JP6429781B2 - インフルエンザウイルスの免疫測定における検体処理方法及び免疫測定法 - Google Patents
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Description
本発明が適用可能な検体は、インフルエンザウイルスの存在が疑われるものであれば特に限定されないが、鼻腔拭い液、鼻腔吸引液、鼻かみ液、咽頭拭い液、唾液等の鼻咽頭由来検体(以下、鼻咽頭由来検体という)が好ましく、このうち鼻腔拭い液、鼻腔吸引液が特に好ましい。
上記の通り、本発明の方法では、検体と、界面活性剤とを接触させる。これは、通常、該界面活性剤を含む検体処理液を、上記検体で処理することにより行われる。検体処理液は、通常、緩衝液中に界面活性剤を含むものである。緩衝液としては、特に限定されないが、MES、HEPES、TES、ADA、ACES、bis-Tris、Tris、TES、CAPS、ホウ酸緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液等を挙げることができる。界面活性剤は、パルミチル基、ステアリル基およびオレイル基から成る群より選ばれる少なくとも1つの基を持つ界面活性剤である。これらのアルキル基は、直鎖状でも分枝状でもよい。好ましくは、ポリオキシエチレン鎖に少なくとも1個の上記脂肪族基が結合した非イオン界面活性剤である。ポリオキシエチレン鎖の鎖長は、特に限定されないが、通常、オキシエチレン単位の重合度が5〜40、好ましくは10〜20である。ポリオキシエチレン鎖を有する界面活性剤の好ましい例として、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル及びポリオキシエチレンセチルエーテルを挙げることができる。これらの界面活性剤は単独でも2種以上を組み合わせても用いることができる。検体処理液中の該界面活性剤の終濃度(複数の該界面活性剤が含まれる場合にはその合計終濃度)は、0.005(w/v)%〜8(w/v)%が好ましく、さらに好ましくは0.5(w/v)%〜4(w/v)%である。界面活性剤は、単独で用いることも2種以上を組み合わせて用いることもできる。
前記検体処理液には、アルギニンなどの塩基性アミノ酸、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(例えば、Triton(登録商標)X-100)等の非イオン性界面活性剤、BSAなどの非特異反応抑制剤、スクロースなどの安定化剤や保存剤、プロクリン(登録商標)などの防腐剤等を含んでもよい。水酸化ナトリウム、塩化水素など緩衝液のpHを調整する工程で使用するものも含んでもよい。
本発明の検体処理方法は、鼻咽頭由来等の検体と本発明の前記検体処理液を接触させることにより行われる。例えば、検体が鼻腔吸引検体の場合は、鼻腔吸引液に綿棒等を浸し、検体を浸み込ませた綿棒を本発明の検体処理液に入れて検体を溶解させることで抽出することができる。また、検体が鼻腔拭い検体の場合は、綿棒で鼻腔を拭い、検体を浸み込ませた綿棒を本発明の検体処理液に入れて検体を溶解させることで抽出することができる。この操作は室温で行うことができ、綿棒を浸す検体処理液の量は、綿棒の綿部分の全体を浸漬できる量であれば特に限定されないが、通常、0.05mL〜5mLでよい。
上記のように処理した検体を、次に、インフルエンザウイルスのM1タンパク質と抗原抗体反応する抗体又はその抗原結合性断片を用いた免疫測定法に供し、検体中のインフルエンザウイルスを測定する。以下、この免疫測定について説明する。
本発明の免疫測定において測定されるウイルスは、A型インフルエンザウイルスやB型インフルエンザウイルス等のインフルエンザウイルスである。なお、本発明において、「測定」には、検出、定量、半定量のいずれもが包含される。
本発明の免疫測定は、インフルエンザウイルスM1タンパク質を抗原とするものであり、従って、免疫測定には、インフルエンザウイルスのM1タンパク質と抗原抗体反応する抗体又はその抗原結合性断片が用いられる。
本発明の被検出をイムノクロマトグラフィーにより検出する方法(イムノクロマト法)は、被検出物質に対する抗体(以下、抗被検出物質抗体ということがある。)を用いた免疫学的検出方法であれば特に限定されないが、抗被検出物質抗体と標識抗被検出物質抗体を用いたサンドイッチ法がより好ましい。さらに、抗被検出物質抗体としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体いずれでもよいが、モノクローナル抗体がより好ましい。上記イムノクロマト法は、上記検体処理方法により抽出された被検出物質と抗被検出物質抗体を固定化したストリップ等を接触させることにより行われる。なお、本発明におけるイムノクロマト法は、定性的な検出、定量的な測定のいずれにも用いることができることはいうまでもない。
これらの抗体に標識する標識物としては、金コロイド粒子、白金コロイド粒子、カラーラテックス粒子、磁性粒子などが好ましく、特にカラーラテックスが好ましい。
カラーラテックスは、例えば特開平6-306108号公報の〔0022〕記載の方法に従い、乳化剤を使用しないソープフリー重合によりポリスチレン系粒子を作製し、同〔0025〕から〔0035〕までに記載された方法に準じて作製可能であり、Seradyn社やMagsphere社などから市販されている着色粒子を用いることも出来る。
以下の説明では、標識物としてカラーラテックス粒子を用いた場合について詳述する。
上記抗体のカラーラテックスへの固定化は、通常化学結合によって行うが、この際、抗体濃度は1mg/mL〜5mg/mLに調製されるのが好ましく、緩衝液及びpHは、20mM MES緩衝液(pH5.5〜6.5)または50mMホウ酸緩衝液(pH8〜9)が好ましく、さらに好ましくは20mMMES緩衝液(pH6.5)である。また、カラーラテックス上の抗体が結合していない領域は、BSAなどを結合させブロッキングするのが好適である。このようにして作製されたカラーラテックス標識抗体は、変性を阻止するための保存試薬中に分散され保存される。この変性阻止剤としては、BSAなどの蛋白質、グリセリン、糖などが用いられる。
また、固相の素材としては、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン類、ガラス、セルロースやセルロース誘導体などの多糖類、あるいはセラミックス等が挙げられる。具体的には、ミリポア社、東洋濾紙社、ワットマン社、ライデル社などより販売されているガラス繊維ろ紙や、セルロースろ紙などの他、ポリスチレンプレート、ガラス繊維膜、ナイロン膜、ニトロセルロース膜などが好ましく、特にニトロセルロース膜が好ましい。以下、固相の素材としてニトロセルロース膜を用いた場合について詳述する。
被検出物質としての抗原(例えば、インフルエンザウイルス)と標識抗体との複合体を検出するための捕捉用抗体のニトロセルロース膜への固定化は、一般に周知の方法で実施することができる。例えば、ラテラルフロー式の場合には、ノズルから捕捉用抗体を含む液を一定の速度で吐出しながら水平方向に移動させることのできる機構を有する装置などを用いて、ライン状にニトロセルロース膜に捕捉用抗体液を塗布することにより行われる。この際、抗体の濃度は0.1mg/mL〜5mg/mLが好ましく、0.5mg/mL〜2mg/mLがさらに好適である。また、上記の抗体液は、通常、所定の緩衝液を用いて調製され得る。前記緩衝液の種類としては、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、グッド緩衝液など通常使用される緩衝液をあげることができる。緩衝液のpHはpH6.0〜9.5の範囲が好ましく、pH6.5〜8.5がより好ましく、pH7.0〜8.0がさらに好ましい。緩衝液には、さらにNaClなどの塩類、スクロースなどの安定剤や保存剤、プロクリン(登録商標)などの防腐剤等を含んでもよい。塩類はNaClなどのようにイオン強度の調整のために含ませるもののほか、水酸化ナトリウムなど緩衝液のpHを調整する工程で存在するようになるものも含まれる。
ニトロセルロース膜に抗体を固定化した後、さらに、通常使用されるブロッキング剤を溶液あるいは蒸気状にして被覆し、ブロッキングを行うこともできる。
ニトロセルロース膜の孔径を適宜選択することにより、カラーラテックス標識抗体と被検出物質である抗原(例えば、インフルエンザウイルス)との免疫複合体が膜中を流れる速度を制御することが可能である。この流れる速度により、膜に固定化された上記抗体に結合する標識抗体量を調節することができるため、適切な孔径を有する膜を選択することが好ましい。好適には、ミリポア社、Hi Flow Plus HF180などが用いられる。
本発明の検体処理液は、従来のイムノクロマト試薬とともに用いることができ、両者を併せてイムノクロマト試薬またはイムノクロマト試薬キットとして用いることもできる。
尚、「イムノクロマト試薬」とは、イムノクロマト法による測定に必要な試薬成分や、テストストリップ等の部材をも含めたものである。
B型インフルエンザウイルス抗原をBALB/cマウスに免疫し、一定期間飼育したマウスから脾臓を摘出し、ケラーらの方法(Kohler et al., Nature, vol, 256, p495-497(1975))によりマウスミエローマ細胞(P3×63)と融合した。得られた融合細胞(ハイブリドーマ)を、37℃インキュベーター中で維持し、B型インフルエンザウイルスM1抗原を固相したプレートを用いたELISAにより上清の抗体活性を確認しながら細胞の純化(単クローン化)を行った。取得した該細胞2株をそれぞれプリスタン処理したBALB/cマウスに腹腔投与し、約2週間後、抗体含有腹水を採取した。得られた腹水からプロテインAカラムを用いたアフィニティークロマトグラフィー法により、それぞれIgGを精製し、2種類の精製抗B型インフルエンザウイルスM1抗体を得た。
精製した抗B型インフルエンザウイルスM1抗体を1.0mg/mLになるように精製水で希釈した液をPETフィルムで裏打ちされたニトロセルロースメンブレンの所定の位置に線状に塗布し、45℃、30分間乾燥させ、抗B型インフルエンザウイルスM1抗体固定化メンブレンを得た(以下抗体固定化メンブレンとする)。
ニトロセルロースメンブレンへの固定化に使用しなかったもう一つの精製した抗B型インフルエンザウイルスM1抗体を1.0mg/mLになるように精製水で希釈し、これに着色ポリスチレン粒子を0.1%になるように加え、攪拌後、カルボジイミドを1%になるように加え、さらに攪拌する。遠心操作により上清を除き、50mM Tris(pH9.0)、3%BSAに再浮遊し、抗B型インフルエンザウイルスM1抗体結合着色ポリスチレン粒子を得た。
3.で得た抗B型インフルエンザウイルスM1抗体結合着色ポリスチレン粒子をグラスファイバー不織布に所定量1.0μgを塗布し、45℃、30分間乾燥させた。
2.4.で調製した抗体固定化メンブレンと乾燥パッドを他部材(バッキングシート、吸収帯、サンプルパッド)と貼り合せて5mm幅に切断し、B型インフルエンザウイルス試験片とした。
A型インフルエンザウイルス抗原をBALB/cマウスに免疫し、一定期間飼育したマウスから脾臓を摘出し、ケラーらの方法(Kohler et al., Nature, vol, 256, p495-497(1975))によりマウスミエローマ細胞(P3×63)と融合した。得られた融合細胞(ハイブリドーマ)を、37℃インキュベーター中で維持し、A型インフルエンザウイルスM1抗原を固相したプレートを用いたELISAにより上清の抗体活性を確認しながら細胞の純化(単クローン化)を行った。取得した該細胞2株をそれぞれプリスタン処理したBALB/cマウスに腹腔投与し、約2週間後、抗体含有腹水を採取した。得られた腹水からプロティンAカラムを用いたアフィニティークロマトグラフィー法により、それぞれIgGを精製し、2種類の精製抗A型インフルエンザウイルスM1抗体を得た。
精製した抗A型インフルエンザウイルスM1抗体を1.0mg/mLになるように精製水で希釈した液をPETフィルムで裏打ちされたニトロセルロースメンブレンの所定の位置に線状に塗布し、45℃、30分間乾燥させ、抗A型インフルエンザウイルスM1抗体固定化メンブレンを得た(以下抗体固定化メンブレンとする)。
ニトロセルロースメンブレンへの固定化に使用しなかったもう一つの精製した抗B型インフルエンザウイルスM1抗体を1.0mg/mLになるように精製水で希釈し、これに着色ポリスチレン粒子を0.1%になるように加え、攪拌後、カルボジイミドを1%になるように加え、さらに攪拌する。遠心操作により上清を除き、50mM Tris(pH9.0)、3%BSAに再浮遊し、抗A型インフルエンザウイルスM1抗体結合着色ポリスチレン粒子を得た。
8.で得た抗A型インフルエンザウイルスM1抗体結合着色ポリスチレン粒子をグラスファイバー不織布に所定量1.0μgを塗布し、45℃、30分間乾燥させた。
7.および9.で調製した抗体固定化メンブレンと乾燥パッドを他部材、バッキングシート、吸収帯、サンプルパッドと貼り合せて5mm幅に切断しA型インフルエンザウイルス試験片とした。
A型およびB型インフルエンザウイルスM1タンパク質検出イムノクロマトにおける最適な界面活性剤を探索するために、界面活性剤の性能を比較した。まず、表1に示す界面活性剤のうち1種類を1(w/v)%の濃度で含み、その他の成分として10mM MES(pH7.0)、3%BSAを含む検体処理液を作製した。なお従来の検体処理方法に相当するのは表1の番号4のポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルを含むものである。表1には、用いた界面活性剤のポリオキシエチレン(POE)鎖の炭素数も併せて示す。なおA型インフルエンザウイルスの試験には表1の番号1〜7を使用し、B型インフルエンザウイルスの試験には、表1の番号2〜4のみを使用した。
A型およびB型インフルエンザウイルスM1タンパク質検出イムノクロマトにおける、ポリオキシエチレンセチルエーテルの濃度の影響について調査した。ポリオキシエチレンセチルエーテルを表3-1に示す濃度で含み、その他の成分として10mM MES(pH6.5)、3%BSAを含む検体処理液を作製した。なお対照としてポリオキシエチレンセチルエーテルを含まないサンプルを用意した(表3-1、表3-2の番号1)。
A型およびB型インフルエンザウイルスM1タンパク質検出イムノクロマトにおける、塩成分の添加効果を調査した。まず、ポリオキシエチレンセチルエーテルを1(w/v)%含み、塩成分として表7に示す濃度の塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウムのいずれかを含み、その他の成分として10mM MES(pH7.0)、3%BSAを含む検体処理液を作製した。対照条件として上記の検体処理液のうち塩を含まない検体処理液も同時に作製した。次に、作製した検体処理液400μLに不活化したA型またはB型インフルエンザウイルスを30μL加えて、混合した。混合液50μLをB型インフルエンザウイルス試験片のサンプルパッド部分に滴下し、10分後に目視判定を行った。テストライン上にシグナルを確認できたものを+とし、シグナルが強くなるに従い2+、3+、4+、5+と相対的に数値を大きくした(A型は表4-1から表4-3、B型は表5-1から5-3に結果を記載した)。
M1検出用検体処理液として、2%ポリオキシエチレンセチルエーテル、1%ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルを含み、塩成分として0.25M塩化カリウムと0.25M塩化リチウムを、その他の成分として10mM MES(pH7.0)、3%BSAを含む検体処理液を作製した。なお対照条件として10mM MES(pH7.0)、3%BSA、1%ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルを含む検体処理方法を作製した。上記の2種の検体処理方法を使用して、イムノクロマト法でのインフルエンザウイルスA型、B型の希釈系列(原液〜1024倍希釈まで)を使用して性能試験を行なった。同時に従来のNP検出イムノクロマト法との比較も行った。
Claims (8)
- インフルエンザウイルスのマトリックス1タンパク質と抗原抗体反応する抗体又はその抗原結合性断片を用いてインフルエンザウイルスを免疫測定する際、インフルエンザウイルスを含む検体を、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル及びポリオキシエチレンセチルエーテルから成る群より選ばれる少なくとも1種の界面活性剤を含む検体処理液と接触させることを含む、インフルエンザウイルスの免疫測定における検体処理方法。
- 前記検体処理液中の界面活性剤の終濃度が0.005(w/v)%〜8(w/v)%である請求項1記載の方法。
- 前記終濃度が0.5(w/v)%〜4(w/v)%である請求項2記載の方法。
- 前記検体処理液が、塩化物をさらに含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 前記塩化物が、アルカリ金属塩化物である請求項4記載の方法。
- 前記検体処理液中の前記塩化物の終濃度が0.05M〜1.5Mである請求項4又は5記載の方法。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法により処理した検体を、インフルエンザウイルスのマトリックス1タンパク質と抗原抗体反応する抗体又はその抗原結合性断片を用いた免疫測定法に供し、検体中のインフルエンザウイルスを測定することを含む、インフルエンザウイルスの免疫測定法。
- イムノクロマト法である請求項7記載の免疫測定法。
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