JP6449925B2 - 車両駆動システム - Google Patents

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Description

本発明は、車両駆動システムに関する。より詳しくは、車両の走行中に車両の傾斜又は車両が位置する路面の傾斜を検出し、車両の駆動状態を切り替える車両駆動システムに関する。
従来、車両の前後に分離して配置されたGセンサである前後Gセンサによって進行方向登坂角が発生したことを推定して、車両の駆動状態をAWD且つ登坂用前後配分設定に切り替える車両駆動システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許5856135号公報
しかしながら、上記特許文献の技術では、停車時には、前後Gセンサによって進行方向登坂角が発生していることを推定可能であるが、走行時における車両の傾斜又は車両が位置する路面の傾斜を、高い精度で検出することが要求されていた。
本発明は上記課題を解決するためのものであり、その目的は、車両の走行中に車両の傾斜又は車両が位置する路面の傾斜を検出可能な車両駆動システムを提供することにある。
上記目的を達成するため本発明は、車両(例えば、後述の車両3)の前輪(例えば、後述の前輪Wf,Wf)及び後輪(例えば、後述の後輪Wr(RWr,LWr))のいずれか一方である第1駆動輪(例えば、後述の前輪Wf,Wf)を駆動する第1駆動装置(例えば、後述の第1駆動装置1)と、前記車両の前輪及び後輪のいずれか他方である第2駆動輪(例えば、後述の後輪Wr(RWr,LWr))を駆動する第2駆動装置(例えば、後述の第2駆動装置2)と、前記第1駆動装置及び前記第2駆動装置を制御し、前記第1駆動輪及び前記第2駆動輪の駆動状態を制御する制御装置(例えば、後述のECU6)と、を備える車両駆動システム(例えば、後述の車両駆動システム10)であって、前記制御装置は、前記車両の走行中に車速に相関のある相関量(例えば、後述の「車輪速」、「レゾルバ94により検出される検出値」)に基づいて、前記車両の傾斜又は前記車両が位置する路面の傾斜を検出し、前記第1駆動装置と前記第2駆動装置との駆動力配分を切り換えて、前記第1駆動輪及び前記第2駆動輪の双方によって前記車両を駆動する双方輪駆動状態とする判断部(例えば、後述の駆動状態切替部64)を有することを特徴とする。
本発明では、車速に相関のある相関量に基づいて、車両の傾斜又は車両が位置する路面の傾斜を検出し、これに基づき、第1駆動装置と第2駆動装置との駆動力配分を切り換える。このため、車両の走行中に、車両の傾斜又は車両が位置する路面の傾斜を検出することが可能となる。これにより、車両の走行中に、適切なタイミングで、第1駆動装置と第2駆動装置との駆動力配分を切り換えることが可能となる。特に、車両が低速で登坂に進入したときであっても、第1駆動装置と第2駆動装置との駆動力配分を切り換えることが可能となる。
例えば、前記車両の走行中における車速に相関のある相関量は、前記第1駆動輪若しくは前記第2駆動輪の回転数(例えば、後述の「車輪速」)、又は、前記第1駆動輪若しくは前記第2駆動輪を駆動させる前記第1駆動装置若しくは前記第2駆動装置を構成する電動機の回転数(例えば、後述の「レゾルバ94により検出される検出値」)であることが好ましい。
これにより、車両の走行中に、車両の傾斜又は車両が位置する路面の傾斜を、容易に検出することが可能となる。
また、前記制御装置は、前記車両が所定の車速以上の場合に、前記第1駆動輪及び前記第2駆動輪に対する前記電動機による駆動を遮断し、前記制御装置は、前記車両が所定の車速以上か否かに関わらず、前記車両の走行中における車速に相関のある相関量を検出する制御を行うことが好ましい。
これにより、車速が高くなり、電動機の最高回転数を上回る回転数で第1駆動輪又は第2駆動輪が回転するときには、電動機と第1駆動輪又は第2駆動輪との駆動の連結は解除されるが、このような場合であっても、車両の走行中における車速に相関のある相関量を検出することが可能となる。この結果、電動機の最高回転数よりも高い回転数となるような車速においても、車速を継続して検出することにより、急に低い車速になった場合の推定傾斜角の算出速度を向上させることが可能となる。
また、前記第1駆動輪及び前記第2駆動輪に対して前記電動機による駆動が伝達されているときには、前記車両の走行中における車速に相関のある相関量は、前記電動機の回転数であり、前記第1駆動輪及び前記第2駆動輪に対して前記電動機による駆動が遮断されているときには、前記車両の走行中における車速に相関のある相関量は、前記第1駆動輪又は前記第2駆動輪の回転数であることが好ましい。
車速が高くなり、電動機の最高回転数を上回る回転数で第1駆動輪又は第2駆動輪が回転するときには、電動機と第1駆動輪又は第2駆動輪との駆動の連結は解除されるが、このような場合であっても、車両の走行中における車速に相関のある相関量である、第1駆動輪又は第2駆動輪の回転数を検出することで、車両の走行中に、車両の傾斜又は車両が位置する路面の傾斜を、容易に検出することが可能となる。
本発明によれば、車両の走行中に車両の傾斜又は車両が位置する路面の傾斜を検出可能な車両駆動システムを提供できる。
本発明の第1実施形態に係る車両駆動システムを搭載した車両を示す図である。 上記実施形態に係る車両の走行状態における電動機の状態と切離機構の状態を示す図である。 上記実施形態に係るECUの構成を示す機能ブロック図である。 上記実施形態に係るECUの登坂角推定部における制御の、車両の走行時における処理を示すフロー図である。 上記実施形態に係る車両駆動システムを搭載した車両の登坂時の状態を示すタイムチャートである。 本発明の第2実施形態に係る車両駆動システムを搭載した車両の登坂時の状態における、車輪速と電動機の回転数との関係を示すタイムチャートである。
[第1実施形態]
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る車両駆動システム10を搭載した車両3を示す図である。本実施形態に係る車両駆動システム10を搭載した車両3は、ハイブリッド車両である。図1に示すように、車両3に搭載された車両駆動システム10は、第1駆動装置1と、第2駆動装置2と、これらの駆動装置1,2を制御する制御装置としての電子制御ユニット(以下、「ECU」という。)6と、PDU(パワードライブユニット)8と、バッテリ9と、を備える。
第1駆動装置1は、車両3の前部に設けられ、第1駆動輪としての前輪RWf,LWfを駆動する。第1駆動装置1は、内燃機関(ENG)4と、電動機5と、トランスミッション7と、を有する。内燃機関4と電動機5とは、直列に接続されており、これら内燃機関4と電動機5とのトルクが、トランスミッション7を介して前輪RWf,LWfに伝達される。
内燃機関4は、例えばV型6気筒エンジンであり、燃料を燃焼させることでハイブリッド車両3を走行させるためのトルクを発生する。内燃機関4のクランクシャフトは、電動機5の出力軸に連結されている。
電動機5は、例えば3相交流モータであり、バッテリ9に蓄えられた電力により、車両3を走行させるためのトルクを発生する。電動機5は、インバータを搭載したPDU8を介してバッテリ9に接続されており、内燃機関4の駆動力をアシストする。
トランスミッション7は、内燃機関4で発生したトルクを所望の変速比での回転数及びトルクに変換し、前輪LWf,RWfに伝達する。
第2駆動装置2は、車両3の後部に設けられ、第2駆動輪としての後輪Wr(RWr,LWr)を駆動する。第2駆動装置2は、電動機2A,2Bを有する。これら電動機2A,2Bのトルクが、後輪Wr(RWr,LWr)に伝達される。
電動機2A,2Bは、電動機5と同様に、例えば3相交流モータであり、バッテリ9に蓄えられた電力により、車両3を走行させるためのトルクを発生する。また、電動機2A,2Bは、インバータを備えるPDU8を介してバッテリ9に接続されており、ECU6からの制御信号がPDU8に入力されることで、バッテリ9からの電力供給と、バッテリ9へのエネルギー回生が制御される。
なお、4つの前輪Wf(RWf,LWf)、後輪Wr(RWr,LWr)の各々には、図示しない摩擦ブレーキが設けられている。この摩擦ブレーキは、例えば、油圧式のディスクブレーキなどから構成される。運転手がブレーキペダルを踏み込むと、踏込力が油圧シリンダなどを介してブレーキパッドに増幅して伝達され、各駆動輪に取り付けられているブレーキディスクとブレーキパッドとの間に摩擦力が生じることで、各駆動輪の制動が行われる。
以上の構成を備えた第2駆動装置2の通常走行時の動作について説明する。図2は、車両の走行状態における電動機2A,2Bの状態と切離機構(一方向クラッチと油圧ブレーキ)の状態を示す図である。
図2におけるフロントが前輪Wf(RWf,LWf)を駆動する第1駆動装置1を表し、リアが後輪Wr(RWr,LWr)を駆動する第2駆動装置2を表し、○が作動(駆動、回生含む)を意味し、×が非作動(停止)を意味する。また、MOT状態が第2駆動装置2の電動機2A,2Bの状態を表す。切離機構のONが、電動機2A,2Bと後輪RWr,LWrを接続することによりMOT駆動状態又はMOT回生状態とするための2つのリングギヤ同士がロック(係合)されることを意味する。OFFが、この2つのリングギヤそれぞれがフリー状態(リングフリー状態)となることを意味する。また、OWCがこの2つのリングギヤの状態を切り替える一方向クラッチの状態を意味し、BRKがリングギヤの回転を規制する油圧ブレーキを意味する。油圧ブレーキは、ECU6による制御によりブレーキソレノイド(BRKsol)が駆動されることにより駆動する。
先ず、停車中は、前輪Wf(RWf,LWf)側の第1駆動装置1、後輪Wr(RWr,LWr)側の第2駆動装置2が何れも停止しているため、電動機2A,2Bが停止し、切離機構も非作動状態となっている。
次いで、キーポジションをONにした後、EV発進時には、第2駆動装置2の電動機2A,2Bが駆動する。このとき、切離機構は一方向クラッチによってONとなり、電動機2A,2Bの動力が後輪RWr,LWrに伝達される。
続いて加速時には、第1駆動装置1と第2駆動装置2との何れも駆動する双方輪(4輪)駆動状態(AWD)となり、このときも、切離機構は一方向クラッチによってONとなり、電動機2A,2Bの動力が後輪RWr、LWrに伝達される。
低・中速域のEVクルーズでは、モータ効率が良いため第1駆動装置1が非作動状態で、第2駆動装置2のみが駆動する後輪単独駆動状態(RWD)となる。このときも、切離機構は一方向クラッチによってONとなり、電動機2A,2Bの動力が後輪RWr,LWrに伝達される。
一方、高速域の高速クルーズでは、エンジン効率が良いため第1駆動装置1による前輪単独駆動状態(FWD)となる。このとき、切離機構は、一方向クラッチが切離されてOFFとなり(OWCフリー)、油圧ブレーキが作動せず、電動機2A,2Bは停止する。
また、自然減速する場合にも、切離機構は、一方向クラッチが切離されてOFFとなり(OWCフリー)、油圧ブレーキが作動せず、電動機2A,2Bが停止する。
一方、減速回生する場合、例えば第1駆動装置1の駆動力により駆動する場合、切離機構の一方向クラッチが切離されてOFFとなる(OWCフリー)。しかし、油圧ブレーキが締結され、後輪Wr(RWr,LWr)それぞれに駆動力を伝えるための出力軸の動力が、電動機2A,2Bそれぞれの動力を伝えるための円筒軸に伝達されることで、電動機2A,2Bで回生充電がなされる。
通常走行では、摩擦ブレーキに対する制動制御と協調して電動機2A,2Bで回生して走行エネルギーを回収するが、緊急制動の要求(例えば、ABS作動時)には、電動機2A,2Bの回生を禁止して、摩擦ブレーキによる制動制御を優先する。この場合、一方向クラッチが切離されたOFF状態(OWCフリー)となり、油圧ブレーキが作動しないことで、電動機2A,2Bを停止させる。
後進走行の場合、第1駆動装置1が停止し、第2駆動装置2が駆動してRWDとなるか、或いは第1駆動装置1と第2駆動装置2との何れも駆動するAWDとなる。このとき、電動機2A,2Bが逆転方向に回転し、切離機構の一方向クラッチが切離されてOFFとなる(OWCフリー)。しかし、油圧ブレーキが接続されることで、電動機2A,2Bの動力が、電動機2A,2Bそれぞれの動力を伝えるための円筒軸から後輪Wr(RWr,LWr)それぞれに駆動力を伝えるための出力軸を介して後輪RWr,LWrに伝達される。
次に、本実施形態に係る制御装置としてのECU6の構成について説明する。
ECU6は、各種センサからの入力信号波形を整形し、電圧レベルを所定のレベルに修正し、アナログ信号値をデジタル信号値に変換する等の機能を有する入力回路と、中央演算処理ユニット(以下、「CPU」という。)と、を備える。この他、ECU6は、CPUで実行される各種演算プログラム及び演算結果等を記憶する記憶回路と、PDU8や内燃機関4等に制御信号を出力する出力回路と、を備える。
以上のようなハードウェア構成からなるECU6は、上記の各種演算プログラムに基づいた演算処理を行い、演算結果に応じた制御信号を出力することにより、PDU8や内燃機関4等を制御することにより、以下に説明する処理を行う。
次に、図3を参照してECU6についてより詳細に説明をする。ここで、図3は、本実施形態に係るECU6の構成を示す機能ブロック図である。図3に示すように、ECU6には、車輪速センサ91、アクセル開度センサ92、エンジン回転数センサ93、レゾルバ94、横Gセンサ95、車速センサ96、舵角センサ97、ヨーレートセンサ98、及び、前後Gセンサ99等の各種センサの検出信号が入力される。また一方で、図3に示すように、ECU6は、PDU8及び内燃機関(ENG)4に制御信号を出力する。
更に、ECU6は、本実施形態特有のトラクションコントロールを実行するためのモジュールとして、スリップ取得部61と、トラクションコントロールシステム(以下、「FrTCS」という。)62と、登坂角推定部63と、駆動状態切替部64と、を備える。以下、これら各モジュールの機能について説明する。
スリップ取得部61は、第1駆動輪としての前輪Wf(RWf,LWf)に、所定以上のスリップである超過スリップが発生したことを取得する。スリップ取得部61は、前輪Wf(RWf,LWf)に超過スリップが発生したことを取得したときはスリップ判定フラグを「1」に設定し、前輪Wf(RWf,LWf)に超過スリップが発生したことを取得していないときはスリップ判定フラグを「0」に設定する。
ここで、車両3は、高μ状態の乾燥路においても常に駆動輪に微小なスリップを発生させながら走行しているとみなすこともできる。ただし、このようにみなしてしまうと、常時スリップ判定フラグが「1」に設定され、駆動状況に応じた制御をすることができない。そこで、本実施形態における「超過スリップ」とは、このような微小なスリップを除外するものである。以下、超過スリップの発生を、単にスリップの発生ともいう。
FrTCS62は、トラクションコントロールを行う部分である。FrTCS62は、前輪Wf(RWf,LWf)の車輪回転数に基づいて、内燃機関4や電動機5により発生する前輪Wf(RWf,LWf)駆動用のトルクを制御することによって、前輪Wf(RWf,LWf)の回転状態を制御する。
具体的には、FrTCS62は、スリップ判定フラグが「0」に設定されている場合(すなわち、スリップ判定部612が超過スリップを取得していない場合)には、アクセルを操作するドライバが要求する駆動力に対応するトルク(以下「ドライバ要求トルク」という。)を満たすように、ECU6に指示を出すことにより、ECU6から内燃機関4や電動機5に指令トルクを出力させる。ドライバ要求トルクは、アクセル開度センサ82から入力される現在のアクセル開度に基づいて算出することができる。
一方で、FrTCS62は、スリップ判定フラグが「1」に設定されている場合(すなわち、スリップ判定部612が超過スリップを取得している場合)には、超過スリップが発生した前輪Wf(RWf,LWf)に接続される内燃機関4や電動機5の指令トルクを、ドライバ要求トルクとするのではなく、所定のトルクとする。
登坂角推定部63は、車両3の傾斜又は車両3が位置する路面の傾斜を検出する部分である。登坂角推定部63は、車両3に、車両3の進行方向輪がその反対側輪よりも傾斜上方になるほど増大する量である進行方向登坂角が発生したことを推定する。具体的には、登坂角推定部63は、車両3の停車時には、車両3の前後に分離して配置されたGセンサである前後Gセンサ99によって登坂角を推定する。車両3の走行時には、電動機2A、2Bの回転数、又は、車輪(前輪Wf(RWf,LWf))に基づいて、登坂角を推定する。
駆動状態切替部64は、スリップの状況、横Gの状況に基づいて、第1駆動輪としての前輪RWf,LWfと第2駆動輪としての後輪Wr(RWr,LWr)とのうちいずれか一方のみによって車両3を駆動する一方輪単独駆動状態(2WD)から、第1駆動輪としての前輪RWf,LWfと第2駆動輪としての後輪Wr(RWr,LWr)との双方によって車両3を駆動するAWDに、駆動力配分を変更して切り替える。
ここで、一方輪単独駆動状態としては、前輪Wf(RWf,LWf)のみによって車両3を駆動するFWDと、後輪Wr(RWr,LWr)のみによって車両3を駆動するRWDがある。
また、駆動状態切替部64は、2WDからAWDへの切り替えに加え、AWDを維持した状態での駆動力配分の切り替えを実行する。具体的には、駆動状態切替部64は、AWD要求フラグが「1」に設定されたとき、車両3の駆動状態をAWDに切り替える。
ここで、前後配分設定とは、車両3の進行方向輪とその反対側輪との駆動力[N]の配分比率を意味する。駆動力[N]は、センサによって検出される他、例えば、アクセル開度センサ92によって検出されたアクセル開度、エンジン回転数センサ93によって検出されたエンジン回転数、電動機5,2A,2Bそれぞれに設けられたレゾルバ94によって検出された各検出値などに基づいて推定されて、取得される。
また、前後配分設定は、車両3の進行方向輪とその反対側輪との駆動力[N]の配分差であってもよい。
次に、図4及び図5を参照して、車両3の傾斜又は車両3が位置する路面の傾斜を検出して、車両3の駆動状態をAWDに切り替える動作についてより詳細に説明を行う。
ここで、図4は、上記実施形態に係るECU6による制御における、車両3の走行時における処理を示すフロー図である。
車両3が停車しているときには、前後Gセンサ99から登坂角推定部63へ検出信号が入力される。登坂角推定部63においては、停車時登坂角推定部631のフィルタ部6311に検出信号が入力され、ノイズ成分が除去される。フィルタ部6311は、ローパスフィルタを有しており、より高い精度で推定傾斜角を算出するために、前回フィルタ部6311に入力された検出信号を参考値として、ピッチング成分が除去される。ピッチング成分が除去された検出信号は、傾斜角換算部633において、検出信号から所定の値が減算されることにより、検出信号に対応する傾斜角の値に変換され、傾斜角の推定値として出力される。
車両3の走行中であって、前述の切離機構がONの状態であることにより、電動機2A,2Bと後輪RWr,LWrとが接続され、図2におけるMOT駆動状態又はMOT回生状態であるときには、電動機2A,2Bの回転数に応じた値を検出することにより電動機2A,2Bの回転数を検知可能なレゾルバ94からの検出値を、検出信号として登坂角推定部63へ入力する。そして、登坂角推定部63において、電動機2A、2Bそれぞれのレゾルバ94からの検出値の平均値が算出され、電動機2A、2Bの回転数に変換されて、電動機2A、2Bの回転数として用いられる。また、車両3の走行中であって、前述の切離機構がOFFの状態であることにより、一方向クラッチが切離されて、電動機2A,2Bと後輪RWr,LWrとが切り離された状態にあるときには、車輪速センサ91からの車輪速(後輪RWr,LWrの回転数)の値を検出信号として登坂角推定部63へ入力する。登坂角推定部63において、左右の車輪速の平均値(後輪RWr,LWrの回転数の平均値)が算出され、後輪RWr,LWrの回転数として用いられる。
登坂角推定部63においては、走行時登坂角推定部632のフィルタ部6321に、車輪速センサ91又はレゾルバ94からの検出信号が入力され、ノイズ成分が除去される。フィルタ部6321は、ローパスフィルタを有しており、より高い精度で推定傾斜角を算出するために、前回フィルタ部6321に入力された検出信号を参考値として、ピッチング成分が除去される。ピッチング成分が除去された検出信号は、検出信号に対応する傾斜角の値に変換され、傾斜角の推定値として、車輪加速度算出部6322へ出力される。
車輪加速度算出部6322においては、電動機2A、2Bのレゾルバ94からの検出値又は車輪速の値が車輪(後輪RWr,LWr)の加速度の値に変換され、車輪加速度リミット処理部6323へ出力される。車輪加速度リミット処理部6323においては、車輪加速度算出部6322における変換により得られた車輪(後輪RWr,LWr)の加速度の値が異常値の場合に、車輪の加速度の値が所定の値に変換される。これにより、ありえないような異常値が車輪加速度リミット処理部6323から出力されないように、車輪の加速度の値が、所定の値の範囲内に抑えられる。そして、異常値が修正された車輪の加速度の値が、傾斜角換算部633へ出力される。傾斜角換算部633においては、加速度の値から所定の値が減算されることにより、加速度の値が、検出信号に対応する傾斜角の値に変換され、傾斜角の推定値として出力される。
そして、出力された傾斜角の推定値に基づいて、駆動状態切替部64は、所定の勾配以上の傾斜面を登坂していると判断した場合には、切離機構は一方向クラッチによってONとなり、第1駆動装置1と第2駆動装置2との何れも駆動する双方輪(4輪)駆動状態(AWD)となり、電動機2A,2Bの動力が後輪RWr、LWrに伝達される。
以上の動作を、時間の経過に沿ったタイムチャートで説明すると、以下のとおりである。図5は、上記実施形態に係る車両駆動システム10を搭載した車両3の各部の状態を示すタイムチャートである。なお、以下の説明で「車輪速」、「車輪加速度」等の「車輪」は、後輪RWr、LWrを意味する。
車両3が登坂し始めると、図5に示すように、アクセル開度が一定であれば、車両3の車輪速が一定の割合で徐々に低下する。車輪加速度は、車輪速が一定の割合で低下しているため、一定の値のままである。また、前後Gセンサにおいては、車両3の登坂に伴い車両3の姿勢が変化することにより、値の増加が検出される。この間、登坂角推定部63は、推定傾斜角を算出し続けており、推定傾斜角の値が増加し続ける。
次に、時刻T1において、破線で示す所定の閾値を超えた推定傾斜角の値を、登坂角推定部63が算出すると、ECU6において車両3が登坂していることを認識する。この際、車両3の登坂により低下し続けていた車輪速は一定となり、このため、時刻T1の時点において車輪加速度は一時的に上がり0となり、その後0の値が維持される。また、ECU6は、登坂カウンタを単位時間あたり一定の値で増加させ始める。このとき、前後Gセンサにおいては、車速が一定に保たれているため、一定の値が検出されている。
そして、時刻T1から所定の時間が経過した後の時刻T2おいて、登坂カウンタが、破線で示す所定の閾値を超えると、走行時登坂判定のフラグが「1」の状態となり、これに基づき、駆動状態切替部64は、AWD要求フラグを「1」の状態とする。このように時刻T1から所定の時間が経過した後の時刻T2おいて、AWD要求フラグを「1」の状態とすることにより、路面に対して、後輪RWr,LWrが追従してスリップしにくい状態になった時点で、駆動状態切替部64は、2WDからAWDへの切り替えを行う。これに少し遅れて、時刻T3において車輪加速度は上がり、車輪速は一定の割合で増加し始める。車輪加速度は、一定の値のままである。このとき、前後Gセンサにおいては、一時的に値が増加するが、その後すぐに一定の値が検出される。また、推定傾斜角の値も一定の値が検出される。
その後、時刻T4おいて、車輪速が、AWDによる登坂を必要としない速度に至ると、登坂カウンタはリセットされ、また、走行時登坂判定のフラグは「0」の状態とされる。
本実施形態によれば、以下の効果が奏される。
本実施形態では、ECUの登坂角推定部63は、車両3の走行中に車輪(後輪RWr、LWr)の回転数の値、又は、電動機2A,2B、5の回転数の値に基づいて、車両3の傾斜又は車両3が位置する路面の傾斜(推定傾斜角)を検出する。
このため、車両3の走行中に、車両3の傾斜又は車両3が位置する路面の傾斜が所定の閾値を超えたときに、AWDによる登坂が必要であることをECU6において認識することが可能である。このため、適切なタイミングで、2WDからAWDへの切り替えを行うことが可能となる。特に、車両3が低速で登坂に進入したときであっても、確実に2WDからAWDへの切り替えを行うことが可能となる。
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係る車両は、第1実施形態に係る車両3と比べて、車速の検出のみが異なる。図6は、本発明の第2実施形態に係る車両駆動システムを搭載した車両の登坂時の状態における、車輪速と電動機の回転数との関係を示すタイムチャートである。
図5に示す時刻T3の後に、車輪速が高くなり、図5における時刻T3と時刻T4との間の時刻である時刻T31(図6参照)において、車輪速が所定の値以上(所定の車速以上)になり車両が所定の車速以上となったときに、時刻T31よりも前にはONの状態であったブレーキソレノイドがOFFの状態とされ、リングフリー状態とされる。これにより、車輪に対する電動機2A,2Bによる駆動が遮断される。このため、時刻T31よりも前には比例関係であった電動機2A,2Bの回転数と車輪速とは、比例関係ではなくなる。ここで、車輪速の所定の値とは、例えば、電動機2A,2Bの最高回転数を意味する。
このとき、登坂角推定部63は、時刻T31よりも前には、レゾルバ94からの検出値に基づく車速により推定傾斜角を検出していたが、時刻T31以降には、車輪速センサ91からの検出信号に基づく車速により推定傾斜角を検出する。これにより、レゾルバ94からの検出値に基づく車速よりも精度は低くなるが、時刻T31以降に車輪速が所定の値以上になったときにおいても、登坂角推定部63は、おおよその車速の値を検出し続ける。
本実施形態によれば、以下の効果が奏される。
ECU6は、車両3が所定の車速以上の場合に、車輪(後輪RWr、LWr)に対する電動機2A、2Bによる駆動を遮断し、登坂角推定部63は、車両3が所定の車速以上か否かに関わらず、車両3の走行中における車速を検出する制御を行う。
そして、前輪Wf(RWf,LWf)、又は、後輪Wr(RWr,LWr)が、電動機2A,2Bにより駆動されているとき、即ち、切離機構が一方向クラッチによってONとなり、電動機2A,2Bの動力が後輪RWr,LWrに伝達される状態のときには、電動機2A,2Bの回転数に基づいて、車両3の傾斜又は車両3が位置する路面の傾斜(推定傾斜角)を検出する。前輪Wf(RWf,LWf)、及び、後輪Wr(RWr,LWr)が、電動機2A,2Bから切り離され、電動機2A,2Bによる前輪Wf(RWf,LWf)、及び、後輪Wr(RWr,LWr)の駆動が遮断されているとき、即ち、切離機構が一方向クラッチによってOFFとなり(OWCフリー)、電動機2A,2Bの動力が後輪RWr,LWrに伝達されない状態のときには、後輪Wr(RWr,LWr)の回転数に基づいて、車両3の傾斜又は車両3が位置する路面の傾斜(推定傾斜角)を検出する。
このため、車両3が高速で走行し、後輪Wr(RWr,LWr)の回転数(車輪速)が、電動機2A,2Bの最高回転数よりも高い回転数となるような場合には、前輪Wf(RWf,LWf)、及び、後輪Wr(RWr,LWr)が、電動機2A,2Bから切り離されるが、このような場合であっても、車両3の傾斜又は車両3が位置する路面の傾斜(推定傾斜角)を検出可能である。このため、車速の高低に関わらず、車速を検出することが可能である。この結果、電動機2A,2Bの最高回転数よりも高い回転数となるような車速においても、車速を継続して検出することにより、急に低い車速になった場合の推定傾斜角の算出速度を向上させることが可能となる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれる。
例えば、本実施形態では、走行中に推定傾斜角を得るために、車輪速センサ91、レゾルバ94からの検出値を用いたが、これに限定されない。走行中における推定傾斜角は、車速に相関のある相関量に基づいて得られればよい。
また、登坂角推定部63において入力するレゾルバ94からの検出値については、電動機2A、2Bから検出された検出値の平均値が用いられていたが、これに限定されない。同様に、電動機2A,2Bと後輪RWr,LWrとが切り離された状態にあるときには、車輪速センサ91からの車輪速(後輪Wr(RWr,LWr)回転数)の値を検出信号として登坂角推定部63へ入力し、この車輪速の値は、左右の車輪速の平均値が用いられたが、これに限定されない。
また、第1駆動輪は、前輪Wf(RWf,LWf)により構成され、第2駆動輪は、後輪Wr(RWr,LWr)により構成されたが、これに限定されない。
また、上記実施形態では、後輪側の第2駆動装置2を2つの電動機2A,2Bを具備する2モータ方式としたが、1モータ方式であってもよい。
1…第1駆動装置
2…第2駆動装置
2A,2B…電動機
3…車両
6…ECU(制御装置)
64…駆動状態切替部(判断部)
Wf(RWf,LWf)…前輪
Wr(RWr,LWr)…後輪

Claims (3)

  1. 車両の前輪及び後輪のいずれか一方である第1駆動輪を駆動する第1駆動装置と、
    前記車両の前輪及び後輪のいずれか他方である第2駆動輪を駆動する第2駆動装置と、
    前記第1駆動装置及び前記第2駆動装置を制御し、前記第1駆動輪及び前記第2駆動輪の駆動状態を制御する制御装置と、を備える車両駆動システムであって、
    前記制御装置は、
    前記車両の走行中に車速に相関のある相関量に基づいて、前記車両の傾斜又は前記車両が位置する路面の傾斜を検出し、前記第1駆動装置と前記第2駆動装置との駆動力配分を切り換えて、前記第1駆動輪及び前記第2駆動輪の双方によって前記車両を駆動する双方輪駆動状態とする判断部を有し、
    前記車両の走行中における車速に相関のある相関量は、前記第1駆動輪若しくは前記第2駆動輪の回転数、又は、前記第1駆動輪若しくは前記第2駆動輪を駆動させる電動機の回転数であり、
    前記第1駆動輪及び前記第2駆動輪に対して前記電動機による駆動が伝達されているときには、前記車両の走行中における車速に相関のある相関量は、前記電動機の回転数であり、
    前記第1駆動輪及び前記第2駆動輪に対して前記電動機による駆動が遮断されているときには、前記車両の走行中における車速に相関のある相関量は、前記第1駆動輪又は前記第2駆動輪の回転数である車両駆動システム。
  2. 前記制御装置は、前記車両が所定の車速以上の場合に、前記第1駆動輪及び前記第2駆動輪に対する前記電動機による駆動を遮断し、
    前記制御装置は、前記車両が所定の車速以上か否かに関わらず、前記車両の走行中における車速に相関のある相関量を検出する制御を行う請求項に記載の車両駆動システム。
  3. 前記制御装置は、前記車両の停車時には、前後Gセンサによる登坂角の推定を行う請求項1又は2に記載の車両駆動システム。
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