度で、2時間以上4時間以内で前記内装材を加温してもよい。
低温かつ短時間では、ガス成分が除去されにくく、高温かつ長時間では繊維状物質が脆弱化してしまう。低温かつ長時間または高温かつ短時間においては、ガス成分の除去率が低くなるため、温度と時間の設定は適切に行う必要がある。
上記発明の一実施形態として、
断熱材加温工程において、断熱材の厚さ5mm〜100mm、密度50〜200kg/mにおいて、加温温度が300℃以上600℃以内で、加温時間が2時間以上9時間以内であってもよい。
断熱材の厚さが8〜50mm、密度が80〜150Kg/mにおいて、加温温度が300℃以上600℃以内で、加温時間が2時間以上9時間以内であってもよい。
上記発明の一実施形態として、
内装材加温工程において、内装材の厚さ0.2mm〜5mm、単位面積重量200〜800g/mにおいて、加温温度が250℃以上300℃以内で、加温時間が2時間以上3時間以内であってもよい。
上記発明の一実施形態として、前記断熱構造体は、前記断熱対象物と前記内装材との間、前記内装材の内部または前記内装材と前記断熱材との間に、ヒーターを有していてもよい。
上記発明の一実施形態として、前記内装材加温工程と前記断熱材加温工程とを同時に行ってもよい。
上記発明の一実施形態として、前記断熱構造体の製造方法は、前記内装材と前記外装材とで前記断熱材を被覆する工程(あるいは縫製工程)を有し、
前記内装材加温工程と前記断熱材加温工程とを同時に行う工程とを含んでいてもよい。
上記発明の一実施形態として、前記断熱構造体の製造方法は、
前記内装材加温工程および前記断熱材加温工程との後に、前記内装材と前記外装材とで前記断熱材を被覆する工程を有していてもよい。
断熱材が、例えば、ガラスマットまたはセラミックブランケットの場合は、その製造工程において結束剤を添加することが一般的である。発明者らはこの結束剤を加温処理することによってあらかじめ除去することで、ガス検知器の誤作動の要因となるガス発生を低減させることができることを見出した。特に断熱材の断熱構造体に占める体積は、他の部材と比較して大きいことから、加温処理により大きなガス発生量低減効果を得ることができる。
内装材が、例えば、ガラスクロスの場合は、その製造工程において結束剤を添加することが一般的である。この結束剤を加温処理することによってあらかじめ除去することで、ガス検知器の誤作動の要因となるガス発生を低減させることができる。内装材は、断熱構造体の中でもヒーター側に配置される(直接接触する)ことにより最も高い温度に暴露される部材であるため、内装材の加温処理によるガス発生量低減効果は高いと言える。
本発明において、「加温加工」および「加温処理」は、加温対象物(断熱材、内装材)に対し、熱を与える処理であり、熱を与える手段は特に制限されない。熱を与える手段(装置)の温度設定を上記加温温度に設定してもよく、熱を与えられた加温対象物それ自体の温度が上記加温温度に達してその温度が実質的に保持されていてもよい。
(発明の効果)
断熱構造体を、200℃以下のヒーター温度において半導体製造装置からの排気配管を加温する箇所に設置した場合に、断熱構造体内に設置しているガス検知器により検出される断熱構造体内における所定ガス濃度(またはシロキサンガス)が0.01ppm以下である。断熱構造体の周囲の環境ではさらにガス濃度は低濃度であり、断熱構造体近傍にガス検知器が設置された場合であってもその指示値に及ぼす影響がないか、または充分に微小である。このため、ガス検知器の誤作動の発生頻度が大幅に低下し、断熱構造体導入時の検収作業期間の短縮および半導体製造工程のダウンタイム軽減に寄与することができる。
他の発明の断熱構造体は、
断熱対象物と接する側の内装材と、
前記断熱対象物と接触しない側の外装材と、
前記内装材と前記外装材とで覆われる断熱材と、を有する断熱構造体であって、
前記断熱材が、結束剤を含まない繊維状物質で構成され、
前記内装材が、ステンレス鋼の糸で織られた生地であるSUSクロスである。
前記断熱材の結束剤を含まない繊維状物質が、セラミックファイバー、ガラスファイバー、生体溶解性繊維およびシリカファイバーから選択される1種または2種以上を含むことが好ましい。
前記断熱材が、ノンバインダーのセラミックブランケット、ノンバインダーのガラスマット、ノンバインダーの生体溶解性繊維ブランケットおよびノンバインダーのシリカマットから選択される1種または2種以上を含むことが好ましい。
この構成によれば、結束剤から出るガス成分の問題がないため、ガス検知器の誤作動の発生頻度が大幅に低下し、断熱構造体導入時の検収作業期間の短縮および半導体製造工程のダウンタイム軽減に寄与することができる。
本発明の実施形態に係る断熱構造体の概略を示す説明図。 図1のA−A線に沿う断面図。 実施例と比較例におけるヒーター温度とガス濃度の関係を示す図。
以下に本発明のいくつかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお、以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
<断熱構造体の構成>
本発明による断熱構造体1の外観を図1に示す。断熱構造体1は、ガス配管の外周壁を囲う中空の円柱型である。断熱構造体1は、ガス配管に取り付ける際に両開きとなるように、スリット2が設けられている。円柱型断熱構造体1の内側壁は内装材3により被覆されており、外側壁は外装材4により被覆されている。内装材3と外装材4は縫製されており、内装材3と外装材4の間には図2に示すように断熱材5が装てんされている。
断熱構造体1は、図1に示す円柱状の構成だけでなく、例えば、エルボ型(エルボ型のガス配管継ぎ手の加温に使用する)、T型(T型のガス配管継ぎ手の加温に使用する)、バルブヒーター型(バルブを覆って加温するためのもの)とすることができる。
断熱構造体1を配管に取り付ける時にはスリット2を開き、そこから配管を挿入する。挿入後にはマジックテープ(登録商標)を使用した固定具6によりスリット2を閉じ、配管に断熱構造体1を密着させる。
断熱構造体1のスリット2は、図1に示す1本のみの構成だけでなく、2本または複数本のスリットを有していてもよい。この場合は、それぞれのスリットに取り付けられた固定具6により配管に固定する。固定具6はマジックテープ(登録商標)だけでなく、テフロン(登録商標)ベルト、金属金具付のベルト、パチン錠であってもよい。
図2は、図1のA−A線に沿う断面図である。断熱材5は、縫製された内装材3と外装材4に包み込まれている。
断熱材5は、繊維状物質の基材と繊維状物質を結束する処理剤である結束剤とを含む。繊維状物質の基材が、セラミックファイバー、ガラスファイバーおよびシリカファイバーから選択されてもよい。結束剤(バインダー)は、基材によって選択され、例えばエポキシ系バインダー、エマルジョン系バインダーなどが挙げられる。
また、断熱材5が、セラミックブランケット、ガラスマットおよびシリカマットから選択されてもよい。断熱材5の厚さは、断熱対象物によって選択できるが、例えば、5mm以上100mm以下、好ましくは10mm以上50mm以下である。厚さがあるほど保温効果が高くなるが、一方で加工性が悪く、材料コストも高くなる。断熱材5は、例えば、密度50〜200kg/mである。
また、断熱材5は、高温環境下でガスを発生する。そのガスがガス検知器で検知されると上記問題が生じる。そこで、断熱材5は、200℃以下の環境において断熱材から発生する所定ガスの濃度が0.01ppm以下となるように、加温加工されている。
<断熱材の加温加工>
断熱材5に対する加温加工について以下に説明する。内装材3および外装材4で被覆する縫製加工を行う前の状態の断熱材5のみを電気炉で加温する。電気炉に限定されず、他の加温手段を用いてもよい。
加温温度としては、例えば、300℃以上600℃以下の温度であり、加温時間として、例えば、1時間以上10時間以内である。
断熱材がガラスマットである場合、加温温度が300℃以上440℃以下で、加温時間が1時間以上10時間以内であることが好ましい。
断熱材がセラミックブランケットである場合、加温時間が500℃以上600℃以下で、加温時間が2時間以上4時間以内であることが好ましい。
内装材3は、繊維状物質の基材と繊維状物質を結束する処理剤である結束剤とを含む。繊維状物質の基材が、セラミックファイバー、ガラスファイバーおよびシリカファイバーから選択されてもよい。結束剤(バインダー)は、基材によって選択され、例えばエポキシ系バインダー、エマルジョン系バインダーなどが挙げられる。
また、内装材3が、セラミッククロス、ガラスクロス、シリカクロスおよびアルミナクロスから選択されてもよい。内装材3の厚さは、例えば、0.2mm以上5mm以下、好ましくは0.3mm以上4mm以下である。内装材3は、例えば、単位面積重量200〜800g/mである。
また、内装材3は、高温環境下でガスを発生する。そのガスがガス検知器で検知されると上記問題が生じる。そこで、内装材3は、200℃以下の環境において内装材から発生する所定ガスの濃度が0.01ppm以下となるように、加温加工されている。
<内装材の加温加工>
内装材3に対する加温加工について以下に説明する。内装材3のみを電気炉で加温する。電気炉に限定されず、他の加温手段を用いてもよい。
加温温度としては、例えば、200℃以上450℃以下の温度であり、加温時間として、例えば、1時間以上10時間以内である。
内装材がガラスクロスである場合、加温温度が240℃以上440℃以下で、加温時間が1時間以上10時間以内であることが好ましい。
断熱材がセラミッククロスである場合、加温時間が300℃以上450℃以下で、加温時間が2時間以上4時間以内であることが好ましい。
また、ガラスクロスの場合に、ガラス繊維の剥離、飛散を防止するために、アクリルシラン処理を施してもよい。アクリルシラン処理は、アクリルシランを含有する結束剤にガラスクロスを浸漬させることによりガラス繊維表面にアクリルシランを塗布し、ガラス繊維の剥離・飛散を防止するために一般的に用いられている処理方法である。
外装材4は、特に制限されないが、例えば、樹脂製生地、金属製膜、内装材3と同じ材料で構成されていてもよい。
本実施形態では、断熱材と内装材とを別々に加温加工したが、電気炉に分離した状態で同時に入れて加温加工をしてもよい。係る場合において、断熱材と内装材の仕様(材質、厚さ、密度)に応じてそれぞれの加温時間を調整してもよい。内装材と外装材で断熱材を被覆した状態で熱加工をしてもよい。かかる場合に、外装材は耐熱性を有する材料で構成される。
(実施例)
以下において、断熱材と内装材の加温加工の実施例について説明する。
1.ガラスマット:矢澤産業株式会社、厚さ12mm、密度110kg/m
ガラスマットを電気炉に入れ、250℃から450℃の温度範囲で5分から72時間の条件で加温した。
加温加工されたガラスマットを180℃で加温し、ガス発生の有無をゲルマン(GeH4)検知器(理研計器 SC-800)で確認した。表1にその結果を示す。「×」はガス発生ありを示し、「〇」はガス発生なしを示し、「△」はガラス繊維脆弱化が見られたことを示す。
(表1)

Figure 0006482494
温度250℃では、72時間加温しても充分なガス発生抑制効果は得られなかった。さらに高温では長時間の加温によりガス発生が抑制される可能性はあるが、加温時間が長くなると、断熱構造体製作時間の延長すなわち製造コスト上昇につながるため、経済的に現実的ではない。また、加温時間を5分とした場合には450℃まで加温してもガス発生抑制効果は不十分であった。温度450℃では、加温時間を4時間または8時間とした場合にガラスマットのガラス繊維脆弱化が確認され、断熱材としての使用に耐えないことが分かった。温度350℃および400℃では、加温時間を4時間および8時間とした場合に良好なガス発生量抑制効果が確認された。
2.セラミックブランケット:イソライト工業株式会社、厚さ25mm、密度96Kg/m
セラミックブランケットを電気炉に入れ、500℃の温度で3時間の条件で加温した。
は、耐熱温度が1000℃以上であるため、繊維の収縮や剥離の問題がなく、電気炉により500℃で3時間の加温条件とする。
<断熱構造体の内被装材の加温処理>
次に、本発明の断熱構造体の内装材の加温処理について説明する。
1.ガラスクロス:前田硝子株式会社、厚さ0.65mm、単位面積重量490g/m
ガラスクロスは、縫製を行う前の状態であり、断熱材とは分離した状態で、電気炉で加温する。480℃で72時間加温した後、ガラス繊維の剥離、飛散を防止するためのアクリルシラン処理を施す方法と、250℃で3時間、加温する方法がある。後者の加温条件ではガラス繊維の剥離・飛散は非常に少ないため、アクリルシラン処理は不要である。
なお、「アクリルシラン処理」とはアクリルシランを含有する結束剤にガラスクロスを浸漬させることによりガラス繊維表面にアクリルシランを塗布し、ガラス繊維の剥離・飛散を防止するために一般的に用いられている処理方法である。
<加温処理によるガス発生量の検証>
断熱材および内装材への加温処理の有無による、断熱構造体からの加温時のガス発生量の変化について検討した。表2に加温処理の条件を示す。
実施例1は、断熱材に350℃で8時間、加温処理を行ったガラスマットを使用し、内装材に250℃で3時間、加温処理を行ったガラスクロスを使用した断熱構造体である。
実施例2は、断熱材に500℃で3時間、加温処理を行ったセラミックブランケットを使用し、内被材に250℃で3時間、加温処理を行ったガラスクロスを使用した断熱構造体である。
比較例1は、断熱材、内装材ともに加温処理を行っていない断熱構造体である。
比較例2は、断熱材に450℃で5分間、加温処理を行ったガラスマットを使用し、内装材に480℃で72時間、加温処理を行ったガラスクロスを使用した断熱構造体である。
(表2)断熱構造体の加温処理条件
Figure 0006482494
ガス発生量の測定には、GeH4検知器(理研計器SC−8000)を使用した。
異なる加温処理を行った4種の断熱構造体を、ヒーターを巻き付けたガス配管にそれぞれ固定した。ヒーターによりガス配管を加温し、加温時の断熱構造体内のガス濃度をGeH4検知器で測定した。GeH4濃度(指示値)とヒーター温度との関係を図3に示す。
図3に示す通り、断熱材および内装材の加温処理を行っていない比較例1(非加温処理品)は、ヒーターによる加温開始直後からガスの発生が確認された。
これに対し、断熱材に加温処理を行ったガラスマットを使用し、内装材に加温処理を行ったガラスクロスを使用した比較例2(加温処理品1)では、非加温処理品と比較してガス発生量が低減される効果が得られたが、140℃以上に加温した場合には徐々にガスの発生量が上昇する傾向がみられた。
これに対し、断熱材に、加温処理品1よりも低温で長時間加温処理を行った実施例1(加温処理品2)では、内装材の加温温度を低下させ、かつ、加温時間を短縮したにもかかわらず、加温処理品1よりも良好なガス発生量低減効果が得られた。
さらに実施例2(加温処理品3)においても、断熱材を500℃で3時間加温処理をしたセラミックブランケットとしたことによりガス発生量低減効果が確認された。
加温処理品2および加温処理品3では、いずれもヒーター温度が200℃以下ではGeH4検知器の指示値がGeH4換算値で0.01ppm以下であり、200℃を超えかつヒーター温度が230℃まではGeH4検知器の指示値がGeH4換算値で0.02ppm以下であり良好なガス発生抑制特性を示した。
(実施形態2)
実施形態2の断熱構造体は、内装材としてSUSクロスを用いる。SUSクロスは結束剤を含まないため、加温処理を行う必要がない。断熱材(結束剤を含む)は実施形態1と同様に加温処理を行う。
(実施形態3)
実施形態3の断熱構造体は、断熱対象物と接する側の内装材と、断熱対象物と接触しない側の外装材と、前記内装材と前記外装材とで覆われる断熱材と、を有する。
断熱材が、結束剤を含まない繊維状物質で構成される。
内装材が、ステンレス鋼の糸で織られた生地であるSUSクロスである。
断熱材の結束剤を含まない繊維状物質が、セラミックファイバー、ガラスファイバー、生体溶解性繊維およびシリカファイバーから選択される1種または2種以上を含むことが好ましい。
断熱材が、ノンバインダーのセラミックブランケット、ノンバインダーのガラスマット、ノンバインダーの生体溶解性繊維ブランケットおよびノンバインダーのシリカマットから選択される1種または2種以上を含むことが好ましい。
以上の構成によれば、結束剤から出るガス成分の問題がないため、ガス検知器の誤作動の発生頻度が大幅に低下し、断熱構造体導入時の検収作業期間の短縮および半導体製造工程のダウンタイム軽減に寄与することができる。
1 断熱構造体
2 スリット
3 内装材
4 外装材
5 断熱材
6 固定具

Claims (7)

  1. 断熱対象物と接する側の内装材と、
    前記断熱対象物と接触しない側の外装材と
    前記内装材と前記外装材とで覆われる断熱材と、を有する断熱構造体であって、
    前記断熱材が、繊維状物質の基材と前記繊維状物質を結束する処理剤である結束剤とを含み、200℃以下の環境において前記断熱材から発生する所定ガスの濃度が0.01ppm以下となるように、加温加工されている断熱材であり、
    前記内装材が、繊維状物質の基材と前記繊維状物質を結束する処理剤である結束剤とを含み、200℃以下の環境において前記内装材から発生する所定ガスの濃度が0.01ppm以下となるように、加温加工されている内装材である、断熱構造体。
  2. 前記内装材が、セラミッククロス、ガラスクロス、シリカクロスおよびアルミナクロスから選択される1種または2種以上を含む、請求項に記載の断熱構造体。
  3. 前記断熱構造体は、前記断熱対象物と前記内装材との間、前記内装材の内部または前記内装材と前記断熱材との間に、ヒーターを有する、請求項1または請求項2に記載の断熱構造体。
  4. 断熱対象物と接する側の内装材と、
    前記断熱対象物と接触しない側の外装材と
    前記内装材と前記外装材とで覆われる断熱材と、を有する断熱構造体の製造方法であって、
    前記断熱材が、繊維状物質の基材と前記繊維状物質を結束する処理剤である結束剤とを含み、200℃以下の環境において前記断熱材から発生する所定ガスの濃度が0.01ppm以下となるように、前記断熱材を加温する断熱材加温工程を含むことを特徴とし、
    前記断熱材が、セラミックブランケット、ガラスマット、生体溶解性繊維ブランケットおよびシリカマットから選択される1種または2種以上を含み、
    前記断熱材加温工程が、300℃以上600℃以下の加温温度で、1時間以上10時間以内の加温時間で、前記断熱材を加温することを特徴とする、断熱構造体の製造方法。
  5. 前記内装材が、繊維状物質の基材と前記繊維状物質を結束する処理剤である結束剤とを含み、200℃以下の環境において前記内装材から発生する所定ガスの濃度が0.01ppm以下となるように、前記内造材を加温する内装材加温工程を含むことを特徴とする、請求項に記載の断熱構造体の製造方法。
  6. 前記内装材が、セラミッククロス、ガラスクロス、シリカクロスおよびアルミナクロスから選択される1種または2種以上を含み、
    前記内装材加温工程が、200℃以上450℃以下の加温温度で、1時間以上10時間以内の加温時間で、前記内装材を加温することを特徴とする請求項に記載の断熱構造体の製造方法。
  7. 前記断熱構造体は、前記断熱対象物と前記内装材との間、前記内装材の内部または前記内装材と前記断熱材との間に、ヒーターを有する、請求項4〜6のいずれか1項に記載の断熱構造体の製造方法。
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