JP6428714B2 - 移動式クレーン - Google Patents
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Description
特許文献1の図6に示すように、クレーン作業者が乗り込むキャブなどを備えた上部旋回体と、上部旋回体を旋回自在に下側から支持すると共に、走行を行う下部走行体と、を備えている。その上部旋回体上には、様々な荷物を吊下する作業(クレーン作業)に用いられるフック装置を、吊りロープを介して吊り下げる長いブームと、吊りロープを巻回するウインチと、ブームを起伏させるAフレーム(ガントリ)が備えられている。
上記の「低空頭空間」でのクレーン作業で用いられる移動式クレーンとしては、例えば、特許文献2に開示されたものがある。
特許文献2には、低空頭空間でクレーン作業などを行うことを目的とした専用の移動式クレーンが開示されている。この低空頭空間専用のクレーンは、同文献の図1(b)、図2などに示すように、キャブ、ウインチなどを備えた上部旋回体の上部に、略水平に配置され、且つその水平からやや斜め前方に起伏させることが可能となっているブームを備え、高架下などの高さ制限のある空間でのクレーン作業を可能としている。
しかしながら、高架や橋脚の補強工事の現場では高さ制限があるが故に、例えば特許文献1に開示のような長いブームを用いると、その長い分最少作業半径が大きくなってしまう。その結果、定格総荷重が小さくなってしまうこととなる。
例えば、場所打ち杭を打つ工法のひとつに、全旋回掘削機を使用する場合があるが、その自重は重く、移動のために掘削機を吊り上げるには、作業半径を小さくする必要があるが、上述のように高さに制約を受けている場合、掘削機を吊り上げることができないケースが生じてくる。
上記、一般に用いられている移動式クレーンに特殊な上部ブームを装着すれば、例えば本明細書の図2に示すように、地面(床面)からの高さ「H」mに高架等の障害物のある作業現場でも、作業半径「R1」mまでブームを起伏できるので、重量作業可能である。なお、ブームを長くすると、作業半径を「R2」m以下に短くとれないので、結果的に重量物が吊れなくなってしまう。
しかしながら、このような特殊なクレーンでは、低空頭空間での作業が終わってしまえば、低空頭空間専用ではブーム長さが短すぎることで、通常のクレーン作業(高さ制限のない空間での作業)には使えない、すなわち一般の移動式クレーンで作業する方が高効率であることから、低空頭空間専用の移動式クレーンの稼働率が下がってしまい、作業コストが嵩むこととなる。このような理由から、低空頭空間専用の移動式クレーンを新たに別に用意することは、現実的ではないと考える。
そこで、上記の問題を解決する方法を考慮すると、通常のクレーン作業に使用される移動式クレーンに、通常のクレーン作業時と、低空頭空間での作業時のそれぞれに対応するガントリをユニットごとに、作業毎に交換すればよいことが考えられる。
まず、ガントリを構成するコンプレッションメンバー(前側脚部)を一定長さと仮定して考察すると、テンションメンバーを垂直からクローラクレーン後方に傾斜させていくと、ガントリのピーク位置が低くなることがわかる。
このようなことから、上部旋回体の強度を確保するために、上部旋回体の後端を後方へ伸ばすことが考えられるが、クローラクレーン本体の重量増及び、上部旋回体の後端における旋回半径の増加といった別の課題が生じてしまう虞がある。
よって、テンションメンバーが細長い構造でも曲げがかからないので、十分な強度が得られており、その結果、上部旋回体の軽量化及び、上部旋回体の後端における旋回半径の縮小化が果たせている。
そこで本発明は、上記問題点に鑑み、移動式クレーンにおいて、「低空頭空間」での作業時にはテンションメンバーを上部旋回体の後方に傾斜させた状態にすることで、上方の高さ制限がある「低空頭空間」での作業も行うことができる移動式クレーンを提供することを目的とする。
本発明のかかる移動式クレーンは、上部旋回体の上部に、ブームと、テンションメンバーを有し、且つ前記ブームを起伏させるガントリとが配備されている移動式クレーンにおいて、上方に高さ制限がある空間である「低空頭空間」にてクレーン作業を行うにあたっては、前記テンションメンバーを、前記上部旋回体の後方に傾斜させた状態にして、前記ガントリの高さを、前記低空頭空間のクレーン作業の最小ブーム角にした際における前記ブームの高さと同じまたはより低い位置に設定可能な構成とされていることを特徴とする。
好ましくは、前記上部旋回体に、前記短尺テンションメンバーを取り付ける取付部が設けられており、前記取付部は、前記「低空頭空間」にてクレーン作業時に、前記短尺テンションメンバーに作用する引張力の方向を向き、且つ当該取付部には曲げ力がかからない形状とされているとよい。
好ましくは、前記テンションメンバーは、前記通常クレーン作業時の前記ガントリの高さと、前記低空頭空間のクレーン作業時の前記ガントリの高さを、自在に切換可能とされた伸縮自在のテレスコピック構造とされているとよい。
本実施形態においては、移動式クレーン1のうち、ラチスブーム式クローラクレーンを例に挙げて説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明を具体化した一例であって、その具体例をもって本発明の構成を限定するものではない。従って、本発明の技術的範囲は、本実施形態に開示内容だけに限定されるものではない。また、以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。従って、それらについての詳細な説明は繰返さない。
ここで例えばビルなどの建築物の作業現場といった、クレーン作業において上方に高さ制限がない空間で行われる作業、つまり一般的なクレーン作業のことを、以降の説明においては、単に、通常のクレーン作業と呼ぶこととする。
まず、その対象となるクローラクレーン1の基本的な装置構成について、図2を参照しながら説明する。なお、この図2に関して、クローラクレーン1の構成の一部(例えば、フック装置、吊りロープ、起伏ロープなど)を省略して描いている。
なお、本明細書では、下部走行体2の走行方向と上部旋回体4に備えられたブーム6の軸長方向が一致する位置、すなわちクローラクレーン1の基準位置(ホームポジション)において、上部旋回体4から伸びるように配備されたブーム6及びキャブ5側をクローラクレーン1の前側とし、上部旋回体4に搭載されているガントリ9及びカウンタウェイト8側をクローラクレーン1の後側とする。また、上部旋回体4の幅方向一方側をクローラクレーン1の右方向とし、上部旋回体4の幅方向他方側をクローラクレーン1の左方向とする。これは、キャブ5に搭乗したオペレータから見た方向と一致する。
上部旋回体4は、鋼材で形成され、前後方向の長さが、左右方向の幅より長い板状の枠体である。上部旋回体4の後部の左右両側には、カウンタウェイト8が配備されている。
また、キャブ5の後方には、エンジンやエンジンに関する付帯機器などの駆動部がガード部材内に格納されている。駆動部は、クレーン1の機能(クローラ3の走行、ウインチ7の駆動、ブーム6及びガントリ9の起伏など)を動作させるものである。なお、駆動部には、エンジンのみならず、冷却装置、油圧ポンプ、油圧モータ、コントロールバルブ、作動油タンクなどの付帯機器などが含まれている。
ところで、図2に示すように、本実施形態においては、通常のクレーン作業で用いられるクレーン1の上部旋回体4に直接取り付けられている下部ブーム6aだけを残し、その下部ブーム6aの前端側にコンパクト(短尺)な上部ブーム6bを取り付けた、ブーム6全長を短くしたクレーンである。この上部ブーム6bは、上方に高さ制限がある空間である「低空頭空間」でクレーン作業に用いられる特殊なブームである。
すなわち、ブーム6は、その先端部とガントリ9先端部との間にかけ渡されたガイライン及び起伏ロープによって起伏自在とされている。
コンプレッションメンバー10は、左右方向に所定の間隔で配備された一対の長尺の棒材と、その棒材の間を連結する部材とからなる枠体である。コンプレッションメンバー10は、基端が上部旋回体4に回動自在に取り付けられていて、起伏自在となっている。
図2中の仮想線(一点破線)に示すように、コンプレッションメンバー10、テンションメンバー11ともに、略水平に寝かされた状態が、ガントリ9の格納時の姿勢である。
また、図2中の仮想線(二点破線)に示すように、コンプレッションメンバー10が上部旋回体4に対して後方上向きに傾斜した状態とされ、且つそれを支持するテンションメンバー11が上部旋回体4に対して略垂直に立設された状態、略直角三角形の形状の状態が、通常のクレーン作業の姿勢である。
ところで、本発明は、クレーン作業において上方に高さ制限がない空間での作業、すなわち通常のクレーン作業で用いられるクレーン1において、高架下などの上方に高さ制限がある空間である「低空頭空間」にクレーン1全体を進入させて、その中でクレーン作業ができるように、それに適切な高さにすることができる構造を有するガントリ9を備えたクレーン1である。
また、本発明のクレーン1は、ガントリ9の高さを、ブーム6の高さより低い位置に維持可能な構成とされている。
図1に示すように、例えば、通常のクレーン作業に対応した長尺のテンションメンバーと、低空頭空間の高さに対応した短尺のテンションメンバー11を、少なくとも2種類以上設定しておき、通常のクレーン作業時には、長尺のテンションメンバーを用い、低空頭空間のクレーン作業には、短尺のテンションメンバー11を用いるとよい。
ところで、図1に示すように、上部旋回体4の上面側には、長尺のテンションメンバー乃至は短尺のテンションメンバー11を取り付ける取付部12が形成されている。
すなわち、取付部12は、上端よりも基端が前後方向に長い、言い換えれば側面視で基端が幅広な形状(例えば、略三角形状)とされた板材である。
取付部12を上記の形状とすることで、上部旋回体4(旋回フレーム)の重量の増加、上部旋回体4の後端側の旋回半径の増加を極力抑えた、上部旋回体4の構成となる。
具体的には、テンションメンバー11は、その全長をおよそ3等分した長さの、第1メンバー部材11a、第2メンバー部材11b、第3メンバー部材11cからなる3段構造とされていて、第1メンバー部材11aは第2メンバー部材11bに収容され、第2メンバー部材11bは第3メンバー部材11cに収容される構成となっている。
この第1メンバー部材11aの上端は、ピン22を介してコンプレッションメンバー10の上端に、回動自在に連結されている。
第1メンバー部材11aが第2メンバー部材11b内に収容された状態のときは、その基端はピン22を介して、第2メンバー部材11bの基端に連結される。第1メンバー部材11aが引き出されると、その基端はピン22を介して、第2メンバー部材11bの上端に連結される。
この第2メンバー部材11bは、上記の間隔を空けて、平板材を2本重ね合わせるように配備した構造となっているので、第1メンバー部材11aを挟み込むように収容することが可能となっている。
一方、第1メンバー部材11aのみが引き出されたとき、第2メンバー部材11bは、上端がピン22を介して第1メンバー部材11aの基端に連結され、基端はピン22を介してそのまま第3メンバー部材11cの長手方向中途部に連結される。
第3メンバー部材11cは、上記したテンションメンバー11の約1/3の長さで且つ、所定の厚みを有する一対の平板材で構成されている。この一対の平板材は、所定の間隔を離して配備されていて、その間隔は第2メンバー部材11bの厚みとほぼ同じか、或いは、やや広い間隔である。
第3メンバー部材11cの基端は、ピン22を介して上部旋回体4に設けられている取付部12に、回動自在に連結されている。
なお、各メンバー部材の連結位置を変更可能としていてもよい。この場合、テンションメンバー11の長さを作業現場の高さに応じて、調整することが可能となる。
例えば、第1メンバー部材11aを棒形状乃至は筒形状としておき、第2メンバー部材11bを第1メンバー部材11aが収容可能な内部とされた筒形状としておき、さらに第3メンバー部材11cを第2メンバー部材11bが収容可能な内部とされた筒形状とした、テレスコピック構造としておいてもよい。また、例示した3段のテレスコピック構造でもよいし、2段構造・4段以上の構造など、複数段の構造としてもよい。さらに、テレスコピック構造の各メンバー部材11a〜11cは均等な長さである必要は無く、少なくとも各メンバー部材11a〜11cのうちの一つまたは複数の組み合わせの長さが、予め使用が想定される低空頭作業に適した長さとなるようにしておけばよい。
図3(a)は、ガントリ9の格納状態を示す。
図3(a)に示すように、ガントリ9を構成するコンプレッションメンバー10及びテンションメンバー11は、左右両側のカウンタウェイト8間に、上部旋回体4の上部に略水平に載置された状態、すなわち寝かされた状態である。
また、テンションメンバー11は、第1メンバー部材11aが第2メンバー部材11b内に収容され、その第2メンバー部材11bが第3メンバー部材11c内に収容された状態である。また、コンプレッションメンバー10を起伏動作させる伸縮シリンダ21は、収縮した状態である。
図3(b)は、「低空頭空間」でのクレーン作業時におけるガントリ9の状態を示す。
図3(b)に示すように、コンプレッションメンバー10は、斜め後上方に傾斜した状態である。また、テンションメンバー11は、斜め後上方に傾斜状態であるが、コンプレッションメンバー10よりやや起きた状態である。
このとき、テンションメンバー11は、基端を中心に前方に回動して起こされて、第1メンバー部材11aが第2メンバー部材11bから引き出されている状態である。第1メンバー部材11aの基端と第2メンバー部材11bの上端が、ピン22を介して連結されている。一方、第2メンバー部材11bは、第3メンバー部材11c内に収容された状態である。
「低空頭空間」でのクレーン作業時におけるテンションメンバー11の長さは、テンションメンバー11の全長(通常のクレーン作業時の長さ)に対して、およそ2/3程度となっている。
続いて、通常のクレーン作業を行う場合、伸縮シリンダ21をさらに動作させて、コンプレッションメンバー10を起こしていき、図3(c)に示す状態にする。
図3(c)に示すように、コンプレッションメンバー10は、斜め後上方に傾斜した状態であるが、「低空頭空間」でのクレーン作業時におけるコンプレッションメンバー10の傾きより起きた状態である。また、テンションメンバー11は、ほぼ直立した状態である。
ガントリ9は、上端がテンションメンバー11の基端のほぼ真上に位置した、側面視で直角三角形状となっている。
第1メンバー部材11aの基端と第2メンバー部材11bの上端がピン22を介して連結されるとともに、第2メンバー部材11bの基端と第3メンバー部材11cの上端がピン22を介して連結されている。
なお、ガントリ9を格納するには、上で述べた逆の手順、すなわち図3(c)〜図3(a)の順に、格納動作を行うとよい。
また、テンションメンバー11をテレスコピック構造とすることで、様々な作業現場に応じた専用のテンションメンバーを用意する必要がなく、それぞれの作業現場に応じて容易且つ迅速に、ガントリ9の地面からの高さを切り換えることができる。
以上述べたように、本発明のクレーン1は、地面からの高さを容易に変えることができる構成のガントリ9を配備しているので、高さ制限のない通常でのクレーン作業が行うことができるとともに、高さ制限のある「低空頭空間」でのクレーン作業も行うことができる。
また、本発明のクレーン1を用いれば、「低空頭空間」でのクレーン作業時に、上方の障害物(高架橋等)との干渉を気にせず、安全にクレーン作業を行うことができる。
特に、今回開示された各実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
また、テンションメンバー11に関し、高さを自在に切換できる機能、その高さを切り換えた状態を維持できる形状及び構成あれば、特に限定はしない。たとえば、リンク構造とされていてもよい。
2 下部走行体
3 クローラ
4 上部旋回体
5 キャブ
6 ブーム
7 ウインチ
8 カウンタウェイト
9 ガントリ
10 コンプレッションメンバー(圧縮部材)
11 テンションメンバー(引張部材)
11a 第1メンバー部材
11b 第2メンバー部材
11c 第3メンバー部材
12 取付部
20 固定バー
21 伸縮シリンダ
22 ピン
Claims (4)
- 上部旋回体の上部に、ブームと、テンションメンバーを有し、且つ前記ブームを起伏させるガントリとが配備されている移動式クレーンにおいて、
上方に高さ制限がある空間である「低空頭空間」にてクレーン作業を行うにあたっては、
前記テンションメンバーを、前記上部旋回体の後方に傾斜させた状態にして、
前記ガントリの高さを、前記低空頭空間のクレーン作業の最小ブーム角にした際における前記ブームの高さと同じまたはより低い位置に設定可能な構成とされ、
前記テンションメンバーに関し、長さの異なる長尺のものと、短尺のものを少なくとも2種類以上設定しておき、
前記低空頭空間のクレーン作業には、前記長尺のテンションメンバーから前記短尺のテンションメンバーに取り換え可能な
ことを特徴とする移動式クレーン。 - 前記低空頭空間にてクレーン作業を行う際には、
前記テンションメンバーとして低空頭作業用の短尺テンションメンバーを取り付けて、
当該短尺テンションメンバーを、前記上部旋回体の後方に傾斜させた状態にして、
前記ガントリの高さを、前記ブームの高さと同じまたはより低い位置に維持可能な構成とされている
ことを特徴とする請求項1に記載の移動式クレーン。 - 前記上部旋回体に、前記短尺テンションメンバーを取り付ける取付部が設けられており、
前記取付部は、前記「低空頭空間」にてクレーン作業時に、前記短尺テンションメンバーに作用する引張力の方向を向き、且つ当該取付部には曲げ力がかからない形状とされている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の移動式クレーン。 - 前記ガントリの高さを、前記ブームの高さより低い位置に維持可能な構成とされている
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の移動式クレーン。
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