JP6473815B2 - 滑り止め付き編み手袋及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、各種部品の組み立て作業に用いられる作業用編み手袋について、作業性を大きく向上した滑り止め付き編み手袋、及びその製造方法に関するものである。
作業用手袋に使われる編み手袋は、手袋用の横編機(全自動手袋編み機)を用いて編成される。この作業用手袋の編み手袋に使われる糸の太さの幅は広く開示されている。(例えば、特許文献1参照)。全自動手袋編み機で編成された編み手袋に滑り止め加工を施した作業用手袋は、組み立て作業など多くの作業に使われている。横編機の比較的高ゲージである13ゲージ、15ゲージの適正総デニール数の糸で編まれた編み手袋は厚く、ポリウレタンなど滑り止めをコートすると、厚さが1.0mmを超え、出来上がった滑り止め付き作業用手袋は固く、作業性、フィット感の悪いものであった。
組み立て作業などの作業用手袋で多く使われている13ゲージ、15ゲージの横編機で使用される糸の適正総デニール数は319デニール程度、実際使用されている範囲としては280〜320デニール程度であった。糸の太さは編み機のゲージ数により最適な範囲があり、横編機のゲージ数により使用可能な糸のデニール数は決定されるため、高いゲージ数の編機に適合する細いデニール数の糸を上記の横編機に用いることは難しいという問題があった。
このため、編み手袋の厚さを薄くすることを目的として従来より細いデニール数の糸を使用して横編機で編み手袋を製造する試みが行われてきた(特許文献2、3、4参照)。
例示的には、18ゲージの横編機を使用して編成する方法によれば221デニール以下の糸で編成することにより薄い編み手袋が編成でき、作業性、フィット感のよい手袋が得られる(特許文献3)。18ゲージの横編機の糸の適正デニール数が13ゲージ、15ゲージより細いため製造に適していた。しかし、全自動手袋編み機で100デニール未満の細い糸を用いた手袋を編成することはできなかった。例えば、Knitting Technology(非特許文献1)を参照して、横編機で使用される糸の適正総デニール数はゲージ数によって定められ、一般的には、13ゲージ、15ゲージで実際に使用可能な範囲は280〜320デニール程度である。
水溶性繊維と非水溶性繊維からなる糸で手袋を編成し、編成後の後処理として、水につけることにより水溶性繊維を除去した非水溶性繊維の糸からなる手袋が得られる(特許文献2)。特許文献2によれば、水洗の手間がかかるほか、洗浄が不十分の場合、水溶性繊維が不純物となった。また、編み目の大きさは複合糸の編成時と変わらないため、編み目が粗いという問題があった。
縫製繊維生地を用いて編成された原手を、手型に被せてから多孔質ポリウレタン層を湿式成膜させた上に、無孔質の透湿防水性ポリウレタン樹脂層をコーティングする方法が記載されている(特許文献4)。この方法によれば、厚さが500μm以下で縦方向の引張伸度が170%以上の特性を備えた薄い繊維生地を縫製手袋に使うことにより手袋の厚みを薄くしても容易に破損しない強度を有し、薄い縫製生地本来の柔らかさにより、過剰な引張や外力にもコーティング層が容易に剥離や破損しないで、手にフィットし、作業性、透湿防水性の良い、タッチパネル等の作業が出来る手袋が得られた。
特許文献3では100デニール未満の細い糸を用いた手袋を編成することはできなかった。そのため、この編み手袋では更なる作業性の改善された手袋を得ることは困難であった。特許文献4によれば、従来の横編機(全自動手袋編機)で生産される手袋に比べ、手袋を構成する繊維生地自体が薄くかつ編み目が細かい手袋を製造することができるが、縫製技術を用いて手袋を製作するため、各指の両側に縫製による縫い代が必然的に存在することになる。上記の縫製繊維生地を用いた手袋では縫製部の縫い代が手の周囲、指の先にあるため、特に指先で細かい作業を行う際、この縫い代の存在により作業性の低下を招いていた。
そのため、手袋内側で縫い代が手に接触し装着感及びフィット感が損なわれ、作業性の観点からも問題がある。また、縫製手袋の場合は、糸原料から生地の生産、生地の裁断(型抜き)、縫製などの工程を経るので、人件費や工程数の観点から、生産コスト、製品単価が高くなる。
一方、横編み機である全自動手袋編み機の場合は、糸原料から直接ほぼ最終製品に近い状態まで加工できる生産方法ではあるが、高いゲージ数を用いることは編み機の構造的に限界がある。高いゲージ数の横編機で細いデニール数の糸を使用することにより、従来の横編機で編成された手袋よりも厚さを薄く、柔らかく、手にフィットし、作業性の良い手袋であって、より精密で細かい作業に適した手袋を得ることは難しかった。
WO2008/029703号公報 特開2003―138409号公報 特表2009―527658号公報 特開2008−038303号公報 特願2014−052572号 実用新案登録第3118655号公報 特開2007−77544号公報 特開2013−167042号公報 特開2011−63923号公報 特開2010−196184号公報
Knitting Technology(David J.Spencer著)
本発明者らは、先の特許出願(特願2014−052572号)において、18ゲージ編み機で製造できる薄く作業性の良い作業用手袋と同等のものを、広く普及している13ゲージ、15ゲージ横編み機で100デニール〜200デニールの糸を用いて安価に製造できるようにした作業用ウレタンコート手袋及びその製造方法を開示している。
しかし、この方法においても100デニール未満の糸を使った編み手袋を製造することはできず、従来の横編み機(全自動手袋編み機)を用いる方法よりも薄く作業性に優れた滑り止め付き編み手袋を得ることはできなかった。
経編機を用いた手袋の編成方法(実用新案登録第3118655号公報参照)では、編成時に、針床が上昇する際には編み針が編み目をベラの下方にはずすと同時に編み目に導糸が行われる。針床が下降する際には編み針がノックオーバーすることで古い編み目を貫いて新しい編み目が引き下げられるとともにカステング・オフにより前コースの編み目を針の後方に送り込むことにより、前側基布と後側基布を同時に編成し、各基布の側縁を編み込むことにより筒状の編地が形成される。周知のジャカード機構により各基布の側縁で編み閉じられるが、各指袋部の筒状部の先端は、通常の編成方法によれば、袖口部と同様に切断された開放端となる。
しかし、従来の横編機および経編機を用いる方法で得られた薄く作業性のよい手袋を用いても滑り止め加工を施した手袋はコーティング素材であるエラストマーまたは樹脂の編み手袋への含浸制御が難しく被覆層の形成が不均一になり、その結果、滑り止め付き手袋の柔軟性が十分ではなく、非常に小さなもの、具体的には直径2mm程度の部品を取り扱う作業は非常に困難であった。本発明の課題は、このような超精密作業が可能な滑り止め付き編み手袋を得ることである。
発明者は鋭意検討の結果、経編機(より具体的にはジャガード機構を有するダブルラッセル編機)により作成した編み手袋を原手として使用することにより、従来の全自動手袋編み機による編み手袋、薄い生地を縫製した手袋と比べ、作業性も優れた滑り止め付き手袋を得ることができ、特に指先を使う細かい作業において従来にない素手感覚に非常に近くなることが見出され、本発明に至った。
本発明は、経編機を用いて、指袋部、本体部及び袖部で前後の基布を筒状に形成し、それらの部分の側縁部並びに各指袋部の先端部を編み閉じることにより編成された編み手袋に、滑り止めのエラストマーまたは樹脂の均一に含浸された皮膜を手袋の全表面層または一部表面層に形成された滑り止め付き編み手袋である。エラストマーまたは樹脂の皮膜は、発泡(気泡)を含有する被膜層であってもよい。
この滑り止め付き編み手袋は従来の滑り止め付き編み手袋では非常に困難であった超精密作業が可能になった。
本発明の経編機を用いた編み手袋の編成では、オーバーロックなどの後処理を必要とせず、全自動手袋編機で生産される場合と比べ、生産工程の短縮化、省力化が可能となる編み手袋の原手を製造し、糸原料から直接最終製品に近い形態に加工する方法を採用することにより、従来製品に比べてより薄い繊維生地を保持する手袋であって、縫製作業等の不要な生産工程の省略を可能とする。
滑り止めのコーティング被膜を形成された編み手袋は、ゲージ数が大きい経編機で細い糸を使用して編成され、手袋表面に繊維を被覆する皮膜として均一に成膜することにより、原手の編み手袋の特性を生かして、手袋の柔軟性、作業性が改良された作業用編み手袋が得られる。
本発明の滑り止め付き編み手袋は、経編機で編成された編み手袋に滑り止めを施した編み手袋であって、手袋の全表面または一部表面だけに滑り止めのエラストマーまたは樹脂を付着させて被覆層を形成した滑り止め付き編み手袋である。
上記の編み手袋は、経編機で使用される糸の太さが10〜420デニール、好ましくは10〜100デニール、より好ましくは20〜50デニールである。
上記の編み手袋は、経編機のゲージ数が20〜32ゲージであり、好ましくは24〜32ゲージ、より好ましくは28〜30ゲージである。
編み手袋は、経編機の編成方法が好ましくはダブルラッセル編みであってもよい。
上記の編み手袋は、経編機で使用される糸の種類が好ましくはナイロン、ポリエステル、スパンデックス、アラミド、ポリエチレン、綿のいずれか、あるいはこれらの組み合わせであってもよい。編み手袋は、前記エラストマーまたは樹脂が天然ゴム、NBR、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、ポリウレタン、PVCのいずれか、あるいはこれらの組み合わせであってもよい。
上記の編み手袋は、滑り止め付きを含んだ厚さが1.0mm以下、好ましくは0.7mm以下である。
本発明の手袋の製造方法は、一対の各糸ガイドと各編針を通して、各編針にそれぞれ別個独立に給糸がされる経編機を用いて、各指袋部、本体部及び袖部で前後の基布を筒状に形成し、それぞれの側縁部並びに各指袋部の先端部を編み閉じることにより編み手袋を編成する工程、編成された手袋の全表面または一部表面だけに滑り止めのエラストマーまたは樹脂を付着させて被覆層を形成する工程を含む、滑り止め付き編み手袋の製造方法である。
上記の編み手袋の製造方法は、経編機がジャカード制御機構を有するダブルラッセル編機である。
上記の編み手袋の製造方法は、経編機のゲージ数が20〜32ゲージであり、好ましくは24〜32ゲージ、より好ましくは28〜30ゲージである。
上記の編み手袋の製造方法は、使用される糸の太さが10〜420デニール、好ましくは10〜100デニール、より好ましくは20〜50デニールである。
上記の編み手袋の製造方法は、前記エラストマーまたは樹脂が天然ゴム、NBR、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、ポリウレタン、PVCのいずれか、あるいはこれらの組み合わせであってもよい。
発明者は鋭意検討の結果、経編機により作成した編み手袋を原手として使用して、手袋の全表面または一部表面だけにエラストマーまたは樹脂の滑り止めをコーティングすることにより、従来の全自動手袋編み機による編み手袋、薄い生地を縫製した手袋を原手とした場合と比べ、作業性の優れた滑り止め付き手袋を得ることができ、特に指先を使う細かい作業において従来にない素手感覚に非常に近くなる効果が見出された。ジャカード制御機構を有するダブルラッセル編機により作成した編み手袋を原手として使用して、手袋の全表面または一部表面だけにエラストマーまたは樹脂の滑り止めをコーティングした手袋は、従来に比較して格段に小さい部品等を取り扱う作業が可能になった。
ダブルラッセル編機の筒状編地の編成例を示す模式図である。 ダブルラッセル編機の手袋用の筒状編地を示す模式図である。 経編機により編成された従来の編み手袋の一例を示す図である。 図2の編み手袋の編み組織を模式的に示す概略図である。 前側基布と後側基布の側部同士を連結する編成を模式的に示す概略図である。 開口部の伸縮力を有する編み組織を模式的に示す概略図である。 滑り止め付き編み手袋の一例を示す、手の甲側から視た斜視図である。 図6の滑り止め付き編み手袋の手の平側から視た斜視図である。 手型の一例を示す正面図である。 原手の一例を示す正面図である。 図8Aの手型に図8Bの原手を装着した正面図である。 図8Cの原手の浸漬状態を示す側面図である。
本発明の滑り止め付き編み手袋40は、図6,7に示すように、経編機で編成された編み手袋30に滑り止めのエラストマーまたは樹脂41を付着させた滑り止め付き編み手袋であって、前後の基布9,10を筒状に形成した本体部32、編み閉じられた先端部8並びに側縁部7を有する指袋部1、及び開放縁31を有する袖口部5が異なる編み組織により編成された、シームレス編み手袋に滑り止めのエラストマーまたは樹脂41を付着した滑り止め付き編み手袋である。
[経編み手袋]

本発明の作業用編み手袋には、経編機を用いて編成した編み手袋30を使用する。現在市販されている経編機のジャカード制御機構を有するダブルラッセル編機、代表例として、カールマイヤー社(ドイツ)製、機種:RDPJ6/2、HDRPJ10/2等を用いることができる。例えば、特開2010−196184号公報を参照して、ダブルラッセル(ダブルラッシェル機)とは、前部ニードル列と後部ニードル列とを有するダブルニードル列経編機である。前部ニードル列により筒編前部を、後部ニードル列により筒編後部をそれぞれ編成するとともに、筒編前部と前記筒編後部とを接結編成し、かつ筒方向の端部に開口縁部を有する筒編製品を編成する。編成においては、ダブルラッセル経編機上で同時に編成される前後部の編生地にて、各筒編製品に相当する各領域の編幅方向端部に開口縁部を編方向に直線状に位置させるように筒方向を編幅方向にして、編方向に繰り返し連続して編成する。通常は、筒編製品を編幅方向で複数並列させて編方向に連続編成する。この編成において、開口縁部には補強糸や弾性糸を所要幅にわたって編み込み、また帯状領域には弾性糸などの機能性を付加する糸を編み込まれる。 既存のダブルラッセル編機のジャカード制御機構を有する一つの例として、経編機のゲージ数としては20〜32ゲージが一般的に知られている。薄い編成生地を得るために、経編機のゲージ数は、24〜32ゲージであることが好ましい。一方、全自動手袋編機では、慣用的にゲージ数として18ゲージを超える機種は現時点で存在しない。ジャガード制御機構とは、地筬及びジャガード筬により編み地を編成する際に、ジャガード筬を形成するガイドニードルの配置を制御する制御機構であり、各筬を前部ニードル列及び後部ニードル列にオーバーラッピングさせることも可能である。通常の編成方法によれば、袖口部と同様に切断された開口端部が形成されるが、手袋の場合には各指袋部の編み地に編成された基布の側縁で横方向に連結する鎖編等により編み閉じられ、筒状部の開口端は端末処理が不要な縁部として分離可能な編成制御機構である。
経編機は、編成時に、針床に配置された編み針が上下運動して、編み針のクリアリング動作とともに地筬のラッピング運動が行われて、1コースを同時に編成し、編地を形成する。前側の基布と後側の基布は、一対になっている各糸ガイドを通して、編み幅全ての編み針に同時に糸が給糸され、筒状部が形成され、編成後に手袋形状の外縁に沿って編み閉じられた部分を切断することで製品化される。
従来普及している横編みによる全自動手袋編機ではなく、よりハイゲージな機種が存在するダブルラッセル編機により、編機の機器条件は、28ゲージのダブルラッセル編機を用いて、給糸される糸は20デニール程度のナイロン糸を使用して編み手袋を編成する。具体的な編成方法は、以下の通りである。
例えば、経編機の場合、原料糸として使用する糸素材は、地筬、ジャガード筬の両方の給糸方法が可能である。好ましい実施形態では、経編機のゲージ数が28ゲージであり、地筬及びジャガード筬の両方に給糸して手袋を編成する。糸の番手は15デニール〜40デニール、より好ましくは20デニール〜32デニールである。糸素材に、例えばナイロン、ポリエステル、スパンデックス、アラミド、ポリエチレン、アクリル、綿等のいずれか、あるいはこれらの組み合わせである原糸を使用することができる。さらに、伸縮性(捲縮性)のウーリー加工が施されたナイロン、ポリエステル等を用いることにより、編み手袋をコーティングする際に被せる手型に密着し、成膜のために浸漬するときにも手型からの位置ずれ等がなく、所望の範囲に均一な厚さのコーティング被膜が形成された編み手袋が得られる。
[滑り止め]
NBR、天然ゴム、ブタジエンゴム、水系ポリウレタン等のエマルジョン系エラストマー分散液に編み手袋を被せた手型を浸漬、乾燥、硬化することで編み手袋の表面に滑り止めコーティング被膜を形成する。これらのエラストマーのエマルジョン分散系のほか、溶剤にエラストマーを溶解させて、例えば溶剤系ポリウレタンなどを用いた湿式成膜及び乾式成膜などによっても、滑り止めコーティング被膜を形成することができる。
[経編手袋の編成]
経編手袋の編成の一つの態様として、図2に示すように、前側基布9と後側基布10は左右両方の側部を連結する連結編みで編むことにより、筒状の編成地を得ることができる。例えば、図1Bに示すように、ダブルラッセル編によれば、縦方向に左右一対の手袋が複数個直列に形成される。別の左右一対の手袋が並列して形成されてもよく、通常、経編機のコース方向の幅は製品の手袋の幅より大きく、2列以上並列した連続体の編成方法を用いるため、生産性が向上し好ましい。
[滑り止め加工]
慣用的に、手袋上に滑り止めの素材としてNR及びNBRなどのゴム被覆層を形成する方法には、凝固法と感熱法がある。滑り止めの素材は特に限定されるものではないが、天然ゴム、NBR、ブタジエンゴム、水系ポリウレタン等のエマルジョン系のほか、湿式成膜、乾式成膜によりコーティングする溶剤系ポリウレタン等、可塑剤に分散後コーティングし、加熱硬化させるPVCなど用いることができる(特開2013−167042号公報参照)。また、上記した滑り止めは任意に発泡させることも可能である。
滑り止め加工を施す範囲は特に限定されないが、手袋の全表面または指先などの一部表面に被覆層を形成したものが望ましい。
指先部のみに滑り止め加工を施した場合、指先以外に滑り止めを施さないため、編み物の柔軟性が生かされ、非常に作業性がよい手袋が得られる。
掌部に滑り止め加工を施した場合、作業時に滑りづらく、手の甲に滑り止め加工が施されないため、通気性が良く蒸れづらい手袋が得られる。
手袋の表面全体に滑り止め加工を施した場合、コーティング被覆層の特性によって油あるいは土や泥等の汚れが手袋内に入らないため手が汚れない手袋が得られる。
[経編手袋の編成方法]
本発明の経編機による具体的な編成条件は以下の通りである。
手袋の編成は、経編方向で連接させて編成した後、手袋の単体に切り離すことで、一対の手袋が形成される。経編による筒編の一例である手袋は、開放縁を含む手袋の編組織から構成されるものである。
ジャカード制御機構を有するダブルラッセル編機の筒状編地の編成例を示す図1Aを参照して(特開2007−77544号公報)、経編機から筒状ソックスが形成されて排出された連続体を正面側からの視点で見ると、編成方向は縦方向である。すなわち、編成方向は、経編機から排出される縦方向であり、縦方向に対し直交するコース方向を、横方向、又は、左右方向と略称される。図1Bに示す筒状編み地の編成方法を編み手袋に適用した例として説明すると、前側基布9と後側基布10は筒状部に形成され、ジャカード制御により各基布の側縁11で編み閉じられる。手袋30の指袋部1の筒状部は、独立に給糸される縦方向の編み地によりそれぞれ形成される。編成後に手袋形状の外縁に沿って編み閉じられた部分を切断する。各指袋1の側部7は、前側基布9の上側指袋部1aの側面と対応する後側基布10の下側指袋部1bの側面同士を連結する連結編みで筒状とする一方、各指袋1の先端部8を、前側基布9の上側指袋部1aの先端部前側と後側基布10の下側指袋部1bの先端部の後側並びに先端部の左右側(横方向)の連結編みで連結し、指先が閉じられた先端部が形成される。作業用編み手袋30の場合は、手袋の各指部、手のひら、手首部分の生地のそれぞれの端目が前後に繋がる筒状編み地となる編み手袋に編成する経編機の編成動作を設定しておく(例えば、専用の編成プログラムとして記憶させる)。
図2に示す単一の編み地で編成された従来の編み手袋30の開放縁31は、図3に示す編組織の基布より離隔した部分を切断される。前側基布9と後側基布10は、縦方向に左右側を結合した編地が形成できる編み組織の経編である。簡単には、デンビ組織で編まれるが、これに限定されず、他の経編組織でもよく、例えば、ハーフ組織、メッシュ組織、アトラス組織などでもよく、編み模様を付してもよい。目開きなどにより、通気性を向上させるなど、用途に応じて適宜の編み組織を採用できる。経編機の場合、例えばコンピュータ制御によりジャガード筬を別個に制御するため、作業用手袋の原手を構成する編み手袋30の手の甲側と手の平側に、それぞれ異なる編み組織に編成することができる。地筬及びジャガード筬への給糸量を個別に変更する方法で編み目の度目を変更できる。従って、例えば、後述する手型の形状に沿って手袋の仕上がりや風合いが最適になるように調整が可能となる。
前側基布9と後側基布10を筒状に編み、次いで、各指袋部1を別個に区画している指袋側部において、前側基布9の上側指袋部1aの側面に対する後側基布10の下側指袋部1bの側面同士を結合するには、図4に示す前記筒状に編まれた胴部の前側及び後側基布9,10の側部11同士を連結するときと同様に、連結編みで連結して編むことにより、筒状袋体とする。例えば、指袋部1の左右の各側面の左側部11aを編むときと、各側面の右側部11bを編むときに、左右対称の編み組織で編むことにより、各指袋を筒状に形成する。
本発明の編み手袋で用いる20〜32ゲージのダブルラッセル編機で使用できる糸の太さは、非弾性糸としては10デニール(11dtex)〜210デニール(231dtex)の範囲のものが好ましく用いられ(天然繊維糸はこの太さに換算した番手)、弾性糸としては通常10デニール(11dtex)〜420デニール(462dtex)、好ましくは10デニール以上〜100デニール未満、より好ましくは20〜50デニールの範囲で任意に選択される。例えば、28ゲージの場合、糸素材は、地筬及びジャガード筬両方の給糸として、伸縮性のあるウーリー(捲縮)加工ナイロン繊維、ウーリー加工ポリエステル繊維が好ましく、番手は、15デニール〜40デニールが好ましく、最適な番手として20〜30デニールである。
複数個の手袋同士間を縦直列に連結している部分の編み組織は、図1Bに示すように、縦方向に複数個の手袋同士の間を連結できるものであれば限定されない。例えば、前側基布9や後側基布10の主要部分の編み組織と同じ、デンビ組織、あるいは別の編み組織でもよい。手袋本体基布の非弾性糸が、デンビ組織で形成されている場合に、弾性糸の編み組織として、前側袖開口部6aの編み地及び後側袖開口部6bの編み地は、それぞれ、右側の編み目の部分がウェール方向へ1針分振られた編み地とされる(図5参照)。この弾性糸を編み込む編成により、袖開口部等の伸縮力が手袋本体基布の非弾性糸による伸縮力に比べて変えられる。
編み目の部分全てが右ウェール方向へ1針分振られている編み組織のみに限定されず、手袋の編み組織の伸縮力を調整することができる。例えば、右側の編み目の部分全てではなく一つおきに右ウェール方向へ1針分振られている編み組織、右側の編み目の部分2つをそれぞれ右ウェール方向へ1針分振り、次の右側の編み目の部分1つは右ウェール方向振らない態様の繰り返し編み組織であってもよい。従って、袖開口部6の伸縮力を比べて、他のすべての条件(例えば用いる弾性糸の種類や、太さなど)が同じだとすると、1針分振る部分の割合の大小によって袖開口部6の伸縮力を所望に調整できる。経編機の場合、地筬及びジャガード筬への給糸量を個別に変更する方法で編み目の度目を変更できる。従って、例えば、後述する手型の形状に沿って手袋の仕上がりや風合いが最適になるように調整が可能となる。
指袋先端部と袖開口部の先端部の境界線は、通常その位置が判別しにくいため、編成された連続体のどの部分を切断して、個々の手袋を得るか切断する位置を特定するのが難しい。そこで、指袋先端部及び袖開口部の先端部の外縁領域の少なくとも一部の領域を指袋先端部や袖開口部の先端部と区別して目視できるような編み組織に変えて編むこともできる。
[滑り止め加工方法]
滑り止めのエラストマーとして溶剤系ポリウレタン樹脂を用いる場合は、編み手袋へ被覆層を形成する方法として、手袋を手型に被せ、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの親水性溶媒に溶解されたポリウレタン樹脂溶液に、ゆっくりと浸漬し、樹脂溶液を手袋に含浸し、付着させた後、手型を引き上げ、余分な樹脂溶液を除去し、手袋に残っている親水性溶媒を水もしくは温水と置換しポリウレタン樹脂をゲル化させる方法がある。乾燥温度は、温度が高すぎるとポリウレタン樹脂の溶融が起きることがない温度であることが好ましい。
樹脂溶液の粘度は高くなると、手袋への樹脂の付着量が多くなる。この場合には、硬い滑り止め付き編み手袋になるため柔軟性は失われ、作業性にも欠ける。手袋への樹脂の付着量が少なくなると空隙の多い被覆層となる。ポリウレタン樹脂の場合には、樹脂溶液の粘度は10〜5000cpsであり、樹脂濃度は2〜20重量%が好適である。
天然ゴム(NR)の感熱法では、繊維製手袋を手型に被せ一定の温度に加温し、ポリメチルビニルエーテル等の感熱凝固剤を配合した天然ゴムラテックスエマルジョンに手袋の被覆層の形成部分を浸漬し、乾燥した後、離型し、リーチング、加熱処理することにより硬化した天然ゴム(NR)被覆層を有する編み手袋が得られる。NBR等の凝固法では、編み手袋を手型に被せ一定の温度に加温し、例えば硝酸カルシウムメタノール溶液等の凝固剤に浸漬し、ゴムラテックスエマルジョンに手袋の被覆層の形成部分を浸漬し、乾燥する。その後、離型し、リーチング、加熱処理することにより、硬化したNBR被覆層を有する手袋が得られる。天然ゴム(NR)を用いた凝固法でも、NBRの凝固法と同様の工程により硬化したNR被覆層を有する手袋が得られる。
以上に説明した態様では、
(1)前側袖口部と後側袖口部の開放縁は、手袋本体基布の編み組織よりウェール方向の編成が大きい編み組織で形成される。弾性糸を用いて、袖開口部の伸縮力が手袋本体基布の伸縮力に比べて大きくなり、ずれ防止機能を発揮する。このようにウェール方向に1針分振ることや、上述の各種編み組織への変更はジャカード機構を有するダブルラッシェル編機を用いれば容易に実現することができる。切断または裁断したままの状態で、特別の端末処理をしなくても、切断した縁が解けることはない。
(2)手袋の浸漬部位については特に限定されるものではなく、任意の部位にポリウレタン樹脂等の被覆層が形成される。即ち、被覆層は、少なくとも原手の所望の一部に形成されていればよく、例えば、原手の外表面全体や、指先部分のみ、または、背抜き状態となるように手の平部分にのみ、等に被覆層を形成することができる。
(連結編み)
前側基布と後側基布の脇側で、それぞれ前側基布と後側基布を左右両方を連結する連結編みで連結され、筒状の編地に連結される。連結編みの編み組織は、表裏同じウェールに通されており、左右方向に振れていない編み方であり、前側の基布が、上側指袋部、手甲部(上側胴部)、上側袖口部を形成しており、後側の基布が、下側指袋部、掌部(下側胴部)、下側袖口部を形成している。指袋先端部を前側と後側が閉じられるように編む場合、前側基布と後側基布を前側と後側並びに左右側(横方向)を連結編みで連結し、指袋先端部を形成する。糸は、下から順に、右側の前側、左側の後側、次いで同前側、次に右側の前側、更に左側の後側に給糸され、前側基布と後側基布並びに左右側面を同時に連結する連結編みの編み組織となっている。従って、指袋先端部を閉じて袋状にすることができる。
通常、連結編みの編み組織は、表裏同じウェールに通っており、言い換えれば、左右方向に振れていない編み方であり、目視では継ぎ目がわからない程度である。
(湿式成膜)
柔軟な湿式被覆層を形成するために形成される被覆層の厚さを調整するには、ポリウレタン樹脂溶液中の親水性溶媒成分の水中置換過程を制御することが必要である。水置換の進行が速くなると、被覆層は手袋表面側で孔が多くなり、被覆層の厚みが薄く、強度が弱くなる。一方、水置換の進行が遅くなると孔が形成され難く、被覆層の厚みも増して手袋の触感が硬くなる傾向がある。
界面活性剤の添加量は、使用するポリウレタン樹脂に応じて適宜決定される。親水性の界面活性剤を配合すれば、溶媒の水置換速度は速くなる傾向がある。逆に、疎水性の界面活性剤を配合すれば、置換速度は遅くなる傾向がある。界面活性剤の添加量は、使用するポリウレタン樹脂に応じて適宜決定される。
湿式被覆層を具体的に制御する方法を示すと、繊維基材である手袋に含浸させたポリウレタン樹脂の親水性溶媒を水置換することで、溶媒和していたポリウレタン樹脂がゲル化して、手袋とポリウレタン樹脂が密着した状態となる。置換の所要時間は、ポリウレタン樹脂溶液中の親水性溶媒が抽出・置換される時間である。親水性溶媒がポリウレタン樹脂中に残存した場合、再びポリウレタン樹脂を溶解するため、得られる被覆層は無孔質となる傾向がある。
(経編手袋の製造方法)
左右一対の手袋が横方向に並列で形成するには、本体部分の境界になる部分は、先に説明したように、前側基布と後側基布を連結編みで連結して編む。編み組織は左右方向には振れていないので、左右の手袋の側部の隣接領域は、互いに離れて形成される(接続されていない)。左右の手袋が縦方向で完全に離れて個別に経編機から排出されるように思われるが、左右の組が離れないように、例えば、縦方向に複数個の手袋同士の間を連結している部分の編み組織を、左右方向にも連結が生じる編み組織とすれば、この部分の連結が保持され、連続体として編機から排出されることになる。そして、手袋の一端部の指袋先端や手袋の他端部袖口開放縁の外縁に沿って切断して、個々の手袋を得る。指袋先端部の縦方向長さよりも長く形成した部分を設けておくと、切断した場合に指袋部分間がつながった状態で切断されることがない。左右の本体部分の境界になる側部も袖口開口部の上縁より上側に長く形成した部分を設けておくと、切断した場合に左右の手袋が上端でつながって切断されることがない。
例えば、手袋の袖口部を編むときに、袖口部開放縁に到達したら、編成組織を変えて編む。ジャカード機構を有するダブルラッシェル編機を用いれば、1本の糸を縦方向で編み組織を部分的に変えることは実現できる。ジャカード機構を有するダブルラッシェル編機の編み組織の指令を入力する制御部に、特定の位置の糸に関し、初めは連続編み組織とし、袖口部の開放縁に到達した位置で、一針振りの入った編み組織とし、再度、連続編み組織にするという指令を入力して編めばよい。
また、指袋先端部と反対側の端部には、袖開口部を形成するが、袖開口部の形成に際しては、好ましくは、袖開口部に編みこまれている弾性糸が、手袋本体基布の糸の編み組織よりウェール方向の振りが大きくされた編み組織で形成されている。手袋の外面側に弾性繊維を用いる場合は、弾性繊維が熱に弱く劣化しやすい場合、弾性繊維の露出を防止する目的で、弾性繊維の芯糸にナイロン、ポリエステル繊維等でカバーリングしたものを用いることが好ましい。これにより、滑り止めを施す加工の際の加熱処理後においても弾性繊維は弾性力を保持することができる。
(湿式加工)
上述した湿式加工法によれば、ポリウレタン樹脂の被覆層を形成する場合、ポリウレタン樹脂溶液へ原手を装着した手型を浸漬するが、このときの手型の温度は、常温〜100℃程度であることが好ましい。実際の製造を考えた場合、手型の温度を常温よりも低くするためには冷却設備が必要となるため現実的ではない。手型の温度が100℃を超える場合には、付着したポリウレタン樹脂溶液の粘度が低下し流動性が大きくなるため、不均一な付着となってしまい、得られる被覆層も不均一なものとなる。より好ましくは、常温〜70℃である。
ポリウレタン樹脂溶液中の親水性溶媒を水中置換する工程において、水温は室温〜70℃程度に適宜設定することができる。水温は、50℃〜70℃を超えると置換速度が速くなり、ポリウレタン樹脂溶液表面の被覆層形成が速くなる。結果として、最表面には緻密な被覆層が形成されるものの、得られる被覆層は不均一な状態となる。水温が室温未満では、ポリウレタン樹脂の親水性溶媒の水置換速度が遅くなり、ポリウレタン樹脂の析出に時間を要するため、効率が悪い。
余分な樹脂溶液を除去するための滴下時間については、溶媒の過剰な揮発を抑え、不均一な付着、不均一な膜厚になることを防止するため、20分以下であることが好ましい。より好ましい条件としては10秒から10分以下であることが好ましい。10秒未満であると余分な樹脂が残ってしまい、PUの厚さが不均一になってしまい好ましくない。10分を超える場合はPUを過剰に除去してしまうため樹脂の厚みが薄く、強度が弱くなり好ましくない。
(使用糸)
本発明に用いられる合成繊維、天然繊維、再生繊維の長繊維(フィラメント)または紡績糸からなる繊維は目的に合わせて単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。例えば、切創事故防護用途では高強度繊維を使用し、高強度ポリエチレン繊維、アラミド系繊維、液晶ポリマー繊維の高強度ポリアリレート繊維等からなる糸を使用する。また、クリーンルーム等における発塵防止用途には、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、レーヨン繊維、ポリノジック繊維、ポリエチレン繊維、アラミド系繊維等の長繊維またはその捲縮加工糸からなる糸を使用する。実施例で用いる編み手袋の原手の編成に使用する糸の太さは、10〜420デニール、好ましくは10〜100デニール、より好ましくは20〜50デニールである。
経編の特性として、横編みで見られる切断面からのほつれ(伝線)が発生しない編み手袋が得られ、編み手袋の指先を編成後切断しても切断面からほつれづらくなった。使用されるジャカード制御機構を有するダブルラッセル編機はコンピュータ制御されているため、コーティングに使う手型、手の形に合わせて形状、伸縮性を調整することにより、原手の手型へのフィット性及び製品手袋のフィット感を調整することができる。従来の全自動手袋編み機(横編み機)では一度に一枚しか編成できなかったが、経編機では一度に複数枚編成できるため、生産性が良くなった。
これらの製造方法で作成された作業用手袋は厚さが溶剤系ポリウレタンコートの場合、0.4mmと従来技術で得られる手袋の厚さ0.7mmの半分近くになる。これにより、曲げたときの反発感が小さくなり非常に柔らかく、指先の感覚が素手に近くなるため、従来と比べ小さいものを持ちやすくなった。
以下、詳細に実施例を記載しているが、本発明はかかる実施例等に限定されるものではなく、本発明の範囲内で、当業者により想像しうる任意の条件で本発明の効果を得ることができる。追記の請求項によってさらなる変更および修正が定義される。
本発明の実施例で用いる20〜32ゲージのジャカード制御機構を有するダブルラッセル編機で使用できる糸の太さは、非弾性糸としては10デニール(11dtex)〜210デニール(231dtex)の範囲のものが用いられ、弾性糸としては通常10デニール(11dtex)〜420デニール(462dtex)の範囲のものが用いられる。
本発明に用いられる糸は、実施例で用いたナイロン繊維のほか、合成繊維、天然繊維、再生繊維の長繊維(フィラメント)または紡績糸からなる。天然繊維としては、例えば、綿、羊毛、絹、麻などが挙げられる。また、合成繊維や再生繊維としては、例えば、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、アクリル系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、レーヨン繊維、ポリノジック繊維、キュプラ繊維、アセテート繊維、トリアセテート繊維、プロミックス繊維、ビニロン繊維、ビニリデン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリベンゾエート繊維、ポリクラール繊維、ポリエチレン繊維、アラミド系繊維、ポリウレタン繊維などが挙げられる。また、ポリウレタンゴム、天然ゴムなどからなるゴム糸を使用することもできる。
実施例、比較例において全面にコーティングされたPVC以外は各滑り止めエラストマーまたは樹脂を掌部分に施したものである。なお、実施例、比較例で用いる以下のポリウレタン樹脂、NBR及びNRラテックス、ポリ塩化ビニル樹脂のコーティング用組成物は、コーティング被覆層の形成のために使用可能な市販品及び相等品の引用例を記載したものである。
PUコートには、ジメチルホルムアミドを用いて固形分量12重量%に希釈したポリウレタン樹脂溶液レザミンCU−4340NS(大日精化工業製)を用いて滑り止め加工を施した。市販のポリウレタン樹脂溶液としては、クリスボン(登録商標)MP−812、クリスボン8006HVLD、クリスボンMP−802(大日本インキ株式会社製)、サンプレン(登録商標)LQ−X37L、サンプレンLQ−3358、サンプレンLQ−3313A( 三洋化成工業株式会社製) 、RESAMINE(登録商標)CU−4340、RESAMINECU−4310HV、RESAMINECU−4210(大日精化工業株式会社)を使用することができる。
PU被覆層を形成する方法として、湿式加工により行うことができる。湿式加工とは、図8A〜8Cに示すように、浸漬用手型45に原手30を装着し、図9に示すように、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、N―メチルピロリドンなどの親水性溶媒を主体とする溶媒に完全に溶解されたポリウレタン樹脂溶液46に、この手型45に装着された原手30をゆっくりと浸漬し、ポリウレタン樹脂溶液46を原手30に含浸付着させた後、ゆっくりと手型45を引き上げ、滴下する余分な樹脂溶液を除去し、手型45を水もしくは温水に浸漬して親水性溶媒を水もしくは温水と置換しポリウレタン樹脂を膜質状にゲル化させる方法である。このようにして、図6,7に示すように、滑り止め付き編み手袋40が完成する。
NBRコートに用いるNBRラテックス組成物は、NBRラテックス100重量部(固形分換算)に、硫黄1.0重量部、酸化亜鉛0.75重量部、加硫促進剤0.2重量部、酸化防止剤1.0重量部、増粘剤(ポリアクリル酸エステル系)0.3重量部を含むNBRラテックス組成物であって、加硫促進剤としてジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、酸化防止剤として2,2’−メチレンビス−4−エチル6−tertブチルフェノールを用いる。
NRコートに用いるNRラテックス組成物は、NRラテックス100重量部(固形分換算)に、KOH(10重量%)1.0重量部、硫黄1.0重量部、酸化亜鉛0.75重量部、加硫促進剤0.2重量部、酸化防止剤1.0重量部、増粘剤(ポリアクリル酸エステル系)0.3重量部を含むNBRラテックス組成物であって、市販のポリアクリル酸エステル系の増粘剤としてアロンA−7075(東亜合成社製)を用いた。
NBR及びNR被覆層を形成する方法として、編み手袋を手型に被せ、凝固剤に浸漬する。凝固剤としては、例えば、硝酸カルシウム等の金属塩の水もしくはメタノール溶液である。手型に被せた手袋の指袋先端部から余分な凝固剤を除去し、手袋の指袋先端部に保持された凝固剤を均一に固化する。その後、手型に被せた編み手袋をゴム配合物に浸漬した後、例えば60〜130℃、6〜20分間乾燥を行い、編み手袋を手型から取り外した後、リーチングを行ってから、100〜140℃、20〜60分間加熱処理を行う。感熱法では、編み手袋を手型に被せ加温し、ゴム配合物に浸漬した後乾燥する。浸漬及び乾燥工程、乾燥後のリーチングや加熱処理等は上記した凝固法と同様の工程である。配合物の濃度は、ゴム被膜が完全に浸透せず、接着強度が低下しないように適当な濃度に調整される。ゴム皮膜は、滑り止め層も含めて2〜3層重ねた加工にしてもよい。編み手袋の内面側までゴムで覆われると、繊維と手指とが接触する部分がなくなり、汗等により手袋の内部で滑りを生じるので好ましくない。
PVCコートに用いるポリ塩化ビニルレジン組成物は、ポリ塩化ビニルベースレジン組成物100重量部(固形分換算)に、可塑剤100重量部、増粘剤1.0重量部、安定剤3.0重量部を含むポリ塩化ビニルレジン組成物であって、可塑剤としてフタル酸ジイソノニル(DINP)、増粘剤としてレオシールQS102(トクヤマ製)、安定剤としてSC72(アデカ社製)を用いた。
塩化ビニル系樹脂の被覆層を形成する方法は特に制限されないが、予め編み手袋を撥油剤による撥油処理を施すことにより、接着性に優れた手袋を得ることができる。例えば、編み手袋をフッソ系樹脂、シリコーン系樹脂等の撥油剤に浸漬し、80〜130℃で乾燥する。撥油剤は編み手袋の重量に対して1〜3%程度である。この編み手袋を手型に被せ、塩化ビニル系樹脂(ペースト)を塗布し180〜210℃程度、10〜20分程度加熱処理を行う。
実施例には各ゲージ数のジャカード制御機構を有するダブルラッセル編機により作成した編み手袋を使用した。
各実施例、比較例の原手には、表に記載された番手(繊度)の捲縮加工を施したナイロン糸を使用した。実施例1〜2において、総デニール数20〜50の編み手袋の原手に溶剤系ポリウレタン樹脂を手袋の指及び掌部に湿式成膜している。実施例3及び実施例4では、総デニール数20の編み手袋の原手にNR及びNBRの被膜を手袋の指及び掌部に形成し、実施例5では、同じデニール数の編み手袋の原手にPVCの滑り止めを施した手袋は手袋全体にコーティング被膜が形成されている。
[屈曲反発力]
試験片の幅30mm、長さ70mmを用いて、板間4mmで、試験片を長さ方向に半分に折り、2つの板の間に挟み込んだ際の反発力(N)を求め、その値を幅30mmで割って屈曲反発力(mN/mm)を求めた。屈曲反発力は、2.5mN/mm以下が好ましい。
[作業性]
作業性の評価方法としては各大きさの鉄球をつかめるかをアンケートにて評価した。この作業性の評価方法を鉄球試験という。使用した鉄球の直径はφ0.5mm、φ0.8mm、φ1.0mm、φ1.2mm、φ1.5mm、φ2.0mm、φ2.5mm、φ3.0mmである。手袋をする前に被験者が素手でつかめる鉄球の大きさを確認したところ平均でφ1.0mmであった。
本発明の実施例においては溶剤系ポリウレタン樹脂を湿式成膜した編み手袋において素手と同じ大きさの鉄球をつかめることが分かった。その他のエラストマーをつけた場合でも従来の手袋と比べ、格段に小さいものがつかめた。また、そのほか使用感についてのアンケート結果(作業性、屈曲感、小さいものの掴み易さ)についても、大変柔らかく作業性がよい素手感覚の手袋であった。また、指先の感覚が大変よいため、従来と比べ小さいものが持てるようになった。
[比較例]
比較例1〜3では、ゲージ数13〜18、140〜300デニールの糸を使用して横編み機で編成された編み手袋の原手に溶剤系ポリウレタン樹脂を手袋の指及び掌部に湿式成膜している。比較例5〜7では、13ゲージ、280デニールの糸を使用して横編み機で編成された編み手袋の原手にNR、NBR、PVCの滑り止めを施した。比較例4以外の比較例には、表に記載されたゲージ数の島精機製作所製の全自動手袋編み機、New−SFGにより作成したシームレス編み手袋を使用した。比較例4は表に記載されたゲージ数の丸編み機で製造した生地をつかった縫製手袋に溶剤系ポリウレタン樹脂を湿式成膜した。比較例7では、同じデニール数の編み手袋の原手にPVCの滑り止めを施した手袋は手袋全体にコーティング被膜が形成されている。
各実施例、比較例の実施条件、および評価の結果を表1、表2に記す。このような結果になった理由としては、滑り止め付き手袋の厚さが薄くなったこと、具体的には0.7mm以下となったことと、滑り止め付き手袋中の原手由来の糸の存在量の低下、縫い代がないことにより、従来原手の糸の特性により得られていなかった被覆層から得られる特性が発現したことによるものと推測される。
Figure 0006473815
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PUコートを行った実施例1、2、比較例1〜3を比べると、実施例の滑り止め付き手袋が比較例と比べ格段に小さいものをつかむことができ、実施例でつかめた鉄球の大きさは素手でつかむことのできた最小の大きさであるφ1.0mmであり、実施例1、2では素手と変わらない作業性が得られることがわかる。比較例4は丸編み機で製造した生地をつかった縫製手袋にPUコートを行ったものである。縫い代の存在により、フィット感が悪く、指先の感覚が阻害されるため、同じ厚さ、同じ総デニール数である実施例2と比べ小さな球をつかみにくかった。また比較例4は作業性、フィット感に関しても悪い結果となった。実施例3〜5、比較例5〜7の同じ材質(NR、NBR、PVC)による滑り止めを施したものを比べると、本発明実施例の方が、つかめた鉄球の大きさが非常に小さいことがわかる。
滑り止め付き手袋の厚さが薄くなり、具体的には0.7mm以下となり、滑り止め付き手袋中の原手由来の糸の存在量の割合が低下し、従来原手の糸だけでは得られていなかった被覆層から得られる特性が発現した。各種部品の精密な組み立て作業に使用可能なコーティングが施されたラッセル編み手袋である。本発明の作業用手袋は厚さが溶剤系ポリウレタンコートの場合、0.4mmと従来技術で得られる手袋の最小厚さ0.7mmの半分近くになる。これにより、曲げたときの反発感が小さくなり非常に柔らかく、指先の感覚が素手に近くなるため、従来と比べ格段に小さいものを持ちやすくなった。
以上の結果より本発明の構成を作業用編み手袋に適用することにより、従来の全自動手袋編み機による編み手袋、薄い生地を縫製した手袋と比べ、作業性の優れた、特に指先を使う細かい作業において従来にない素手感覚に近い滑り止め付き手袋を得ることができた。
さらに、実施例1の原手30において、PUコートに好適な条件を求めるための試験を行った。コーティングの基本条件として「粘度」、「温度」、「浸漬時間」の3要素がある。この3要素を変化させて、もっとも好適な作業用手袋(滑り止め付き編み手袋)が得られる条件を検討する。実施例1の原手30は、すでに説明しているが、太さが「20D/1×1」のナイロン繊維の糸を使用し、ゲージ数28のダブルラッセル編機により編成され、総デニール数20Dの経編み手袋である。
原手のPUコートは、完全防水を目的として主に手袋の全表面をコートするタイプ(いわゆるオールコートタイプ)と、手の蒸れの低減を目的として手袋の甲部を除いた手の平部と指部全体をコートするタイプ(いわゆるナックルコートタイプ)と、同じく手の蒸れの低減を目的として手袋の甲部側を除いた手の平部と指部の手の平側をコートするタイプ(いわゆる背抜きコートタイプ)と、手袋の指袋の第一関節付近までをコートするタイプ(指先コートタイプ)の約4種類がある。当該試験では、一般的な手の平コートタイプ(いわゆる背抜きコートタイプ)について行った。
また、ポリウレタン樹脂溶液の粘度は、250cps、500cps、1000cpsの3種類で試験を行った。ポリウレタン樹脂溶液は、ポリウレタン樹脂とDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)からなっている。そのため、この粘度は、ポリウレタン樹脂とDMFとの比率によって決定される。従って、ポリウレタン樹脂溶液の粘度は、DMFの比率を上げると低くなり、DMFの比率を下げると高くなる。
前記実施例1の原手30において、手の平部と指部にPUコートを行う。PUコートには、ジメチルホルムアミドを用いて固形分量12重量%に希釈したポリウレタン樹脂溶液レザミンCU−4340NS(大日精化工業製)を用いて滑り止め加工を施した。PU被覆層を形成する方法として、湿式加工により行う。湿式加工は、図8A〜図8Cに示すように、浸漬用手型45に原手30を装着し、図9に示すように、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、N―メチルピロリドンなどの親水性溶媒を主体とする溶媒に完全に溶解されたポリウレタン樹脂溶液46に、この手型45に装着された原手30の手の平部と指部を一定時間浸漬し、ポリウレタン樹脂溶液46を原手30に含浸付着させた後、ゆっくりと手型45を引き上げ、滴下する余分な樹脂溶液を除去し、手型45を水もしくは温水に浸漬して親水性溶媒を水もしくは温水と置換しポリウレタン樹脂を膜質状にゲル化させる。このように、実施例1の原手30の指部及び手の平部に溶剤系ポリウレタン樹脂41を湿式成膜している(図5,6参照)。
PUコートは、上記したように、ポリウレタン樹脂溶液46の粘度、温度、浸漬時間の3つの要素に影響を受け、この粘度条件、温度条件、時間条件を変えることにより、PUコートの質が変化する。ポリウレタン樹脂溶液46の粘度は、10〜5000cpsが好適であり、ポリウレタン樹脂溶液46の温度は、常温(23℃)〜70℃が好適である。粘度250cps、500cps、1000cpsのポリウレタン樹脂溶液46を準備し、この各粘度の樹脂溶液の温度を35℃と50℃に設定し、浸漬時間を2秒又は1秒として、原手30にコーティング試験を行った。下記表A〜Cは、同一の試験結果をわかりやすくするために、並べ替えたもので、表Aが粘度に対する効果を確認するために各粘度条件の平均値の差を算出し、表Bが温度の効果を確認するために温度2種類の各平均値の差を算出し、表Cが時間の効果を確認するために秒数2種類の各平均値の差を算出している。
表3A〜3Cは、コーティングされた原手30の手袋の中指の位置のPUコートの厚さ(単位mm)を測定した結果を表すものである。この表3A〜3Cから、PUコートの厚さは、温度及び浸漬時間ではあまり影響を受けていないが、粘度では影響を受け、粘度が高いと厚くなり、粘度が低いと薄くなる点が理解できる。なお、PUコートの厚さの平均値は、0.4mm以下となっている。
Figure 0006473815
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表4A〜4Cは、コーティングされた原手30の手袋の四本胴の位置のPUコートの厚さ(単位mm)を測定した結果を表すものである。この表4A〜4Cからも、PUコートの厚さは、温度及び浸漬時間ではあまり影響を受けていないが、粘度では影響を受け、粘度が高いと厚くなり、粘度が低いと薄くなる点が理解することができる。なお、PUコートの厚さの平均値は、0.4mm以下となっている。
Figure 0006473815
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従って、PUコートの厚さは、三要素中の粘度に影響を受け、厚さを薄くするためには、粘度を低くすれば良い。粘度が低いとそのポリウレタン樹脂溶液46内のウレタン比率が低くなるため、実際、コーティングして水置換すると手袋のウレタンコーティング量が減り、厚さが薄くなるものと思われる。
表5A〜5Cは、コーティングされた原手30の手袋のPUコートの屈曲反発力(mN/mm)を測定した結果を表すものである。屈曲反発力は、手袋のPUコートの柔らかさを示す一つの指標となる。この表5A〜5Cから、PUコートの屈曲反発力は、温度ではあまり影響を受けていないが、粘度及び浸漬時間では影響を受け、特に粘度の影響が大きく、粘度が高い場合硬くなり、粘度が低い場合柔らかくなる。また浸漬時間は、粘度の低い条件で影響が現れ、浸漬時間が長いと硬く(屈曲反発力が高く)なり、浸漬時間が短いと柔らかく(屈曲反発力が低く)なる。従って、粘度が低く浸漬時間の短い方が、PUコートは柔らかくなる。粘度の低い方がPUコートの厚さが薄くなるため、手袋の弾性率が下がり、より屈曲反発力が下がり、柔らかくなるものと思われる。
Figure 0006473815
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表6A〜6Cは、原手30にPUコートのコーティングが施された手袋40の鉄球試験の結果を表すものである。鉄球試験とは、PUコートのコーティングが施された手袋40の作業性を、掴める鉄球の大きさ(mm)で評価する試験である。即ち、PUコートのコーティングが施された手袋40が掴める鉄球のサイズ(単位mm)を検出する試験である。鉄球試験の結果を示す表6A〜6Cから、PUコートの掴める鉄球の大きさ(mm)は、粘度及び浸漬時間ではあまり影響を受けていないが、ポリウレタン樹脂溶液46のコーティング温度では影響を受けており、温度が高いと作業性が高くなり、温度が低いと作業性が低くなる。作業性が高いと、小さいものが掴め、作業性が低いと、小さいものが掴めない。従って、ポリウレタン樹脂溶液46のコーティング温度の高い方が、従来技術にて想定される常温より、作業性に置いては効果的である。まず、粘度の低い方がもともとウレタン量が少ないので薄くコーティングされ、指先の作業性が良くなる。また、ポリウレタン樹脂溶液の温度自体を高くすると、見かけ粘度が低くなり、さらに手袋表面のコーティング量が下がって、一層指先の作業性が良くなると思われる。
Figure 0006473815
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表3A乃至表6Cから、ポリウレタン樹脂溶液の温度を高くすると、見かけ粘度が低くなる。粘度の低い条件では、ウレタン量が少なく、薄くコーティングされ、指先のフィット感が良くなる。これは、ポリウレタン樹脂溶液の温度の効果が低い方がよく、さらに粘度が高い条件は温度を上げることにより見かけの粘度が下がり、手袋表面のコーティング量が減り、指先のフィット感が上がるものと思われる。
コーティングされた手袋の性能は、PUコートの厚さ、柔らかさ(屈曲反発力)、掴める鉄球の大きさ(作業性)が重要となる。これらの各性能を満足させるためには、ポリウレタン樹脂溶液の粘度を低くし、浸漬時間を短くし、ポリウレタン樹脂溶液の温度をあげることで達成できる。
またさらに、次の実験から、手型45と原手30の関係に基づいて、PUコートの質を変化させることができる点について確認することができた。手型45と原手30の関係を周長比率で表した。図8A,8Bに示すように、周長比率は、四本胴部の(手型周囲長D1−原手周囲長D2)/手型周囲長D1で算出されるパーセンテージで、伸び率でもある。例えば、手型周囲長D1と原手周囲長D2が同じであれば、伸び率がほとんどない。また、手型周囲長D1より原手周囲長D2が長い場合は、伸びることがなくだぶつくため、周長比率はマイナスである。手型周囲長D1より原手周囲長D2が短い場合は、原手30を手型45に被せると全体が引っ張られ、伸び率が高くなり、周長比率がプラスである。
従来技術の一般的な作業用手袋の1つには、原手がポリエステルの糸を使用し、ゲージ数13のシームレス編機により編成され、手の平にポリウレタンコーティングが施されている手袋がある。この手袋の周長比率は、約17%となっている。他のゲージ数の作業用手袋も含めこの一般的なコートタイプ手袋原手と手型の関係性は、寸法比率で1:1、周長率で約20%以下となっている。この一般的な作業用手袋は、手袋の原手にほぼぴったりな手型を使用することでPUコート厚さが均等に作製される。本願の原手は、ラッセル編みで編成され、一般的な手袋と比べると非常に薄く、柔軟性が高いが、一般的な原手より、編み地の収縮が弱いので、一般的な原手と同様の比率でコートしてしまうと、原手のたるみが発生してコート面にシワがでてしまった。
本願の原手30は、これを解決する為に、原手30と手型45の周長率を上げて、手袋の手型45にフィットさせる時の張力をあげることで、たるみ等を防ぎ、最適なPUコートが可能となった。この適切な周長比率を得るため、実験を行った。周長比率が0%、27%,36%、38%、42%となる原手30にポリウレタン樹脂のコーティングを行い、PUコートの厚さ、屈曲反発力(柔らかさ)、鉄球試験(掴める鉄球の大きさを評価する作業性)について実験を行った。表7は、この周長比率と、PUコートの厚さ、屈曲反発力、作業性との関係を示したものである。
Figure 0006473815
本願の原手であって、周長比率27%のものは、手型に被せるとたるみによる皺が発生し、綺麗なコーティングを行うことができなかった。この表7からわかるように、周長比率(伸び率)が高いほど、PUコートの厚さが薄くなる。PUコートの厚さを0.4mm以下に保持するためには周長比率を35%以上にすることで可能となる。これは、周長比率35%以下であると、手型と原手に隙間が発生し、その分、コーティング剤が浸透して目標厚さ以上になってしまうものと想定される。なお、従来の原手は糸が太く浸食性が無い為、手型より小さな原手を使うことは想定していない。本願のラッセル編み原手は、非常に細い糸で伸縮性に優れているため、発見できた課題であり、それを解決するための改善手段であるため、従来のPUコート手袋では容易に思い付くものではない。
本願の滑り止め付き編み手袋(作業用手袋)は、コート面(手の平側)とノンコート面(手の甲側)との編目数が異なっている。コート面(手の平側)の編目数とノンコート面(手の甲側)の編目数の関係を編み目比率で表した。編み目比率は、コート面(手の平側)の編目数/ノンコート面(手の甲側)の編目数で算出されるパーセンテージである。表8は、周長比率と編み目比率の関係を示したもので、周長比率を上げた手袋はコート面の編目数がノンコート面に比べ低くなっているが理解できる。
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本発明の滑り止め付き編み手袋は、作業性を大きく向上した作業用編み手袋であって、各種部品の組み立て作業、特に精密部品等の組み立て作業に素手感覚で使用できる薄手で柔らかく、耐久性もよいコーティングが施されたラッセル編み手袋である。
関連出願の相互参照
本出願は、2015年6月24日に日本国特許庁に出願された特願2015−138142に基づいて優先権を主張し、その全ての開示は完全に本明細書で参照により組み込まれる。
1:指袋部、1a:上側指袋部、1b:下側指袋部、3:甲部、5:袖口部、6:袖開口部、6a:前側袖開口部、6b:後側袖開口部、7:側縁部、7a:延長部、8:指袋先端部、9:前側基布、10:後側基布、11:側縁(側部)、11a:左側部、11b:右側部、11d:延長部、13:切断線、13a:スリット、14:連結部、15:切断線、15a:スリット、20:縦編み糸、21:縦編み糸、22:弾性糸、24:側縁連結部、30:編み手袋(原手)、31:開放端、32:本体部、40:滑り止め付き編み手袋(作業用手袋)、41:樹脂、45:手型、46:ポリウレタン樹脂溶液

Claims (8)

  1. 経編機で編成された編み手袋に滑り止めを施した編み手袋であって、指袋部、本体部及び袖口部で前後の基布を筒状に形成し、それぞれの側縁部並びに各指袋部の先端部を編み閉じることにより編成された編み手袋の全表面または一部表面だけに滑り止めのエラストマーまたは樹脂を付着させて被覆層を形成し
    経編で使用される糸の太さが10〜100デニールであり、
    経編のゲージ数が20〜32ゲージであり、
    滑り止め付きの前記エラストマーまたは樹脂を含んだ厚さが0.7mm以下であり、
    前記被覆層の屈曲反発力が2.5mN/mm以下である滑り止め付き編み手袋。
  2. 一対の各糸ガイドと各編針を通して、各編針にそれぞれ別個独立に給糸がされる経編機を用いて、各指袋部、本体部及び袖口部で前後の基布を筒状に形成し、それぞれの側縁部並びに各指袋部の先端部を編み閉じることにより編み手袋を編成する工程、前記編成された編み手袋の全表面または一部表面だけに滑り止めのエラストマーまたは樹脂を付着させて被覆層を形成する工程を含み、
    前記被覆層を形成する工程は、前記編み手袋の伸び率を35%以上にしてから実行し、編み手袋の被覆層の厚さを調節することを特徴とする、滑り止め付き編み手袋の製造方法。
  3. 前記編成された編み手袋の大きさを手型の65%以下にしたことを特徴とする請求項2に記載の滑り止め付き編み手袋の製造方法。
  4. 前記経編機がジャカード制御機構を有するダブルラッセル編機である請求項2又は3記載の滑り止め付き編み手袋の製造方法。
  5. 前記経編機のゲージ数が20〜32ゲージである請求項2乃至4のいずれか1項に記載の滑り止め付き編み手袋の製造方法。
  6. 前記経編機で使用される糸の太さが10〜100デニールである請求項記載の滑り止め付き編み手袋の製造方法。
  7. 前記被覆層を形成する工程は、前記編成された編み手袋を手形に被せてポリウレタン樹脂溶液に浸漬させて前記編み手袋にポリウレタン樹脂を付着させる工程であることを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1項に記載の滑り止め付き編み手袋の製造方法。
  8. 前記被覆層を形成する工程は、前記編成された編み手袋を手型に被せてポリウレタン樹脂溶液に手の平側を浸漬させて前記編み手袋の手の平側にポリウレタン樹脂を付着させる工程であって、コーティングされた手の平側の編目数をコーティングされていない手の甲側の編目数より少なくしたことを特徴とする請求項乃至のいずれか1項に記載の滑り止め付き編み手袋の製造方法。
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