ところで、一般に、バインド線による幹線と分岐電線の固定手法では、次のような課題がある。すなわち、手巻き用のバインド線を使用するため、バインド線を電線に取り付ける前に、所定の形状にし(一方の端部をU字状に曲げ)て、両端部にひねりを入れておくなどの事前の加工が必要である。また、加工したバインド線の一方(U字状に曲げた側)の端部を絶縁ヤットコで把持して該バインド線を電線に引っ掛け、絶縁ヤットコでバインド線の一端を保持した状態でバインド打ち器が取り付けられた固定操作棒による巻き付け作業を行うため、操作性に課題がある。
さらに、バインド線を手巻き作業で行う場合には、一巻き毎に締め付けが可能であるが、間接活線作業の場合には、バインド線を巻いて最後に該バインド線をねじって締め付ける(絞る)ことになるため、均等な締め付けができない。なお、間接活線作業での最後のバインド線の締め付け作業は、バインド線の輪の向きを調整して、その輪の中にバインド打ち器の先端を差し込んで、バインド打ち器を回転させる操作で行われるが、輪の向きの調整やバインド打ち器の先端を差し込む操作に熟練を要する。
これら事前の加工、操作性並びに均一な締め付けができないなどの課題は、間接活線作業でのバインド線の巻き付け作業が難しいことに起因しており、巻き付け作業が不要で取付作業の操作性に優れた新たな電線固定具の開発が望まれている。なお、作業の操作性と共に電線固定具に要求される要件や望まれる特徴には、例えば次のような事項がある。先ず、強固な締め付け力は必須である。また、施工に必要な工具の種類は少ない方が望ましい。また、電線固定具の撤去も容易であればなお良い。さらに、異なる太さの電線の固定にも使用できる汎用性あることが望ましい。
そこでこの発明は、巻き付け作業が不要で、取付作業の操作性に優れ、強固な締め付けが可能な電線固定具、固定操作棒の先端工具および電線固定具の取付方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、複数の電線を結束して固定する電線固定具であって、該結束した電線群の集合体断面の周囲形状を略方形状と見なして、該集合体の一面を上面とし、該上面に対向する面を底面とし、他の2つの面をそれぞれ側面とするとき、第1係合部と、一端が該第1係合部と連接して一方の面が前記集合体の上面と接する帯形状の第1辺部と、該第1辺部の他端と連接して一方の面が前記集合体の一方の側面と接する帯形状の第2辺部と、該第2辺部の他端と連接する第2係合部と、を一体成形した第1部材と、前記第1部材の第2係合部と係合する第1係合部と、一端が該第1係合部と連接して一方の面が前記集合体の底面と接する帯形状の第3辺部と、該第3辺部の他端と連接する第2係合部と、を一体成形した、前記第1部材と係合する点を中心に回転自在な第2部材と、前記第2部材の第2係合部と係合する第1係合部と、一端が該第1係合部と連接する連接部材と、該連接部材上に第1係合部と距離を置いて配置される第2係合部と、を一体成形した、前記第2部材と係合する点を中心に回転自在な第3部材と、前記第3部材の第2係合部と係合して前記第3部材と係合する点を中心に回転自在とする第1係合部と、一端が該第1係合部と連接して一方の面が前記集合体の他方の側面と接する第4辺部と、該第4辺部の他端と連接し、前記第1部材の第1係合部と係合する第2係合部と、を弾性変形可能な素材で一体成形した、前記第1部材との係合する点を中心に回転可能な第4部材と、を備え、前記第2部材と前記第3部材とが係合する点と、前記第1部材と前記第4部材とが係合する点と、を結ぶ仮想線が、前記集合体の他方の側面に対応する略方形状の側辺と略平行となるように、前記第1部材と、該第1部材に係合した第2部材と、該第2部材に係合した第3部材と、該第3部材に係合した第4部材と、を配置し、前記第3部材と前記第4部材とが係合する点が、前記仮想線に対して前記集合体の位置する側とは反対側の位置から前記集合体の位置する側に移動するよう、前記第2部材と前記第3部材とが係合する点を中心に前記第3部材を回転させて、前記複数の電線を結束して固定することを特徴とする。
請求項1の発明では、第1部材と、該第1部材に係合した第2部材と、該第2部材に係合した第3部材と、該第3部材に係合した第4部材と、を鎖状に連結し、該鎖状連結した電線固定具の第1部材を集合体に掛止した後、第2部材、第3部材および第4部材で集合体を包んでいくように、それぞれの係合点を中心にそれぞれの部材を回転させて、第4部材の第2係合部を第1部材の第1係合部に掛止させる。この状態で、第3部材および第4部材の係合点が、第2部材および第3部材の係合点と第1部材および第4部材の係合点とを結ぶ仮想線に対して集合体の位置する側とは反対側の位置から集合体の位置する側に移動するよう、第2部材および第3部材の係合点を中心に第3部材を回転させて、複数の電線を結束して固定する。
請求項2の発明は、請求項1に記載の電線固定具において、前記第1部材は、前記帯形状の第1辺部および前記第2辺部をそれぞれ帯状部材の長手方向の両側辺に配置される2本の線状部材で構成し、前記第1係合部を当該線状部材の一端が前記第1辺部の一の線状部材の一端と、当該線状部材の他端が前記第1辺部の他の線状部材の一端とそれぞれ連接するU字状の線状部材で構成し、該U字のそれぞれの側辺は該U字の底辺の長手方向に垂直な仮想面上でU字状となるよう曲げて形成され、前記第2係合部を2本の線状部材で構成し、一の線状部材の一端が前記第2辺部の一の線状部材の他端と、他の線状部材の一端が前記第2辺部の他の線状部材の他端とそれぞれ連接し、それぞれの線状部材の他端は略円状となるよう曲げて形成され、前記第2部材は、前記帯形状の第3辺部を帯状部材の長手方向の両側辺に配置される2本の線状部材で構成し、前記第1係合部を当該線状部材の一端が前記第3辺部の一の線状部材の一端と、当該線状部材の他端が前記第3辺部の他の線状部材の一端とそれぞれ連接するU字状の線状部材で構成し、前記第2係合部を2本の線状部材で構成し、一の線状部材の一端が前記第3辺部の一の線状部材の他端と、他の線状部材の一端が前記第3辺部の他の線状部材の他端とそれぞれ連接し、それぞれの線状部材の他端は略円状となるよう曲げて形成され、前記第3部材は、前記連接部材をU字状の線状部材で構成し、前記第1係合部を2本の線状部材で構成し、一の線状部材の一端が前記連接部材の一端と、他の線状部材の一端が前記連接部材の他端とそれぞれ連接し、一の線状部材の他端が前記第2部材の第2係合部の一の線状部材が形成する円に、他の線状部材の他端が前記第2部材の第2係合部の他の線状部材が形成する円にそれぞれ嵌合するよう曲げて形成され、前記第2係合部を前記連接部材のU字の側辺となる部分を螺旋状に巻くことにより形成し、前記第4部材は、前記第4辺部を対向する2本の線状部材で構成し、前記第2係合部を当該線状部材の一端が前記第4辺部の一の線状部材の一端と、当該線状部材の他端が前記第4辺部の他の線状部材の一端とそれぞれ連接するU字状の線状部材で構成し、前記第1係合部を2本の線状部材で構成し、一の線状部材の一端が前記第4辺部の一の線状部材の他端と、他の線状部材の一端が前記第4辺部の他の線状部材の他端とそれぞれ連接し、一の線状部材の他端が前記第3部材の第2係合部が形成する一の螺旋円に、他の線状部材の他端が前記第3部材の第2係合部が形成する他の螺旋円にそれぞれ嵌合するよう曲げて形成される、ことを特徴とする。
請求項2の発明では、第1部材を1本のU字状の線状部材で構成し、所定位置に曲げ加工を施して第1係合部および第2係合部を形成する。また、第2部材を1本のU字状の線状部材で構成し、所定位置に曲げ加工を施して第2係合部を形成する。また、第3部材を1本のU字状の線状部材で構成し、所定位置に曲げ加工を施して第1係合部および第2係合部を形成する。さらに、第4部材を1本のU字状の線状部材で構成し、所定位置に曲げ加工を施して第1係合部および第2係合部を形成する。そして、第1部材と、該第1部材に係合した第2部材と、該第2部材に係合した第3部材と、該第3部材に係合した第4部材と、を鎖状に連結して電線固定具を構成する。
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の電線固定具において、前記第1部材は、前記第1辺部の前記集合体の上面と接する側の面形状が、前記集合体の上面の面形状に合わせて形成されることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の電線固定具において、前記第2部材の第3辺部に取り付けられ、前記複数の電線を結束して固定したときに、前記集合体の底面、前記第1部材の第2辺部および前記第4部材の第4辺部と接するスペーサを有することを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の電線固定具において、前記第3部材は、前記連接部材の他端に第3係合部を備え、前記第1部材の第2係合部または第2部材の第1係合部と係合する第1係合部と、前記第3部材の第3係合部と係合する第2係合部と、を一体成形した固定解除防止部材を有することを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の電線固定具を取り付ける際に用いられる固定操作棒のL字形状の先端工具であって、前記L字の短辺の一端に配置され、前記固定操作棒に当該先端工具を回転自在に取り付ける取付部と、前記L字の短辺の他端側に凸形状に形成され、前記第1部材を保持する保持部と、前記L字の短辺と長辺とが交差する位置に配置され、前記第3部材の前記連接部材の他端を掛止する第1掛止部と、前記L字の長辺上に形成され、前記第4部材の前記第2係合部を載せて摺動させる摺動部と、前記L字の長辺の一端側に前記第1掛止部と対向して配置され、前記第3部材の前記連接部材の他端を掛止するJ字形状の第2掛止部と、を一体成形したことを特徴とする。
請求項6の発明では、保持部により鎖状連結した電線固定具の第1部材を保持した状態で集合体に載置して、該集合体に第1部材を掛止させる。その後、当該先端工具から第1部材を取り外して、第1掛止部で第3部材の連接部材の他端を掛止し、且つ摺動部に第4部材の第2係合部を載せた状態で、第2部材が集合体の底面に接するよう当該先端工具を横方向に移動する。そして、第1掛止部で第3部材の連接部材の他端を掛止し、且つ摺動部に第4部材の第2係合部を載せた状態で、第2部材が集合体の底面に接するようにした位置から当該先端工具を下方向に移動させることにより、当該先端工具に反時計回りの回転運動を生じさせて、摺動部に載せた第4部材の第2係合部を第1部材の第2係合部に掛止する。その後、第2掛止部で第3部材の連接部材の他端を掛止して、当該先端工具の横方向の移動により、第2部材および第3部材の係合点を中心に第3部材を回転させて、複数の電線を結束して固定する。
請求項7の発明は、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の電線固定具を、請求項6に記載の先端工具を取り付けた固定操作棒を用いて取り付ける電線固定具の取付方法であって、前記先端工具の前記保持部により鎖状連結した電線固定具の前記第1部材を保持した状態で該第1部材を前記集合体に載置して、前記集合体に前記第1部材を掛止させる第1掛止ステップと、前記先端工具から前記第1部材を取り外して、前記先端工具の前記第1掛止部で前記第3部材の前記連接部材の他端を掛止し、且つ前記先端工具の前記摺動部に前記第4部材の前記第2係合部を載せた状態で、前記第2部材が前記集合体の底面に接するよう前記先端工具を横方向に移動する移動ステップと、前記先端工具の前記第1掛止部で前記第3部材の前記連接部材の他端を掛止し、且つ前記先端工具の前記摺動部に前記第4部材の前記第2係合部を載せた状態で、前記第2部材が前記集合体の底面に接するようにした位置から前記先端工具を下方向に移動させることにより、該先端工具に反時計回りの回転運動を生じさせて、前記先端工具の前記摺動部に載せた前記第4部材の前記第2係合部を前記第1部材の前記第1係合部に掛止する第2掛止ステップと、前記先端工具の前記第2掛止部で前記第3部材の前記連接部材の他端を掛止した状態で、前記第3部材および前記第4部材の係合点が、前記第2部材および前記第3部材の係合点と前記第1部材および前記第4部材の係合点とを結ぶ仮想線に対して前記集合体の位置する側とは反対側の位置から前記集合体の位置する側に移動するよう、前記先端工具の横方向の移動により、前記第2部材および前記第3部材の係合点を中心に前記第3部材を回転させて、複数の電線を結束して固定する固定ステップと、を備えることを特徴とする。
請求項1の発明によれば、鎖状連結した電線固定具の第1部材を、第1係合部、集合体の上面に接する第2辺部、側面に接する第1辺部、および第2係合部を連接して一体成形した形状としているので、集合体に第1部材を載置したときに、第1係合部、第2辺部および第1辺部を集合体に密着させて掛止させることができ、従来のように補助工具を併用することなく取付作業を行うことができる。また、第4部材の第2係合部を第1部材の第1係合部に掛止させた状態で、第3部材および第4部材の係合点が、第2部材および第3部材の係合点と第1部材および第4部材の係合点とを結ぶ仮想線に対して集合体の位置する側とは反対側の位置から集合体の位置する側に移動するよう、第2部材および第3部材の係合点を中心に第3部材を回転させて、複数の電線を結束して固定するので、第4部材に伸びの変形が発生し、元の形状に戻ろうとする力が働いて集合体を締め付ける力となり、電線相互を強力に固定することができる。なお、第1部材、第2部材および第3部材を第4部材と同等の弾性変形可能な素材で構成すれば、集合体を締め付ける力が均一に働いて、電線相互をより強力に固定することができる。結果として、巻き付け作業が不要で、取付作業の操作性に優れ、強固な締め付けが可能な電線固定具を実現することが可能となる。
請求項2の発明によれば、第1部材、第2部材、第3部材および第4部材をU字状の線状部材で構成するので、製造コストを抑制して同等の締め付け力を持つ電線固定具を実現することが可能となる。また、各部材の一部が、2本の線状部材が並行して、その間に空間を持つ構造となるので、当該電線固定具の補助具としてのスペーサや電線固定具などの取付技法に関する設計自由度を高めることができると共に、結束した電線群に鎖状連結した電線固定具を取り付ける際に用いる固定操作棒の先端工具の把持機能、掛止機能などの設計自由度をも高めることが可能である。
請求項3の発明によれば、第1部材の第1辺部の集合体の上面と接する側の面形状を、集合体の上面の面形状に合わせて形成するので、集合体に第1部材を載置したときに、第1係合部、第2辺部および第1辺部を集合体により密着させて掛止させることができる。
請求項4の発明によれば、電線固定具が想定していない電線群(例えば、径の小さい電線などとの組み合わせ)についても、スペーサの取付によって該電線群との密着性を高めることができ、電線相互を強力に固定することができるので、電線固定具の汎用性を高めることが可能となる。
請求項5の発明によれば、電線固定具の解除時に可動対象となる第3部材を、固定解除防止部材の係合を介して第1部材または第2部材と連結して固定した構造とするので、外的要因による電線固定具の解除を未然に防止することが可能となる。
請求項6の発明によれば、当該先端工具を回転自在に取り付ける取付部と、第1部材を保持する保持部と、第3部材の連接部材の他端を掛止する第1掛止部と、第4部材の第2係合部を載せて摺動させる摺動部と、前記第3部材の前記連接部材の他端を掛止するJ字形状の第2掛止部と、を一体成形して固定操作棒の先端工具を構成したので、電線固定具の取付作業を固定操作棒の横方向および上下方向の移動のみで可能とし、従来の作業の困難な巻き付け作業を不要とすることができる。
請求項7の発明によれば、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の電線固定具を、請求項6に記載の先端工具を取り付けた固定操作棒を用いて取り付けるので、電線固定具の取付作業を固定操作棒の横方向および上下方向の移動操作のみで可能となり、従来の作業の困難な巻き付け作業を不要とすることができる。
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
〔実施の形態1〕
図1は、この発明の実施の形態1に係る電線固定具の説明図であり、図1(a)は電線1および2に実施の形態1の電線固定具を取り付けた時の断面図、図1(b)は右側面図、図1(c)は下面図である。
図1において、実施の形態1の電線固定具は、2本の電線1および2(即ち、幹線1および分岐電線2)を結束して固定する電線固定具であり、図1(a)に示す断面図において、該結束した2本の電線1および2の集合体断面の周囲形状を略方形状と見なして、該集合体の一面を上面とし、該上面に対向する面を底面とし、他の2つの面をそれぞれ側面とするとき、該集合体の上面および一方の側面と接する第1部材11と、該集合体の底面と接する第2部材12と、該集合体の他方の側面と接する第4部材14と、第3部材13と、を備える。
第1部材11は、第1係合部11Aと、一端が該第1係合部11Aと連接して当該帯形状の第1辺部11Dの一方(内側)の面が集合体の上面と接する帯形状の第1辺部11Dと、該第1辺部11Dの他端と連接して当該帯形状の第2辺部11Cの一方(内側)の面が集合体の一方の側面と接する帯形状の第2辺部11Cと、該第2辺部11Cの他端と連接する第2係合部11Bと、を弾性変形可能な素材で一体成形したものである。
なお、この実施の形態1では、第1部材11において、帯形状の第1辺部11Dおよび第2辺部11Cをそれぞれ帯形状の長手方向の両側辺に配置される2本の線状部材で構成している。また、第1係合部11AをU字状の線状部材で構成し、当該U字状線状部材の一端が第1辺部11Dの一の線状部材の一端と、当該U字状線状部材の他端が第1辺部11Dの他の線状部材の一端とそれぞれ連接している。さらに第1係合部11Aの該U字のそれぞれの側辺は、該U字の底辺の長手方向に垂直な仮想面上でU字状となるよう曲げて形成されている。また、第2係合部11Bを2本の線状部材で構成し、一の線状部材の一端が第2辺部11Cの一の線状部材の他端と、他の線状部材の一端が第2辺部11Cの他の線状部材の他端とそれぞれ連接し、それぞれの線状部材の他端が(第1係合部11AのU字の底辺の長手方向に垂直な仮想面上で)略円状となるよう曲げて形成されている。以上の第1部材11が備える各部材の連接関係から推察できるように、実際には、第1部材11は1本のU字状の線状部材であり、これに上記のような曲げ加工を施して第1係合部11Aおよび第2係合部11Bを形成してなるものである。
また、第1部材11では、第1辺部11Dの集合体の上面と接する側の面形状を、集合体の上面の面形状に合わせて形成している。この実施の形態1では、略方形状と見なしている集合体(2本の電線1および2)の上面の断面形状は、図1(a)に示すように、実際には半円であるので、第1部材11の全体の断面形状は逆J字状の形状となる。
このように、第1部材11の第1辺部11Dの電線1と接する面形状を集合体(2本の電線1および2)の上面の面形状に合わせて形成することにより、当該電線固定具の取付作業時に、第1部材11を上側に配置される電線1と密着させることができる。取付作業時には、最初の工程で、第1部材11の第1辺部11Dが電線1の上側半円に密着し、第1部材11の第2辺部11Cが電線1および2の側辺に接するように第1部材11を載置し、その後、続く作業に移行していくことになる。つまり、第1部材11にこのような形状を持たせることにより、第1部材11(並びに第1部材11に連鎖状に係合されている第2部材12、第3部材13および第4部材14)を集合体(2本の電線1および2)に掛止させることができ、従来の(バインド線の一端を保持するための)絶縁ヤットコのような補助工具を併用することなく取付作業を行うことができる。
また、第2部材12は、第1部材11の第2係合部11Bと係合する第1係合部12Aと、一端が第1係合部12Aと連接して当該帯形状の第3辺部12Cの一方(内側)の面が集合体の底面と接する帯形状の第3辺部12Cと、該第3辺部12Cの他端と連接する第2係合部12Bと、を弾性変形可能な素材で一体成形したものである。ここで、第2部材12は第1部材11と係合する点を中心に回転自在である。
なお、この実施の形態1では、第2部材12において、帯形状の第3辺部12Cを帯形状の長手方向の両側辺に配置される2本の線状部材で構成している。また、第1係合部12AをU字状の線状部材で構成し、当該U字状線状部材の一端が第3辺部12Cの一の線状部材の一端と、当該U字状線状部材の他端が第3辺部12Cの他の線状部材の一端とそれぞれ連接している。また、第2係合部12Bを2本の線状部材で構成し、一の線状部材の一端が第3辺部12Cの一の線状部材の他端と、他の線状部材の一端が第3辺部12Cの他の線状部材の他端とそれぞれ連接し、それぞれの線状部材の他端は(第1係合部12AのU字の底辺の長手方向に垂直な仮想面上で)略円状となるよう曲げて形成されている。以上の第2部材12が備える各部材の連接関係から推察できるように、実際には、第2部材12は1本のU字状の線状部材であり、これに上記のような曲げ加工を施して第2係合部12Bを形成してなるものである。
また、第3部材13は、第2部材12の第2係合部12Bと係合する第1係合部13Aと、一端が該第1係合部13Aと連接する連接部材13Cと、該連接部材13C上に当該第3部材13Cの第1係合部13Aと距離を置いて配置される第2係合部13Bと、を弾性変形可能な素材で一体成形したものである。ここで、第3部材13は第2部材12と係合する点を中心に回転自在である。
なお、この実施の形態1では、第3部材13において、連接部材13CをU字状の線状部材で構成している。また、第1係合部13Aを2本の線状部材で構成しており、一の線状部材の一端がU字状連接部材13Cの一端と、他の線状部材の一端がU字状連接部材13Cの他端とそれぞれ連接し、一の線状部材の他端が第2部材12の第2係合部12Bの一の線状部材が形成する円に、他の線状部材の他端が第2部材12の第2係合部12Bの他の線状部材が形成する円に、それぞれ嵌合するよう曲げて形成されている。さらに、第2係合部13Bは、U字状連接部材13CのU字の側辺となる部分をそれぞれ(連接部材13CのU字の底辺の長手方向に垂直な仮想面上で)螺旋状に巻くことにより形成されている。以上の第3部材13が備える各部材の連接関係から推察できるように、実際には、第3部材13は1本のU字状の線状部材であり、これに上記のような曲げ加工を施して第1係合部13Aおよび第2係合部13Bを形成してなるものである。
また、第4部材14は、第3部材13の第2係合部13Bと係合して第3部材13と係合する点を中心に当該第4部材14を回転自在とする第1係合部14Aと、一端が該第1係合部14Aと連接して当該第4辺部14の一方(内側)の面が集合体の他方の側面と接する第4辺部14Cと、該第4辺部14Cの他端と連接し、第1部材11の第1係合部11Aと係合する第2係合部14Bと、を弾性変形可能な素材で一体成形したものである。ここで、第4部材14は第1部材との係合する点を中心に回転可能である。
なお、この実施の形態1では、第4部材14において、第4辺部14Cを対向する2本の線状部材で構成している。また、第2係合部14BをU字状の線状部材で構成し、当該U字状線状部材の一端が第4辺部14Cの一の線状部材の一端と、当該U字状線状部材の他端が第4辺部14Cの他の線状部材の一端とそれぞれ連接されている。また、第1係合部14Aを2本の線状部材で構成し、一の線状部材の一端が第4辺部14Cの一の線状部材の他端と、他の線状部材の一端が第4辺部14Cの他の線状部材の他端とそれぞれ連接し、一の線状部材の他端が第3部材13の第2係合部13Bが形成する一の螺旋円に、他の線状部材の他端が第3部材13の第2係合部13Bが形成する他の螺旋円にそれぞれ嵌合するよう曲げて形成されている。以上の第4部材14が備える各部材の連接関係から推察できるように、実際には、第4部材14は1本のU字状の線状部材であり、これに上記のような曲げ加工を施して第1係合部14Aおよび第2係合部14Bを形成してなるものである。
また、第1部材11、第2部材12、第3部材13および第4部材14は、それぞれ弾性変形可能な素材で一体成形するようにしているが、より具体的には、素材は硬鋼線材に樹脂加工を施したものを用いる。被膜樹脂の材料としては、耐候性ポリエチレン樹脂を主体とした原料、またはこれと同等以上の特性を有する絶縁物とするのが強度および絶縁性の点で望ましい。
次に、図2を参照して、実施の形態1の電線固定具によって電線の集合体を固定することが可能となる仕組みについて説明する。ここで、図2は、この発明の実施の形態1に係る電線固定具の原理説明図である。
電線の集合体(電線1および2)に取り付ける前の電線固定具は、第1部材11と、該第1部材11に係合した第2部材12と、該第2部材12に係合した第3部材13と、該第3部材13に係合した第4部材14と、が鎖状に連結したものとなる。
このように鎖状連結した電線固定具の第1部材11を集合体(電線1および2)に掛止した後、第2部材12、第3部材13および第4部材14で集合体を包んでいくように、第2部材12を第1部材11との係合点を中心に回転させ、第3部材13を第2部材12との係合点を中心に回転させ、第4部材14を第3部材13との係合点を中心に回転させて、第4部材14の第2係合部14Bを第1部材11の第1係合部11Aに掛止させる。このときの第1部材11、第2部材12、第3部材13および第4部材14と、集合体(電線1および2)との位置関係を表す断面図が図2(a)となる。
このとき、第2部材12と第3部材13とが係合する点と、第1部材11と第4部材14とが係合する点は、集合体の他方の側面に対応する略方形状の側辺と略平行となる仮想線Y−Y’上に位置している。また、この位置関係の状態で、第3部材13の連接部材13Cに対して、図2(a)において左斜め下方向に力を加えることにより、第3部材13は第2部材12との係合点(K2)を中心に時計回りに回転する。この回転の際に、第4部材14は第1係合部14Aで第3部材13と、第2係合部14Bで第1部材11とそれぞれ係合されており、第4部材14の第1係合部14A(係合点K3)は、回転している第3部材13の第2係合部13Bと共に回転することになる。
このとき、第4部材14の回転動作の回転中心は、第4部材14の第1部材11との係合点(K0)であり、回転中心K0の第4部材14の自由回転運動で(第3部材13と第4部材14の)係合点K3が描く軌跡は仮想円R0である。また、回転中心K2の第3部材13の自由回転運動で係合点K3が描く軌跡は仮想円R2である。両軌跡には仮想円R0および仮想円R2がそれぞれ仮想線Y−Y’と交差する位置で最大値(Δy2)となる回転軌道差があり、実際の第3部材13と第4部材14の係合点K3の軌道は、この回転軌道差の範囲内の部材寸法および部材の弾性率で定まる位置の軌道となる。
第3部材13の連接部材13Cに対して加わる左斜め下方向の力による回転運動は、第4部材14の第4辺部14Cの内側面が集合体(電線2)の他方の側面と接する位置に至った時点で止まる。このときの第1部材11、第2部材12、第3部材13および第4部材14と、集合体(電線1および2)との位置関係を表す断面図は図2(b)となる。このとき、第4部材14には伸びの変形が、第2部材12の第2係合部12B近傍にはしなりの変形が、第1部材11の第1係合部11A近傍にはしなりの変形が、第1部材11の第2係合部11A近傍にはしなりの変形が、それぞれ発生し、それぞれの部材に元の形状に戻ろうとする力が働いて、これらが集合体(電線1および2)を締め付ける力となり、電線相互を強力に固定することとなる。
すなわち、第1部材11、第2部材12、第3部材13および第4部材14と、集合体(電線1および2)との位置関係が図2(a)で示される関係にあるときに、第3部材13と第4部材14とが係合する点(K3)が、仮想線Y−Y’に対して集合体の位置する側とは反対側の位置から集合体の位置する側に移動するよう、第2部材12と第3部材13とが係合する点(K2)を中心に第3部材13を回転させることにより、複数の電線1,2を結束して固定することができる。
なお、図2(b)に示される第1部材11、第2部材12、第3部材13および第4部材14による電線1および2の固定を解除するには、第3部材13の連接部材13Cに対して、右方向に力を加えれば良く、簡単な操作で解除することができる。すなわち、回転中心K2の第3部材13の自由回転運動で係合点K3が描く軌跡(仮想円R2)上の点P3の位置で電線1および2が固定されている状態で、係合点K3の位置が点P2より右側の位置になるよう力を加えれば、その後は各部材の元の形状に戻ろうとする力によって点P2の位置まで戻ることになる。
〔実施の形態2〕
次に、図3および図4を参照して、この発明の実施の形態2について説明する。ここで、図3は、この発明の実施の形態2に係るスペーサを備えた電線固定具の説明図であり、図3(a)は断面図、図3(b)は右側面図、図3(c)は下面図である。また、図4は、実施の形態2のスペーサの説明図であり、図4(a)は正面図、図4(b)は側面図、図4(c)は下面図、図4(d)はY1−Y1’面の断面図、図4(e)はX1−X1’面の断面図である。
この実施の形態2は、実施の形態1で説明した第1部材11、第2部材12、第3部材13および第4部材14を鎖状連結した電線固定具で、2本の径の異なる電線1および2B(即ち、幹線1および分岐電線2B)を結束して固定する態様を例示したものである。
スペーサ21は、図3に示すように、第2部材12の第3辺部12Cに取り付けられる。また、スペーサ21の形状は、幹線1および分岐電線2Bを結束して電線固定具で固定したときに、(幹線1および分岐電線2Bの)集合体の底面(即ち、分岐電線2Bの下半円)、第1部材11の第2辺部11Cおよび第4部材14の第4辺部14Cと接するように、予め設計されている。すなわち、図3(a)中に幹線1と同径の電線を破線で示したように、スペーサ21を分岐電線2Bにあてがった際に幹線1と同じ径となるよう配慮されており、電線固定具が同径の電線2の場合(実施の形態1)と同等の操作性や機能を持つよう設計されている。
また、スペーサ21は、図4に示すように、該スペーサ21の下部断面を凸形状に成形して、該凸形状の根側の箇所に形成された窪み部分に第3辺部12Cの並行する2本の線状部材をあてがって取り付けられる。なお、スペーサ21の素材は、電線固定具の第1部材11、第2部材12、第3部材13および第4部材14の被膜樹脂材料と同様で、耐候性ポリエチレン樹脂を主体とした原料、またはこれと同等以上の特性を有する絶縁物とするのが強度および絶縁性の点で望ましい。
このように、電線固定具が想定していない電線群(径の小さい電線などとの組み合わせ)についても、スペーサ21の取付によって該電線群との密着性を高めることができ、電線相互を強力に固定することができるので、電線固定具の汎用性を高めることが可能となる。
〔実施の形態3〕
次に、実施の形態1および実施の形態2で説明した電線固定具の電線群への取付作業を、間接活線作業にて行う場合に用いる固定操作棒の先端工具について、図5を参照して説明する。ここで、図5は、実施の形態3の固定操作棒の先端工具の説明図であり、図5(a)は上面図、図5(b)は正面図、図5(c)は側面図、図5(d)は固定操作棒に取付時の外形を説明する説明図である。
先端工具31は、図5(d)に示すように、L字形状を備え、固定操作棒32の先端部に取付部材を介して逆L字に取り付けられ、該取付部材を軸として、同図に対して時計回り方向および反時計回り方向に回転自在である。
また、先端工具31は、図5に示すように、L字の短辺の一端に配置され、固定操作棒32に当該先端工具31を回転自在に取り付ける取付部31Aと、L字の短辺の他端側に凸形状に形成され、電線固定具の第1部材11の第2辺部11Cの並行する2本の線状部材を押し広げる力で保持する保持部31Bと、L字の短辺と長辺とが交差する位置に配置され、第3部材13の連接部材13Cの他端を掛止する第1掛止部31Dと、L字の長辺上に形成され、第4部材14の第2係合部14Bを載せて摺動させる摺動部31Eと、L字の長辺の一端側に第1掛止部31Dと対向して配置され、第3部材13の連接部材13Cの他端を掛止するJ字形状の第2掛止部31Fと、を一体成形したものである。
先端工具31の保持部31Bは、電線固定具の第1部材11の第2辺部11Cの並行する2本の線状部材の間に、当該保持部31Bを差し込むことにより電線固定具の第1部材11を把持する。つまり、第2辺部11Cの並行する2本の線状部材の間隔よりも保持部31Bの厚みを厚くして、2本の線状部材によって当該保持部31Bが挟まれる摩擦力を利用して、第1部材11を把持するものである。なお、第1部材11には、第2部材12、第3部材13および第4部材14が鎖状連結されており、この鎖状連結された電線固定具を保持可能となるよう、保持部31Bの厚みが調整される。
このように、この実施の形態の固定操作棒32の先端工具31では、先端工具31を回転自在に取り付ける取付部31Aと、第1部材11を保持する保持部31Bと、第3部材13の連接部材13Cの他端を掛止する第1掛止部31Dと、第4部材14の第2係合部14Bを載せて摺動させる摺動部31Eと、第3部材13の連接部材13Cの他端を掛止するJ字形状の第2掛止部31Fと、を一体成形したので、電線固定具の取付作業を固定操作棒32の横方向および上下方向の移動のみで可能とし、従来の作業の困難な巻き付け作業を不要とすることができる。
〔実施の形態4〕
次に、実施の形態1および実施の形態2の電線固定具を、実施の形態3の先端工具を取り付けた固定操作棒を用いて取り付ける電線固定具の取付方法について、図6、図7および図8を参照して説明する。ここで、図6、図7および図8は、この発明の実施の形態4に係る電線固定具の取付方法の説明図であり、図6および図7は実施の形態1の電線固定具を、図8は実施の形態2の電線固定具を、それぞれ取り付ける電線固定具の取付方法を例示している。
先ず、図6(a)に示すように、先端工具31の保持部31Bにより鎖状連結した電線固定具の第1部材11を保持した状態で、該第1部材11を集合体(電線1および2)に載置して、集合体に第1部材11を掛止させる(第1掛止ステップ)。このとき、先端工具31の摺動部31Eと、J字形状の第2掛止部31Fとが、第3部材13のU字状線状部材と第4部材14のU字状線状部材とで形成される輪の中に挿入された状態となっている。
そして、図6(b)に示すように、集合体(電線1および2)に第1部材11が掛止した状態のとき、先端工具31の保持部31Bからは第1部材11が取り外されている。そして、図6(b)および(c)に示すように、先端工具31の第1掛止部31Dで第3部材13の連接部材13Cの他端を掛止し、且つ先端工具31の摺動部31Eに第4部材14の第2係合部14Bを載せた状態で、第2部材12が集合体(電線1および2)の底面に接するよう先端工具31を横方向に移動する(移動ステップ)。
そして、図6(d)から図7(a)に示すように、先端工具31の第1掛止部31Dで第3部材13の連接部材13Cの他端を掛止し、且つ先端工具31の摺動部31Eに第4部材14の第2係合部14Bを載せた状態で、第2部材12が集合体(電線1および2)の底面に接するようにした位置から先端工具31を下方向に移動させることにより、該先端工具31に反時計回りの回転運動を生じさせて、先端工具31の摺動部31Eに載せた第4部材14の第2係合部14Bを第1部材11の第1係合部11Aに掛止する(第2掛止ステップ)。
そしてさらに、図7(b)および(c)に示すように、先端工具31の第2掛止部31Fで第3部材13の連接部材13Cの他端を掛止した状態で、第3部材13および第4部材14の係合点が、第2部材12および第3部材13の係合点と第1部材11および第4部材14の係合点とを結ぶ仮想線に対して集合体(電線1および2)の位置する側とは反対側の位置から集合体の位置する側に移動するよう、先端工具31の横方向の移動により、第2部材12および第3部材13の係合点を中心に第3部材13を回転させて、電線1および2を結束して固定する(固定ステップ)。
また、実施の形態2の電線固定具を取り付ける電線固定具の取付方法では、先ず、図8(a)に示すように、先端工具31の保持部31Bにより鎖状連結した電線固定具(第2部材12にはスペーサ21が取り付けられている)の第1部材11を保持した状態で、該第1部材11を集合体(電線1および2)に載置して、集合体に第1部材11を掛止させる(第1掛止ステップ)。
そして、図8(b)に示すように、集合体(電線1および2)に第1部材11が掛止した状態のとき、先端工具31の保持部31Bからは第1部材11が取り外されている。これ以降に行われる移動ステップ、第2掛止ステップおよび固定ステップについては、実施の形態1の電線固定具を取り付ける場合と同様である。
このように、実施の形態4の電線固定具の取付方法では、実施の形態1および実施の形態2の電線固定具を、実施の形態3の先端工具を取り付けた固定操作棒を用いて取り付けるので、電線固定具の取付作業を固定操作棒32の横方向および上下方向の移動操作のみで可能となり、従来の作業の困難な巻き付け作業を不要とすることができる。
なお、既存の絶縁ヤットコや既存の先端工具を取り付けた固定操作棒によっても、実施の形態1および実施の形態2の電線固定具を電線群に取り付けることは可能であるが、固定操作棒の横方向および上下方向の移動操作のみで行うことは難しいと想像される。
〔実施の形態5〕
次に、実施の形態1に固定解除防止部材を付加した電線固定具について、図9を参照して説明する。ここで、図9は、この発明の実施の形態5に係る固定解除防止部材を備えた電線固定具の説明図であり、図9(a)は断面図、図9(b)は右側面図、図9(c)は下面図、図9(d)は固定解除防止部材の斜視図である。
この実施の形態5は、実施の形態1で説明した第1部材11、第2部材12、第3部材13および第4部材14を鎖状連結した電線固定具で、2本の電線1および2を結束して固定した態様に、外的要因により固定が解除するのを防止するための固定解除防止部材を追加した構成を例示したものである。電線の揺れ等により電線固定具が脱落する可能性は極めて低いが,飛来物接触による固定解除の可能性は否定できない。よって,万一の場合を考えると、固定が解除しないよう固定解除防止部材を取り付けておくのが望ましい。
固定解除防止部材35は、第2部材12の第1係合部12A(または第1部材11の第2係合部11B)と係合する第1係合部と、第3部材13の第3係合部と係合する第2係合部と、を一体成形したものである。この実施の形態5では、第3部材13を、連接部材13Cの他端に第3係合部を備えた構成とする。なお、実施の形態1の第3部材13を変形するのではなく、連接部材13CのU字状線状部材のU字の底辺に該当する部分を第3係合部とする。
つまり、固定解除防止部材35を線状部材で構成し、図9(d)に示すように、線状部材の両端をフック状にしたものを用いる。固定解除防止部材35の第2部材12の第1係合部12A(U字状線状部材のU字の底辺部分が該当する)および連接部材13Cの他端(U字状線状部材のU字の底辺部分が該当する)に対する取付作業は、絶縁ヤットコ、或いは、先端工具に「ラジオペンチ式アダプタ」を取り付けた固定操作棒を用いて行う。
このように、この実施の形態5では、電線固定具の解除時に可動対象となる第3部材13を、固定解除防止部材35の係合を介して第2部材12(または第1部材11)と連結して固定した構造とするので、外的要因による電線固定具の解除を未然に防止することが可能となる。
〔変形例〕
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、電線群を2本の電線として説明したが、3本以上の電線群に対しても適用可能であることは言うまでもない。図10および図11に、この発明の電線固定具の変形例を例示する。
図10(a)には、実施の形態1の電線固定具を、4本の電線を固定対象としたときの構成に変形した場合の断面図を例示している。同図において、この変形例1の電線固定具は、第1部材111、第2部材112、第3部材113および第4部材114を鎖状連結した構成であり、詳細の構造、取付用の先端工具、取付方法などは上記の実施の形態と同様であり、同等の効果を奏することができる。
また、図10(b)には、実施の形態1の電線固定具を、5本の電線を固定対象としたときの構成に変形した場合の断面図を例示している。同図において、この変形例2の電線固定具は、第1部材121、第2部材122、第3部材123および第4部材124を鎖状連結した構成である。ここで、電線3および5の右下方に、該空間を埋めるスペーサ22を備えた構成としても良い。また、詳細の構造、取付用の先端工具、取付方法などは上記の実施の形態と同様であり、同等の効果を奏することができる。なお、特許請求の範囲にいう「結束した電線群の集合体断面の周囲形状を略方形状と見なして」の「略方形状」には、変形例2のような台形形状のものも含まれる。
また、図11(a)には、変形例1の電線固定具(図10(a)参照)を、3本の電線を固定対象としたときの構成に変形した場合の断面図を例示している。同図において、この変形例3の電線固定具は、変形例1の電線固定具にスペーサ23を付加した構成であり、詳細の構造、取付用の先端工具、取付方法などは上記の実施の形態と同様であり、同等の効果を奏することができる。
また、図11(b)には、変形例1の電線固定具(図10(a)参照)を、3本の径の異なる電線を固定対象としたときの構成に変形した場合の断面図を例示している。同図において、この変形例4の電線固定具は、変形例1の電線固定具により大きいスペーサ24を付加した構成であり、詳細の構造、取付用の先端工具、取付方法などは上記の実施の形態と同様であり、同等の効果を奏することができる。
さらに、図11(c)には、変形例1の電線固定具(図10(a)参照)を、4本の径の異なる電線を固定対象としたときの構成に変形した場合の断面図を例示している。同図において、この変形例4の電線固定具は、変形例1の電線固定具に、電線2および3の右下方の空間を埋めるスペーサ25を付加した構成であり、詳細の構造、取付用の先端工具、取付方法などは上記の実施の形態と同様であり、同等の効果を奏することができる。