JP6481619B2 - 樹脂組成物および積層体 - Google Patents

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Description

本発明は、基材の片面もしくは両面に、抗菌性を有する化合物、無機微粒子および硬化性樹脂を含有する樹脂組成物を塗布し、これを硬化させて得られる硬化樹脂層が形成された積層体に関する。
近年、食品や日常生活関連の製品だけでなく、シャワートイレ、電子レンジ、洗濯機などのメンブレンスイッチ、タッチパネルディスプレイ等の表示画面に利用される保護フィルム、ガラス窓の飛散防止フィルムなど、不特定多数の人間が触れる部材への抗菌特性の要求が高まっている。
従来の抗菌フィルムは、樹脂に抗菌剤を均一に混入したものをフィルム状に成型するため(特許文献1)、安定した抗菌性を発揮することが

できなかった。
また不特定多数の人間が使用する用途においては、製品の外観を維持するための耐スクラッチ性、耐摩耗性が必要とされる。一般的には光硬化型樹脂の耐傷付き性を利用し、当該樹脂へ抗菌剤を添加することで、抗菌性を有するハードコートフィルムの形成が行われている(特許文献2)。
しかし、これらのハードコートフィルムには約0.1〜30%もの抗菌剤が添加されている。ハードコートフィルムには透明性や色相などの光学特性が求められるため、使用される抗菌剤は超微粒子無機系抗菌剤が使用されている。超微粒子無機系抗菌剤とは、抗菌性を示す金属を中心金属に持つ金属錯体を保持した超微粒子であり、平均粒子径が1.0μm以下の微細かつ均一な粒子であり、変色しにくい特長がある。しかし非常に高価であり、コスト面から鑑みると、より少ない添加量で抗菌性を発現することが好ましく、抗菌剤添加による着色の抑制の観点からも、抗菌剤の添加量を抑制しつつ、抗菌効果を良好に保持できるような検討が行われてきた。
実開平7−9952号公報 特許第3577145号公報
本発明は、基材上に、より少ない添加量で抗菌特性を発現し、かつ従来の光学特性が維持された硬化樹脂層が形成された積層体を提供するものである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、抗菌性を有する化合物を含有する硬化性樹脂に無機微粒子を混合することにで、抗菌特性が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は以下の構成を有する。
[1]抗菌性を有する化合物(a)、無機酸化物微粒子(b)および硬化性樹脂(c)を含有する樹脂組成物を、基材の両面もしくは片面に塗布し、硬化させてなる硬化樹脂層(d)を有する積層体であって、抗菌性を有する化合物(a)が、金、銀、銅、錫、亜鉛および白金からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを含有する無機微粒子であり、その混合比が、抗菌性を有する化合物(a)、無機酸化物微粒子(b)および硬化性樹脂(c)の合計に対して、0.01重量部以上、0.04重量部未満であり、無機酸化物微粒子(b)が、0.01μm〜1.0μmの平均粒子径を有し、その混合比が抗菌性を有する化合物(a)、無機酸化物微粒子(b)および硬化性樹脂(c)の合計に対して、5〜50重量部であり、硬化性樹脂(c)が、熱硬化性樹脂および活性エネルギー線硬化性樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、硬化樹脂層(d)の厚みが0.1μm〜20μmである、積層体。
[2]抗菌性を有する化合物(a)が、金、銀、銅、錫、亜鉛および白金イオンからなる群から選ばれるいずれか1種を中心金属とする金属錯体の少なくとも1種を含む超微粒子無機系抗菌剤である、前記[1]項に記載の積層体。
[3]無機酸化物微粒子(b)が、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、ケイ酸ジルコニウム、ルチル型酸化チタン、酸化スズ、酸化セリウム、フッ化マグネシウムおよび酸化鉄なる群からから選ばれる少なくとも1種である、前記[1]項または前記[2]項に記載の積層体。
[4]前記[1]〜[3]のいずれか1項記載の積層体を用いた保護フィルム。
[5]前記[1]〜[3]のいずれか1項記載の積層体を用いた光学レンズ。
本発明の積層体は、無機微粒子を混合するで、無機酸化物微粒子による体積排除効果により、抗菌剤が表面に押し上げられ、表面の抗菌剤濃度が上昇し、抗菌特性を向上させることができることから、抗菌性を有する化合物の添加量を低減することができる。
以下、本発明の積層体について説明する。
<積層体の構造>
本発明で得られる積層体は、抗菌性を有する化合物(a)、無機酸化物微粒子(b)および硬化性樹脂(c)を含有する樹脂組成物を硬化させてなる硬化樹脂層(d)とこれを支持する基材により構成される。具体的には、基材の片面に硬化樹脂層(d)が在る二層構造や、基材の両面に硬化樹脂層(d)が在る三層構造が例示できる。
<抗菌性を有する化合物(a)>
抗菌性を有する化合物としては、有機系抗菌剤や無機系抗菌剤を挙げることができる。抗菌性を有する化合物は、そのまま使用してもよいが、溶剤に分散(希釈)させ、分散(希釈)液として使用することもできる。有機系抗菌剤や無機系抗菌剤は1種で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
用いられる抗菌性を有する化合物の量は、樹脂組成物の全体量、または、抗菌性を有する化合物(a)、無機酸化物微粒子(b)および硬化性樹脂(c)の合計に対して、0.01重量部以上、0.04重量部未満であり、0.015重量部以上、0.025重量部以下が好ましい。
有機系抗菌剤としては、ハロゲン系、フェノール系、イミダゾール系、チアゾール系、グアニジン系、ピリジン系、有機砒素系、アミド系、アミノ系金属界面活性剤などがあり、具体的には「微生物の滅菌・殺菌・防黴技術」(衛生技術会)、「防菌防黴ハンドブック」(日本防菌黴学会)、防菌防黴剤辞典」(日本防菌黴学会)などに記載されている。
無機系抗菌剤としては、金、銀、銅、錫、亜鉛、白金などの少なくとも1種の金属イオンをゼオライト、ヒドロキシアパタイトや燐酸カルシウムに担持した抗菌性固体粒子(無機微粒子)や、上記金属イオンを中心金属とする金属錯体を保持した超微粒子無機系抗菌剤などが挙げられる。
抗菌性固体粒子とは、ゼオライト、ヒドロキシアパタイトや燐酸カルシウム中に抗菌性を有する金、銀、銅、亜鉛、白金などの金属イオンを取り込んだものである。ゼオライトとは、結晶アルミノケイ酸塩の一種でアルミニウム、ケイ素、アルカリ金属から構成されており、空孔を持った結晶構造を有している。
具体的な製品としては、ゼオミック(株式会社シナネンゼオミック製)、アパゲンSP−200(株式会社ザンキ製)、アパゲンSP−1(株式会社ザンキ製)、アパサイダーAK(株式会社ザンキ製)、アパサイダーAW(株式会社ザンキ製)、アパサイダーZ(株式会社ザンキ製)、PBM−OJ(パシフィックビーム・モールド製)、PBM−OJプラス(パシフィックビーム・モールド製)などが挙げられる。
超微粒子無機系抗菌剤とは、抗菌性を有する金、銀、銅、亜鉛、白金などの金属イオンと無機イオン交換体が強く結合した構造をしており、平均粒子径が0.5μm以下の微細且つ均一な微粒子である。超微粒子無機系抗菌剤は、変色しにくいため、不要な着色を嫌がる光学フィルム用途において好ましい。金属イオンは、特に人体への影響を考慮して、銀が好ましい。
具体的な製品としては、CS‐100(住友大阪セメント株式会社製)、「トリボライト(カナエ塗料株式会社製)、ラサップ(ラサ工業株式会社製などが挙げられる。
<無機酸化物微粒子(b)>
樹脂組成物中に含有される無機酸化物微粒子の具体的な例としては、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ケイ素(シリカ)、ケイ酸ジルコニウム、ルチル型酸化チタン、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、フッ化マグネシウム、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化銅、酸化アンチモン、氷晶石、蛍石、燐灰石、方解石、石膏およびタルクがある。好ましくは、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、ケイ酸ジルコニウム、ルチル型酸化チタン、酸化スズ、酸化セリウム、フッ化マグネシウムおよび酸化鉄であり、より好ましくは、安価な酸化アルミニウム、酸化ケイ素である。これらは1種で使用することも可能であり、2種以上を併用してもよい。用いられる無機酸化物微粒子の量は、樹脂組成物の全体量に対して、その混合比が抗菌性を有する化合物(a)、無機酸化物微粒子(b)および硬化性樹脂(c)の合計に対して、5重量部以上、50重量部以下であり、基材に対する良好な密着性を維持するためには、50重量部未満であることが好ましい。
また、無機酸化物微粒子の平均粒子径は、0.01μm〜1.0μmであり、塗膜の透明性を考慮すると、0.01μm〜0.04μmが好ましい。また塗膜の表面にマット調の意匠性を持たせるためには、0.05μm〜1.0μmが好ましい。なお、本願では無機微粒子の平均粒子径を、日機装株式会社製MICROTRAC UPAを使用し、動的光散乱法にて測定している。勿論、材料メーカーから提供される平均粒子径情報を利用することも可能であり、粒子径値の多少の違いは機械差として許容すべきものである。
<硬化性樹脂(c)および樹脂組成物>
硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂群または活性エネルギー線硬化性樹脂郡中から選択される少なくとも1種である。
また本発明でいう樹脂組成物とは、抗菌性を有する化合物(a)、無機酸化物微粒子(b)および硬化性樹脂(c)から構成される組成物の他、さらに後述する各種添加剤が添加された組成物も意味する。すなわち、基材に塗布するための組成物と同義となる。
熱硬化性樹脂または活性エネルギー線硬化性樹脂としては、(メタ)アクリレートモノマー、不飽和ポリエステル樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂などのラジカル重合が可能な不飽和結合を有する樹脂を挙げることができる。これらの樹脂を単独で用いてもよいし、複数の樹脂を組み合わせて用いてもよい。
前記(メタ)アクリレートモノマーとしては、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物が挙げられる。例えば、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレート、プロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレンポリトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンテトラエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンペンタエトキシトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、環状構造を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。環状構造を有する(メタ)アクリレートの具体例は、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジイルジメタジ(メタ)アクリレート、テルペン骨格を有するモノおよびジ(メタ)アクリレートや、それぞれのエチレングリコールもしくはプロピレングリコールで変性した(メタ)アクリレートなどの光重合性モノマーなどが挙げられる。
前記不飽和ポリエステル樹脂としては、多価アルコールと不飽和多塩基酸(および必要に応じて飽和多塩基酸)とのエステル化反応による縮合生成物(不飽和ポリエステル)を、重合性モノマーに溶解したものが挙げられる。
前記不飽和ポリエステルとしては、無水マレイン酸などの不飽和酸とエチレングリコールなどのジオールとを重縮合させて製造できる。具体的にはフマル酸、マレイン酸、イタコン酸などの重合性不飽和結合を有する多塩基酸またはその無水物を酸成分とし、これとエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの多価アルコールをアルコール成分として反応させ、また、必要に応じてフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、アジピン酸、セバシン酸などの重合性不飽和結合を有していない多塩基酸またはその無水物も酸成分として加えて製造されるものが挙げられる。
前記ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂としては、(1)飽和多塩基酸および/または不飽和多塩基酸と多価アルコールから得られる末端カルボキシル基のポリエステルにα,β−不飽和カルボン酸エステル基を含有するエポキシ化合物を反応して得られる(メタ)アクリレート、(2)飽和多塩基酸および/または不飽和多塩基酸と多価アルコールから得られる末端カルボキシル基のポリエステルに水酸基含有アクリレートを反応させて得られる(メタ)アクリレート、(3)飽和多塩基酸および/または不飽和多塩基酸と多価アルコールから得られる末端水酸基のポリエステルに(メタ)アクリル酸を反応して得られる(メタ)アクリレートが挙げられる。
ポリエステル(メタ)アクリレートの原料として用いられる飽和多塩基酸としては、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、アジピン酸、セバチン酸などの重合性不飽和結合を有していない多塩基酸またはその無水物とフマル酸、マレイン酸、イタコン酸などの重合性不飽和多塩基酸またはその無水物が挙げられる。さらに多価アルコール成分としては、前記不飽和ポリエステルと同様である。
前記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂としては、グリシジル基(エポキシ基)を有する化合物と、アクリル酸などの重合性不飽和結合を有するカルボキシル化合物のカルボキシル基との開環反応により生成する重合性不飽和結合を持った化合物(ビニルエステル)を、重合性モノマーに溶解したものが挙げられる。
前記ビニルエステルとしては、公知の方法により製造されるものであり、エポキシ樹脂に不飽和一塩基酸、例えばアクリル酸またはメタクリル酸を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレートが挙げられる。
また、各種エポキシ樹脂をビスフェノール(例えばA型)またはアジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸(ハリダイマー270S:ハリマ化成株式会社)などの二塩基酸で反応させ、可撓性を付与してもよい。
原料としてのエポキシ樹脂としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテルおよびその高分子量同族体、ノボラック型グリシジルエーテル類などが挙げられる。
前記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂としては、例えば、ポリイソシアネートとポリヒドロキシ化合物あるいは多価アルコール類とを反応させた後、さらに水酸基含有(メタ)アクリル化合物および必要に応じて水酸基含有アリルエーテル化合物を反応させることによって得ることができるラジカル重合性不飽和基含有オリゴマーが挙げられる。
前記ポリイソシアネートとしては、具体的には2,4−トリレンジイソシアネートおよびその異性体、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、バーノックD−750(商品名:DIC株式会社製)、クリスボンNK(商品名:DIC株式会社製)、デスモジュールL(商品名:住友バイエルウレタン株式会社製)、コロネートL(商品名:日本ポリウレタン工業株式会社製)、タケネートD102(商品名:三井武田ケミカル株式会社製)、イソネート143L(商品名:三菱化学株式会社製)などが挙げられる。
前記ポリヒドロキシ化合物としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールなどが挙げられ、具体的にはグリセリン−エチレンオキシド付加物、グリセリン−プロピレンオキシド付加物、グリセリン−テトラヒドロフラン付加物、グリセリン−エチレンオキシド−プロピレンオキシド付加物、トリメチロールプロパン−エチレンオキシド付加物、トリメチロールプロパン−プロピレンオキシド付加物、トリメチロールプロパン−テトラヒドロフラン付加物、トリメチロールプロパン−エチレンオキシド−プロピレンオキシド付加物、ジペンタエリスリトール−エチレンオキシド付加物、ジペンタエリスリトール−プロピレンオキシド付加物、ジペンタエリスリトール−テトラヒドロフラン付加物、ジペンタエリスリトール−エチレンオキシド−プロピレンオキシド付加物などが挙げられる。
前記多価アルコール類としては、具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、ビスフェノールAとプロピレンオキシドまたはエチレンオキシドとの付加物、1,2,3,4−テトラヒドロキシブタン、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3−ブタンジオール、1,2−シクロヘキサングリコール、1,3−シクロヘキサングリコール、1,4−シクロヘキサングリコール、パラキシレングリコール、ビシクロヘキシル−4,4−ジオール、2,6−デカリングリコール、2,7−デカリングリコールなどが挙げられる。
前記水酸基含有(メタ)アクリル化合物としては、特に限定されるものではないが、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
活性エネルギー線硬化性樹脂を用いる場合には、必要に応じて硬化剤を添加してもよい。この場合、硬化剤の含有量は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の全体量に対して、0.1〜10重量部が好ましく、0.1〜5重量部がより好ましく、0.1〜4重量部が特に好ましい。硬化剤としては、活性エネルギー線重合開始剤(光重合開始剤)が利用できる。活性エネルギー線重合開始剤としては、紫外線や可視光線などの活性エネルギー線の照射によりラジカルを発生する化合物であれば特に限定しない。活性エネルギー線重合開始剤として用いられる化合物としては、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、キサントン、チオキサントン、イソプロピルキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−エチルアントラキノン、アセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−4’−イソプロピルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、カンファーキノン、ベンズアントロン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン、1,4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4,4’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4,4’−トリ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2−(4’−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3’,4’−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2’,4’−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2’−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−ペンチルオキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−[p−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)]−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(2’−クロロフェニル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(4’−メトキシフェニル)−s−トリアジン、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、2−(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、3−(2−メチル−2−ジメチルアミノプロピオニル)カルバゾール、3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−n−ドデシルカルバゾール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス(η−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウムなどである。これらの化合物は単独で使用してもよく、2つ以上を混合して使用することも有効である。中でも、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ヘキシルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジ(メトキシカルボニル)−4,4’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4’−ジ(メトキシカルボニル)−4,3’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’−ジ(メトキシカルボニル)−3,3’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどが好ましい。
熱硬化性樹脂または活性エネルギー線硬化性樹脂としては、エポキシ基を含有する樹脂などの硬化性樹脂が好ましく、カルボン酸、アミン、酸無水物化合物や酸発生剤、好ましくはルイス酸を放出するオニウム塩である複塩またはその誘導体により硬化する樹脂を挙げることができる。これらの樹脂を単独で用いてもよいし、複数の樹脂を組み合わせて用いてもよい。
エポキシ樹脂の例には、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ハイドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシナフタレン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジシクロペンタン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エーテル、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル、ビス(ヒドロキシナフチル)メタン、および1,1’−ビナフトール、1,1’−ビス(3−t−ブチル−6−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタンなどを原料とするエポキシ樹脂が含まれる。
さらに、形成されるエポキシ樹脂の例には、フェノール、o−クレゾール、カテコール等のフェノール類、ホルムアルデヒド等のアルデヒド類との反応生成物のグリシジルエーテル化物であるフェノールノボラック系エポキシ樹脂;
フェノール、クレゾール、メチル−t−ブチルフェノール等のフェノール類とヒドロキシベンズアルデヒド等の芳香族アルデヒド類との縮合により得られたトリチル骨格含有ポリフェノール類のポリグリシジルエーテル;
トリチル骨格含有ポリフェノール類とホルムアルデヒド類との反応生成物であるトリメチル骨格含有ポリフェノール系ノボラック類のポリグリシジルエーテル;
フェノール、o−クレゾール、カテコール等のフェノール類とキシリレンジクロリドや(ヒドロキシメチル)ベンゼン等類との反応生成物であるポリアラキルフェノール樹脂類のポリグリシジルエーテル;
フェノール、o−クレゾール、カテコール等のフェノール類、またはヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類と、ジシクロペンタジエンやリモネン等の不飽和脂環式炭化水素類との反応生成物のグリシジルエーテルである脂環式炭化水素含有ポリフェノール樹脂型エポキシ樹脂またはポリナフトール樹脂型エポキシ樹脂;
脂環式炭化水素含有ポリフェノール樹脂類またはポリナフトール樹脂類とホルムアルデヒド類との反応生成物である脂環式水素含有ポリフェノールノボラック樹脂類またはポリナフトールノボラック樹脂類のポリグリシジルエーテル;
フェノール類と芳香族カルボニル化合物との縮合反応により得られる多価フェノールのグリシジルエーテル化合物類;
フロログリシン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,3−ビス[(4−ヒドロキシフェニル)メチル]ベンゼン、1,4−ビス[(4−ヒドロキシフェニル)メチル]ベンゼン等を基本骨格とする三価以上のフェノール類のポリグリシジルエーテル;
カリックスアレーン等の環状フェノール類から誘導されるグリシジルエーテル化合物等;
p−アミノフェノール、m−アミノフェノール、4−アミノメタクレゾール、6−アミノメタクレゾール、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−トルエンジアミン、2,6−トルエンジアミン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、1,4−シクロヘキサンビス(メチルアミン)、1,3−シクロヘキサンビス(メチルアミン)、N,N−ジグリシジルアニリン等から誘導されるアミン系エポキシ樹脂;
p−オキシ安息香酸、m−オキシ安息香酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族カルボン酸から誘導されるグリシジルエステル系化合物;
5,5−ジメチルヒダントイン等から誘導されるヒダントイン系エポキシ化合物;
2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス[4−(2,3−エポキシプロピル)シクロヘキシル]プロパン、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等の脂環式エポキシ樹脂;
ポリブタジエン等の不飽和炭化水素化合物中の二重結合を酸化して得られる脂肪族エポキシ樹脂等が含まれる。
また、形成されるエポキシ樹脂は、脂環族エポキシ樹脂であってもよい。その具体例には、少なくとも1個の脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル、またはシクロヘキセンやシクロペンテン環含有化合物を酸化剤でエポキシ化することによって得られるシクロヘキサンオキサイドやシクロペンテンオキサイド含有化合物から得られるエポキシ樹脂である。
例えば、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−1−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−1−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,2:8,9ジエポキシリモネン(商品名:CEL3000、ダイセル化学株式会社)、エポキシ化3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ビス(3−シクロヘキセニルメチル)修飾ε−カプロラクトン(商品名:エポリードGT301、ダイセル化学株式会社)、エポキシ化ブタンテトラカルボン酸テトラキス−(3−シクロヘキセニルメチル)修飾ε−カプロラクトン(商品名:エポリードGT401、ダイセル化学株式会社)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロセキサン付加物(商品名:EHPE3150、ダイセル化学株式会社)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロセキサン付加物と3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートとの混合物(商品名:EHPE3150CE、ダイセル化学株式会社)、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート(商品名:サイクロマーA400、ダイセル化学株式会社)、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート(商品名:サイクロマーM100、ダイセル化学株式会社)、エポキシ化ポリブタジエン(商品名:エポリードPB3600、ダイセル化学株式会社)、エポキシ化熱可塑性エラストマー(商品名:エポフレンド、ダイセル化学株式会社)などに代表されるエポキシ樹脂が挙げられる。
さらに、上記エポキシ樹脂の例には、脂肪族多価アルコールまたはそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテルから得られるエポキシ樹脂;脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステルから得られるエポキシ樹脂;グリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートのビニル重合により合成したホモポリマー;グリシジルアクリレート、またはグリシジルメタクリレートとその他のビニルモノマーとのビニル重合により合成したコポリマーなどが含まれる。
上記ポリグリシジルエーテルの具体例には、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ソルビトールのテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールのヘキサグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテルなどの多価アルコールのグリシジルエーテルなどが含まれる。
また上記ポリグリシジルエステルの具体例には、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリンなどの脂肪族多価アルコールに、1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステルが含まれる。
さらに、上記エポキシ樹脂の例には、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテルやフェノール、クレゾール、ブチルフェノール、またはこれらにアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテルから得られるエポキシ樹脂;高級脂肪酸のグリシジルエステルから得られるエポキシ樹脂;エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ポリブタジエンなどから得られるエポキシ樹脂が含まれる。
前述の通り、本発明の実施の形態に用いる架橋性官能基を有する重合体は、マトリックス樹脂(例えばエポキシ樹脂)を形成する単量体とともに、硬化反応開始剤(例えば酸発生剤)を組み合わせて用いることができる。
硬化反応開始剤に制限はなく、活性エネルギー線照射や熱エネルギーによりカチオン重合を開始させる物質を放出することができる化合物であればよい。硬化反応開始剤の例には、カルボン酸、アミン、酸無水物化合物や酸発生剤などが含まれ、好ましくはルイス酸を放出するオニウム塩である複塩またはその誘導体である。
硬化反応開始剤の代表的なものとしては、下記一般式で示される陽イオンと陰イオンの塩を挙げることができる。
[A]m+[B]m−
上記式において、陽イオン[A]m+はオニウムイオンであることが好ましく、例えば下記式で示される。
[(α)Q]m+
αは炭素数が1〜60であり、炭素原子以外の原子をいくつ含んでもよい有機基である。aは1〜5の整数である。a個のαは各々独立で、同一でも異なっていてもよい。また、少なくとも1つのαは、芳香環を有する有機基であることが好ましい。
QはS、N、Se、Te、P、As、Sb、Bi、O、I、Br、Cl、F、N=Nからなる群から選ばれる原子あるいは原子団である。
また、陽イオン[A]m+中のQの原子価をqとしたとき、m=a−qである(但し、N=Nは原子価0として扱う)。
一方、陰イオン[B]m−は、ハロゲン化物錯体であるのが好ましく、例えば下記式で示される。
[LXm−
Lはハロゲン化物錯体の中心原子である金属または半金属(Metalloid)であり、B、P、As、Sb、Fe、Sn、Bi、Al、Ca、In、Ti、Zn、Sc、V、Cr、Mn、Coなどである。Xはハロゲン原子である。bは3〜7なる整数である。
また、陰イオン[B]m−中のLの原子価をpとしたとき、m=b−pである。
上記一般式で示される陰イオン[LXm−の具体例には、テトラフルオロボレート(BF)、ヘキサフルオロフォスフェート(PF)、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF)、ヘキサフルオロアルセネート(AsF)、ヘキサクロロアンチモネート(SbCl)などが含まれる。
また陰イオン[B]m−は、下記式で示されるものも好ましく用いることができる。L、X、bは上記と同様である。
[LXb−1(OH)]m−
陰イオン[B]m−の例には、さらに過塩素酸イオン(ClO、トリフルオロメチル亜硫酸イオン(CFSO、フルオロスルホン酸イオン(FSO、トルエンスルホン酸陰イオン、トリニトロベンゼンスルホン酸陰イオンなども含まれる。
本発明の実施の形態における硬化反応開始剤は、このようなオニウム塩の中でも、下記の(イ)〜(ハ)に例示される芳香族オニウム塩であることがさらに好ましい。これらの中から、その1種を単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
(イ)フェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、4−メトキシフェニルジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−メチルフェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェートなどのアリールジアゾニウム塩。
(ロ)ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジ(4−メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェートなどのジアリールヨードニウム塩。
(ハ)トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4,4’−ビス(ジフェニルスルフォニオ)フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネート、4,4’−ビス(ジフェニルスルフォニオ)フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロホスフェート、4,4’−ビス[ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ]フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネート、4,4’−ビス[ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ]フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロホスフェート、4−[4’−(ベンゾイル)フェニルチオ]フェニル−ジ−(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−[4’−(ベンゾイル)フェニルチオ]フェニル−ジ−(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェートなどのトリアリールスルホニウム塩。
さらに、本発明の実施の形態における硬化反応開始剤は、鉄アレーン錯体またはアルミニウム錯体と、トリフェニルシラノールなどのシラノール類との混合物であってもよい。
鉄アレーン錯体の例には、(η−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)〔(1,2,3,4,5,6−η)−(1−メチルエチル)ベンゼン〕−アイアン−ヘキサフルオロホスフェートなどが含まれ、アルミニウム錯体の例には、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム、トリス(エチルアセトナトアセタト)アルミニウム、トリス(サリチルアルデヒダト)アルミニウムなどが含まれる。
これらの中でも実用面の観点から、本発明の実施の形態における硬化反応開始剤は、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、鉄−アレーン錯体であることが好ましい。
硬化反応開始剤(好ましくは酸発生剤)の含有量は、エポキシ樹脂が含有するエポキシ基10〜300モルに対して、1モルであることが好ましい。
活性エネルギー線硬化性樹脂は、活性エネルギー線源により、紫外線(UV)または電子線等を照射して硬化させることができる。
一例として、活性エネルギー線硬化性樹脂に紫外線を照射させて用いる場合を説明する。活性エネルギー線硬化性樹脂は、光重合開始剤の存在下で紫外線を照射して重合させることにより硬化するものが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、各種のベンゾイン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、フェニルケトン誘導体、オニウム塩光開始剤、有機金属光開始剤、金属塩カチオン光開始剤、光分解性オルガノシラン、潜在性スルホン酸、酸化ホスフィンなどが挙げられる。光重合開始剤の添加量は、活性エネルギー線硬化性樹脂100重量部に対して、1〜5重量部とすることが好ましい。
さらに、熱硬化性樹脂としては、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂を挙げることができる。具体的には、メラミン樹脂としては、メチル化メラミン樹脂、ブチル化メラミン樹脂などのアルキル化メラミン樹脂、メチロール型メラミン樹脂、イミノ型メラミン樹脂などが挙げられる。前記ウレタン樹脂としては、ポリエーテル型ポリウレタン樹脂、ポリエステル型ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂、ポリエステルポリカーボネート型ポリウレタン樹脂などが挙げられる。エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、オキシランを有するモノマーの重合体、またはオキシランを有するモノマーと他のモノマーとの共重合体などが挙げられる。これらの樹脂を単独で用いてもよいし、複数の樹脂を組み合わせて用いてもよい。
硬化樹脂層は、用途に応じて適宜、低屈折率特性、高屈折率特性、汚れ防止特性、低摩耗特性、ガスバリア特性を有することが好ましい。このような特性を付与するための添加剤を用いることもできる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール類、ヒドロキシフェニルトリアジン類、ベンゾフェノン類、サリシレート類、シアノアクリレート類、トリアジン類、または、ジベンゾイルリソルシノール類などが挙げられる。これらの紫外線吸収剤を単独で用いてもよいし、複数の紫外線吸収剤を組み合わせて用いてもよい。紫外線吸収剤は、吸収したい紫外線の波長に基づいて種類や組み合わせを適宜選択することが好ましい。
酸化防止剤としては、モノフェノール類(2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−p−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートなど)、ビスフェノール類(2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなど)、高分子型フェノール類(1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、トコフェノールなど)、硫黄系酸化防止剤(ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリルル−3,3’−チオジプロピオネートなど)、ホスファイト類(リフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビ(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビ(2,4−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、ビス[2−t−ブチル−6−メチル−4−{2−(オクタデシルオキシカルボニル)エチル}フェニル]ヒドロゲンホスファイトなど)、およびオキサホスファフェナントレンオキサイド類(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドなど)を挙げることができる。これらの酸化防止剤はそれぞれ単独で使用できるが、フェノール系/硫黄系またはフェノール系/リン系と組み合わせて使用することが特に好ましい。市販のフェノール系の酸化防止剤としては、BASF社製のIRGANOX 1010(商品名)やIRGAFOS 168(商品名)をそれぞれ単独で利用することができ、また、これらを混合して利用することもできる。
光安定剤(HALS)としては、BASF社製TINUVIN(登録商標)5100(中性タイプの汎用HALS)、TINUVIN292(化合物名:ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート)、TINUVIN152(化合物名:2,4−ビス[N−ブチル−N−(1−シクロヘキシロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ]−6−(2−ヒドロキシエチルアミン)−1,3,5−トリアジン)、TINUVIN144(化合物名:ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)−[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート)、TINUVIN123(化合物名:デカン二酸、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4ピペリジニル)エステルの反応生成物(1,1−ジメチルエチルヒドロぺルオキシドおよびオクタン存在下))、TINUVIN111FDL(約50%、TINUVIN622、化合物名:(ブタン二酸ポリマー(4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル ピペリジニル−イル)エタノール存在下)、約50%、CHIMASSORB119、化合物名:N−N’−N’’−N’’’−テトラキス(4,6−ビス(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン)、または、株式会社アデカ製アデカスタブLAシリーズ等、具体的には、LA−52((5)−6116)、LA−57((5)−5555)、LA−62((5)−5711)、LA−67((5)−5755)を挙げることができる。なお、括弧内は、既存化学物質番号である。
低屈折率特性を付与する手法としては、硬化樹脂層中にフッ化マグネシウムなどの無機微粒子や、フルオロシルセスキオキサン、WO2008/072766およびWO2008/072765に記載されているフルオロシルセスキオキサン重合体からなる群から選ばれる化合物や、フッ素原子を含有するアクリレート化合物などを1種以上混合させることが好ましい。
高屈折率特性を付与する手法としては、硬化樹脂層中にジルコニア、チタニア、硫化亜鉛などの金属微粒子や、フルオレン骨格を有するアクリレート化合物およびエポキシ化合物や、硫黄原子を含有するアクリレート化合物およびエポキシ化合物などを1種以上混合させることが好ましい。
高屈折率特性を付与された硬化樹脂層上にITOや銀ナノワイヤーに代表される透明電極材料を塗布し、エッチングによりパターニングすることによって、静電容量方式のタッチパネルに組み込まれる透明電極フィルムに使用することができる。高屈折率特性を付与された硬化樹脂層を用いることで、ITOや銀ナノワイヤーなど透明電極材料の導電パターンを見えにくくすることができる。
また、高屈折率特性を付与された硬化樹脂層に前記低屈折率特性を有する層を積層することにより、反射防止特性を有する第1の硬化樹脂層を得ることができる。
汚れ防止特性や低摩擦特性を付与する手法としては、硬化樹脂層中にシリコーン化合物、フッ素化合物、フルオロシルセスキオキサン、WO2008/072766およびWO2008/072765に記載されているフルオロシルセスキオキサン重合体からなる群から選ばれる1種以上の化合物を混合させることが好ましい。
シリコーン化合物としては、BYK−UV3500、BYK−UV−3570(いずれも商品名:ビックケミー社製)、TEGO Rad2100、2200N、2250、2500、2600、2700(何れも商品名:デグサ社製)、X−22−2445、X−22−2455、X−22−2457、X−22−2458、X−22−2459、X−22−1602、X−22−1603、X−22−1615、X−22−1616、X−22−1618、X−22−1619、X−22−2404、X−22−2474、X−22−174DX、X−22−8201、X−22−2426、X−22−164A、X−22−164C(いずれも商品名:信越化学工業株式会社製)等を挙げることができる。
フッ素化合物としては、ダイキン工業株式会社製のオプツールDAC、オプツールDAC−HP、R−1110、R−1210、R−1240、R−1620、R−1820、R−2020、R−5210、R−5410、R−5610、R−5810、R−7210、R−7310、メガファックRS−75、メガファックRS−72−K、メガファックRS−76−E、メガファックRS−76−NS、メガファックRS−77、メガファックRS−903−3、メガファックRS−914−2、メガファックRS−761−3(いずれも商品名)等を挙げることができる。
ガスバリア特性を付与する手法としては、硬化樹脂層中にグラフェンに代表される層状クレイやシリカ、アルミナ、多孔質ガラスなどの無機成分を1以上混合させることが好ましい。
そのほかに必要に応じて、活性エネルギー線増感剤、重合禁止剤、ワックス、可塑剤、レベリング剤、界面活性剤、分散剤、消泡剤、濡れ性改良剤、帯電防止剤、硬化助剤等の各種添加剤を混合させることができる。
樹脂組成物中の不揮発成分の濃度は、ウェットコーティング法等の積層方法に応じた粘度に調整して、適切に選択することができる。前記濃度は、例えば、5〜80重量%が好ましく、より好ましくは、10〜60重量%の範囲である。溶媒としては、例えば、炭化水素系溶媒(ベンゼン、トルエンなど)、エーテル系溶媒(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、アニソール、ジメトキシベンゼンなど)、ハロゲン化炭化水素系溶媒(塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼンなど)、ケトン系溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、アルコール系溶媒(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブチルアルコール、t−ブチルアルコールなど)、ニトリル系溶媒(アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなど)、エステル系溶媒(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、カーボネート系溶媒(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなど)、アミド系溶媒(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド)、ハイドロクロロフルオロカーボン系溶媒(HCFC−141b、HCFC−225)、ハイドロフルオロカーボン(HFCs)系溶媒(炭素数2〜4、5および6以上のHFCs)、パーフルオロカーボン系溶媒(パーフルオロペンタン、パーフルオロヘキサン)、脂環式ハイドロフルオロカーボン系溶媒(フルオロシクロペンタン、フルオロシクロブタン)、酸素含有フッ素系溶媒(フルオロエーテル、フルオロポリエーテル、フルオロケトン、フルオロアルコール)、芳香族系フッ素溶媒(α,α,α−トリフルオロトルエン、ヘキサフルオロベンゼン)、水などが挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、硬化性樹脂組成物は、塗布液として用いることから、硬化前が液状であることが好ましい。
<硬化樹脂層(d)>
硬化樹脂層は、上記抗菌性を有する化合物(a)、無機酸化物微粒子(b)および硬化性樹脂(c)を含有する樹脂組成物で構成される。この樹脂組成物を基材に塗布し、樹脂組成物を硬化させて、硬化樹脂層(d)を形成する。
基材は、各種のプラスチック材料や無機材料から成型されるものを用いることができる。プラスチックの材料としては、例えば、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂を挙げることができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、ゼオノア(登録商標)、ゼオネックス(登録商標):日本ゼオン製、アートン(登録商標):JSR製、アペル(登録商標):三井化学製、トパス(登録商標):ポリプラスチックス製などの環状ポリオレフィン系樹脂等が好ましい。なお、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリエチレンナフタレートは、機械的強度、寸法安定性、耐熱性、耐薬品性、光学特性等、およびフィルム表面の平滑性やハンドリング性に優れているためより好ましい。ポリカーボネートは、透明性、耐衝撃性、耐熱性、寸法安定性、燃焼性に優れているためより好ましい。環状ポリオレフィン系樹脂は、高透明性、低複屈折率などの優れた光学特性、および高い耐熱性、低吸水性に優れているためより好ましい。価格・入手の容易さをも考慮すると、ポリエチレンテレフタレート(PET)が特に好ましい。
無機材料としては、白板ガラス、青板ガラス、シリカコート青板ガラスなどの透明ガラス基板;アルミニウム板、銅板、ニッケル板、ステンレス板などの金属基板;その他セラミック板、光電変換素子を有する半導体基板、シリコンウエハーなどが挙げられる。
成型物の形状は特に限定はなく、フィルム状や板状など用途によって決定される。また、成型方法に限定はなく、射出成型やブロー成型、切り出しなど各種の成型方法にて基材を得ることができる。
積層体の形成には、樹脂組成物を均一にコーティングするウェットコーティング法を用いることが好ましい。ウェットコーティング法としては、グラビアコート法やダイコート法等を用いることができる。グラビアコート法は、表面に凸凹の彫刻加工が施されたグラビアロールを塗布液に浸し、グラビアロール表面の凸凹部に付着した塗布液をドクターブレードで掻き落とし凹部に液を貯めることで正確に計量し、基材に転移させる方式である。グラビアコート法により、低粘度の液を薄くコーティングすることができる。ダイコート法は、ダイと呼ばれる塗布用ヘッドから液を加圧して押出しながらコーティングする方式である。ダイコート法により、高精度なコーティングが可能となる。さらに、塗布時に液が外気にさらされないため、乾きによる塗布液の濃度変化などが起こりにくい。その他のウェットコーティング法としては、スピンコート法、バーコート法、リバースコート法、ロールコート法、スリットコート法、ディッピング法、スプレーコート法、キスコート法、リバースキスコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ロッドコート法などを挙げることができる。
積層体の形成方法は、これらの方法から必要とする膜厚に応じて適宜選択することができる。また生産性を考慮した場合、ウェットコーティング法を用いることにより、毎分数十メートルのライン速度(例えば約20m/分)で積層できるため、大量に製造でき、生産効率を上げることができる。
樹脂組成物の硬化方法について説明する。熱エネルギーを用いて行う場合は、室温〜約200℃の環境下で行うことができるが、プラスチック材料より成形された基材を用いる場合は、プラスチックの耐熱性を考慮し、50〜120℃が好ましい。
活性エネルギー線重合開始剤を用いる場合は、塗布乾燥後に、活性エネルギー線源により、光活性エネルギー線または電子線を照射して硬化させることができる。塗布乾燥は、プラスチック材料より成形された基材を用いる場合は、プラスチックの耐熱性を考慮し、50〜120℃が好ましい。活性エネルギー線源としては特に制限はないが、用いる活性エネルギー線重合開始剤の性質に応じて、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク、キセノンアーク、気体レーザー、固体レーザー、電子線照射装置などが挙げられる。
硬化樹脂層(d)の厚みは、0.1μm〜20μmである。硬化樹脂層に表面硬度が求められる用途においては、硬化樹脂層の厚みは、3μm〜20μmが好ましく、さらに生産コストを鑑みると、3μm〜10μmがより好ましい。
樹脂組成物が硬化後に、膨張や収縮のような体積変化が起きる場合は、体積変化を考慮して、樹脂組成物の塗布条件を決定する。
硬化後に得られる物品の形態は、基材の片面または両面に硬化樹脂層が積層された積層体である。この積層体は、シャワートイレ、電子レンジ、洗濯機などに使用されているメンブレンスイッチの被覆材として利用することができる。また、タッチパネルディスプレイ等の表示画面に利用される保護フィルムや、各種光学レンズの保護材としても利用することができる。さらには、優れた抗菌性を活かして、病院等で不特定多数の者が触れるようなドアノブのコート材や壁面コート材のような用途で用いることもできる。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<抗菌性を有する化合物(脂肪酸修飾銀超微粒子;抗菌剤A)の合成>
抗菌剤Aは、特開2009−226400号公報に記載の方法に従い、以下のようにして合成を行って得た。
10mlのポリエチレングリコール400を予め220℃に加熱した溶液中に、ステアリル酸銀を5ppmになるように配合し、同温度で攪拌、混合させ、直ちに冷却した後、フィルターを用いてろ過を行い、分散液を得た。得られた分散液をメチルエチルケトン(MEK)で希釈し、脂肪酸修飾銀超微粒子を0.05重量%含有するMEK分散液(抗菌剤A)を調製した。
<光硬化性樹脂組成物Aの調製>
光硬化性樹脂組成物Aは、以下の方法により得た。
光重合性を有するアクリル酸エステルおよびオリゴマーの混合物:39重量部、光重合開始剤:5重量部、シリカ微粒子:11重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル:28.8重量部、酢酸ブチル:11.7重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:4.5重量部を混合し、ディスパーで攪拌後、ビーズミルでシリカ微粒子の分散を行い、光硬化性樹脂組成物Aを得た。得られた光硬化性樹脂組成物A中のシリカ微粒子の平均粒子径をレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定した結果、シリカ微粒子の平均粒子径は0.6μmであった。
<光硬化性樹脂組成物Bの調製>
光硬化性樹脂組成物Bは、以下の方法により得た。
光重合性を有するアクリル酸エステルおよびオリゴマーの混合物:55重量部、光重合開始剤:5重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル:25.6重量部、酢酸ブチル:10.4重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:4重量部を混合し、ディスパーで攪拌し、光硬化性樹脂組成物Bを得た。
[実施例1]
MEK−ST(商品名:30重量%のシリカ微粒子を含有するMEK溶剤、シリカ微粒子の平均粒子径:約15nm、日産化学工業株式会社製):100重量部、ユニディックV6810(商品名:60重量%の光硬化性アクリレート樹脂および40重量%のMIBK溶剤から成る光重合性樹脂組成物、DIC株式会社):117重量部、Irgacure184(商品名:光重合開始剤、BASF社製):5重量部、抗菌剤A:40重量部を混合し、樹脂組成物1を調製した。
次に、ポリエステルフィルム(コスモシャインA4300、商品名:東洋紡株式会社製、フィルム厚み100μm)上に、バーコーターを用いて、上記の樹脂組成物1を塗布した。
塗布後のフィルムをオーブンにて温度80度で1分間乾燥後、8KW−コンベア式UV照射装置(アイグラフィックス製)を用いて、高圧水銀灯による紫外線により、ピーク照度200mW/cm、積算光量:300mJ/cmの照射条件で、樹脂組成物1を硬化させ、ポリエステルフィルム上に膜厚4μmの硬化樹脂層を有する積層体1を作成した。
[実施例2]
光硬化性樹脂組成物A:91重量部、光硬化性樹脂組成物B:83重量部、抗菌剤A:40重量部を混合し、樹脂組成物2を調製した。
次に、ポリエステルフィルム(コスモシャインA4300、商品名:東洋紡株式会社製、フィルム厚み100μm)上に、バーコーターを用いて、上記の樹脂組成物2を塗布した。
塗布後のフィルムをオーブンにて温度80度で1分間乾燥後、コンベア式UV照射装置(アイグラフィックス製)を用いて、高圧水銀灯による紫外線により、実施例1と同様の条件で樹脂組成物2を硬化させ、ポリエステルフィルム上に膜厚4μmの硬化樹脂層を有する塗工積層体2を作成した。
[実施例3]
MEK−ST(商品名:30重量%のシリカ微粒子を含有するMEK溶剤、シリカ微粒子の平均粒子径:約15nm、日産化学工業株式会社製):133重量部、光硬化性樹脂組成物A:55重量部、光硬化性樹脂組成物B:50重量部、抗菌剤A:40重量部を混合し、樹脂組成物3を調製した。
次に、ポリエステルフィルム(コスモシャインA4300、商品名:東洋紡株式会社製、フィルム厚み100μm)上に、バーコーターを用いて、上記の樹脂組成物3を塗布した。
塗布後のフィルムをオーブンにて温度80度で1分間乾燥後、コンベア式UV照射装置(アイグラフィックス製)を用いて、高圧水銀灯による紫外線により、実施例1と同様の条件で樹脂組成物3を硬化させ、ポリエステルフィルム上に膜厚4μmの硬化樹脂層を有する積層体3を作成した。
[実施例4]
MEK−ST(商品名:30重量%のシリカ微粒子を含有するMEK溶剤、シリカ微粒子の平均粒子径:約15nm、日産化学工業株式会社製):100重量部、ユニディックV6810(商品名:60重量%の光硬化性アクリレート樹脂および40重量%のMIBK溶剤から成る光重合性樹脂組成物、DIC株式会社):117重量部、Irgacure184(商品名:光重合開始剤、BASF社製):5重量部、抗菌剤A:20重量部を混合し、樹脂組成物4を調製した。
次に、ポリエステルフィルム(コスモシャインA4300、商品名:東洋紡株式会社製、フィルム厚み100μm)上に、バーコーターを用いて、上記の樹脂組成物4を塗布した。
塗布後のフィルムをオーブンにて温度80度で1分間乾燥後、コンベア式UV照射装置(アイグラフィックス製)を用いて、高圧水銀灯による紫外線により、実施例1と同様の条件で樹脂組成物4を硬化させ、ポリエステルフィルム上に膜厚4μmの硬化樹脂層を有する積層体4を作成した。
[比較例1]
ユニディックV6810(60重量%の光硬化性アクリレート樹脂および40重量%のMIBK溶剤から成る光重合性樹脂組成物、DIC株式会社):167重量部、Irgacure184(光重合開始剤、BASF社製):5重量部、抗菌剤A:40重量部を混合し、無機酸化物微粒子を含まない樹脂組成物5を調製した。
次に、ポリエステルフィルム(コスモシャインA4300、商品名:東洋紡株式会社製、フィルム厚み100μm)上に、バーコーターを用いて、上記の樹脂組成物5を塗布した。
塗布後のフィルムをオーブンにて温度80度で1分間乾燥後、コンベア式UV照射装置(アイグラフィックス製)を用いて、高圧水銀灯による紫外線により、実施例1と同様の条件で樹脂組成物1を硬化させ、ポリエステルフィルム上に膜厚4μmの硬化樹脂層を有する積層体5を作成した。
[比較例2]
MEK−ST(商品名:30重量%のシリカ微粒子を含有するMEK溶剤、シリカ微粒子の平均粒子径:約15nm、日産化学工業株式会社製):100重量部、ユニディックV6810(商品名:60重量%の光硬化性アクリレート樹脂および40重量%のMIBK溶剤から成る光重合性樹脂組成物、DIC株式会社):117重量部、Irgacure184(商品名:光重合開始剤、BASF社製):5重量部、MEK:40重量部を混合し、抗菌剤を含まない樹脂組成物6を調製した。
次に、ポリエステルフィルム(コスモシャインA4300、商品名:東洋紡株式会社製、フィルム厚み100μm)上に、バーコーターを用いて、上記の樹脂組成物6を塗布した。
塗布後のフィルムをオーブンにて温度80度で1分間乾燥後、コンベア式UV照射装置(アイグラフィックス製)を用いて、高圧水銀灯による紫外線により、実施例1と同様の条件で樹脂組成物6を硬化させ、ポリエステルフィルム上に膜厚4μmの硬化樹脂層を有する積層体6を作成した。
[比較例3]
光硬化性樹脂組成物A:91重量部、光硬化性樹脂組成物B:83重量部、酢酸ブチル:40重量部を混合し、抗菌剤を含まない樹脂組成物7を調製した。
次に、ポリエステルフィルム(コスモシャインA4300、商品名:東洋紡株式会社製、フィルム厚み100μm)上に、バーコーターを用いて、上記の樹脂組成物7を塗布した。
塗布後のフィルムをオーブンにて温度80度で1分間乾燥後、コンベア式UV照射装置(アイグラフィックス製)を用いて、高圧水銀灯による紫外線により、実施例1と同様の条件で樹脂組成物7を硬化させ、ポリエステルフィルム上に膜厚4μmの硬化樹脂層を有する積層体7を作成した。
<抗菌性特性>
抗菌試験は、JIS Z 2801の規格に準拠して実施した。供試細菌は、黄色ブドウ球菌と大腸菌で行った。尚、本試験は一般財団法人繊維製品品質技術センター 神戸試験センターにて実施した。抗菌性活性値の結果を表1および表2に示す。
<全光線透過率> 全光線透過率は、JIS K 7156の規格に準拠し実施した。積層体をヘイズメーター(NDH5000、日本電色工業株式会社製)を用いて測定した。結果を表1および表2に示す。
<ヘイズ>
ヘイズは、JIS K 7156の規格に準拠し実施した。積層体をヘイズメーター(NDH5000、日本電色工業株式会社製)を用いて測定した。結果を表1および表2に示す。
<色相(b*)>
色相(b*)は、JIS Z 8722の規格に準拠し実施した。積層体を分光色彩計(SD500、日本電色工業株式会社製)を用いて測定した。結果を表1および表2に示す。
Figure 0006481619
Figure 0006481619
表1の結果より、超微粒子無機系抗菌剤を含有する硬化性樹脂に無機酸化物微粒子を混合することで、抗菌特性が向上している(実施例1と比較例1との比較)。また、実施例1と比較例2および実施例2と比較例3を比較すると、超微粒子無機系抗菌剤の添加による光学特性(全光線透過率、ヘイズ、色相)の変化がないことが分かる。
本発明の積層体は、従来技術と比較して、より少ない抗菌性を有する化合物の添加量でも良好な抗菌効果を有する樹脂組成物である。また、この樹脂組成物を硬化させて得られる硬化樹脂層も良好な抗菌特性をし、かつ良好な光学特性も併せ持つことから、基材上に硬化樹脂層が形成された積層体は、メンブレンスイッチやタッチパネルディスプレイの保護フィルム等として、非常に有用である。

Claims (5)

  1. 抗菌性を有する化合物(a)、無機酸化物微粒子(b)および硬化性樹脂(c)を含有する樹脂組成物を、基材の両面もしくは片面に塗布し、硬化させてなる硬化樹脂層(d)を有する積層体を用いた、抗菌性を有する保護フィルムであって、
    抗菌性を有する化合物(a)が、金、銀、銅、錫、亜鉛および白金からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを含有する無機微粒子であり、その混合比が、抗菌性を有する化合物(a)、無機酸化物微粒子(b)および硬化性樹脂(c)の合計に対して、0.015重量部以上、0.04重量部未満であり、
    無機酸化物微粒子(b)が、0.01μm〜1.0μmの平均粒子径を有し、その混合比が抗菌性を有する化合物(a)、無機酸化物微粒子(b)および硬化性樹脂(c)の合計に対して、5〜50重量部であり、
    硬化性樹脂(c)が、熱硬化性樹脂および活性エネルギー線硬化性樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
    硬化樹脂層(d)の厚みが0.1μm〜20μmである前記積層体を用いた、保護フィルム
  2. 抗菌性を有する化合物(a)が、金、銀、銅、錫、亜鉛および白金イオンからなる群から選ばれるいずれか1種を中心金属とする金属錯体の少なくとも1種を含む超微粒子無機系抗菌剤である、請求項1に記載の保護フィルム
  3. 無機酸化物微粒子(b)が、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、ケイ酸ジルコニウム、ルチル型酸化チタン、酸化スズ、酸化セリウム、フッ化マグネシウムおよび酸化鉄なる群からから選ばれる少なくとも1種である、請求項1または請求項2に記載の保護フィルム
  4. 前記保護フィルムは、黄色ブドウ球菌または大腸菌に対し抗菌性を有する、
    請求項1〜3のいずれか1項記載の護フィルム。
  5. 請求項1〜のいずれか1項記載の保護フィルムを用いた光学レンズ。
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