JP6037824B2 - エトドラク含有固形製剤 - Google Patents

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本発明は、エトドラク含有固形製剤に関する。
エトドラクは、COX(シクロキシゲナーゼ)−2選択的に炎症部位に作用することにより鎮痛作用、抗炎症作用を示し、血漿中濃度の消失半減期が長い、胃に対する障害が少ないという特徴を有する。このため、エトドラクは、解熱剤又は鎮痛剤(総じて解熱鎮痛剤ということがある)の有効成分として有用である。
解熱鎮痛剤を服用する者にとって、解熱鎮痛剤に対する最大の要求は即効性である。一般に、解熱鎮痛剤は、顆粒剤、錠剤、カプセル剤等の固形製剤として流通されている。エトドラクは、水に難溶な物質であるため、単に賦形剤等と共に造粒する等して固形製剤にしても、即効性に劣るものとなる。
固形製剤に即効性を付与するためには、エトドラクが消化管から吸収される前段階として、服用後の固形製剤を素早く崩壊させる必要がある。
従来、こうした問題に対し、治療上及び/又は予防上活性な物質を含み、該活性な物質は、塩酸に対し特定の溶解度を有するか又は特定のpKaを有し、特定の平均粒度であって、アルカリ物質と接触されるものである経口投与用の迅速放出医薬組成物が提案されている(例えば、特許文献1)。
特開2012−82197号公報
本発明者らは、鋭意検討した結果、エトドラクと2価金属を含む無機塩とを併有することで、エトドラク含有固形製剤の崩壊性を高められることを見出した。
しかしながら、エトドラクと2価金属を含む無機塩とを併有するエトドラク含有製剤は、保存中に変色するという問題を有していた。
そこで、本発明は、崩壊性に優れ、かつ変色を防止できるエトドラク含有固形製剤を目的とする。
本発明のエトドラク含有製剤は、(A)成分:エトドラクと、(B)成分:2価金属を含む無機塩20〜90質量%と、(C)成分:有機酸と、を含有し、前記(B)成分/前記(C)成分で表される質量比が0.55〜20であることを特徴とする。前記(C)成分は、クエン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、アジピン酸、コハク酸及び酒石酸から選択される1種以上が好ましく、前記(B)成分は、リン酸塩及びリン酸水素塩から選択される1種以上が好ましく、崩壊剤を含有することが好ましく、錠剤であることが好ましい。
本発明のエトドラク含有固形製剤によれば、崩壊性に優れ、かつ変色を防止できる。
(エトドラク含有固形製剤)
本発明のエトドラク含有固形製剤(以下、単に固形製剤ということがある)は、(A)成分:エトドラクと、(B)成分:2価金属を含む無機塩と、(C)成分:有機酸とを含有する。
固形製剤の剤形は、固形であれば特に限定されず、錠剤;散剤、顆粒剤等の粒状剤;粒状剤をカプセルに封入したカプセル剤等が挙げられ、中でも、錠剤が好ましい。錠剤は、圧縮成形により成形されるため、崩壊性に劣るが、本発明を適用することで、崩壊性の向上が顕著である。
固形製剤は、(A)〜(C)成分の造粒物、(A)〜(C)成分の混合物を任意の形状に成形したもの、(A)〜(C)成分の造粒物を任意の形状に成形したもののいずれでもよい。
<(A)成分:エトドラク>
(A)成分は、エトドラク((+)−1,8−ジエチル−1,3,4,9−テトラヒドロピラノ[3,4−b]インドール−1−酢酸)である。(A)成分は、鎮痛作用、抗炎症作用を有することから、解熱剤や鎮痛剤の有効成分として医薬品に用いられる。
一般に、(A)成分は粉体として流通されている。(A)成分の体積平均粒子径は、特に限定されないが、例えば3〜20μmが好ましく、5〜15μmがより好ましい。上記下限値未満では、固形製剤の製造中において(A)成分が凝集しやすく、上記上限値超では、服用後の溶解性が低下し、即効性が低下するおそれがある。
体積平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布計(LS13320、ベックマンコールター社製)で測定される値である。
固形製剤中の(A)成分の含有量は、1〜85質量%が好ましく、5〜80質量%が好ましく、10〜75質量%がより好ましく、15〜70質量%がさらに好ましい。上記下限値未満では、固形製剤中の(A)成分の量が少なくなりすぎて1回の服用量が多くなり、利便性が低下するおそれがある。上記上限値超では、(B)〜(C)成分が少なくなりすぎて、崩壊性や変色抑制効果が低下するおそれがある。
<(B)成分:2価金属を含む無機塩>
(B)成分は、2価金属を含む無機塩である。(B)成分を含有することで、固形製剤を崩壊しやすくできる。
(B)成分を構成する2価金属としては、カルシウム、マグネシウム等が挙げられる。なお、(B)成分は、2価金属を含んでいれば、2価以外の金属をさらに含んでいてもよい。
(B)成分を構成する塩としては、例えば、リン酸塩、リン酸水素塩、炭酸塩、重炭酸塩、ケイ酸塩が挙げられ、中でも、リン酸塩、リン酸水素塩が好ましい。これらの塩であえば、固形製剤の崩壊性のさらなる向上を図れる。
(B)成分としては、例えば、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、重質炭酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム等が挙げられ、中でも、固形製剤の崩壊性のさらなる向上を図る観点から、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウムが好ましい。これらの(B)成分は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
なお、(B)成分は、無水物、水和物のいずれでもよい。
(B)成分の体積平均粒子径は、特に限定されないが、例えば、10〜500μmが好ましく、20〜200μmがより好ましい。
固形製剤中の(B)成分の含有量は、20〜90質量%であり、22.5〜85質量%が好ましく、30〜80質量%がより好ましい。上記下限値未満では、崩壊性が不十分となり、上記上限値超では、(A)成分や(C)成分の含有量が少なくなりすぎて、鎮痛作用、抗炎症作用が低下したり、変色抑制効果が低下する。
固体製剤中、(B)成分/(A)成分で表される質量比(以下、B/A比ということがある)は、0.5〜10が好ましく、1〜7がより好ましく、1〜5がさらに好ましく、2〜5が特に好ましい。B/A比が上記範囲内であれば、崩壊性がより良好となる。
<(C)成分:有機酸>
(C)成分は、有機酸である。有機酸を含有することで、固形製剤の変色を防止できる。
(C)成分としては、例えば、クエン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、アジピン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、マロン酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、グルタコン酸、乳酸、リン酸等が挙げられる。中でも、クエン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、アジピン酸、コハク酸、酒石酸が好ましく、クエン酸がより好ましい。これらの(C)成分は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
(C)成分の体積平均粒子径は、特に限定されないが、例えば、10〜500μmが好ましく、20〜200μmがより好ましい。
固形製剤中の(C)成分の含有量は、例えば、0.5〜70質量%が好ましく、1〜60質量%がより好ましく、2〜50質量%がさらに好ましく、3〜37質量%が特に好ましい。上記下限値未満では、固形製剤中の(C)成分の分布が不均一になりやすく、上記上限値超では、(A)〜(B)成分の含有量が少なくなりすぎて、鎮痛作用、抗炎症作用が低下したり、崩壊性が低下するおそれがある。
固体製剤中、(B)成分/(C)成分で表される質量比(以下、B/C比ということがある)は、0.55〜20であり、0.7〜10がより好ましく、1〜5がより好ましい。B/C比が上記下限値未満では、変色抑制効果が不十分となり、上記上限値超では、崩壊性が不十分になる。
<(D)成分:崩壊剤>
固形製剤は、崩壊剤を含有してもよい。(D)成分を含有することで、固形製剤の崩壊性がより高まる。
(D)成分としては、特に限定されず、例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)等のヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、クロスポビドン、部分α化デンプン、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム等が挙げられ、中でも、HPCが好ましく、L−HPCがより好ましい。
固形製剤中の(D)成分の含有量は、例えば、0.1〜70質量%が好ましく、1〜6質量%がより好ましい。上記下限値未満では、固形製剤中に均一に分布しにくくなるおそれがある。上記上限値超では、有効成分等、他の成分が少なくなりすぎて、医薬固形製剤としての機能が低下するおそれがある。
<任意成分>
固体製剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、(A)成分を除く生理活性物質(任意活性物質)や(B)〜(C)成分を除く添加剤を含有してもよい。
任意活性物質としては、例えば、イブプロフェン、ピロキシカム、メロキシカム、アンピロキシカム、セロコキシブ、ロフェコキシブ、チアラミド、アセトアミノフェン、エテンザミド、スルピリン等、(A)成分以外の解熱鎮痛成分;アリルイソプロピルアセチル尿素、ブロムワレリル尿素等の鎮静催眠成分;塩酸イソチペンジル、塩酸ジフェニルピラリン、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェテロール、塩酸トリプロリジン、塩酸トリペレナミン、塩酸トンジルアミン、塩酸フェネタジン、塩酸メトジラジン、サリチル酸ジフェンヒドラミン、ジフェニルジスルホン酸カルビノキサミン、酒石酸アリメマジン、タンニン酸ジフェンヒドラミン、テオクル酸ジフェニルピラリン、ナパジシル酸メブヒドロリン、プロメタジンメチレン二サリチル酸塩、マレイン酸カルビノキサミン、dl−マレイン酸クロルフェニラミン、d−マレイン酸クロルフェニラミン、リン酸ジフェテロール等の抗ヒスタミン成分;安息香酸ナトリウムカフェイン、カフェイン、無水カフェイン等の中枢興奮成分;コデインリン酸塩、デキストロメトルファン臭化水素酸塩、ジメモルファンリン酸塩、チペピジンヒベンズ酸塩、メトキシフェナミン塩酸塩、トリメトキノール塩酸塩、カルボシステイン、アセチルシステイン、エチルシステイン、dl−メチルエフェドリン、ブロムヘキシン塩酸塩、セラペプターゼ、塩化リゾチーム、アンブロキソール、テオフィリン、アミノフィリン等の鎮咳去痰成分;ビタミンB1及びその誘導体並びにそれらの塩類、ビタミンB2及びその誘導体並びにそれらの塩類、ビタミンC及びその誘導体並びにそれらの塩類、ヘスペリジン及びその誘導体並びにそれらの塩類等のビタミン成分;等が挙げられる。これらの任意活性物質は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
添加剤としては、例えば、結合剤、香料、色素、甘味剤、滑沢剤等が挙げられる。
結合剤としては、例えば、澱粉、α化デンプン、ショ糖、ゼラチン、アラビアゴム末、ポリビニルピロリドン、プルラン、デキストリン等が挙げられる。
賦形剤としては、例えば、乳糖、コーンスターチ、粉糖、マンニトール、L−システイン等が挙げられる。
香料としては、例えば、メントール、リモネン、植物精油(ハッカ油、ミント油、ライチ油、オレンジ油、レモン油等)等が挙げられる。
甘味料としては、例えば、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ステビア、グリチルリチン酸二カリウム、アセスルファムカリウム、ソーマチン、スクラロース等が挙げられる。
滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、軽質無水ケイ酸等が挙げられる。
(固形製剤の製造方法)
本発明の固形製剤の製造方法は、剤形に応じて、従来公知の製造方法から選択される。
固形製剤の製造方法としては、例えば、(A)〜(C)成分及び必要に応じて任意成分を混合し、これを任意の形状に打錠して、錠剤を得る方法が挙げられる。
また、例えば、(A)〜(C)成分及び必要に応じて任意成分を造粒して粒状剤としたり、さらに粒状剤を打錠して錠剤を得る方法が挙げられる。造粒方法としては、特に限定されず、流動層造粒、攪拌造粒等が挙げられる。
固形製剤の製造方法において、(A)成分は、そのまま用いられてもよいし、予め賦形剤等と共に造粒された造粒物として用いられてもよい。
上述の通り、本発明の固形製剤は、特定量の(A)成分と、特定量の(B)成分と、(C)成分とを含有するため、崩壊性に優れ、かつ変色を防止できる。
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
(使用原料)
<(A)成分>
エトドラク:体積平均粒子径=4μm、ロンザジャパン株式会社製。
<(B)成分>
無水リン酸水素カルシウム:無水リン酸水素カルシウムGS(商品名)、協和化学工業株式会社製。
炭酸マグネシウム:協和化学工業株式会社製。
メタケイ酸アルミン酸マグネシウム:富士化学工業株式会社製。
<(C)成分>
クエン酸:メルク株式会社製。
アスパラギン酸:メルク株式会社製。
グルタミン酸:メルク株式会社製。
アジピン酸:メルク株式会社製。
コハク酸:メルク株式会社製。
酒石酸:メルク株式会社製。
<(D)成分:崩壊剤>
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC):LH−21(商品名)、信越化学工業株式会社製。
<その他>
ステアリン酸マグネシウム:太平化学産業株式会社製。
(実施例1〜12、比較例1〜3)
表1〜2の組成に従い、各原料を粉体混合し、これをロータリー式打錠機(臼杵:二段R杵、φ9.0mm、12本立て。回転盤の回転数:30rpm。)により打錠して、φ9.0mmの錠剤を得た。なお、錠剤の硬度が6kNとなるよう、打錠圧を調整した。
得られた錠剤について、変色抑制効果及び崩壊性を評価し、その結果を表中に示す。
(評価方法)
<変色抑制効果>
各例の錠剤をガラス製瓶に入れ、これを50℃、75RH%で6週間保存した。下記評価基準に従い、保存後の錠剤を目視で評価した。「△」〜「◎」を変色抑制効果に優れると判断した。
≪評価基準≫
◎:保存前後において錠剤の色調に変化が見られない。
○:保存後の錠剤に、僅かな黄色の着色が認められる。
△:保存後の錠剤に、明らかな黄色の着色が認められる。
×:保存後の錠剤に、褐色の着色が認められる。
<崩壊性>
日本薬局方(第16改)に収載された「錠剤の崩壊試験法」に準じ、製造直後の錠剤の6錠について崩壊時間を測定し、その平均値を求めた。求めた平均値を下記評価基準に分類して、崩壊性を評価した。崩壊試験液には水を用いた。
≪評価基準≫
◎:1分未満に崩壊した。
○:1分以上3分未満で崩壊した。
△:3分以上5分未満で崩壊した。
×:崩壊するまでに5分以上を要した。
Figure 0006037824
Figure 0006037824
表1〜2に示す通り、本発明を適用した実施例1〜12は、変色抑制効果及び崩壊性が「△」〜「◎」であった。
一方、B/C比が0.53である比較例1、及び(B)成分の含有量が18.4質量%である比較例3は、崩壊性が「×」であった。
B/C比が21.50である比較例2は、変色抑制効果が「×」であった。
これらの結果から、本発明を適用することで、崩壊性に優れ、かつ変色を防止できるエトドラク固形製剤を得られることが判った。

Claims (4)

  1. (A)成分:エトドラクと、(B)成分:無水リン酸水素カルシウム、炭酸マグネシウム及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウムから選択される1種以上を20〜90質量%と、(C)成分:クエン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、アジピン酸、コハク酸及び酒石酸から選択される1種以上と、を含有し、前記(B)成分/前記(C)成分で表される質量比が0.55〜20であるエトドラク含有固形製剤。
  2. 前記(B)成分/前記(C)成分で表される質量比が0.7〜10である請求項1に記載のエトドラク含有固形製剤。
  3. (D)成分:崩壊剤を含有する請求項1又は2に記載のエトドラク含有固形製剤。
  4. 錠剤である請求項1〜のいずれか1項に記載のエトドラク含有固形製剤。
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