JP6440313B2 - 積層錠 - Google Patents

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Description

本発明は、積層錠に関する。
非ステロイド系抗炎症剤(以下、「NSAIDs」ともいう。)の中でもイブプロフェンやロキソプロフェン等のプロピオン酸系NSAIDsは、優れた消炎、鎮痛、解熱作用を有することから鎮痛・解熱剤の成分として広く使用されている。プロピオン酸系NSAIDsは、副作用が少ないものの、胃障害を起こすことがある。
プロピオン酸系NSAIDsによる胃障害を軽減する方法としては、制酸剤を組み合わせて配合する方法が知られている。しかし、プロピオン酸系NSAIDsと制酸剤とは、製剤中で接触すると互いに干渉し合い、経時的にプロピオン酸系NSAIDsの含有量が低下したり製剤が変色したりする等の問題を生じる。
一般に、製剤中で成分同士が接触しないようにする方法としては、各成分を別々の層に含ませた積層錠とする方法や成分毎に被覆粒子とする方法が挙げられる。これらのうち各成分を別々の層に含ませた積層錠とする方法は、成分毎に被覆粒子とする方法に比べ、製造にかかる時間やコストが抑えられる。
例えば、特許文献1には、イブプロフェンを主体とする層と制酸剤を主体とする層の間に両者を含まない層を少なくとも一層有するイブプロフェン含有積層製剤が開示されている。
特開平5−294829号公報
しかし、従来のプロピオン酸系NSAIDsを含む層と制酸剤を含む層とを有する積層錠は、保存後に、制酸剤を含む層が崩壊遅延を起こすことがある。また、打錠時に、制酸剤を含む層のバインディングやプロピオン酸系NSAIDsを含む層のキャッピングが生じやすい。
そこで、本発明は、保存後に制酸剤を含む層の崩壊遅延が生じにくく、また、バインディングやキャッピング等の打錠障害が抑えられた積層錠を目的とする。
なお、本明細書において「バインディング」とは、錠剤の側面に傷が生じる打錠障害を意味し、「キャッピング」とは、錠剤の凸部の少なくとも一方が、帽子状に剥離する打錠障害を意味する。
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、制酸剤を含む層に糖又は糖アルコールと、崩壊剤とを含ませることにより、保存後に制酸剤を含む層の崩壊遅延が生じにくく、また、バインディングやキャッピング等の打錠障害が抑えられた積層錠が得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[4]の態様を有する。
[1](A)プロピオン酸系非ステロイド系抗炎症剤又はその塩を含み、(B)制酸剤を実質的に含まない層(α)と、前記(A)成分を実質的に含まず、前記(B)成分、(C)糖及び糖アルコールから選ばれる1種以上、並びに(D)崩壊剤を含む層(β)とを有する、積層錠。
[2]前記(B)成分に対する、前記(C)成分と前記(D)成分の合計量の質量割合((C+D)/B)が、0.15〜3.5である、[1]に記載の積層錠。
[3]前記(B)成分に対する、前記(C)成分の質量割合(C/B)が0.05〜3.0である、[1]又は[2]に記載の積層錠。
[4]前記(B)成分に対する、前記(D)成分の質量割合(D/B)が、0.01〜2.0である、[1]〜[3]のいずれかに記載の積層錠。
本発明の積層錠によれば、保存後に制酸剤を含む層の崩壊遅延が生じにくく、また、バインディングやキャッピング等の打錠障害が抑えられる。
≪積層錠≫
本発明の積層錠は、(A)プロピオン酸系NSAIDs又はその塩(以下、「A成分」という。)を含み、(B)制酸剤(以下、「B成分」という。)を実質的に含まない層(α)(以下、「α層」という。)と、前記A成分を実質的に含まず、前記B成分、(C)糖及び糖アルコールから選ばれる1種以上(以下、「C成分」という。)、並びに(D)崩壊剤(以下、「D成分」という。)を含む層(β)(以下、「β層」という。)とを有する。
α層とβ層とは、接触していてもよいし、α層とβ層との間に中間層が設けられていてもよい。ただし、生産性の観点から、α層とβ層とは、接触していることが好ましい。
なお、中間層としては、A成分及びB成分を実質的に含まない層が挙げられる。
また、本明細書において「実質的に含まない」とは、対象の層における対象成分の含有量が10質量%以下であることを意味する。
<α層>
α層は、A成分を含み、B成分を実質的に含まない層である。
α層中のB成分の含有割合は、バインディングを抑える観点から、10質量%以下であり、1質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましく、0.01質量%がさらに好ましく、0質量%が最も好ましい。
(A成分)
A成分は、プロピオン酸系NSAIDs又はその塩である。
プロピオン酸系NSAIDsとしては、イブプロフェン、ロキソプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、プラノプロフェン、フルルビプロフェン等が挙げられる。中でも、本発明の効果がより得られやすいことから、イブプロフェン、ロキソプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセンが好ましく、イブプロフェン、ロキソプロフェンがより好ましい。
これらのプロピオン酸系NSAIDsは、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
α層の総質量に対するA成分の質量割合(A/α)は、特に制限されないが、0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましく、0.3以上が特に好ましい。A/αが前記下限値以上であれば、錠剤の崩壊性、製造性及び服用性が向上する。なお、A/αが1とは、α層中にA成分以外の成分が存在しないことを意味する。
(任意成分)
α層には、積層錠の物性、保存安定性等を損なわない範囲で、後述するB成分以外の他の生理活性成分、添加剤等の任意成分を含ませることができる。
他の生理活性成分としては、例えば、A成分以外の解熱鎮痛成分(例えばピロキシカム、メロキシカム、アンピロキシカム、セロコキシブ、ロフェコキシブ、チアラミド、アセトアミノフェン、エテンザミド、スルピリン、エトドラク等)、鎮静催眠成分(例えば、アリルイソプロピルアセチル尿素、ブロムワレリル尿素等)、抗ヒスタミン成分(例えば、塩酸イソチペンジル、塩酸ジフェニルピラリン、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェテロール、塩酸トリプロリジン、塩酸トリペレナミン、塩酸トンジルアミン、塩酸フェネタジン、塩酸メトジラジン、サリチル酸ジフェンヒドラミン、ジフェニルジスルホン酸カルビノキサミン、酒石酸アリメマジン、タンニン酸ジフェンヒドラミン、テオクル酸ジフェニルピラリン、ナパジシル酸メブヒドロリン、プロメタジンメチレン二サリチル酸塩、マレイン酸カルビノキサミン、dl−マレイン酸クロルフェニラミン、d−マレイン酸クロルフェニラミン、リン酸ジフェテロール等)、中枢興奮成分(例えば、安息香酸ナトリウムカフェイン、カフェイン、無水カフェイン等)、鎮咳去痰成分(コデインリン酸塩、デキストロメトルファン臭化水素酸塩、ジメモルファンリン酸塩、チペピジンヒベンズ酸塩、メトキシフェナミン塩酸塩、トリメトキノール塩酸塩、カルボシステイン、アセチルシステイン、エチルシステイン、dl−メチルエフェドリン、ブロムヘキシン塩酸塩、セラペプターゼ、塩化リゾチーム、アンブロキソール、テオフィリン、アミノフィリン)、ビタミン成分(例えば、ビタミンB1及びその誘導体並びにそれらの塩類、ビタミンB2及びその誘導体並びにそれらの塩類、ビタミンC及びその誘導体並びにそれらの塩類、ヘスペリジン及びその誘導体並びにそれらの塩類等)等が挙げられる。
添加剤としては、例えば、結合剤、賦形剤、香料、甘味剤、酸味料等が挙げられる。
結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース(以下、「HPC」と略す。)、澱粉、α化デンプン、ショ糖、ゼラチン、アラビアゴム末、ポリビニルピロリドン、プルラン、デキストリン等が挙げられる。
賦形剤としては、乳糖、コーンスターチ、粉糖、マンニトール、L−システイン等が挙げられる。
香料としては、メントール、リモネン、植物精油(ハッカ油、ミント油、ライチ油、オレンジ油、レモン油等)等が挙げられる。
甘味料としては、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ステビア、グリチルリチン酸二カリウム、アセスルファムカリウム、ソーマチン、スクラロース等が挙げられる。
酸味料としては、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、乳酸又はそれらの塩等が挙げられる。
他の生理活性成分、添加剤等の任意成分は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
<β層>
β層は、A成分を実質的に含まず、B成分、C成分及びD成分を含む層である。
β層中のA成分の含有割合は、バインディングを抑える観点から、10質量%以下であり、1質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましく、0.01質量%がさらに好ましく、0質量%が最も好ましい。
(B成分)
B成分は、制酸剤である。
B成分としては、公知の制酸剤であれば特に制限されず、例えば、乾燥水酸化アルミニウムゲル、アルミニウムグリシネート、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、水酸化アルミニウムゲル、合成ケイ酸アルミニウム等のアルミニウム系制酸剤;ケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム等のマグネシウム系制酸剤等が挙げられる。中でも、アルミニウム系制酸剤は、打錠時のβ層のバインディング、α層のキャッピング及び保存後の崩壊遅延が生じやすいため、本発明の効果をより享受しやすいことから好ましく、乾燥水酸化アルミニウムゲル、アルミニウムグリシネートがより好ましい。また、B成分は、造粒せず原末のまま用いると本発明の効果が得られやすく、好ましい。
これらの制酸剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
β層の総質量に対するB成分の質量割合(B/β)は、0.2〜0.9が好ましく、0.3〜0.8がより好ましい。また、A成分がイブプロフェンの場合は、0.2〜0.7が好ましく、0.3〜0.5がより好ましい。また、A成分がロキソプロフェンの場合は、B/βは0.4〜0.9が好ましく、0.6〜0.8がより好ましい。
B/βが前記下限値以上であれば、B成分の制酸剤としての胃粘膜保護効果を維持しやすくなる。一方、前記上限値以下であれば、保存後のβ層の崩壊遅延、打錠時のβ層のバインディング、α層のキャッピングの発生をより良好に防ぐことができる。
(C成分)
C成分は、糖又は糖アルコールである。
糖としては、グルコース、フルクトース等の単糖、乳糖、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース等の二糖、三糖以上の多糖等が挙げられる。
糖アルコールとしては、マンニトール、ソルビトール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、エリスリトール、キシリトール、マルチトール等が挙げられる。
中でも、本発明の効果がより得られやすいことから、乳糖、マンニトール、ソルビトールが好ましく、乳糖がより好ましい。
これらの糖又は糖アルコールは、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
B成分に対するC成分の質量割合(C/B)は、0.05〜3.0が好ましく、0.15〜1.5がより好ましい。また、A成分がイブプロフェンの場合は、C/Bは0.2〜3.0が好ましく、0.5〜1.5がより好ましい。また、A成分がロキソプロフェンナトリウムの場合は、C/Bは0.05〜1.0が好ましく、0.15〜0.5がより好ましい。
C/Bが前記下限値以上であれば、保存後のβ層の崩壊遅延、打錠時のβ層のバインディング、α層のキャッピングの発生をより良好に防ぐことができる。一方、前記上限値以下であれば、B成分の制酸剤としての胃粘膜保護効果を維持しやすくなる。
(D成分)
D成分は、崩壊剤である。
崩壊剤としては、例えば、低置換度HPC、カルメロース、カルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルスターチ(以下、「CMS」と略す。)ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン等が挙げられる。中でも、本発明の効果がより得られやすいことから、低置換度HPC、CMSナトリウム、クロスカルメロースナトリウムが好ましく、低置換度HPCがより好ましい。
これらの崩壊剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
B成分に対するD成分の質量割合(D/B)は、0.01〜2.0が好ましく、0.1〜1.0がより好ましい。また、A成分がイブプロフェンの場合は、D/Bは0.1〜2.0が好ましく、0.2〜1.0がより好ましい。また、A成分がロキソプロフェンナトリウムの場合は、D/Bは0.01〜1.0が好ましく、0.1〜0.3がより好ましい。
D/Bが前記下限値以上であれば、保存後のβ層の崩壊遅延、打錠時のβ層のバインディング、α層のキャッピングの発生をより良好に防ぐことができる。一方、前記上限値以下であれば、B成分の制酸剤としての胃粘膜保護効果を維持しやすくなる。
B成分に対するC成分及びD成分の合計量の質量割合((C+D)/B)は、0.15〜3.5が好ましく、0.25〜2.0がより好ましい。また、A成分がイブプロフェンの場合は、(C+D)/Bは0.6〜3.5が好ましく、1.0〜2.0がより好ましい。また、A成分がロキソプロフェンナトリウムの場合は、(C+D)/Bは0.15〜1.1が好ましく、0.25〜0.5がより好ましい。
(C+D)/Bが前記下限値以上であれば、保存後のβ層の崩壊遅延、打錠時のβ層のバインディング、α層のキャッピングの発生をより良好に防ぐことができる。一方、(C+D)/Bが前記上限値以下であれば、保存後のβ層の崩壊性が良好になり、また、B成分の制酸剤としての胃粘膜保護効果を維持しやすくなる。
D成分に対するC成分の質量割合(C/D)は、0.3〜7.0が好ましく、1.0〜3.5がより好ましい。また、A成分がイブプロフェンの場合は、C/Dは0.5〜7.0が好ましく、1.0〜3.5がより好ましい。また、A成分がロキソプロフェンナトリウムの場合は、C/Dは0.3〜7.0が好ましく、1.0〜2.5がより好ましい。
C/Dが前記範囲内であれば、保存後のβ層の崩壊遅延、打錠時のβ層のバインディング、α層のキャッピングの発生をより良好に防ぐことができる。
β層の総質量に対するC成分及びD成分の合計量の質量割合((C+D)/β)は、0.4以上が好ましく、0.55以上がより好ましい。
(C+D)/βが前記下限値以上であれば、保存後のβ層の崩壊遅延、打錠時のβ層のバインディング、α層のキャッピングの発生をより良好に防ぐことができる。一方、前記上限値以下であれば、B成分の制酸剤としての胃粘膜保護効果を維持しやすくなる。
(任意成分)
β層には、B成分、C成分、D成分以外に、積層錠の物性、保存安定性等を損なわない範囲で、他の生理活性成分、添加剤等の任意成分を含ませることができる。
他の生理活性成分、添加剤等の任意成分は、上記「α層」における任意成分(C成分及びD成分を除く。)と同様である。
(α/β)
β層の総質量に対するα層の総質量の質量割合(α/β)は、0.2〜1.5が好ましく、0.35〜1.1がより好ましい。また、A成分がイブプロフェンの場合は、α/βは0.5〜1.5が好ましく、0.75〜1.1がより好ましい。また、A成分がロキソプロフェンナトリウムの場合は、α/βは0.2〜0.5が好ましく、0.35〜0.45がより好ましい。
α/βが前記範囲内であれば、保存後のβ層の崩壊遅延、打錠時のβ層のバインディング、α層のキャッピングの発生をより良好に防ぐことができる。
<製造方法>
本発明の積層錠は、α層用の粉体と、β層用の粉体とを別々に得、これらのうち一方の粉体を打錠機に充填し、次いで、他方の粉体を打錠機に充填し打錠して作製される。
α層用の粉体又はβ層用の粉体は、原末をそのまま用いてもよく、造粒したものを用いてもよい。
造粒したものを用いる場合、造粒方法は公知の造粒方法を採用できる。造粒方法としては、例えば、乾式造粒法、流動層造粒法等が挙げられる。A成分がイブプロフェンである場合には乾式造粒法、A成分がロキソプロフェンナトリウムである場合には乾式造粒法又は流動層造粒法を用いると、本発明の効果が発揮されやすい。これらの粉体の体積平均粒子径は、10〜2000μmが好ましく、100〜1500μmがより好ましい。
打錠の際に用いる打錠機としては、例えば、ロータリー打錠機((株)菊水製作所製:LIBRA2)等が挙げられる。
打錠圧、回転盤の回転速度等の打錠条件は適宜設定される。例えば、打錠圧は、錠剤の硬度が5〜500Nとなるように適宜設定される。
<作用効果>
本発明の構成を有する積層錠とすれば、制酸剤を含む層のバインディングやプロピオン酸系NSAIDsを含む層のキャッピング等の打錠障害が抑えられ、保存後に制酸剤を含む層の崩壊遅延が生じにくくなる。
プロピオン酸系NSAIDsを含む層と制酸剤を含む層とを有する積層錠において打錠障害が生じたり、保存後に制酸剤を含む層に崩壊遅延が生じたりする原因は、打錠圧の伝播のバランスが不良になっていることによるものと推定される。つまり、本発明においては、β層にC成分及びD成分を含ませることにより、打錠圧が各層にバランス良く伝わりやすくなり、打錠障害が抑えられ、保存後に制酸剤を含む層の崩壊遅延が生じにくくなったことが考えられる。また、α層中のA成分の種類毎に、β層におけるC成分及びD成分の含有量を特定の範囲とすることにより、本発明の作用効果をより高められる。
<評価方法>
(保存後のβ層の崩壊性)
得られた積層錠を50℃75%RH条件下に6週間保存し、保存後の積層錠の崩壊性を第16日本薬局方記載の崩壊試験方法にしたがって評価した。△以上を合格とした。
◎:保存後の崩壊時間/初期の崩壊時間 = 2未満
○:保存後の崩壊時間/初期の崩壊時間 = 2以上3未満
△:保存後の崩壊時間/初期の崩壊時間 = 3以上4未満
×:保存後の崩壊時間/初期の崩壊時間 = 4以上
(β層のバインディング)
打錠した積層錠にけるβ層のバインディングの有無を目視にて確認した。β層のバインディングの評価は、以下の基準で行った。
◎:β層のバインディングが全くない。
○:β層のバインディングがほとんど観察されない。
△:β層のバインディングが一部観察される。
×:β層のバインディングが顕著に観察される。
(α層のキャッピング)
打錠した積層錠にけるα層のキャッピングの有無を目視にて確認した。α層のキャッピングの評価は、以下の基準で行った。
◎:α層のキャッピングが全く発生しない。
○:α層のキャッピングは発生しないが、後工程や輸送時に100錠中数錠に欠けが生じる。
△:一部の積層錠にα層のキャッピングが発生する。
×:全ての積層錠にα層のキャッピングが発生する。
<使用原料>
(A成分)
イブプロフェン:BASF社製
ロキソプロフェン:大和薬品(株)製
ケトプロフェン:浜理薬品工業(株)製
ナプロキセン:テバファーマスーティカル(株)製
(B成分)
乾燥水酸化アルミニウムゲル:協和化学(株)製
グリシナール(ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート):協和化学(株)製
メタケイ酸アルミン酸マグネシウム:富士化学工業(株)製
合成ヒドロタルサイト:協和化学(株)製
酸化マグネシウム:富田製薬(株)製
炭酸マグネシウム:富田製薬(株)製
(C成分)
乳糖造粒物:フロイント産業(株)製
マンニトール造粒物:ロケット社製
ソルビトール:三栄源・エフ・エフ・アイ(株)製
(D成分)
低置換度HPC:信越化学工業(株)製
CMSナトリウム:ロケット社製
クロスカルメロースナトリウム:旭化成ケミカルズ(株)製
<実施例1>
実施例1では、以下のように積層錠を作製した。
A成分としてイブプロフェン、B成分として乾燥水酸化アルミニウムゲル、C成分として乳糖、D成分として低置換度HPCを用いた。
まず、流動層造粒機(フロイント産業(株)製:FLO−5型)を用いて、A成分を、体積平均粒子径が200μmとなるように造粒し、粉体を得た。
また、A成分とは別に、乾式造粒機(ターボ工業(株)製:ローラーコンパクター)に、B成分、C成分及びD成分を投入し、体積平均粒子径が800μmとなるように造粒して、粉体を得た。
次いで、臼と杵とを有するロータリー打錠機((株)菊水製作所製:LIBRA2)を用いて、上記A成分の粉体が第1層、B成分、C成分及びD成分の粉体が第2層となるように、以下の手順で積層錠を得た。A成分の粉体を臼に入れ、次いでB成分、C成分及びD成分の粉体を臼に入れた。その後、打錠圧2kNで臼内に杵を押し込み、杵を臼内から抜き出し、次いで打錠圧8kNで臼内に杵を押し込んで、打錠して、直径8mm、厚さ5mmの積層錠を得た。本例において、ロータリー打錠機の回転盤の回転速度は、30rpmであった。また、1錠当たりの各成分の含有量は、下記表1の通りである。
<比較例1〜3>
比較例1では、D成分を含ませない以外は、実施例1と同様に積層錠を作製した。
比較例2では、C成分を含ませない以外は、実施例1と同様に積層錠を作製した。
比較例3では、C成分及びD成分を含ませない以外は、実施例1と同様に積層錠を作製した。
実施例1及び比較例1〜3で得られた積層錠について、50℃75%RH条件下に6週間保存した後の積層錠の崩壊性、並びに打錠時のβ層のバインディング及びα層のキャッピングを評価した。実施例1及び比較例1〜3の積層錠の1錠当たりの各成分の含有量及び評価結果を、以下の表1に示す。
Figure 0006440313
表1に示すとおり、β層に低置換度HPCを含まない比較例1の積層錠は、保存後のβ層の崩壊性に劣っており、打錠時のβ層のバインディングが顕著に観察された。β層に乳糖造粒物を含まない比較例2,3の積層錠は、打錠後、錠剤に欠けが生じたため、β層のバインディングと崩壊性を評価できなかった。
これらに対し、β層にC成分としての乳糖造粒物とD成分としての低置換度HPCを含ませた実施例1の積層錠は、保存後のβ層の崩壊性も優れており、また、β層のバインディングやα層のキャッピング等の打錠障害も抑えられた。
<実施例2〜4>
実施例2〜4では、A成分としてイブプロフェンの代わりに、ロキソプロフェンナトリウム、ケトプロフェン、ナプロキセンのいずれかを用いる以外は、実施例1と同様に積層錠を作製した。
実施例2〜4で得られた積層錠について、50℃75%RH条件下に6週間保存した後の積層錠の崩壊性、並びに打錠時のβ層のバインディング及びα層のキャッピングを評価した。実施例2〜4の積層錠の1錠当たりの各成分の含有量及び評価結果を、以下の表2に示す。ただし、実施例3、4は、参考例である。
Figure 0006440313
表2に示すとおり、いずれの積層錠も、保存後のβ層の崩壊性も優れており、また、β層のバインディングやα層のキャッピング等の打錠障害も抑えられた。特に、A成分としてロキソプロフェンナトリウムを用いた場合、イブプロフェンを用いた実施例1と同様に、β層のバインディングやα層のキャッピングは全く生じなかった。
<実施例5〜16>
実施例5〜10では、B成分として乾燥水酸化アルミニウムゲル、アルミニウムグリシネート(グリシナール)、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムのいずれかを下記表3に示す含有量で含ませる以外は、実施例1と同様に積層錠を作製した。
実施例11〜16では、B成分として乾燥水酸化アルミニウムゲル、アルミニウムグリシネート(グリシナール)、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムのいずれかを下記表3に示す含有量で含ませる以外は、実施例2と同様に積層錠を作製した。
実施例5〜16で得られた積層錠について、50℃75%RH条件下に6週間保存した後の積層錠の崩壊性、並びに打錠時のβ層のバインディング及びα層のキャッピングを評価した。実施例5〜16の積層錠の1錠当たりの各成分の含有量及び評価結果を、以下の表3に示す。
Figure 0006440313
表3に示すとおり、いずれの積層錠も、保存後のβ層の崩壊性も優れており、また、β層のバインディングやα層のキャッピング等の打錠障害も抑えられた。特に、B成分としてアルミニウム系制酸剤を用いた実施例5〜8,11〜14の積層錠は、保存後のβ層の崩壊遅延が良好であった。また、アルミニウム系制酸剤の中でも、乾燥水酸化アルミニウムゲル又はグリシナール(ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート)を用いた実施例5,6,11,12の積層錠は、β層のバインディングやα層のキャッピングは全く生じなかった。
<実施例17〜20>
実施例17,18では、C成分としてマンニトール造粒物又はソルビトールを用いる以外は、実施例1と同様に積層錠を作製した。
実施例19,20では、C成分としてマンニトール造粒物又はソルビトールを用いる以外は、実施例2と同様に積層錠を作製した。
実施例17〜20で得られた積層錠について、50℃75%RH条件下に6週間保存した後の積層錠の崩壊性、並びに打錠時のβ層のバインディング及びα層のキャッピングを評価した。実施例17〜20の積層錠の1錠当たりの各成分の含有量及び評価結果を、以下の表4に示す。
Figure 0006440313
表4に示すとおり、いずれの積層錠も、保存後のβ層の崩壊性も優れており、また、β層のバインディングやα層のキャッピング等の打錠障害も抑えられた。特に、C成分としてマンニトール造粒物を用いた実施例17,19の積層錠は、保存後のβ層の崩壊遅延が良好であった。
<実施例21〜26>
実施例21〜23では、D成分としてCMSナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、又は低置換度HPC及びCMSナトリウムの混合物を用いる以外は、実施例1と同様に積層錠を作製した。
実施例24〜26では、D成分としてCMSナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、又は低置換度HPC及びCMSナトリウムの混合物を用いる以外は、実施例2と同様に積層錠を作製した。
実施例21〜26で得られた積層錠について、50℃75%RH条件下に6週間保存した後の積層錠の崩壊性、並びに打錠時のβ層のバインディング及びα層のキャッピングを評価した。実施例21〜26の積層錠の1錠当たりの各成分の含有量及び評価結果を、以下の表5に示す。
Figure 0006440313
表5に示すとおり、いずれの積層錠も、保存後のβ層の崩壊性も優れており、また、β層のバインディングやα層のキャッピング等の打錠障害も抑えられた。特に、A成分としてロキソプロフェンナトリウムを用い、D成分としてCMSナトリウムを用いた実施例24の積層錠は、保存後のβ層の崩壊遅延に優れており、D成分としてCMSナトリウム及び低置換度HPCの混合物を用いた実施例26の積層錠は、保存後のβ層の崩壊遅延に優れている他、打錠時のβ層のバインディングが全く生じなかった。
<実施例27,28>
実施例27,28では、以下のように、α層にA成分以外の任意成分を含ませた積層錠を作製した。
実施例27の積層錠の作製は、まず、A成分としてイブプロフェンを1300g、α層中の任意成分としてアセトアミノフェンを1300g、低置換度HPCを900g計量し、乾式造粒機(ターボ工業(株)製:ローラーコンパクター)に投入し造粒して、α層用の混合粉体を得た。
また、乾燥水酸化アルミニウムゲルを700g、乳糖造粒物を600g、低置換度HPCを300g計量し、乾式造粒機(ターボ工業(株)製:ローラーコンパクター)に投入し造粒して、β層用の混合粉体を得た。
次いで、ロータリー打錠機((株)菊水製作所製:LIBRA2)を用いて、上記α層用の混合粉体が第1層、上記β層用の混合粉体が第2層となるように、以下の手順で積層錠を得た。α層の混合粉体を臼に入れ、次いでβ層用の混合粉体を臼に入れた。その後、打錠圧2kNで臼内に杵を押し込み、杵を臼内から抜き出し、次いで打錠圧8kNで臼内に杵を押し込んで、打錠して、実施例27の積層錠(直径8mm、厚さ5mm)を得た。本例において、ロータリー打錠機の回転盤の回転速度は、30rpmであった。また、1錠当たりの各成分の含有量は、下記表6の通りである。
実施例28の積層錠の作製は、まず、ロキソプロフェンナトリウム1362g、低置換度HPCを600g計量し、HPC水溶液をバインダーとして、流動層造粒機(フロイント産業(株)製:FLO−5型)に投入し造粒して、α層用の混合粉体を得た。
また、乾燥水酸化アルミニウムゲルを1250g、乳糖造粒物を250g、CMSナトリウムを50g、低置換度HPCを200g計量し、乾式造粒機(ターボ工業(株)製:ローラーコンパクター)に投入し造粒して、β層用の混合粉体を得た。
次いで、ロータリー打錠機((株)菊水製作所製:LIBRA2)を用いて、上記α層用の混合粉体が第1層、上記β層用の混合粉体が第2層となるように、以下の手順で積層錠を得た。α層の混合粉体を臼に入れ、次いでβ層用の混合粉体を臼に入れた。その後、打錠圧2kNで臼内に杵を押し込み、杵を臼内から抜き出し、次いで打錠圧8kNで臼内に杵を押し込んで、打錠して、実施例28の積層錠(直径8mm、厚さ5mm)を得た。本例において、ロータリー打錠機の回転盤の回転速度は、30rpmであった。また、1錠当たりの各成分の含有量は、下記表6の通りである。
実施例27,28で得られた積層錠について、50℃75%RH条件下に6週間保存した後の積層錠の崩壊性、並びに打錠時のβ層のバインディング及びα層のキャッピングを評価した。実施例27,28の積層錠の1錠当たりの各成分の含有量及び評価結果を、以下の表6に示す。
Figure 0006440313
表6に示すとおり、いずれの積層錠も、保存後のβ層の崩壊性も優れており、また、β層のバインディングやα層のキャッピング等の打錠障害も抑えられた。
<実施例29〜44>
実施例29〜44では、C成分又はD成分の含有量を変更する以外は、実施例1又は実施例2と同様に積層錠を作製した。
実施例29〜44で得られた積層錠について、50℃75%RH条件下に6週間保存した後の積層錠の崩壊性、並びに打錠時のβ層のバインディング及びα層のキャッピングを評価した。実施例29〜44の積層錠の1錠当たりの各成分の含有量及び評価結果を、以下の表7に示す。
Figure 0006440313
表7に示すとおり、いずれの積層錠も、保存後のβ層の崩壊性も優れており、また、β層のバインディングやα層のキャッピング等の打錠障害も抑えられた。
<実施例45〜48>
実施例45,46では、α層中のA成分及びB成分の含有量とβ層中のB成分の含有量を表8に示すとおりに変更した以外は、それぞれ実施例1,2と同様に積層錠を作製した。
実施例47,48では、α層中のA成分の含有量とβ層中のA成分及びB成分の含有量を表8に示すとおりに変更した以外は、それぞれ実施例1,2と同様に積層錠を作製した。
実施例45〜48の積層錠の1錠当たりの各成分の含有量、α層中のB成分の含有割合、β層中のA成分の含有割合、及び評価結果を、以下の表8に示す。
Figure 0006440313
表8の実施例45,46に示すとおり、α層中のB成分の含有量が10質量%以下の場合、積層錠は、保存後のβ層の崩壊性も優れており、また、β層のバインディングやα層のキャッピング等の打錠障害も抑えられた。
また、実施例47,48に示すとおり、β層中のA成分の含有量が10質量%以下の場合、積層錠は、保存後のβ層の崩壊性も優れており、また、β層のバインディングやα層のキャッピング等の打錠障害も抑えられた。

Claims (5)

  1. (A)イブプロフェン、ロキソプロフェン及びそれらの塩から選ばれる1種以上を含み、(B)制酸剤を実質的に含まない層(α)と、前記(A)成分を実質的に含まず、前記(B)成分、(C)乳糖、マンニトール及びソルビトールから選ばれる1種以上、並びに(D)低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム及びクロスカルメロースナトリウムから選ばれる1種以上の崩壊剤を含む層(β)とを有する、積層錠。
  2. 前記層(β)の総質量に対する前記層(α)の総質量の質量割合(α/β)が、0.2〜1.67である、請求項1に記載の積層錠。
  3. 前記(B)成分に対する、前記(C)成分と前記(D)成分の合計量の質量割合((C+D)/B)が、0.15〜3.5である、請求項1又は2に記載の積層錠。
  4. 前記(B)成分に対する、前記(C)成分の質量割合(C/B)が0.05〜3.0である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層錠。
  5. 前記(B)成分に対する、前記(D)成分の質量割合(D/B)が、0.01〜2.0である、請求項1〜のいずれか一項に記載の積層錠。
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