JP6443832B2 - リアクトル - Google Patents

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Description

本発明は、リアクトルに関する。
本出願は、2016年01月29日付けの日本国出願「特願2016−016034」、2016年05月26日付けの日本国出願「特願2016−105073」に基づく優先権を主張し、上記日本国出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
特許文献1は、車載コンバータ用のリアクトルとして、巻線を螺旋状に巻回した一対の巻回部(第一コイル、第二コイル)を備えるコイルと、巻回部内外に配置される環状の磁性コア(コア)と、巻回部と磁性コアとの間に介在される筒状ボビンと巻回部の両端に配置される枠状ボビンとを備えるものを開示する。
上記磁性コアは、複数のコア片と、隣り合うコア片間に介在されるアルミナ等から構成されるギャップ板とを備える。上記磁性コアのうち、巻回部内に配置される部分は、中間コア片(内コア片に相当)とギャップ板とが交互に積層された積層物である。上記筒状ボビンは、巻回部の内周面と上記積層物との間に介在される。この筒状ボビンは、巻回部の軸方向に直交する方向に二分割される一対の分割片を互いに係合することで筒状に形成されて、上記積層物の外周面の全面を覆う(以下、この筒状ボビンを従来の筒ボビンと呼ぶ)。上記枠状ボビンは、巻回部の端面と、巻回部外に配置される端部コア片(外コア片に相当)との間に介在され、上記積層物が挿通される一対の貫通孔を備える。その他、特許文献1は、上記コイルと、上記磁性コアと、これら筒状ボビン及び枠状ボビンとの組合体を樹脂で覆って、機械的保護などを図ることを開示する。
特開2012−248904号公報
本開示のリアクトルは、
巻回部を有するコイルと、
前記巻回部内外に配置される複数のコア片と、隣り合う前記コア片間に介在される少なくとも一つのギャップ部とを含む磁性コアと、
前記コイルと前記磁性コアとの間に介在される介在部材とを備え、
前記介在部材は、前記巻回部の内周面と前記磁性コアの外周面との間に介在されると共に、前記巻回部の軸方向に離間して配置される複数の内側分割片を備え、
前記複数の内側分割片のうち、少なくとも一つの内側分割片は、隣り合う前記コア片間の間隔を保持して、前記ギャップ部の一部を形成する介在突部を備える。
実施形態1のリアクトルを示す概略斜視図である。 実施形態1のリアクトルに備える組合体の分解斜視図である。 実施形態1のリアクトルに備える介在部材のうち、内側分割片を示し、端部分割片を内コア片の嵌め込み方向からみた正面図である。 実施形態1のリアクトルに備える介在部材のうち、内側分割片を示し、中間分割片の正面図である。 実施形態1のリアクトルに備える介在部材のうち、内側分割片を示し、隣り合う内コア片に端部分割片及び中間分割片を組み付けた状態を示す側面図である。 実施形態1のリアクトルに備える介在部材のうち、内側分割片を示し、図3Aの端部分割片に内コア片を配置した状態を示す正面図である。 実施形態1のリアクトルに備える介在部材のうち、内側分割片を示し、図3Bの中間分割片に内コア片を配置した状態を示す正面図である。 実施形態1のリアクトルを外コア片側からコイルの軸方向にみた正面図であり、外コア片は左半分のみを示す。 実施形態2のリアクトルを示す概略側面図である。 実施形態2のリアクトルに備える内コア片及び内側分割片の分解斜視図である。 実施形態3のリアクトルを示す概略側面図である。 実施形態3のリアクトルに備える内コア片及び内側分割片の分解斜視図である。 実施形態4のリアクトルを示す概略側面図である。 実施形態4のリアクトルに備える内コア片及び内側分割片のうち、一部の分解斜視図である。
[本開示が解決しようとする課題]
複数のコア片と、コア片間に少なくとも一つの磁気ギャップとを含む磁性コアを備えるリアクトルとして、簡単な構成でコア片間の間隔を保持できて、製造性にも優れることが望まれる。
磁気ギャップとして上述のギャップ板を備える構成では、コア片間の間隔をギャップ板によって確保できる。しかし、コア片とギャップ板とを接着剤などで接合する場合には工程数の増大を招く。また、上述の組合体を樹脂で覆う場合に従来の筒ボビンのように上述の積層物の全周を筒ボビンで覆うと、コイルの巻回部と巻回部内のコア片との間が上記従来の筒ボビンによって塞がれて、流動状態にある樹脂の流通路が狭くなり易い。そのため、樹脂の充填時間の長大化を招く。これらのことから、製造性の向上が望まれる。
そこで、簡単な構成でコア片間の間隔を保持できて、製造性にも優れるリアクトルを提供することを目的の一つとする。
[本開示の効果]
上記のリアクトルは、簡単な構成でコア片間の間隔を保持できて、製造性にも優れる。
[本願発明の実施形態の説明]
最初に、本願発明の実施態様を列記して説明する。
(1)本願発明の一態様に係るリアクトルは、
巻回部を有するコイルと、
前記巻回部内外に配置される複数のコア片と、隣り合う前記コア片間に介在される少なくとも一つのギャップ部とを含む磁性コアと、
前記コイルと前記磁性コアとの間に介在される介在部材とを備え、
前記介在部材は、前記巻回部の内周面と前記磁性コアの外周面との間に介在されると共に、前記巻回部の軸方向に離間して配置される複数の内側分割片を備え、
前記複数の内側分割片のうち、少なくとも一つの内側分割片は、隣り合う前記コア片間の間隔を保持して、前記ギャップ部の一部を形成する介在突部を備える。
上記のリアクトルは、介在突部を有する内側分割片を備えて、介在突部によって隣り合うコア片間の間隔を保持できる。そして、この間隔の大きさに応じたギャップ部を備えられる。そのため、コア片とは独立したギャップ板が不要であり、製造過程では、コア片とギャップ板との接合工程を省略できる。また、この内側分割片は、従来の筒ボビンとは分割方向が異なるものの、コア片間に介在突部が配置されるようにコア片に組み付ければよく、容易に組み付けられる簡単な構成である。上記のリアクトルは、従来の筒ボビンを備えるリアクトルの組立作業と類似する作業を行うことで製造できるといえる。従って、上記のリアクトルは、簡単な構成でコア片間の間隔を保持できて、製造性にも優れる。
上記のリアクトルは、そのままでも利用できる。この場合、隣り合うコア片間に介在されるギャップ部はエアギャップと介在突部とを含む。又は、上記のリアクトルは、コイルと磁性コアと介在部材とを含む組合体の外周面の少なくとも一部を覆い、樹脂を含む被覆材(例、後述の樹脂モールド部)を備える形態とすることができる。この形態では、製造過程で、流動状態にある樹脂(以下、未固化樹脂と呼ぶことがある)を、組合体を収納した金型内や、組合体を収納したケース内に充填することで、介在突部によってコア片間に形成される隙間にも同時に充填でき、コア片間に被覆材の一部から構成される樹脂ギャップ部を備えられる。この形態は、隣り合うコア片間に介在されるギャップ部として、樹脂ギャップ部と介在突部とを含む。また、複数の内側分割片がコイルの巻回部の軸方向に離間して配置されるため、未固化樹脂の充填前においてコア片の外周面の一部は内側分割片間から露出されて、この露出箇所と内側分割片との間に段差を有する。製造過程では、この段差を、未固化樹脂を導入する流路(以下、樹脂流路と呼ぶことがある)に利用でき、未固化樹脂の流通性に優れる。従って、上記のリアクトルは、特に被覆材を備える場合に、上記樹脂ギャップ部の形成と組合体の被覆とを同時に行える上に未固化樹脂の流通性に優れるため、製造性に優れる。
コア片間に介在する樹脂ギャップ部はコア片同士の接合材としても機能する。また、コア片における内側分割片間からの露出箇所は、上記被覆材との接触面積の増大に寄与する。従って、被覆材を備える上記のリアクトルは、コア片同士が強固に一体化されて機械的特性に優れる上に、一体物としての剛性が高められて振動や騒音などを抑制できる。その他、被覆材を備えることで、外部環境からの保護(コア片の防食など)、コイルや外部部品に対する絶縁性の向上、被覆材の材質によっては放熱性の向上などを期待できる。
(2)上記のリアクトルの一例として、
前記隣り合うコア片間に配置され、前記ギャップ部の他部を構成する樹脂ギャップ部を含み、前記樹脂ギャップ部に連続し、前記隣り合うコア片の外周面における前記内側分割片からの露出箇所を覆う樹脂モールド部を備える形態が挙げられる。
上記形態は、樹脂モールド部の形成前において上述の樹脂流路を有して未固化樹脂の流通性に優れること、樹脂ギャップ部の形成とコア片における内側分割片からの露出箇所を覆う部分の形成とを同時に行えることから、製造性に優れる。また、上記形態は、樹脂モールド部における上記露出箇所を覆う部分によって、上述のように磁性コアの固定強度の向上による機械的特性の向上、コア片の外部環境からの保護、振動・騒音の抑制、コイルの巻回部とコア片との絶縁性の向上、放熱性の向上などの効果が期待できる。更に、樹脂ギャップ部を備える上記形態は、エアギャップを備える場合に比較して、コア片同士の間隔をより確実に維持できる。そのため、上記形態は、コア片間の間隔の変動によるインダクタンスの変動を抑制して、長期に亘り、所定のインダクタンスを維持できて、信頼性を高められる。この(2)の形態及び後述の(3)の形態の一例として、前記コイルの外周面が前記樹脂モールド部から露出された形態が挙げられる。
(3)上記のリアクトルの一例として、
前記複数の内側分割片のうち、少なくとも一つの内側分割片は、前記介在突部と、前記隣り合うコア片の外周面の一部を連続して覆い、その内周面から前記介在突部が立設される本体部と、前記外周面を部分的に露出させることで前記本体部を前記外周面の周方向に分断する切欠部とを備え、
前記隣り合うコア片間に配置され、前記ギャップ部の他部を構成する樹脂ギャップ部と、前記樹脂ギャップ部に連続し、前記外周面における前記切欠部からの露出箇所と前記本体部との段差を埋める中間被覆部とを備える樹脂モールド部を備える形態が挙げられる。
上記形態は、樹脂モールド部の形成前においてコア片における切欠部からの露出箇所も樹脂流路に利用できる。従って、上記形態は、製造過程では樹脂流路を十分に備えて未固化樹脂をコア片間に容易に導入できること、樹脂ギャップ部の形成と中間被覆部の形成とを同時に行えることから、製造性に優れる。
また、上記形態は、上記(2)と同様の効果、樹脂ギャップ部の具備によるインダクタンスの維持、樹脂ギャップ部及び中間被覆部の具備による機械的特性の向上、外部環境からの保護、振動・騒音の抑制、絶縁性の向上、放熱性の向上などの効果を奏する。
更に、上記形態は、樹脂モールド部の形成前において、介在突部によって隣り合うコア片間に形成される隙間をこれらコア片の周方向にみると、その一部は、切欠部から露出されて開口し、残部は本体部に覆われている。この切欠部から露出する開口部を未固化樹脂の導入口とすると、コア片間に未固化樹脂を導入する方向を規制できる。ここで、コア片間の隙間といった狭い空間に未固化樹脂を多方向から導入すると、未固化樹脂同士が狭い空間内で衝突するなどして、コア片間に適切に充填されない可能性がある。上記形態は、製造過程で、切欠部によって、コア片間への未固化樹脂の導入方向を規制して、樹脂ギャップ部を適切に形成できることからも、所定のインダクタンスを維持できる。
(4)中間被覆部を含む樹脂モールド部を備える上記(3)のリアクトルの一例として、
前記複数の内側分割片は、前記巻回部の軸方向の中間位置に配置され、前記介在突部を備える少なくとも一つの中間分割片と、前記中間分割片を挟み、前記巻回部の各端面側に配置される一対の端部分割片とを含み、
前記端部分割片は、前記コア片の外周面をその周方向に囲む環状本体部と、前記コア片の外周面と前記環状本体部の内周面との間の間隔を保持する端部側突部とを備え、
前記樹脂モールド部は、前記中間被覆部に連続し、前記コア片の外周面と前記環状本体部の内周面間に介在される端部被覆部を備える形態が挙げられる。
上記形態は、上記(3)で説明した効果を奏することに加えて、樹脂モールド部の形成前において端部側突部によって環状本体部とコア片との間に形成される隙間も、樹脂流路に利用できる。従って、上記形態は、製造過程で樹脂流路を十分に備えて、未固化樹脂の流通性に優れるため、製造性に優れる。
(5)樹脂モールド部を備える上記(2)から上記(4)のいずれか一つのリアクトルの一例として、
前記内側分割片が組み付けられるコア片のうち、少なくとも一つのコア片の外周形状は角部を有する形状であり、
前記複数の内側分割片は、前記巻回部の軸方向の中間位置に配置され、前記介在突部を備える少なくとも一つの中間分割片と、前記中間分割片を挟み、前記巻回部の各端面側に配置される一対の端部分割片とを含み、
前記端部分割片は、前記角部を有するコア片の外周面をその周方向に囲む環状本体部と、前記環状本体部から前記コア片の角部を覆うように突出する端部爪部とを備える形態が挙げられる。
上記形態は、コア片の角部を端部爪部によって局所的に覆うため、製造過程で樹脂流路を確保でき、未固化樹脂を良好に流通できて製造性に優れる上に、コイルの巻回部の端面側から導入した未固化樹脂が導入側に逆流して、コイルの端面を経てコイルの外周面を覆うことを防止できる。上記形態は代表的にはコイルの外周面が樹脂モールド部に覆われず露出される。
上記形態は以下の知見に基づくものである。端部爪部を有さない場合、端部分割片と中間分割片との間であって、コア片の角部とコイルの巻回部の内周面との間には比較的大きな隙間ができる。上述のように巻回部の端面側から導入した未固化樹脂が端部分割片を経て上記大きな隙間に至ると、この大きな隙間に連通する、端部分割片の外周面と巻回部の内周面との間の微小な隙間を利用して、未固化樹脂が巻回部の端面側に逆流することがある。未固化樹脂の充填条件、未固化樹脂の材質、コア片の形状や大きさ、上述の隙間の大きさなどにもよるが、上述の大きな隙間からコイルの端面を経てコイルの外周面に至るまでの距離を長くすれば、逆流しても、コイルの端面から未固化樹脂が漏れ出て、コイルの外周面が覆われることを防止できる。また、コア片の外周面の全面を内側分割片で覆う構成ではなく、コア片の角部を局所的に覆う構成とすれば、樹脂流路を十分に確保できて製造性に優れる。これらの知見に基づき、上記形態は、端部爪部を有する構成とする。
(6)樹脂モールド部を備える上記(2)から上記(5)のいずれか一つのリアクトルの一例として、
前記内側分割片が組み付けられるコア片のうち、少なくとも一つのコア片の外周形状は角部を有する形状であり、
前記複数の内側分割片は、前記巻回部の軸方向の中間位置に配置され、前記介在突部を備える中間分割片を少なくとも一つ含み、
前記中間分割片は、前記隣り合うコア片の外周面の一部を連続して覆う本体部と、前記外周面を部分的に露出させることで前記本体部を前記外周面の周方向に分断する切欠部と、前記本体部から前記コア片の角部を覆うように突出する中間爪部とを備える形態が挙げられる。
上記形態は、コア片の角部を中間爪部によって局所的に覆うため、製造過程で樹脂流路を確保でき、未固化樹脂を良好に流通できて製造性に優れる上に、リアクトルの使用時に樹脂モールド部にクラックを生じ難くすることができる。
上記形態は以下の知見に基づくものである。コア片の角部が中間爪部に覆われず、コア片の角部と未固化樹脂とが直接接触する場合には、樹脂モールド部におけるコア片の角部を覆う箇所が応力集中箇所になり易い。応力集中箇所が局所的に存在する樹脂モールド部に対して、リアクトルの使用時に熱応力や外部応力などが加わると、樹脂モールド部に応力集中箇所を起点としてクラックが生じる場合がある。未固化樹脂が直接接触しないようにコア片の角部を覆えば、上述の応力集中箇所を低減できる、好ましくは実質的に生じないようにできる。また、コア片の外周面の全面を内側分割片で覆う構成ではなく、コア片の角部を局所的に覆う構成とすれば、樹脂流路を十分に確保できて製造性に優れる。これらの知見に基づき、上記形態は、中間爪部を有する構成とする。応力集中箇所の発生をより確実に防止するためには、コア片の角部におけるコイルの巻回部の軸方向に沿った全長に亘って、中間爪部によって覆われること、又は中間爪部と上述の端部爪部との双方によって覆われることが好ましい。
(7)樹脂モールド部を備える上記(2)から上記(5)のいずれか一つのリアクトルの一例として、
前記内側分割片が組み付けられるコア片のうち、少なくとも一つのコア片の外周形状は角部を有する形状であり、
前記複数の内側分割片は、前記巻回部の軸方向の中間位置に配置され、前記介在突部を備える中間分割片を少なくとも一つ含み、
前記中間分割片は、前記隣り合うコア片の外周面から突出しない板状に設けられた前記介在突部と、前記介在突部の角部から前記コア片の角部を覆うように突出する中間爪部とを備える形態が挙げられる。
上記形態は、コア片の角部を中間爪部によって局所的に覆い、介在突部がコア片の外周面から突出しないため、隣り合うコア片の外周面における中間分割片からの露出箇所をより多くでき、製造過程において樹脂流路をより大きく確保し易い。従って、上記形態は、未硬化樹脂の流動性に優れて樹脂モールド部を形成し易く、製造性に優れる。また、上記形態は、コア片と樹脂モールド部との接触面積を大きく確保し易く、樹脂モールド部による磁性コアの固定強度を高められる。
(8)中間爪部を備える上記(6)又は上記(7)のリアクトルの一例として、
前記中間爪部は、隣り合う別の爪部と互いに係合する係合部を備える形態が挙げられる。
上記形態は、隣り合う中間爪部同士、又は中間爪部と上述の端部爪部同士が係合部によって係合可能なため、製造過程で、独立した複数の内側分割片を互いに位置決めし易い上に、コア片との組み付け状態を維持し易く、製造性に優れる。
[本願発明の実施形態の詳細]
以下、図面を参照して、本願発明の実施形態を具体的に説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。
[実施形態1]
図1〜図4を参照して、実施形態1のリアクトル1Aを説明する。
図1では、コイル2の内部が分かり易いように、巻回部2aの一部を切り欠いて示す。図4では、枠板部52の外コア側の面が分かり易いように、外コア片32を図1に示す(IV)−(IV)切断線で切断して右半分を除去し、左半分のみを示す。
(リアクトル)
・全体構成
実施形態1のリアクトル1Aは、図1に示すように、筒状の巻回部2a,2bを有するコイル2と、巻回部2a,2b内外に配置される磁性コア3Aと、コイル2と磁性コア3Aとの間に介在される介在部材5Aとを備える。この例のリアクトル1Aは、更に、磁性コア3Aの外周面の少なくとも一部を覆う樹脂モールド部6を備える。この例のコイル2の外周面は、樹脂モールド部6に覆われず露出され、コイル2の内周面は樹脂モールド部6の構成樹脂及び介在部材5Aによって覆われる。リアクトル1Aは、代表的には、コンバータケースなどの設置対象(図示せず)に取り付けられて使用される。図1では、リアクトル1Aを設置したときの設置側が下側、その対向側が上側である場合を例示する。
リアクトル1Aに備える磁性コア3Aは、複数のコア片と、隣り合うコア片間に介在される少なくとも一つのギャップ部(この例では複数)とを含む。この例では、巻回部2a,2b内に配置される複数の内コア片31と、巻回部2a,2b外に配置される一対の外コア片32,32と、内コア片31,外コア片32間、及び内コア片31,31間にそれぞれ介在されるギャップ部(ここでは後述の樹脂ギャップ部60を含む)とを備える。
リアクトル1Aに備える介在部材5Aは、巻回部2a,2bの内周面と磁性コア3Aの外周面との間にそれぞれ介在される内側介在部として、複数の内側分割片51を含む。この例の介在部材5Aは、更に、巻回部2a,2bの端面と、外コア片32の内端面32e(図2)との間に介在され、内側介在部とは独立した一対の枠板部52,52を含む。
実施形態1のリアクトル1Aは、各巻回部2a,2b内における複数の内側分割片51が巻回部2a,2bの軸方向に離間して配置されることを特徴の一つとする。この例では、巻回部2a,2b内にそれぞれ配置される複数の内側分割片51は、巻回部2a又は巻回部2bの軸方向の中間位置に配置される複数の中間分割片510と、中間分割片510を挟み、巻回部2aの各端面側又は巻回部2bの各端面側に配置される一対の端部分割片515,515とを含む(図2も参照)。また、実施形態1のリアクトル1Aは、複数の内側分割片51のうち、少なくとも一つの内側分割片51(ここでは複数の中間分割片510)が巻回部2a,2b内に配置され、隣り合うコア片(ここでは内コア片31,31間)の間隔を保持して、上述のギャップ部の一部を形成する介在突部5126(図2)を備えることを特徴の一つとする。この例では、上記ギャップ部の他部として、樹脂モールド部6の一部から構成される樹脂ギャップ部60を備える。リアクトル1Aは、介在部材5Aによって隣り合うコア片間の間隔を保持して、この間隔の大きさに応じたギャップ部を備えられるため、アルミナ製のギャップ板などが不要であり、簡素な構成である。
以下、リアクトル1Aの主要部材であるコイル2、磁性コア3Aの概要、特徴点の一つである介在部材5Aの詳細及び樹脂モールド部6の詳細を順に説明する。
・コイル
この例のコイル2は、図2に示すように独立した巻回部2a,2bが接合によって一体化されている。詳しくは、各巻回部2a,2bは、1本の連続する巻線2w,2wがそれぞれ螺旋状に巻回された筒状であり、互いの軸が平行するように並列(横並び)に配置される。各巻線2w,2wの一端部同士を溶接や圧着などによる接合箇所とし、この接合によって、コイル2は電気的に接続された一体物をなす。図2では、一方の巻回部2bを形成する巻線2wの一端部が巻回部2bから離れるように上方に向かって引き出され、他方の巻回部2aを形成する巻線2wの一端部が一方の巻回部2bに向かって折り曲げられることで両一端部が近接配置された例を示す。巻線2w,2wの他端部は、巻回部2a,2bから適宜な方向に引き延ばされて、代表的には図示しない端子部材が接続される。図2では、他端部が、巻回部2a,2bから離れるように上方に引き出された例を示すが、引出方向は適宜変更できる。上記端子部材を介して、コイル2に電力供給を行う電源などの外部装置が接続される。
この例の各巻回部2a,2bの端面形状は、角部を丸めた正方形状である。また、この例の巻線2wは、平角線の導体(銅など)と、この導体の外周を覆う絶縁被覆(ポリアミドイミドなど)とを備える被覆平角線(いわゆるエナメル線)であり、巻回部2a,2bはエッジワイズコイルである。
(磁性コア)
磁性コア3Aは、上述のように複数の内コア片31と、一対の外コア片32,32と、複数のギャップ部(樹脂ギャップ部60)とを備える。この例の内コア片31の外周形状(コイル2の軸に実質的に平行に配置される面で形成される輪郭形状)は、角部を有する形状である。図2,図3D,図3Eに示す内コア片31は、巻回部2a,2bの形状に対応して、端面形状が角部を丸めた正方形状である柱状体である。図2に示す外コア片32は、設置面(下面)及びその対向面(上面)がドーム状である柱状体である。外コア片32における内コア片31の端面との接続面となる内端面32eは、後述する切欠329を除いて、一様で平坦な平面で構成される。複数の内コア片31と樹脂ギャップ部60とが交互に配置された一対の積層部分を繋ぐように一対の外コア片32,32が組み付けられて、環状の磁性コア3Aを形成する。磁性コア3Aは、コイル2を励磁したときに閉磁路を形成する。
内コア片31,外コア片32は、主として軟磁性材料から構成される。軟磁性材料は、例えば、鉄や鉄合金(Fe−Si合金、Fe−Ni合金など)といった軟磁性金属などが挙げられる。内コア片31,外コア片32は、軟磁性材料からなる粉末や、絶縁被覆を備える被覆粉末などを圧縮成形した圧粉成形体、軟磁性粉末と樹脂とを含む複合材料の成形体などが挙げられる。樹脂ギャップ部60の詳細は、樹脂モールド部6の項で説明する。
(介在部材)
主に図2〜図4を参照して介在部材5Aを説明する。
・概要
介在部材5Aは、代表的には絶縁材料によって構成されて、コイル2と磁性コア3A間の絶縁部材として機能する。また、介在部材5Aは、後述するように所定の大きさ、形状に形成されて、巻回部2a,2bに対する内コア片31,外コア片32の位置決め部材として機能する。この例では、複数の内側分割片51は、巻回部2a,2bの内周面と内コア片31との間の絶縁、巻回部2a,2bに対する内コア片31の位置決めを行う。枠板部52は、巻回部2a,2bの端面と外コア片32との間の絶縁、巻回部2a,2bに対する外コア片32の位置決めを行う。結果として、介在部材5Aは、内コア片31と外コア片32との位置決めを行う。
実施形態1のリアクトル1Aでは、介在部材5Aは、複数の内側分割片51のうち、中間分割片510が隣り合うコア片間(ここでは内コア片31,31間)の間隔を保持する介在突部5126を備え、ギャップ形成部材としても機能する。この例のリアクトル1Aは、隣り合う内コア片31,31間に配置されるギャップ部として、樹脂モールド部6の一部によって構成される樹脂ギャップ部60を備える。
この例のリアクトル1Aでは、並列される複数の内コア片31(この例では三つ)に対して巻回部2a,2bの軸方向に複数の中間分割片510(この例では二つ)及び一対の端部分割片515,515が所定の間隔をあけて配置される。そのため、樹脂モールド部6の形成前において、内コア片31の外周には、この間隔の大きさに応じた空間(内コア片31の外周面と内側分割片51との間の段差空間)が設けられる(図2に示す内コア片31と内側分割片51との組物参照、図3C参照)。この例の中間分割片510は、内コア片31の外周面の全周を覆わず、内コア片31の周方向の一部を露出するように切り欠かれている。そのため、樹脂モールド部6の形成前において、内コア片31の外周には、この切欠部分に応じた空間(内コア片31と中間分割片510との間の段差空間)が設けられる(図3Eの隙間G514参照)。この例の端部分割片515は、内コア片31の外周面の全周を囲む環状体であるものの、内コア片31の外周面との間に所定の間隔を確保する形状である。そのため、樹脂モールド部6の形成前において、内コア片31の外周には、端部分割片515との間にこの間隔の大きさに応じた空間が設けられる(図3Dの隙間g参照)。これらの空間を樹脂モールド部6の形成時に未固化樹脂の樹脂流路として利用できる。従って、介在部材5Aは、未固化樹脂の樹脂流路の形成部材としても機能する。
各中間分割片510は同一形状である。また、各端部分割片515は同一形状である。以下の説明では、一つの中間分割片510,一つの端部分割片515を説明する。
・内側分割片
・・中間分割片
この例の中間分割片510は、図2,図3B,図3Eに示すように内コア片31の外周面に沿って、帯材がU字状に折り曲げられたような部材である。内コア片31と中間分割片510とが組み付けられた状態では、中間分割片510の内周面は、内コア片31に実質的に接して(図3E、組み付け作業上の僅かな隙間は許容する)、支持面として機能する(図3Cも参照)。
詳しくは、中間分割片510は、隣り合う内コア片31,31の外周面の一部を連続して覆う本体部512と、上記外周面を部分的に露出させることで、本体部512を上記外周面の周方向に分断する切欠部514とを備える。この例の本体部512は、端面形状が角部を丸めた正方形状である内コア片31に対応して、端面形状が角部を丸めた正方形状の枠体である(図3B,図3E)。本体部512の内周面は、内コア片31に沿って平滑な面で構成され、外周形状は後述する厚肉部を有することで凹凸形状である。図3Eでは、本体部512として、内コア片31の三面(左右の面、下面)及び丸められた四つの角部を覆い、内コア片31の一面(上面)を覆わずに露出する例を示す。なお、この例の中間分割片510は、図3Bに示す状態から水平方向に180°回転した場合に重なる回転対称な形状である。
本体部512における内コア片31の外周面を覆う領域の周長は、適宜選択できる。この周長が短いほど(例えば、下面と下面に繋がる二つの角部を備える形態(後述する実施形態4参照)とするなど)、切欠部514の周長が長くなる。その結果、内コア片31の外周面における本体部512からの露出箇所が多くなり、上述の樹脂流路が多くなる。上記領域の周長が長いほど、切欠部514の周長が短くなる。その結果、内コア片31における本体部512による支持領域が多くなり、製造過程で内コア片31と中間分割片510との組み付け状態が安定し易い。この例のように内コア片31の一面(上面)のみを露出させると、樹脂モールド部6の形成時、切欠部514から露出される一面側の開口部からのみ、コア片間に未固化樹脂を導入できる。即ち未固化樹脂を一方向に導入できる。例えば二方向から上記コア片間に未固化樹脂を導入すると、異なる方向から導入された未固化樹脂が衝突する場所でウェルドが形成される可能性がある。本例のように上記コア片間に一方向に未固化樹脂が導入される構成とすれば、上記ウェルドが形成され難く、ウェルドによる性能の低下が実質的に生じない。
未固化樹脂を一方向に導入するには、介在突部5126の形状などに応じて本体部512の周長を選択するとよい。本体部512の周長が短くても、例えば図3Bに示すように介在突部5126をU字状に設けることで、隣り合う内コア片31,31間の周方向の一部のみが開口して、一方向の導入を行える。この例のように介在突部5126をU字状とし、その開口部に連続するように切欠部514を備えることに加えて、本体部512によって内コア片31の三面を覆うことで未固化樹脂の導入方向をより規制し易い。
本体部512の厚さは、巻回部2a,2bと磁性コア3Aとの間に求められる絶縁性などを考慮して、適宜選択できる。例えば、本体部512の全長に亘って、本体部512の厚さを均一的にすることができる。又は、この例のように本体部512の厚さを部分的に異ならせることができる。詳しくは、図3Bに示すように角部及びその近傍の厚さがその他の部分よりも厚い。本体部512に、厚肉部と厚さが薄い薄肉部とを備えて凹凸形状であることで、両者の段差空間G(図3E)を樹脂モールド部6の樹脂流路に利用できる。本体部512の薄肉部の外周面は、図1のコイル2の切欠部分,図3Eの二点鎖線(仮想線)に示すように樹脂モールド部6(内側被覆部61)で覆われる。本体部512の厚肉部の外周面は、代表的には樹脂モールド部6から露出されて(図1)、巻回部2a,2bの内周面に近接する又は接する(図3E)。本体部512における薄肉部の割合が多いほど(例えば、厚肉部を対角位置の二つの角部のみにするなど)、樹脂流路を増大できる結果、本体部512と樹脂モールド部6との接触面積を増大できる。そのため、磁性コア3Aが複数のコア片を含み、介在部材5Aも複数の分割片を含むものの、樹脂モールド部6による磁性コア3Aの固定強度を高められる。本体部512における厚肉部の割合が多いほど(例えば、内コア片31の三面のうちの少なくとも一面を覆う部分全体を厚肉部にするなど)、コイル2と磁性コア3Aとの絶縁性を高められ易い。
本体部512における巻回部2a,2bの軸方向に沿った長さ(以下、幅と呼ぶ)は、適宜選択できる。この例の本体部512の幅は、その全周に亘って一様である(図2)。本体部512の幅が長いほど、内コア片31における本体部512による支持領域が多くなり、上述のように製造過程で組み付け状態が安定し易い。また、本体部512による内コア片31の角部を覆う長さが長くなり、結果として、樹脂モールド部6のクラックの発生を低減し易い。本体部512の幅が短いほど、隣り合う中間分割片510,510間の間隔、隣り合う中間分割片510,端部分割片515の間の間隔を大きくして、上述の樹脂流路を増大できる。その結果、内コア片31と樹脂モールド部6との接触面積を増大できて、樹脂モールド部6による磁性コア3Aの固定強度を高められる。本体部512の幅を部分的に異ならせることができる(類似の構成として実施形態2,3参照)。後述する端部分割片515の環状本体部517の幅についても、本体部512の幅に関する事項を参照できる。上述の中間分割片510,510の間隔、中間分割片510,端部分割片515間の間隔が所定の値となるように、本体部512の幅、後述の環状本体部517の幅を設定するとよい。
・・・介在突部
中間分割片510は、コイル2の巻回部2a,2bの内周面と磁性コア3Aの外周面との間に介在される本体部512に加えて、本体部512の内周面、即ち本体部512における内コア片31の外周面との対向面から直交方向に立設する介在突部5126を備える。介在突部5126は、図3Cに示すように、隣り合う内コア片31,31間に介在されて、内コア片31,31間の間隔を、介在突部5126の厚さに応じた大きさに保持する。内コア片31,31間の間隔は、磁気ギャップとして利用する。従って、介在突部5126の厚さは、所定の磁気ギャップ長に応じて設定する。
この例の介在突部5126は、図3Bに示すように、本体部512の内周面の周方向に沿って、U字状の全長に亘って設けられたU字状の平板材である(図2も参照)。介在突部5126の外形は、内コア片31の端面形状に対応して角部を丸めた正方形状である。このU字状の平板材の内縁面は、切欠部514を形成する内周面に連続する。介在突部5126の形状、配置形態は、適宜変更できる。この例では、上述のように本体部512の形状に沿った形状であり、本体部512に連続する一つの部材であるが、例えば、複数の介在突部が本体部512の内周面の周方向に離間して配置される形態、本体部512の内周面の周方向の一部にのみ配置される一つの介在突部を備える形態などとすることができる。いずれの形態も本体部512の周方向に沿った長さが本体部512の周長よりも短い切片状の介在突部を備えることになる。又は、介在突部5126を平板材や切片に代えて、又は上記切片状の介在突部に加えて、棒状材などを備えることができる。
介在突部5126は、内コア片31と中間分割片510とが組み付けられた状態において、内コア片31の端面を覆う。従って、介在突部5126によって内コア片31の端面を覆う面積割合が大きいほど、介在突部5126による内コア片31の端面を支持する面積が大きくなるため、内コア片31,31間の間隔を保持し易い。上記面積割合が小さいほど、この例では内コア片31の端面における樹脂ギャップ部60との接触面積が多くなる。そのため、樹脂ギャップ部60による内コア片31,31同士の接合強度の向上などが期待できる。接合強度の向上を期待する場合には、介在突部5126を小さくして、樹脂ギャップ部60の形成領域を増大するとよい。内コア片31における介在突部5126によって覆われない面積割合は、例えば、50%以上、60%以上、70%以上、更に80%以上とすることができる。上記面積割合が所定の値となるように、介在突部5126の形状、介在突部5126における本体部512の内周面からの突出高さ、本体部512の内周面の周方向に沿った合計周長、配置形態などを選択するとよい。
一つの巻回部2a,2b内に配置される中間分割片510の個数は適宜変更でき、一つ又は三つ以上とすることができる。複数の中間分割片510を備える場合には、形状や大きさ(本体部512の周長・厚さ・幅、介在突部5126における面積割合など)などが異なる中間分割片510を備えることができる。この例のように全ての中間分割片510が同一形状、同一の大きさであれば、組み付け時に扱い易く、リアクトル1Aの製造性に優れる上に、中間分割片510自体の製造性にも優れる(この点は後述の端部分割片515についても同様である)。この段落の記載内容は、後述する実施形態2〜4についても同様に参照できる。
・・端部分割片
この例の端部分割片515は、図2,図3A,図3Dに示すように内コア片31の外周面に沿って、帯材が角部を丸めた正方形状に巻回されたような環状の部材である。内コア片31と端部分割片515とが組み付けられた状態では、端部分割片515の内周面の一部(ここでは角部)は内コア片31に接して内コア片31を支持し、他部(ここでは角部以外)は内コア片31に接触せず、内コア片31との間に隙間gを形成する。詳しくは、端部分割片515は、内コア片31の外周面をその周方向に囲む環状本体部517と、内コア片31の外周面と環状本体部517の内周面との間の間隔を保持する端部側突部5176とを備える。
ここで、端部分割片515は、中間分割片510のように切欠部514を備えることができるが、この例では、実質的に磁性コア3Aのみを樹脂モールド部6で覆い、コイル2を樹脂モールド部6で覆わないため、切欠部514を備えずに環状とする。端部分割片515を環状とすることで、樹脂モールド部6の形成時、外コア片32からコイル2の端面側を経て内コア片31に向かって未固化樹脂を充填する際に、未固化樹脂がコイル2の外周面に漏れ出ることを防止し易くなる。この例の環状本体部517は、内コア片31の外周面の全周を囲むと共に、巻回部2a,2bの内周面と環状本体部517の外周面との間に実質的に隙間が設けられず、内コア片31の外周面と環状本体部517の内周面との間に隙間gが設けられる厚さに調整されている(図3D)。
環状本体部517の外周面は、一様な平面で構成されて(図3A,図2)、巻回部2a,2bの内周面に実質的に接する(図3D)。環状本体部517の内周形状は厚さが部分的に異なることで凹凸形状である。詳しくは、環状本体部517の四つの角部及びその近傍の厚さが他の箇所よりも厚く、内周側に向かって突出している(図2)。この厚肉部を端部側突部5176とする。端部側突部5176と、その他の厚さが薄い薄肉部との間には段差ができる(図3A,図2)。そのため、図3Dに示すように、内コア片31と環状本体部517とが組み付けられた状態では、端部側突部5176における薄肉部の内周面からの突出高さに応じた隙間gが設けられる。この例では、内コア片31の四面と薄肉部との間に合計四か所の隙間gが形成される。
端部側突部5176の厚さ(又は突出高さ)及び薄肉部の厚さは、上記隙間g(上記段差)が所定の値となるように適宜選択するとよい。隙間gが大きいほど(端部側突部5176の厚さが厚い、又は薄肉部の厚さが薄い)、未固化樹脂を導入し易く、未固化樹脂の流通性に優れる。隙間gが小さいほど(端部側突部5176の厚さが薄い、又は薄肉部の厚さが厚い)、端部側突部5176による内コア片31の支持状態が安定し易い。
端部側突部5176の形成領域は適宜選択できる。この例のように矩形枠状の環状本体部517において、四つ角及びその近傍に端部側突部5176を備えると、上記隙間gが十分に大きく、樹脂流路を十分に確保できる。例えば、環状本体部517における対角位置の二つの角部及びその近傍にのみ端部側突部5176を備える形態とすれば、樹脂流路をより増大できる。又は、例えば、内コア片31の一面全体を支持可能な端部側突部5176を備える形態とすれば、端部側突部5176と内コア片31の外周面との接触面積が増大して、内コア片31の支持状態がより安定し易い。
この例の端部分割片515は、コイル2の巻回部2a,2bの内周面と磁性コア3Aの外周面との間に介在される環状本体部517に加えて、内コア片31における外コア片32との対向面の一部を覆うと共に(図4)、内コア片31の外コア片32側への移動を規制する端面規制部5178を備える。図2,図3Aでは、環状本体部517の四つの角部において、板状片が環状本体部517の内側に向かって突出して、上記四つの角部をそれぞれ覆う。これら各板状片が端面規制部5178をなす。各板状片は、概ね矩形状であり、環状本体部517の外周面に繋がる角部が丸められている。端面規制部5178の形状、個数、端面規制部5178における内コア片31の端面を覆う面積割合などは適宜選択できる。上記面積割合が大きいほど(例えば、環状本体部517の二つの角部を渡る板状片とする、端面規制部5178の個数を多くするなど)、内コア片31における外コア片32側の移動をより確実に規制できる。上記面積割合が小さいほど、この例では内コア片31の端面及び外コア片32の内端面32eにおける両コア片間の樹脂ギャップ部との接触面積が多くなる。その結果、樹脂ギャップ部による内コア片31,外コア片32同士の接合強度の向上などが期待できる。接合強度の向上を期待する場合には、端面規制部5178を小さくして、樹脂ギャップ部の形成領域を増大するとよい。内コア片31における端面規制部5178によって覆われない面積割合は、例えば、50%以上、60%以上、70%以上、更に80%以上とすることができる。この例のように正方形状の内コア片31に対して四隅を押えるように四つの端面規制部5178を備えると、内コア片31における端面規制部5178に覆われる合計面積割合がある程度大きく、上述の内コア片31の移動を規制し易い。かつ、複数の端面規制部5178を離間して備えるため、端面規制部5178間を樹脂モールド部6の樹脂流路に利用できて、上記樹脂ギャップ部を形成し易い。この例では、環状本体部517の周方向における端部側突部5176の形成領域と、端面規制部5178の形成領域とを一致させていることで、内コア片31と端部分割片515とが組み付けられた状態で隙間gを設けられる(図3D)。
・枠板部
この例の枠板部52は、図2に示すように、その中央部に、各巻回部2a,2b内に配置される内コア片31,31の端面を外コア片32の内端面32eに向かって露出させる一対の貫通孔52h,52hを備える枠体である。枠板部52における巻回部2a,2bの端面に対向配置される側(以下、コイル側と呼ぶ)をみれば、一対の貫通孔52h,52hが並列されている。この例では、枠板部52における外コア片32の内端面32eに対向配置される側(以下、外コア側と呼ぶ)をみれば、外コア片32の内端面32e及びその近傍を嵌め込めるように凹んでいる。この凹みの底部に二つの貫通孔52h,52hが開口する。枠板部52は、その外コア側に、上記凹みの開口縁を開口部とし、貫通孔52h,52hに連通する空間を形成するコア孔52fを備える(図2において左側の枠板部52参照)。枠板部52における外コア側の中央部が凹んでいることで、この中央部の厚さが周縁部の厚さよりも薄い。内コア片31,外コア片32と枠板部52とが組み付けられた状態では、枠板部52の中央部は内コア片31と外コア片32との間に介在する。従って、内コア片31と外コア片32との間の間隔は、上記中央部の厚さに応じた大きさに保持される。上記中央部によって内コア片31と外コア片32との間に形成される隙間は、製造過程では樹脂流路に利用され、最終的には樹脂モールド部6の一部が充填されることで、リアクトル1Aは、内コア片31と外コア片32との間にも樹脂ギャップ部を備える。
・・コイル側
この例の枠板部52のコイル側には、各巻回部2a,2bの端面近傍を嵌め込む嵌合溝を備える。各嵌合溝は、各巻回部2a,2bの端面形状に沿った環状である(図2において右側の枠板部52参照)。各嵌合溝に各巻回部2a,2bの端面近傍が嵌め込まれることで、コイル2と枠板部52とを位置決めできる。各嵌合溝の中央部には、各巻回部2a,2bの内周輪郭に実質的に等しい又は内周輪郭よりも若干大きい貫通孔52hが設けられている。
その他、この例では、各嵌合溝に各巻回部2a,2bの端面における角部を収納する凹部520を備える(図2において右側の枠板部52参照)。ここで、巻線2wを巻回して筒状にすると、この筒体の外周側領域よりも内周側領域が筒体の軸方向に膨らみ易い。この例のように巻回部2a,2bがエッジワイズコイルであり、端面形状が角部を丸めた正方形状などであれば、角部の曲げ半径が小さく、角部に上述の膨らみが生じ易い。膨らんだ内周側領域(角部及びその近傍)を嵌め込む凹部520を備えることで、巻回部2a,2bと枠板部52とを密着できる。更に、この例の枠板部52のコイル側には、各巻回部2a,2bにおいて、巻線2w,2wの他端部の引出方向に沿って設けられた引出溝も備える。そのため、巻回部2a,2bと枠板部52とが更に密着し易い。巻回部2a,2bと枠板部52とが密着することで、上述した未固化樹脂がコイル2の外周面側に漏出することを防止し易い。
・・外コア側
この例の枠板部52の外コア側に設けられたコア孔52fの開口縁がつくる仮想面の大きさは、外コア片32の内端面32eよりも若干大きい。そのため、製造過程でコア孔52fに外コア片32を嵌め込むと、外コア片32の外周面とコア孔52fを形成する内周面との間に隙間が設けられる。この隙間は、図4の右半分でいうと、外コア片32の設置面とは反対側の面(上面)及び側面(右面)と、コア孔52fをつくる内周面のうち、貫通孔52hの開口縁に重複する部分との間に設けられる。この隙間は、製造過程では樹脂流路に利用され、最終的に樹脂モールド部6の一部(図4では後述の内側被覆部61のうち、上側の部分及び右側の部分に連なる部分)が配置される。また、コイル2と介在部材5Aとが組み付けられ、外コア片32が無い状態で枠板部52の外コア側の面からみると、図4の右半分に示すように巻回部2a,2bは枠板部52に覆われてみえない。内コア片31の端面及び端部分割片515の端面規制部5178は貫通孔52hから露出されており、みえる。このような構成によって、外コア側から上記隙間を経て巻回部2a,2b内に未固化樹脂を導入でき、枠板部52によって巻回部2a,2bの外周に漏れ出ることを防止できる。
上記隙間を形成しつつ、外コア片32を支持できるように、この例のコア孔52fをつくる内周面には、外コア片32の設置面とは反対側の面(上面)の一部を支持する凸部522と、設置面(下面)の一部を支持する支持面523とを備える。コア孔52fに嵌め込まれた外コア片32は、凸部522の内端面と支持面523とで一対の対向面(上下の面)の一部を挟まれて、枠板部52に位置決めされる。また、外コア片32の上面とコア孔52fの開口縁との間、外コア片32の側面とコア孔52fの開口縁との間に隙間が設けられる(図4の二点鎖線とコア孔52fとを比較参照)。所定の隙間が設けられる範囲で、コア孔52f、凸部522、支持面523の大きさ、形状などを選択するとよい。
その他、この例では、枠板部52における設置面側(下側)に、樹脂モールド部6の形成時、金型(図示せず)の内面から突出されるピン9(図2)が挿入されるピン溝59が設けられている(図2,図4)。枠板部52における周縁部の厚さは、ピン溝59を形成可能な程度に厚い。図2では、直方体の一つの角部を角落としして、傾斜面を備えるピン9を例示する。このピン9の傾斜面は、外コア片32に接する。ピン9における角落とししていない長方形状の面がピン溝59の底面に接する。この例の外コア片32は、内端面32eの一部にピン9が挿入される切欠329が設けられており、上記傾斜面と、切欠329を構成する一面とが接する。ピン溝59は、枠板部52の設置面(下面)からコア孔52fを経て貫通孔52hに至るように設けられている。この例では、一つの枠板部52に対して二つのピン溝59を備え、一つの外コア片32に対して二つの切欠329を備える。樹脂モールド部6の形成前、外コア片32と枠板部52とが組み付けられた状態で切欠329とピン溝59とで形成される穴部(図示せず)にピン9を挿入すると、一対の外コア片32,32同士が近付く方向に外コア片32,32が移動することをピン9によって規制できる。特に、未固化樹脂の圧力を高めた場合でも、金型に対する外コア片32の位置がずれ難い。その結果、一方の外コア片32から他方の外コア片32までの長さを所定の大きさに維持し易い。つまり、各内コア片31間の間隔も維持し易い。
・・大きさ
この例の枠板部52は、コイル2と組み付けられた状態において、巻回部2a,2bの設置面(下面)が枠板部52の設置面(下面)から突出せず、巻回部2a,2bの側面(左右の面)と枠板部52の側面(左右の面)とが実質的に面一となる大きさとしている。そのため、上述の組み付け状態では、巻線2w,2wの端部を除き、コイル2が枠板部52から出っ張らない。また、枠板部52は、コイル2及び外コア片32が組み付けられた状態において、枠板部52の設置面とは反対側の面(上面)が、巻回部2a,2b及び外コア片32における設置面とは反対側の面(上面)よりも高い位置になる大きさとしている。
・構成材料
介在部材5Aの構成材料は、各種の樹脂といった絶縁材料が挙げられる。例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ナイロン6、ナイロン66といったポリアミド(PA)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられる。又は、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。介在部材5Aは、射出成形などの公知の成形方法によって製造できる。
(樹脂モールド部)
この例の樹脂モールド部6は、図1に示すように磁性コア3Aにおいて、主として介在部材5Aに覆われない箇所を覆って、複数の内コア片31及び外コア片32を環状の一体物として保持する。この樹脂モールド部6は、内コア片31の外周面を覆う内側被覆部61と、外コア片32の外周面を覆う外側被覆部62とを備える。また、樹脂モールド部6は、隣り合う内コア片31,31間に配置される樹脂ギャップ部60を備える。この例の樹脂モールド部6は、内コア片31,外コア片32間に配置される樹脂ギャップ部(図示せず)も備える。
・樹脂ギャップ部
内コア片31,31間に配置される樹脂ギャップ部60は、中間分割片510に備える介在突部5126に囲まれる長方形の平板状である。この平板状の樹脂ギャップ部60の各面は、各内コア片31,31の端面に接し、内コア片31,31同士を接合する接合材としても機能する。樹脂ギャップ部60の側面の一部は、介在突部5126の内縁端面に接し、切欠部514側に位置する側面の他部は、後述の中間被覆部610に連続する。リアクトル1Aは、中間分割片510の個数に応じた個数の樹脂ギャップ部60を備える(この例では合計四つ)。
内コア片31,外コア片32間に配置される樹脂ギャップ部は、枠板部52における各貫通孔52h,52hをつくる内面に囲まれるため、角部を丸めた正方形の平板状である。この平板状の樹脂ギャップ部の一面は内コア片31の端面(端面規制部5178に覆われた箇所を除く)に接し、他面は外コア片32の内端面32eに接して、内コア片31,外コア片32同士を接合する接合材としても機能する。リアクトル1Aは、この樹脂ギャップ部を、貫通孔52hの個数に応じた個数備える(この例では合計四つ)。
・内側被覆部
内側被覆部61は、主として、隣り合う内コア片31,31の外周面における内側分割片51(中間分割片510,端部分割片515)からの露出箇所、即ち、隣り合う中間分割片510,510間に設けられる隙間、中間分割片510,端部分割片515間に設けられる隙間を覆う。この例の内側被覆部61は、更に、隣り合う内コア片31,31の外周面における中間分割片510の切欠部514からの露出箇所と本体部512との段差を埋める中間被覆部610を含む(図1)。各中間被覆部610には、隣り合う内コア片31,31間に配置される樹脂ギャップ部60が連続する。このような内側被覆部61は、巻回部2a,2b内に配置される複数の内コア片31群を巻回部2a,2bの軸方向にみれば、内コア片31群の外周面の全周(上下の面及び左右の面)を連続して覆う全周被覆部分と、内コア片31群の外周面の一部(ここでは上面)のみを覆う一部被覆部分(中間被覆部610)とを含む。内側被覆部61は、全周被覆部分と一部被覆部分とが交互に配置されて全体として連続した一体物をなし、樹脂ギャップ部60も一体化されている。
この例の内側被覆部61は、更に、本体部512における上述の薄肉部の外周を覆う部分を有する(図1,図3Eの二点鎖線(仮想線)参照)。この部分は、上述の全周被覆部分に連続する(図1)。また、この例の内側被覆部61は、内コア片31の外周面と、端部分割片515の環状本体部517の内周面間に介在される端部被覆部617を備える(図3Dの二点鎖線(仮想線)参照)。この例では、製造過程で内コア片31の周囲に設けられる四つの隙間gに対応して、内コア片31の上下の面、左右の面を覆う四つの端部被覆部617を備える。この端部被覆部617は、上述の全周被覆部分を介して中間被覆部610に連続する。
・外側被覆部
外側被覆部62は、主として外コア片32の外周面のうち、枠板部52から露出された部分を覆う。この例の外側被覆部62は、枠板部52の外コア側の面に設けられたコア孔52fを塞ぐように、枠板部52の外コア側の面も覆う延長部を有する(図1,図4)。延長部の設置面(下面)は、枠板部52の設置面(下面)と実質的に面一である。延長部の設置面とは反対側の面(上面)は、枠板部52の設置面とは反対側の面(上面)よりも低く、延長部が低段となる段差形状である。延長部の側面(左右の面)は枠板部52の側面(左右の面)に実質的に面一であり、枠板部52の側面から出っ張らない。また、この例の外側被覆部62は、延長部の設置面側において、外コア片32の外方に突出した突片(ここでは4つ)を備える。これら突片は、リアクトル1Aを設置対象に固定するための取付部とする。取付部を省略することもできる。
内側被覆部61と外側被覆部62とは、上述の内コア片31,外コア片32間の樹脂ギャップ部を介して連続する。即ち、樹脂モールド部6は、外側被覆部62、内コア片31,外コア片32間の樹脂ギャップ部、端部被覆部617、全周被覆部分(中間分割片510,510間及び中間分割片510,端部分割片515間を覆う部分)、中間被覆部610、樹脂ギャップ部60が連続した一体物を形成する。
・構成材料
樹脂モールド部6の構成樹脂は、例えば、PPS樹脂、PTFE樹脂、LCP、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン10T、ナイロン9T、ナイロン6TなどのPA樹脂、PBT樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられる。樹脂モールド部6の構成樹脂は、介在部材5Aの構成樹脂と同じ樹脂であると、接合性に優れる上に、樹脂モールド部6の熱膨張係数と介在部材5Aの線膨張係数とが同一であるため、熱応力による剥離や割れなどを抑制することができる。
(リアクトルの製造方法)
樹脂ギャップ部60を備えるリアクトル1Aは、例えば、コイル2と、磁性コア3Aと、介在部材5Aとを備える組合体10を金型(図示せず)に収納し、未固化樹脂で磁性コア3Aを被覆すると共に樹脂ギャップ部60を形成することで製造できる。
この例では、端部分割片515の端面規制部5178を内コア片31の当て止めに利用して、端部分割片515、内コア片31、中間分割片510、内コア片31、端部分割片515などと順に積層することができる。
コイル2と、磁性コア3Aと、介在部材5Aとが組み付けられた状態では、上述のように外コア片32の一面と枠板部52のコア孔52fとの間の隙間、内コア片31の端面と外コア片32の内端面32eとの間の隙間、内コア片31と端部分割片515間の隙間g、中間分割片510,端部分割片515間の隙間、中間分割片510の切欠部514に基づく隙間G514、中間分割片510,510間の隙間という連続する空間を未固化樹脂の樹脂流路とする。中間分割片510の厚肉部と薄肉部との段差空間Gも樹脂流路とする。
この例において内コア片31に端部分割片515と中間分割片510とが配置された状態では、端部分割片515の環状本体部517が段差空間Gに重複するように設けられる。その結果、四つの隙間gのうち、内コア片31の三面(下面及び左右の面)に対して設けられる三つの隙間gと三つの段差空間Gとが連通しない。内コア片31の一面(上面)に対して設けられる残り一つの隙間g(上側の隙間g)と隙間G514とが連通する。この上側の隙間gから、内コア片31の一面(上面)を経て、中間分割片510の切欠部514の隙間G514に未固化樹脂を導入できる。つまり、上述のように隣り合う内コア片31,31間への未固化樹脂の導入を一方向に規制できる。
上述の樹脂流路を備える組合体10を金型(図示せず)に収納し、未固化樹脂を金型内に導入して、樹脂流路とする空間に未固化樹脂を充填して、樹脂流路に基づく樹脂モールド部6を成形することで、リアクトル1Aが得られる。樹脂モールド部6の成形には、射出成形などが利用できる。
上述のピン9を金型の内面から突出させて、外コア片32の切欠329及び枠板部52のピン溝59によって構成されるピン穴に挿入して、外コア片32の内端面32eの一部をピン9によって支持することができる。こうすることで、未固化樹脂の圧力が高い場合でも、金型における外コア片32の位置を固定できる。
(用途)
実施形態1のリアクトル1Aは、電圧の昇圧動作や降圧動作を行う回路の部品、例えば種々のコンバータや電力変換装置の構成部品などに利用することができる。コンバータの一例として、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車などの車両に搭載される車載用コンバータ(代表的にはDC−DCコンバータ)や、空調機のコンバータなどが挙げられる。
(効果)
実施形態1のリアクトル1Aは、介在部材5Aに備える介在突部5126によって、隣り合う内コア片31,31間の間隔を保持でき、この間隔の大きさに応じたギャップ部を備えられる。そのため、リアクトル1Aは、ギャップ板及びコア片とギャップ板との接合工程を省略できる。また、介在突部5126を備える内側分割片51(中間分割片510)と、内コア片31との組み付けを容易に行える。従って、リアクトル1Aは、簡単な構成で内コア片31,31間の間隔を保持できる上に、製造性にも優れる。
特に、この例のリアクトル1Aは、磁性コア3Aを覆う樹脂モールド部6を備え、この樹脂モールド部6の一部によって形成される樹脂ギャップ部60を備える。そのため、樹脂モールド部6の形成と樹脂ギャップ部60との形成を同時に行えることからも製造性に優れる。特に、この例のリアクトル1Aでは、以下の理由により、内コア片31の周囲に樹脂流路を十分に確保でき、樹脂モールド部6の形成に用いられる未固化樹脂の流通性に優れることからも、製造性に優れる。
(1)巻回部2a,2b内に配置される中間分割片510,端部分割片515が巻回部2a,2bの軸方向に離間して配置される。
(2)中間分割片510が切欠部514や薄肉部を備えて、隙間G514や段差空間Gを形成できる。
(3)端部分割片515が端部側突部5176を備えて、内コア片31との間に隙間gを形成できる。
更に、介在突部5126と樹脂ギャップ部60とによって、内コア片31,31間に設けられるギャップ部を構成するため、内コア片31,31同士の間隔をより確実に維持して、インダクタンスの変動を抑制できる。従って、リアクトル1Aは、長期に亘り、所定のインダクタンスを維持できる。この例のように、中間分割片510を特定の形状とし、製造過程で、内コア片31,31間への未固化樹脂の導入方向を規制することで樹脂ギャップ部60を適切に形成できることからも、リアクトル1Aは、所定のインダクタンスを維持できる。
また、樹脂モールド部6のうち、樹脂ギャップ部60は、内コア片31,31同士、内コア片31,外コア片32同士を接合する。また、この例では、上記(1)の理由によって、樹脂モールド部6による内コア片31の被覆領域が十分に大きい。そのため、リアクトル1Aは、樹脂モールド部6によって、磁性コア3Aの一体物としての機械的強度を高められる。また、樹脂モールド部6の具備によって、外部環境からの保護(特に外コア片32の防食など)、振動・騒音の抑制、絶縁性の向上、構成材料によっては放熱性の向上などの効果が期待できる。
その他、この例のリアクトル1Aは、以下の効果を奏する。
(1)巻線2w,2wの両端部を巻回部2a,2bから離れて上方に引き出していること、枠板部52に嵌合溝や凹部520、引出溝を備えることなどから、コイル2と枠板部52,52とを密着できる。また、このような枠板部52,52で挟むことで巻回部2a,2bにおけるターン間の隙間を実質的に無くすことができる。そのため、小型なリアクトル1Aとすることができる。上述のピン9を利用すれば、外コア片32,32間の間隔を一定としたまま、枠板部52を押圧するなどすれば、コイル2の長さを調整できる。
(2)外コア片32の内端面32eと内コア片31の端面とが一様で平坦な平面で構成され、外コア片32と内コア片31との間に枠板部52の中央部が介在されることで、外コア片32と内コア片31との間にも一様な厚さの樹脂ギャップ部を備えられる。
(3)上述のようにコイル2と枠板部52とを密着させられるため、外コア片32側から導入した未固化樹脂がコイル2の外周面側に漏出し難く、磁性コア3Aのみを樹脂モールド部6で覆って、コイル2を露出させたリアクトル1Aを製造し易い。
(4)枠板部52の周縁部の厚さが厚いことで、未固化樹脂の導入圧力を高められる。導入圧力を高めることで、樹脂流路が狭い場合でも、短時間で未固化樹脂を導入できて製造性に優れる。
(5)コイル2が樹脂モールド部6に覆われず露出されるため、液体冷媒を用いた冷却やファンを用いた冷却などを行う場合に液体冷媒や対流するガスにコイル2が直接接触できて、放熱性に優れる。
その他、実施形態1のリアクトル1Aは、以下の少なくとも一つを備えることができる。後述する実施形態2,3、変形例についても同様である。
(1)温度センサ、電流センサ、電圧センサ、磁束センサなどのリアクトル1Aの物理量を測定するセンサ(図示せず)
(2)コイル2の外周面の少なくとも一部(例えば設置面)に取り付けられる放熱板(例えば金属板など)
(3)リアクトル1Aの設置面と設置対象又は(2)の放熱板との間に介在される接合層(例えば接着剤層。絶縁性に優れるものが好ましい。)
以下、図5,図6を参照して、実施形態2のリアクトル1Bを説明し、図7,図8を参照して、実施形態3のリアクトル1Cを説明し、図9,図10を参照して、実施形態4のリアクトル1Dを説明する。
図5,図7,図9では、分かり易いようにコイル2を仮想的に示すと共に、樹脂モールド部6における複数の内コア片31群を覆う部分の一部を切り欠いて、内コア片31及び内側分割片51を露出させた状態を示す。内側分割片51の外周面とコイル2の巻回部内に配置される樹脂モールド部6の外周面とは概ね面一である。
実施形態2のリアクトル1B及び実施形態3のリアクトル1C並びに実施形態4のリアクトル1Dの基本的構成は実施形態1のリアクトル1Aと同様である。概略を述べると、リアクトル1B,1C,1Dは、一対の巻回部(図示せず)を有するコイル2と、内コア片31及び外コア片32とギャップ部とを含み、巻回部の内外に配置される磁性コア3Bと、コイル2と磁性コア3B間に介在される介在部材5B,5C,5Dとを備える。介在部材5B,5C,5Dは、複数の内側分割片51と枠板部52とを備える。内側分割片51は、介在突部5126(図6,図8,図10)を備える中間分割片510と、一対の端部分割片515,515とを備える。更に、リアクトル1B,1C,1Dは、磁性コア3Bの外周面の一部を覆う樹脂モールド部6を備える。樹脂モールド部6は、コア片間に介在される樹脂ギャップ部60と、内コア片31の外周面の一部を覆う内側被覆部61と、外コア片32の外周面の一部を覆う外側被覆部62とを備える。コイル2は、樹脂モールド部6から露出されている。実施形態2のリアクトル1B及び実施形態3のリアクトル1C並びに実施形態4のリアクトル1Dにおける実施形態1のリアクトル1Aとの主な相違点は、内側分割片51の形状にある。以下、相違点を詳細に説明し、その他の構成などについては詳細な説明を省略する。
[実施形態2]
実施形態2のリアクトル1Bでは、磁性コア3Bのうち、介在部材5Bの内側分割片51が組み付けられる内コア片31の外周形状が角部を有する形状であり、内側分割片51のうち、コイル2の巻回部の各端面側に配置される端部分割片515が後述する端部爪部5170を備える。
この例の内コア片31は、直方体の角部を平面取りしたような直方体状である(図6)。この内コア片31は、コイル2の軸方向にみた平面形状、及びコイル2の軸方向に直交する方向にみた平面形状が平面取りされた角部31cを有する正方形状である(図5の破線参照)。このような形状とすることで、隣り合う内コア片31,31間の隙間の大きさは、外周面側(図5では上側、及び下側)が中心側よりも広い。そのため、図6に示すように隣り合う内コア片31,31と中間分割片510とが組み付けられた状態において、切欠部514に連なる樹脂流路を広くでき、未固化樹脂を内コア片31,31間に導入し易く、製造性に優れる。
この例の端部分割片515は、上述の角部を有する内コア片31の外周面をその周方向に囲む環状本体部517と、環状本体部517から内コア片31の角部31cを覆うように突出する端部爪部5170とを備える。この例では、一つの内コア片31に備える四つの角部31cにそれぞれ対応して四つの端部爪部5170を備える。各端部爪部5170は、環状本体部517からその軸方向に突出しており、内コア片31の角部31cに沿って配置されて角部31cを覆う。
ここで、内コア片31の角部31cがコイル2の軸方向に沿って延びており、そのうちの内側分割片51に覆われない部分とコイル2の巻回部の内周面との間には、比較的大きな隙間が生じる。端部爪部5170は、上記比較的大きな隙間から巻回部の端面を経て巻回部の外周面に至るまでにおいて、未固化樹脂が流動する距離を延長する部材といえる。端部爪部5170を備えることで、磁性コア3Bの外周面を覆い、コイル2の外周面を覆わない樹脂モールド部6を精度よく形成できる。
端部爪部5170におけるコイル2の軸方向に沿った長さL5170(ここでは環状本体部517の軸方向に沿って環状本体部517から突出する長さ)が長いほど、上述の流動距離を長くできる。そのため、外コア片32側から内コア片31側に導入した未固化樹脂が逆流しても、コイル2の巻回部の端面を経てコイル2の外周面側に漏出し難くなる。例えば、端部爪部5170の長さL5170を、中間分割片510に接する程度にすることができる。端部爪部5170の長さL5170は、未固化樹脂の充填条件、未固化樹脂の材質、コア片の形状や大きさ、樹脂流路の大きさなどに応じて、コイル2の外周面側に漏れ出ない最小長さ以上とすればよい。
端部爪部5170における内コア片31の周方向に沿った長さ(ここでは環状本体部517の周方向に沿った長さ、以下、周長さと呼ぶ)も長いほど、未固化樹脂が逆流しても、コイル2の外周面側に漏出し難い。一方、端部爪部5170の周長さが短いほど、内コア片31と樹脂モールド部6との接触面積を増大できる上に、樹脂流路も増大できて流通性に優れる。この例に示すように端部爪部5170の周長さが内コア片31の角部31cの大きさに概ね等しいと、上述の未固化樹脂の逆流によるコイル2の外周面への漏出を防止しつつ、未固化樹脂の良好な流通性、樹脂モールド部6による磁性コア3Bの機械的特性の向上などの効果を奏することができる。
なお、この例の端部爪部5170は、環状本体部517から延設される端部側突部5176を備える(図6)。
この例では、各端部爪部5170における長さL5170(図5),周長さが等しいが、長さL5170及び周長さの少なくとも一方が異なる端部爪部を備えることができる。また、この例では、一対の端部分割片515,515が同一形状であり、内コア片31の角部31cと同数の端部爪部5170を備えるが、各端部分割片515,515における端部爪部5170の仕様(個数、長さL5170、周長さなど)を異ならせることができる。例えば、少なくとも一方の端部分割片515は内コア片31の角部31cの個数よりも少ない個数の端部爪部を備える形態とすることができる。
[実施形態3]
実施形態3のリアクトル1Cは、実施形態2と同様の磁性コア3Bと、介在部材5Cとを備えており、実施形態2との相違点の一つは、介在部材5Cに備えられる中間分割片510の形状にある。磁性コア3Bのうち、介在部材5Cの内側分割片51が組み付けられる内コア片31の外周形状が角部を有する形状である。内側分割片51のうち、コイル2の巻回部の軸方向の中間位置に配置される中間分割片510が後述する中間爪部5120を備える。この例の端部分割片515は、実施形態2と類似の形状であり、端部爪部5170を備えており、長さL5170が異なる(本例の方が短い)。
この例の中間分割片510は、隣り合う内コア片31,31の外周面の一部を連続して覆う本体部512と、上記外周面を部分的に露出させることで本体部512を上記外周面の周方向に分断する切欠部514と、本体部512から内コア片31の角部31cを覆うように突出する中間爪部5120とを備える。
ここで、内コア片31の角部31cがコイル2の軸方向に沿って延びている場合に内側分割片51で覆われていないと、内コア片31の角部31cと未固化樹脂とが直接接触し、樹脂モールド部における角部31cを覆う箇所近傍が応力集中箇所となり得る。樹脂モールド部に応力集中箇所が局所的に存在すると、リアクトル1Cの使用時にクラックが生じ易くなる。中間爪部5120は、内コア片31の角部31cと樹脂モールド部6との直接接触を防止する部材といえる。この例では、内コア片31の角部31cと樹脂モールド部6との接触防止の目的から、全ての内コア片31(ここでは3つ)について、全ての角部31c(ここでは4つ)におけるコイル2の軸方向に沿った全長に亘って、樹脂モールド部6と接触しない構成である。
具体的には、中間分割片510の本体部512の両側からそれぞれ、離反方向に中間爪部5120,5120が延設されている(図8)。各中間爪部5120は、本体部512から、内コア片31の軸方向(本体部512の切欠部514が無いと仮定した環状の図形の軸方向)に突出しており、内コア片31の角部31cに沿って配置されて角部31cを覆う。隣り合う内コア片31,31の対向箇所近くに本体部512が配置された状態では、隣り合う各内コア片31,31の角部31c,31cに沿って、一方の内コア片31の中央部から他方の内コア片31の中央部に亘って、一方の中間爪部5120から本体部512の一部を経て他方の中間爪部5120によって角部31cが覆われる。この例では、中間分割片510に中間爪部5120を備えることに加えて、上述の実施形態2で説明した端部爪部5170が設けられた端部分割片515を備える。中間分割片510の中間爪部5120と、端部分割片515の端部爪部5170とを組み合わせることで、図7に示すように、複数の内コア片31群でつくられる角部31cの全長が、中間爪部5120及び端部爪部5170によって覆われる。中間爪部5120及び端部爪部5170を備えることで、樹脂モールド部6のクラックの発生を低減できると共に、端部爪部5170の長さL5170によっては、磁性コア3Bの外周面を覆い、コイル2の外周面を覆わない樹脂モールド部6を精度よく形成できる。
中間爪部5120におけるコイル2の軸方向に沿った長さL5120(ここでは本体部512からの突出長さ)が長いほど、内コア片31の角部31cを覆う長さを長くできる。例えば、端部分割片515が端部爪部5170を備えていない場合でも、中間爪部5120の長さL5120を端部分割片515に接する程度とすれば、中間爪部5120を備える中間分割片510だけでも内コア片31の角部31cをその全長に亘って覆うことができる。中間爪部5120のみ、又は中間爪部5120及び端部爪部5170の双方によって、好ましくは内コア片31の角部31cをその全長に亘って覆うことができるように、端部爪部5170の長さL5170に応じて中間爪部5120の長さL5120を調整するとよい。
中間爪部5120における内コア片31の周方向に沿った長さ(ここでは、本体部512の周方向に沿った長さ、以下、周長さと呼ぶ)は内コア片31の角部31cを覆うことが可能な範囲で短いほど、内コア片31と樹脂モールド部6との接触面積を増大できる上に、樹脂流路も増大できて流通性に優れる。この例に示すように中間爪部5120の周長さが内コア片31の角部31cの大きさに概ね等しいと、樹脂モールド部6のクラックの発生を低減しつつ、未固化樹脂の良好な流通性、樹脂モールド部6による磁性コア3Bの機械的特性の向上などの効果を奏することができる。
この例では、各中間爪部5120における長さL5120,周長さが等しいが、長さL5120及び周長さの少なくとも一方が異なる中間爪部を備えることができる。また、この例では、二つの中間分割片510,510を備え、両中間分割片510,510が同一形状であるが、各中間分割片510,510の仕様(中間爪部5120の個数、長さL5120、周長さなど)を異ならせることができる。例えば、一方の中間分割片510は、実施形態1と同様に中間爪部5120を有さず、他方の中間分割片510のみが中間爪部5120を有することができる。この場合でも、中間爪部5120の長さL5120及び端部爪部5170の長さL5170を調整することで、内コア片31の角部31cをその全長に亘って中間爪部5120、端部爪部5170によって覆うことができる。
[実施形態4]
実施形態4のリアクトル1Dは、実施形態3と同様の磁性コア3Bと、実施形態3と同様に介在突部5126及び中間爪部5120を備える複数の中間分割片510と端部爪部5170を備える端部分割片515,515とを含む介在部材5Dとを備える。実施形態4のリアクトル1Dにおいて実施形態3との相違点の一つは、介在部材5Dに備えられる中間分割片510の形状にある。リアクトル1Dに備える磁性コア3Bのうち、介在部材5Dの内側分割片51が組み付けられる内コア片31の外周形状は角部を有する形状である。リアクトル1Dに備える内側分割片51のうち、コイル2の巻回部の軸方向の中間位置に配置される中間分割片510は、隣り合う内コア片31,31の外周面から突出しない板状に設けられた介在突部5126と、介在突部5126の角部から内コア片31の角部31cを覆うように突出する中間爪部5120とを備える。また、この例の中間爪部5120は、隣り合う別の中間爪部5120と互いに係合する係合部5121を備える。更に、この例の端部分割片515の端部爪部5170も係合部5171を備える。そのため、隣り合う中間爪部5120,5120同士が互いの係合部5121,5121によって係合し、隣り合う中間爪部5120と端部爪部5170同士が互いの係合部5121,5171によって係合する。
この例の中間分割片510は、図10に示すように隣り合う内コア片31,31の外周面を連続して覆う本体部512を備えるもののその周長は短い。本体部512は、内コア片31の下面及び下面に繋がる二つの角部を覆う程度の大きさである。この本体部512の内周面から上方に向かってU字の平板材からなる介在突部5126が立設されている。介在突部5126を形成する平板材の投影外形は、内コア片31の端面形状に対応した長方形状であり、この平板材の大きさは、内コア片31に中間分割片510を組み付けた状態において介在突部5126の側面が内コア片31の外周面(面取り部分以外の部分)に実質的に面一となる大きさである。このような実施形態4のリアクトル1Dは、樹脂モールド部6の形成前において、隣り合う内コア片31,31の外周面における内側分割片51、特に中間分割片510からの露出箇所をより多くでき、未硬化樹脂の流動性に優れて樹脂モールド部6を形成し易く、製造性に優れる。介在突部5126の側面と内コア片31の外周面とが面一であれば、未硬化樹脂がより一層流れ易いと期待される。また、内コア片31と樹脂モールド部6との接触面積をより増大できるため、樹脂モールド部6による磁性コア3Bの固定強度をより高められる。この例では、隣り合う内コア片31,31における面取り部分間に介在突部5126の周縁部が介在され、この周縁部が樹脂モールド部6によって固定される。そのため、内コア片31と中間分割片510との接合強度も高められて、内側分割片51を含めた樹脂モールド部6による磁性コア3Bの固定強度を高められる。
更に、この例の中間分割片510は、本体部512の下方側の角部、介在突部5126の上方側の角部のそれぞれから、離反方向に延設される中間爪部5120を備える。また、この例の端部分割片515は上述のように端部爪部5170を備える。これら中間爪部5120及び端部爪部5170によって、実施形態3の介在部材5Cと同様に内コア片31の角部31cをその実質的に全長に亘って覆って、角部31cと樹脂モールド部6との直接接触を防止する。特に、この例では、各爪部5120,5170が互いに係合する係合部5121,5171を有するため、実施形態3のように隣り合う爪部が突き合わされる形態に比較して、製造過程で、隣り合う中間分割片510,510同士、中間分割片510と端部分割片515同士を互いに位置決めし易い上に、内コア片31との組み付け状態を維持し易い。このような中間分割片510を備えることで、樹脂モールド部6の形成時に内コア片31の角部31cをより確実に保護できる。
この形態の介在突部5126は、隣り合う内コア片31,31の外周面から突出しない形状であればよく、適宜変更できる。例えば、介在突部5126を一つのU字の平板材とせず、少なくとも一つの棒状材や切片などとすることができる。また、各爪部5120,5170に備える係合部5121,5171の形状なども適宜変更できる。図9では、各爪部5120,5170の長さが部分的に異なる階段状であり、この階段状の部分が係合部5121,5171をなす場合を例示する。
[変形例]
上述の実施形態1から4に対して、以下の少なくとも一つの変更が可能である。
(1)組合体10を収納するケースを備えるものとし、樹脂モールド部6をケース内に充填されるものとする。
この場合、樹脂ギャップ部60は、樹脂モールド部6においてケース内面と組合体10との間に充填される部分に連続する。ケースを金属製などとすることで、ケースを放熱経路として、放熱性を高められる。
(2)枠板部52を省略する。
この場合、例えば、端面規制部5178の厚さを厚くすると、巻回部2a,2bと外コア片32の内端面32eとの間の間隔を所定の大きさに確保できる。
(3)一対の巻回部2a,2bを備えるコイル2として、1本の連続する巻線2wで形成されたものとする。
この場合、コイル2は、両巻回部2a,2bを連結する連結部を備える。樹脂モールド部6の成形時などに枠板部52を押圧する場合には、この連結部を両巻回部2a,2bのターンから十分に離すことができる(例、図1において上方に引き上げる)。
(4)コイル2は巻回部を一つのみ備え、磁性コア3AなどはEEコアやERコア、EIコアなどと呼ばれる公知の形状とする。
(5)巻線2wを、丸線の導体と絶縁被覆とを備える被覆丸線などとする。
(6)コイル2の巻回部を端面形状が円環状の円筒体、楕円状やレーストラック状などの角部を有しない筒体、正方形状やその他の多角形状などの角部を有する筒体(特に実施形態2,3)などとする。
(7)磁性コア3Aに備えるコア片として、巻回部2a,2b内に配置される部分と、巻回部2a,2b外に配置される部分とを有するU字状体を含むものとする。
(8)外コア片32の切欠329を省略する。又は、外コア片32の切欠329及び枠板部52のピン溝59の双方を省略する。
(9)樹脂モールド部6を省略する。
この場合、介在突部5126が介在されるコア片間にエアギャップを有するリアクトルとすることができる。組合体10を結束バンドなどでまとめると、部品がバラバラにならず、扱い易い。この形態では、コイル2と、磁性コア3Aなどと、介在部材5Aなどとを組み付けることで、リアクトルを製造できる。
(10)巻回部2a,2b内にそれぞれ配置される複数の内側分割片51を、一つの中間分割片510と、一対の端部分割片515,515とを含むものとする。
この場合、実施形態4で説明したように、中間分割片510、端部分割片515,515の端部にそれぞれ係合部を備えることができる。
本願発明は、これらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
1A,1B,1C,1D リアクトル
10 組合体
2 コイル
2a,2b 巻回部
2w 巻線
3A,3B 磁性コア
31 内コア片
31c 角部
32 外コア片
32e 内端面
329 切欠
5A,5B,5C,5D 介在部材
51 内側分割片
510 中間分割片
512 本体部
5120 中間爪部
5121 係合部
5126 介在突部
514 切欠部
515 端部分割片
517 環状本体部
5170 端部爪部
5171 係合部
5176 端部側突部
5178 端面規制部
52 枠板部
52h 貫通孔
52f コア孔
520 凹部
522 凸部
523 支持面
59 ピン溝
6 樹脂モールド部
60 樹脂ギャップ部
61 内側被覆部
610 中間被覆部
617 端部被覆部
62 外側被覆部
9 ピン
g,G514 隙間
G 段差空間

Claims (5)

  1. 巻回部を有するコイルと、
    前記巻回部内外に配置される複数のコア片と、隣り合う前記コア片間に介在される少なくとも一つのギャップ部とを含む磁性コアと、
    前記コイルと前記磁性コアとの間に介在される介在部材と、
    前記磁性コアの外周面の少なくとも一部を覆い、前記巻回部の外周面を覆わずに露出させる樹脂モールド部とを備え、
    前記介在部材は、前記巻回部の内周面と前記磁性コアの外周面との間に介在されると共に、前記巻回部の軸方向に離間して配置される複数の内側分割片と、前記内側分割片とは独立しており、前記巻回部の端面と前記磁性コアにおける前記巻回部外に配置される外コア片との間に介在される枠板部とを備え、
    前記複数の内側分割片は、前記巻回部の軸方向の中間位置に配置され、隣り合う前記コア片間の間隔を保持して、前記ギャップ部の一部を形成する介在突部を備える少なくとも一つの中間分割片と、前記中間分割片を挟み、前記巻回部の各端面側に配置される一対の端部分割片とを含み、
    前記中間分割片は、前記隣り合うコア片の外周面の一部を連続して覆い、その内周面から前記介在突部が立設される本体部と、前記隣り合うコア片の外周面を部分的に露出させることで前記本体部を前記外周面の周方向に分断する切欠部とを備え、
    前記端部分割片は、前記コア片の外周面をその周方向に囲む環状本体部と、前記コア片の外周面と前記環状本体部の内周面との間の間隔を保持する端部側突部とを備え、
    前記枠板部は、前記磁性コアにおける前記巻回部内に配置される内コア片の端面を露出させる貫通孔と、前記内コア片と前記外コア片との間に介在されて、前記内コア片と前記外コア片との間に所定の隙間を形成する部分とを備え、
    前記樹脂モールド部は、前記隣り合うコア片間に配置され、前記ギャップ部の他部を構成する樹脂ギャップ部と、前記樹脂ギャップ部に連続し、前記隣り合うコア片の外周面における前記切欠部からの露出箇所と前記本体部との段差を埋める中間被覆部と、前記中間被覆部に連続し、前記コア片の外周面と前記環状本体部の内周面間に介在される端部被覆部と、前記内コア片と前記外コア片との間に配置される樹脂ギャップ部とを備えるリアクトル。
  2. 前記内側分割片が組み付けられるコア片のうち、少なくとも一つのコア片の外周形状は角部を有する形状であり、
    前記端部分割片は、前記角部を有するコア片の外周面をその周方向に囲む前記環状本体部から前記コア片の角部を覆うように突出する端部爪部を備える請求項1に記載のリアクトル。
  3. 前記内側分割片が組み付けられるコア片のうち、少なくとも一つのコア片の外周形状は角部を有する形状であり、
    前記中間分割片は、前記本体部から前記コア片の角部を覆うように突出する中間爪部を備える請求項1又は請求項5に記載のリアクトル。
  4. 前記内側分割片が組み付けられるコア片のうち、少なくとも一つのコア片の外周形状は角部を有する形状であり、
    前記中間分割片は、前記隣り合うコア片の外周面から突出しない板状に設けられた前記介在突部と、前記介在突部の角部から前記コア片の角部を覆うように突出する中間爪部とを備える請求項1又は請求項5又は請求項6に記載のリアクトル。
  5. 前記中間爪部は、隣り合う別の爪部と互いに係合する係合部を備える請求項6又は請求項7に記載のリアクトル。
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