本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
厚さ方向と、前記厚さ方向に交差する上下方向と、を有し、前記厚さ方向の肌側に位置する肌側シートと、前記厚さ方向の非肌側に位置する非肌側シートと、を備え、着用者の脚を通すための脚回り開口が形成された使い捨ておむつであって、前記脚回り開口の縁を含む前記脚回り開口に沿った所定の領域では、前記厚さ方向において前記肌側シートと前記非肌側シートとの間に、伸縮性不織布の少なくとも一部が配置されており、前記所定の領域には、前記肌側シート、前記伸縮性不織布、及び前記非肌側シートを前記厚さ方向に接合する接合部と、接合しない非接合部とが設けられており、前記伸縮性不織布は、伸縮性を有する伸縮性繊維、及び前記伸縮性繊維よりも収縮性の低い伸長性繊維を含む使い捨ておむつが明らかとなる。
このような使い捨ておむつによれば、伸縮性不織布が収縮することにより非接合部において形成された皺の内部では、伸縮性不織布に含まれる伸長性繊維が厚さ方向に突出する。この突出した伸長性繊維がクッションの役割を担うことにより、脚回り開口の周縁領域において着用者の脚への肌当たりや擦れが軽減されて、装着性を良好にすることができる。
かかる使い捨ておむつであって、前記非接合部における前記伸縮性不織布では、前記伸縮性繊維の収縮に伴って前記伸長性繊維が前記厚さ方向に突出して凸部が形成されていることが望ましい。
このような使い捨ておむつによれば、非接合部では、肌側シート及び非肌側シートにより形成された皺に加えて、厚さ方向に突出した凸部を伸縮性不織布が有しているため、クッションが二重に形成される。これにより、着用者の脚への肌当たりや擦れがより軽減されて、装着性を良好にすることができる。
かかる使い捨ておむつであって、着用する際に、着用者の腹側となる方を前側とし、前記着用者の背側となる方を後側とする前後方向を有し、前記前後方向において、前記非接合部は、前記所定の領域のうち中央よりも前側に位置していることが望ましい。
このような使い捨ておむつによれば、着用者が歩く際には脚を前側へ出す動作が主となるため、所定の領域のうちおむつの前側に非接合部が設けられていることにより脚が頻繁に接触する部分での肌当たりや擦れが軽減されて、装着性が良好となる。
かかる使い捨ておむつであって、着用する際に着用者の股下に位置する股下部と、着用する際に前記着用者の腹側の胴回りに位置する腹側胴回り部と、を有し、前記非接合部は、前記所定の領域のうち前記前後方向における中央よりも前側であって、前記腹側胴回り部の側から前記股下部の側に向かって傾斜する領域に設けられていることが望ましい。
このような使い捨ておむつによれば、おむつの前側のうち特に脚が最も接触しやすい股繰りの部分に非接合部が設けられていることにより、着用者が脚を動かした際に肌当たりの良さをすぐに実感することができ、おむつ1の装着性がより良好となる。
かかる使い捨ておむつであって、前記所定の領域には、前記脚回り開口に沿って伸縮可能な弾性部材が設けられていることが望ましい。
このような使い捨ておむつによれば、伸縮性不織布に加えて弾性部材が設けられていることにより、脚回り開口の周縁領域における収縮力が大きくなる。このため、伸長性繊維が厚さ方向に突出しやすく、クッション性が高くなり、脚回り開口の周縁領域における着用者の脚への肌当たりや擦れがより軽減されて、装着性を良好にすることができる。
かかる使い捨ておむつであって、前記非接合部は、前記弾性部材の伸縮方向に対して交差する交差方向に沿って、前記脚回り開口の前記縁から前記弾性部材を横切るように設けられており、前記弾性部材の伸縮方向に対する前記交差方向のなす角は、鋭角又は鈍角であることが望ましい。
このような使い捨ておむつによれば、非接合部は、弾性部材の伸縮方向に対して傾斜した方向(弾性部材の伸縮方向に対する交差方向のなす角が鋭角又は鈍角となる方向)に沿って設けられているため、弾性部材の伸縮方向に対して直交する方向に沿って設けられている場合と比べて、より広い領域に亘って設けやすくなる。したがって、形成される皺が大きくなりやすく、おむつの着用時における脚への肌当たりがより良好になる。
かかる使い捨ておむつであって、前記厚さ方向及び前記上下方向に交差する横方向を有し、前記弾性部材よりも上側、かつ前記弾性部材よりも内側であって前記所定の領域に隣接する領域では、前記肌側シート、前記伸縮性不織布、及び前記非肌側シートを前記厚さ方向に互いに溶着する複数の溶着部が、前記脚回り開口に沿って点在していることが望ましい。
このような使い捨ておむつによれば、弾性部材よりも上側かつ横方向内側の領域において、複数の溶着部を脚回り開口に沿って点在させることにより、脚回りに近い領域だけでなく少し離れた領域においても、細かい皺が形成されることにより肌当たりを良好にすることができる。
かかる使い捨ておむつであって、上端から前記上下方向に所定の幅を有する上端領域を有し、前記上下方向において、前記伸縮性不織布の繊維密度は、前記所定の領域の方が前記上端領域よりも低いことが望ましい。
このような使い捨ておむつによれば、脚回り側の所定の領域における伸縮性不織布の繊維密度を低くすることによりおむつの着用時における脚への肌当たりが柔らかくなり、胴回り側の上端領域における伸縮性不織布の繊維密度を高くすることによりおむつの着用時に上端部を引き上げても破損しにくくなる。
かかる使い捨ておむつであって、前記肌側シートの剛性は、前記非肌側シートの剛性よりも低いことが望ましい。
このような使い捨ておむつによれば、着用者の肌に接する側のシート部材を柔らかくすることにより、装着性がより良好となる。
かかる使い捨ておむつであって、前記伸縮性不織布は、前記伸縮性繊維としてのポリウレタン、及び前記伸長性繊維としてのポリオレフィンを含むことが望ましい。
このような使い捨ておむつによれば、伸縮性繊維としてポリウレタンを用いることにより伸縮性不織布の上下方向及び左右方向への伸縮性を向上させることができると共に、伸長性繊維としてポリオレフィンを用いることにより肌側シートと非肌側シートとの溶着性を向上させることができる。
===実施形態===
本発明の実施形態に係る使い捨ておむつ(以下では、単に「おむつ1」とする)の一例として、主に高齢者を対象としたパンツ型の使い捨ておむつについて説明する。
(おむつ1の全体構成)
まず、おむつ1の全体構成について、図1〜図3を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るおむつ1の一構成例を示す概略斜視図である。図2は、展開かつ伸長状態のおむつ1を厚さ方向の非肌側から見た概略平面図である。図3は、図2のIII−III線断面模式図である。
おむつ1は、図1及び図2に示すように、「上下方向」と、上下方向に交差する「横方向」と、を有すると共に、図3に示すように、各部材が積層された方向である「厚さ方向」を有する。上下方向のうち、着用者がおむつ1を着用した状態において着用者の胴側となる方を「上側」とし、着用者の股下となる方を「下側」とする。厚さ方向のうち、着用者がおむつ1を着用した状態において着用者の肌と接触する側を「肌側」とし、その反対側を「非肌側」とする。以下では、厚さ方向の肌側を単に「肌側」とし、厚さ方向の非肌側を単に「非肌側」とする。また、おむつ1は、図1に示すように、着用する際に着用者の腹側となる方を「前側」とし、着用者の背側となる方を「後側」とする「前後方向」を有している。
図1に示すように、おむつ1は、着用時において着用者の腹側に対応する前身頃部30と、着用者の背側(臀部を含む)に対応する後身頃部40と、着用者の股下に対応する股下部50と、を有する。このおむつ1は、尿等の液体を吸収する帯状の吸収性本体10と、吸収性本体10の非肌側に位置する外装体20と、を備えており、外装体20が、前身頃部30と、後身頃部40と、股下部50と、を有している。
図2に示すように、おむつ1を展開して伸長させた状態において、股下部50は、前身頃部30と後身頃部40との間に架け渡されるように設けられ、例えば接着剤等によって前身頃部30及び後身頃部40のそれぞれに接合されている。また、図3に示すように、股下部50は、前身頃部30及び後身頃部40よりも肌側に位置している。
なお、おむつ1の「伸長状態」とは、おむつ1が備える各弾性部材(例えば、糸ゴムや伸縮性を有するシート部材)を伸長させることにより、おむつ1全体(製品全体)を皺なく伸長させた状態、具体的には、おむつ1を構成する各部材(例えば、前身頃部30及び後身頃部40や股下部50を構成するシート部材等)の寸法がその部材単体の寸法と一致又はそれに近い寸法になるまで伸長させた状態のことをいう。
吸収性本体10は、長手方向の一端側が前身頃部30に位置し、他端側が後身頃部40に位置しており、厚さ方向において前身頃部30、後身頃部40、及び股下部50と重なるように、例えば接着剤等によって外装体20に接合されている。
おむつ1は、図2に示す展開状態から、吸収性本体10の長手方向における所定位置CL(図2において一点鎖線で示す)を折り位置として吸収性本体10及び外装体20が二つ折りされる。当該二つ折りの状態において、前身頃部30の横方向の両端部に設けられた端部接合領域30eと、後身頃部40の横方向の両端部に設けられた端部接合領域40eとが、それぞれ接合される。これにより、前身頃部30と後身頃部40とが環状につながって、図1に示すような1つの胴回り開口1a及び一対の脚回り開口1bが形成され、パンツ型のおむつとなる。
図1及び図2に示すように、端部接合領域30e,40eは、上下方向に沿って設けられており、前身頃部30の端部接合領域30eと後身頃部40の端部接合領域40eとの接合手段としては、例えば超音波溶着等が挙げられる。
(吸収性本体10の構成)
次に、吸収性本体10の具体的な構成について、図2及び図3を参照して説明する。
吸収性本体10は、図2に示すように、短手方向(短辺)がおむつ1の横方向に沿った平面視略長方形状である。そして、図3に示すように、吸収性本体10は、長手方向に沿った吸収性コア11と、吸収性コア11の肌側に配置されたトップシート12と、吸収性コア11の非肌側に配置されたバックシート13と、を有している。
吸収性コア11は、尿等の液体を吸収して保持する部材であり、例えば高吸収性ポリマー(SAP)が混入したパルプ繊維等の液体吸収性繊維により形成される。なお、吸収性コア11は、ティッシュペーパーや不織布等の液透過性のシート部材によって、外周面が覆われていてもよい。
トップシート12は、着用時において着用者の肌に接触し得る液透過性のシート部材であり、例えば親水性のエアスルー不織布やスパンボンド不織布等により形成される。バックシート13は、吸収性コア11に吸収された尿等の液体が外部に漏れ出すことを抑制するための液不透過性シート13aと、液不透過性シート13aの非肌側に配置された液透過性シート13bと、を備えた二層構造で形成されている。液不透過性シート13aとしては、例えば樹脂フィルム等が用いられ、液透過性シート13bとしては、例えば柔軟性を有する不織布等が用いられる。
吸収性本体10の横方向の両端部にはそれぞれ、長手方向に沿った弾性部材が横方向に間隔を空けて複数設けられている(図1参照)。弾性部材には例えば糸ゴム等を用いることができ、弾性部材が長手方向に収縮することにより吸収性本体10が着用者の脚回りに沿って収縮してフィットする。これにより、尿等の漏れを抑制することが可能となる。なお、図2では、説明の便宜上、当該弾性部材の図示を省略している。
(外装体20の構成)
次に、外装体20の具体的な構成について、図2及び図3に加えて、図4〜図6及び図7A〜Cを参照して説明する。
図4は、伸縮性不織布33における厚さ方向の断面模式図である。図5は、展開かつ伸長状態のおむつ1において、接合部251及び非接合部252、ならびに溶着部241,242について説明する説明図である。図6は、図5のA部拡大図である。図7Aは、脚回り領域25における厚さ方向の断面模式図、図7Bは第2点在領域Yにおける厚さ方向の断面模式図、図7Cは比較例に係るおむつの前身頃部及び後身頃部の厚さ方向の断面模式図である。
外装体20は、図2及び図5に示すように、股下部50において横方向内側に向かって最も括れており、当該最も括れた部分では、横方向における股下部50の外側に吸収性本体10が露出している。股下部50は、具体的に、長手方向の中央部分が横方向内側に括れた略砂時計状であり、図3に示すように、厚さ方向に積層された2枚の不織布51,52を有している。
前身頃部30及び後身頃部40はそれぞれ、上下方向において、端部接合領域30e,40eが設けられた領域では横方向に長辺を有する略長方形状であり、端部接合領域30e,40eの下端よりも下側(股下部50側)では略等脚台形状を有している。この略等脚台形は、台形の脚となる一組の対辺(横方向の外縁)が、股下部50側に向かうにつれて横方向外側から内側へ傾斜している。
以下の説明において、前身頃部30のうち、上下方向において、端部接合領域30eが設けられた領域(略長方形状の領域)を前身頃胴回り側領域301とし、前身頃胴回り側領域301よりも下側の領域(略等脚台形状の領域)を前身頃股下側領域302とする。なお、前身頃胴回り側領域301は、おむつ1を着用する際に着用者の腹側胴回りに位置する腹側胴回り部の一態様である。また、前身頃部30と同様に、後身頃部40のうち、上下方向において、端部接合領域40eが設けられた領域(略長方形状の領域)を後身頃胴回り側領域401とし、後身頃胴回り側領域401よりも下側の領域(略等脚台形状の領域)を後身頃股下側領域402とする。
図3に示すように、前身頃部30及び後身頃部40はそれぞれ、肌側に位置する肌側シート31,41と、非肌側に位置する非肌側シート32,42と、厚さ方向における肌側シート31,41と非肌側シート32,42との間に設けられた伸縮性不織布33,43と、を備えている。なお、前身頃部30及び後身頃部40において、肌側シート31,41、非肌側シート32,42、及び伸縮性不織布33,43の構成についてはほぼ同様であるため、以下の説明では前身頃部30の肌側シート31、非肌側シート32、及び伸縮性不織布33の構成を例に挙げて説明する。
肌側シート31及び非肌側シート32はそれぞれ、例えばスパンボンド不織布やSMS不織布等により形成された柔軟なシート部材である。本実施形態では、肌側シート31の剛性が非肌側シート32の剛性よりも低い。このように、着用者の肌に直接的に接触する側のシート部材である肌側シート31が非肌側シート32よりも柔らかくすることにより、肌触りが良く、おむつ1の装着性が向上する。
ここで、「剛性」とは、肌側シート31及び非肌側シート32が外力を受けた場合の変形のしやすさをいい、剛性の高低を比較するための剛性値としては、例えば、ガーレー剛軟度によって測定された値をサンプル片の長さで割った値を例示できる。ガーレー剛軟度の測定は、(株)安田精機製作所製のNo311のガーレー式柔軟度試験機を用いて、JIS−L1096に準拠して測定することが可能である。
伸縮性不織布33は、伸縮性を有する伸縮性繊維、及び伸縮性繊維よりも収縮性の低い伸長性繊維を含んでおり、ギア延伸等の適宜な延伸処理が施された不織布である。本実施形態では、伸縮性繊維として、弾性を有する熱可塑性エラストマーの一種であるポリウレタン系エラストマーの繊維が用いられ、伸長性繊維として、非弾性を有する熱可塑性樹脂の一種であるポリオレフィン系樹脂のポリプロピレン(PP)の繊維が用いられている。
伸縮性不織布33は、互いの外周面を対向させつつ回転する一対のギアロールの間を通過させることにより延伸処理が施される。一対のギアロールはそれぞれ、外周面に凹凸を有しており、一方のギアロールの凸部と他方のギアロールの凹部とが噛み合い、一方のギアロールの凹部と他方のギアロールの凸部とが噛み合うように設定されている。このロール機構を通過した伸縮性不織布33は、図4に示すように、低収縮領域33aと高収縮領域33bとが、おむつ1の横方向に沿って交互に並んだ状態となっている。
伸縮性不織布33を構成する繊維のうち伸長性繊維は、延伸処理によって部分的に引き延ばされて伸縮性繊維の弾性的な変形を阻害し得ない状態となっており、伸縮性不織布33は伸縮性繊維の弾性変形に基づいて伸縮性を発現している。なお、高収縮領域33bでは伸縮性繊維が網目状に絡み合い、上下方向及び横方向について低収縮領域33aにおける収縮力よりも大きな収縮力が発生している。
これにより、おむつ1は、伸縮性の調整を柔軟に行うことができ、着用時におけるフィット性を向上させている。なお、この延伸処理は、互いに直交する方向に延伸処理を行うものであってもよいし、所定の方向にのみ延伸処理を行うものであってもよい。仮に、所定の方向にのみ延伸処理を行った場合であっても、必ずしも全ての繊維の配向が所定の方向に沿っているとは限らないため、所定の方向と直交する方向にも伸縮性が発現する場合がある。
図2及び図5に示すように、前身頃部30(前身頃胴回り側領域301)及び後身頃部40(後身頃胴回り側領域401)はそれぞれ、上端から上下方向に所定の幅を有する上端領域300,400を有している。図3に示すように、上端領域300,400では、非肌側シート32,42の上端部が肌側へ折り返されて、肌側シート31,41の肌側に位置している。肌側シート31,41及び伸縮性不織布33,43の上端は、折り返し位置30L,40Lに位置しておらず、折り返し位置30L,40Lと肌側シート31,41及び伸縮性不織布33,43の上端との間にはそれぞれ隙間を有している。当該隙間には、横方向に沿って伸縮可能な糸ゴム30a,40aが上下方向に間隔を空けて複数設けられている。
このように、上端領域300,400に複数の糸ゴム30a,40aを設けることによって腹側胴回り開口1aの周辺部におけるおむつ1のフィット性を向上させて、おむつ1の上下方向のずれ落ちを抑制することができる。一方、複数の糸ゴム30a,40aが配置された部分よりも下側では、伸縮性不織布33,43によって面全体で緩やかに着用者の肌にフィットさせることができる。また、複数の糸ゴム30a,40aが設けられた部分では肌側シート31,41が設けられていないため、複数の糸ゴム30a,40aの伸縮力が着用者に伝わりやすくなっている。
なお、本実施形態では、伸縮性不織布33,43は、上端領域300,400のうち複数の糸ゴム30a,40aが配置された領域を除く前身頃部30及び後身頃部40の全域に亘って設けられているが、必ずしもその必要はない。少なくとも脚回り開口1b(図1参照)の縁を含む脚回り開口1bに沿った所定の領域25(以下、単に「脚回り領域25」とする)において、その少なくとも一部が配置されていればよい。
ここで、「脚回り領域25」とは、外装体20のうち脚回り開口1bの周縁領域であり、おむつ1を着用した状態において着用者の鼠径部に接触し、当該鼠径部に沿って太腿を一周する領域である(図2及び図5において砂地模様で示す)。したがって、脚回り領域25は、前身頃部30の一部、股下部50の一部、及び後身頃部40の一部を有している。そして、伸縮性不織布33,43の一部が、脚回り領域25のうちの前身頃部30に相当する部分、及び後身頃部40に相当する部分に配置されている。
本実施形態では、上下方向において、脚回り領域25における伸縮性不織布33,43の繊維密度は、上端領域300,400における伸縮性不織布33,43の繊維密度よりも低い。なお、ここでいう「繊維密度」とは、各領域における平均の繊維密度のことをいう。前述したように、伸縮性不織布33,43は、低収縮領域及び高収縮領域を有しているため(図4参照)、脚回り領域25における伸縮性不織布33,43のある部分の繊維密度と上端領域300,400における伸縮性不織布33,43のある部分の繊維密度とを部分的に比較した場合には、脚回り領域25の方が上端領域300,400よりも高いことがある。
脚回り領域25における伸縮性不織布33,43の平均繊維密度を、上端領域300,400における伸縮性不織布33,43の平均繊維密度よりも低くすることにより、おむつ1の着用時における着用者の脚への肌当たりが柔らかくなる。一方、上端領域300,400における伸縮性不織布33,43の平均繊維密度が、脚回り領域25における伸縮性不織布33,43の平均繊維密度よりも高くなっているため、おむつ1を着用する際に上端領域300,400を掴んで上方へ引き上げた場合でもおむつ1が破損しにくくなる。
脚回り領域25には、例えばホットメルト接着剤等の接着剤により、肌側シート31,41、伸縮性不織布33,43、及び非肌側シート32,42を厚さ方向に接合する接合部251(図5においてハッチングで示す)と、接合しない非接合部252と、が設けられている。なお、接合部251の領域内において、接着剤の塗布パターン(例えばスパイラルパターン等)によっては、接着剤が塗布されず、肌側シート31,41、伸縮性不織布33,43、及び非肌側シート32,42が厚さ方向に接合されていない部分が存在し得るが、当該部分は前述の非接合部252には該当しない。
本実施形態では、図5に示すように、脚回り領域25のうち前身頃部30側及び後身頃部40側の両方に、複数の接合部251及び複数の非接合部252が設けられているが、接合部251及び非接合部252自体の構成や作用はどれも略同じであるため、脚回り領域25のうち前身頃部30側の接合部251及び非接合部252を例に挙げて以下に説明する。
図7Aに示すように、脚回り領域25において伸縮性不織布33が伸縮すると、非接合部252では、肌側シート31が肌側に向かって突出し、非肌側シート32が非肌側に向かって突出して、皺(ひだ)が形成される。このとき、伸縮性不織布33では、伸縮性繊維が収縮し、伸縮性繊維と比べて収縮性の低い伸長性繊維は厚さ方向に突出して凸部330を形成する。
ここで、図7Cに示す比較例に係るおむつについて説明する。このおむつの前身頃部及び後身頃部では、厚さ方向における肌側シート91と非肌側シート92との間に伸縮性フィルム93が配置されている。そして、本実施形態に係るおむつ1と同様に、脚回り領域には、肌側シート91、伸縮性フィルム93、及び非肌側シート92を厚さ方向に接合する接合部911と、接合しない非接合部912と、が設けられている。
伸縮性フィルム93が収縮すると、非接合部912では、本実施形態と同様に、肌側シート91が肌側に向かって突出し、非肌側シート92が非肌側に向かって突出して、皺が形成される。しかしながら、本実施形態と異なり、肌側シート91と伸縮性フィルム93との間、及び非肌側シート93と伸縮性フィルム93との間に、それぞれ隙間が生じてしまう。そのため、例えば肌側シート91が着用者の肌に接触した場合、図7Cにおいて矢印で示したように、肌側シート91が伸縮性フィルム93側に向かって押し潰されて、皺が凹んでしまう可能性がある。
一方、本実施形態に係るおむつ1では、非接合部252において形成された皺の内部にて、伸縮性不織布33に含まれる伸長性繊維が厚さ方向に突出しており、当該伸長性繊維が凸部330を形成しているため、当該凸部330によって肌側シート31及び非肌側シート32が支持されている。そのため、肌側シート31や非肌側シート32が着用者の肌や着衣に接触したような場合であっても、形成された皺が容易に凹んでしまうことが抑制され、皺の形状を維持することができる。
また、比較例における伸縮性フィルム93のように、伸縮性を発現するシート部材の剛性が高い場合には、当該シート部材が着用者の脚(肌)に当たったり擦れたりして着用者が違和感を覚えやすい。しかしながら、本実施形態では、柔軟性を有する伸縮性不織布33を用いており、さらに、凸部330がクッションの役割を担うことにより、肌当たりが良くなり擦れも軽減されるため、脚回り領域25における装着性を良好にすることができる。
そして、図2及び図5に示すように、脚回り領域25には、脚回り開口1bに沿って伸縮可能な脚回り弾性部材250が設けられているため、伸縮性不織布33だけが配置されている場合と比べて、脚回り領域25における収縮力が大きくなっている。これにより、非接合部252において、伸縮性不織布33に含まれる伸長性繊維が厚さ方向に突出しやすくなりより大きな凸部330が形成されてクッション性が向上する。したがって、脚回り領域25において、着用者の脚への肌当たりがより良好となる。
なお、本実施形態では、脚回り弾性部材250は、前身頃脚回り弾性部材250a、後身頃脚回り弾性部材250b、及び股下脚回り弾性部材250cの3つに分かれた状態で脚回り開口1bに沿って断続的に設けられているが、必ずしも脚回り弾性部材250が3つに分かれた状態で設けられている必要はない。
図5に示すように、本実施形態では、前身頃脚回り側領域302の外縁に沿って接合部251が間隔を空けて複数並んで設けられている。したがって、複数の接合部251と複数の非接合部252とは、前身頃脚回り側領域302の外縁に沿って交互に並んでいる。脚回り領域25のうち前身頃股下側領域302側は、着用者の鼠径部に沿って傾斜した領域であり、着用者が歩く際には脚が最も接触しやすい部分である。したがって、当該部分に非接合部252が位置することにより、着用者が脚を動かした際に肌当たりの良さをすぐに実感することができ、おむつ1の装着性が良好となる。
このように、脚回り領域25のうち前身頃部30側、換言すれば、前後方向において脚回り領域25のうち中央よりも前側に非接合部252が位置していることが望ましい。着用者が歩く際には脚を前側へ出す動作が主となるため、脚回り領域25のうち、脚が頻繁に接触する前身頃部30側に非接合部252が位置していると、着用者が脚を動かした際の肌当たりや擦れを抑制することができるからである。なお、「前後方向における中央」とは、図2及び図5に示す所定位置CL(二つ折りの位置)を前後方向の中央位置としている。
また、前身頃部30側と同様に、後身頃部40側においても後身頃脚回り側領域402の外縁に沿って接合部251が間隔を空けて複数並んで設けられている。したがって、複数の接合部251と複数の非接合部252とは、後身頃脚回り側領域402の外縁に沿って交互に並んでいる。このように、柔らかい臀部側にも複数の非接合部252が設けられていることにより、おむつ1の着用時において、着用者の臀部への肌当たりが良くなる。
なお、接合部251と非接合部252とは、必ずしも前身頃脚回り側領域302の外縁及び後身頃脚回り側領域402の外縁に沿って交互に複数並んで設けられている必要はなく、少なくとも脚回り領域25に接合部251及び非接合部252が設けられていればよい。また、本実施形態では、股下部50には伸縮性不織布が配置されていないため、股下部50に接合部251が設けられていないが、必ずしもその必要はなく、例えば股下部50に複数の接合部251及び複数の非接合部252が設けられていてもよい。
図6に示すように、非接合部252は、脚回り領域25に設けられた脚回り弾性部材250の伸縮方向(脚回り開口1bに沿った方向)に対して交差する交差方向CD(図6において一点鎖線で示す)に沿って、脚回り開口1bの縁から脚回り弾性部材250を横切るように設けられている。
したがって、脚回り開口1bの縁を見た場合、非接合部252では、前身頃部30の内部及び後身頃部40の内部を臨む開口が形成されており、伸縮性不織布33の切れ端(端面)が露出している。しかしながら、伸縮性不織布33は柔軟性を有する不織布を用いており、さらにクッション性を有する凸部330が形成されているため(図7A参照)、おむつ1の着用時に伸縮性不織布33の露出した端が着用者の脚に接触した場合であっても、擦れ等による違和感を覚えにくい。そして、肌側シート31、非肌側シート32、及び伸縮性不織布33の間に溜まった熱や湿気等を形成された開口から外部へ放出することができ、脚回り領域25における通気性が良くなる。
また、このとき、脚回り弾性部材250の伸縮方向に対する交差方向CDのなす角θは、鋭角(θ<90°)又は鈍角(θ>90°)である。すなわち、交差方向CDは、脚回り弾性部材250の伸縮方向に対して直交していない(θ≠90°)。これにより、脚回り弾性部材250の伸縮方向に対して直交する方向に沿って非接合部252が設けられている場合と比べて、より広い領域に亘って非接合部252を設けやすくなる。したがって、伸縮性不織布33が収縮した際に形成される皺が大きくなりやすく、おむつ1の着用時において着用者の脚への肌当たりが良好になる。
図5に示すように、前身頃部30及び後身頃部40はそれぞれ、肌側シート31,41、伸縮性不織布33,43、及び非肌側シート32,42を厚さ方向に溶着する複数の溶着部が点在する第1点在領域X及び第2点在領域Yを有している。
第1点在領域Xは、前身頃部30のうち吸収性本体10が厚さ方向に重ねられた領域、及び後身頃部40のうち吸収性本体10が厚さ方向に重ねられた領域であって、複数の第1溶着部241が点在する領域である。
複数の第1溶着部241は、肌側シート31,41、伸縮性不織布33,43、及び非肌側シート32,42に対して超音波振動及び圧力を加えて超音波接合された部分である。第1溶着部241は、略同一の大きさの略長方形状に形成されており、横方向に沿って直立した当該略長方形を45°傾けたものと、−45°傾けたものが規則正しくそれぞれ配置されている。複数の第1溶着部241は、肌側シート31,41、伸縮性不織布33,43、及び非肌側シート32,42を厚さ方向に接合しつつ、吸収性本体10の過剰な収縮を抑制して、尿等の排泄物が外部に漏れるのを防いでいる。
第2点在領域Yは、前身頃部30のうち第1点在領域X、上端領域300、及び脚回り領域25の一部を構成する領域を除いた領域、ならびに後身頃部40のうち第1点在領域X、上端領域400、及び脚回り領域25の一部を構成する領域を除いた領域であって、複数の第2溶着部242が点在する領域である。
複数の第2溶着部242は、複数の第1溶着部241と同様に、肌側シート31,41、伸縮性不織布33,43、及び非肌側シート32,42に対して超音波振動及び圧力を加えて超音波接合された部分である。第2溶着部242は、略同一の大きさの円形状に形成されており、第2点在領域Yにおいて等間隔に略均一に分布している。
図7Bに示すように、第2溶着部242の中央をCuとすると、中央Cuにおける厚みは、溶着されていない部分(隣り合う第2溶着部242の間の非溶着部242a)における肌側シート31,41、伸縮性不織布33,43、及び非肌側シート32,42の厚みの合計よりも薄くなっている。
肌側シート31,41、伸縮性不織布33,43、及び非肌側シート32,42の接合は、通常、伸縮性不織布33,43を横方向及び上下方向に伸長させた状態で肌側シート31,41及び非肌側シート32,42をそれぞれ厚さ方向に重ね合わせて溶着を行う。そのため、溶着後における自然長の第2点在領域Yは、図7Bに示すように(前身頃部30側についてのみ示す)、横方向及び上下方向について、伸縮性不織布33の伸縮性及び繊維の柔軟性や不規則な配向性によって、厚さ方向に膨らんだ状態となり、肌側シート31が肌側へ向かって湾曲して突出し、非肌側シート32が非肌側へ向かって湾曲して突出する。
したがって、隣り合う第2溶着部242の間(非溶着部242a)における伸縮性不織布33の厚みは、第2溶着部242の中央Cuにおける伸縮性不織布33の厚みよりも厚い。このように厚みがより厚くなった伸縮性不織布33が、肌側シート31をより肌側へ湾曲させ、非肌側シート32をより非肌側へ湾曲させる。この結果、非溶着部242aでは厚みがより厚くなり、肌側及び非肌側に突出した凸形状の皺(ひだ)を形成し、特に隣り合う第2溶着部242の間の横方向の中央及び上下方向の中央である交点Nの厚みが最も厚くなる。
これにより、着用者はおむつ1の着用時にまずこれらの凸形状の皺に肌が当接するため、柔らかい肌触りを感じることができる。本実施形態では、複数の第2溶着部242が、前身頃部30及び後身頃部40のうち、第1点在領域X、上端領域300,400、及び脚回り領域25の一部を構成する領域を除いた領域に略均一に設けられているため、より広い範囲において皺が着用者の肌に均等に当接して、着用者が感じる肌触りの良さが向上する。
なお、複数の第2溶着部242は、必ずしも前身頃部30及び後身頃部40のうちの広い領域に亘って点在している必要はなく、少なくとも脚回り弾性部材250よりも上側かつ脚回り弾性部材250よりも内側であって、脚回り領域25に隣接する領域において、脚回り開口1bに沿って点在していればよい。このように、脚回り領域25において非接合部252にて比較的大きい皺を形成するだけでなく、脚回り領域25から少し離れた領域においても細かい皺を形成させることにより、おむつ1の着用時において肌当たりを良好にすることができる。
また、本実施形態では、伸縮性不織布33,43がポリオレフィンを含有しているため、肌側シート31,41及び非肌側シート32,42との溶着性を向上させることができる。特に、肌側シート31,41及び非肌側シート32,42がそれぞれ、ポリオレフィン系の繊維であるPP繊維の不織布であり、伸縮性不織布33,43に含有されている伸長性繊維がポリオレフィン系樹脂のポリプロピレン(PP)であるため、溶着時の溶融においてより強固に溶着される。また、伸縮性繊維がポリウレタンであることにより、伸縮性不織布33,43に上下方向及び横方向への伸縮性を与えることができる。
===その他===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。
上記の実施形態では、複数の第1溶着部241及び複数の第2溶着部242や端部接合領域30e,40eにおける接合はそれぞれ、超音波溶着による接合手段を用いたがこれに限られない。例えば、熱溶着や融着等の熱や圧力を加えるその他の接合手段を用いてもよい。
上記の実施形態では、上端領域300,400のうち複数の糸ゴム30a,40aが配置された領域では伸縮性不織布33,43が配置されていなかったがこれに限られない。例えば、上端領域300,400に、複数の糸ゴム30a,40a及び伸縮性不織布33,43の両方を配置してもよいし、伸縮性不織布33,43のみを配置してもよい。
上記の実施形態では、複数の第1溶着部241及び複数の第2溶着部242はそれぞれ、均等な間隔で配置されていたがこれに限られない。例えば、複数の第1溶着部241及び複数の第2溶着部242が、それぞれ不均等な間隔で配置されていてもよいし、第1溶着部241及び第2溶着部242形状自体も、特に制限はない。
上記の実施形態では、前身頃部30及び後身頃部40はそれぞれ、第1点在領域X及び第2点在領域Yの両方を有していたがこれに限られない。例えば、第1点在領域X及び第2点在領域Yのうちのいずれか一方の点在領域を有していてもよいし、前身頃部30及び後身頃部40は点在領域自体を有していなくてもよい。
上記の実施形態では、外周面に凹凸を有するギアによって伸縮性不織布33,43に延伸処理を施して伸縮力を発現させていたがこれに限られない。例えば、外周面に凹凸を有さないドラム等によって伸縮性不織布33,43に延伸処理を施して伸縮力を発現させてもよい。
上記の実施形態では、伸縮性不織布33,43について、弾性を有する熱可塑性エラストマー製繊維として、ポリウレタン系エラストマーを用い、非弾性を有する熱可塑性樹脂性繊維として、PPを用いたがこれに限られない。弾性を有する熱可塑性エラストマー製繊維としてポリスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等であってもよく、非弾性を有する熱可塑性樹脂繊維として、PE、エチレン―αオレフィン共重合体等のポリオレフィン系樹脂を含む繊維であってもよい。
上記の実施形態では、肌側シート31,41及び非肌側シート32,42は、PP繊維のスパンボンド繊維を用いたがこれに限られない。ポリエチレン(PE)、ポリエステル、ポリアミド等の繊維からなるスパンボンド不織布、SMS不織布、エアスルー不織布等を用いてもよい。繊維の構造については、単一の熱可塑性樹脂からなる単独繊維に限るものではなく、例えば、芯材がPPで鞘材がPEの芯鞘構造の複合繊維であってもよく、これら以外の構造の繊維であってもよい。ただし、単一繊維からなる不織布であることが好ましく、肌側シート31,41、非肌側シート32,42、及び伸縮性不織布33,43に用いる熱可塑性樹脂繊維が同じ繊維であることが最も好ましい。同じ成分からなる繊維が溶融されて固化されることによって、溶着がより強固になるからである。
上記の実施形態では、伸縮性不織布33,43の繊維密度を、脚回り領域25の方が上端領域300,400よりも低くすることにしたがこれに限られない。伸縮性不織布33,43の繊維密度は、全域に亘って均一であってもよい。
上記の実施形態に係るおむつ1は、大人を着用対象としたが、これに限定されるものではなく、新生児、乳児、幼児等の子供を着用対象としてもよい。