以下、本発明の理解を容易にするため具体的実施形態例を用いて、その図面を参照しながら本発明を詳細に説明するが、以下に取り上げる具体的実施形態例は、本発明の理解を容易にするために例示したものであり、本発明は、これらの具体的実施形態例のみに限定されるものではない。
尚、本発明において、「ソックス」とは、履き口用開口部がくるぶしより上に至る長さを有する靴下類であればよく、通常のソックス、クルーソックス、ハイソックス、オーバーニーソックス、ストッキング(ガーターソックス)などのいずれでもよい。
図1〜図3に、本発明のソックスの一実施形態例を示した。図1は、本発明のソックスの一実施形態例の正面図(右足用で足の甲側から見た正面図)、図2は図1の背面図(右足用)、図3は本発明のソックスを着用した状態を示す足の甲側から見た斜視図である。
1は指袋部(爪先部)で1aは足甲側の指袋部(上側指袋部)、1bは足底側の指袋部(下側指袋部)、2が足甲部、3が足底部、4が踵部、5は脚部で5aが前側脚部、5bが後側脚部、6が履き口用開口部で6aが前側履き口用開口部、6bが後側履き口用開口部である。
11はフロント側基布9とバック側基布10の脇側であり、この左右両方の脇側部分はそれぞれフロント側基布9とバック側基布10を連結する連結編みで連結されていて、図15の符号101で説明した場合と同様に、筒状になるように連結されている。この連結により、筒状の編地を構成するフロント側の基布9が、図3の足甲側指袋部(上側指袋部)1a、足甲部2、前側脚部5a、前側履き口用開口部6aを形成しており、バック側の基布10が、図3の足底側指袋部(下側指袋部)1b、足底部3、後側脚部5b、後側履き口用開口部6bを形成している。履き口用開口部6(6a、6b)に編みこまれている弾性糸は、ソックス本体基布(1〜5の部分)の弾性糸の編み組織よりウェール方向の振りが大きくされた編み組織で形成されていて、履き口用開口部6の伸縮パワーがソックス本体基布の伸縮パワーに比べて大きくされていて、ソックスを着用した際のずり下がり防止機能を発揮する部分である。
両脇側11は、上述したように、フロント側の基布9とバック側の基布10を連結する連結編みで連結して編まれており、通常、この境界は目視では判別できない。従って、縫合ラインのように目立つことはない。従って、図3では、フロント側の基布とバック側の基布の境界(繋ぎ目)が目視できるように図示されていない。この点は、後述する本発明の他の実施形態例においても同様であるので、以後、重複説明を省略することがある。
7は、各指袋部をそれぞれの指ごとに区画している指袋脇側である。各指袋脇側7は、それぞれ両脇側11と同様に、フロント側基布9の上側指袋部1aの脇側と対応するバック側基布10の下側指袋部1bの脇側同士をフロント側とバック側を連結する連結編みで連結して編むことにより、筒状とする。この編み組織は左右方向には振れていない編み方なので、隣接する足指の指袋部分の脇部7同士は離れて形成される(接続されていない)。そして各指袋の先端部8の部分を編む場合には、各指袋の上側指袋部1aのフロント側基布9の指袋先端部と対応する下側指袋部1bのバック側基布10の指袋先端部同士をフロント側とバック側並びに左右側(横方向)を連結する連結編みで連結し、指先が閉じられて各指袋の先端部8が形成される。
上記本発明のソックスの製造工程を図4並びに採用する編み組織の説明図図10〜14を引用しながら説明する。
図4はジャカード制御機構を有するダブルラッセル編機で連続的にシームレスに一体に編まれて前記編機から排出されてきた状態の、ソックスが形成されている連続体のフロント側(図1と同じ正面側)から見た図である。尚この反対面側のバック側から見た図は、同様の図になるので、図示を省略している。矢印Sの方向が編み方向である(編み方向は、編機から排出される方向であり、以下、矢印Sと平行な方向を縦方向と略称することがある。尚、この縦方向に対し横の方向を、横方向、又は、左右方向と略称することがある)。フロント側基布9とバック側基布10(図示せず)はダブルラッセル編の一つの態様として、これらの基布の左右両方の脇側11をフロント側とバック側を連結する連結編みで連結して編むことにより、図15(a)で説明したように筒状とすることができる。図4で示した例は、縦方向に直列で複数個の左右1対のソックスが形成されている連続体を示しているが、縦方向一列のみならず、その左及び/又は右側に同様の又は別の左右一対のソックスまたはソックスとパンティストッキング等(異なる品種のもの)が並列して形成されている連続体を同時に形成して、2列以上並列し、且つ縦方向にも複数個直列に形成されている連続体としてもよく、通常、ダブルラッセル編機の幅は目的とするソックスまたはパンティストッキングの幅よりはるかに大きいので、2列以上並列した連続体で編む方が生産性が向上し好ましい。図4では、理解を容易にするため左右1対の縦方向に連続している直列体の連続体を示したが、現実の生産は、横方向にも2列以上並列した連続体(編み機の大きさにもよるが、通常、20列位まで並列形成可能)に編まれる。
フロント側基布9とバック側基布10(バック側は図示せず。必要なら図2参照。以下、いちいち「図示せず」との記載を省略する場合がある)の主要部分(図3の足甲側指袋部1a、足甲部2、前側脚部5a、足底側指袋部1b、足底部3、踵部4、後側脚部5b等の編地部分、但し脇側部分11や指袋の脇側部分7、指袋の先端部分8等は除く)は、縦方向と左右側(横方向)を結合できる、いわゆる編地が形成できる編み組織の経編であれば特に限定されず、例えば、最も単純には図10に示したような、デンビ組織で編まれる。デンビ組織に限定されず、上述したように編地が形成できる他の経編組織でもよく、例えば、ハーフ組織、メッシュ組織、アトラス組織など、支障のない限り他の組織としてもよく、必要なら、編み模様を付してもよい。一例を挙げると、例えば、夏季用のソックスまたはパンティストッキングとしては、メッシュの目の開きの大きめのメッシュ組織を採用するなどにより、通気性を向上させて蒸れを少なくするなど、季節や用途に応じて適宜の編み組織を採用することは任意である。
かくして、フロント側基布9とバック側基布10を編みながら、同時にこれらの基布の両方の脇側11(11a、11b)をフロント側とバック側を連結する連結編みで連結して編むことにより、図15で説明したと同様に筒状とする。
フロント側とバック側の両脇部を連結する連結編みの編み組織の一例を図12の(e)と(f)に示した。図12の(e)が左右の両脇側11のうち図4の左右1対のソックスのそれぞれの図に向かって左側の方の脇側11aのフロント側とバック側の脇部を連結する連結編みの編み組織であり、図12の(f)が左右の両脇側11のうち図4の左右1対のソックスのそれぞれの図に向かって右側の方の脇側11bのフロント側とバック側の脇部を連結する連結編みの編み組織である。
図12においてFはフロント側の編目位置を示し、Bはバック側の編目位置を示している。図12の(e)、(f)に示したフロント側とバック側を連結する連結編みの編み組織は、表裏同じウェールに通っており(言い換えれば、図12の(a)、(b)のように左右方向に振れていない編み方)、したがって、フロント側とバック側を連結するだけなので、そのつなぎ目が目視では全くわからないようにフロント側基布9とバック側基布10をこれらの基布の両脇側11で連結し図15で説明したと同様に筒状とすることができる。図14は、フロント側とバック側を連結している編み組織を、ちょうど基布の脇側11側から見たと仮定した場合の概念図である。24はフロント側とバック側を連結している糸である。
そして、フロント側基布9とバック側基布10を編み、次いで例えば、各指袋部をそれぞれの指ごとに区画している指袋脇側7において、フロント側基布9の上側指袋部1aの脇側と対応するバック側基布10の下側指袋部1b(図示せず、図2参照)の対応する脇側7同士を結合するには、前記基布の脇側11同士を連結する場合と同様に、フロント側とバック側を連結する連結編みで連結して編むことにより、筒状とする。例えば、指袋部の左右各脇側7のうち図4の各左側脇を編む場合には図12の(e)で、各右側脇を編む場合には図12の(f)で示した編み組織で編むことにより、指袋を筒状に形成できる。しかして、この編み組織は左右方向には振れていない編み方なので、隣接する指袋の脇部7同士とはつながることはなく、指袋同士はその脇側は互いに離れて形成される(接続されていない)。そして各指袋の先端部8の部分を編む場合には、フロント側基布9とバック側基布10をフロント側とバック側並びに左右側を連結する連結編み(例えば、図12の(g)や(h)に示した編み組織)で連結し、指袋の先端部8を形成する。
尚、説明するまでもないが、例えば、図4や後述する図5において、左右の足用のソックスが横方向に並列で1対形成されるが、その左右の本体部分の境界になる図の中央部の脇部11(図の中央部の11aと11b)は、先に説明したように、フロント側とバック側を連結する連結編みで連結して編む(例えば、図12の(e)や(f)で示した編み組織で編む)ので、この編み組織は左右方向には振れていない編み方なので、隣接する左右の足用の図の中央部の脇部11の隣接している11aと11bは、左右互いに離れて形成される(接続されていない)。このようにすると、左右の並列が完全に両者の縦方向中央ライン11で離れて2本ばらばらに編機から排出されるように思われるが、左右の組が離れないように、例えば、縦方向に複数個のソックス同士の間を連結している部分14の部分の編み組織を、左右方向にも連結が生じる編み組織、例えば、特に限定するものではないが図10に示したようなデンビ組織などとすれば、この部分で連結が保持され、連続体として編機から排出されることになるのである。そして、指袋先端部8や履き口用開口部6の外側の縁に沿ってカットするか、後述するカットライン表示部13、15がある場合にはその適宜の位置でカットして、個々のソックスを得る。この際、指袋部分の脇部7の編み組織を延長して形成し、指袋先端部8の縦方向長さよりも若干長くして形成した部分7aを設けておくと、カットした場合に各足指の指袋部分間がつながってカットされる恐れがなく好ましい。同様に左右の本体部分の境界になる図4の中央部の脇部11(11a、11b)も履き口用開口部6の上縁より上側に若干長くして形成した部分11dを設けておくと、カットした場合に左右のソックスが上端でつながってカットされる恐れがなく好ましい。
指袋先端部8の部分をフロント側とバック側が閉じられるように編む場合、前述したようにフロント側基布9とバック側基布10をフロント側とバック側並びに左右側(横方向)を連結する連結編みで連結し、指袋先端部8を形成する。フロント側とバック側並びに左右側を連結する連結編みの編み組織の一例を、図12の(g)及び(h)に示した。この組織図からわかるように、図12の(g)に示した糸は、下から順に説明すると、右側のフロント側、左側のバック側、次いで同フロント側、次に右側のフロント側、更に左側のバック側と言うように、フロント側とバック側並びに左右側を同時に連結する連結編みの編み組織となっている。図12の(h)についても図に示した通り、フロント側とバック側並びに左右側を同時に連結する連結編みの編み組織となっている。従って、指袋先端部8を閉じて袋状にすることができる。
指袋先端部8のフロント側とバック側並びに左右側を同時に連結する連結編みの編み組織とする部分の縦方向(矢印S方向)の幅は、特に限定するものではないが、通常、3〜5mm程度である。複数個のソックス同士間を縦直列に連結している部分14の編み組織は、縦方向に複数個のソックス同士の間を連結できる編み組織であれば何ら限定されないが、例えば、フロント側基布9やバック側基布10の主要部を編む編み組織と同じ、例えばデンビ組織でもよい。
また、指袋先端部8と反対側の端部には、履き口用開口部6を形成するが、履き口用開口部6の形成は、履き口用開口部6の伸縮パワーがソックス本体基布の伸縮パワーに比べて大きくされている編み組織であればよく、通常、履き口用開口部6に編みこまれている弾性糸が、ソックス本体基布(1〜5の部分)の弾性糸の編み組織よりウェール方向の振りが大きくされた編み組織で形成されている。
具体的には、例えばソックス本体基布の弾性糸が、図10(フロント側本体の場合図12の(a)、バック側本体の場合図12の(b))の如くデンビ組織で形成されている場合に、履き口用開口部の弾性糸の組織の1例としては、フロント側(前側)履き口用開口部6aの組織としては、図12の(i)、バック側(後側)履き口用開口部6bの組織としては、図12の(j)で示したように、それぞれ、矢印の部分(図の右側の編み目の部分)が図12の(a)、(b)に比べてウェール方向へ1針分振られている組織とされている。こうすることにより、履き口用開口部6の伸縮パワーをソックス本体基布の伸縮パワーに比べて大きくすることができる。図12の(i)、(j)で示した例は、図の右側の編み目の部分全てが右ウェール方向へ1針分振られている組織の例を示したが、これのみに限定されるものではなく要求される伸縮パワーに応じて伸縮パワーを変えることができる。図12の(a)をモデルにして、この伸縮パワーを変えるための別の組織の例を図13に示した。図13(a)は比較しやすいように図12の(a)をそのまま記載した。図13(i´)は右側の編み目の部分全てではなく一つおきに右ウェール方向へ1針分振られ(矢印部分)ている組織の例であり、図13(i´´)は右側の編み目の部分2つをそれぞれ右ウェール方向へ1針分振り(矢印部分)次の右側の編み目の部分1つは右ウェール方向振らない態様の繰り返し組織の例である。従って、履き口用開口部6の伸縮パワーをこの図に示されたもので比べると、他のすべての条件(例えば用いる弾性糸の種類や、太さなど)が同じだとすると、図13(i´)<図13の(i´´)<図12の(i)の順に伸縮パワーは大きくなる。この様に1針分振る部分の割合の大小によって履き口用開口部6の伸縮パワーを望みの範囲に調整することができるので、図示した以外の振り方でもよいことは明白である。なお、バック側履き口用開口部6bの組織に対しても同様の技術思想が適用できることは勿論である。このようにウェール方向に1針分振ることや、図12に示した各種編み組織への変更はジャカード機構を有するダブルラッシェル編機を用いれば容易に実現することができる。
もう少し、具体的に説明すると、例えば、図4の前側脚部5aを図12の(a)で示される組織で編んでいき、履き口用開口部6aに到達したら、当該糸の動きをジャカード機構を用いて図12の(i)の組織に変えて編む。このように、1本の糸を縦方向で部分的に編み組織を変えるのは、ジャカード機構を有するダブルラッシェル編機を用いれば、実現できる。例えば、ジャカード機構を有するダブルラッシェル編機の編み組織の指令を入力するコンピューターに、前側脚部5aのある特定の位置の糸を例に取るとその糸に関し前側脚部5aの部分を編む場合に、初めはデンビ組織(図12の(a)参照)とし、履き口用開口部6aに到達した位置で、一針振りの入った編み組織(図12の(i)参照)とし、ついで符号14で示される位置で、再度、デンビ組織にするという指令を入力して編めばよい。
本発明のソックスは以上に説明した態様でも十分である。しかし、実際には、縦方向に複数のソックスが形成される縦方向連続体において指袋先端部8の位置が目視ではわかりにくい。また、履き口用開口部6の端部の位置も目視ではややわかりにくい。図1、図2の図面上では、指袋先端部8や履き口用開口部6の先端部を説明するために、ラインが記載されて、境界ラインがわかるように描かれているが、実際の連続体の編地上では、通常その位置が判別しにくい。従って、連続体のどの部分をカットして、個々のソックスを得るかカットする位置が目視でわかりにくい。そこで、好ましくは、指袋先端部8や履き口用開口部6の先端部の外側の領域(外側の領域とは、指袋先端部8や履き口用開口部6の先端部の上ないし下方向の外側を意味する。図4基準では、指袋先端部8の下方向の外側、履き口用開口部6の先端部の上方向の外側になる。以下同様。)の少なくとも一部、特に限定するものではないが、例えば好ましくは縦方向の長さにして、5〜10mmm程度の領域を指袋先端部8や履き口用開口部6の先端部と区別して目視できるような編み組織に変えて編むとよい。この場合には、例えば、カットライン表示部13、15が目視できるように、この部分を鎖編みにする。そうすると、鎖編みは縦方向は連結されても、横方向は相互に連結されないので、それぞれスリット13a、15aが形成され、したがって、指袋先端部8や履き口用開口部6の先端部の外側の境界が目視でも見当がつくようになる。尚、カットするには、必ずしも指袋先端部8や履き口用開口部6の先端部の縁に密接してカットする必要はなく、カットライン表示部13、15の適宜の位置でカットしてもよい。尚、カット(裁断)したままで、特別の縁始末処理をしなくても、カットしたままの縁がほつれることはない。
このように、カットライン表示部13や15が目視できるように編み組織を変更して編むことにより、どこでカットしたらよいか容易に判別できるので生産性を向上させることができより好ましい。カットライン表示部13、15は、フロント側基布9又はバック側基布10のいずれか一方のみに形成してもよく、好ましくは、両方の基布に形成しておくとよい。
尚、場合によっては、指袋先端部8や履き口用開口部6の先端部の外側全部(縦方向の複数個のソックスの間を連結している部分14の部分も含めて全部)を、目視できるような編み組織としてもよい。このような指袋先端部8や履き口用開口部6の先端部からカットライン表示部13や15への編み組織の変更は、前述したようにジャカード機構を有するダブルラッシェル編機を用いれば、実現できる。
尚、図12について、説明を補足する。図12において、Fはフロント側の編目位置を示し、Bはバック側の編目位置を示すものであるが、図12は本発明で用いる所定部位の編み組織を説明するためのダブルラッシェル編みのフロント側、バック側を同時に表示した編み組織図(但し、それぞれコース方向1本のみで代表させて示した編み組織図)である。
図12(a)は、フロント側基布9の主要部分を編むデンビ組織の場合の編み組織図であり、編目のループ部分は、フロント側Fのみであるから、フロント側のみを構成する編み組織であることがわかる。同様に、図12(b)は、バック側基布10の主要部分を編むデンビ組織の場合の編み組織図であり、編目のループ部分は、バック側Bのみであるから、バック側のみを構成する編み組織であることがわかる。図12(e)、(f)は既に説明したとおり、表裏同じウェールを通ってフロント側とバック側を連結する連結編みの編み組織であり、フロント側基布9とバック側基布10をこれらの基布の両脇側11で連結するのに好適な編み組織の一例である。また、この組織は、フロント側基布9の上側指袋部の脇側7と対応するバック側基布10の下側指袋部脇側とをフロント側とバック側を連結する連結編みの編組織にも好適な編み組織の一例である。いずれも図4の左脇側は図12(e)、右脇側は図12(f)の編組織が適用できる。
図12(g)も既に説明したとおり、フロント側基布9とバック側基布10をフロント側とバック側並びに左右側を連結する編み組織であり、下から順に説明すると、右側のフロント側、左側のバック側、次いで同フロント側、次に右側のフロント側、更に左側のバック側と言うように、フロント側とバック側並びに左右側を同時に連結する連結編みの編み組織の一例であり、各指袋の先端部8の形成に好適な編み組織の一例である。尚、図12(h)も同様に、フロント側基布9とバック側基布10をフロント側とバック側並びに左右側を連結する編み組織である。また、図12(i)と(j)は、既に詳細に説明した通り、それぞれフロント側履き口用開口部6a、バック側履き口用開口部6bを形成したい部分の編み組織の一例である。
なお、説明が複雑になり、理解がしにくくなることを避けるため、上記では特に説明していなかったが、本実施の形態では、グランド糸として、フルセットですべてのフロント側の編目に更に図12(c)に示した鎖編み組織、すべてのバック側の編目に図12(d)に示した鎖編み組織の糸が同時に編みこまれている。これらのグランド糸は、通常、非弾性糸からなる糸が用いられ、その他の図12(a)、(b)、(e)〜(j)の組織には弾性糸が用いられる。
即ち、例えば、これらの編み組織の各糸を、筬への通糸状況で説明すると、例えば、日本マイヤー株式会社の販売するジャカード機構を有するダブルラッシェル編機“RDPJ6/2”を例に取ると、この編機はL1〜L6の6枚の筬を有している。L1〜L3がフロント側の筬、L4〜L6がバック側の筬である。L1とL6の2枚の筬は使用せずに、グランド筬L2(フロント側)とグランド筬L5(バック側)には、それぞれ図12(c)と図12(d)の組織とする非弾性糸がフルセットで通糸される。グランド筬とは、ジャカード機構の作用しない筬である。そしてジャカード筬L3(フロント側)には、それぞれ所定の位置に図12(a)、図12(f)の組織にする糸が、ジャカード筬L4(バック側)には、それぞれ所定の位置に図12(b)、図12(e)の組織にする糸が通糸されることになる。
ジャカード筬L3(フロント側)を例に挙げて説明すると、図4において、図4基準で右脇部11(11a)を編むウェールに通糸される糸には、ジャカード機構により図12(f)の編み組織にされる。その他の編目は、図12(a)の如くデンビ組織で編まれるようジャカード制御機構を作用させずに編み、履き口用開口部6(この場合、フロント側履き口用開口部6a)の形成を開始する位置から開口部6aの先端部までの領域をジャカード制御によりフロント側履き口用開口部6aは、図12(i)の組織に変え、また、指袋先端部8の領域は、ジャカード制御により指袋先端部8のフロント側は図12(g)の編み組織に変える。さらにカットライン表示部13や15を指袋先端部8や履き口用開口部6の領域から連続して編むには、指袋先端部8や履き口用開口部6それぞれの領域に続いて、この糸をジャカード制御により鎖編み組織(図示していないが、組織図としては図12の(c)と同じ組織図になる)に変えて編むことになる。
同様に、ジャカード筬L4(バック側)を例に挙げて説明すると、図4基準で左脇部11(11a)を編むウェールに通糸される糸には、ジャカード機構により図12(e)の編み組織にされる。その他の編目は、図12(b)の如くデンビ組織で編まれるようジャカード制御機構を作用させずに編み、履き口用開口部6(この場合、バック側履き口用開口部6b(図示せず。必要なら図2参照))の形成を開始する位置から開口部6bの先端部までの領域は、ジャカード制御により、図12(j)の組織に変え、また、指袋先端部8の領域は、ジャカード制御により指袋先端部8のバック側は図12(h)の編み組織に変える。さらにカットライン表示部13や15を指袋先端部8や履き口用開口部6の領域から連続して編むには、指袋先端部8や履き口用開口部6それぞれの領域に続いて、この糸をジャカード制御により鎖編み組織(図示していないが、組織図としては図12の(d)と同じ組織図になる)に変えて編むことになる。
本発明のソックスや後述するパンティストッキングに使用される非弾性繊維としては、合成繊維(ナイロン6やナイロン66などのポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのポリエステル繊維、アクリル繊維、ビニロン繊維、等)、綿、麻、羊毛、絹などの天然繊維、レーヨン、キュプラなどの再生繊維、アセテートなどの半合成繊維、それらの組み合わせなど各種のものを用いることができる。
尚、前述した、ポリトリメチレンテレフタレート繊維は、伸張回復率が通常の非弾性繊維に比べてきわめて大きいが、ここでは非弾性繊維に分類している。
弾性繊維糸としてはポリウレタン繊維糸や、ポリウレタン繊維糸をナイロン繊維糸やポリエステル繊維糸でカバーした、いわゆるカバリングヤーンタイプの弾性繊維糸が好適に用いられる。特に後者の弾性繊維糸が好ましい。非弾性繊維糸としては、ナイロン6やナイロン66などのポリアミド繊維糸、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのポリエステル繊維糸などの非弾性合成繊維糸(加工糸を含む)、綿、麻、羊毛、絹などの天然繊維糸、レーヨン、キュプラなどの再生繊維糸、アセテートなどの半合成繊維糸などが挙げられる。
尚、編目についてデンビ組織を例に挙げて説明すると、図11(a)がすべての編目が閉じ目30の場合、図11(b)がすべての編目が開き目31の場合、図11(c)が閉じ目30と開き目31が交互に表れる場合である。
本発明では、図12(a)や図12(b)などのフロント側基布9とバック側基布10の主要部分を構成する糸は、すべての編目が閉じ目の場合、すべての編目が開き目の場合、閉じ目と開き目が交互に表れる場合などいずれでもよい。特に、すべての編目が閉じ目の場合が好ましい。
用いる繊維の太さとしては、特に限定するものではないが、非弾性糸としては10デニール(11dtex)〜210デニール(231dtex)の範囲のものが好ましく用いられ(天然繊維糸はこの太さに換算した番手)、弾性糸としては通常10デニール(11dtex)〜420デニール(462dtex)、より好ましくは10デニール(11dtex)〜100デニール(110dtex)のものが好ましい。
次に、本発明のソックスの別の製造工程の一実施形態を、図5に示した。
図5はジャカード制御機構を有するダブルラッセル編機で連続的にシームレスに一体に編まれて前記編機から排出されてきた状態の、ソックスが形成されている連続体のフロント側から見た図である。尚この反対面側のバック側から見た図は、同様の図になるので、図示を省略している。矢印Sの方向が編み方向である。
図5に示した連続体が図4に示した連続体と異なる点は、図4に示した連続体においては、縦方向に連続する複数のソックスが、すべて、指袋部1が下方で、履き口用開口部6が上方になる同一の向きで縦方向に複数個連続して配置されている連続体の例を示したが、図5に示した連続体は、縦方向に連続する複数のソックスが1つずつ反対向きに配置された連続体、即ち、指袋部1同士が向き合い、履き口用開口部6同士が向き合う形の連続体の例を示したものである。その他の部分は、図4と同一なので、同一部分に同一の符号を付して、重複説明は省略した。図5に示したように、縦方向では、指袋部1同士が向き合い、履き口用開口部6同士が向き合う対称形で且つ横方向も対称形に複数のソックスが配置されているので、連続体を編み上げた場合に、ひずみが少なく編み上がり、同じ形状のものを複数個連続して製造する場合には、形状のばらつき、ひずみが少なく、均一な形状のソックスを生産しやすく好ましい。従って、通常は、図5に示された製造工程により製造される。
なお、これらの実施の形態では、爪先側の形状が、5本の各足指に分かれて形成されている形状のものを示したが、爪先側の形状が、親指部分とそれ以外の足指をまとめて収納する部分の2つの部分に分かれて形成されている形状(いわゆる日本の足袋のような形状)にするなど、適宜、任意の形状にすることもできる。
次に、図6、図7に本発明のパンティストッキングの一実施形態例を示した。図6は、本発明のパンティストッキングの一実施形態例の正面図(前側から見た図)、図7は後側から見た背面図である。
本発明のこの実施の形態パンティストッキングは、先に説明した左右のソックスが、上方部分、即ち、股部で一体になり、腹部、臀部、ウェストまでカバーするようになっている点、履き口用開口部がソックスのように、左右のソックスそれぞれに形成されているのではなく、ウェスト部分に1つ形成されていると言う点が異なるが、その他の部分は、上記で説明したソックスと実質上同一であるので、同一部分には同一の符号を付して、重複説明を省略している部分がある。重複説明を省略している部分は、上記ソックスの説明と同様であるので、容易に理解可能である。
1は指袋部(爪先部)で1aは足甲側の指袋部(上側指袋部)、1bは足底側の指袋部(下側指袋部)、2が足甲部、3が足底部、4が踵部、5は脚部で5aが前側脚部、5bが後側脚部、21がパンティ部で、そのうち21aが前側パンティ部(即ち腹部側を股部からウェスト部までカバーする部分)、21bが後側パンティ部(即ち臀部側を股部からウェスト部までカバーする部分)であり、6がほぼウェストラインに沿って設けられている履き口用開口部で6aが前側履き口用開口部、6bが後側履き口用開口部である。
19はフロント側基布9とバック側基布10のそれぞれ外側の脇側であり、パンティストッキングの左右両外脇側に相当する部分である。この左右両方の外脇側部分はそれぞれフロント側基布9とバック側基布10を連結する連結編みで連結されている。また、20a、20bはそれぞれ、右側脚部、左側脚部(この場合の右側、左側は着用者基準)の内脇側部分であり、それぞれにおいて外側の脇側19と同様に、前側脚部5aと後側脚部5bを構成するフロント側基布9とバック側基布10を連結する連結編みで連結されている。
以上のような各脇部の連結により、筒状の編地を構成するフロント側の基布9が、図6の足甲側指袋部(上側指袋部)1a、足甲部2、前側脚部5a、前側パンティ部21a、前側履き口用開口部6aを形成しており、バック側の基布10が、図7の足底側指袋部(下側指袋部)1b、足底部3、踵部4、後側脚部5b、後側パンティ部21b、後側履き口用開口部6bを形成している。履き口用開口部6(6a、6b)に編みこまれている弾性糸は、パンティストッキング本体基布(1〜5、21の部分)の弾性糸の編み組織よりウェール方向の振りが大きくされた編み組織で形成されていて、履き口用開口部6の伸縮パワーがパンティストッキング本体基布の伸縮パワーに比べて大きくされていて、パンティストッキングを着用した際のずり下がり防止機能を発揮する部分である。
両外脇側部分19や内脇側部分20a、20bは、上述したように、フロント側の基布9とバック側の基布10を連結する連結編みで連結して編まれており、通常、この境界は目視では判別できない。従って、縫合ラインのように目立つことはない。
7は、各指袋部をそれぞれの指ごとに区画している指袋脇側である。各指袋脇側7は、それぞれ両外脇側部分19や内脇側部分20a、20bと同様に、フロント側基布9の上側指袋部1aの脇側と対応するバック側基布10の下側指袋部1bの脇側とをフロント側とバック側を連結する連結編みで連結して編むことにより、筒状とする。この編み組織は左右方向には振れていない編み方なので、隣接する足指部分の脇部7同士は離れて形成される(接続されていない)。そして各指袋の先端部8の部分を編む場合には、各指袋の上側指袋部1aのフロント側基布9の指袋先端部と対応する下側指袋部1bのバック側基布10の指袋先端部同士をフロント側とバック側並びに左右側(横方向)を連結する連結編みで連結し、指先が閉じられて各指袋の先端部8が形成される。
上記本発明のパンティストッキングの製造工程を図8並びに採用する編み組織の説明図図10〜14を引用しながら説明する。
図8はジャカード制御機構を有するダブルラッセル編機で連続的にシームレスに一体に編まれて前記編機から排出されてきた状態の、パンティストッキングが形成されている連続体のフロント側(図6と同じ正面側)から見た図である。尚この反対面側のバック側から見た図は、同様の図になるので、図示を省略している。矢印Sの方向が編み方向である(編み方向は、編機から排出される方向であり、以下、矢印Sと平行な方向を縦方向と略称することがある。尚、この縦方向に対し横の方向を、横方向、又は、左右方向と略称することがある)。フロント側基布9とバック側基布10(バック側は図示せず。必要なら図7参照。以下同様)はダブルラッセル編の一つの態様として、これらの基布の左右両方の外脇側19並びに内脇側部分20a、20bをフロント側とバック側を連結する連結編みで連結して編むことにより、既に説明したように筒状とすることができる。図8で示した例は、縦方向に直列で複数個のパンティストッキングが形成されている連続体を示しているが、縦方向一列のみならず、その左及び/又は右側に同様の又は別のパンティストッキング等が並列して形成されている連続体を同時に形成して、2列以上の連続体としてもよく、通常、ダブルラッセル編機の幅は目的とするパンティストッキングの幅よりはるかに大きいので、2列以上の連続体で編む方が生産性が向上し好ましい。図8では、理解を容易にするため縦方向に連続している直列体の連続体を示したが、現実の生産は、2列以上並列して且つ縦方向に連続した連続体(編み機の大きさにもよるが、通常、20列位まで並列形成可能)に編まれる。
フロント側基布9とバック側基布10(バック側は図示せず。必要なら図7参照。以下、いちいち「図示せず」との記載を省略する場合がある)の主要部分(前側指袋部1a、足甲部2、前側脚部5a、前側パンティ部21a、足底側指袋部1b、足底部3、踵部4、後側脚部5b、後側パンティ部21bの編地部分、但し両外脇側部分19や内脇側部分20a、20b、指袋の脇側部分7、指袋の先端部分8等は除く)は、縦方向と左右側(横方向)を結合できる、いわゆる編地が形成できる編み組織の経編であれば特に限定されず、例えば、最も単純には図10に示したような、デンビ組織で編まれる。デンビ組織に限定されず、上述したように編地が形成できる他の経編組織でもよく、例えば、ハーフ組織、メッシュ組織、アトラス組織など、支障のない限り他の組織としてもよく、必要なら、編み模様を付してもよい。一例を挙げると、例えば、夏季用のパンティストッキングとしては、メッシュの目の開きの大きめのメッシュ組織を採用するなどにより、通気性を向上させて蒸れを少なくするなど、季節や用途に応じて適宜の編み組織を採用することは任意である。
かくして、フロント側基布9とバック側基布10を編みながら、同時にこれらの基布の両外脇側部分19や内脇側部分20a、20bをフロント側とバック側を連結する連結編みで連結して編むことにより、筒状とする。
フロント側とバック側の両外脇側部分19や内脇側部分20a、20bを連結する連結編みの編み組織の一例を図12の(e)と(f)に示した。図12の(e)が左右の両外脇側19並びに内脇側部分20a、20bのうち図8のパンティストッキングの図に向かって左側(着用者基準では右側)の方の脇側19a並びに20bのフロント側とバック側の脇部を連結する連結編みの編み組織であり、図12の(f)が左右の両外脇側19のうち図8のパンティストッキングの図に向かって右側(着用者基準では左側)の方の脇側19b並びに20aのフロント側とバック側の脇部を連結する連結編みの編み組織である。
図12においてFはフロント側の編目位置を示し、Bはバック側の編目位置を示している。図12の(e)、(f)に示したフロント側とバック側を連結する連結編みの編み組織は、表裏同じウェールに通っており(言い換えれば、図12の(a)、(b)のように左右方向に振れていない編み方)、したがって、フロント側とバック側を連結するだけなので、そのつなぎ目が目視では全くわからないようにフロント側基布9とバック側基布10をこれらの基布の両外脇側19並びに内脇側部分20a、20bでそれぞれ連結し筒状とすることができる。図14は、フロント側とバック側を連結している編み組織を、例えば、ちょうど基布の脇側19側から見たと仮定した場合の概念図である。
そして、フロント側基布9とバック側基布10を編み、次いで例えば、各指袋部をそれぞれの指ごとに区画している指袋脇側7において、フロント側基布9の上側指袋部1aの脇側と対応するバック側基布10の下側指袋部1b(図示せず、図7参照)の対応する脇側7とを結合するには、前記基布の外脇側19或いは内脇側部分20a、20b同士を連結する場合と同様に、フロント側とバック側を連結する連結編みで連結して編むことにより、筒状とする。例えば、指袋部の左右各脇側7のうち図8の各左側脇を編む場合には図12の(e)で、各右側脇を編む場合には図12の(f)で示した編み組織で編むことにより、指袋を筒状に形成できる。しかして、この編み組織は左右方向には振れていない編み方なので、隣接する指袋の脇部7同士とはつながることはなく、指袋同士はその脇側は互いに離れて形成される(接続されていない)。そして各指袋の先端部8の部分を編む場合には、フロント側基布9とバック側基布10をフロント側とバック側並びに左右側を連結する連結編み(例えば、図12の(g)や(h)に示した編み組織)で連結し、指袋の先端部8を形成する。
尚、説明するまでもないが、例えば、図8や後述する図9において、左右の脚部5がそれぞれ形成されるが、その左右の脚部5の境界になる図の中央部の内脇側部分20a、20bは、先に説明したように、フロント側とバック側を連結する連結編みで連結して編む(例えば、図12の(e)や(f)で示した編み組織で編む)ので、この編み組織は左右方向には振れていない編み方なので、隣接する左右の脚部5の隣接している内脇側部分20aと20bとは、左右互いに離れて形成される(接続されていない)。もし、図示したような縦方向直列の連続体を左側及び/または右側にももう1列以上並列してその境界部(外脇側部分19が境界部となるが)で密接して並列にも同時に生産する場合(図示せず。あたかも、先の図4や5で左右のソックスを並列して生産する場合の如く)、それぞれ外脇側部分19をフロント側とバック側を連結する連結編みで連結して編むと、左右の並列品が完全に両者の縦方向境界ライン(外脇側部分19)で離れて2本以上ばらばらに編機から排出されるように思われるが、左右の並列品が離れないように、例えば、ソックスの場合と同様に、縦方向に複数個のパンティストッキング同士の間を連結している部分14の部分の編み組織を、左右方向にも連結が生じる編み組織、例えば、特に限定するものではないが図10に示したようなデンビ組織などとすれば、この部分で連結が保持され、並列方向にも連続した連続体として編機から排出されることになるのである。そして、指袋先端部8や履き口用開口部6の外側の縁に沿ってカットするか、後述するカットライン表示部13、15がある場合にはその適宜の位置でカットして、個々のパンティストッキングを得る。この際、指袋部分の脇部7の編み組織を延長して形成し、指袋先端部8の縦方向長さよりも若干長くして形成した部分7aを設けておくと、カットした場合に各足指の指袋部分間がつながってカットされる恐れがなく好ましい。同様に図示していないが左右並列方向にも連続した連続体として製造した場合に、図4のソックスで説明したと同様に、左右の本体部分の境界になる外脇部19(19a、19b)も履き口用開口部6の上縁より上側に若干長くして形成した部分(図4のソックスでは11dで説明したように)を設けておくと、カットした場合に左右のパンティストッキングが上端でつながってカットされる恐れがなく好ましい。
指袋先端部8の部分をフロント側とバック側が閉じられるように編む場合、前述したようにフロント側基布9とバック側基布10をフロント側とバック側並びに左右側を連結する連結編みで連結し、指袋先端部8を形成する。フロント側とバック側並びに左右側(横方向)を連結する連結編みの編み組織の一例を、図12の(g)及び(h)に示した。この組織図からわかるように、図12の(g)に示した糸は、下から順に説明すると、右側のフロント側、左側のバック側、次いで同フロント側、次に右側のフロント側、更に左側のバック側と言うように、フロント側とバック側並びに左右側を同時に連結する連結編みの編み組織となっている。図12の(h)についても図に示した通り、フロント側とバック側並びに左右側を同時に連結する連結編みの編み組織となっている。従って、指袋先端部8を閉じて袋状にすることができる。
指袋先端部8のフロント側とバック側並びに左右側を同時に連結する連結編みの編み組織とする部分の縦方向(矢印S方向)の幅は、特に限定するものではないが、通常、3〜5mm程度である。複数個のパンティストッキング同士間を縦直列に連結している部分14の編み組織は、縦方向に複数個のパンティストッキング同士の間を連結できる編み組織であれば何ら限定されないが、例えば、フロント側基布9やバック側基布10の主要部を編む編み組織と同じ、例えばデンビ組織でもよい。
また、指袋先端部8と反対側の端部には、履き口用開口部6を形成するが、履き口用開口部6の形成は、履き口用開口部6の伸縮パワーが前述したパンティストッキング本体基布の伸縮パワーに比べて大きくされている編み組織であればよく、通常、履き口用開口部6に編みこまれている弾性糸が、パンティストッキング本体基布(1〜5、21の部分)の弾性糸の編み組織よりウェール方向の振りが大きくされた編み組織で形成されている。
具体的には、例えばパンティストッキング本体基布の弾性糸が、図10(フロント側本体の場合図12の(a)、バック側本体の場合図12の(b))の如くデンビ組織で形成されている場合に、履き口用開口部の弾性糸の組織の1例としては、フロント側(前側)履き口用開口部6aの組織としては、図12の(i)、バック側(後側)履き口用開口部6bの組織としては、図12の(j)で示したように、それぞれ、矢印の部分(図の右側の編み目の部分)が図12の(a)、(b)に比べてウェール方向へ1針分振られている組織とされている。こうすることにより、履き口用開口部6の伸縮パワーをパンティストッキング本体基布の伸縮パワーに比べて大きくすることができる。図12の(i)、(j)で示した例は、図の右側の編み目の部分全てが右ウェール方向へ1針分振られている組織の例を示したが、これのみに限定されるものではなく要求される伸縮パワーに応じて、先に説明したように、図13(i´)、図13(i´´)に示した編組織や、その他の如く、1針分振る部分の割合の大小によって履き口用開口部6の伸縮パワーを望みの範囲に調整することができるので、図示した以外の振り方でもよいことは明白である。なお、バック側履き口用開口部6bの組織に対しても同様の技術思想が適用できることは勿論である。このようにウェール方向に1針分振ることや、図12に示した各種編み組織への変更はジャカード機構を有するダブルラッシェル編機を用いれば実現することができる。
もう少し、具体的に説明すると、例えば、図8の前側パンティ部21aを図12の(a)で示される組織で編んでいき、履き口用開口部6aに到達したら、当該糸の動きをジャカード機構を用いて図12の(i)の組織に変えて編む。このように、1本の糸を縦方向で部分的に編み組織を変えるのは、ジャカード機構を有するダブルラッシェル編機を用いれば、実現できる。例えば、ジャカード機構を有するダブルラッシェル編機の編み組織の指令を入力するコンピューターに、前側パンティ部21aのある特定の位置の糸を例に取るとその糸に関し前側パンティ部21aの部分を編む場合に、初めはデンビ組織(図12の(a)参照)とし、履き口用開口部6aに到達した位置で、一針振りの入った編み組織(図12の(i)参照)とし、ついで符号14で示される位置で、再度、デンビ組織にするという指令を入力して編めばよい。
本発明のパンティストッキングは以上に説明した態様でも十分である。しかし、実際には、縦方向に複数のパンティストッキングが形成される縦方向連続体において指袋先端部8の位置が目視ではわかりにくい。また、履き口用開口部6の端部の位置も目視ではややわかりにくい。図6、図7の図面上では、指袋先端部8や履き口用開口部6の先端部を説明するために、ラインが記載されて、境界ラインがわかるように描かれているが、実際の連続体の編地上では、通常その位置が判別しにくい。従って、連続体のどの部分をカットして、個々のパンティストッキングを得るかカットする位置が目視でわかりにくい。そこで、好ましくは、指袋先端部8や履き口用開口部6の先端部の外側の領域(外側の領域とは、指袋先端部8や履き口用開口部6の先端部の上ないし下方向の外側を意味する。図8基準では、指袋先端部8の下方向の外側、履き口用開口部6の先端部の上方向の外側になる。以下同様。)の少なくとも一部、特に限定するものではないが、例えば好ましくは縦方向の長さにして、5〜10mmm程度の領域を指袋先端部8や履き口用開口部6の先端部と区別して目視できるような編み組織に変えて編むとよい。この場合には、例えば、カットライン表示部13、15が目視できるように、この部分を鎖編みにする。そうすると、鎖編みは縦方向は連結されても、横方向は相互に連結されないので、それぞれスリット13a、15aが形成され、したがって、指袋先端部8や履き口用開口部6の先端部の外側の境界が目視でも見当がつくようになる。尚、カットするには、必ずしも指袋先端部8や履き口用開口部6の先端部の縁に密接してカットする必要はなく、カットライン表示部13、15の適宜の位置でカットしてもよい。尚、カット(裁断)したままで、特別の縁始末処理をしなくても、カットしたままの縁がほつれることはない。
このように、カットライン表示部13や15が目視できるように編み組織を変更して編むことにより、どこでカットしたらよいか容易に判別できるので生産性を向上させることができより好ましい。カットライン表示部13、15は、フロント側基布9又はバック側基布10のいずれか一方のみに形成してもよく、好ましくは、両方の基布に形成しておくとよい。
尚、場合によっては、指袋先端部8や履き口用開口部6の先端部の外側全部(縦方向の複数個のパンティストッキングの間を連結している部分14の部分も含めて全部)を、目視できるような編み組織としてもよい。このような指袋先端部8や履き口用開口部6の先端部からカットライン表示部13や15への編み組織の変更は、前述したようにジャカード機構を有するダブルラッシェル編機を用いれば、実現できる。
尚、図12について、説明を補足する。図12において、各編組織やその適用部分については、既にソックスや、上記パンティストッキングで説明した部分については、省略する。なお、本実施の形態では、グランド糸として、フルセットですべてのフロント側の編目に更に図12(c)に示した鎖編み組織、すべてのバック側の編目に図12(d)に示した鎖編み組織の糸が同時に編みこまれている。これらのグランド糸は、通常、非弾性糸からなる糸が用いられ、その他の図12(a)、(b)、(e)〜(j)の組織には弾性糸が用いられることは前記ソックスの実施の形態例と同様である。
また、例えば、これらの編み組織の各糸を、筬への通糸状況で説明すると、例えば、日本マイヤー株式会社の販売するジャカード機構を有するダブルラッシェル編機“RDPJ6/2”を例に取った場合も、先のソックスの実施の形態例と同様である。即ちこの編機はL1〜L6の6枚の筬を有している。L1〜L3がフロント側の筬、L4〜L6がバック側の筬である。L1とL6の2枚の筬は使用せずに、グランド筬L2(フロント側)とグランド筬L5(バック側)には、それぞれ図12(c)と図12(d)の組織とする非弾性糸がフルセットで通糸される。そしてジャカード筬L3(フロント側)には、それぞれ所定の位置に図12(a)、図12(f)の組織にする糸が、ジャカード筬L4(バック側)には、それぞれ所定の位置に図12(b)、図12(e)の組織にする糸が通糸されることになる。
ジャカード筬L3(フロント側)を例に挙げて説明すると、左脇部19b(着用者の左右基準)並びに右側脚部の内脇側部分20aを編むウェールに通糸される糸には、ジャカード機構により図12(f)の編み組織にされる。その他の編目は、図12(a)の如くデンビ組織で編まれるようジャカード制御機構を作用させずに編み、履き口用開口部6を形成する位置から開口部6の先端部までの領域をジャカード制御によりフロント側履き口用開口部6aは、図12(i)の組織に変え、また、指袋先端部8の領域は、ジャカード制御により指袋先端部8のフロント側は図12(g)の編み組織に変える。さらにカットライン表示部13や15を指袋先端部8や履き口用開口部6の領域から連続して編むには、指袋先端部8や履き口用開口部6それぞれの領域に続いて、この糸をジャカード制御により鎖編み組織(図示していないが、組織図としては図12の(c)と同じ組織図になる)に変えて編むことになる。
同様に、ジャカード筬L4(バック側)を例に挙げて説明すると、右外脇部19a(着用者基準)並びに左側脚部の内脇側部分20bを編むウェールに通糸される糸には、ジャカード機構により図12(e)の編み組織にされる。その他の編目は、図12(b)の如くデンビ組織で編まれるようジャカード制御機構を作用させずに編み、履き口用開口部6の形成を開始する位置から開口部6の先端部までの領域をジャカード制御によりバック側履き口用開口部6bは、図12(j)の組織に変え、また、指袋先端部8の領域は、ジャカード制御により指袋先端部8のバック側は図12(h)の編み組織に変える。さらにカットライン表示部13や15を指袋先端部8や履き口用開口部6の領域から連続して編むには、指袋先端部8や履き口用開口部6それぞれの領域に続いて、この糸をジャカード制御により鎖編み組織(図示していないが、組織図としては図12の(d)と同じ組織図になる)に変えて編むことになる。
ここで、今まで説明したのはソックスの実施形態例と共通する説明で理解できる部分であるが、次にパンティストッキング特有の部分について説明する。
即ち、パンティストッキングの場合には、左右の脚部5が股部22で合体してその上側部分は前側パンティ部21aと後側パンティ部21bとがその両外脇側19でフロント側基布9とバック側基布10を連結する連結編みで連結されていてパンティ部21(腹部側を股部からウェスト部までカバーする部分と臀部側を股部からウェスト部までカバーする部分)が形成されている点である。
フロント側について、脚部内脇側部分から股部22(前側股部22a)に至りその上のパンティ部21に移り変わる編組織変化について説明すると、内脇側部分20aについては前述したように、フロント側とバック側を連結する連結編み図12の(f)で編み、股部22(前側股部22a)のところに到達した時点から上方は、図12の(a)で示したような左右方向に振れていて、且つフロント側のみ編む編み組織であるデンビ組織などにすることにより前側パンティ部21aが形成される。同様にバック側について、脚部内脇側部分から股部22(後側股部22b)に至りその上のパンティ部21bに移り変わる編組織変化について説明すると、内脇側部分20bについては前述したように、フロント側とバック側を連結する連結編み図12の(e)で編み、股部22(後側股部22b(図7参照))のところに到達した時点から上方は、図12の(b)で示したような左右方向に振れていて、且つバック側のみ編む編み組織であるデンビ組織などにすることにより後側パンティ部21bが形成される。これらの編み組織の変更は、前述したようにジャカード制御機構により、所定位置において変更することができる。尚、股部22は、必要に応じて裂けないように、補助的に適宜の補強縫いなどを入れて補強してもよい。
次に、本発明のパンティストッキングの別の製造工程の一実施形態を、図9に示した。
図9はジャカード制御機構を有するダブルラッセル編機で連続的にシームレスに一体に編まれて前記編機から排出されてきた状態の、パンティストッキングが形成されている連続体のフロント側から見た図である。尚この反対面側のバック側から見た図は、同様の図になるので、図示を省略している。矢印Sの方向が編み方向である。
図9に示した連続体が図8に示した連続体と異なる点は、図8に示した連続体においては、縦方向に連続する複数のパンティストッキングが、すべて、指袋部1が下方で、履き口用開口部6が上方になる同一の向きで縦方向に複数個連続して配置されている連続体の例を示したが、図9に示した連続体は、縦方向に連続する複数のパンティストッキングが1つずつ反対向きに配置された連続体、即ち、指袋部1同士が向き合い、履き口用開口部6同士が向き合う形の連続体の例を示したものである。その他の部分は、図8と同一なので、同一部分に同一の符号を付して、重複説明は省略した。図9に示したように、縦方向では、指袋部1同士が向き合い、履き口用開口部6同士が向き合う対称形で、且つ図示していないが、必要なら横方向も脇側19のラインを対称線として線対称形に複数のパンティストッキングが配置されている態様とすることにより、連続体を編み上げた場合に、ひずみが少なく編み上がり、同じ形状のものを複数個連続して製造する場合には、形状のばらつき、ひずみが少なく、均一な形状のパンティストッキングを生産しやすく好ましい。従って、通常は、図9に示された製造工程で、図示していないが、なお且つ横方向も脇側19のラインを対称線として線対称形に複数のパンティストッキングが配置されている態様により製造される。
なお、これらの実施の形態では、爪先側の形状が、5本の各足指に分かれて形成されている形状のものを示したが、爪先側の形状が、親指部分とそれ以外の足指をまとめて収納する部分の2つの部分に分かれて形成されている形状(いわゆる日本の足袋のような形状)にするなど、適宜、任意の形状にすることもできる。