JP6457356B2 - 不燃シート - Google Patents
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Description
すなわち、輻射電気ヒーターから材料の表面に50kW/m2の輻射熱を照射する発熱性試験において、(1)加熱開始後の20分間の総発熱量が8MJ/m2以下であること、(2)加熱開始後20分間、防火上有害な裏面まで貫通する亀裂及び穴がないこと、(3)加熱開始後20分間、最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えないこと、という条件である。
この(1)乃至(3)は、平成12年に改正された建築基準法に基づいて評価方法が規定されており、(1)乃至(3)の性能を満たす内装材には、国土交通大臣の認可である不燃認可を受けることができる。以下、不燃性能のうち、特に前記(1)乃至(3)の条件を満たす性能を「不燃認可性能」という場合がある。
本発明の好ましい不燃シートは、前記第1ガラスシートが、ガラス不織布であり、
前記第2ガラスシートが、ガラス織布である。
本発明の好ましい不燃シートは、前記ウレタン樹脂層が、熱可塑性ポリウレタンエラストマーを含むフィルムから形成され、前記フィルムの裏面に化粧層が積層されている。
かかる不燃シートは、特に内装材として好適に用いることができる。
本明細書において、「〜」で表される数値範囲は、「〜」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。本明細書において、用語の頭に、「第1」、「第2」を付す場合があるが、この第1などは、用語を区別するためだけに付加されたものであり、その順序や優劣などの特別な意味を持たない。
また、各図における、厚み及び大きさなどの寸法は、実際のものとは異なっていることに留意されたい。
図1に示すように、不燃シート1は、平面視長尺帯状に形成されている。本明細書において、長尺帯状は、一方向の長さが他方向(他方向は一方向に対して直交する方向)の長さに比して十分に長い長方形状であり、例えば、一方向の長さが他方向の長さの2倍以上、好ましくは4倍以上である。長尺帯状の不燃シート1は、通常、ロールに巻かれて保管・運搬に供され、施工現場において、所望の形状に裁断して使用される。もっとも、本発明の不燃シート1は、長尺帯状のシートに限られず、平面視正方形状などの枚葉状に形成されたタイルであってもよい(図示せず)。
不燃シート1の表面には、必要に応じて、凹凸模様を付与するためにエンボス加工(図示せず)が施されていてもよい。また、不燃シート1の裏面に又は不燃シート1の表面及び裏面に、必要に応じて、エンボス加工が施されていてもよい。前記エンボスの凹部の深さは、特に限定されないが、例えば、0.25mm以下が好ましい。エンボスの凹部の深さを比較的小さくすると、不燃シート1の表面積が相対的に小さくなり、燃焼速度を抑えることができる。
また、本発明の不燃シート1は、不燃性能を有することを条件として、ウレタン樹脂層3並びに第1及び第2ガラスシート6,8以外に、必要に応じて、他の層を有していてもよい。
以下、各層について詳述する。
ウレタン樹脂層3の厚みは、例えば、20μm〜120μmである。ウレタン樹脂層3の厚みは、好ましくは、25μm以上であり、より好ましくは30μm以上であり、さらに好ましくは35μm以上である。また、ウレタン樹脂層3の厚みは、好ましくは120μm未満であり、より好ましくは90μm以下であり、さらに好ましくは90μm未満であり、最も好ましくは65μm以下である。
ウレタン樹脂層3の厚みが20μm未満では、表面の傷付きを効果的に防止できず、ウレタン樹脂層3の厚みが120μmを超えると、燃焼時の発熱量が大きくなり、不燃認可性能を満たさない不燃シートが得られるおそれがある。
ウレタン樹脂層3を構成するウレタン樹脂は、分子中にウレタン基を有しているポリマーであれば特に限定されない。ウレタン樹脂は、薄く加工しても表面が傷付き難く、特に、熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、熱可塑性であることから加工性にも優れているので好ましい。また、日光等で黄変しない無黄変タイプのウレタン樹脂を用いることが好ましく、無黄変タイプの熱可塑性ポリウレタンエラストマーを用いることがより好ましい。
前記ポリイソシアネートとしては、脂肪族、脂環式又は芳香族ポリイソシアネートが挙げられる。具体的には、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ビフェニレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
前記高分子ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、重合体ポリオール、これらの2種以上の混合物などが挙げられる。
前記ポリエーテルポリオールとしては、エチレンオキシドやプロピレンオキシドなどのアルキレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン−プロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール、ポリオクタメチレンエーテルグリコール、これらの2種以上の混合物などが挙げられる。
前記ポリエステルポリオールとしては、ジカルボン酸とグリコールとを縮重合させて得られたもの、例えば、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリエチレン/プロピレンアジペート、ポリラクトンジオール、これらの2種以上の混合物などが挙げられる。前記ジカルボン酸としては、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸などが挙げられ、前記グリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタメチレンジオール、ネオペンチルグリコール、ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、ビスヒドロキシエチルベンゼン、アルキルジアルカノールアミンなどが挙げられる。
前記ポリエーテルエステルポリオールとしては、前記ポリエーテルジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのエーテル基含有ジオールと前記ジカルボン酸又はジカルボン酸無水物とアルキレンオキシドとを反応させることによって得られるもの、例えば、ポリ(ポリテトラメチレンエーテル)アジペートなどが挙げられる。
前記重合体ポリオールとしては、前記ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、リエーテルエステルポリオールと中分子から低分子のジオールとの混合物中でエチレン性不飽和モノマーを重合させて得たものが挙げられる。
前記鎖伸長剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、チオジグリコールなどの分子量500未満の低分子ポリオール;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン、ピペラジン、1,4−ジアミノピペラジン、1,3−シクロヘキシレンジアミン、ジシクロヘキシルメタンジアミンなどの脂環式ポリアミン、ジフェニルメタンジアミン、トリレンジアミン、フェニレンジアミンなどの芳香族ポリアミン、キシリレンジアミンなどの芳香−脂肪族ポリアミン、ヒドラジン、モノアルキルヒドラジンなどのポリアミンなどが挙げられる。
不燃シートの製造し易さから、ウレタン樹脂層3はフィルムから形成されていることが好ましく、さらに、熱可塑性ポリウレタンエラストマーを含むフィルムから形成されていることが好ましい。かかる熱可塑性のウレタン樹脂層3は、加熱により、エンボス加工などの表面加工を良好に行うことができる。以下、熱可塑性ポリウレタンエラストマーを含むフィルムを、TPUフィルムという。なお、本明細書において、フィルム及びシートは、何れも薄い層状のものを意味する点で同義である。
表面コート層2は、図2に示すように、不燃シートの最表面に必要に応じて設けられる。
ウレタン樹脂層3の表面に表面コート層2を設けることにより、前記TPUフィルムの保護及び汚れ付着を防止できる。
表面コート層2としては、前記目的を達成できるものであれば特に限定されず、例えば、ワックス類;ニス;アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、紫外線硬化型樹脂などの他の合成樹脂などが挙げられる。特に、ウレタン樹脂層3との相溶性に優れることから、ウレタン樹脂を用いることが好ましい。
表面コート層2の厚みは、特に限定されないが、余りに大きいと厚いと不燃シートの総発熱量が相対的に上がり、余りに小さいとウレタン樹脂層の保護及び汚れ付着防止を十分に発揮しないおそれがある。かかる観点から、表面コート層2の厚みは、0.1μm〜1.2μmであり、好ましくは0.3μm〜1μmである。
化粧層4は、不燃シートに意匠を付与する層である。化粧層4は、必要に応じて設けられる。
前記化粧層4は、転写層、意匠印刷層、意匠印刷シート、意匠性が付与された熱可塑性樹脂層などが挙げられる。もっとも、化粧層4は、これら例示の層に限られず、意匠を表出できる層であればその他任意のものを用いることができる。
前記転写層は、印刷インキを剥離紙などの基材上に印刷して固化させた後に、固化した印刷インキを剥離して形成した転写フィルムから構成される。前記転写層からなる化粧層4は、ウレタン樹脂層3の裏面又は中間層5の表面に転写することによって形成される。意匠印刷層は、ウレタン樹脂層3の裏面又は中間層5の表面に印刷インキを直接印刷して固化させた層から構成される。意匠印刷シートからなる化粧層4は、ウレタン樹脂層3の裏面又は中間層5の表面に、予め意匠印刷を施したシートを積層接着することによって形成される。前記意匠印刷シートのシート材としては、紙、合成紙、合成樹脂フィルムなどが挙げられる。意匠性が付与された熱可塑性樹脂層は、そのものが意匠となり得る層である。前記熱可塑性樹脂層は、(a)樹脂そのものの色彩で意匠性が付与されている場合、(b)着色剤が混合され、その着色剤の色彩及びその混ざり方によって意匠性が付与されている場合、(c)樹脂チップが混合され、その樹脂チップの色彩、形状、分散の仕方などによって意匠性が付与されている場合、(d)色彩の異なる着色剤と樹脂チップとが混合され、それらの色彩や混ざり方などによって意匠性が付与されている場合、などが挙げられる。熱可塑性樹脂層からなる化粧層4は、ウレタン樹脂層3の裏面などに、その熱可塑性樹脂層を積層接着することによって形成される。
この点、TPUフィルムの裏面に化粧層4が積層された積層体を用いることにより、化粧層4が離型紙の代用となり、不燃シートの作製時に離型紙を省略できる。また、TPUフィルムの裏面は弱粘着性を有するので、特に接着剤を介在させなくても、TPUフィルムの裏面に直接的に化粧層4を積層接着できる。
かかるTPUフィルムに積層される化粧層4としては、上記意匠印刷シート又は意匠性が付与された熱可塑性樹脂層を用いることが好ましく、さらに、意匠印刷シートを用いることがより好ましい。
第1ガラスシート6は、ウレタン樹脂層3と第2ガラスシート8の間に配置され、不燃シート1の反りを防止し、且つ機械的強度を維持する層である。
第2ガラスシート8は、第1ガラスシート6よりも下方に配置され、第1ガラスシート6と協働して不燃シートの寸法安定性の向上を図る層である。
以下、第1ガラスシート6と第2ガラスシート8の双方に共通する事項を説明する際には、単に「ガラスシート」と記す。
ガラスシートは、ガラス繊維をシート状に形成したものである。ガラスシートは、繊維成分としてガラス繊維と他の繊維の混繊から形成されていてもよいが、不燃シートの総発熱量が小さくなることから、繊維成分はガラス繊維のみであることが好ましい。
ガラスシートとしては、複数のガラス繊維を含むガラス不織布又はガラス織布が挙げられる。
ガラスマットなどのガラス不織布は、厚みを確保することができる上、引張り強度が高い、層間強度が高い、柔軟性が高い、などの優れた特性を有する。また、ガラスネットなどのガラス織布は、気温による寸法変化が小さい上、貫通し難い、貫通敷燃焼時に形が崩れ難いなどの優れた特性を有する。
前記バインダーとしては、公知の樹脂を主成分とする接着剤を使用することができ、例えば、1液型接着剤、2液型接着剤、熱硬化型接着剤、ホットメルト型接着剤、紫外線硬化型接着剤などの電子線硬化型接着剤などが挙げられる。具体的には、ウレタン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合系、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂及びエポキシ系樹脂から選ばれる1種又は2種以上の混合物が例示される。
前記ガラス不織布は、例えば、分散剤や増粘剤などを配合した水中に、ガラス繊維を略均一に分散させ、抄造することにより、ガラス繊維をシート状に成形し、その繊維のシートに、バインダーを塗布又は含浸させることにより、得ることができる。バインダーは一定の厚みに塗布又は含浸されるが、過剰なバインダーは、必要に応じてバキュームナイフなどによって吸引除去される。
ガラス織布の織組織としては、平織、朱子織、綾織、斜子織、畦織などが挙げられる。
ガラスシートのガラス繊維の太さは、特に限定されず、例えば、直径5μm〜30μmであり、好ましくは、直径8μm〜20μmである。ガラス不織布のガラス繊維の長さは、特に限定されず、例えば、10mm〜30mmである。ガラス不織布のガラス繊維は、短繊維のみから構成されていてもよく、長繊維のみから構成されていてもよく、或いは、短繊維と長繊維の混合から構成されていてもよい。短繊維のみから構成されたガラス不織布は、寸法安定性に優れているが、短繊維と長繊維の混合物から構成されたガラス不織布は、寸法安定性に加えて引張り強度にも優れている。前記短繊維の長さは、特に限定されないが、例えば、10mm〜35mmであり、長繊維の長さは、その短繊維の長さよりも大きい。なお、ガラス織布のガラス繊維は、通常、前記長繊維よりも更に長い繊維からなる。
織布は不織布よりも強度的に優れているので、第1ガラスシート6及び第2ガラスシート8の少なくとも一方は、ガラス織布を含んでいることが好ましい。
もっとも、ガラス織布は、ガラス繊維が概ね規則的に配列されているので、第1ガラスシート6としてガラス織布を用いた場合には、不燃シートの表面に織り目が表出するおそれがある。他方、ガラス不織布を用いた場合には、前記織り目の表出も生じない。このような点を考慮すると、第1ガラスシート6は、ガラス不織布を用いることが好ましい。
それ故、織り目の表出防止と不燃シートの高強度という観点から、第1ガラスシート6としてガラス不織布が用いられ、且つ、第2ガラスシート8としてガラス織布が用いられていることが好ましい。
具体的な寸法では、第1ガラスシート6の厚みは、例えば、40μm〜500μmであり、好ましくは、50μm〜450μmである。また、第2ガラスシート8の厚みは、例えば、40μm〜500μmであり、好ましくは、50μm〜450μmである。厚みの大きいガラスシートを用いるほど、一般に、シートの引張り強度、傷付き耐性が向上する。
かかる観点から、第1ガラスシート6の目付量は、例えば、5g/m2〜66g/m2であり、好ましくは6.5g/m2〜60g/m2であり、第1ガラスシート6のガラス繊維の目付量は、例えば、4g/m2〜55g/m2であり、好ましくは5g/m2〜50g/m2である。また、第2ガラスシート8の目付量は、例えば、28g/m2〜350g/m2であり、好ましくは35g/m2〜315g/m2であり、第2ガラスシート8のガラス繊維の目付量は、例えば、26g/m2〜330g/m2であり、好ましくは33g/m2〜300g/m2である。
中間層5は、不燃シート全体の強度、柔軟性を発揮させる層である。図2の形態においては、中間層5は、化粧層4と第1ガラスシート6と接着させる接着層としても機能する。なお、化粧層4と第1ガラスシート6、又は、ウレタン樹脂層3と第1ガラスシート6が直接的に接着し得る場合には、中間層は省略される。
中間層5は、化粧層4と第1ガラスシート6などの間に介在して両層を接着できるものであれば特に限定されず、一般には、高分子材料を含む接着剤が用いられる。前記高分子材料としては、特に限定されず、塩化ビニルや塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などの塩化ビニル系樹脂;ポリオレフィン系樹脂;ウレタン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体などの酢酸ビニル系樹脂;エチレン−メタクリレート樹脂などのアクリル系樹脂;ポリアミド系樹脂;エステル系樹脂;オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーなどの各種エラストマーなどの各種エラストマー;ゴムなどが挙げられる。
前記中間層5としては、発熱性試験における発熱量が比較的小さく、強度及び柔軟性に優れていることから塩化ビニル系樹脂を用いることが好ましい。塩化ビニル系樹脂を用いる場合、充填剤が配合されている塩化ビニル系樹脂を用いることが好ましい。充填剤の量が配合された塩化ビニル系樹脂を用いることにより、接着性が向上する。そのような中間層としては、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、可塑剤を20〜200質量部及び充填剤を150〜800質量部含むものが挙げられる。なお、前記塩化ビニル系樹脂は、必要に応じて、従来公知の添加剤が配合されていてもよい。添加剤としては、例えば、難燃剤、安定剤、吸湿剤、酸化防止剤、滑剤、着色剤、発泡剤、防黴剤などが挙げられる。なお、化粧層4を積層する中間層5の表面に、化粧層4の接着性を高めるために、プライマー処理が施されていてもよい。
特に、不燃認可性能を有する不燃シートを得るためには、前記中間層5の厚みは、ウレタン樹脂層3の厚みと相対的に決定することが好ましい。例えば、ウレタン樹脂層3の厚みが20μm〜85μmである場合に、前記中間層5の厚みは30μm〜300μmに設定されることが好ましく、さらに、40μm〜250μmに設定されることがより好ましい。一方、前記ウレタン樹脂層の厚みが85μmを超え120μm以下である場合に、中間層3の厚みは30μm〜150μmに設定されることが好ましく、さらに、40μm〜130μmに設定されることがより好ましい。ウレタン樹脂層3の厚みに応じて前記厚み範囲の中間層5を有する不燃シートは、ウレタン樹脂層と相乗した総発熱量の上昇を抑制でき、不燃認可性能を満足するシートとなる。
接着層7は、第1ガラスシート6と第2ガラスシート8と接着させるための層である。
接着層7は、第1及び第2ガラスシート6,8の間に介在して両シート6,8を接着できるものであれば特に限定されず、一般には、高分子材料を含む接着剤が用いられる。前記高分子材料としては、上記中間層に例示したようなものが挙げられる。
接着層7としては、例えば、塩化ビニル系樹脂、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂を用いることができるが、加工し易いことから、ポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。
接着層7の厚みは、特に限定されないが、余りに小さいと、第1及び第2ガラスシート6,8を十分な接着強度で接着することができないおそれがあり、余りに大きいと、不燃シートの総発熱量が相対的に上がる。かかる観点から、接着層7の厚みは、例えば、10μm〜50μmであり、好ましくは20μm〜40μmである。
本発明の不燃シートは、例えば、次のような手順で得ることができる。
ウレタン樹脂層3、第1ガラスシート6及び第2ガラスシート8を積層し、その積層体を加熱加圧することによって各層を一体化する。
例えば、図2に示す不燃シートの場合には、ウレタン樹脂層3、化粧層4、中間層5、第1ガラスシート6、接着層7及び第2ガラスシート8を積層し、この積層体を、140℃〜180℃に加熱しながら、20〜40kgf/cm2で加圧することにより、各層を一体化する。その後、化粧層4に、紫外線硬化型樹脂などを塗工して表面コート層2を形成することにより、図2示すような不燃シートを得ることができる。
不燃シートの傷付き耐性の向上は、不燃シートの表面側にウレタン樹脂層を積層することによって、異物などが接触してもその表面に傷が付き難くなったためと推定される。また、不燃認可性能のうち上記(2)の性能は、第1ガラスシート及び第2ガラスシートを用いることによってもたらされ、また、第1ガラスシート及び第2ガラスシートを用いることによって、不燃シートの機械的強度などを十分に確保できるため、樹脂部分の総量を比較的少なくできる。その結果、本発明の不燃シートは、全体としての総発熱量を抑制でき、不燃認可性能を満足するものと推定される。
また、1枚のガラスシートを用いずに、本発明のように、第1及び第2ガラスシートを用いることにより、強度及び柔軟性に優れた不燃シートを構成できる。すなわち、1枚のガラスシートでシートを構成する場合には、強度や寸法変化などの点から、比較的厚みの大きいガラスシートを用いることになるが、厚みの大きいガラスシートは、比較的硬く且つ割れやすい。このため、強度及び柔軟性に優れたシートとならない。この点、本発明のように、第1及び第2ガラスシートを用い、それらをシートの厚み方向において離反させて積層することにより、強度及び柔軟性に優れた不燃シートを構成できる。
例えば、本発明の不燃シートは、建築物の壁紙や腰壁材を含む内壁材、建築物の天井材などとして用いられる。
・ガラス不織布
オリベスト株式会社製の商品名「グラベスト」。幅:50cm、長さ:1m。ガラス繊維の太さ:直径約10μm、ガラス繊維の長さ:約13mm、不織布全体の目付量:50g/m2、ガラス繊維の目付量:42g/m2、厚み:約0.38mm。
・ガラス織布
ユニチカ株式会社製の商品名「処理ガラスクロス」。幅:50cm、長さ:1m。縦糸:33.7tex、横糸:67.5tex、織布全体の目付量:105g/m2、ガラス繊維の目付量:99g/m2、厚み:約0.15mm。
・片面に化粧紙が貼付されたTPUフィルム
日本マタイ株式会社製の商品名「エスマーURS PX−II」。幅:50cm、長さ:1m。TPUフィルムの厚みは、実施例及び比較例の通り、20μm〜100μmの各種。化粧紙は、所望の印刷が施された目付量30g/m2の紙(紙のみの重量)。
・化粧紙
株式会社千代田グラビア製の商品名「コート紙」。
・ワックス
第一工業製薬株式会社製の商品名「スーパーフレックス420」。
・塩化ビニル系樹脂
新第一塩ビ株式会社製の商品名「ZEST 800Y」。重合度:810、K値:61.8。
・片面に印刷が施された塩化ビニル−アクリル共重合樹脂フィルム
大洋化学工業株式会社製の商品名「アクロックスグロスクリヤシート」。厚み:80μm。
・ポリエチレンフィルム
株式会社NUC製の商品名「NUC−8000」。密度:0.924g/cm3。
実施例1では、片面に化粧紙が貼付された厚み20μmのTPUフィルムを使用し、これを化粧層及びウレタン層とした。
上記塩化ビニル系樹脂をペレット化し、そのペレットを140℃で溶融させ、180℃のカレンダーロールに通してカレンダー加工することにより、厚み200μmの塩化ビニル系樹脂シートを作製した。これを中間層とした。
上記ガラス不織布を第1ガラスシートとし、上記ポリエチレンフィルムを接着層とし、上記ガラス織布を第2ガラスシートとして、裏面側から順に、ガラス織布/ポリエチレンフィルム/ガラス不織布/塩化ビニル系樹脂シート/化粧紙付きTPUフィルムを重ね合わせ、その積層体をプレヒーターで150℃に加熱しつつ、30kgf/cm2に加圧することにより、その積層体を一体化させた。なお、TPUフィルムは、化粧紙が塩化ビニル系樹脂シートに接するように重ね合わせた。
最後に、TPUフィルムの表面に、上記ワックスを塗工することにより、表面コート層を形成した。
このようにして厚み0.5mmの図2に示すような層構成の不燃シートを作製した。
表1に示すように、実施例2乃至7については、片面に化粧紙が貼付された厚み20μmのTPUフィルムに代えて、片面に化粧紙が貼付された厚み30μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μmのTPUフィルムをそれぞれ使用したこと以外は、実施例1と同様にして不燃シートを作製した。
片面に化粧紙が貼付された厚み20μmのTPUフィルムに代えて、片面に化粧紙が貼付された厚み90μmのTPUフィルムを使用したこと、及び、厚み200μmの塩化ビニル系樹脂シートに代えて、中間層として厚み100μmの塩化ビニル系樹脂シートを作製したこと以外は、実施例1と同様にして不燃シートを作製した。
片面に化粧紙が貼付された厚み90μmのTPUフィルムに代えて、片面に化粧紙が貼付された厚み100μmのTPUフィルムを使用したこと以外は、実施例8と同様にして不燃シートを作製した。
片面に化粧紙が貼付された厚み90μmのTPUフィルムに代えて、片面に化粧紙が貼付された厚み120μmのTPUフィルムを使用したこと以外は、実施例8と同様にして不燃シートを作製した。
片面に化粧紙が貼付された厚み20μmのTPUフィルムに代えて、片面に化粧紙が貼付された厚み10μmのTPUフィルムを使用したこと以外は、実施例1と同様にして不燃シートを作製した。
片面に化粧紙が貼付された厚み20μmのTPUフィルムに代えて、片面に化粧紙が貼付された厚み90μmのTPUフィルムを使用したこと以外は、実施例1と同様にして不燃シートを作製した。
片面に化粧紙が貼付された厚み20μmのTPUフィルムに代えて、片面に化粧紙が貼付された厚み120μmのTPUフィルムを使用したこと以外は、実施例1と同様にして不燃シートを作製した。
片面に化粧紙が貼付された厚み90μmのTPUフィルムに代えて、片面に化粧紙が貼付された厚み130μmのTPUフィルムを使用したこと以外は、実施例8と同様にして不燃シートを作製した。
片面に化粧紙が貼付された厚み20μmのTPUフィルムに代えて、片面に印刷が施された厚み80μmの塩化ビニル−アクリル共重合樹脂フィルムを使用したこと、及び、化粧紙を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして不燃シートを作製した。
具体的には、実施例1と同様にして、塩化ビニル系樹脂をカレンダー加工することにより、厚み200μmの塩化ビニル系樹脂シートを作製し、裏面側から順に、ガラス織布/ポリエチレンフィルム/ガラス不織布/塩化ビニル系樹脂シート/片面に印刷が施された塩化ビニル−アクリル共重合樹脂フィルムを重ね合わせ、その積層体を150℃に加熱しつつ、30kgf/cm2に加圧することにより、その積層体を一体化させた。
片面に化粧紙が貼付された厚み20μmのTPUフィルムに代えて、片面に化粧紙が貼付された厚み80μmの塩化ビニル系樹脂フィルムを使用したこと以外は、比較例5と同様にして不燃シートを作製した。
片面に化粧紙が貼付された厚み20μmのTPUフィルムに代えて、片面に化粧紙が貼付された厚み120μmの塩化ビニル樹脂フィルムを使用したこと以外は、実施例1と同様にして不燃シートを作製した。
各実施例及び比較例の不燃シートを、ISO5660−1に従い、コーンカロリーメーターを使用して、加熱強度50kW/m2で加熱し、加熱開始後の20分間の総発熱量、加熱開始後20分間の不燃シートの状態、及び加熱開始後20分間の最高発熱速度を測定した。
その結果を表1に示す。
(1)加熱開始後の20分間の総発熱量が8MJ/m2以下であること。
(2)加熱開始後20分間、防火上有害な裏面まで貫通する亀裂及び穴がないこと。
(3)加熱開始後20分間、最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えないこと。
各実施例及び比較例の不燃シートについて、次のような方法で、表面の傷付き易さを評価した。
敷設面として、吉野石膏株式会社製の厚み12.5mmの石膏ボード(商品名:タイガーボードGB−R)を準備した。この石膏ボードの上に、不燃シートをアクリル樹脂系接着剤を用いて貼り付けた。この石膏ボードと共に不燃シートを、水平面に対して45度に傾けて設置した。落下高さ150mmで、図3に示すように、厚み×縦×横=1mm×6mm×24mmの弧状先端部を有する180gの重りを前記不燃シートの表面に自然落下させた後、不燃シートの表面を目視で観察した。その結果を表2に示す。さらに、落下高さを表2のように変えて、同様の試験を行った。
また、水平面に対する傾斜を55度に傾けて不燃シートを設置して、同様の試験を行った。その結果を表2に示す。
○:重り跡は確認できたが、シートの破損はなかった。
△:シートが少し破損した。
×:シートが大きく破損した。
また、実施例8乃至10と比較例2及び3との対比から、厚み90μm〜120μmのTPUフィルムを用いる場合には、中間層の厚みを小さくすることにより、不燃認可性能を有する不燃シートが得られることが判る。
2 表面コート層
3 ウレタン樹脂層
4 化粧層
6 第1ガラスシート
8 第2ガラスシート
Claims (4)
- 厚み20μm〜120μmのウレタン樹脂層と、
高分子材料から形成された中間層と、
ガラス繊維を含む第1ガラスシートと、
ガラス繊維を含む第2ガラスシートと、をこの順で有する、不燃シート。 - 前記中間層の厚みは、前記ウレタン樹脂層の厚みが20μm〜85μmである場合に30μm〜300μmであり、又は、前記ウレタン樹脂層の厚みが85μmを超え120μm以下である場合に30μm〜150μmである、請求項1に記載の不燃シート。
- 前記第1ガラスシートが、ガラス不織布であり、
前記第2ガラスシートが、ガラス織布である、請求項1または2に記載の不燃シート。 - 前記ウレタン樹脂層が、熱可塑性ポリウレタンエラストマーを含むフィルムから形成され、前記フィルムの裏面に化粧層が積層されている、請求項1乃至3の何れか一項に記載の不燃シート。
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