(第1実施形態)
以下、本発明に係る車椅子について図面に基づいて詳述する。
図1は本発明に係る車椅子の骨格を示す斜視図であり、図中、3はシャシ、7,7は前輪たるキャスタ、8,8は後輪たる主輪である。また、図2及び図3は図1に示した車椅子の正面図及び側面図である。
車椅子は、当該車椅子の幅方向へ距離を隔てて平行に配置した一対の縦フレーム部材31,31の間に一又は複数(図1〜図3に示した場合にあっては2本)の横フレーム部材32,32を縦フレーム部材31,31の長手方向へ距離を隔てて架設してなるシャシ3を備えている。シャシ3の縦フレーム部材31,31は横臥させた管状部材の一端部を、その他の領域より所要寸法だけ傾斜隆起させて成形してあり、縦フレーム部材31,31の一端には短寸の支持柱71,71が鉛直姿勢で連結固定してある。この支持柱71,71の下端にキャスタ(前輪)7,7がそれぞれ、支持柱71,71の中心軸周りに回動自在に支持されており、キャスタ7,7の略全ての部分が縦フレーム部材31,31の一端側隆起領域内に、縦フレーム部材31,31から適宜距離を隔てて位置するように構成してある。
縦フレーム部材31,31の他端近傍の位置の外側周面には、前記キャスタ7,7の外径より大きい外径の主輪8,8が回転自在に取り付けてある。縦フレーム部材31,31の主輪8,8の近傍には、例えば倒立L字状の当接部材82,82及び該当接部材82,82を操作するブレーキレバー81,81が配設してあり、該ブレーキレバー81,81を操作して前記当接部材82,82を主輪8,8に当接させることによって、主輪8,8の回転を禁止するようになっている。
一方、縦フレーム部材31,31の一端側の傾斜部周面には管状の前脚部用フレーム部材(脚部)5,5の下端が、シャシ3の幅方向である前記横フレーム部材32と平行をなす軸周りに回動可能に連結してあり、前脚部用フレーム部材5,5の上端近傍及び下端近傍の位置には、前脚部用フレーム部材5,5の間に架設した前脚部連結フレーム部材55,55が配してある。
前脚部用フレーム部材5,5の上端側には、使用者を担持する管状の座部用縦フレーム部材4,4がシャシ3の幅方向へ所定距離を隔てて配置してあり、両座部用縦フレーム部材4,4間上には使用者に応じた凹部を設けてなる座部シート(図示せず)が取り付けられるようになっている。座部用縦フレーム部材4,4の車椅子背面側の一端は、使用者の背もたれ部を構成する側部フレーム部材50,50の下端部に適宜の角度になるように連結してあり、両連結部は固定具60(60)によって固定してある。
座部用縦フレーム部材4,4内には進退用バーがそれぞれ進退可能に内嵌してあり、進退用バーの座部用縦フレーム部材4,4から突出した端部には連結部材46,46が垂下してあり、両連結部材46,46の下端に使用者の足を担持するための足担持用バー47,47の一端が座部用縦フレーム部材4,4の幅方向の軸と平行な軸周りに回動可能に取り付けられている。これら足担持用バー47,47の間には図示しない横長長方形状の足担持板が架設されるようになっており、該足担持板によって使用者の足を担持する。
一方、前述した両側部フレーム部材50,50の間には、その両端部を内側へ湾曲させてなり使用者の背部を支持する背部用フレーム部材56,56,56が側部フレーム部材50の長手方向へ適宜の距離隔てて架設してあり、下段側の背部用フレーム部材56,56間には、複数の縦バー(図2に示した場合にあっては2本)58,58が架設してある。両側部フレーム部材50,50間には図示しない背部シートが所要の撓みを持たせて帳設されるようになっており、背部シート内の適宜位置に使用者の頭部、体幹部及び腰部を支持するパット(いずれも図示せず)がそれぞれ配設されるようになっている。また、両側部フレーム部材50,50の上端には、当該車椅子を操作する介助者の持ち手となる持ち手用フレーム部材57が架設してある。
ところで、前述した座部用縦フレーム部材4,4の長手方向の適宜位置にはそれぞれ、前脚部用フレーム部材5,5を連結支持するための支持アーム41,41が外側へ向かって突設してあり、両支持アーム41,41に前脚部用フレーム部材5,5の上端が支持アーム41,41の中心軸周りに回動可能に連結してある。また、支持アーム41,41には後脚部用フレーム部材6,6の上端も支持アーム41,41の中心軸周りに回動可能に連結してある。シャシ3の縦フレーム部材31,31の主輪8,8の近傍にはそれぞれ、後脚部用フレーム部材6,6を支持する支持片34,34が立設してあり、後脚部用フレーム部材6,6の下端は支持片34,34の上端部に前記支持アーム41,41と平行をなす軸周りに回動可能に連結支持されている。
シャシ3の縦フレーム部材31,31のキャスタ7,7側の端から適宜距離隔てた位置には、縦フレーム部材31,31間に架設した倒立U字状の取付けバー33の両端が連結してある。この取付けバー33には、シリンダホルダ及び該シリンダホルダ内に進退可能に挿入されたロッドを備えるアームシリンダ16,16の一端部が、取付けバー33の長手方向へ適宜の距離を隔てて、シャシ3の横フレーム部材32の中心軸と平行をなす軸周りに回動可能に連結してあり、アームシリンダ16,16の他端部は、前述した最下段の背部用フレーム部材56に、シャシ3の横フレーム部材32の中心軸と平行をなす軸周りに回動可能に連結してある。アームシリンダ16,16を構成するシリンダホルダの長手方向の中途位置には、ロッドの進退位置を保持するストッパが内設してあり、その周面には前記ストッパを解除・作動させるスイッチ(いずれも図示せず。)がそれぞれ設けてある。
そして、車椅子を操作する第三者が前記スイッチを介してストッパを解除した状態で、持ち手用フレーム部材57にシャシ3側への力を印加することによって、側部フレーム部材50,50をシャシ3側へ任意の角度でリクライニングさせた後、前記スイッチを介してストッパを作動させることによって、側部フレーム部材50,50をそのリクライニング姿勢に保持することができる。
なお、前述した両スイッチに該スイッチを操作するワイヤの一端をそれぞれ接続し、両ワイヤの他端を持ち手用フレーム部材57に設けた遠隔レバーに接続しておくとよい。これによって、前記第三者が持ち手用フレーム部材57を把持した状態で遠隔レバーを操作して、スイッチを介してストッパを解除・作動させることができる。
前述したように側部フレーム部材50,50及び座部用縦フレーム部材4,4は相互に連結固定してあり、支持アーム41,41の中心軸周りに一体的に揺動し得るようになっている。従って、側部フレーム部材50,50をシャシ3側へ任意の角度でリクライニングさせた場合、これと一体的に、座部用縦フレーム部材4,4、連結部材46,46及び足担持用バー47,47が支持アーム41,41の中心軸周りに揺動するため、座部用縦フレーム部材4,4上に設置される座部シートに着座した使用者の着座姿勢を保持したままリクライニングさせることができる。
ところで、前述した前脚部用フレーム部材5,5はその長手方向の中途位置で、座部用縦フレーム部材4,4側の第1脚部用フレーム部材(第1脚部)51,51とシャシ3側の第2脚部用フレーム部材(第2脚部)52,52に分割されている。第1脚部用フレーム部材51,51と第2脚部用フレーム部材52,52とは所定方向へ屈折可能な屈折手段9,9によって相互に連結されている。そして、第1脚部用フレーム部材51,51及び第2脚部用フレーム部材52,52は屈折手段9,9によって、シャシ3の横フレーム部材32と平行をなす軸周りに回動して、車椅子の内側へ折り畳むことができるようになっている。
図4及び図5は、図1に示した第1脚部用フレーム部材51、屈折手段9及び第2脚部用フレーム部材52の一部切欠き部分拡大側面図であり、図4は展開状態、また図5は折り畳んだ状態をそれぞれ示している。なお、図中、図1に示した部分に対応する部分には同じ番号を付してある。
図4に示した如く、屈折手段9は、略半円筒のホルダ部91に、該ホルダ部91の中心軸と同軸上に内嵌する円筒状の嵌合部93を、前記ホルダ部91の一端側に半円筒開口部を掛け渡すように配設した連結軸94によって連結して構成してある。嵌合部93の一端側の外周面であって前記ホルダ部91の周面に対向する側とは反対側の位置には、前記連結軸94を挿通させる挿通部97が突設してあり、該挿通部97に連結軸94を挿通させて、ホルダ部91と嵌合部93とが連結軸94周りに回動可能になしてある。これら挿通部97及び連結軸94にて連結部が構成されている。
前記嵌合部93の周面であってホルダ部91の周面に対向する適宜位置には、プランジャー95が嵌合部93から進出及び嵌合部93内へ後退可能に設けてあり、嵌合部93の周面であってプランジャー95とは180度異なる位置には、該プランジャー95を後退操作するための操作レバー96が設けてある。なお、嵌合部93内には図示しない弾性部材が設けてあり、該弾性部材によってプランジャー95には嵌合部93から進出する方向への力が付勢されている。一方、ホルダ部91の周面であって、内嵌された嵌合部93のプランジャー95に対向する位置には、該プランジャー95の頭部が嵌合する嵌合孔92が開設してある。
前述したホルダ部91の一端には環状部が設けてあり、該環状部を第2脚部用フレーム部材52の上端部に内嵌させて、ホルダ部91が第2脚部用フレーム部材52に固着してある。また、嵌合部93の他端側に第1脚部用フレーム部材51の下端部を外嵌させて、嵌合部93が第1脚部用フレーム部材51に固着してある。
図1に示したように車椅子を展開している場合にあっては、ホルダ部91内に嵌合部93が、ホルダ部91の中心軸と同軸上に内嵌して第1脚部用フレーム部材51及び第2脚部用フレーム部材52が直線状の姿勢になされると共に、嵌合部93に設けられたプランジャー95がホルダ部91の嵌合孔92に嵌入して、嵌合部93が連結軸94周りに回動することが禁止されている。
このとき、第1脚部用フレーム部材51に不望の力が印加されても、屈折手段9の嵌合部93がホルダ部91の内周面に当接しているため、第1脚部用フレーム部材51が前記矢符とは反対の方向へ回動することが防止される。
一方、操作レバー96を操作してプランジャー95を嵌合部93内へ後退させた後、第1脚部用フレーム部材51に所望の力を印加すると、図5中に矢符で示した如く、嵌合部93が連結軸94周りにホルダ部91の半円筒開口部から外方へ回動して、第1脚部用フレーム部材51は第2脚部用フレーム部材52と略対向するように折り畳まれる。
このように折り畳まれた状態で、第1脚部用フレーム部材51に前述とは逆方向への力を与えると、嵌合部93が連結軸94周りにホルダ部91の半円筒開口部の内方へ回動して、ホルダ部91内に嵌合する。このとき、嵌合部93に設けられたプランジャー95には前述した力が付勢されているため、プランジャー95がホルダ部91の嵌合孔92に対向したタイミングで当該プランジャー95が嵌合孔92内へ進出して嵌合部93をホルダ部91にロックする。
なお、本実施形態では第2脚部用フレーム部材52にホルダ部91を取付け、第1脚部用フレーム部材51に嵌合部93及びプランジャー95を設けてあるが、第2脚部用フレーム部材52に嵌合部93及びプランジャー95を設け、第1脚部用フレーム部材51にホルダ部91を取り付けてもよい。
このような車椅子にあっては、前述した如く操作レバー96を操作することによって、第1脚部用フレーム部材51が第2脚部用フレーム部材52と対向するように折り畳まれるのに伴って、図6に示したように、第2脚部用フレーム部材52(52)がシャシ3の横フレーム部材32と平行をなす軸周りにシャシ3から離隔する方向へ回動すると共に、後脚部用フレーム部材6(6)の支持片34(34)に支持された端部がそれぞれシャシ3の横フレーム部材32と平行をなす軸周りに回動することによって、後脚部用フレーム部材6(6)の支持アーム41,41に支持された端部がそれぞれ平伏して、後脚部用フレーム部材6(6)と第2脚部用フレーム部材52(52)とが略一直線上をなす姿勢に折り畳まれる。このとき、アームシリンダ16,16の取付けバー33に連結された端部が、シャシ3の横フレーム部材32の中心軸と平行をなす軸周りに回動して、アームシリンダ16,16の他端部が主輪8(8)側へ平伏する。これによって、車椅子をワンタッチでコンパクトに折り畳むことができる。
このように本発明に係る車椅子は、前脚部用フレーム部材5(5)の中途位置を支点にして前述したように折り畳む構成になしてあるため、折り畳み動作中に前述した座部シート及び背部シートに何らの影響も及ぼさない。
一方、前述したようにキャスタ7(7)及び主輪8(8)はシャシ3に取り付けてあるため、キャスタ7(7)及び主輪8(8)に荷重及び衝撃が与えられても耐久性が高く、従って直進性に影響が及ぼされない。また、前述した前脚部用フレーム部材5(5)はシャシ3に立設してあるため、キャスタ7(7)及び主輪8(8)に衝撃が与えられた場合であっても、当該衝撃はシャシ3に伝えられて、前脚部用フレーム部材5(5)に屈折手段9(9)が開く方向の力として作用しない。従って、走行中の衝撃によって屈折手段9(9)が開くことが回避され安全性も高い。
なお、本実施形態では障害者用の車椅子に適用した場合について示してあるが、本発明はこれに限らず、健常者の幼児用等、種々の車椅子に適用し得ることはいうまでもない。
ところで、図1〜図3に示したように本車椅子にあっては、座部用縦フレーム部材4の支持アーム41より車椅子の正面側の部分と第1脚部用フレーム部材51とがなす角aの角度の値が必要以上に小さくなることを規制する角度規制手段2が設けてある。
図7は図1に示した車椅子の要部構成を示す部分拡大斜視図であり、前記角度規制手段2の部分を拡大してある。なお、図7中、図1〜図3に示した各部分に対応する部分には同じ番号が付してある。本図7及び図1〜図3を用いて角度規制手段2の構成を説明する。
すなわち、座部用縦フレーム部材4,4の他端近傍の位置であってシャシ3に対向する部分の間に座部用横フレーム部材42が架設してあり、該座部用横フレーム部材42の長手方向の中途位置、好ましくは座部用横フレーム部材42の長手方向の中央の位置に第1当接部21が設けてある。座部用横フレーム部材42の下方には短寸棒状の規制用アーム23が配してあり、本実施形態に係る第1当接部21は対向配置された支持片間に支持軸を設けて、規制用アーム23の上端を前記座部用横フレーム部材42の中心軸と平行をなす軸周りに揺動自在に支持する構造になしてある。
両座部用縦フレーム部材4,4の上に着座した使用者にとって、両座部用縦フレーム部材4,4の間の略中央の位置は、最も手が届き難い位置である。従って、角度規制手段2が作動中に、座部用縦フレーム部材4,4の上に着座した使用者の手指が当該角度規制手段2に巻き込まれるといったことを回避することができる。なお、第1当接部21の取付け位置は、座部用横フレーム部材42の長手方向の中央が好適であるが、中央から少し幅方向へずれた位置であってもよい。
その上端が第1当接部21によって揺動自在に支持された規制用アーム23の下端側は、該規制用アーム23を案内する筒状の案内部材24に挿通させてあり、案内部材24は、前脚部用フレーム部材5,5の上端近傍間に架設した前脚部連結フレーム部材55によって座部用横フレーム部材42の中心軸と平行をなす軸周りに揺動自在に支持されている。また、規制用アーム23の第1当接部21と案内部材24との間の部分には、前記第1当接部21に当接する第2当接部22が外嵌してある。
本実施形態に係る第2当接部22は、規制すべき角度の値に応じた長さ寸法に調製した螺旋状のバネ部材にて構成してあり、第2当接部22と第1当接部21とが互いに当接したときの衝撃を吸収し得るようになっている。なお、螺旋状のバネ部材に代えて空気バネを内蔵する筒状のばね部材を適用してもよい。
このような角度規制手段2にあっては、座部用縦フレーム部材4の支持アーム41より車椅子の正面側の部分が車椅子の正面側へ平伏して、当該部分と前脚部用フレーム部材5の第1脚部用フレーム部材51とがなす角aの角度が狭くなるに連れて、規制用アーム23が案内部材24内へ進入して行き、第1当接部21が第2当接部22の一端に当接する。更に前記部分が平伏する角度の値が大きくなって前記なす角aの角度が狭くなると、第1当接部21が第2当接部22に当接した状態で、その他端が案内部材24に当接している第2当接部22が短縮して行き、バネ部材にて構成した第2当接部22がその限度まで短縮したとき、規制用アーム23の案内部材24内への進入が停止されるため、前記なす角aの角度の値がそれ以上小さくなることが規制される。
図8及び図9は角度規制手段2を備えた本発明に係る車椅子の動作を説明する説明図であり、図10は角度規制手段を備えていない以外は本発明に係る車椅子と同じ構成の車椅子の動作を説明する説明図である。なお、これらの図面中、図1〜図3及び図7に示した各部分に対応する部分には同じ番号が付してある。
前述したように本発明に係る車椅子にあっては、前脚部用フレーム部材5,5は、第1脚部用フレーム部材51,51と第2脚部用フレーム部材52,52とを屈折手段9,9によって連結してなり、屈折手段9,9を屈折させて第1脚部用フレーム部材51,51及び第2脚部用フレーム部材52,52を折り畳むことができるようになっている(図6参照)。一方、第1脚部用フレーム部材51,51及び第2脚部用フレーム部材52,52を展開させた場合、プランジャー95がホルダ部91の嵌合孔92に対向したタイミングで当該プランジャー95が嵌合孔92内へ進出して嵌合部93をホルダ部91にロックするようになっている(図4参照)が、第1脚部用フレーム部材51,51及び第2脚部用フレーム部材52,52の折り畳み・展開の過度な繰り返し等が行われることによって、プランジャー95及び嵌合孔92が劣化して前述したロックが不完全になる虞を全く零にすることは困難である。また、座部用縦フレーム部材4(4)上に設けられた座部に使用者Hが着座しているときに、介護人によってプランジャー95が誤操作されてロックが解除されてしまう虞もある。
仮にかかるロック不完全又は誤操作によるロック解除が発生した場合、角度規制手段を備えていない車椅子にあっては、図10に示したように、座部用縦フレーム部材4(4)上に設けられた座部に使用者Hが着座している状態で屈折手段9(9)の屈折が発生すると、使用者Hの荷重によって第1脚部用フレーム部材51,51及び第2脚部用フレーム部材52,52が折り畳まれる方向へ動作するため、支持アーム41(41)を支点に座部用縦フレーム部材4(4)が車椅子の正面側へ平伏し、座部用縦フレーム部材4(4)上に設けられた座部に着座した使用者Hが前のめりになる虞がある。
これに対して、図8及び図9に示したように、角度規制手段2を備えた本発明に係る車椅子にあっては、座部用縦フレーム部材4(4)上に設けられた座部に使用者Hが着座している状態で屈折手段9(9)の屈折が仮に発生した場合であっても、前述した如く角度規制手段2によって、座部用縦フレーム部材4の支持アーム41より車椅子の正面側の部分と第1脚部用フレーム部材51とがなす角aの角度の値が必要以上に小さくなることが規制されるため、支持アーム41(41)を支点に座部用縦フレーム部材4(4)が車椅子の正面側へ必要以上に平伏することが防止され、座部用縦フレーム部材4(4)上に設けられた座部に着座した使用者Hが前のめりになることを回避することができる。
このとき、第2当接部22はバネ部材によって構成してあるため、角度規制手段2によって前記平伏する角度を規制する際の衝撃が可及的に吸収され、使用者Hへの負担が軽減される。
一方、第1当接部21は座部用横フレーム部材42の長手方向の中央の位置に配設してあるため、座部用縦フレーム部材4(4)上に設けられた座部に着座した使用者Hの手が届くことが殆どなく、これによって着座状態の使用者Hが自身の指を角度規制手段2に挟み込むことが防止される。
図11は本発明に係る車椅子の他の要部構成を示す部分拡大斜視図であり、角度規制手段の他の構成を示している。なお、図中、図7に示した部分に対応する部分には同じ番号を付してその説明を省略する。
図11に示したように、本角度規制手段2aは前述した如くバネ部材で構成した第2当接部22に代えて筒状の第2当接部22aが、規制用アーム23の第1当接部21と案内部材24との間の部分に外嵌してある以外は、図7に示した角度規制手段2と同様な構成にしてある。ここで、筒状の第2当接部22aの長さ寸法は前同様、規制すべき前記平伏する角度の値に応じた寸法に調製してある。
このような角度規制手段2aを備える車椅子にあっては、座部用縦フレーム部材4(4)上に設けられた座部に使用者Hが着座している状態で屈折手段9(9)の屈折が仮に発生した場合であっても、角度規制手段2aの第1当接部21が第2当接部22aに当接することによって前記なす角aの角度の値が必要以上に小さくなることが規制されるため、前同様、支持アーム41(41)を支点に座部用縦フレーム部材4(4)が車椅子の正面側へ平伏することが防止され、座部用縦フレーム部材4(4)上に設けられた座部に着座した使用者Hが前のめりになることを回避することができる。
図12は本発明に係る車椅子の更に他の要部構成を示す部分拡大斜視図であり、より簡単な構成の角度規制手段を示している。なお、図中、図7に示した部分に対応する部分には同じ番号が付してある。
図12に示したように、本角度規制手段2bは、座部用横フレーム部材42の長手方向の中央の位置に垂設した略台形状の第1当接部21bを備えており、前脚部用フレーム部材5,5の上端近傍間に架設した前脚部連結フレーム部材55の第1当接部21bに対応する部分に、当該第1当接部21bが当接する略台形状の第2当接部22bが突設してある。これら第1当接部21b及び第2当接部22bの少なくとも一方はゴムといった弾性部材にて形成してあり、第1当接部21bが第2当接部22bに当接した際の衝撃を吸収し得るようになしてある。ここで、第1当接部21bの高さ寸法及び第2当接部22bの高さ寸法は前同様、規制すべき前記平伏する角度の値に応じた寸法に調製してある。
このような角度規制手段2bを備える車椅子にあっては、座部用縦フレーム部材4(4)上に設けられた座部に使用者Hが着座している状態で屈折手段9(9)の屈折が仮に発生した場合であっても、角度規制手段2bの第1当接部21bが第2当接部22bに当接することによって前記なす角aの角度の値が必要以上に小さくなることが規制されるため、前同様、支持アーム41(41)を支点に座部用縦フレーム部材4(4)が車椅子の正面側へ必要以上に平伏することが防止され、座部用縦フレーム部材4(4)上に設けられた座部に着座した使用者Hが前のめりになることを回避することができる。
このような角度規制手段2bを備える車椅子では、使用者Hが着座していない状態で、側部フレーム部材50,50を車椅子の背面側へリクライニングさせて、前記なす角aの角度を十分に大きくした状態にしておくことによって、角度規制手段2bによる規制を受けることなく、前述したような車椅子の折り畳み操作を実施することができる。このとき、角度規制手段2bの第2当接部22bを進退可能に構成しておくことによって、車椅子の折り畳み操作中、座部用縦フレーム部材4(4)とシャシ3との接近動作を緩やかにさせることができる。
なお、本実施形態では第1当接部21bを座部用横フレーム部材42に、また第2当接部22bを前脚部連結フレーム部材55に配設した場合について説明したが、本発明はこれに限らず、前記なす角aの角度の値が必要以上に小さくなるのを規制できれば、車椅子のいずれの箇所に第1当接部21b及び第2当接部22bを配設してもよいことはいうまでもない。例えば、第1当接部21bを座部用横フレーム部材42の適宜位置に、また第2当接部22bを第1脚部用フレーム部材51の第1当接部21bの対応する位置に配設することができる。
また、本実施形態では、ホルダ部91及び嵌合部93を連結軸94によって連結してなる屈折手段9を設けた場合について説明したが、本発明はこれに限らず、シャシ3の幅方向と平行をなす軸周りに適宜の角度に回動可能な関節継手にて構成した屈折手段を設けてもよい。かかる関節継手としてはダイヤルロックを適用することができる。
(第2実施形態)
図13は第2実施形態に係る車椅子のフレーム構成を示す側面図である。本車椅子にあっては、前述したように側部フレーム部材50,50及び座部用縦フレーム部材4,4を一体的に揺動させ得るようになしてあり、更に、側部フレーム部材50,50を単独でリクライニングさせ得るようになしてある。なお、これの図中、図1〜図3に示した部分に対応する部分には同じ番号を付してその説明を省略する。
図13に示したように、座部用縦フレーム部材4(4)の支持アーム41(41)より車椅子の背面側の位置には支持部材48(48)が立設してあり、両支持部材48(48)によって側部フレーム部材50(50)が揺動可能に支持されている。座部用縦フレーム部材4(4)の車椅子の背面側の端部間には図示しない座部用横フレーム部材が架設してあり、この座部用横フレーム部材に前記アームシリンダ16(16)の他端部が、シャシ3の横フレーム部材32の中心軸と平行をなす軸周りに回動可能に連結してある。両アームシリンダ16(16)の長さを前述した如く調整することによって、側部フレーム部材50,50及び座部用縦フレーム部材4,4を一体的に支持アーム41,41の中心軸周りに揺動させ、座部用縦フレーム部材4,4に設置される座部シートに着座した使用者の着座姿勢を保持したままリクライニング又は復帰させる。
一方、前記座部用横フレーム部材と背部用フレーム部材56との間には、シリンダホルダ及びロッドを備える第2アームシリンダ16a(16a)が架設してあり、第2アームシリンダ16a(16a)の長さを調整することによって、側部フレーム部材50(50)を両支持部材48(48)の支持軸周りに揺動させ得るようになっている。これによって、座部用縦フレーム部材4,4に設置される座部シートに着座した使用者の脚部姿勢を保持したまま、当該使用者の背部を適宜の角度へリクライニング又は復帰させることができる。
前同様、前脚部用フレーム部材5(5)は第1脚部用フレーム部材51(51)及び第2脚部用フレーム部材52(52)を屈折手段9(9)で連結してなり、屈折手段9(9)を屈折させて、第1脚部用フレーム部材51(51)及び第2脚部用フレーム部材52(52)を折り畳むことによって、前述した如く車椅子をワンタッチでコンパクトに折り畳むことができるようになっている。また、座部用縦フレーム部材4の支持アーム41より正面側の部分と前記第1脚部用フレーム部材51とがなす角aの角度の値が必要以上に小さくなることを規制する角度規制手段2が設けてある。
仮に屈折手段9(9)にロック不完全が発生した場合、角度規制手段を備えていない車椅子にあっては、図16に示したように、座部用縦フレーム部材4(4)上に設けられた座部に使用者Hが着座している状態で屈折手段9(9)の屈折が発生すると、使用者Hの荷重によって第1脚部用フレーム部材51(51)及び第2脚部用フレーム部材52(52)が折り畳まれる方向へ動作するため、支持アーム41(41)を支点に座部用縦フレーム部材4(4)が車椅子の正面側へ平伏し、座部用縦フレーム部材4(4)上に設けられた座部に着座した使用者Hが前のめりになる虞がある。
これに対して、図14及び図15に示したように、角度規制手段2を備えた本実施形態に係る車椅子にあっては、座部用縦フレーム部材4(4)上に設けられた座部に使用者Hが着座している状態で屈折手段9(9)の屈折が仮に発生した場合であっても、前述した如く角度規制手段2によって、座部用縦フレーム部材4の支持アーム41より正面側の部分と第1脚部用フレーム部材51とがなす角aの角度の値が必要以上に小さくなることが規制されるため、支持アーム41(41)を支点に座部用縦フレーム部材4(4)が車椅子の正面側へ必要以上に平伏することが防止され、座部用縦フレーム部材4(4)上に設けられた座部に着座した使用者Hが前のめりになることを回避することができる。
(第3実施形態)
図17は、第3実施形態に係る車椅子のフレーム構成を示す側面図であり、前述した前脚部用フレーム部材に代えて後脚部用フレーム部材を屈折し得るように構成してある。なお、図中、図1〜図3に示した部分に対応する部分には同じ番号を付してその説明を省略する。
図17に示したように、後脚部用フレーム部材6aは第1脚部用フレーム部材61aと第2脚部用フレーム部材62aとを屈折手段9a(9a)で連結して構成してある。ここで、屈折手段9aは、図1〜図3に示した前脚部用フレーム部材5に設けた屈折手段9と同じ構成になしてある。一方、前脚部用フレーム部材5a(5a)は直管状の部材で構成してある。
両前脚部用フレーム部材5a(5a)の支持アーム41から適宜距離隔てた位置には、短寸の固定用フレーム部材63(63)の一端が車椅子の背面側へ向かって、座部用縦フレーム部材4(4)と略平行な姿勢で突設してあり、該固定用フレーム部材63(63)の他端には、後脚部用フレーム部材6a(脚部)の第1脚部用フレーム部材(第1脚部)61a(61a)がシャシ3の幅方向と平行をなす軸周りに回動自在に連結してある。また、後脚部用フレーム部材6aの第2脚部用フレーム部材(第2脚部)62a(62a)はシャシ3の縦フレーム部材31(31)の主輪8(8)から少しキャスタ7(7)側の位置に、シャシ3の幅方向と平行をなす軸周りに回動自在に連結してある。
このような車椅子にあっては、操作レバー96を操作することによって、後脚部用フレーム部材6aの第1脚部用フレーム部材61aが第2脚部用フレーム部材62aと対向するように折り畳まれるのに伴って、図18に示したように、後脚部用フレーム部材6aの第2脚部用フレーム部材62a(62a)がシャシ3の横フレーム部材32と平行をなす軸周りに回動して主輪8(8)に接近する方向へ平伏することによって、前脚部用フレーム部材5a(5a)の支持アーム41,41に支持された端部が主輪8(8)に接近する方向へ平伏して、座部用縦フレーム部材4(4)がシャシ3に接近した姿勢に折り畳まれる。これによって、車椅子を前同様、ワンタッチでコンパクトに折り畳むことができる。
一方、前述した両固定用フレーム部材63(63)の間には支持バー64が架設してあり、該支持バー64と車椅子の背面側に設けられた座部用横フレーム部材との間には、シリンダホルダ及びロッドを備えるアームシリンダ16(16)が架設してある。そして、アームシリンダ16(16)の長さを調整することによって、側部フレーム部材50(50)及び座部用縦フレーム部材4(4)を一体的に支持アーム41(41)の中心軸周りに揺動させ、座部用縦フレーム部材4(4)に設置される座部シートに着座した使用者の着座姿勢を保持したままリクライニング又は復帰させ得るようになっている。
ところで、前述した側部フレーム部材50(50)の下端部間には横フレーム部材が架設してあり、該横フレーム部材の長手方向の略中央位置には第2角度規制手段2dを構成する第1当接部21dが設けてある。側部フレーム部材50(50)の下方には規制用アーム23dが配してあり、第1当接部21dは規制用アーム23dの上端を前記座部用横フレーム部材の中心軸と平行をなす軸周りに揺動自在に支持する構造になしてある。
その上端が第1当接部21dによって揺動自在に支持された規制用アーム23dの下端側は、該規制用アーム23dを案内する筒状の案内部材24dに挿通させてあり、案内部材24dは、後脚部用フレーム部材6a(6a)の第1脚部用フレーム部材61a(61a)間に架設した後脚部連結フレーム部材(図示せず)によって前記座部用横フレーム部材の中心軸と平行をなす軸周りに揺動自在に支持されている。また、規制用アーム23dの第1当接部21dと案内部材24dとの間の部分には、前記第1当接部21dに当接する第2当接部22dが外嵌してある。本実施形態に係る第2当接部22dは、規制すべき前記平伏する角度の値に応じた長さ寸法に調製したバネ部材にて構成してあり、第2当接部22dと第1当接部21dとが互いに当接したときの衝撃を吸収し得るようになっている。
このような第2角度規制手段2dにあっては、座部用縦フレーム部材4の支持アーム41より背面側の部分が車椅子の背面側へ平伏して、当該部分と前記前脚部用フレーム部材5aとがなす角bの角度が縮小するに連れて、規制用アーム23dが案内部材24d内へ進入して行き、第1当接部21dが第2当接部22dの一端に当接する。更に前記部分が平伏する角度の値が大きくなって前記なす角bの角度が縮小すると、第1当接部21dが第2当接部22dに当接した状態で、その他端が案内部材24dに当接している第2当接部22dが短縮して行き、バネ部材にて構成した第2当接部22dがその限度まで短縮したとき、規制用アーム23dの案内部材24d内への進入が停止されるため、前記なす角bの角度の値がそれ以上小さくなることが規制される。
第2角度規制手段2dが設けてある車椅子にあっては、仮に屈折手段9(9)にロック不完全が生じて、座部用縦フレーム部材4(4)上に設けられた座部に使用者Hが着座している状態で屈折手段9(9)の屈折が発生した場合であっても、図18に示したように、前述した如く第2角度規制手段2dによって、座部用縦フレーム部材4の支持アーム41より背面側の部分と前記前脚部用フレーム部材5aとがなす角bの角度の値が必要以上に小さくなることが規制されるため、支持アーム41(41)を支点に座部用縦フレーム部材4(4)が車椅子の背面側へ必要以上に平伏することが防止され、座部用縦フレーム部材4(4)上に設けられた座部に着座した使用者Hが車椅子の背面側へのけ反ることを回避することができる。
このような第2角度規制手段2dを備える車椅子では、使用者Hが着座していない状態で、側部フレーム部材50,50を車椅子の正面側へリクライニングさせて、前記なす角bの角度の値を十分に大きくした状態にしておくことによって、第2角度規制手段2dによる規制を受けることなく、前述したような車椅子の折り畳み操作を実施することができる。
なお、本実施形態では、前脚部用フレーム部材5a(5a)の長手方向の適宜位置に後脚部用フレーム部材6aを構成する第1脚部用フレーム部材61a(61a)を連結してあるが、本発明はこれに限らず、座部用縦フレーム部材4(4)の長手方向の適宜位置に第1脚部用フレーム部材61a(61a)を連結し、この第1脚部用フレーム部材61a(61a)の長手方向の適宜位置に前脚部用フレーム部材5a(5a)を連結してもよい。かかる構成は図1に示した車椅子にも適用できる。また、図1に示したように、座部用縦フレーム部材4(4)の長手方向の適宜位置に、前脚部用フレーム部材5a(5a)及び後脚部用フレーム部材6aを構成する第1脚部用フレーム部材61a(61a)を連結してもよい。