JP6459373B2 - 積層膜付き透明基板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、積層膜付き透明基板およびその製造方法に関し、特には高遮熱性、低断熱性および高演色性に加えて耐久性に優れた積層膜付き透明基板およびその製造方法に関する。
暑熱地域、例えば、東南アジア等の低緯度から中緯度の地域における建築用窓ガラスの省エネルギー性能を考える場合、高い遮熱性能を有するとともに、適度な可視光透過率を有することが求められる。一方で、断熱性能に関しては寒冷地域と異なり意識されない。寒冷地域では室内と室外の気温差が非常に大きく、室外への熱の流出量が多いため高断熱性能が望まれるが、暑熱地域では温度差が比較的小さく室内への熱の流入量が少ないため高断熱性能の必要性は低い。そのため、建築用窓ガラスには、適度な可視光透過率、高い遮熱性能が求められることになる。
ここで、窓ガラスに高遮熱性能を持たせるためには放射率を低くすることが必要とされるが、建築用窓ガラスには、様々な光学特性も満たすことが要求される。具体的には、透過して見る色が着色せず自然に見えること、反射色が好まれる色であること、可視光の透過率が所定の範囲であること、室外側の反射率と室内側の反射率が共に所定の範囲以下であることが挙げられる。
上記機能を達成する窓ガラスとして、ガラス基板に、銀を主成分として含有する金属層を含む銀系光学多層膜を成膜した単板の窓ガラスが考えられる。しかしながら、従来、銀系光学多層膜は、高断熱性能を有する複層ガラスの内側に設けられて使用されて高遮熱性能を発揮していたものであり、これが露出した状態では化学的耐久性および機械的耐久性が十分に得られない点で問題であった。
また、例えば、緑色や青色に着色された熱線吸収ガラスに化学的耐久性および機械的耐久性を備えるドープ酸化錫等を含む遮熱膜を成膜したガラス物品が知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなガラス物品では、高可視光透過率、高遮熱性能が得られているが、演色性が十分でない点で問題であった。
このように、ガラス基板のような透明基板と各種コーティング膜の組み合わせにおいて、低緯度から中緯度の暑熱地域における窓ガラスとしての使用に適した上記各種特性を満足する、透明基板とコーティング膜を組み合わせた遮熱性の高い窓ガラスが得られていないのが現状であった。
特表2005−529823号公報
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、低緯度から中緯度の暑熱地域における単板での使用に適した、適度な可視光透過率を有するとともに、高遮熱性および高演色性に加えて耐久性に優れる積層膜付き透明基板およびその製造方法の提供を目的とする。
本発明の積層膜付き透明基板は、透明基板と、前記透明基板上に、透明導電層と膜厚が10nm超の窒素含有光吸収層とが積層された積層膜とを有する。
本発明は、前記透明基板上に、以下の熱処理によってそれぞれ前記透明導電層および前記窒素含有光吸収層となる、前記透明導電層の前駆層および前記窒素含有光吸収層の前駆層を形成してコーティング付き透明基板を得るコーティング工程と、前記コーティング付き透明基板を、550〜750℃の大気中で1〜30分間、または150〜450℃大気中で15分間〜4時間、熱処理する熱処理工程とを具備する上記本発明の積層膜付き透明基板の製造方法を提供する。
本発明によれば、低緯度から中緯度の暑熱地域における単板での使用に適した、適度な可視光透過率を有するとともに、高遮熱性および高演色性に加えて耐久性に優れる積層膜付き透明基板およびその製造方法を提供できる。
積層膜付き透明基板の実施形態の一例を示す断面図である。 積層膜付き透明基板の実施形態の別の一例を示す断面図である。 本発明の積層膜付き透明基板の一例を窓ガラスとして使用した際の断面図である。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、下記説明に限定して解釈されるものではない。
[積層膜付き透明基板]
図1は、本発明の積層膜付き透明基板の実施形態の一例を示す断面図である。図2は、本発明の積層膜付き透明基板の実施形態の別の一例を示す断面図である。
図1に示す積層膜付き透明基板10Aは、透明基板11上に積層膜12Aを有し、積層膜12Aは、透明基板11側から順に、透明導電層13および窒素含有光吸収層14が成膜されて構成される。
(透明基板)
透明基板11は、特に限定されず、例えば、建築物用の窓ガラスや通常使用されるフロートガラス、またはロールアウト法によって製造されるソーダ石灰ガラス等の無機質の透明性を有するガラス基板を使用できる。ガラス基板としては、クリアガラス、高透過ガラス等の無色のもの等が使用できる。透明基板11として、有機質の透明基板を用いてもよい。有機質の透明基板としては、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂やポリフェニレンカーボネート等の芳香族ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の芳香族ポリエステル系樹脂等からなる透明基板が挙げられる。
積層膜付き透明基板10Aとしての可視光透過率(Tv)を、適度な範囲、例えば後述する35〜65%とする場合には、透明基板11の可視光透過率(Tv)は、80〜92%が好ましく、83〜90%がより好ましい。このような可視光透過率を考慮すると、透明基板11は、クリアガラス、高透過ガラス等の無色ガラスが好ましい。また、高い演色性を得る観点からも無色ガラスが好ましい。
本明細書において、可視光透過率(Tv)は、ISO9050:2003に準拠して測定される。また、本明細書において光学特性は、特に断りのない限り、光源として「D65光源10度視野」にて測定して得られるものである。
透明基板11としては、また、風冷強化ガラス、化学強化ガラス等の各種強化ガラスも使用できる。さらには、ホウケイ酸塩ガラス、低膨張ガラス、ゼロ膨張ガラス、低膨張結晶化ガラス、ゼロ膨張結晶化ガラス等の各種ガラスを用いることができる。透明基板11の厚さは、必ずしも限定されないが、透明基板11自体の可視光透過率(Tv)を上記範囲とでき、かつ十分な機械的強度を確保できる厚さが好ましく、例えば0.5〜20mmが好適である。
透明導電層13としては、例えば、透明基板11上に透明な層を形成できる金属酸化物であって、導電性を具備するもの(以下、「透明導電性金属酸化物」という。)を主体とする層であれば特に限定されない。
透明導電性金属酸化物としては、例えば、金属酸化物自体を構成する金属以外の元素がドープされた金属酸化物が挙げられる。具体的には、スズ、チタン、タングステン、モリブデン、亜鉛および水素から選ばれる少なくとも1種がドープされた酸化インジウム;アンチモン、インジウム、タンタル、塩素およびフッ素から選ばれる少なくとも1種がドープされた酸化スズ;インジウム、アルミニウム、スズ、ガリウム、フッ素およびホウ素から選ばれる少なくとも1種がドープされた酸化亜鉛等が挙げられる。上記透明導電性金属酸化物は1種を単独で用いて、または2種以上を併用して、透明導電層13を形成してもよい。
透明導電層13は、低抵抗とできる観点からスズがドープされた酸化インジウム(ITO)を主体とする透明導電性金属酸化物からなることが好ましく、ITOのみからなることがより好ましい。ITOにおけるスズのドープ量としては、InとSnOとの総量に対するSnOの含有量として1〜20質量%が好ましく、5〜15質量%がより好ましい。
透明導電層13の厚さは、得られる積層膜付き透明基板10Aが適度な可視光透過率を有するとともに、高遮熱性および高演色性を達成できる厚さであれば特に制限されない。透明導電層13の厚さは、例えば、10〜600nmであってよく、10〜200nmであることが好ましく、50〜150nmであることがより好ましい。
透明導電層13の形成方法は特に制限されないが、通常、後述するように熱処理を伴う方法で作製される。透明導電層13の熱処理前の態様を透明導電層13の前駆層という。透明導電層13の前駆層と熱処理後の透明導電層13はほぼ同様の組成であるが、熱処理時に雰囲気中や透明基板中に含まれる酸素により適度に酸化されることで酸化度が調整され、所望の抵抗値の透明導電層13が形成される。通常、熱処理において、該熱処理が透明導電層の厚さに影響を及ぼすことはない。また、透明導電層13の厚さ、すなわちその前駆層の厚さが、上記厚さであると、層の深さ方向で酸化の程度に不均一が生じないという効果を奏する。
窒素含有光吸収層14は、例えば、透明基板11上に成膜可能な金属の窒化物および/または酸窒化物からなる光吸収性を具備するもの(以下、「窒素含有光吸収性金属化合物」という。)を主体とする層であれば特に限定されない。
図1に示す積層膜付き透明基板10Aにおいては、透明基板11側から順に、透明導電層13および窒素含有光吸収層14が形成されている。なお、得られる積層膜付き透明基板10Aとして、適度な可視光透過率を有するとともに、高遮熱性および高演色性を達成できるのであれば、透明基板11側から窒素含有光吸収層14、透明導電層13の順で形成されてもよい。
窒素含有光吸収層14が有する光吸収性としては、可視光領域から赤外領域にかけて広範囲に適度な量の光を吸収する性質が好ましい。窒素含有光吸収層14がこのような光吸収性を有することで、得られる積層膜付き透明基板10Aは、適度な可視光透過率を有するとともに、高遮熱性および高演色性を達成できる。
積層膜付き透明基板10Aにおいては、透明導電層13と窒素含有光吸収層14は互いに接するように設けられている。このような構成とすれば、例えば、上記熱処理を伴う製造方法により積層膜付き透明基板10Aを製造する際の熱処理時に、窒素含有光吸収層14と透明導電層13で酸素の受け渡しが発生し、透明導電層13の酸化度を適度に調整する役割を果たすことができる。すなわち、製造の過程において、熱処理時に透明導電層13の前駆層に過剰に酸素が含まれていても、窒素含有光吸収層14の前駆層に酸素を受け渡すことで、酸化度がより好ましい程度に調整されて、最終的に抵抗が低い透明導電層13が得られると考えられる。
なお、この場合、窒素含有光吸収層14を構成する窒素含有光吸収性金属化合物は、その前駆層を構成する成分が上記熱処理時に酸化されて得られる成分である。ここで、窒素含有光吸収層14が透明導電層13と接しておらず、酸素の受け渡しを遮る能力を持つ層(以下酸素バリア層)が存在する場合には、上記熱処理後の窒素含有光吸収層14を構成する窒素含有光吸収性金属化合物の酸化度は、透明導電層13と接している場合に比べて低い。
窒素含有光吸収層14を主として構成する窒素含有光吸収性金属化合物として、具体的には、窒化ジルコニウム、窒化クロム、窒化チタン、窒化ニオブ、窒化ハフニウム、酸窒化ジルコニウム、酸窒化クロム、酸窒化チタン、酸窒化ニオブ、および酸窒化ハフニウム等が挙げられる。窒素含有光吸収性金属化合物としては、上に例示した金属窒化物が好ましい。窒素含有光吸収性金属化合物が、上に例示した金属の酸窒化物である場合、該化合物中の窒素1モルに対する酸素の割合は0.5モル以下が好ましく、0.2モル以下がより好ましい。上記窒素含有光吸収性金属化合物は1種を単独で用いて、または2種以上を併用して、窒素含有光吸収層14を形成してもよい。
窒素含有光吸収層14は窒化チタンを主体とする窒素含有光吸収性金属化合物からなることが好ましく、窒化チタンまたは酸窒化チタンのみからなるものが好ましい。なお、窒化チタンは必ずしも化学量論的な組成比の窒化チタン(Ti:N=1:1)からなる必要はなく、例えば、組成比がこれからずれた所謂非化学量論的な組成比の窒化チタンからなるものでもよい。上記した他の金属の窒化物についても同様である。また、本明細書において、窒化+金属名、酸化+金属名で表記される金属の窒化物や酸化物は、特に断りのない限り化学量論的な組成比または非化学量論的な組成比の窒化物や酸化物を示す。必要に応じて、例えば、窒化チタンであればTiNのように記載することもある。
また、例えば、窒素含有光吸収層14の前駆層を窒化チタンで構成し、これを上記のように熱処理した場合は、前駆層の窒化チタンは酸化され酸窒化チタンとなる。すなわち、このようにして得られる窒素含有光吸収層14は酸窒化チタンからなり、この場合、上記同様に窒素1モルに対する酸素の割合は0.5モル以下が好ましく、0.2モル以下がより好ましい。
窒素含有光吸収層14の厚さは、得られる積層膜付き透明基板10Aが適度な可視光透過率を有するとともに、高遮熱性および高演色性を達成できる厚さであれば特に制限されない。そのために、窒素含有光吸収層14の厚さは、10nm超であり、20〜60nmが好ましく、25〜50nmがより好ましい。なお、上記好ましい範囲は、図1に示す積層膜付き透明基板10Aのように、透明基板11側から順に、透明導電層13および窒素含有光吸収層14が形成されている場合である。上に示した透明導電層13の厚さも該積層順における好ましい厚さである。
透明導電層13および窒素含有光吸収層14が透明基板11側から窒素含有光吸収層14、透明導電層13の順で形成されている場合は、窒素含有光吸収層14の厚さは、10nm超であり、20〜60nmが好ましく、25〜50nmがより好ましい。また、この場合、透明導電層13の厚さは、10〜200nmが好ましく、50〜150nmがより好ましい。
図2は、図1に示す積層膜付き透明基板10Aにおいて透明基板11上に積層膜12Aの代わりに積層膜12Bが成膜された構成の積層膜付き透明基板10Bの断面図を示す。積層膜12Bは、透明基板11側から順に、透明導電層13、窒素含有光吸収層14および誘電体層15が成膜されて構成されている。積層膜12Bは、誘電体層15以外は、積層膜12Aと同様とできる。
誘電体層15は、積層膜12Bの機械的耐久性、化学的耐久性を向上させ、窒素含有光吸収層14が雰囲気中の酸素によって酸化されることを抑制する機能を有する。誘電体層15としては、上記機能を有するものであれば特に制限されないが、例えば、アルミニウム、ホウ素等がドープされていてもよい窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の金属窒化物、アルミニウム、ホウ素等がドープされていてもよい酸窒化ケイ素、酸窒化アルミニウム等の金属酸窒化物、スズ亜鉛酸化物等の金属酸化物等から選ばれる金属化合物を含む誘電体で構成できる。
窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、アルミニウムおよび/またはホウ素がドープされた窒化ケイ素または酸窒化ケイ素、窒化アルミニウム、酸窒化アルミニウム、スズ亜鉛酸化物から選ばれる少なくとも1種を主体とする誘電体層15が好ましい。上記誘電体である金属化合物は1種を単独で用いて、または2種以上を併用して、誘電体層15を形成してもよい。
なお、上記窒化チタン同様、窒化ケイ素は、必ずしも化学量論的な組成比の窒化ケイ素(Si:N=3:4)からなる必要はなく、例えば組成比がこれからずれた非化学量論的な組成比の窒化ケイ素からなるものでもよい。窒化アルミニウムも同様である。
誘電体層15は、アルミニウムおよび/またはホウ素がドープされた窒化ケイ素を主体とする材料で構成されることが特に好ましい。アルミニウムやホウ素は、通常、窒化ケイ素のスパッタリングを容易にするためにスパッタリングターゲットに添加されて用いられる添加元素である。添加元素の含有量は、窒化ケイ素と添加元素との合計量中、15質量%以下が好ましい。
誘電体層15の厚さは、得られる積層膜付き透明基板10Bが適度な可視光透過率を有するとともに、高遮熱性および高演色性を達成できる厚さであれば特に制限されない。誘電体層15の厚さは、具体的には、20〜80nmが好ましく、30〜70nmがより好ましい。
図2に示す積層膜付き透明基板10Bにおいては、透明基板11側から順に、透明導電層13、窒素含有光吸収層14および誘電体層15が形成されている。上記積層膜付き透明基板10Aと同様、積層膜付き透明基板10Bにおいても、上記積層膜を構成する各層は、適度な可視光透過率を有するとともに、高遮熱性、低断熱性および高演色性を達成できるのであれば、透明基板11側から窒素含有光吸収層14、透明導電層13および誘電体層15の順で形成されてもよい。
積層膜付き透明基板における積層膜が、透明導電層、窒素含有光吸収層および誘電体層を有する場合、積層膜における上記3層の積層順は、透明基板側から順に透明導電層、窒素含有光吸収層および誘電体層とすることが好ましい。このような積層膜とすることで、透明基板側の反射光の色調を透明導電層の膜厚により調整でき、積層膜側の反射光の色調を誘電体層の膜厚により調整できるという利点を有する。
なお、誘電体層15の厚さは、積層膜12Bが、透明基板11側から、透明導電層13、窒素含有光吸収層14および誘電体層15の順で形成される場合と、透明基板11側から、窒素含有光吸収層14、透明導電層13、および誘電体層15の順で形成される場合とで違いはない。
積層膜付き透明基板10Bの誘電体層15については、上記積層膜付き透明基板10Aと同様に熱処理を伴う製造方法により積層膜付き透明基板10Bを製造する場合、誘電体層15の前駆層と熱処理後の誘電体層15はほぼ同様の組成であるが、熱処理時に雰囲気中や透明基板中に含まれる酸素により適度に酸化される。
積層膜付き透明基板10Bにおいて、積層膜が、透明基板11側から窒素含有光吸収層14、透明導電層13および誘電体層15の順で形成されている場合、透明導電層13と誘電体層15は互いに接する構成になる。このような構成とすれば、例えば、上記熱処理を伴う製造方法により積層膜付き透明基板10Bを製造する際の熱処理の雰囲気が大気であるように酸素を含む場合、熱処理時に、窒素含有光吸収層14および誘電体層15が、透明導電層13が過度に酸化されるのを防止または抑制する役割を果たすことができる。すなわち、製造の過程において、熱処理時に透明導電層13の前駆層は、大気中の酸素や透明基板10Bに含まれる酸素によって酸化されるが、窒素含有光吸収層14および誘電体層15が適度に酸素を遮断することで、酸化度がより好ましい程度に調整されて、最終的に抵抗が低い透明導電層13が得られると考えられる。
なお、この場合、上記のとおり窒素含有光吸収層14を構成する窒素含有光吸収性金属化合物は、その前駆層を構成する成分が上記熱処理時に酸化されて得られる成分である。誘電体層15を構成する誘電体である金属化合物は、その前駆層を構成する成分が上記熱処理時に酸化されて得られる成分である。
なお、図示しないが、積層膜12Aや積層膜12Bには、上記した各層に加えて、必要に応じて、かつ本発明の趣旨に反しない限度において、他の層を成膜してもよい。例えば、透明基板11と透明導電層13との間、透明導電層13と窒素含有光吸収層14との間、窒素含有光吸収層14と誘電体層15との間に、バリア層等として機能する金属層、酸化物層、窒化物層、炭化物層、またはこれらの複合化合物層を設けてもよい。具体的には、チタン、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、クロム、亜鉛、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ケイ素、またはスズ等の元素を含有する金属層、酸化物層、窒化物層、炭化物層、または複合化合物層が挙げられる。
本発明の積層膜付き透明基板は、上記構成を有することで、適度な可視光透過率を有するとともに、高遮熱性および高演色性を達成でき、さらに耐久性に優れる。本発明の積層膜付き透明基板は、このような特性を有することで、例えば、図3に示すように、単板で窓ガラスとして使用できる。図3は、本発明の積層膜付き透明基板の一例を単板で窓ガラスとして使用した際の断面図を示す。図3に示す窓ガラス30は、透明基板11と透明基板11上に成膜された積層膜12を有する積層膜付き透明基板10からなり、積層膜12が室内側の大気に露出した状態で使用される。
本発明の積層膜付き透明基板は、具体的には、以下の特性を満足することが好ましい。
本発明の積層膜付き透明基板においては、ISO9050:2003に準拠して測定される、Total solar energy transmittance(g値)は、0.44以下が好ましく、0.40以下がより好ましく、0.34以下が特に好ましい。ここで、図3のようにして積層膜付き透明基板を使用する場合、g値は、積層膜付き透明基板の透明基板側から入射した日射熱を1としたときの積層膜側に放出される日射熱の割合を示す値である。g値により、遮熱性、すなわち太陽光によって生じる熱(日射熱)をどの程度遮断するかを知ることができる。
本発明の積層膜付き透明基板においては、g値は、透明基板側から入射した日射熱量に対する、直接透過する熱(以下「透過熱」ともいう。)と、吸収されてその後積層膜側へ放出される熱(以下、「輻射熱」ともいう。)との合計の熱量の割合である。g値は、0から1の間の数で表される。なお、g値は、具体的には積層膜付き透明基板における分光特性を測定し、所定の計算式に導入することで算出できる。g値が小さいほど、積層膜付き透明基板において透明基板側から入射した日射熱量に対する、透過熱および輻射熱の合計の熱量の割合が少なくなる。
本発明の積層膜付き透明基板においては、ISO9050:2003に準拠して測定される、可視光透過率(Tv)は35%以上であることが好ましい。可視光透過率(Tv)は、昼間の日射が強い東南アジア等の低緯度から中緯度の地域における窓ガラスに求められる防眩性の観点から65%以下が好ましい。可視光透過率(Tv)は、40〜60%が特に好ましい。
建物の窓の設計については、建物側面の全面積における窓の面積の割合が大きい方が、太陽光から建物内部により多くの可視光を取り込むことが可能であるが、同時に取り込まれる日射熱量も多くなる。一般的な大型建築物においては、WWR(Window to Wall Ratio)と呼称される建物側面の全面積における窓の面積の割合が、0.4以上の建物が多く、0.7を超える建物も多く存在する。
ここで、低緯度から中緯度の暑熱地域において、建物側面から外部の熱が窓や壁を通して建物内部に伝わる熱量と、日射熱として窓から入り込む熱量の合計量を建物側面の全面積(壁と窓の合計面積)で除した値としてOTTV(Overall Thermal Transfer Value)が知られている。近年、建物の省エネルギー性能を上げる要求が高まってきており、OTTVを50W/m以下とすることが一つの目安となりつつある。一般的に壁に比べて窓は熱の流入出が多いため、OTTVが50W/mを満たすためには壁の割合を増やし、WWRを低くせざるをえなかった。つまり窓からの熱流入出をへらすことができれば、OTTVが50W/m以下を満たしながらWWRを大きくすることができる。
図3のようにして積層膜付き透明基板を使用する場合、窓ガラス30を構成する積層膜付き透明基板10におけるg値が上記の好ましい範囲にあることで、例えば、OTTVを50W/m以下とすることができるWWRの範囲を0.3程度まで広くすることが可能となる。また、g値が0.4以下であればWWRを0.35程度まで広くすることが可能となり、g値が0.34以下であればWWRを0.4程度まで広げることが可能となる。
なお、上記の例示においては、窓からの採光性を高めることを目的として、WWRを0.3以上としている。WWRが概ね0.3以上の建物であれば、可視光透過率(Tv)を上記の範囲とすることで、建物内への採光を十分とすることができる。採光性の観点からはWWRが高い方が好ましい。
また、上記g値および可視光透過率(Tv)を用いて、Tv/(g値×100)の式で算出される選択係数により、可視光透過率(Tv)とg値の良好なバランス関係を見積もることができる。適度な可視光透過性かつ高遮蔽性を実現できる観点から、本発明の積層膜付き透明基板において、選択係数は1.1以上が好ましく、より好ましくは、1.2以上である。
さらに、本発明の積層膜付き透明基板においては、JIS Z8726(1990)に準拠してD65光源を使用し平均演色性評価数(Ra)により評価される透過光の演色性が90%以上であることが好ましい。このようにして評価される演色性が90%以上であることで、図3のようにして積層膜付き透明基板を使用する場合、建物の外側から窓ガラス30を見た際の外観が自然な中間色となる。演色性は92%以上が好ましく、94%以上がより好ましい。なお、本明細書において、特に断りのない限り「演色性」は、上記方法で測定された演色性をいう。
本発明の積層膜付き透明基板においては、耐久性、特に化学的耐久性の観点から、ISO12870に準拠した3日間の耐汗試験後に上記積層膜表面を顕微鏡(50倍)で観察して計測される、1mm×1mmの範囲における欠点数(以下、単に「耐汗試験による欠点数」という。)が50以下であることが好ましい。
耐汗試験は、具体的には、乳酸50g/L、および塩化ナトリウム100g/Lを含有する人工汗液を密閉容器中に注入するとともに、この密閉容器中に人工汗液から離して積層膜付き透明基板を配置し、密閉状態にして55±5℃で3日間保持した後の、積層膜表面を顕微鏡で観察することにより行うことができる。
なお、顕微鏡(50倍)で観察される上記耐汗試験後の欠点は、具体的には、変色および剥離である。本明細書において耐汗試験で評価される欠点数は、特に断りのない限りこの2者の個数の合計をいう。なお、これらの判定は目視で行うこととする。上記耐汗試験による欠点数としては5以下であることがより好ましい。
本発明の積層膜付き透明基板においては、透明基板側の反射光の色調は、CIE1976L色度座標において全反射角にわたってaが5以下であることが好ましく、aは2以下がより好ましい。透明基板側の反射光の色調において全反射角にわたってaが5以下であれば、図3のようにして積層膜付き透明基板を使用する場合、建物の外側から窓ガラス30を見た際にいずれの角度から見ても反射光の赤味が抑制されるために好ましい。
なお、特に透明基板側の反射色、建物の外観に大きな影響を与えるため、様々な色を設計可能なことが好ましく、具体的には反射角0度の反射光の色調において、緑色調であれば−20≦a≦−5かつ−5≦b≦2の範囲、青色調であれば−7≦a≦2−25≦b≦−7の範囲、無彩色であれば−4≦a≦2かつ−4≦b≦2の範囲が好ましい。なお、反射角0度の反射光とは積層膜面に対して直交する向きの反射光をいう。ここで反射角0度の反射色調を記載したが、現実には0度の反射を測定することはできないので、0度とほとんど色が変わらない5〜15度の反射角度にて反射光測定を行うのが一般的である。以下でも、便宜的に反射角0度と記載するが、反射角5〜15度のいずれの角度を用いても違いは生じない。
また、本発明の積層膜付き透明基板においては、積層膜側の反射角0度の反射光の色調は、CIE1976L色度座標においてaが5以下であることが好ましく、aは2以下がより好ましい。積層膜側の反射角0度の反射光の色調においてaが5以下であれば、図3のようにして積層膜付き透明基板を使用する場合、室内側から窓ガラス30を見た際に反射光の赤味が抑制されるために好ましい。また、上記においてaは0以上が好ましい。さらに、黄色味を抑制するためには、上記においてbは0以下が好ましく、−35≦b≦0がより好ましく、−35≦b≦−10がさらに好ましい。
さらに、本発明の積層膜付き透明基板においては、透明基板側の可視光反射率(Rv)は20%以下が好ましく、積層膜側の可視光反射率(Rv)は15%以下が好ましい。なお、可視光反射率(Rv)は、ISO9050:2003に準拠して測定されるものである。
本発明の積層膜付き透明基板は、上記構成の積層膜が透明基板上に成膜されていれば製造方法は特に限定されない。本発明の積層膜付き透明基板は、例えば、上記透明基板上に、以下の熱処理によってそれぞれ上記透明導電層および上記窒素含有光吸収層となる、上記透明導電層の前駆層および上記窒素含有光吸収層の前駆層を形成してコーティング付き透明基板を得るコーティング工程と、前記コーティング付き透明基板を、550〜750℃の大気中で1〜30分間熱処理する、または、150〜450℃の大気中で15分間〜4時間熱処理する熱処理工程とを具備する方法により製造できる。
積層膜付き透明基板の、積層膜が誘電体層を有する場合は、上記コーティング工程において、上記熱処理によって上記誘電体層となる上記誘電体層の前駆層を上記2つの前駆層とともに形成する。積層膜付き透明基板が他の層を有する場合もこれと同様にできる。
上記方法で積層膜付き透明基板を製造する場合、まず、コーティング工程において、透明基板の表面を清浄化処理した後、この表面に各層の前駆層を成膜する。成膜方法は、特に限定されず、物理的蒸着法(真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法)、化学的蒸着法(熱CVD法、プラズマCVD法、光CVD法)、イオンビームスパッタリング法等を適用できる。透明基板の面積が大きい場合、厚さの均一性が制御しやすく、生産性に優れることから、直流または交流デュアルスパッタリング法が好ましい。
例えば、スパッタリング法によって透明導電層の前駆層を形成する場合、透明導電性金属酸化物のターゲットを用い、通常の処理条件で透明導電層の前駆層を形成することができる。スパッタガス種、反応温度、反応時間を調整することで厚さを調整することができる。同様にして、窒素含有光吸収層の前駆層と誘電体層の前駆層を形成する。各前駆層の積層順は上記得られる積層膜の積層順と同様にできる。
なお、以下の熱処理工程における雰囲気により、上記各層の前駆層の形成に用いるターゲット等の材料の組成を適宜調整する。熱処理工程で酸化性ガスを含まない不活性ガス雰囲気や真空雰囲気などに制御された雰囲気が設定可能な場合には、得られる透明導電層、窒素含有光吸収層、誘電体層を構成する材料の組成は、前駆層の構成材料の組成と同様である。熱処理工程における雰囲気が大気等の酸化性ガスを含む場合には、熱処理時の材料の酸化等を考慮して、最終的に得られる透明導電層、窒素含有光吸収層、誘電体層等の材料組成が所定の組成となるように前駆層の材料組成を選択する。
次いで、上記コーティング付き透明基板を熱処理する。熱処理温度は550〜750℃が好ましく、600〜750℃がより好ましく、600〜720℃が特に好ましい。熱処理がこのような温度の場合、透明基板としてはガラス基板が用いられ、積層膜付き透明基板として、十分な信頼性を持って強化されたものが得られるという効果を奏する。
上記熱処理温度はまた150〜450℃であってもよい。この場合、200〜400℃がより好ましく、250〜350℃が特に好ましい。熱処理がこのような温度の場合、透明基板としては樹脂基板を用いることも可能である。また、透明基板がガラス基板の場合、強化はできないが、低温処理なので安価な装置を用いることができるという効果を奏する。
熱処理時間は、熱処理温度が550〜750℃の場合には、1〜30分間が好ましい。熱処理温度が150〜450℃の場合には、熱処理時間は、15分間〜4時間が好ましい。熱処理方法は雰囲気に合わせて調整された上記前駆層により、例えば、気密な構造の加熱炉を用いて、酸化性ガスを含まない不活性ガス雰囲気や真空雰囲気などに制御された雰囲気下で熱処理を行う方法または、大気中に設置した加熱炉で上記コーティング付き透明基板を加熱する方法を選択する。大気中に設置した加熱炉、すなわち簡単な構造の加熱炉を用いた熱処理は経済性の点および作業性の点で有利である。
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定しない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。例えば、積層膜付き透明基板は、建築物用に好適であるが、必ずしも建築物用に限られず、適用可能な限度において自動車等の車両用に用いることもできる。
以下、実施例および比較例によって、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
透明基板として、厚さが6.0mmのソーダライムガラス(旭硝子株式会社製、FL6)を用意し、このガラス基板を洗浄後、基板ホルダーにセットした。
InとSnOとの総量に対してSnO含有量が10質量%である複合酸化物焼結体ターゲット(以下、「ITO複合酸化物焼結体ターゲット」ともいう。)および金属Tiターゲット、10質量%のアルミニウムを含む珪素ターゲット(以下、SiAlターゲットとする)を間欠直流マグネトロンスパッタを行うカソードに取り付けた。なお、間欠周期はON時間を5μs、OFF時間を45μsとした。
次に、成膜室内を真空に排気した後、間欠直流マグネトロンスパッタ法により、ITO複合酸化物焼結体ターゲットを用いて、厚さが96nmのITO層をガラス基板上に形成した。ここでスパッタガスとしてアルゴンのみを用い、スパッタ時の圧力は3mTorrとした。成膜されたITO層の組成はターゲットと同等であった。なお、スパッタガスに少量の酸素を導入した。
次に、間欠直流マグネトロンスパッタ法で、金属Tiターゲットを用いて厚さが33nmの窒化チタン層(TiN層)をITO層上に形成した。スパッタガスはアルゴンと窒素を用い、アルゴン/窒素の比率は17/3とした。スパッタ時の圧力は、3mTorrとした。
次に、間欠直流マグネトロンスパッタ法で、SiAlターゲットを用いて厚さが55nmのAlドープ窒化ケイ素層(SiN:Al層)を形成した。ここでスパッタガスとしてアルゴンと窒素を用い、アルゴン/窒素の比率は9/7とした。スパッタ時の圧力は、3mTorrとした。このようにして、ガラス基板上に該ガラス基板側から順に透明導電層の前駆層であるITO層、窒素含有光吸収層の前駆層であるTiN層および誘電体層の前駆層であるSiN:Al層が形成されたコーティング付きガラス基板を作製した。
なお、いずれの層の成膜時にも、ガラス基板の加熱は行わなかった。得られたコーティング付きガラス基板に風冷強化処理、すなわち、電気焼成炉で、大気中、650℃、5分間の熱処理を施し、ガラス基板上に該ガラス基板側から順にITOからなる透明導電層、TiNxが酸化された酸窒化チタンからなる窒素含有光吸収層およびSiNx:Alが酸化されたAlがドープされた酸窒化ケイ素からなる誘電体層が形成された積層膜付き透明基板Aを得た。
(実施例2)
実施例1において、コーティング付きガラス基板として、ITO層の厚さを72nm、窒化チタン層の厚さを42nm、Alドープ窒化ケイ素層の厚さを59nmとしたコーティング付きガラス基板を作製した以外は、実施例1と同様にして積層膜付き透明基板Bを得た。
(実施例3)
実施例1において、コーティング付きガラス基板として、ITO層の厚さを131nm、窒化チタン層の厚さを32nm、Alドープ窒化ケイ素層の厚さを40nmとしたコーティング付きガラス基板を作製した以外は、実施例1と同様にして積層膜付き透明基板Cを得た。
(比較例1)
実施例1において、コーティング付きガラス基板として、ITO層の厚さを96nm、窒化チタン層の厚さを5nm、Alドープ窒化ケイ素層の厚さを55nmとしたコーティング付きガラス基板を作製した以外は、実施例1と同様にして積層膜付き透明基板Dを得た。
(比較例2)
透明基板として、厚さが6mmの緑色の熱線吸収ガラス(旭硝子株式会社製、表1中において「TG」と示す)を作製する際に、ガラスを製造するフロートライン上に設置したChemical Vapor Deposition(CVD)装置にて、SiOC層(80nm)、SbドープSnO層(320nm)をその順に成膜し、積層膜付き透明基板Eを得た。
(比較例3)
透明基板として、厚さが6.0mmのソーダライムガラス(旭硝子株式会社製、FL6)を用い、該透明基板上に実施例1と同様のスパッタ装置により、窒化ケイ素層(10nm)、窒化クロム層(10nm)、窒化ケイ素層(20nm)をその順に成膜し、積層膜付き透明基板Fを得た。
次に、実施例および比較例の積層膜付き透明基板について、以下の評価を行った。結果を積層膜の各層の構成材料および厚さとともに表1に示す。なお、実施例1〜3および比較例1については、積層膜の各層の構成材料は前駆層の構成材料である。
(光学特性)
日立分光光度計(U−4100型)を使用して積層膜付き透明基板の分光測定を行った。ISO9050:2003に準拠して、透明基板から光が入射する場合のg値、可視光透過率(Tv)、透明基板側の可視光反射率(Rv)、および積層膜側の可視光反射率(Rv)を求めた。JIS Z8726(1990)に準拠して平均演色性評価数(Ra)により評価される透過光の演色性を求めた。
また、可視光透過率(Tv)とg値から、選択係数(Tv/(g値×100))を算出した。さらに、積層膜付き透明基板の透明基板側の反射光の色調(Rc)、および積層膜側の反射光の色調(Rc)、具体的には、CIE1976L色度座標のaおよびbを、反射角10度で、JIS Z 8722に準じて測定し、JIS Z 8729に準じて求めた。aおよびbは、透明基板側については全反射角にわたって測定した値のうちの最大値を表1に示した。
(耐久性)
[耐汗試験]
ISO12870に準じて耐汗試験を行った。すなわち、密閉容器中に人工汗液を注入するとともに、この密閉容器中に人工汗液から離して積層膜付き透明基板を配置した後、密閉状態にして55±5℃で3日間保持した。なお、人工汗液は、乳酸50g/L、および塩化ナトリウム100g/Lを含有する。その後、密閉容器から積層膜付き透明基板を取り出して、積層膜表面を顕微鏡(50倍)で観察し、1mm×1mmの範囲における欠点数を目視で計測し、以下の基準で評価した。
<評価基準>
5;欠点数が101個以上
4;欠点数が51〜100個
3;欠点数が31〜50個
2;欠点数が6〜30個
1;欠点数が0〜5個
[耐薬品性試験]
JIS R 3221にしたがい、1N−NaOHおよび1N−HClのそれぞれに積層膜付き透明基板を温度23℃で6時間浸積した後、純水で洗浄する試験を行った。試験前後のヘイズの変化が4%以下の場合を「A」、4%を超えた場合を「C」とした。
[冷熱サイクル]
積層膜付き透明基板に、−30℃×5時間〜80℃×5時間(湿度95%RH)の冷熱サイクルを繰り返し90日間行った。その後、積層膜付き透明基板の外観目視検査を行った。表中、「A」は目視で腐食、膜剥がれ等の劣化が無いこと、「C」は目視で腐食、膜剥がれ等の劣化が有ることを示す。
[耐候性試験]
積層膜付き透明基板の積層膜面に、スーパーキセノンランプ(180W/m)、2000時間照射した。その後、積層膜付き透明基板の外観目視検査を行った。表中、「A」は目視で腐食、膜剥がれ等の劣化が無いこと、「C」は目視で腐食、膜剥がれ等の劣化が有ることを示す。
[耐塩水試験]
積層膜付き透明基板の積層膜面に、5%NaClをスプレー供給しながら4日間保持した後、3日間で乾燥させる操作を1サイクルとして、4サイクルを繰り返して行った。その後、積層膜付き透明基板にの外観目視検査を行った。表中、「A」は目視で腐食、膜剥がれ等の劣化が無いこと、「C」は目視で腐食、膜剥がれ等の劣化が有ることを示す。
[テーバー試験]
積層膜付き透明基板の積層膜面に、JIS R 3221のグループB試験を100回繰り返した。試験前後のヘイズの変化が4%以下の場合を「A」、4%を超えた場合を「C」とした。
Figure 0006459373
10A,10B,10…積層膜付き透明基板、11…透明基板、12A,12B,12…積層膜、13…透明導電層、14…窒素含有光吸収層、15…誘電体層、30…窓ガラス

Claims (7)

  1. 透明基板と、
    前記透明基板上に、透明導電層および窒素含有光吸収層が前記透明基板側からその順に積層された積層膜と
    を有する積層膜付き透明基板であって、
    前記透明導電層の膜厚は50〜150nmであり、かつ前記窒素含有光吸収層の膜厚は25〜50nmである、積層膜付き透明基板
  2. 前記積層膜はさらに前記透明基板側と反対側の最表層に誘電体層を有する請求項1記載の積層膜付き透明基板。
  3. 前記透明導電層は、スズ、チタン、タングステン、モリブデン、亜鉛および水素から選ばれる少なくとも1種がドープされた酸化インジウム;アンチモン、インジウム、タンタル、塩素およびフッ素から選ばれる少なくとも1種がドープされた酸化スズ;インジウム、アルミニウム、スズ、ガリウム、フッ素およびホウ素から選ばれる少なくとも1種がドープされた酸化亜鉛から選ばれる少なくとも1種を主体とする請求項1または2記載の積層膜付き透明基板。
  4. 前記窒素含有光吸収層は、窒化ジルコニウム、窒化クロム、窒化チタン、窒化ニオブ、窒化ハフニウム、酸窒化ジルコニウム、酸窒化クロム、酸窒化チタン、酸窒化ニオブ、および酸窒化ハフニウムから選ばれる少なくとも1種を主体とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層膜付き透明基板。
  5. 前記誘電体層は、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、アルミニウムおよび/またはホウ素がドープされた窒化ケイ素または酸窒化ケイ素、窒化アルミニウム、酸窒化アルミニウム、スズ亜鉛酸化物から選ばれる少なくとも1種を主体とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の積層膜付き透明基板。
  6. 前記積層膜付き透明基板における前記透明基板側の反射光の色調は、CIE1976L色度座標において全反射角にわたってaが5以下であり、前記積層膜側の反射角0度の反射光の色調は、前記色度座標においてaが5以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層膜付き透明基板。
  7. 前記透明基板上に、以下の熱処理によってそれぞれ前記透明導電層および前記窒素含有光吸収層となる、前記透明導電層の前駆層および前記窒素含有光吸収層の前駆層を形成してコーティング付き透明基板を得るコーティング工程と、
    前記コーティング付き透明基板を、550〜750℃の大気中で1〜30分間、または150〜450℃大気中で15分間〜4時間、熱処理する熱処理工程と
    を具備する、請求項1〜のいずれか1項に記載の積層膜付き透明基板の製造方法。
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