JP6463406B2 - 湯伸び抑制剤、及び湯伸び耐性麺の製造方法 - Google Patents

湯伸び抑制剤、及び湯伸び耐性麺の製造方法 Download PDF

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本発明は湯伸びしにくい麺(湯伸び耐性麺)を製造するために有用な湯伸び抑制剤に関する。また本発明は、湯伸び耐性麺を製造する方法、並びに麺に湯伸び耐性を付与するための方法に関する。
中華麺(ラーメンを含む)、うどん、及びパスタ(マカロニ、スパゲティを含む)などの麺は、小麦粉を水とともに混練りし、麺状に加工した食品であり、水とともに加熱調理されることにより、小麦粉由来の澱粉が膨潤し糊化することで弾力のある好ましい食感となる。こうした麺の食感は、適度な硬さ、弾性(粘弾性)、歯応え、滑らかさ(つるみ感)、及び喉ごしのよさ等から構成されるが、麺を茹でた後、水分を保持した状態、特にスープやつゆの中にいれておくと経時的に硬さ・粘弾性・歯応え(これらを総称して「コシ」ともいう)がなくなり(湯伸び)、食感が低下して、美味しさが損なわれてしまう。このため、こうした湯伸びという問題が生じにくい麺(湯伸び耐性麺)が望まれており、湯伸びを抑制するための改良剤も種々検討されている。
湯伸びを抑制する方法として、例えば麺原料にローカストビーンガム、キサンタンガム、タラガムなどの増粘多糖類を添加する方法等が知られている(特許文献1)。しかし、この方法によると麺にコシなどの硬さは付与できるが、麺特有の粘弾性や滑らかさに欠けた麺となり、麺特有の食感とはほど遠い麺となってしまう。また油揚げ麺における湯戻り後の麺の食感を良好にし、湯伸びを抑制する技術として、麺にジグリセリンジ脂肪酸エステル及び有機酸を添加する方法(特許文献2)、麺にネイティブジェランガムを添加する方法(特許文献3)、また麺に1−ケストースを添加する方法(特許文献4)が提案されている。しかし、この方法は、油揚げ麺などの即席麺に対して湯伸びを防止する方法であるに過ぎず、生麺などのその他の麺に対して湯伸びを抑制する方法としては有効ではない。
特開平7−107934号公報 特開平9−163945号公報 特開2003−265129号公報 特開2009−142202号公報
本発明は、湯伸びしにくい麺(湯伸び耐性麺)を製造するために有用な湯伸び抑制剤を提供することを課題とする。また本発明は、湯伸び耐性麺を製造する方法、並びに麺に湯伸び耐性を付与するための方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討していたところ、製麺工程において原料として小麦粉とともに小麦粉中麺を用いることで、小麦粉中麺を用いないで製麺した場合と比べてコシの強い麺が製造できること、また茹でた後にスープやつゆに浸すなど、水分を含んだ状態で放置した場合でも小麦粉中麺を用いないで製麺した場合と比べて湯伸びが抑制され、コシが長く維持されていることを確認した。このことから、製麺工程で配合した小麦粉中麺は、麺に対して「湯伸び抑制剤」として機能していること、つまり、小麦粉中麺を用いることで麺に湯伸び耐性を付与することができ、そして湯伸びしにくい麺を製造することができることを確認した。
本発明はかかる知見に基づいて完成したものであり、下記の実施形態を包含するものである。
(I)湯伸び抑制剤
(I−1)小麦粉中麺からなる、麺の湯伸び抑制剤。
(I−2)小麦粉中麺が粉末状である(I−1)記載の湯伸び抑制剤。
(I−3)上記麺が中華麺(ラーメンを含む)、うどん、きしめん、そうめん、ひやむぎ、及びパスタ(マカロニ、スパゲッティ)から選択される麺、好ましくは中華麺(ラーメンを含む)、うどん、及びパスタから選択される麺である、(I−1)または(I−2)に記載する湯伸び抑制剤。
(I−4)上記麺が生麺、半生麺、乾麺、チルド麺または冷凍麺である(I−1)〜(I−3)のいずれかに記載する湯伸び抑制剤。
(II)湯伸び耐性麺の製造方法
(II−1)原料粉に小麦粉中麺を配合して製麺する工程を有する湯伸び耐性麺の製造方法。
(II−2)上記原料粉が小麦粉を含むものである(II−1)に記載する製造方法。
(II−3)原料粉に含まれる小麦粉100質量部に対して小麦粉中麺を乾燥質量に換算して1〜25質量部、好ましくは2〜25質量部、より好ましくは2〜20質量部の割合で配合することを特徴とする(II−2)に記載する製造方法。
(II−4)麺原料粉全量100質量%中に含まれる小麦粉中麺の割合が乾燥質量に換算して1〜25質量%、好ましくは2〜20質量%、より好ましくは2〜10質量%である(II−1)〜(II−3)のいずれかに記載する製造方法。
(II−5)上記小麦粉中麺が粉末状物である(II−1)〜(II−4)のいずれかに記載する製造方法。
(II−6)上記麺が中華麺(ラーメンを含む)、うどん、きしめん、そうめん、ひやむぎ、及びパスタ(マカロニ、スパゲッティ)から選択される麺、好ましくは中華麺(ラーメンを含む)、うどん、及びパスタから選択される麺である、(II−1)〜(II−5)のいずれかに記載する製造方法。
(II−7)上記麺が生麺、半生麺、乾麺、チルド麺または冷凍麺である(II−1)〜(II−6)のいずれかに記載する製造方法。
(III)麺に湯伸び耐性を付与する方法
(III−1)原料粉に小麦粉中麺を配合して製麺する工程を有することを特徴とする、麺に湯伸び耐性を付与する方法。
(III−2)上記原料粉が小麦粉を含むものであるである(III−1)に記載する製造方法。
(III−3)原料粉に含まれる小麦粉100質量部に対して小麦粉中麺を乾燥質量に換算して1〜25質量部、好ましくは2〜25質量部、より好ましくは2〜20質量部の割合で配合することを特徴とする(III−2)に記載する方法。
(III−4)麺原料粉全量100質量%中に含まれる小麦粉中麺の割合が乾燥質量に換算して1〜25質量%、好ましくは2〜20質量%、より好ましくは2〜10質量%である(III−1)〜(III−3)のいずれかに記載する方法。
(III−5)上記小麦粉中麺が粉末状物である(III−1)〜(III−4)のいずれかに記載する方法。
(III−6)上記麺が中華麺(ラーメンを含む)、うどん、きしめん、そうめん、ひやむぎ、またはパスタ(マカロニ、スパゲッティ)から選択される麺、好ましくは中華麺(ラーメンを含む)、うどん、及びパスタから選択される麺である、(III−1)〜(III−5)のいずれかに記載する方法。
(III−7)上記麺が生麺、半生麺、乾麺、チルド麺または冷凍麺である(III−1)〜(III−6)のいずれかに記載する方法。
本発明によれば、製麺工程において原料として小麦粉等の原料粉とともに小麦粉中麺を用いることで、小麦粉中麺を用いない場合と比べて有意に湯伸びが抑制された麺を得ることができる。このため、当該麺によれば、茹でた後、水分を含んだ状態、例えばつゆ(スープ)に浸けた状態、または水分を含んだ状態でチルドや冷凍条件下で保存した場合でも、小麦粉中麺を用いないで製造された麺と比較して長時間にわたってコシを維持することができる。つまり、本発明の方法によれば、製麺工程で原料粉に小麦粉中麺を配合することで麺に湯伸び耐性を付与することができ、湯伸びしにくい麺を製造することができる。また本発明の方法によれば、麺に湯伸び耐性を付与することで、コシだけでなく、表面の滑らかさ(つるみ感)や歯切れ感など、各種麺の食感低下を抑制することが可能になる。
(I)湯伸び抑制剤
本発明の湯伸び抑制剤は、小麦粉中麺からなることを特徴とする。
本発明において「湯伸び」とは、茹でた麺が、水分を含んだ状態で経時的に柔らかくなり、コシがなくなる現象をいう。より具体的には、茹でた麺が、その後、水を含んだ状態で、特に水や加熱水に浸漬された状態で経時的に柔らかくなり、コシがなくなる現象をいう。ここで水や加熱水には、出汁や調味料等を含む水や加熱水(つまりスープやつゆ等)が含まれる。またその温度は、特に制限されず、低温から高温(0〜100℃)の水及び加熱水であってもよい。また冷凍麺の場合、水は氷結状態であってもよい。
本発明の麺伸び抑制剤は、上記の湯伸び現象を有する麺についてその湯伸び現象を抑制する目的で、麺の原料の一つとして製麺工程で配合して用いられるものである。なお「抑制」とは、麺について湯伸び現象が生じないように改善する場合だけでなく、湯伸びが認められる場合であっても、湯伸び抑制剤を配合せずに製造された麺と比較して、湯伸び現象が低減される場合も含む概念である。
また本発明において「麺」とは、小麦粉を原料粉の少なくともひとつとして用いて製造される麺であって、中華麺(ラーメンを含む)、うどん、きしめん、そうめん、冷や麦、パスタ(マカロニ、スパゲッティを含む)等を挙げることができる。好ましくは、小麦粉を原料粉とする中華麺(ラーメンを含む)、うどん、及びパスタ(スパゲッティを含む)である。より好ましくは中華麺(ラーメンを含む)、及びうどんであり、特に好ましくは中華麺(ラーメンを含む)である。
またここで対象とする麺、つまり本発明の湯伸び抑制剤を配合して調製される麺は、生麺、半生麺、乾燥麺、チルド麺、及び冷凍麺である。好ましくは生麺、半生麺、及び乾麺であり、より好ましくは生麺または半生麺である。なかでも特に高い湯伸び効果が得られる麺としては生の中華麺(ラーメンを含む)を挙げることができる。なお、ここで生麺、半生麺及び乾燥麺はいずれも製麺後、α化処理をしていない麺であり、互いに乾燥の有無やその程度(水分含有量)が相違するものである。一方、本発明でいうチルド麺及び冷凍麺は、製麺後、加熱処理(茹で、蒸し)等によりα化された麺であって、チルド麺は0〜5℃程度の低温条件で、冷凍麺は0℃以下の冷凍条件で保存する必要のある麺を意味する。
本発明がいう「小麦粉中麺」は小麦粉を原料として製造されるする中麺であり、「湯種」とも称される。ここで使用する小麦粉は、薄力粉、中力粉、及び強力粉の別を問わず、いずれも使用することができるが、好ましくは中力粉、及び強力粉である。また小麦の種類として、硬質小麦、中間質小麦、軟質小麦、及びデュラム小麦を挙げることができるが、好ましくは硬質小麦、中間質小麦である。
かかる小麦粉中麺は、小麦粉と水とを、常温ではなく加温された状態で混捏することで製造することができ、その詳細は特開2000−245332号公報や特開2002−245332号公報に記載されている。
具体的には、当該小麦粉中麺は、下記のいずれかの方法により製造することができる。
(1)小麦粉を、お湯とともに混捏して、55〜98℃程度、好ましくは55〜80℃程度の温度に中麺を練り上げる方法。
(2)小麦粉を常温の水の中にいれるか、小麦粉の中に常温の水を添加し、加熱後または加熱しながら混捏して、55〜98℃程度、好ましくは55〜80℃程度の温度に中麺を練り上げる方法。
上記(1)の方法は、混捏に使用する水としてお湯を使用する方法である。使用するお湯は、捏ね上げられた中麺が上記の通り、55〜98℃程度、好ましくは55〜80℃程度になるように、加熱されたお湯であればよく、その限りにおいて制限されない。好ましくは熱湯であり、より好ましくは沸騰直後の熱湯である。
上記(2)の方法は、混捏に使用する水として常温の水を使用する方法である。この場合、常温の水に対して小麦粉を分散させて、電子レンジ等によって、約55〜98℃程度に加熱する。加熱された材料は、一部が半固体状態になるため、これをクリーム状になるまで混捏して、約55〜80℃程度の温度になるように中麺を捏ね上げる。
なお、上記中麺の製造には、本発明の効果を妨げないことを限度として、小麦粉と水以外に、副材料を添加してもよい。副材料はとしては、湯伸び抑制する対象の麺の種類によって適宜調整することができるが、例えば、イーストフード、油脂類(ショートニング、ラード、マーガリン、バター、液状油、粉末油等)、澱粉(コーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、緑豆澱粉、サゴ澱粉、米澱粉、エンドウ豆澱粉、またはこれらの加工澱粉)、糖類(単糖類、少糖類、多糖類)、乳製品(乳類、粉乳類、クリーム類、チーズ類等)、卵製品、塩類(食塩等)、調味料(アミノ酸、核酸等)、膨張剤(重曹、炭酸アンモニウム、ベーキングパウダー等)、乳化剤(レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等)、酵素類、保存料、蛋白質、アミノ酸(グリシン、グルタミン酸)、フレーバー等が挙げられる。
副材料を加える場合、小麦粉と副材料との使用比率は、本発明の効果を妨げないことを限度として、通常小麦粉1質量部に対して副材料0.0001質量部〜0.2質量部程度であり、配合する副材料の種類に応じて適宜調整することができる。
上記の方法により、55〜98℃程度、好ましくは55〜80℃程度の温度に捏ね上げられた中麺は、そのままの状態で製麺の原料として使用することもできるが、好ましくは乾燥後、粉砕して粉砕または粉末状態(粉末中麺)で製麺の原料として使用することもできる。粉砕方法または粉末化方法は、当業界における定法や慣用技術に従って行うことができ、制限されないが、例えばハンマーミル等の粉砕機を用いて粉砕する方法を挙げることができる。
また小麦粉中麺は、上記方法のほか、特開2010−45号公報に記載されている下記の工程を有する方法で製造することもできる。
(a)小麦粉と水を含有する混合物を調製する工程(混合物調製工程)、
(b)得られた混合物中のタンパク質を分解する工程(タンパク質分解工程)、
(c)得られた混合物の温度を上昇させる工程(昇温工程)、
(d)上記の(b)タンパク質分解工程および(c)昇温工程で得られた混合物を噴霧乾燥する工程(噴霧乾燥工程)。
なお、(b)工程および(c)工程はいずれも(a)工程の後に行えばよく、(b)工程と(c)工程との順番は特に制限されない。従って、具体的には、(a)工程後に(b)工程を行い、次いでその後(c)工程を実施してもよいし、また(a)工程後に(c)工程を行い、次いで、その後に(b)工程を実施してもよい。
以下、各工程について詳しく説明する。
(a)混合物調製工程
混合物調製工程は、小麦粉と水を含有する混合物を調製する工程である。
ここで調製された混合物は、後段の噴霧乾燥工程に供する前に噴霧可能な流動性を有していることが望ましい。そのため、小麦粉と水との混合比率は、小麦粉100質量部に対する水の量として、通常100〜800質量部、好ましくは300〜500質量部である。小麦粉100質量部に対する水の添加量が100質量部未満であると流動性が低下して噴霧できない場合が生じる。また、小麦粉100質量部に対する水の添加量が800質量部を超えると、噴霧乾燥の乾燥効率が著しく劣り、コストが嵩むという問題がある。
混合物には、小麦粉と水以外に、副材料を添加してもよい。副材料としては、湯伸びを抑制する対象麺の種類に応じて適宜調整することができ、小麦粉中麺の製造に使用する前述のものを同様に用いることができる。副材料を加える場合、前述と同様、小麦粉と副材料との使用比率は、通常0.0001質量部〜0.2質量部程度であり、配合する副材料の種類に応じて適宜調整することができる。
具体的には、中華麺の場合、副材料として鹹水、また必要に応じて食塩を用いることができ、さらに小麦蛋白、乾燥卵白、乾燥全卵、加工でん粉、増粘多糖類、アルコール、その他色素などの食品添加剤を配合することができる。鹹水は、主に炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、これらの混合物、またはこれらにさらに燐酸塩を加えた物であり、麺に中華麺特有のコシや風味を与える成分である。かかる鹹水の配合割合は原料総量100質量%あたり通常0.5〜2質量%程度(乾燥換算)、塩分含量は原料総量100質量%あたり通常0〜2質量%程度(乾燥換算 )であるが、これに制限されるものではない。またうどん、きしめん、そうめん、ひやむぎの場合、副材料として食塩を用いることができ、さらに上記中華麺と同様の副材料や食品添加剤を配合することができる(但し、鹹水を除く。乾燥全卵や色素もあまり使用せず。)。食塩の配合割合は原料総量100質量%あたり2〜6質量%程度(乾燥換算)を挙げることができるが、これに制限されるものではない。パスタの場合、副材料として、必要に応じて、小麦蛋白、乾燥卵白、乾燥全卵、加工でん粉、増粘多糖類のほか、イカスミ並びにほうれん草や人参などの食品加工品を配合することもできる。また生パスタの場合、アルコールを配合することもできる。混合物の調製は、小麦粉および水、所望により副材料を適当な容器中で混合し、小麦粉(必要であれば副材料を含む)が水に溶解または均一に分散するまで、攪拌することにより行う。当該工程は、通常、室温条件下で実施することができる。
(b)タンパク質分解工程
タンパク質分解工程では、上記(a)工程で調製された混合物、または(a)工程および(c)工程で調製された昇温後の混合物に含まれタンパク質を分解する工程である。
混合物をタンパク質を分解する方法は、食品分野で通常使用されるタンパク質分解法であればよく、特に限定されない。例えば、タンパク質分解酵素による分解(酵素分解)、アルカリまたは酸による分解(アルカリ分解または酸分解)を挙げることができる。好ましくはアルカリ分解または酸分解である。この場合、アルカリ分解処理または酸分解処理後に、酸またはアルカリを用いて混合物を中和することが好ましい。分解に用いるアルカリまたは酸は、有機または無機のいずれかのアルカリまたは酸を用いてもよく、アルカリ加水分解の場合はpH8〜13の範囲、酸加水分解の場合はpH1〜4の範囲が好ましい。分解時間(攪拌時間)は通常0.5分〜30分であり、好ましくは5分〜15分である。アルカリ分解を行った場合は酸で中和し、酸分解を行った場合はアルカリで中和すればよい。アルカリとしては水酸化ナトリウムを、酸としては塩酸を好適に用いることができる。攪拌によりグルテンネットワークが生成しないように、分解時の温度、時間等の条件が設定される。本工程を行うことにより、攪拌してもグルテンネットワークが生成せず、噴霧し易い生地状態とすることができる。
(c)昇温工程
昇温工程では、上記(a)工程で調製された混合物、または(a)工程および(b)工程で調製されたタンパク質分解物の温度を上昇する工程である。
昇温工程は、上記混合物やタンパク質分解物を加熱することにより行われるが、混合物やタンパク質分解物の内部の温度が59℃〜65℃の範囲になるように昇温することが好ましい。より好ましくは、混合物の内部の温度が60℃〜62℃の範囲になるように昇温する方法である。この範囲になるように昇温することで、混合物が部分的にα化され、このことにより、混合物の粘度が上昇し、流動性が低下するが、この温度範囲ならば、流動性の低下を抑えながら噴霧乾燥装置への供給には支障をきたさない。
なお、上記するように、(c)昇温工程と(b)タンパク質分解工程の順序は限定されず、先に(b)タンパク質分解工程を行い、その後(c)昇温工程を行ってもよく、先に(c)昇温工程を行い、その後(b)タンパク質分解工程を行ってもよい。
(d)噴霧乾燥工程
噴霧乾燥工程では、タンパク質分解工程および昇温工程を経た流動体状の混合物を噴霧乾燥する工程である。噴霧乾燥法は、液体を微粒化装置により液滴にし、その液滴に高温の乾燥風を接触させることで水分を蒸発させて乾燥させる方法である。これにより、流動体状の混合物から粉末状の中麺が得られる。
用いる噴霧乾燥装置に特に限定はなく、例えば噴射式噴霧乾燥装置または回転円盤式噴霧乾燥装置などの公知の装置を使用することができる。また、噴霧乾燥の操作条件も特に制限はなく、例えば、タンパク質分解工程および昇温工程を経た流動体状の混合物を加圧ノズル式噴霧乾燥装置に供給し、熱風温度が180℃〜210℃、排風温度が60℃〜100℃の条件下で噴霧乾燥し、乾燥物をサイクロンで捕集することにより、粉末状中麺を得ることができる。
製造方法の別に関わらず、上記の方法で製造された粉末状中麺は、室温で長期間にわたり保存することができる。なお、保存温度は室温に限定されず、粉末状中麺が凍結しない温度で冷蔵保存してもよく、粉末状中麺が凍結する温度で冷凍保存してもよい。
〔中麺の用途〕
上記の製造方法により製造された粉末状の中麺(粉末中麺)は、湯伸び抑制剤として麺の原料の一つとして製麺工程で使用することができる。製麺工程で使用する粉末中麺の割合は、原料粉に含まれる小麦粉100質量部に対して1〜25質量部を挙げることができる。好ましくは原料粉に含まれる小麦粉100質量部に対して2〜25質量部であり、より好ましくは2〜20質量部、特に好ましくは2〜15質量部である。また麺の製造に使用される原料の総量100質量%中に含まれる小麦粉中麺の割合としては、乾燥質量換算で1〜25質量%、好ましくは2〜20質量%、より好ましくは2〜10質量%である。
対象とする麺としては、中華麺(ラーメンを含む)、うどん、ひやむぎ、そうめん、きしめん、パスタ(マカロニ、スパゲティをふくむ)等が挙げられる。好ましくは中華麺(ラーメンを含む)、うどん、パスタ(マカロニ、スパゲティをふくむ)であり、より好ましくは中華麺(ラーメンを含む)及びうどんであり、特に好ましくは中華麺(ラーメンを含む)である。本発明の中麺を配合して製造される麺の形態としては、α化処理前の形態として生麺、半生麺、及び乾燥麺等が挙げられる。好ましくは生麺、及び半生麺であり、より好ましくは生麺である。また、本発明は加熱処理(茹で処理または蒸し処理)等のα化処理後、低温や冷凍条件で保存される麺(チルド麺、冷凍麺)も対象とすることができる。特に本発明の中麺を用いて製造されたチルド麺及び冷凍麺は、当該中麺を用いないで製造されたチルド麺及び冷凍麺と比べて、再加熱後の食感(滑らかさ[つるみ]、コシ)が良好である。
(II)湯伸び耐性麺の製造方法
本発明は、また湯伸び耐性麺の製造方法を提供する。
ここで「湯伸び耐性麺」とは湯伸び性が抑制された麺を意味する。具体的には、湯伸び耐性麺は、水存在下で加熱してでん粉をα化した後(例えば、茹でや蒸しなどの加熱調理後)に、水分を含んだ状態で放置した場合に、小麦粉中麺を用いないで製麺された麺と比べて、少なくともコシの低下が抑えられている特性を有する麺を意味する。つまり、ここでいう「耐性」とは、麺について湯伸び現象が生じないように改善する場合だけでなく、湯伸びが認められる場合であっても、小麦粉中麺を配合せずに製造された麺と比較して、湯伸び現象が低減される場合も含む概念である。このため、本発明の湯伸び耐性麺は、それを茹でたり蒸したりした後に、水を含んだ状態(氷結状態を含む)でそのまま放置した場合、またはスープやつゆに浸しておいた場合でも、小麦粉中麺を用いないで製麺された麺と比べて、コシを長く維持することができる。
本発明の湯伸び耐性麺の製造方法は、製造に使用する原料粉に小麦粉中麺を配合して製麺する工程を有することを特徴とする。ここで小麦粉中麺は、上記「湯伸び抑制剤」の欄で説明したものを使用することができる。
詳細な製造方法は、対象とする麺の種類によって異なるが、基本的には、小麦粉などの原料粉に前述する本発明の小麦粉中麺、好ましくは粉末状の小麦粉中麺を、小麦粉100質量部に対して1〜25質量部の割合で配合混合し、これに水含量が25〜55容量%程度になるように水を加えて、よく捏ねて(混練)生地を製造する工程を有することを特徴とする。
小麦粉中麺の原料粉に対する配合割合として、通常、原料粉に含まれる小麦粉100質量部に対して上記の通り1〜25質量部であり、好ましくは2〜25質量部であり、より好ましくは2〜20質量部、特に好ましくは2〜15質量部である。また麺の製造に使用する原料の総量100質量%中に含まれる小麦粉中麺の割合は、乾燥質量換算で1〜25質量%、好ましくは2〜20質量%、より好ましくは2〜10質量%である。
なお、原料粉に使用する小麦粉の小麦の種類は、対象とする麺の種類に応じて適宜選択をすることができ、例えばうどん、そうめん、ひやむぎ、きしめんなどの場合は中間質小麦を、中華麺の場合は硬質小麦を、パスタの場合はデュラム小麦を用いることができる。また小麦粉の種類(薄力粉、中力粉、強力粉)も対象とする麺の種類に応じて適宜選択をすることができる。例えばうどん、そうめん、ひやむぎ、きしめんなどの場合は中力粉を、中華麺の場合は強力粉(若しくは準強力粉)または中力粉を使用することができる。
また原料粉には、本発明の効果が損なわれないことを限度として、小麦粉の他、対象とする麺の種類に応じて定法に従って副材料を配合することができる。例えば中華麺の場合、麺に弾力性を付与するために鹹水(炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、ポリリン酸塩)を配合することができる。
斯くして製造される生地は、対象とする麺の種類に応じて定法に従って製麺することができる。例えば、うどん、そうめん、ひやむぎ、きしめん、および中華麺等は、上記で製造した生地を圧延して麺帯を形成し、次いでそれを所定の太さに切り出すか若しくは延伸して、麺線にすることで湯伸び耐性麺を製造することができる。斯くして製造される麺は生麺として、さらに乾燥することで半生麺(水分含量20〜22質量%程度)及び乾麺として製造取得することができる。またパスタの場合は、上記で製造した生地を押出成形機に供して、所定の形状や太さに押出成形する。斯くして製造される麺は生麺として、さらに乾燥することで半生麺(水分含量20〜22質量%程度)及び乾麺(水分含量が13質量%程度)として製造取得することができる。
またチルド麺は、上記各種麺(うどん、そうめん、ひやむぎ、きしめん、中華麺、またはパスタ)の生麺、半生麺または乾麺を、水存在下で加熱(茹で、蒸し)等してα化処理した後、0〜5℃で冷却することで製造取得することができる。冷凍麺は、上記α化処理後の冷却処理に代えて、α化処理後に急速冷凍することで製造取得することができる。
(III)麺に湯伸び耐性を付与する方法
本発明は、また麺に湯伸び耐性を付与する方法を提供する。
ここで対象とする麺は、中華麺(ラーメンを含む)、うどん、ひやむぎ、そうめん、きしめん、パスタ(マカロニ、スパゲティをふくむ)等が挙げられる。好ましくは中華麺(ラーメンを含む)、うどん、パスタ(マカロニ、スパゲティをふくむ)であり、より好ましくは中華麺(ラーメンを含む)及びうどんであり、特に好ましくは中華麺(ラーメンを含む)である。また麺の形態としては、生麺、半生麺、及び乾燥麺等のα化処理前の形態、並びにα化後、冷却または冷凍され、一定期間、冷蔵または冷凍保存された後に再加熱して食されるチルド麺や冷凍麺が挙げられる。好ましくは生麺、及び半生麺であり、より好ましくは生麺である。ここで「湯伸び耐性」とは湯伸び性が抑制された特性を意味する。具体的には、ここでいう湯伸び耐性は、上記(II)の欄で説明した通り、水存在下で加熱してでん粉をα化した後(例えば、茹でや蒸しなどの加熱調理後)に、水分を含んだ状態でまたは水に浸漬した状態で放置した場合に、小麦粉中麺を用いないで製麺された麺と比べて、少なくともコシの低下が抑えられている特性を意味する。このため、湯伸び耐性が付与された麺(生麺、半生麺、乾麺)は、それを茹でたり蒸したりした後にスープやつゆに浸しておいても、小麦粉中麺を用いないで製麺された麺と比べて、コシを長く維持することができる。また湯伸び耐性が付与されたチルド麺または冷凍麺は、冷蔵または冷凍保存期間中、水や氷を含んだ状態が続いた場合でも、小麦粉中麺を用いないで製麺された麺と比べて、コシを長く維持することができる。
本発明の麺に湯伸び耐性を付与する方法は、麺製造に使用する原料粉に小麦粉中麺を配合して製麺する工程を有することを特徴とする。ここで小麦粉中麺は、上記「湯伸び抑制剤」の欄で説明したものを使用することができる。
小麦粉中麺の原料粉に対する配合割合として、原料粉に含まれる小麦粉100質量部に対して通常1〜25質量部であり、好ましくは2〜25質量部であり、より好ましくは2〜20質量部、特に好ましくは2〜15質量部である。また麺の製造に使用する原料の総量100質量%中に含まれる小麦粉中麺の割合は、乾燥質量換算で1〜25質量%、好ましくは2〜20質量%、より好ましくは2〜10質量%である。
麺の製造工程において、上記の通り、麺製造に使用する原料粉に小麦粉中麺を配合することで製造される麺に湯伸び耐性を付与することができる。
以下、実験例及び実施例を用いて本発明を説明する。但し、本発明はこれらの実験例に何ら制限されるものではない。
実施例1:粉末状中麺の製造
麺を製造するために必要とされる小麦粉量(100質量部)に対して、40質量部の小麦粉を中麺の製造に使用した。まず、40質量部の小麦粉に対して、砂糖1質量部と、食塩1質量部と、脱脂粉乳1質量部とを、それぞれ副材料として加え、20質量部の熱湯(98℃)とともに混捏して、中麺に練り上げた。練り上げ終了時には、中麺は60℃程度の温度になっていた。練り上げた中麺は、8時間以上、常温下にて放置して保存した。得られた中麺を凍結乾燥した後に、ハンマーミルなどで粉砕することで粉末状中麺を得ることができる。
実施例2:粉末状中麺の製造
麺を製造するために必要とする全小麦粉量(100質量部)に対して、20質量部の小麦粉を中麺の製造に使用した。まず、20質量部の小麦粉に対して、バター(溶かしバター)4質量部と、砂糖8質量部とを、それぞれ副材料として加え、50質量部の水に分散させた状態で、電子レンジによって70℃程度の温度に加熱した。加熱された材料は、水中にて、一部が半固体状になっていた。この半固体状の材料を、クリーム状になるまで混合した後に練り上げて、中麺を得た。混捏された中麺は60℃程度の温度になっていた。その後、混捏された中麺を、粗熱が取れるまで常温下に放置した。得られた中麺を凍結乾燥した後に、ハンマーミルなどで粉砕することで粉末状中麺を得ることができる。
実施例3:粉末状中麺の製造
小麦粉100質量部に、水400質量部を加え、10分間程度攪拌しながら溶解させ、バッター(流動性のある生地)状にした。このバッター液に、適量の水に溶解した水酸化ナトリウムを添加し、バッター液をアルカリ性にして10分間程度攪拌することで、小麦粉中のタンパク質を分解した。続いて白塩酸を適量の水に溶解させて添加し、バッター液を中和した。次に、バッター液を加熱し、60℃まで昇温した。昇温したバッター液を190℃の熱風が供給されている噴霧乾燥装置の管内に昇温したバッター液を噴霧することにより、粉末化した。最後に、粉末状の中麺を30メッシュのふるいにかけ、粒度を揃えて粉末状中麺とした。
実施例4:粉末状中麺の製造
小麦粉100質量部に、水400質量部を加え、10分間程度攪拌しながら溶解させ、バッター(流動性のある生地)状にした。このバッター液を加熱し、60℃まで昇温した。昇温したバッター液に適量の水に溶解した水酸化ナトリウムを添加し、バッター液をアルカリ性にして10分間程度攪拌することで、小麦粉中のタンパク質を分解した。続いて白塩酸を適量の水に溶解させて添加し、バッター液を中和した。次に、バッター液を190℃の熱風が供給されている噴霧乾燥装置の管内に昇温したバッター液を噴霧することにより、粉末化した。最後に、粉末状の中麺を30メッシュのふるいにかけ、粒度を揃えて粉末状中麺とした。
実験例1:粉末状中麺を用いた製麺(中華麺)の製造、及びその評価
(1)製麺
実施例3により製造した粉末状中麺を用いて中華麺を製造した。
具体的には、下記の工程により、全原料粉(100質量%)中の粉末状中麺の割合が0〜20質量%(0、1、2、5、10、20質量%)である中華麺を製造した(対照例、実施例1−1〜1−5)。なお、粉末状中麺を配合しないで製造した中華麺を対照例とした。
(i)小麦粉に対して粉末状中麺を、全原料粉中の割合が上記の範囲になるように配合する。
(ii)かんすい(炭酸カリウム60質量%+炭酸ナトリウム40質量%)を、全原料粉中の割合が1.5質量%となるように、水に溶解して練り水とする。なお、練り水は対粉35質量%の量とした。
(iii)ピンミキサーに小麦粉と粉末状中麺との混合物を入れ、上記で調製した練り水を加えて5分間の撹拌を2回繰り返し、麺生地を作製する。
(iv)上記で調製した麺生地をロール機で帯状に伸ばし、2回複合後、再度ロール機で伸ばした後、幅2mm、厚み1.5mmとなるように切り出す。
(v)上記の状態で1晩冷蔵保存して、生の中華麺(生麺)を作製した。
(2)麺の湯伸び評価(官能評価)
上記製麺方法で製造された中華麺(生麺)(対照例、実施例1−1〜1−5)100gを、1リットルの沸騰した湯に入れて4分間茹でた。その後、茹で麺を、市販の粉末ラーメンスープの素を熱水で溶解して調製した熱いスープに移した。そして、茹でたて(茹でた直後、T=0)、スープに浸漬してから3分間後(T=3)、スープに浸漬してから6分間後(T=6)のそれぞれにおける食感(コシ)を官能評価した。官能試験は、日頃からよく訓練された5名のパネルを用いて行い、粉末状中麺を配合しないで製造した中華麺(対照例)のそれぞれの時点(T=0、T=3、T=6)における中華麺の食感(コシ)を、評価0(コントロール)として下記の基準により6段階評価を行った。
[評価基準]
3:対照例の中華麺のコシと比べてかなりよい(コシかなる強い)
2:対照例の中華麺のコシと比べてよい(コシ強い)
1:対照例の中華麺のコシと比べて少しよい(コシやや強い)
0:対照例の中華麺のコシと同程度
−1:対照例の中華麺のコシと比べて少し悪い(コシやや低下)
−2:対照例の中華麺のコシと比べて悪い(コシ低下)
−3:対照例の中華麺のコシと比べてかなり悪い(コシなし)。
結果を表1に記載する。結果は5名のパネルの平均値である。
Figure 0006463406
この結果からわかるように、製麺工程で原料として中麺を配合することで、中麺を配合しないで製造した麺(茹でた直後:対照例(T=0))と比較して、良好な食感(コシの強い)麺が得られることが判明した。さらに中麺を配合して製造した麺は、茹でた後スープに浸漬中(実施例1−1〜1−5(T=3、T=6))の食感(特にコシ)の低下(湯伸び)が、中麺を配合しないで製造した麺(対照例(T=3、T=6))と比較して、有意に抑制されていることが確認された。このことから、製麺時に中麺を配合することで、中麺を配合しないで製造した麺と比べてコシの強い麺が得られるとともに、茹でた後にスープに浸漬した状態でも、中麺を配合しないで製造した麺と比べてコシの強い麺が得られることが判明した。つまり、中麺は水分存在下で加熱調理した後(デンプンをα化した後)の例えば茹で麺や蒸し麺などの調理麺について、スープ(つゆ、または調味料を含まない水、加熱水を含む)に浸漬するなど、水分を含んだ状態の製造から喫食までの間の期間(流通時、保管時、陳列時)の湯伸びを有意に抑制するための材料(湯伸び抑制剤)として、有効に利用することができる。
なお、ここでは麺として実施例3の方法で製造した中麺を用いて製麺した中華麺について評価したが、実施例1、2及び4の方法で製造した中麺を用いて製麺した中華麺についても同様の評価を得ることができる。
(3)麺の湯伸び評価(物性)
上記製麺方法で製造された中華麺(生麺)(対照例、実施例1−1〜1−4)100gを、1リットルの沸騰した湯に入れて4分間茹でた後、一旦ザルにあげ、これを70℃の湯にいれて5分間保持した後の物性(最大荷重[N])をクリープメーターを用いて測定した。麺を切断するために要する最大荷重[N]は、麺を噛みきるのに必要とする最大の力に相当し、麺のコシの程度、逆にいえば湯伸びの程度を評価する指標となる。
対照例の茹でたての麺(T=0)の最大荷重1.526Nを100として、5分浸漬麺(T=5)(対照例、実施例1−1〜1−4)の最大荷重[N]の相対値を表2に示す。
Figure 0006463406
この結果から、製麺工程で原料として中麺を配合することで、中麺を配合しないで製造した麺(対照例)と比較して、スープ等にいれて水分を含んだ状態で生じる湯伸びが抑制され、湯伸びしにくい麺が得られることが判明した。つまり、中麺は水分存在下で加熱調理した後(デンプンをα化した後)の例えば茹で麺や蒸し麺などの調理麺について、スープ(つゆ、または調味料を含まない水、加熱水を含む)に浸漬するなど、水分を含んだ状態での湯伸びを有意に抑制するための材料(湯伸び抑制剤)として、有効に利用することができる。
なお、ここでは麺として実施例3の方法で製造した中麺を用いて製麺した中華麺について評価したが、実施例1、2及び4の方法で製造した中麺を用いて製麺した中華麺についても同様の評価を得ることができる。
実験例2:粉末状中麺を用いた麺(うどん)の製造、及びその評価
(1)製麺
実施例3により製造した粉末状中麺を、小麦粉を含む全原料(100質量%)中の割合が5質量%になるように用いて(製麺に使用する小麦粉100質量部に対する粉末状中麺の割合5.26質量部)、うどんを製造した。
具体的には、まず小麦粉95質量%と粉末状中麺5質量%からなる原料粉(実施例2−1)、及び小麦粉(100質量%)からなる原料粉(対照例)をそれぞれ準備し、これらの各原料粉にそれぞれ原料粉100質量部に対する水の割合が35質量部になる割合で水を添加し、ピンミキサーで10分間ミキシングして生地を作製した。なお、この水には原料粉100質量部に対して2質量部になる割合で食塩が添加されている。作製した生地をロール機に通して帯状の生地に成形し、次いで切り出し機を用いて幅2.7mm、厚さ2.5mmの麺を作製した。
(2)麺の湯伸び評価(茹で麺の官能評価)
上記製麺方法で製造したうどん麺(生麺)(実施例2−1、対照例)を沸騰した湯に入れて17分間茹で、その後30秒間水洗いし、水切りした。どんぶりにうどんスープを入れて、これに30秒間湯煎して再加熱した茹でうどんを入れて、直後(T=0)と5分後(T=5)に試食し、それぞれの時点(T=0、T=5)におけるうどんの食感(表面の滑らかさ[つるみ]、芯部分のコシ[粘弾性])を下記の基準により4段階評価した。
[表面の滑らかさの評価基準]
4:表面が非常に滑らか
3:表面が滑らか
2:表面がややぼそつく(ざらつく)
1:表面がぼそつく(ざらつく)
[コシ(粘弾性)の評価基準]
4:芯部分に強いコシがある
3:芯部分にコシがある
2:芯部分のコシがやや弱い
1:芯部分にコシがなくプツプツ切れる
結果を表3に記載する。結果は5名のパネルの評価の平均値から下記の基準に従って示した。
◎:平均値が4以上
○:平均値が3以上4未満
△;平均値が2以上3未満
×:平均値が1以上2未満
Figure 0006463406
表3に示すように、茹でた直後(T=0)は実施例2−1及び対照例のいずれも表面は滑らかで芯部分にコシがあり、両者に差異は認められなかったが、茹でてから5分経過すると(T=5)、対照例のうどんは芯部分のコシが弱くなったのに対して実施例5のうどんは芯部分にコシがあり、うどん製麺時に中麺を配合することによって、湯伸びによるコシ低下が有意に抑制されていることが確認された。なお、ここでは麺として実施例3の方法で製造した中麺を用いて製麺したうどんについて評価したが、実施例1、2及び4の方法で製造した中麺を用いて製麺したうどんについても同様の評価を得ることができる。
(3)麺の湯伸び評価(チルド麺の官能評価)
上記(2)の方法で茹でたうどん(30秒間水洗いし水切りした麺)を、1晩冷蔵庫(4℃)に低温保存した(実施例2−2)。これを翌日、冷たい状態で試食し、うどんの食感(表面の滑らかさ[つるみ]、芯部分のコシ[粘弾性])を上記評価基準に沿って4段階評価した。また、低温保存したうどんを30秒間湯煎して再加熱した後、うどんスープに入れ、直後(T=0)と5分後(T=5)に試食し、それぞれの時点(T=0、T=5)におけるうどんの食感についても同様に4段階評価した。なおこの評価も上記と同じ5名のパネルで行った。結果を表4に示す。
Figure 0006463406
表4に示すように、低温保存後(チルド後)、そのまま食べても、実施例2−2のうどん(チルド麺)は対照例と比較して芯部分のコシ(粘弾性)がやや保持されており、うどん製麺時に中麺を配合することによってコシ低下が抑制されていることが確認された。またこれを再加熱すると、表面の滑らかさ及び芯部分のコシは回復し、両方ともに対照例よりも良好であった。このことから、再加熱して食されるチルド麺についても、製麺時に中麺を配合することによって食感(表面の滑らかさ、芯部分のコシ)の低下が有意に抑制されていることが確認された。なお、ここでは麺として実施例3の方法で製造した中麺を用いて製麺したうどん(チルド麺)について評価したが、実施例1、2及び4の方法で製造した中麺を用いて製麺したうどん(チルド麺)についても同様の評価を得ることができる。
実験例3:粉末状中麺を用いた麺(パスタ)の製造、及びその評価
(1)製麺
実施例3により製造した粉末状中麺を、小麦粉(デュラムセモリナ)を含む全原料(100質量%)中の割合が5質量%になるように用いて(製麺に使用する小麦粉100質量部に対する粉末状中麺の割合5.26質量部)、パスタを製造した。
具体的には、まず小麦粉(デュラムセモリナ)95質量%と粉末状中麺5質量%からなる原料粉(実施例6)、及び小麦粉(デュラムセモリナ)(100質量%)からなる原料粉(対照例)をそれぞれ準備し、これらの各原料粉にそれぞれ原料粉100質量部に対する水の割合が26質量部になる割合で水を添加し、真空ミキサーで12分間ミキシングして生地を作製した。作製した生地を押し出し成型機のダイズから圧力80kg/cm2で押し出し、温度70℃、湿度80%の条件、次いで60℃、湿度70%の条件で麺の水分含量が13%となるまで乾燥し、直径1.6mmのパスタ(スパゲッティ)を作製した。
(2)麺の湯伸び評価(茹で麺の官能評価)
上記製麺方法で製造したパスタ麺(乾麺)(実施例3−1、対照例)を沸騰した湯に入れて7分間茹で(茹で歩留まり235%)、水を切った後、茹で麺100質量部に対して2質量部の割合でオリーブオイルを添加して和え、全体に馴染ませた後、直後(T=0)と5分後(T=5)に試食し、それぞれの時点(T=0、T=5)におけるパスタ麺の食感(表面のハリ、芯部分のコシ[弾力]、歯切れ感)を下記の基準により4段階評価した。
[表面のハリ]
4:表面にしっかりしたハリがある
3:表面にハリがある
2:表面のハリがやや弱い
1:表面のハリが弱い
[芯部分のコシ(弾力)]
4:芯部分に強いコシがある
3:芯部分にコシがある
2:芯部分のコシがやや弱い
1:芯部分にコシがない
[歯切れ感]
4:歯切れがとてもよい
3:歯切れがよい
2:歯切れがやや悪い
1:歯切れが悪い
結果を表5に記載する。結果は5名のパネルの評価の平均値から下記の基準に従って示した。
◎:平均値が4以上
○:平均値が3以上4未満
△;平均値が2以上3未満
×:平均値が1以上2未満
Figure 0006463406
表5に示すように、茹でた直後(T=0)及び茹でてから5分経過後(T=5)のいずれも、対照例よりも実施例6のほうが芯部コシ(弾力性)が保持されており良好であった。また、茹でてから5分経過後(T=5)は、対照例よりも実施例6のほうが歯切れ感も良好であった。このことから、パスタ製麺時に中麺を配合することによって、特に湯伸びによる芯部コシ並びに歯切れ感の低下が抑制されることが確認された。なお、ここでは麺として実施例3の方法で製造した中麺を用いて製麺したパスタについて評価したが、実施例1、2及び4の方法で製造した中麺を用いて製麺したパスタ麺についても同様の評価を得ることができる。
実験例4:粉末状中麺を用いた冷凍うどんの製造、及びその評価
(1)製麺
実施例3により製造した粉末状中麺を、全原料粉(100質量%)中の割合が5質量%になるように用いて(製麺に使用する小麦粉100質量部に対する粉末状中麺の割合5.26質量部)、うどんを製造した。
具体的には、まず小麦粉95質量%と粉末状中麺5質量%からなる原料粉(実施例6)、及び小麦粉(100質量%)からなる原料粉(対照例)をそれぞれ準備し、これらの各原料粉にそれぞれ原料粉100質量部に対する水の割合が36質量部になる割合で水を添加し、真空度0.079Mpaの条件下でピンミキサーを用いて10分間ミキシングして生地を作製した。なお、この水には原料粉100質量部に対して6質量部になる割合で食塩が添加されている。作製した生地をロール機に通して帯状の生地に成形し、次いで切り出し機を用いて幅3.3mm、厚さ3.0mmの麺を作製した。
(2)冷凍うどんの調製
上記製麺方法で製造した各うどん麺(生麺)(実施例、対照例)を沸騰した湯に入れて11分間茹で、その後1分間水洗いし、2分間冷水に浸漬し、水切りした。調製した茹で麺をアルミトレーに入れて、急速冷凍処理を行い、冷凍うどん(茹で冷凍うどん)(実施例4−1、対照例)を調製した。
(3)麺の湯伸び評価(茹で麺の官能評価)
上記で調製した冷凍うどん(実施例4−1、対照例)を、手鍋に入れたうどんスープの中に入れて加熱し、沸騰から1分経過後にどんぶりに移して、再調理直後(T=0)と再調理から5分後(T=5)に試食し、それぞれの時点(T=0、T=5)におけるうどんの食感(表面の滑らかさ[つるみ]、芯部分のコシ[粘弾性])を実験例2と同様に5名のパネルを使用して同じ基準で評価した。
結果を表6に記載する。
Figure 0006463406
表6に示すように、小麦粉中麺を配合して調製したうどん(実施例4−1)は、冷凍保存後に再調理した場合でも、うどんの特徴である表面の滑らかさやコシが良好に維持されており、また湯伸びによるこれらの低下も認められなかった。このことから、加熱加工後、冷凍された状態で保存・流通される冷凍麺についても、製麺原料として小麦粉と本発明の小麦粉中麺を併用することで湯伸び耐性を付与することができ、湯伸び抑制効果を有する湯伸び耐性麺(冷凍麺)が製造できることが確認された。なお、ここでは麺として実施例3の方法で製造した中麺を用いて製麺した冷凍うどんについて評価したが、実施例1、2及び4の方法で製造した中麺を用いて製麺した冷凍うどんについても同様の評価を得ることができる。

Claims (7)

  1. 粉末状の小麦粉中麺からなる、麺の湯伸び抑制剤。
  2. 原料粉に粉末状の小麦粉中麺を配合して製麺する工程を有する麺の製造方法。
  3. 原料粉に対する小麦粉中麺の配合割合が、原料粉に含まれる小麦粉100質量部に対して1〜25質量部(乾燥換算)である請求項2記載の製造方法。
  4. 原料粉に粉末状の小麦粉中麺を配合して製麺することを特徴とする、麺に湯伸び耐性を付与する方法。
  5. 原料粉に対する小麦粉中麺の配合割合が、原料粉に含まれる小麦粉100質量部に対して1〜25質量部(乾燥換算)である請求項4記載の方法。
  6. 上記麺が中華麺、うどん、きしめん、そうめん、ひやむぎ、またはパスタである、請求項2〜5のいずれかに記載する方法。
  7. 上記麺が生麺、半生麺、乾燥麺、チルド麺または冷凍麺である請求項2〜6のいずれかに記載する方法。
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