以下の本発明における実施形態では、必要な場合に複数のセクションなどに分けて説明するが、原則、それらはお互いに無関係ではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細などの関係にある。このため、全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、構成要素の数(個数、数値、量、範囲などを含む)については、特に明示した場合や原理的に明らかに特定の数に限定される場合などを除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。また、構成要素などの形状に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合などを除き、実質的にその形状などに近似または類似するものなどを含むものとする。
(実施形態1)
まず、本実施形態における圧縮成形を行う成形金型10(成形金型機構)の構成について、図1〜図7を参照して説明する。図1〜図5は、本実施形態における動作中(成形品の製造工程中)の成形金型10の要部模式的断面図であり、キャビティC(またはキャビティ凹部13)の縁付近のみ(図示しない紙面右側が成形金型10の中央側に相当する)を抜き出して示している。図6は、成形金型10の変形例の要部模式的断面図である。図7は、キャビティ凹部13の要部模式的平面図であり、種々の平面形状例を(A)、(B)、(C)、(D)、(E)に示す。
まず、成形金型10について概略して説明する。成形金型10は、型閉じしてキャビティC(キャビティ凹部13が閉塞されたもの)が形成される一対の金型(上型11および下型12)を備える。この成形金型10は、例えば、上型11を固定型、下型12を可動型として型開閉可能に構成される。型開閉には公知のプレス機構(図示せず)が用いられる。また、成形金型10は、図示しないヒータを内部に備え、所定温度(例えば180℃)まで加熱可能に構成される。また、成形金型10は、ワークWを保持するワーク保持具50を備える。このワーク保持具50を介して上型11にワークWが配置される。また、成形金型10は、下型12が型閉じしてワークW(例えば、半導体ウエハ)や樹脂Rを収容するキャビティ凹部13を備える。このような成形金型10では、ワークWをクランプしてキャビティCに充填された樹脂Rが熱硬化され(図5参照)、成形品となるワークWの表面および側面がキャビティ凹部13内で樹脂封止(フルモールド)される。
次に、成形金型10の各構成部について具体的に説明する。成形金型10において、上型11は、上型ブロック14を備える。この上型ブロック14は、上型11のベース(図示せず)の下端面に固定して設けられる。また、上型11は、金型面11aでワーク保持具50を吸着保持する上型吸着保持機構を備える。この上型吸着保持機構は、金型外部に設けられる吸引装置15(例えば、真空ポンプ)と、一端が金型面11aに開口し、他端が吸引装置15と接続(連通)され、ワーク保持具50を吸引する吸引路16とを備える。吸引装置15を駆動させることによって、金型面11aに配置(セット)されたワーク保持具50のテープ51を、吸引路16を介して吸着して保持することができる(図2参照)。
また、上型11は、ワーク保持具50を上型11の外周を挟み込み保持するチャック機構を備える。このチャック機構は、金型面11aの周囲に設けられる所定の間隔で配置された複数のチャック17(フック状の爪部)を備える。チャック17は金型面11aから突出するように上型11に回動可能に設けられる。チャック17を回動させることによって、金型面11aに配置(セット)されたワーク保持具50のフレーム体53を引っ掛けるようにして保持することができる(図2参照)。これによれば、上型11からワークWが落下するのを防止することができる。
ワーク保持具50は、平面視においてキャビティ凹部13の開口より大きく一面において粘着面を有するテープ51(例えば、粘着性を有するものであって、例えば熱や紫外線によって剥離する熱・紫外線剥離シートでもよい)と、開口部52を有するフレーム体53(例えば、ステンレス鋼からなるリングフレーム)とを備える。型閉じの際に(例えば、図5参照)、ワーク保持具50が金型内に配置(セット)されるように、成形金型10は下型12においてフレーム53の逃げ用の収容部54(環状の凹部)を備える。
ワーク保持具50において、ワークWは、テープ51の下面中央部に貼り付けられる。このテープ51は、ワークWが開口部52内に位置するように、フレーム体53に保持される。言い換えると、フレーム体53は、テープ51の中央部周りの外周部に貼り付けられる。テープ51は、キャビティ凹部13の開口よりも大きいため、上型11と下型12とでクランプされる。また、フレーム体53をワーク搬送治具として用いることができ、テープ51に貼り付けられたワークWを保持するフレーム体53を搬送ハンド(図示せず)で保持することで、例えば、金型外部から金型内部へ搬送(供給)し易くなり、生産性を向上させることができる。また、ワークWを直接保持する必要がないため、フレーム体53を部分的に保持することでワークWにゆがみが生じることがなく安定的に搬送することができる。また、極めて薄く自重でたわみが大きく生じたり、部分的な保持が困難なワークWであったりしても、平坦に保持して安定的に搬送することができる。
また、成形金型10において、下型12は、ベース20と、キャビティ駒21と、調圧駒22と、クランパ23とを備え、ベース20の上端面にキャビティ駒21、調圧駒22およびクランパ23が設けられる。このため、ベース20は、キャビティ駒21、調圧駒22およびクランパ23が設けられる平面領域(図7参照)として、キャビティ領域、調圧駒領域、クランパ領域を有することとなる。
キャビティ駒21およびクランパ23は、キャビティ凹部13の構成部材である。キャビティ駒21は、キャビティ駒21の上端面がキャビティ凹部13の底部を構成する。また、クランパ23は、キャビティ駒21を囲んで設けられ、貫通筒状又は環状(以下、「貫通筒状等」という)のクランパ23の内周面がキャビティ凹部13の側部を構成する。また、キャビティC内の樹脂圧を調節する調圧機構として、貫通筒状等のクランパ23の内側に調圧駒22が型開閉方向に往復動可能に設けられる。この調圧駒22は、実質的にキャビティ凹部13の構成部材(キャビティ凹部13の一部)として用いられ、キャビティ駒21とクランパ23との間でキャビティ駒21を囲んで設けられる。
下型12における各ブロックの組み付けは、まず、ベース20の上端面にキャビティ駒21が固定して設けられる。そして、ベース20の上端面に弾性部材24(例えば、コイルばね)を介してキャビティ駒21を囲む貫通筒状等の調圧駒22が型開閉方向に往復動可能に設けられる。これにより、さらに、ベース20の上端面に弾性部材25(例えば、コイルばね)を介して調圧駒22を囲む貫通筒状等のクランパ23が型開閉方向に往復動可能に設けられる。これにより、キャビティ駒21とクランパ23とを型開閉方向に相対的に往復動可能に設けることができる。また、弾性部材24によって往復動可能に設けられた調圧駒22は、キャビティC内の樹脂圧を受けて移動することができる、言い換えると、キャビティC内の樹脂圧を調節することができる。
また、成形金型10は、型閉じ動作が進行すると、クランパ23に当接してクランパ23の移動を規制する型閉じストッパ60と、調圧駒22に当接して調圧駒22の移動を規制する調圧駒ストッパ61とを備える。調圧駒ストッパ61は、ベース20と調圧駒22との間であって、調圧駒領域(図7に示す調圧駒22の平面領域)でベース20に固定して設けられる。調圧駒ストッパ61によればキャビティC内の樹脂圧を調節する調圧駒22の移動が規制されるため、例えば、保圧(成形圧)の際の樹脂圧を一定値に確定することができる。
型閉じストッパ60は、クランパ領域(図7に示すクランパ23の平面領域)でベース20に固定して設けられる。すなわち、型閉じストッパ60は、ベース20とクランパ23との間に設けられる。型閉じストッパ60によれば、キャビティCの側部を構成するクランパ23の移動が規制されるため、キャビティCの深さ、すなわち成形品の厚みを一定値に確定することができる。この型閉じストッパ60は、交換可能な1つの部材(ブロック)がベース20に固定して設けられるもの(図1参照)であってもよいし、厚み調節部材62を含む複数部材で構成されるもの(図6に示すような所定厚みの部材や、積み重ね可能なワッシャのようなもの)であってもよい。例えば、厚み調節部材62が型開閉方向と交差する方向(金型側方)に着脱可能であれば、高さの異なる厚み調圧部材62によって、クランパ23を取り外さなくとも成形品の厚みを容易に調節することができる。
このように構成されるキャビティC(キャビティ凹部13)は、キャビティ領域(平面領域)に対応する第1空間と、調圧駒領域に対応する第2空間(いわゆるオーバーフローキャビティとなる)を有する。本実施形態では、調圧機構によるオーバーフローキャビティがキャビティ凹部13に設けられるため、オーバーフローキャビティにおける樹脂Rの厚みが調節されることにより樹脂量および樹脂圧の調節が可能となる。これによれば、例えば粉塵が発生しやすく半導体工場のクリーンルーム内では利用が困難な顆粒状の樹脂Rに替えてシート状の樹脂Rを用いた成形を行うときに特に効果が高い。例えば、シート状の樹脂Rを用いた成形においては、例えばロール状に成形された所定の厚みのシート状の樹脂Rをキャビティの形状に合わせて切り出し任意のサイズとして利用するため、供給される樹脂量の調整は一般に困難となる。一方、各ワークWを成形するために必要な樹脂Rの量は、ワークWに搭載されたチップの数の相違などに起因して必ずしもは一定となるわけではない。このため、シート状の樹脂Rを用いる場合には、樹脂Rを適切な使用量とすることが困難となる。これに対して、上述の構成によれば、樹脂Rの使用量を調整しシート状の樹脂Rを用いた成形を適切な樹脂圧に保ちながら適切な成形厚となるように行うことができる。また、調圧駒の金型面側端面22aがクランパ23側からキャビティ駒21側へ低位となる(下る)傾斜面に構成される。このため、調圧駒の金型面側端面22aは、調圧駒22の上端部が切り欠かれた形状ともいえる。これによれば、樹脂Rを押圧する押圧面である金型面側端面22aの面積を大きくでき、特に第1空間側への樹脂圧の調整に作用させ易くすることができる。
本実施形態に係る成形金型10によれば、調圧駒22を設けずに所定の樹脂量(必要量)をキャビティCに供給して樹脂封止する場合(一般的な圧縮成形金型)に対して、その必要量よりも樹脂Rを多く供給して適切な樹脂圧を加えながら所望の厚みでの樹脂封止をすることができる。また、成形金型10によれば、キャビティの外側にランナを介してオーバーフローキャビティを設ける場合(特許文献1に記載のような成形金型)に対して、キャビティの外側に成形される不要な樹脂を取り除く必要がなくなり、成形品の生産性を向上することもできる。
また、成形金型10は、成形品の離型性を向上するために、下型12の金型面12aでリリースフィルムFを吸着保持する下型吸着保持機構を備える。リリースフィルムFとしては、成形金型10の加熱温度に耐えられる耐熱性を有し、下型12の金型面12aから容易に剥離するものであって、柔軟性、伸展性を有するフィルム材を用いる。具体的にリリースフィルムFとしては、例えば、PTFE、ETFE、PET、FEP、フッ素含浸ガラスクロス、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリジンなどが好適である。リリースフィルムF上に供給される樹脂Rとしては、上述したようなシート状のもののほかに、例えば、液状、ペースト状、粉状、ブロック状のものを用いることもできる。
下型吸着保持機構は、金型外部に設けられる吸引装置26,27(例えば、真空ポンプ)と、一端が金型面12aに開口し、他端が吸引装置26,27と接続(連通)され、リリースフィルムFを吸引する吸引路30,31とを備える。吸引装置26,27を駆動させることによって、吸引路30,31を介して金型面12aに配置されたリリースフィルムFを吸着して保持することができる(図2参照)。吸引路30は、例えばキャビティ駒21の外周面と調圧駒22の内周面との隙間や、調圧駒22の外周面とクランパ23の内周面との隙間を含んで構成される。このため、下型吸着保持機構は、一例として、キャビティ駒21と調圧駒22との間であってベース20側に設けられるシール部材32(例えば、Oリング)と、調圧駒22とクランパ23との間であってベース20側に設けられるシール部材33(例えば、Oリング)とを備える。下型吸着保持機構によれば、図7(A)に示すように、クランパ23のフィルム挟み込み回避位置28を避けて、キャビティ駒21および調圧駒22を覆うように下型12の金型面12a(図2参照)にリリースフィルムFを配置(セット)することができる。
また、成形金型10は、例えば図2に示すように、金型内部(上型11と下型12との間)をチャンバとして減圧するチャンバ減圧機構を備える。このチャンバ減圧機構は、上型ブロック14を囲む貫通筒状等のチャンバ駒34と、クランパ23を囲む貫通筒状等のチャンバ駒35とを備える。チャンバ駒34は、上型11のベース(図示せず)の下端面に固定して設けられる。また、チャンバ駒35は、下型12のベース20の上端面に固定して設けられる。そして、チャンバ減圧機構は、チャンバ駒35の上端面に設けられるシール部材36(例えば、Oリング)と、金型外部に設けられる減圧装置37(例えば、真空ポンプ)と、一端が金型内部に開口し、他端が減圧装置37と接続(連通)され、チャンバを減圧する減圧路38とを備える。シール部材36は、上型11と下型12とが近接し、チャンバ駒34,35で囲まれた空間、すなわちチャンバをシール(形成)する際に用いられる。減圧装置37を駆動させることによって、金型内部に形成されたチャンバを、減圧路38を介して減圧することで、成形品(樹脂部)のボイドや未充填の防止をすることができる。
ところで、図7に示すように、キャビティ駒21は、その平面形状(上型11側の金型面形状)がウェハ成形用に円形状のものや大型基板用に矩形状(正方形状、長方形状)のものを用いることができる。そして、キャビティ駒21を囲む平面視環状の調圧駒22においても、外形形状や幅を任意に設定した種々の金型面形状のものを用いることができる。例えば、図7(A)では、円形状のキャビティ駒21に対して環状幅が一定の円形環状の調圧駒22を示す。図7(B)では、正方形状のキャビティ駒21に対して環状幅が一定の四角形環状の調圧駒22を示す。図7(C)では、正方形状のキャビティ駒21に対して環状幅が辺部より角部で広い四角形環状の調圧駒22を示す。図7(D)では、正方形状のキャビティ駒21に対して環状幅が角部よりも隣接する角部間における辺部で広い四角形環状の調圧駒22を示す。図7(E)では、長方形状のキャビティ駒21に対して環状幅が長手部より短手部で広い長方形環状の調圧駒22を示す。
例えば、キャビティCの中央部に遠い角部や短手部では、キャビティCの中心部に近い辺部や長手部より樹脂Rの充填しにくい場合が多い。これに対して、図7(C)や図7(E)のように、その環状幅を辺部や長手部より角部や短手部で広くした調圧駒22を設けることで、キャビティCの中心部に近い辺部や長手部において樹脂Rをオーバーフローし難くすることで不要なオーバーフローを防止し、全体としての充填を促進することができ、角部や短手部での樹脂圧の調節がし易くなる。すなわち、樹脂の充填性を向上させることができる。なお、樹脂Rの組成やワークWに搭載されたチップの配列などによっては、図7(D)のようにその環状幅を角部や短手部より辺部や長手部で広くした調圧駒22を設けるほうが好ましい場合もある。
次に、本実施形態における成形金型10の動作(ワークWをセットする段取り方法を含む)について説明すると共に、成形金型10を用いた成形品の製造方法について説明する。まず、図1に示すように、成形金型10が型開きした状態で、キャビティ駒21の上端面が待機位置にくるように、クランパ23に対してキャビティ駒21を相対的に移動させておく。これにより、キャビティ駒21の上端面は、ベース20の上端面を基準としてクランパ23の上端面よりも低位となる。調圧駒22の金型面側端面22aは、ベース20の上端面を基準としてクランパ23の上端面以下の位置にあれば、キャビティ駒21の上端面よりも高位(図1参照)、同位または低位のいずれであっても構わない。
また、成形金型10が型開きした状態で、吸引装置15,26,27および減圧装置37を駆動させておくことができる。また、ローダ(図示せず)を用いてワーク保持具50によって保持されたワークWを金型内部に搬入する。また、樹脂RをリリースフィルムFの中央部上に配置し、樹脂RをリリースフィルムFとともに金型内部に搬入する。樹脂RがリリースフィルムFとともに搬送される場合には、金型内部で樹脂Rの供給が行われないため成形金型10毎の準備時間を短縮したり、金型内における粉末状の樹脂Rの飛散を抑えディスペンサの加熱を防止することができる。もちろん、金型内部でのリリースフィルムF上への樹脂Rの供給をしてもよい。
リリースフィルムF上への樹脂Rの供給は、例えば、液状樹脂を充填して射出可能なシリンジを備えたディスペンサや、電磁フィーダで振動させることで粉状樹脂を面的に供給可能なトラフを備えたディスペンサを用いることができる。また、樹脂量の調節が容易な成形金型10によれば、シート状樹脂のように微少量の分量調整が難しい樹脂であっても用いることができる。なお、シート状樹脂は、酸化などの劣化防止のために設けられる保護シートを剥離してから供給することができる。
続いて、成形金型10が型開きした状態で、ワーク保持具50を介して上型11の金型面11aにワークWを配置(セット)し、下型12のキャビティ凹部13に樹脂Rを配置(セット)する(図2参照)。具体的には、上型11では、まず、吸引路16からワーク保持具50のテープ51を全面的に吸引することで、ワークWを保持するワーク保持具50を金型面11aに吸着する。そして、チャック17を回動させることで、金型面11aに吸着されたワーク保持具50のフレーム体53を引っ掛けるようにして保持する。これにより、金型面11aにワークWが落下することなく確実に配置される。
また、下型12では、キャビティ凹部13の内面を含む金型面12aを覆うようにリリースフィルムFを配置し、吸引路30,31からリリースフィルムFを吸引することで、調圧駒22の金型面側端面22aに倣ってリリースフィルムFを吸着させることができる(図2参照)。このようにクランパ23の上端面とキャビティ駒21の上端面との段差の間において傾斜面を有する調圧駒22の金型面側端面22aにリリースフィルムFを倣わせることで、リリースフィルムFを倣わせる必要のある段差の高さを低減させて少ない伸び量でリリースフィルムFを金型面12aに被覆させることができる。これにより、リリースフィルムFへのストレスを少なくすることができる。また、リリースフィルムFの中央部に樹脂Rが配置されているので、リリースフィルムFを介してキャビティ凹部13内のキャビティ駒21の上端面に樹脂Rを配置させることができる。この樹脂Rは、成形金型10が内蔵ヒータによって所定温度に加熱されているため、キャビティ凹部13の内底面と接する箇所から溶融していくこととなる。
続いて、成形金型10が型開きした状態から上型11と下型12とを近接させていき、図2に示すように、チャンバ駒35の上端面に設けられているシール部材36をチャンバ駒34の下端面に当接(すなわち、シールリングタッチ)させる。これにより、金型内部にチャンバ(密閉空間)が形成される。このとき、減圧装置37を駆動させているため、減圧路38を介してチャンバが減圧され、脱気状態とすることができる。このように、ワーク保持具50のテープ51の下面側が減圧状態となっても、本実施形態では、チャック17での保持だけでなくテープ51の上面が全面的に金型面11aに吸着しているので、チャック17で直接保持されていないワークWが貼り付けられているテープ51が垂れ下がることがない。
続いて、図3に示すように、更に上型11と下型12とを近接させていき、上型11の上型ブロック14と下型12のクランパ23とでリリースフィルムFを介してワーク保持具50のテープ51をクランプする。クランプによってキャビティ凹部13の開口が上型11によって閉塞されることで、キャビティ凹部13を含んで構成されるキャビティCが形成され、キャビティCに樹脂Rが内包される。また、キャビティ駒21の上端面とワークWまたはテープ51との間の隙間(第1空間)において、キャビティ駒21の上端面に配置されている樹脂RがワークWに押し付けられ、その押し広げられた樹脂Rが調圧駒22の金型面側端面22a上に進入し始める。すなわち、キャビティ駒21を囲む調圧駒22の金型面側端面22aと上型11(テープ51)との隙間である実質的なオーバーフローキャビティ(第2空間)に流れ出す。なお、図示しないエアベントをクランパ23に設けることで、リリースフィルムFをクランプした後でもキャビティCにおける減圧をすることもできる。
続いて、図4に示すように、更に、上型11と下型12を近接させていき、キャビティCに樹脂Rを充填させる。具体的には、まず、弾性部材25が押し縮められ、クランパ23が付勢されながらベース20側へ移動する。このクランパ23に対してキャビティ駒21は相対的に移動することとなる。このとき、キャビティ凹部13内でキャビティ駒21の上端面の位置が深い待機位置から浅い成形位置となり、キャビティ駒21の上端面とワークWまたはテープ51との間の隙間(第1空間)が狭くなる。これにより、キャビティ駒21の上端面に配置されている樹脂Rは、更にワークWに押し付けられ、キャビティ駒21を囲む調圧駒22の上端面とテープ51との隙間である実質的なオーバーフローキャビティ(第2空間)へ流れ込み、オーバーフローキャビティを充填する。そして、調圧駒22(弾性部材24)は、オーバーフローキャビティに流れ込んできた樹脂Rによって押し下げられる。言い換えると、オーバーフローキャビティに流れ込んできた樹脂Rは、弾性部材24によって往復動する調圧駒22の金型面側端面22aで押圧される。したがって、調圧駒22によってキャビティC内の樹脂圧が調節されながら、キャビティCに樹脂Rが充填された状態となる。なお、調圧駒22の金型面側端面22aが傾斜面に構成されることにより、樹脂Rにより金型面側端面22aに加える樹脂圧によって、調圧駒22には下方への押圧力のみならず、調圧駒22に対して外方への押圧力も発生させることもできる。これによれば、キャビティ駒21の外周全周を囲うように設けられた調圧駒22に対して、この外方への押圧力を均一に加えることができ、調圧駒22をクランパ23及びキャビティ駒21に対して均一な隙間となるように保持することができる。これによれば、キャビティ駒21、調圧駒22及びクランパ23間における摺動不良の発生を防止することができる。
続いて、図5に示すように、更に、上型11と下型12を近接させていき、型閉じストッパ60がクランパ23に当接してクランパ23の移動を規制する(停止する)。これにより、キャビティCの深さ、すなわち成形品の厚みを一定値に確定することができる。次いで、キャビティC内で充填されている樹脂Rを保圧した状態(最終的な型閉じした状態)で所定時間熱硬化させる。なお、リリースフィルムFを挟み込むことによって、成形品の厚みが変化するときは、リリースフィルムFによって被覆されない回避位置28(図7(A)参照)に突き当て用の部材(突起部材)を設けてもよい。
また、図5に示すように、調圧駒22を調圧駒ストッパ61に当接させて移動を規制してもよい。これにより、樹脂圧による調圧駒22の動作がなくなって、相対的に見ると調圧駒22を押し上げて保圧(成形圧)の際の樹脂圧を一定値に確定することができる。他方、調圧駒ストッパ61が調圧駒22に当接しない場合には、弾性部材24の弾性係数によって任意の樹脂圧とすることができる。なお、弾性部材24および調圧駒ストッパ61の組合せの代わりに、調圧駒22を型開閉方向に往復動可能とする別の駆動機構(例えば、シリンダ)を設けることで、更なる保圧(二次保圧など)を行うことができる。
次いで、成形金型10を型開きして、上型11と下型12とを離型させて、封止されたワークWを金型外部に取り出した後、封止されたワークWからテープ51とリリースフィルムFを剥離する。この際、フレーム体53を把持し引き剥がすことができるため、封止されたワークWからテープ51を簡易に剥離することができる。さらに後処理として所定時間熱硬化(ポストキュア)させることによって、ワークWが樹脂R(樹脂封止部)で封止(フルモールド)された成形品が完成する。
(実施形態2)
前記実施形態1では、リリースフィルムFを用いる場合について説明した。本実施形態では、リリースフィルムFを用いない場合について図8、図9を参照して説明する。図8は、本実施形態に係る成形金型10の要部模式的断面図である。また、図9は、本実施形態に係る成形金型10の変形例の要部模式的断面図である。
図8に示す成型金型10の調整駒22は、上リング70および下リング71(例えば、ステンレス鋼)と、シール部材としてのシールガスケット72(例えば、フッ素樹脂)と、ピン73とを備え、これらが組み付けて構成される。具体的には、上リング70において所定間隔で立設配置された凸部を、シールガスケット72において所定間隔に配置された貫通孔に通した状態で、下リング71において所定間隔で配置された凹部に挿入し、下リング71の側方から上リング70の凸部および下リング71の凹部を貫通するピン73によって、調整駒22が組み付けられる。この調圧駒22では、シールガスケット72によって、調圧駒22とキャビティ駒21との間および調圧駒22とクランパ23との間が各々シールされる。このため、型閉じの際に、調圧駒22とキャビティ駒21との間、および調圧駒21とクランパ23との間に樹脂Rが流れ込んできたとしても、シールガスケット72によって樹脂Rのベース20側への流れ込みを防止することができる。したがって、リリースフィルムFを用いなくとも、金型間への樹脂漏れを防止して摺動不良の発生を防止することができる。また、調圧駒22を押し上げ可能な駆動機構(図示せず)を設けて、調圧駒22を取り出し易くし、部材分解、交換を容易に行うようにしてもよい。また、図8に示す構成によれば、上リング70に対して樹脂圧が加わることで、例えば弾性体を用いて構成されたシールガスケット72を押し潰す方向に力が加えられる。このため、シールガスケット72が平面方向における幅を広げることになり、隙間を確実に塞いで樹脂漏れが一層確実に防止される。なお、シールガスケット72にはフッ素樹脂のような樹脂材料の弾性体を用いることができるが、金属材料であってもよい。
また、図8に示す成形金型10は、キャビティ駒21を貫通して駆動源(例えば、シリンダ)によって型開閉方向に往復動可能に設けられ、先端が拡幅するエジェクタピン80を備える。このエジェクタピン80は、キャビティ駒21に形成された貫通孔81に挿入される。これによれば、下型12の金型面12aを覆うようなリリースフィルムFを用いなくとも、樹脂封止後の成形品(ワークW)をエジェクタピン80で押し上げることで下型12から離型させることができる。また、例えばエジェクタピン80に振動を加えながら押し上げることで、下型12から離型を促進させることができる。
更に、本実施形態に係る成形金型10は、ベース20側で貫通孔81に連通するエア流路82と、エア流路82に連通する図示しないエアブロー装置とを備える。エアを吹き付け込むことができ、下型12からのワークWの離型を促進させることができる。また、ワークWをエジェクタピン80で押し上げならワークWにエアを例えば脈動を加えながら吹き付けることができ、離型を更に促進させることができる。更に、前述したエジェクタピン80の押し上げによる空間確保と、エアブローによる相乗効果により、離型(剥離)をより円滑かつ確実に行うことができる。
また、図8に示す成形金型10では、例えば、下型12のキャビティ凹部13内に樹脂Rが直接供給される場合であるが、図9に示すように、樹脂搭載キャリア90に樹脂Rをセットして供給(搬入)しても同様の作用効果を得ることができる。樹脂搭載キャリア90としては、例えば、被成形品として用いられる放熱板や、シールド板などの金属板を用いることができる。樹脂搭載キャリア90によって成形品の樹脂部と下型12の金型面12aとが直接接触するのを防止することができ、離型性を確保することができ、成形品の生産性を向上させることができる。なお、樹脂搭載キャリア90を用いる場合には、エジェクタピン80は、先端が拡幅したもの(図8参照)でなく、ストレート状(図9参照)であってもよい。
(実施形態3)
前記実施形態1では、型閉じストッパ60がクランパ23に当接してクランパ23の移動を規制する場合について説明した。本実施形態では、型閉じストッパ60が上型11の金型面11aに当接してクランパ23の移動を規制する場合について図10および図11を参照して説明する。図10は、本実施形態に係る成形金型10の要部模式的断面図である。また、図11は、本実施形態に係る成形金型10の変形例の要部模式的断面図である。
図10に示す成形金型10の型閉じストッパ60は、所定の高さを有するようにベース20に固定して立設される。この型閉じストッパ60は、例えば図7(A)に示すようにリリースフィルムFを避けた位置に設けられることで、リリースフィルムFの厚みに関係なく正確な成形厚となるようにキャビティの高さを規定することができる。また、型閉じストッパ60は、上ピン63および下ピン64を備え、これらが組み合わされてストレート状の一本のピンとなるように、ねじ込み式で組み付けられる。具体的には、型開きした状態で、まず、下ピン64がベース20に固定して設けられる。次いで、この下ピン64がクランパ23に形成された貫通孔65に挿入されるように、クランパ23が型開閉方向に往復動可能に組み付けられる。そして、クランパ23の上端面(下型12の金型面12a)側から上ピン63を挿入して、上ピン63および下ピン64を嵌め合わせて、型閉じストッパ60が組み付けられた構成とすることができる。
図10に示す成形金型10では、型閉じによって上型11がクランパ23を押し付けるように作用するが、更なる型閉じによって型閉じストッパ60が上型11の金型面11aに当接する(成形金型10が固定される)ため、クランパ23の移動が規制される。このようにキャビティCの側部を構成するクランパ23の移動が規制されるため、キャビティCの深さ、すなわち成形品の厚みを一定値に確定することができる。また、クランパ23などの金型ブロックをベース20から乗せ降ろしすることなく、下型12の金型面12a側から下ピン64に対して上ピン63をねじ込みで交換することができ、長さの異なる上ピン63によって容易に成形品の厚みを調節することができる。さらに、上ピン63は上型11に設けることもでき、型閉じしたときに上ピン63と下ピン64とが付き合わされることで成形品の厚みを一定値に確定する構成としてもよい。
また、図10に示す成形金型10では、上型ベース(図示せず)に固定して設けられる上型ブロック14に型閉じストッパ60を当接させる場合であるが、図11に示すように、型開閉方向に往復動可能に設けられるチャンバ駒34に型閉じストッパ60を当接させても同様の作用効果を得ることができる。チャンバ駒34を型開閉方向に往復動可能とする構成として、図11に示す成形金型10は、弾性部材66(例えば、コイルばね)と、チャンバ駒ストッパ67とを備える。これらの組み付けは、まず、上型ベース18の下端面に上型ブロック14が固定して設けられる。そして、上型ベース18の下端面に弾性部材66を介して上型ベース18を囲む貫通筒状等のチャンバ駒34が型開閉方向に往復動可能に設けられる。また、チャンバ駒ストッパ67は、上型ベース18とチャンバ駒34との間でベース20に固定して設けられる。なお、チャンバ駒34が移動するため、金型内部を減圧するチャンバ機構は、上型ブロック14とチャンバ駒34との間に設けられるシール部材68(例えば、Oリング)を備える。
図11に示す成形金型10では、型閉じによって型閉じストッパ60がチャンバ駒34を押し付けるように作用するが、更なる型閉じによってチャンバ駒34がチャンバ駒ストッパ67に当接する(成形金型10が固定される)ため、クランパ23の移動が規制される。このようにキャビティCの側部を構成するクランパ23の移動が規制されるため、キャビティCの深さ、すなわち成形品の厚みを一定値に確定することができる。
なお、成形金型10における上型11と下型12とを上下反転した構成としてもよい。この場合、ワークWに樹脂Rを搭載した状態で同時に供給することができる。これによれば、搬送機構を排除して装置構造を簡素化することができる。また、調圧駒22は、必ずしもキャビティ駒21とクランパ23との間に設ける必要は無く、クランパ23と重複させるように設けてもよい。この場合、例えばクランパ23の金型面(端面)に樹脂Rをオーバーフローさせる溝部を全周に亘って配置し、この溝部に対して加圧可能なピン状の調圧駒22を一定間隔で設けることで、樹脂圧に保ちながら適切な成形厚となるように行うことができる。
なお、キャビティ駒21の端面には、ワークWに搭載されたチップ部品(図8参照)の端面への樹脂フラッシュを防止するために弾性体の層を設けてもよい。この場合、チップ部品の間において例えば格子状に樹脂Rを配置し、弾性体にチップ部品を押し付けるように封止することができる。
なお、本明細書において開示された発明は、上述した各図に示すような実施例の構成においてのみ成立するものではなく、それぞれの作用効果に対応する必要最小限の構成を含んだ装置や方法として成立する。一例として、図8に示したような調圧駒22とすることで金型間への樹脂漏れを防止する構成を採用するにあたり、エジェクタピン80を含む離型機構は必ずしも必要なく、任意の構成とすることができる。