JP2018012925A - 傾斜地用土木作業設備 - Google Patents

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Kenji Sakai
賢治 酒井
俊也 中野
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俊也 中野
淳一 遠藤
Junichi Endo
淳一 遠藤
治 望月
Osamu Mochizuki
治 望月
厚 名取
Atsushi Natori
厚 名取
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Abstract

【課題】設備経済的な負担の増大を抑制しつつ、大型で大重量の作業車でも土木作業面の山側へ助勢可能な傾斜地用土木作業設備を提供する。
【解決手段】自走式の作業車2と、土木作業面3の山側へ作業車2を助勢する助勢装置4とを備えた傾斜地用土木作業設備1であって、助勢装置4は、作業車2に設けられた動滑車5と、土木作業面3の第1側3aの谷側に設置されたウィンチ6と、土木作業面3の山側に左右に間隔をあけて設けられた少なくとも2個の定滑車8とを備え、ウィンチ6から繰り出された昇降用ロープ9は、定滑車8のうちの、作業車2により土木作業を行う土木作業面の山側に、左右に間隔をあけて配置される近位側定滑車8P及び遠位側定滑車8Dと、作業車3に設けられた動滑車5とに、近位側定滑車8P、動滑車5、遠位側定滑車8Dの順番に巻き掛けられて、作業車2に連結されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、山の斜面などの傾斜地における土木作業に好適に利用可能な傾斜地用土木作業設備に関する。
山の斜面などの傾斜地における土木作業に好適な土木作業設備として、土木作業面よりも上方位置(山側)に左右1対の固定点を設け、ブルドーザーやバックホウ等の作業車に左右1対のウィンチを設置して、両ウィンチから繰り出した昇降用ロープを前記固定点にそれぞれ固定し、作業車の上下移動や左右移動に応じて両ウィンチにより昇降用ロープを巻き取ったり、繰り出したりすることで、作業車の移動を助勢するように構成したものが提案され、実用化されている(例えば、特許文献1参照。)。
ところが、前記土木作業設備では、作業車の上部旋回体にウィンチを固定している関係上、上部旋回体に組み付けたバケットアームを旋回させると、上部旋回体とともにウィンチが旋回し、昇降用ロープが引っ張られるので、これを防止するためバケットアームを常時下側へ向けて作業する必要があり、土木作業の作業性が大変悪かった。そこで、これを防止するため、作業車の下部走行体に環状部材を固定し、環状部材に沿って移動自在に連結部材を設け、左右1対の滑車を連結部材に固定し、両滑車に昇降用ロープを巻き掛けて、昇降用ロープをそれぞれ巻き取ったり、繰り出したりすることで、作業車の向きを変えたときでも、環状部材に沿って連結部材が回動することで、両滑車が作業車の山側に常時位置するように構成したものも提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
また、自走式の作業車と、傾斜地の土木作業面の上側へ作業車を助勢する助勢装置とを備え、ウィンチから繰り出した昇降用ロープの途中部を、少なくとも土木作業面の第1側に設けた複数の定滑車により、土木作業面の外縁に沿って着脱可能に案内し、昇降用ロープの先端部を土木作業面の外縁における第2側に設置の固定点に固定し、第1側の定滑車と、昇降用ロープの先端部を固定した固定点又は第2側に設置の定滑車との間に張設される昇降用ロープを土木作業面側へ繰り出して、その途中部に作業車の動滑車を引っ掛けた傾斜地用土木作業設備も提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
特開平4−120319号公報 特開2003−27520号公報 特開2007−191932号公報
ところで、特許文献3記載の傾斜地用土木作業設備では、動滑車に巻き掛けた昇降用ロープにより、ウィンチによる巻き取り力の2倍の力で、作業車を土木作業面の山側へ助勢して吊り上げることができるが、現状の作業車よりも大型で大重量の作業車を助勢するためには、それに応じてウィンチとして巻き取り力の大きな大型なものを採用する必要があり、設備経済的な負担が大きくなるという問題があった。
本発明の目的は、設備経済的な負担の増大を抑制しつつ、大型で大重量の作業車でも土木作業面の山側へ助勢可能な傾斜地用土木作業設備を提供することである。
本発明は、以下の発明を包含する。
(1)自走式の作業車と、傾斜地における土木作業面の山側へ前記作業車を助勢する助勢装置とを備えた傾斜地用土木作業設備であって、
前記助勢装置は、
前記作業車に設けられた動滑車と、
前記土木作業面の第1側の谷側に設置されたウィンチと、
前記土木作業面の山側に左右に間隔をあけて設けられた少なくとも2個の定滑車と、
を備え、
前記ウィンチから繰り出された昇降用ロープは、前記定滑車のうちの、前記作業車により土木作業を行う土木作業面の山側に、左右に間隔をあけて配置される、前記ウィンチに対する近位側の近位側定滑車及び遠位側の遠位側定滑車と、前記作業車に設けられた動滑車とに、近位側定滑車、動滑車、遠位側定滑車の順番に巻き掛けられて、前記作業車に連結されている、
ことを特徴とする傾斜地用土木作業設備。
この傾斜地用土木作業設備では、前記ウィンチから繰り出される昇降用ロープが、近位側定滑車と動滑車と遠位側定滑車とに順番に巻き掛けられて、遠位側定滑車から繰り出された昇降用ロープが作業車に連結されている。そして、近位側定滑車と動滑車間及び遠位側定滑車と動滑車間に配置される昇降用ロープの本数が3本以上の助勢装置(以下、近位側定滑車と動滑車間及び遠位側定滑車と動滑車間に配置される昇降用ロープの本数に応じて、2本方式の助勢装置、3本方式の助勢装置、4本方式の助勢装置などと称することがある。)を構成できるので、特許文献3記載の傾斜地用土木作業設備のように、近位側定滑車と動滑車間及び遠位側定滑車と動滑車間に配置される昇降用ロープの本数が2本の2本方式の助勢装置と比較して、ウィンチによる昇降用ロープの巻き取り量は増えるものの、ウィンチとして大型な大出力のものを採用しないでも、ウィンチによる作業車の山側への助勢力を、ウィンチによる昇降用ロープの巻き取り力の3倍以上であって、特許文献3記載の傾斜地用土木作業設備の1.5倍以上に設定できる。
(2)前記昇降用ロープの先端部が作業車に固定されている(1)記載の傾斜地用土木作業設備。この発明では、3本方式の助勢装置を構成できるので、ウィンチによる作業車の山側への助勢力を、ウィンチによる昇降用ロープの巻き取り力の3倍であって、特許文献3記載の傾斜地用土木作業設備の1.5倍に設定することができ、しかも特許文献3記載の傾斜地用土木作業設備を採用している利用者に関しては、昇降用ロープの先端部を作業車に固定するだけでよいので、設備経済的な負担もないので好ましい。
(3)前記作業車に第1及び第2の2個の動滑車が設けられ、前記ウィンチから繰り出された昇降用ロープの途中部が、前記ウィンチ側から順番に、近位側定滑車と第1動滑車と遠位側定滑車と第2動滑車とに順番に巻き掛けられ、前記第2動滑車から繰り出された昇降用ロープの先端部が遠位側定滑車又は近位側定滑車の固定点に固定されている(1)記載の傾斜地用土木作業設備。この発明では、ウィンチによる作業車の山側への助勢力を、ウィンチによる昇降用ロープの巻き取り力の4倍であって、特許文献3記載の傾斜地用土木作業設備の2倍に設定することができ、しかも動滑車を1つ増やすだけでよいので、ウィンチを新設する場合と比較して、設備経済的な負担も大幅に軽減できる。
(4)前記2個の動滑車が同軸上に相対回転自在に設けられている(3)記載の傾斜地用土木作業設備。この場合には、土木作業時に2個の動滑車が干渉することもないので、土木作業の作業性や安全性を向上できるとともに、土木作業設備の耐久性を向上できる。
(5)前記動滑車を作業車に対して上下方向の軸心周りに回動自在に連結する連結手段が設けられている(1)〜(4)のいずれか記載の傾斜地用土木作業設備。この発明では、作業車の上部旋回体を旋回させたときや、作業車の向きを変えるために下部走行体を旋回させたときにおいても、作業車に対する動滑車の連結位置を連結手段により山側に常時調整できるので、平地で操作する場合と同様に作業車を操縦することが可能となり、作業車による作業性を格段に向上できる。
(6)前記近位側定滑車と動滑車と遠位側定滑車とにV字状に張設される昇降用ロープの頂角が90°以下に設定されている(1)〜(5)のいずれか記載の傾斜地用土木作業設備。V字状に張設される昇降用ロープの頂角が大きくなると、それに応じて山側への助勢力が小さくなるので、該頂角は90°以下に設定することが好ましい。
(7)前記定滑車が土木作業面の山側に左右に間隔をあけて3点以上設けられている(1)〜(6)のいずれか記載の傾斜地用土木作業設備。この発明では、土木作業位置に応じて近位側定滑車及び遠位側定滑車として採用する定滑車を順次切り換えることで、V字状に張設される昇降用ロープの頂角が大きくなることを防止して、ウィンチに対する負荷の増大を抑制しつつ、左右方向に長い土木作業面に対する土木作業を効率的に行うことができる。
本発明に係る傾斜地用土木作業設備によれば、近位側定滑車と動滑車間及び遠位側定滑車と動滑車間に配置される昇降用ロープの本数が3本以上の助勢装置を構成できるので、特許文献3記載の傾斜地用土木作業設備のように、2本方式の助勢装置と比較して、ウィンチによる昇降用ロープの巻き取り量は増えるものの、ウィンチとして大型な大出力のものを採用しないでも、ウィンチによる作業車の山側への助勢力を、ウィンチによる昇降用ロープの巻き取り力の3倍以上であって、特許文献3記載の傾斜地用土木作業設備の1.5倍以上に設定できる。
傾斜地用土木作業設備の概略説明図 作業車の側面図 助勢装置の要部平面図 図4(A)は動滑車の平面図、図4(B)は動滑車の側面図 固定点及び補強点の設置構造の説明図 他の構成の固定点の設置構造の説明図 動滑車と連結手段との連結構造の他の連説明図 昇降用ロープの張り方を変更した他の構成の傾斜地用土木作業設備の概略説明図 同設備に用いる動滑車の側面図
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、傾斜地用土木作業設備1は、自走式の作業車2と、傾斜地の土木作業面3の山側(上部側)へ作業車2を助勢する助勢装置4とを備え、助勢装置4は、作業車2に設けられた動滑車5と、土木作業面3の第1側の谷側(下部側)に設置されたウィンチ6と、土木作業面3の山側に左右に間隔をあけて設けられた少なくとも2個の定滑車8とを備えている。そして、ウィンチ6から繰り出された昇降用ロープ9は、定滑車8のうちの土木作業を行う土木作業面3の山側よりもウィンチ6側の定滑車8に順次巻き掛けられて土木作業面3の山側に沿って案内される。その後、昇降用ロープは、定滑車8のうちの土木作業を行う土木作業面3の山側に、左右に間隔をあけて配置される、ウィンチ6に対する近位側の近位側定滑車8P及び遠位側の遠位側定滑車8Dと、作業車2に設けた動滑車5とに、近位側定滑車8P、動滑車5、遠位側定滑車8Dの順番で巻き掛けられてから、作業車2に連結固定される。なお、この傾斜地用土木作業設備1は、作業車2及び助勢装置4を遠隔操作するための周知の構成の無線操縦装置(図示略)を備えており、作業車2から離れた安全な位置において、作業車2及び助勢装置4を遠隔操作することで、作業者の安全性を確保できるように構成されている。
作業車2としては、土木作業面3に対して土木作業を実施可能なものであれば、油圧ショベルやブルドーザーなど、任意の構成の作業機械を採用することができる。図2に示す作業車2は、クローラ式の下部走行部10と、下部走行部10に旋回可能に設けた上部旋回部11とを備えた油圧ショベルで、上部旋回部11に回動自在に取り付けたブーム12と、ブーム12に回動自在に取り付けたアーム13とを介してバケット14を回動自在に支持するとともに、複数の油圧シリンダ15によりバケット14を操作可能となした周知の構成のものである。尚、バケット14に代えて、アーム13の先端部に削岩機等を着脱自在に取り付けることも可能である。
ウィンチ6は、図1に示すように、昇降用ロープ9を巻装したドラム16と、ドラム16を正方向と逆方向とに切り替え可能に回転駆動する駆動手段17とを備え、昇降用ロープ9をドラム16から繰り出したり、ドラム16に巻き取ったりできるようになした周知の構成のものである。昇降用ロープ9は、十分な引張強度を確保するためワイヤロープで構成することが好ましいが、昇降用ロープ9に作用する荷重に耐え得る構成のものであれば、繊維ロープなどを採用することもできる。
次に、動滑車5及び定滑車8について説明するが、両者は同じ構成のものなので、動滑車5についてのみ説明し、定滑車8に関しては、動滑車5と同一部材には同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。また、ここでは、動滑車5における作業車2側(定滑車8では傾斜地に対する固定側)を後端側、遊端側を前端側として、前後方向を定義して説明する。
動滑車5について説明すると、図3、図4に示すように、昇降用ロープ9が掛けられる滑車本体20が設けられ、滑車本体20の上下両側には上面板21と下面板22とが設けられている。上面板21及び下面板22は、滑車本体20よりもやや大きな平面サイズの取付板23と、それを補強する前後方向に細長い補強板24とでそれぞれ構成され、上面板21及び下面板22はその先端部間に設けたスペーサ板25で連結されている。上面板21及び下面板22の略中央部には回転軸26が架設状に設けられ、滑車本体20は上面板21及び下面板22間において回転軸26に回転自在に支持されている。
上面板21は本体部21aと開閉体21bとに前後に分割構成され、開閉体21bは、本体部21aの端部に設けた枢支ピン27を中心に、図4(B)に実線で図示の閉鎖位置と、仮想線で図示の開放位置とにわたって回動自在に支持され、開閉体21bを開放位置に回動させた状態で、滑車本体20に対して昇降用ロープ9を着脱できるように構成されている。開閉体21bを閉鎖位置に保持するため、下側の取付板23の後端部には連結ブロック28が固定され、連結ブロック28には上方へ突出する連結ピン29が一体的に設けられ、開閉体21bの後端部には連結ピン29が挿通可能なピン孔30が形成され、開閉体21bを閉鎖位置に回動させて、連結ピン29をピン孔30に装着した状態で、連結ピン29の先端部に図示外のピン部材を装着することで、開閉体21bを閉鎖位置に保持できるように構成されている。連結ブロック28には後方へ延びる連結具32が取り付けられ、定滑車8及び動滑車5は、連結具32の後端部に着脱自在に取り付けたシャックル33を介して傾斜地に設けた固定点7及び作業車2の連結手段40にそれぞれ取り付けられている。ただし、動滑車5と定滑車8とは、異なる構成のものを採用することも可能であるし、上述した以外の周知の構成のものを採用できる。
次に、作業車2を中心に動滑車5を回動自在に連結するための連結手段40について説明する。なお、ここでは図2に示す作業車2の前後左右を基準に前後左右を定義して説明する。
連結手段40について説明すると、図2、図3に示すように、作業車2の下部走行部10と上部旋回部11間において下部走行部10には円板状の支持板41が略水平に設けられ、支持板41の外周部にはリング状部材42が全周にわたって設けられ、リング状部材42には支持板41の上下両側へ突出する案内部42aが形成されている。支持板41の外周部には側面視コ字状の可動部材43が外嵌状に設けられ、可動部材43にはリング状部材42の案内部42aの内周面及び外周面に当接する複数のローラ44と、リング状部材42の上面及び下面に当接する複数のローラ45が設けられ、可動部材43は、これら複数のローラ44、45により、リング状部材42に沿った方向にのみ回動自在に案内されている。可動部材43の前面には左右1対のブラケット46が縦向きに固定され、両ブラケット46には略水平な枢支軸47を中心に連結部材48が回動自在に支持され、連結部材48の前部には上下1対の連結板48aが略水平に設けられ、上下の連結板48aには連結軸49が略鉛直方向に設けられ、動滑車5はシャックル33により連結軸49に掛け止めされて、可動部材43とともにリング状部材42に沿って回動自在に作業車2に取り付けられている。また、動滑車5を、枢支軸47を中心に上下方向に回動自在に支持するとともに、連結軸49を中心に左右方向に回動自在に支持することで、凸凹な土木作業面3での土木作業時における作業車2の揺動等を吸収して、動滑車5と昇降用ロープ9とが常時適正な位置関係に維持できるように構成されている。尚、図7に示すように、連結軸49に対して連結用ロープ70を用いて動滑車5を作業車2に連結することもできる。この場合には、連結用ロープ70の長さをバケット14の移動範囲よりも長く設定することで、動滑車5や昇降用ロープ9に邪魔されることなく、作業車2の上側の土木作業面3に対して土木作業を施すことができるので好ましい。
昇降用ロープ9の先端部を作業車2に連結するため、連結部材48の前部に設けられる上下1対の連結板48aの左部及び右部には取付孔48bがそれぞれ形成され、左側の取付孔48bには連結ピン75が上下方向に固定されている。昇降用ロープ9の先端部はシャックル76を介して連結ピン75に着脱可能に連結されて、シャックル76と連結ピン75と連結手段40とを介して作業車2に動滑車5とともに連結されている。なお、図3では、土木作業面3の第1側3aの下部にウィンチ6を配置するため、左側の取付孔48bに連結ピン75を固定したが、土木作業面3の第2側3bの下部にウィンチ6を配置する場合には、遠位側定滑車8Dが動滑車5よりも右側に配置されるので、右側の取付孔48bに連結ピン75を固定して、遠位側定滑車8Dから繰り出される昇降用ロープ9の先端部を連結ピン75にシャックル76を介して連結することになる。
次に、定滑車8を固定するために傾斜地に設けた固定点7について説明する。
図5に示すように、固定点7は、土木作業面3の外縁の適所に生育する樹木で構成され、定滑車8は、ワイヤロープや繊維ロープなどからなるロープ50を固定点7としての樹木に巻き掛けて、ロープ50の両端部に形成したアイに定滑車8のシャックル33を掛け止めすることにより、固定点7に固定設置されている。
傾斜地に対する固定点7の設置強度を高めるため、昇降用ロープ9による固定点7の引っ張り側とは反対側には、該反対側へ固定点7を引っ張って固定点7の横倒れを防止する補強手段51が設けられている。この補強手段51について説明すると、固定点7に対する昇降用ロープ9の引っ張り側とは反対側に生育する1乃至複数本の樹木が補強点52として設けられ、固定点7及び補強点52としての樹木にはロープ54がそれぞれ巻き掛けられている。両ロープ54の両端部のアイにはシャックル55、56がそれぞれ取り付けられ、一方のシャックル55にはターンバックル57の一端部が連結され、他方のシャックル56には補強用ロープ53の一端が連結されている。ターンバックル57の他端部と補強用ロープ53の他端部とはシャックル58で連結され、ターンバックル57を回転操作して、固定点7と補強点52間に一定の引っ張り力を作用させ、昇降用ロープ9の張力による固定点7の横倒れを防止できるように構成されている。但し、この補強手段51は、任意の個数設けることができるし、固定点7の設置強度を十分に確保できる場合には省略することも可能である。
尚、本実施の形態では、土木作業面3付近の傾斜地に生育する樹木を固定点7及び補強点52として利用したが、適当な樹木が生育していない場合には、図6に示す固定点65のように、固定点65の施工位置における傾斜地に、一定間隔をあけて深さ2〜3mの1対の孔60を左右に間隔をあけて形成して、該孔60にアンカーボルト61をセットした状態で、コンクリート62を流し込んで、1対のアンカーボルト61を相互に一定間隔をあけて傾斜地に埋設状に固定し、両アンカーボルト61の上端部を連結する連結板63を傾斜地に略平行に固定し、この固定点65を固定点7及び補強点52に代えて用いることができる。この場合には、この連結板63の途中部に形成した取付孔64にロープ50を挿通させ、このロープ50の両端部に形成したアイにシャックル33を用いて定滑車8を連結したり、取付孔64にロープ54を挿通させ、このロープ54の両端部に形成したアイにシャックル56を用いて補強用ロープ53を連結したりすることになる。尚、固定点7及び補強点52としては、上述した以外の任意の構成のものを採用することもできる。
次に、前記傾斜地用土木作業設備1を用いた土木作業方法について説明する。
先ず、設営工程において、図1に示すように、土木作業面3の外縁に沿って間隔をあけて複数の固定点7を設け、これら複数の固定点7に定滑車8を取り付けるとともに、土木作業面3の第1側3aの下側にウィンチ6を設置する。次に、ウィンチ6から繰り出した昇降用ロープ9を複数の定滑車8に巻き掛けて、土木作業面3の外縁に沿って第1側3aから第2側3bへ案内するとともに、昇降用ロープ9の先端部を作業車2にシャックル76で連結固定する。次に、複数の定滑車8のうちの土木作業を施す土木作業面3の山側に左右に間隔をあけて配置される、ウィンチ6に対する近位側の近位側定滑車8Pと、ウィンチ6に対する遠位側の遠位側定滑車8D間に張設される昇降用ロープ9を土木作業面3側へ繰り出して、その途中部に作業車2の動滑車5を引っ掛け、傾斜地用土木作業設備1を土木作業面3に設営する。また、土木作業現場の下側へ土砂等が落下しないように、予め土木作業面3の下端縁に沿ってフェンスFを設置する。尚、固定点7の個数は、本実施の形態では、土木作業面3の上側に左右方向に間隔をあけて3個設けたが、土木作業面3の高さや左右方向幅に応じて任意に設定できる。また、土木作業面3の上側に配置される定滑車8は、近位側定滑車8Pと動滑車5と遠位側定滑車8DとにV字状に張設される昇降用ロープ9の頂角θの最大値が90°以下になるように、左右方向に対して例えば10m〜30mの間隔をあけて配置するとともに、土木作業面3の外縁よりも例えば5m〜15m山側の傾斜地に配置することが好ましい。
次に、作業工程において、作業車2を目視可能な安全な場所においてウィンチ6及び作業車2を遠隔操作して、昇降用ロープ9が弛まないようにウィンチ6を操作しながら、作業車2を操作して土木作業面3に対して必要な土木作業を施すことになる。このとき、作業車2の土木作業面3の上側への移動は、作業車2のクローラ式の下部走行部10による走行と、ウィンチ6による昇降用ロープ9の巻き上げ力によりなされ、また左右方向及び下方への移動は、昇降用ロープ9に一定の張力を作用させて作業車2の横転を防止しつつ、平地での移動と同様に、下部走行部10により、進む方向へ作業車2を旋回させて、走行することになる。作業車2の移動可能な範囲は、近位側定滑車8Pと遠位側定滑車8D間の領域内で、しかも頂角θが90°以下となるような範囲内で作業を行うことになる。
こうして、土木作業面3の上部に対する土木作業を完了した後、次のロープ掛替え工程において、遠位側定滑車8Dに掛けられている昇降用ロープ9を外すとともに動滑車5に掛けられている昇降用ロープ9を外し、次に作業を行う土木作業面3の上側の左右の定滑車8間の昇降用ロープ9を土木作業面3側へ繰り出して、その途中部を動滑車5に引っ掛けて、昇降用ロープ9を掛け替えることになる。
この土木作業設備1では、3本の昇降用ロープ9で作業車2を支持する3本方式の助勢装置4を構成できるので、特許文献3記載の傾斜地用土木作業設備1のように、2本方式の助勢装置と比較して、ウィンチ6による昇降用ロープ9の巻き取り量は増えるものの、ウィンチ6として大型な大出力のものを採用しないでも、ウィンチ6による作業車2の山側への助勢力を、ウィンチ6による昇降用ロープ9の巻き取り力の3倍であって、特許文献3記載の傾斜地用土木作業設備1の1.5倍に設定できる。しかも特許文献3記載の傾斜地用土木作業設備1を採用している利用者に関しては、昇降用ロープ9の先端部を作業車2に固定するだけでよいので、設備経済的な負担もないので好ましい。また、作業車2の上部旋回体11を旋回させたときや、作業車2の向きを変えるために下部走行体10を旋回させたときにおいても、作業車2に対する動滑車5の連結位置を連結手段40により山側に常時調整できるので、平地で操作する場合と同様に作業車2を操縦することが可能となり、作業車2による作業性を格段に向上できる。
なお、作業車2に設ける動滑車5の個数や近位側定滑車8Pや遠位側定滑車8Dの個数を増やすことで、近位側定滑車8Pと動滑車5間及び遠位側定滑車8Dと動滑車5間に配置される昇降用ロープ9の本数が4本以上の助勢装置を構成することもできる。ただし、作業車2を吊り下げる昇降用ロープ9の本数が増えると、それに応じてウィンチ6による昇降用ロープ9の巻き取り長さも長くなり、ウィンチ6が大型になるとともに、動滑車5や近位側定滑車8Pや遠位側定滑車8Dの構造が複雑になるので、3本式の助勢装置4又は4本式の助勢装置を採用することが好ましい。
4本式の助勢装置4Aを採用する場合には、動滑車5に代えて、図9に示す動滑車5Aのように、前記動滑車5の下側に、下面板22を取り外した前記動滑車5を、上下を逆にして、重ね合わせて結合し、回転軸26に代えて設けた回転軸26Aに対して相対回転自在に上下1対の滑車本体20を設けた動滑車を採用することになる。ただし、動滑車5Aとしては、上下1対の滑車本体20を回転軸26Aに相対回転自在に枢支したものであれば、図9に示す以外の構成の動滑車を採用することもできる。また、2つの滑車本体20は、同じ直径のものを採用することが好ましいが、異なる直径のものを採用することもできる。
そして、図8に示すように、ウィンチ6から繰り出した昇降用ロープ9の途中部を、ウィンチ6から繰り出した昇降用ロープ9を複数の定滑車8に巻き掛けて、土木作業面3の外縁に沿って第1側3aから第2側3bへ案内するとともに、昇降用ロープ9の先端部を近位側定滑車8Pの固定点7に固定する。次に、近位側定滑車8Pと遠位側定滑車8D間に張設される2本の昇降用ロープ9を土木作業面3側へ繰り出して、動滑車5Aの2つの滑車本体20にそれぞれ巻き掛けて、土木作業設備1Aを設置することになる。
この4本式の助勢装置4Aを備えた土木作業設備1Aでは、ウィンチ6による作業車2の山側への助勢力を、ウィンチ6による昇降用ロープ9の巻き取り力の4倍に設定することができ、しかも動滑車5に代えて、2つの滑車本体20を有する動滑車5Aを用いるだけでよいので、ウィンチ6を新設する場合と比較して、設備経済的な負担も大幅に軽減できる。
なお、図8に示す助勢装置4Aのように、昇降用ロープ9の先端部を近位側定滑車8Pの固定点7に固定すると、作業車2を左右に2本ずつ配置される昇降用ロープ9でバランスよく支持することができるので好ましい。また、昇降用ロープ9の先端部は、土木作業面3の上部の任意の位置に固定することができるが、近位側定滑車8Pや遠位側定滑車8Dの固定点7に固定すると、固定点7の個数が増えることもないので好ましい。更に、2個の動滑車5を個別に連結手段40に回動自在に設けることも可能であるが、前述のように回転軸26Aに同軸上に配置した2個の滑車本体20を有する動滑車5を用いると、動滑車5同士の干渉を防止でき、作業の安定性や安全性を向上できるので好ましい。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲においてその構成を変更し得ることは勿論である。
1 傾斜地用土木作業設備
2 作業車
3 土木作業面
3a 第1側
3b 第2側
4 助勢装置
5 動滑車
6 ウィンチ
7 固定点
8 定滑車
8D 遠位側定滑車
8P 近位側定滑車
9 昇降用ロープ
10 下部走行部
11 上部旋回部
12 ブーム
13 アーム
14 バケット
15 油圧シリンダ
16 ドラム
17 駆動手段
20 滑車本体
21 上面板
21a 本体部
21b 開閉体
22 下面板
23 取付板
24 補強板
25 スペーサ板
26 回転軸
27 枢支ピン
28 連結ブロック
29 連結ピン
30 ピン孔
32 連結具
33 シャックル
40 連結手段
41 支持板
42 リング状部材
42a 案内部
43 可動部材
44 ローラ
45 ローラ
46 ブラケット
47 枢支軸
48 連結部材
48a 連結板
48b 取付孔
49 連結軸
50 ロープ
51 補強手段
52 補強点
53 補強用ロープ
54 ロープ
55 シャックル
56 シャックル
57 ターンバックル
58 シャックル
60 孔
61 アンカーボルト
62 コンクリート
63 連結板
64 取付孔
65 固定点
70 連結用ロープ
1A 土木作業設備
4A 助勢装置
5A 動滑車
26A 回転軸
75 連結ピン
76 シャックル
F フェンス

Claims (7)

  1. 自走式の作業車と、傾斜地における土木作業面の山側へ前記作業車を助勢する助勢装置とを備えた傾斜地用土木作業設備であって、
    前記助勢装置は、
    前記作業車に設けられた動滑車と、
    前記土木作業面の第1側の谷側に設置されたウィンチと、
    前記土木作業面の山側に左右に間隔をあけて設けられた少なくとも2個の定滑車と、
    を備え、
    前記ウィンチから繰り出された昇降用ロープは、前記定滑車のうちの、前記作業車により土木作業を行う土木作業面の山側に、左右に間隔をあけて配置される、前記ウィンチに対する近位側の近位側定滑車及び遠位側の遠位側定滑車と、前記作業車に設けられた動滑車とに、近位側定滑車、動滑車、遠位側定滑車の順番に巻き掛けられて、前記作業車に連結されている、
    ことを特徴とする傾斜地用土木作業設備。
  2. 前記昇降用ロープの先端部が作業車に固定されている請求項1記載の傾斜地用土木作業設備。
  3. 前記作業車に第1及び第2の2個の動滑車が設けられ、前記ウィンチから繰り出された昇降用ロープの途中部が、前記ウィンチ側から順番に、近位側定滑車と第1動滑車と遠位側定滑車と第2動滑車とに順番に巻き掛けられ、前記第2動滑車から繰り出された昇降用ロープの先端部が遠位側定滑車又は近位側定滑車の固定点に固定されている請求項1記載の傾斜地用土木作業設備。
  4. 前記2個の動滑車が同軸上に相対回転自在に設けられている請求項3記載の傾斜地用土木作業設備。
  5. 前記動滑車を作業車に対して上下方向の軸心周りに回動自在に連結する連結手段が設けられている請求項1又は2記載の傾斜地用土木作業設備。
  6. 前記近位側定滑車と動滑車と遠位側定滑車とにV字状に張設される昇降用ロープの頂角が90°以下に設定されている請求項1〜5のいずれか1項記載の傾斜地用土木作業設備。
  7. 前記定滑車が土木作業面の山側に左右に間隔をあけて3点以上設けられている請求項1〜6のいずれか1項記載の傾斜地用土木作業設備。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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