JP2018030840A - 錠剤、コーティング錠、錠剤の製造方法及びコーティング錠の製造方法 - Google Patents

錠剤、コーティング錠、錠剤の製造方法及びコーティング錠の製造方法 Download PDF

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勘二 寺本
和裕 石田
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Abstract

【課題】アセトアミノフェンを含有し経時硬度低下を抑制した錠剤、コーティング錠、錠剤の製造方法及びコーティング錠の製造方法を提供する。【解決手段】下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含む薬物層を有する錠剤、コーティング錠、錠剤の製造方法及びコーティング錠の製造方法である。 (A)成分:アセトアミノフェン (B)成分:(b1)成分及び(b2)成分より選ばれる少なくとも一種 (b1)成分:糖及び糖アルコール(ただし、乳糖を除く)より選ばれる少なくとも1種 (b2)成分:カルメロース及びカルメロースナトリウムより選ばれる少なくとも1種 (C)成分:ロキソプロフェン及びその塩より選ばれる少なくとも1種【選択図】なし

Description

本発明は、錠剤、錠剤を素剤としてコーティングしたコーティング錠、及びそれらの製造方法に関する。
従来、アセトアミノフェンは解熱鎮痛の有効成分として医薬品に用いられている。一方、アセトアミノフェンを含有する錠剤の固形製剤は、経時による硬度低下が生じる事が知られている。
錠剤の固形製剤の経時による硬度低下を解決するための技術としては、例えば特許文献1では、ロキソプロフェン含有錠剤の硬度低下の抑制のために、糖、又はカルメロース(CMC)を添加する技術が開示されている。特許文献2では、アセトアミノフェンを含有する固形製剤の加湿後の硬度低下の抑制のために、糖アルコールであるマンニトール、又はカルメロースを添加する技術が開示されている。
特許第4293572号公報 特許第4989733号公報
しかしながら、従来の技術では、アセトアミノフェンを含有する錠剤の硬度低下を抑制する効果は十分ではなかった。例えば特許文献1は、ロキソプロフェン含有錠剤の硬度低下を課題としており、アセトアミノフェンを含有する錠剤については考慮されていない。特許文献2には、アセトアミノフェンを含有する固形製剤について加湿後の硬度低下の効果が記載されているが、経時的な硬度低下の抑制については考慮されていない。
本発明は上記のような事情を鑑みてなされたものであり、アセトアミノフェンを含有する錠剤について経時的な硬度低下を抑制することを目的とする。
本発明者らは、上述の課題解決のため鋭意検討を進めた結果、アセトアミノフェン及び、糖又は糖アルコール、又はカルメロース、カルメロースナトリウムを含有する錠剤に、意外にも非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs)であるロキソプロフェン又はその塩を添加することで、錠剤の経時硬度低下を抑制可能であることを知見し、本発明を完成させるに至った。
具体的には、上記課題を解決するため、本発明は以下の態様を有する。
[1] 下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含む薬物層を有する錠剤。
(A)成分:アセトアミノフェン
(B)成分:(b1)成分及び(b2)成分より選ばれる少なくとも一種
(b1)成分:糖及び糖アルコール(ただし、乳糖を除く)より選ばれる少なくとも1種
(b2)成分:カルメロース及びカルメロースナトリウムより選ばれる少なくとも1種
(C)成分:ロキソプロフェン及びその塩より選ばれる少なくとも1種
[2] 前記(C)成分を前記薬物層の全体質量に対して3〜85質量%含む、[1]記載の錠剤。
[3] ((B)成分+(C)成分)/(A)成分で表される質量比が0.05〜10である、[1]又は[2]に記載の錠剤。
[4] (A)成分/(C)成分で表される質量比が0.25〜15である、[1]から[3]のいずれか1項に記載の錠剤。
[5] 前記(B)成分は、前記(b1)成分と前記(b2)成分とを含有する[1]から[4]いずれか1項記載の錠剤。
[6] [1]〜[5]の錠剤を素錠とし、前記素錠の表面にコーティング層を有するコーティング錠。
[7] 下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する薬物含有粉体を打錠成形して薬物層を形成する工程を有する、錠剤の製造方法。
(A)成分:アセトアミノフェン
(B)成分:(b1)成分及び(b2)成分より選ばれる少なくとも一種
(b1)成分:糖及び糖アルコール(ただし、乳糖を除く)より選ばれる少なくとも1種
(b2)成分:カルメロース及びカルメロースナトリウムより選ばれる少なくとも1種
(C)成分:ロキソプロフェン及びその塩より選ばれる少なくとも1種
[8] [7]の製造方法により製造された錠剤を素錠とし、前記素錠の表面にコーティング層を設ける、コーティング錠の製造方法。
本発明によれば、アセトアミノフェンを含有し経時硬度低下を抑制した錠剤が得られる。
以下、本発明の実施態様に係る錠剤、コーティング錠、錠剤の製造方法及びコーティング錠の製造方法について、実施形態を示して説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
[実施形態]
本実施形態の錠剤は、下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含む薬物層を有する。
[(A)成分]
(A)成分はアセトアミノフェンである。アセトアミノフェン(N−(4−ヒドロキシフェニル)アセトアミド)は、別名パラセタモールとも呼ばれ、日本薬局方に収載されている解熱鎮痛成分である。
錠剤中の(A)成分の含有量は製造上問題ない範囲内であれば、特に限定されない。しかし、(A)成分の一回当たりの服用量としては、30〜500mgが好ましい。良好に効果を得るためには、前記服用量は50〜300mgであることがより好ましい。
(A)成分の薬物層中の含有割合は、薬物層の全体質量に対して5〜90質量%が好ましい。前記量比とすることで、経時による硬度低下が誘発され、発明の効果が顕著になる。良好に効果を得るためには、前記含有割合は20〜85質量%であることがより好ましい。
[(B)成分]
(B)成分は(b1)成分及び(b2)成分より選ばれる少なくとも一種である。(b1)成分は糖又は糖アルコール(ただし、乳糖は除く)である。
(b1)成分の例としては、グルコース、ガラクトース、若しくはマンノース等の単糖、ショ糖、トレハロース、パラチノース、若しくはマルトース等の二糖、キシリトール、ソルビトール、イノシトール、エリスリトール(エリトリトール)、イソマルト、D−マンニトール、若しくは還元乳糖ラクチトール等の糖アルコール、又は、粉末還元麦芽糖アメ、ジェランガム、白糖、果糖、デキストリン、クラスターデキストリン、フラクトオリゴ糖、アメ粉、黒砂糖、若しくは蜂蜜糖などのその他の二糖以上の糖などが挙げられる。
(b2)成分はカルメロース又はカルメロースナトリウムである。カルメロース(カルボキシメチルセルロース)は、セルロースの多価カルボキシメチルエーテルである。
(B)成分は上記成分を含むものであれば良く、造粒物や共沈殿物を用いても良い。
(B)成分は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。特に、(b1)成分及び(b2)成分を組み合わせて添加することで、(B)成分の合計質量が少量でも硬度低下抑制効果を得ることが出来、本実施形態の効果をより高くすることが出来る。
(B)成分の一回当たりの服用量としては、5〜500mgが好ましい。特に良好に効果を得るためには、前記服用量は10〜300mgであることがより好ましい。
薬物層中の(B)成分の割合は、薬物層の全体質量に対して0.5〜85質量%が好ましい。前記量比の下限以上とすることで、経時による硬度低下の抑制効果が良好となる。前記量比の上限以下とすることで、他の有効成分を十分に含有させることができ、1回あたりの服用錠数を減らすことができる。特に良好に効果を得るためには、前記含有割合は1〜50質量%であることがより好ましい。
(b1)成分及び(b2)成分を併用する場合、薬物層中の(b1)成分及び(b2)成分の一回当たりの合計服用量は3〜800mgが好ましい。良好に効果を得るためには、前記服用量は5〜400mgであることがより好ましい。
薬物層中の(b1)成分及び(b2)成分の合計割合は、薬物層の全体質量に対して0.3〜80質量%が好ましい。良好に効果を得るためには、前記含有割合は0.8〜50質量%がより好ましい。
[(C)成分]
(C)成分は、ロキソプロフェン及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも1種以上である。ロキソプロフェンの塩としては、ロキソプロフェンの薬学上許容される塩であれば特に制限されず、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられ、中でもロキソプロフェンナトリウムが好ましい。また、ロキソプロフェン及びその塩は、それらの水和物の状態で存在していてもよく、例としては、ロキソプロフェンナトリウム二水和物が挙げられ、好ましい(水分量として原薬末中約12%に相当する)。本実施形態の錠剤の水分は、ロキソプロフェンナトリウム二水和物より持ち込まれる水分量も含む。
錠剤中の(C)成分の配合量としては、11〜170mgが好ましい。良好に効果を得るためには、前記配合量は22〜113mgであることがより好ましい。
薬物層中の(C)成分の割合は、薬物層の全体質量に対して3〜85質量%が好ましい。前記量比の下限以上とすることで、経時による硬度低下の抑制効果が良好となり、上限以下とすることで打錠工程の杵付着を軽減することが出来る。良好に効果を得るためには、前記含有割合は5〜50質量%であることがより好ましい。
[B/A比]
(B)成分/(A)成分で表される質量比(以下、B/A比)は任意に設定出来るが、B/A比=0.02〜15であると、本実施形態の効果をより有効に得られる。前記量比の下限以上とすることで、経時による硬度低下の抑制効果が良好となり、上限以下とすることで、(A)成分及び他の有効成分を十分に含有させることが出来一回当たりの服用錠剤数を減らすことが出来る。良好に効果を得るためには、B/A比=0.05〜5であることがより好ましい。
[A/C比]
(A)成分/(C)成分で表される質量比(以下、A/C比)は任意に設定出来るが、A/C比=0.25〜15であると、本実施形態の効果をより有効に得られる。前記量比の下限以上とすることで、経時による崩壊遅延を抑制できる。打錠工程の杵付着を軽減することができ、上限以下とすることで経時による硬度低下の抑制効果が良好となる。これらについて良好な効果を得るためには、A/C比=1〜10がより好ましく、4.5〜7が更に好ましい。
[(B+C)/A比]
((B)成分+(C)成分)/(A)成分で表される質量比(以下、(B+C)/A比)は任意に設定できるが、(B+C)/A比=0.05〜10であると、本実施形態の効果をより有効に得られる。前記量比とすることで、経時による硬度低下の抑制効果が良好となる。
[A+B+C合計質量]
各成分の一回当たりの服用量の合計質量は、(A)成分+(B)成分+(C)成分の質量の合計(以下、A+B+C合計質量)として、46〜1170mgであると、本実施形態の効果をより有効に得られる。特に良好に効果を得るためには、A+B+C合計質量が一回当たりの服用量として82〜713mgであることが好ましい。
また各成分の合計質量の薬物層中の含有割合としては、A+B+C合計質量が薬物層の全体質量に対して10〜95質量%であると、本実施形態の効果が得られる。A+B+C合計質量を前記10質量%以上含有とすることで、経時による硬度低下の抑制効果が良好となる。一方、後述する錠剤の製造しやすさからA+B+C合計質量は前記95質量%以下となるよう配合することが好ましい。良好に効果を得るためには、A+B+C合計質量が薬物層の全体質量に対して26〜90質量%であることがより好ましい。
[任意成分について]
本願の錠剤には錠剤物性及び保存安定性を損なわない範囲で任意に、その他の生理活性成分や添加剤を配合しても良い。生理活性成分としては、たとえば、(A)成分や(C)成分以外の解熱鎮痛成分(例えばピロキシカム、メロキシカム、アンピロキシカム、セロコキシブ、ロフェコキシブ、チアラミド、エテンザミド、若しくはスルピリン等)、鎮静催眠成分(例えば、アリルイソプロピルアセチル尿素、若しくはブロムワレリル尿素等)、抗ヒスタミン成分(例えば、塩酸イソチペンジル、塩酸ジフェニルピラリン、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェテロール、塩酸トリプロリジン、塩酸トリペレナミン、塩酸トンジルアミン、塩酸フェネタジン、塩酸メトジラジン、サリチル酸ジフェンヒドラミン、ジフェニルジスルホン酸カルビノキサミン、酒石酸アリメマジン、タンニン酸ジフェンヒドラミン、テオクル酸ジフェニルピラリン、ナパジシル酸メブヒドロリン、プロメタジンメチレン二サリチル酸塩、マレイン酸カルビノキサミン、dl−マレイン酸クロルフェニラミン、d−マレイン酸クロルフェニラミン、若しくはリン酸ジフェテロール等)、中枢興奮成分(例えば、安息香酸ナトリウムカフェイン、カフェイン、若しくは無水カフェイン等)、鎮咳去痰成分(コデインリン酸塩、デキストロメトルファン臭化水素酸塩、ジメモルファンリン酸塩、チペピジンヒベンズ酸塩、メトキシフェナミン塩酸塩、トリメトキノール塩酸塩、カルボシステイン、アセチルシステイン、エチルシステイン、dl−メチルエフェドリン、ブロムヘキシン塩酸塩、セラペプターゼ、塩化リゾチーム、アンブロキソール、テオフィリン、若しくはアミノフィリン)、ビタミン成分(例えば、ビタミンB1及びその誘導体並びにそれらの塩類、ビタミンB2又はその誘導体並びにそれらの塩類、ビタミンC及びその誘導体並びにそれらの塩類、若しくは、ヘスペリジン及びその誘導体並びにそれらの塩類等)、又は、制酸剤(乾燥水酸化アルミニウムゲル、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、若しくは炭酸水素ナトリウム等)等が挙げられる。これらの薬効成分は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
添加剤の例としては結合剤、賦形剤、崩壊剤、香料、滑沢剤、甘味剤、酸味剤、又は着色剤などがあげられる。具体的には、結合剤としては、澱粉、α化デンプン、エチルセルロース、メチルセルロース、ゼラチン、アラビアゴム末、ポリビニルピロリドン、プルラン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、デキストリン、シクロデキストリン、ヒプロメロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール又はポリエチレングリコール等を用いることができる。賦形剤としては、結晶セルロース、乳糖、コーンスターチ又はL−システイン等を用いることができる。崩壊剤としては低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム又は部分α化デンプン等が挙げられる。香料としては、メントール、リモネン、又は植物精油(ハッカ油、ミント油、ライチ油、オレンジ油、若しくはレモン油等)等が挙げられる。滑沢剤としてはステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、又は軽質無水ケイ酸等を用いることができる。甘味剤としては、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ステビア、グリチルリチン酸二カリウム、アセスルファムカリウム、ソーマチン、又はスクラロース等が挙げられる。酸味剤としては、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、又は乳酸又はそれらの塩等を用いることができる。着色剤としては、食用着色剤、食用着色剤以外の有機顔料及び無機顔料、動植物抽出物などが挙げられる。食用着色剤としては、例えばオレンジエッセンス、カラメル、カルミン、β−カロテン、食用青色1号、食用黄色4号、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用黄色5号、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号などが挙げられる。有機顔料としては、例えば銅クロロフィリンナトリウム、銅クロロフィル、リボフラビンなどが挙げられる。無機顔料としては、例えば三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、黒酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、黒酸化鉄、褐色酸化鉄、酸化亜鉛、金箔、薬用炭などが挙げられる。動植物抽出物としては、例えばカンゾウエキス、アセンヤクタンニン末、ウコン抽出液、緑茶末などが挙げられる。これらの中でも、経時の硬度低下抑制効果が高く、製造機器への付着性を低減できる点から、無機顔料が好ましく、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、黒酸化鉄等の鉄を主成分とする無機顔料、酸化亜鉛、酸化チタンが好ましく、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタンがより好ましく、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄がさらに好ましい。これら添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[錠剤形状]
本実施形態の錠剤は、(A)成分と(B)成分と(C)成分とが同一の薬物層に含有される錠剤である。
錠剤の寸法は特に限定されないが、錠剤の取り扱いやすさと嚥下性の観点から錠剤の径として5〜14mmφが好ましく、6〜13mmφがより好ましく、7〜12mmφがさらに好ましい。また1錠あたりの錠剤重量としては150mg〜550mg程度が適切である。
錠剤の形状は特に限定されないが、スミ角平錠、スミ丸平錠、丸みを帯びたR錠又は2段階R錠が好ましい。また本願の錠剤は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を同一薬物層に含有されていればよく、前記薬物層のみを備える単層錠でも良いし、他の任意の層を加え積層錠としてもよい。
前記他の任意の層は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分のいずれか1以上を含んでいても、いずれも含まなくてもよい。他の層におけるこれらの成分の含有の有無及び含有量は、錠剤1錠あたりのこれらの成分の服用量等を勘案して適宜、選択することができる。他の層は、他に前記の任意成分として生理活性成分、結合剤、賦形剤、崩壊剤、香料、滑沢剤、甘味剤、酸味料剤、又は着色剤等を含んでいてもよい。着色剤としては、前述した任意成分と同様のものを用いてもよい。
[錠剤水分]
本実施形態の錠剤における水分の含有量は、錠剤の質量あたり1〜15質量%が好ましい。ここで、水分の含有量の測定法は電子水分計(MOISTURE BALANCE MOC−120H 島津製作所製)で、錠剤の粉砕物を120℃10分間熱し、乾燥前と乾燥後の質量減少分から算出することができる。錠剤中の水分の含有量は、加水又は乾燥により適宜調整が可能である。水分の含有量を前記1質量%以上とすることで、経時による硬度低下の抑制効果が良好となり、前記15質量%以下とすることで粉体の流動性が向上し打錠前の臼への充填性が良好となるため錠剤の質量偏差が小さくなり、経時での崩壊遅延を抑制できる。より効果を得るためには、1.5〜13質量%がより好ましいく、1.5〜7%がより好ましい。
[コーティング錠]
別の実施態様として、上記の錠剤を素錠とし、この素錠の表面にコーティング層を有するコーティング錠であってもよい。
コーティング層は、コーティング剤を含む構成素材より形成されている層である。かかるコーティング剤としては、本実施形態が目的とする崩壊性を著しく損なわないものを選択することが好ましく、中でも水溶性高分子化合物、可塑剤が好ましい。コーティング剤としては具体的には、カルメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、ヒドロキシメチルセルロース、若しくはメチルセルロース等のセルロース類;アラビアゴム、カルボキシビニルポリマー、ポビドン、ポリビニルアルコール、又はポリアクリル酸、単糖類、二糖類以上の多糖類(砂糖(グラニュー糖等)、乳糖、麦芽糖、キシロース、異性化乳糖等)、糖アルコール(パラチニット、ソルビトール、ラクチトール、エリスリトール、キシリトール、還元澱粉糖化物、マルチトール、マンニトール等)、水飴、異性化糖類、オリゴ糖、スクロース、トレハロース、還元澱粉糖化物(還元澱粉分解物等)などが挙げられる。特に、製造性および防湿性に優れる点からヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、ポリビニルアルコールが好ましい。等が挙げられる。可塑剤としては、クエン酸トリエチル、トリアセチン、又はカルナウバロウ等の、日本薬局方(広川書店)又は医薬品添加物規格((株)薬事日報社)等の公定書に記載されているものが挙げられる。
これらコーティング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、コーティング層は、製造性や防湿性の観点から、前述した着色剤を含むことが好ましく、保存後も退色しづらく、経時の崩壊遅延を抑制可能な点から、無機顔料が好ましく、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、黒酸化鉄等の鉄を主成分とする無機顔料、酸化亜鉛、酸化チタンが好ましく、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタンがより好ましく、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、酸化チタンがさらに好ましい。
[錠剤の製造方法]
本実施形態の錠剤は、薬物層を構成する粉体(以下、「薬物含有粉体」という。)を打錠成形して薬物層を形成することで得られる。本実施形態の錠剤の製造方法としては、例えば、臼と杵とを有する打錠機を用いて、薬物含有粉体を打錠成形して錠剤を得る工程(打錠工程)を有するものが挙げられる。薬物含有粉体は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する粉体であればよく、必要に応じて任意成分を含有してもよい。薬物含有粉体は、例えば、粉体の(A)成分と、粉体の(B)成分と、粉体の(C)成分との粉体混合物でもよいし、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含む造粒物でもよい。なお、(A)成分と(B)成分と(C)成分との質量の合計が、薬物層の全体質量に対して95質量%以下とすることで粉体の流動性が向上し打錠前の臼への充填性が良好となるため錠剤の質量偏差が小さくなる。
前記薬物含有粉体は、予め混合されたものでもよく、新たに調製されたものでもよい。すなわち、錠剤の製造方法は、粉体の各成分を混合して薬物含有粉体を調製する工程(粉体調製工程)を有してもよい。
粉体調製工程は、粉体の(A)成分と、粉体の(B)成分と、粉体の(C)成分とを混合して薬物含有粉体を得る。
粉体調製工程における混合方法としては特に限定されず、従来公知の粉体混合方法が挙げられる。
粉体調製工程に用いられる各成分は、公知の製造方法により得られたものでもよく、市販のものを用いてもよい。各成分は、原末がそのまま用いられてもよく、造粒されたものでもよい。
造粒したものを用いる場合、造粒方法は公知の造粒方法を採用できる。
打錠工程で用いられる打錠機としては、例えば、ロータリー式打錠機(株式会社菊水製作所製:リブラ3L)等が挙げられる。
打錠圧、回転盤の回転速度等の打錠条件は適宜設定される。
なお、錠剤が積層錠である場合、薬物含有粉体は、臼に最初に充填されてもよく、任意層を構成する成分よりも後に充填されてもよい。
[コーティング錠の製造方法]
コーティング錠は、前記製造方法により製造された錠剤を素剤とし、この素剤の表面に上述したコーティング層を設けることで製造することができる。コーティング剤の調整方法、コーティング剤を含むコーティング層を素剤の表面に設ける方法は、従来知られた方法を用いることができる。このような方法としては、例えばコーティング剤の成分を水などの溶媒に分散させてコーティング剤成分の分散液であるコーティング液を得る。その後、前記コーティング液を噴霧などによって素錠を被覆するように設ける。その後、コーティング液の前記溶媒の成分を乾燥させ、コーティング錠を得る。
[作用効果]
本発明によれば、(A)成分:アセトアミノフェン及び、(B)成分:糖又は糖アルコール、又はカルメロース、カルメロースナトリウムを含有する錠剤に、意外にも(C)成分:ロキソプロフェン又はその塩を添加することで、(A)成分に(B)成分を含有することでは解決できなかったアセトアミノフェン含有錠剤の経時硬度低下が抑制できる。よって本発明の錠剤は、打錠直後と同程度の錠剤硬度が経時で維持されるので、輸送時や錠剤取り出し時等の衝撃による錠剤の割れ欠けをより防ぐことが出来る。
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
各実施例および比較例で使用した原料、打錠条件、保存条件および評価方法は、以下の通りである。
[使用原料]
(A)成分として、以下に示す化合物を用いた。
・A1:アセトアミノフェン:岩城製薬株式会社製、「ピレチノール」
(B)成分及びその代替品((B’)成分)として、以下に示す化合物を用いた。
・B1:イソマルト:BENEO社製、「galenIQ」(登録商標)
・B2:D−マンニトール:ロケットジャパン株式会社製、「PEARLITOL」(登録商標)
・B3:エリスリトール:三菱化学フーズ株式会社製、「エリスリトール」
・B4:マルトース:株式会社林原製、「サンマルト−S」(登録商標)
・B5:果糖:テート&ライルジャパン株式会社製、「KRYSTAR」(登録商標)
・B6:トレハロース:株式会社林原製、「トレハロース 100PH」
・B7:ソルビトール:三菱商事フードテック株式会社製、「ソルビットDP」
・B8:キシリトール:三菱商事フードテック株式会社製、「キシリットP」
・B9:カルメロース:五徳薬品株式会社製、「カルメロース NS-300」(登録商標)
・B10:カルメロースナトリウム:ダイセル株式会社製、「CMCダイセル」
・B’1:乳糖水和物:フロイント産業株式会社製「ダイラクトーズ」(登録商標)
(C)成分及びその代替品((C’)成分)として、以下に示す化合物を用いた。
・C1:ロキソプロフェンナトリウム二水和物:大和薬品工業株式会社製、日本薬局方規格
・C’1:イブプロフェン:BASF社製、日本薬局方規格
任意成分((O)成分)としては、以下に示す化合物を用いた。
・O1:結晶セルロース:旭化成ケミカルズ株式会社製、「UF−702」
・O2:クロスポビドン:BASF製、「Kollidon(登録商標) CL―SF」
・O3:ステアリン酸マグネシウム:太平化学産業株式会社製、「ステアリン酸マグネシウム」
・O4:三二酸化鉄:癸巳化成株式会社製、「三二酸化鉄」
・O5:黄色三二酸化鉄:癸巳化成株式会社製、「黄色三二酸化鉄」
コーティング剤としては、日本カラコン合同会社製、「オパドライ(ポリマーとしてヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用)」(商標)を用いた。
表1〜4に示す実施例1〜42、及び表5に示す比較例1〜6について、各表に示す分量に従って調整した。表中の数値は、錠剤1個あたりの各成分の含有量(mg)である。これらの各成分を含有量が表の値となるよう量り取り混合、打錠することで錠剤を調整した。ただし、比較例1については、φ8.5mmの臼杵を用いて調整した。
(打錠条件)
打錠機:ロータリー式打錠機 リブラ3L(菊水製作所製)
盤回転速度:20rpm
臼杵(比較例1を除く):φ9.0mm(2段R)×12本立て、刻印無し (キャップ高さ0.1mm、R1=3.6、R2=10.5)
臼杵(比較例1):8.5mm(2段R)×12本立て、刻印無し (キャップ高さ0.1mm、R1=3.4、R2=10)
予圧:2kN(約20MPa、約200kg/cm
本圧:10kN(約100MPa、約1000kg/cm
実施例36〜42、及び比較例6については、錠剤(素錠)製造後にコーティングを施した。コーティング剤を水に分散させ20%分散液を得た。アクアコーター48型(フロイント産業社製)を用いて、給気温度60℃、給気風量2.3m/min、排気温度42±2℃の条件下で、前記コーティング液を得られた錠剤に噴霧した。実施例31〜34については、表4に示す割合になるように三ニ酸化鉄を添加したコーティング液を用いて被覆した。給気温度60℃、給気風量2.3m/分で20分間乾燥させ、コーティング錠を得た。
得られた錠剤について、変色評価を行った。結果を表1〜3に示す。
[錠剤硬度の評価]
(錠剤硬度試験)
錠剤硬度破壊測定機「TH−203CP」(富山産業株式会社製)を用いて、錠剤10錠の硬度を測定し、平均値を求めた。前記錠剤は、製造時にはいずれもこの測定で硬度が50〜70Nになるよう調製した。
(錠剤の保存と保存後の測定)
製造した錠剤を、予め成形した樹脂シート(大成化工製 TAS−230)のポケットに入れ、アルミ箔でPTP包装し50℃75%RHで4週間保存した。その後、再度前記錠剤硬度試験を行った。保存前(製造直後)と保存後での硬度の差(低下値)をとり、硬度低下(単位N)とした。
(経時硬度低下の判定基準)
7:硬度低下が15N未満。
6:硬度低下が15N以上20N未満。
5:硬度低下が20N以上25N未満。
4:硬度低下が25N以上30N未満。
3:硬度低下が30N以上35N未満。
2:硬度低下が35N以上40N未満。
1:硬度低下が40N以上。
4点以上を合格とした。
[錠剤崩壊性の評価]
日本薬局方に収載される錠剤の崩壊試験法に準じ、崩壊時間を測定した。
測定用の試料としては、保存前(製造直後)の錠剤と、保存後の錠剤のそれぞれ6錠ずつを用いた。そして、錠剤6錠の各崩壊時間を測定し、これらの平均値を求めた。保存条件としては、保存期間を6週間とした以外は錠剤硬度評価と同様にして錠剤を保存した。
保存前の錠剤の崩壊時間の平均値から保存後の錠剤の崩壊時間の平均値を差し引くことで、保存前後における錠剤の崩壊時間の変化量(経時による崩壊遅延の程度)を求め、以下の評価基準にて評価した。4点以上を合格とした。
(経時崩壊遅延の判定基準)
8:崩壊遅延が1分未満。
7:崩壊遅延が1分以上、2分未満。
6:崩壊遅延が2分以上、3分未満。
5:崩壊遅延が3分以上、4分未満。
4:崩壊遅延が4分以上、5分未満。
3:崩壊遅延が5分以上、6分未満。
2:崩壊遅延が6分以上、7分未満。
1:崩壊遅延が7分以上。
表1〜4に示す実施例1〜42、及び表5に示す比較例1〜6それぞれの錠剤について評価した結果を表1〜表5に示した。
Figure 2018030840
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表1に示すように、(A)成分、(B)成分及び(C)成分をいずれも含有する錠剤(実施例1〜10)は、表5に示す(B)成分及び又は(C)成分のいずれかを用いていない錠剤(比較例1〜5)に比べて、いずれも経時硬化低下の抑制において優れた評価を示した。前記評価は、(B)成分としてイソマルト(実施例1)、D−マンニトール(実施例2)、又はエリトリトール(実施例3)を用いたものが比較的優れていた。また、(B)成分として(b1)イソマルトと(b2)カルメロースとを併用して用いたもの(実施例11〜16)は、(B)成分の合計質量が少量でも優れた効果が得られた。また表2に示すように、(B)成分の含有割合を増やすことで経時硬化低下の抑制において優れた評価を示した(実施例17〜24)。表3に示すように、(C)成分に対する(A)成分の比率を4.5〜7にすることで、経時硬度低下及び経時崩壊遅延抑制何れも高い評価を示した。表4に示すように、三二酸化鉄や黄色酸化鉄をさらに加えることで優れた効果が得られ(実施例33〜35)、コーティング層を表面に設けたコーティング錠(実施例36〜42)は、いずれも優れた評価を示し、特に経時硬化低下が同等であっても継時崩壊遅延において良好な結果が見られた。

Claims (8)

  1. 下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含む薬物層を有する錠剤。
    (A)成分:アセトアミノフェン
    (B)成分:(b1)成分及び(b2)成分より選ばれる少なくとも一種
    (b1)成分:糖及び糖アルコール(ただし、乳糖を除く)より選ばれる少なくとも1種
    (b2)成分:カルメロース及びカルメロースナトリウムより選ばれる少なくとも1種
    (C)成分:ロキソプロフェン及びその塩より選ばれる少なくとも1種
  2. 前記(C)成分を前記薬物層の全体質量に対して3〜85質量%含む、請求項1記載の錠剤。
  3. ((B)成分+(C)成分)/(A)成分で表される質量比が0.05〜10である、請求項1又は2に記載の錠剤。
  4. (A)成分/(C)成分で表される質量比が0.25〜15である、請求項1から3のいずれか1項に記載の錠剤。
  5. 前記(B)成分は、前記(b1)成分と前記(b2)成分とを含有する請求項1から4のいずれか1項に記載の錠剤。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の錠剤を素錠とし、前記素錠の表面にコーティング層を有するコーティング錠。
  7. 下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する薬物含有粉体を打錠成形して薬物層を形成する工程を有する、錠剤の製造方法。
    (A)成分:アセトアミノフェン
    (B)成分:(b1)成分及び(b2)成分より選ばれる少なくとも一種
    (b1)成分:糖及び糖アルコール(ただし、乳糖を除く)より選ばれる少なくとも1種
    (b2)成分:カルメロース及びカルメロースナトリウムより選ばれる少なくとも1種
    (C)成分:ロキソプロフェン及びその塩より選ばれる少なくとも1種
  8. 請求項7の製造方法により製造された錠剤を素錠とし、前記素錠の表面にコーティング層を設ける、コーティング錠の製造方法。
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