明瞭化のため、本発明の範囲には、以下に一般的にまたは好ましい範囲として述べる定義および条件のあらゆる所望の組合せが包含されることに留意されたい。特段の指定がない限り、百分率は全て重量百分率である。特段の指定がない限り、数値は全て室温(RT)=23±2℃および標準状態圧力すなわち1.0barにおけるものである。
驚くべきことに、本発明の複合体を製造において、いかなる種類の接着促進剤も使用することなく、依然としてDIN ISO 813に基づく90°剥離試験による接着強度が少なくとも3N/mmとなる高い接着値を達成すると共に、エラストマー部分の引張破壊応力を少なくとも10MPaとし、エラストマー部分の引張破壊ひずみを少なくとも300%とすることが可能である。したがって、好ましくは、本発明によるポリアミド部材およびエラストマー部材の間には接着促進剤を一切使用しない。
好ましくは、本発明による複合部材は直接接着により得られる。
本発明の好ましい主題は、少なくとも1種のポリアミド成形用組成物から製造される少なくとも1種の部材と、少なくとも1種のエラストマーから製造される少なくとも1種の部材とから構成される複合部材であって、ポリアミド成形用組成物が、
a)ポリアミドを60〜99.9重量部、好ましくは75〜99.8重量部、より好ましくは85〜99.7重量部、非常に好ましくは88〜99.5重量部と、
b)RTで液状である少なくとも1種のポリブタジエンコポリマーを0.1〜40重量部、好ましくは0.2〜25重量部、より好ましくは0.3〜15重量部、非常に好ましくは0.5〜12重量部と
の混合物を少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも45重量%、より好ましくは少なくとも55重量%、特に好ましくは少なくとも65重量%含み、a)およびb)の重量部の総和は100であり、エラストマー部材が元素硫黄で加硫または架橋されるゴムから製造されることを特徴とする、複合部材である。
本発明のさらなる主題は、この種の複合部材を製造するための方法に加えて、この複合体における、ポリアミドをベースとする成形体と、元素硫黄で架橋または加硫されるゴムから得ることができるエラストマー部分との接着を改善するためのポリブタジエンコポリマーの使用にある。
本発明による、エラストマー部分がポリアミド部分に強固に結合しているとは、DIN ISO 813に基づく90°剥離試験における接着強度が少なくとも3N/mmであり、エラストマー部分の引張破壊応力が少なくとも10MPaであり、エラストマー部分の引張破壊ひずみが少なくとも300%であることを意味する。
本発明によれば、ポリアミド成形用組成物から得ることができる部材と、元素硫黄で加硫または架橋されるゴムから得ることができるエラストマー部分から構成される部材との間の強固な結合は、DIN ISO 813に基づく90°剥離試験による接着強度が少なくとも3N/mmであることを特徴とする。3N/mmを下回る接着強度は強固な結合を得るには低過ぎる。3N/mmを下回る低い接着強度は、工業的実施においては集合接着(assembly adhesion)とも称される。ポリアミド部材およびエラストマー部材の間の接着強度の下限値である3N/mmは、結合が強固であることを判断する有用な基準であることが分かっている。例えば特開2010−269481A2号公報には、ポリアミド部材およびエラストマー部材の間の結合に関し、剥離試験により測定された接着強度を次のように記載している:<3N/mm:不可、≧3N/mmかつ≦4N/mm:良好、>4N/mm:優れている。
引張破壊応力または破壊応力および引張破壊ひずみまたは破壊ひずみは引張試験で測定される材料の試験パラメータである(F.Roethemeyer,F.Sommer“Kautschuktechnologie”,第2改訂版,Carl Hanser Verlag Munich Vienna,2006年,494〜496頁;Die Kunststoffe−Chemie,Physik,Technologie[Plastics−Chemistry,Physics,Technology],編集B.Carlowitz,Carl Hanser Verlag Munich Vienna,1990年,628〜633頁)。DIN 53504には、加硫ゴムおよび熱可塑性ゴムの引張応力/ひずみ特性の測定方法が記載されている。測定できる特性は引張強さ、破壊応力、破壊ひずみ、所定のひずみでの応力、所定応力伸び、降伏引張応力および降伏引張ひずみである。引張試験は、試験片を、試験片が破断するまで一定の引張速度で伸長し、必要な力および長さの変化を記録することを含む。本発明に関する引張破壊応力および引張破壊ひずみはDIN 53504に準ずる引張試験により測定される。引裂強度とも称される引張破壊応力σRは、試験片が破断した瞬間に測定された力FRを試験片の初期断面積A0で除した商として定義される。引張破壊応力はN/mm2またはMPaで報告する。引張破壊ひずみεRは、試験片が破断した瞬間に測定された長さの変化LR−L0を初期に測定された試験片の長さL0で除した商として定義される。引張破壊ひずみは百分率で報告される。
引張破壊応力が少なくとも10MPaであること、および引張破壊ひずみが少なくとも300%であることは、工業的に利用可能なエラストマー部分であることを表している。工業的に利用可能なエラストマーは、ゴムを架橋させる(例えば、硫黄架橋または過酸化物架橋を介して)ことにより得られる。架橋密度の上昇、すなわち構成要素の体積当たりの架橋部位の数の増加に従い、エラストマーの引裂強度は最大値を通過する(D.L.Hertz Jr.,Elastomerics,1984年,第116号,17〜21頁;Science and Technology of Rubber,編集J.E.Mark,B.Erman,F.R.Eirich,第2版,Academic Press,San Diego,1994年,339〜343頁)。したがって、工業的に利用可能なエラストマーは特定の架橋密度範囲内においてのみ得られる。架橋密度が低過ぎたり高過ぎたりすると、引張破壊応力は10MPa未満となる。
架橋エラストマーの引張破壊応力はまた、添加剤または充填剤を添加することによっても重大な影響を受ける。この種の添加剤または充填剤は、加硫物の特定の特性を付与するためにエラストマーに添加される粉末状ゴム混合物の構成成分である(J.Schnetger“Lexikon der Kautschuktechnik”,第3版,Huethig Verlag Heidelberg,2004年,179〜180頁;F.Roethemeyer,F.Sommer“Kautschuktechnologie”,第2改訂版,Carl Hanser Verlag Munich Vienna,2006年,231〜275頁)。比較的粒径が大きな不活性充填剤はマトリックスを希釈する。一方、活性充填剤、特に粒径が不活性充填剤よりも小さいカーボンブラックまたはシリカはエラストマーを補強する作用を有する。引張破壊応力や引張破壊ひずみ等の様々なパラメータは活性充填剤の含有量が増加するに従い最大値を通過する。したがって、工業的に利用可能なエラストマーに最低限の引張破壊応力および最低限の引張破壊ひずみを達成するために、活性充填剤は特定の含有量で添加される。
本発明はまた、化学産業、家電産業または自動車産業において、好ましくは高温下または無極性媒体の影響下に液体媒体または気体媒体を誘導する製品における、本発明による複合部材の使用を提供する。
特に好ましくは、本発明の複合部材は、ガスケット、膜、蓄圧器(gas pressure accumulator)、ホース、モーターハウジング、ポンプおよび電動工具、ローラー、タイヤ、軸継手、ゴムバッファー(stop buffer)、コンベアベルト、駆動ベルト、多層積層体および多層フィルムに加えて、消音または除振部品として使用される。
したがって本発明はまた、液体媒体および/または気体媒体を含む製品を本発明の少なくとも1種の複合部材を用いて封止する方法にも関する。
したがって本発明はまた、少なくとも1種のポリアミド成形用組成物から製造される少なくとも1種の部材と、架橋剤としての元素硫黄で加硫または架橋されるゴムから得ることができる少なくとも1種のエラストマーから製造される少なくとも1種の部材とから構成される複合部材を製造するための方法であって、元素硫黄を含むゴム材料をポリアミド成形用組成物を含む部材に適用し、この系をゴムの加硫条件に付すか、またはポリアミド成形用組成物を、元素硫黄で架橋されたゴムを含む部材に適用するかのいずれかを行う、少なくとも1種の付形方法による方法であり、ポリアミド成形用組成物は、ポリアミドおよび室温(RT)で液状である少なくとも1種のポリブタジエンコポリマーの混合物を含む、方法に関する。
好ましくは、本発明は、少なくとも1種のポリアミド成形用組成物から製造される少なくとも1種の部材と、架橋剤としての元素硫黄で架橋または加硫されるゴムから得ることができる少なくとも1種のエラストマーから製造される少なくとも1種の部材とから構成される複合部材を製造するための方法であって、ポリアミド成形用組成物から構成される部材を元素硫黄を含むゴム部分に接触させ、このゴムを加硫条件に付すか、または架橋剤としての元素硫黄で架橋されたエラストマーから構成される部材をポリアミド成形用組成物に接触させるかのいずれかを行う、少なくとも1種の付形方法による方法であり、どちらの場合においても、ポリアミド成形用組成物は、
a)ポリアミドを60〜99.9重量部、好ましくは75〜99.8重量部、より好ましくは85〜99.7重量部、最も好ましくは88〜99.5重量部と、
b)RTで液状である少なくとも1種のポリブタジエンコポリマーを0.1〜40重量部、好ましくは0.2〜25重量部、より好ましくは0.3〜15重量部、最も好ましくは0.5〜12重量部と
の混合物を、少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも45重量%、より好ましくは少なくとも55重量%、特に好ましくは少なくとも65重量%含み、a)およびb)の重量部の総和は100であることを特徴とする、方法に関する。
付形方法は、好ましくは、押出、フィルム押出(flat−film extrusion)、インフレーション成形、ブロー成形、共押出、カレンダ成形、注型、圧縮法、射出圧縮成形法(injection embossing method)、トランスファ成形法(transfer pressing method)、射出トランスファ成形法(transfer injection pressing method)もしくは射出成形またはこれらの特殊な方法、特にガスインジェクション技術からなる群から選択され、より好ましくは2色射出成形による。
さらに本発明は、少なくとも1種のポリアミド成形用組成物から製造される少なくとも1種の部材と、架橋剤としての元素硫黄で架橋または加硫されるゴムから得ることができる少なくとも1種のエラストマーから製造される少なくとも1種の部材とから構成される複合体であって、架橋剤としての元素硫黄を含むゴム材料をポリアミド成形用組成物から構成される部材に適用し、この系をゴムの加硫条件に付すことによるか、またはポリアミド成形用組成物を元素硫黄で架橋されたエラストマーを含む部材に適用することによる、少なくとも1種の付形方法によって得ることができる、複合体に関する。
好ましくは、本発明は、少なくとも1種のポリアミド成形用組成物から製造された少なくとも1種の部材と、架橋剤としての元素硫黄で加硫または架橋されるゴムから得ることができる少なくとも1種のエラストマーから製造される少なくとも1種の部材とから構成される複合体であって、この複合体は、ポリアミド成形用組成物から構成される部材を架橋剤としての元素硫黄を含むゴム部分に接触させ、これをゴムの加硫条件に付すことによるか、または元素硫黄で架橋されたエラストマーから構成される部材をポリアミド成形用組成物に接触させることによる、少なくとも1種の付形方法により得ることができ、どちらの場合においても、ポリアミド成形用組成物は、
a)ポリアミドを60〜99.9重量部、好ましくは75〜99.8重量部、より好ましくは85〜99.7重量部、最も好ましくは88〜99.5重量部と、
b)RTで液状である少なくとも1種のポリブタジエンコポリマーを0.1〜40重量部、好ましくは0.2〜25重量部、より好ましくは0.3〜15重量部、最も好ましくは0.5〜12重量部と
の混合物を、少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも45重量%、より好ましくは少なくとも55重量%、特に好ましくは少なくとも65重量%含み、a)およびb)の重量部の総和は100である、複合体に関する。
液状ポリブタジエンコポリマー
本発明によれば、ポリアミド部材用のポリアミド成形用組成物にはRTで液状である少なくとも1種のポリブタジエンコポリマーが添加されている。本発明におけるRTで液状であるポリブタジエンコポリマーとは、好ましくは、1,3ブタジエンと、モノマーとしてのさらなるオレフィンであるスチレンまたはアクリロニトリルのいずれかとのコポリマーを意味する。これは一般に、1,3−ブタジエンを他のモノマーすなわちスチレンまたはアクリロニトリルと共重合することにより調製される。したがって、RTで液状であり、本発明に従い好ましく使用されるポリブタジエンコポリマーは、スチレン−1,3−ブタジエンコポリマーまたはアクリロニトリル−1,3−ブタジエンコポリマーである。
さらに特筆すべきは、本発明に従い使用される液状ポリブタジエンコポリマーは、DIN 53019に準ずるコーン−プレート方式により、剪断速度を50 1/sとし、大気圧下に25℃の温度で測定された粘度が、100〜1000000mPasの範囲、好ましくは300〜300000mPasの範囲、より好ましくは500〜100000mPasの範囲にあることである。これらのポリブタジエンコポリマーの特徴は室温(RT)で液状であることにある。
本発明によれば、RTで液状であるポリブタジエンコポリマーは、ポリアミド部材用のポリアミド成形用組成物中に、単独でまたは2種以上のポリブタジエンコポリマーの組合せとして使用される。
液状ポリブタジエンコポリマーとして使用されるスチレン−1,3−ブタジエンコポリマーはスチレン−ブタジエンゴム(SBR)とも称される。SBRゴムはスチレンおよび1,3−ブタジエンをベースとするゴムであり、「S−SBR」と略記される溶液重合SBRゴムに加え、E−SBRと略記される乳化重合SBRゴムも含む(J.Schnetger“Lexikon der Kautschuktechnik”[dictionary of rubber technology],第3版,Huethig Verlag Heidelberg,2004年,508〜512頁;F.Roethemeyer,F.Sommer“Kautschuktechnologie”[rubber technology],第2改訂版,Carl Hanser Verlag Munich Vienna,2006年,93〜107頁;H.G.Elias,“Macromolecules,Volume 2:Industrial Polymers and Syntheses”,WILEY−VCH Verlag GmbH,Weinheim,2007年,243〜244頁;H.G.Elias,“Macro−molecules,Volume 4:Applications of Polymers”,WILEY−VCH Verlag GmbH,Weinheim,2009年,275〜278頁)。
S−SBRと称されるゴムは、スチレンおよび1,3−ブタジエンをベースとする溶液重合法で製造される。共重合されるスチレンの量は、好ましくは5〜50重量%の範囲、より好ましくは10〜40重量%の範囲にある。共重合されるブタジエンの量は、好ましくは50〜95重量%の範囲、より好ましくは60〜90重量%の範囲にある。共重合されるブタジエンに含まれるビニル基の量は、好ましくは10〜90重量%の範囲にあり、1,4−トランス二重結合の量は、好ましくは20〜80重量%の範囲にあり、1,4−シス二重結合の量は、好ましくは、ビニル基および1,4−トランス二重結合の総量を補完する量である。これらのスチレン−ブタジエンゴムは、特に、アニオン溶液重合により、すなわちアルカリ金属系触媒またはアルカリ土類金属系触媒を用いることにより有機溶媒中で調製される。
重合したモノマーおよび各種ブタジエンの配置は、通常、液状ポリブタジエンコポリマー中にランダムに分布している。ブロック構造を有するゴムは一体化ゴム(integral rubber)とも称され、S−SBR(A)の定義(K.−H.Nordsiek,K.−H.Kiepert,GAK Kautschuk Gummi Kunststoffe 33(1980年),no.4,251〜255頁)に従い本発明に包含される。
本発明によるS−SBRは、直鎖状および分岐状の両方のゴムまたは末端変性ゴムを指すと理解される。この種のゴムは、例えば、独国特許出願公開第2034989A1号明細書に詳述されている。使用される分岐剤は、好ましくは四塩化ケイ素または四塩化スズである。
本発明によりE−SBRと称されるゴムは、スチレンおよびブタジエンをベースとするラジカル乳化重合により調製されるものと理解される。共重合されるスチレンの量は、好ましくは15〜40重量%の範囲にある。重合温度に応じて高温重合プロセスおよび低温重合プロセスに区別される。使用される開始剤は、アルカリ金属過硫酸塩または有機過酸化物に還元剤を併用したものである。
液状ポリブタジエンコポリマーとして代替的に使用されるアクリロニトリル−1,3−ブタジエンコポリマーは、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)とも称される。NBRは、1,3−ブタジエンおよびアクリロニトリルを質量比約50:50〜85:15でラジカル共重合させることにより得られる。その調製は水性エマルジョン中で行われる。重合温度に応じて高温重合プロセスおよび低温重合プロセスに区別される。使用される開始剤はアルカリ金属過硫酸塩または有機過酸化物に還元剤を併用したものである(J.Schnetger“Lexikon der Kautschuktechnik”[dictionary of rubber technology],第3版,Huethig Verlag Heidelberg,2004年,28〜29頁;F.Roethemeyer,F.Sommer“Kaut−schuktechnologie”[rubber technology],第2改訂版,Carl Hanser Verlag Munich Vienna,2006年,107〜122頁;H.G.Elias,“Macromolecules,Volume 2:Industrial Polymers and Syntheses”,WILEY−VCH Verlag GmbH,Weinheim,2007年,244〜245頁;H.G.Elias,“Macromolecules,Volume 4:Applications of Polymers”,WILEY−VCH Verlag GmbH,Weinheim,2009年,275〜278頁)。
一般に、室温で液状であるポリブタジエンコポリマーは、合成により、換言すれば分子量を増大させることにより製造することもできるし、あるいはより分子量の高いポリブタジエンコポリマーから出発して分子量を低下させることにより製造することもできる(高剪断力を、好ましくはローラー機構により機械的に導入することによる(素練りとも称する)分子量を低下させる)(J.Schnetger“Lexikon der Kautschuktechnik”[rubber technology],第3版,Huethig Verlag Heidelberg,2004年,1〜2頁;F.Roethemeyer,F.Sommer“Kautschuktechnologie”[rubber technology],第2改訂版,Carl Hanser Verlag Munich Vienna,2006年,358〜360頁;H.G.Elias,“Macromolecules,Volume 2:Industrial Polymers and Syntheses”,WILEY−VCH Verlag GmbH,Weinheim,2007年,262頁)。合成に関しては、本発明に従い使用される液状ポリブタジエンコポリマーは、上に述べたように、乳化重合プロセス、チーグラー・ナッタ重合、アニオン重合により調製することができ、特にスチレン−1,3−ブタジエンコポリマーはフリーラジカル溶液重合により調製することができる(H.G.Elias,“Macromolecules,Volume 2:Industrial Polymers and Syntheses”,WILEY−VCH Verlag GmbH,Weinheim,2007年,242〜245頁;H.G.Elias,“Macromolecules,Volume 4:Applications of Polymers”,WILEY−VCH Verlag GmbH,Weinheim,2007年,284〜285頁)。
本発明に従い使用されるRTで液状であるSBRは、例えば、Cray Valley USA,LLC(Exton,PA,USA)よりRicon(登録商標)、より具体的にはRicon(登録商標)181の名称で入手可能であり、これは、25℃における粘度(DIN 53019、コーン/プレート法、剪断速度50 1/s)が14600mPas(またはISO 2555に準ずるブルックフィールド粘度が17500±7500cps(25℃、メーカー値))であり、数平均分子量Mnが約3200g/mol(メーカー値)である液状スチレン−1,3−ブタジエンコポリマーである(Cray Valley USA,LLC,Bitadiene Styrene Copolymer,Technical Data Sheet,Exton,PA,USA(2010年8月)参照)。
他の好ましい実施形態において、RTで液状である少なくとも1種のポリブタジエンコポリマーは、ポリアミド成形用組成物において、少なくとも1種のポリオクテナマーおよび/または少なくとも1種のポリブタジエンと組み合わせて使用される。使用される好ましいポリオクテナマーは1,8−トランス−ポリオクテナマーである。使用されるポリブタジエンは、好ましくは、数平均分子量Mnが800〜20000g/molの範囲にあり、および/またはDIN 53019に準拠し、標準圧力および25℃の温度でコーン/プレート法により測定された粘度が100〜15000mPasの範囲にあるポリブタジエンである。これらのポリブタジエンは室温(25℃)で液状であることを特徴とする。
架橋助剤
好ましい実施形態において、本発明の複合部材のポリアミド部分に含まれるRTで液状であるポリブタジエンコポリマーは、さらなる架橋助剤を使用することなく使用される。通常、架橋助剤は、ゴムを過酸化物架橋させ、架橋収率を増大させるために使用される。化学的に説明すると、架橋助剤は、高分子ラジカルと反応してより安定なラジカルを形成する多官能性化合物である(F.Roethemeyer,F.Sommer“Kautschuktechnologie”,第2改訂版,Carl Hanser Verlag Munich Vienna,2006年,315〜317頁;J.Schnetger“Lexikon der Kautschuktechnik”,第3版,Huethig Verlag Heidelberg,2004年,82〜83頁)。好ましい実施形態においては、本発明の複合体のポリアミド部分は、エチレングリコールジメタクリレート(EDMA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA、TRIM)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、ヘキサン−1,6−ジオールジアクリレート(HDDA)、ヘキサン−1,6−ジオールジメタクリレート(HDDMA)、ブタンジオールジメタクリレート、ジアクリル酸亜鉛、ジメタクリル酸亜鉛、シアヌル酸トリアリル(TAC)、イソシアヌル酸トリアリル(TAIC)、テレフタル酸ジアリル、トリメリット酸トリアリル(TATM)またはN,N’−m−フェニレンビスマレイミド(MPBM、HVA−2)からなるの群の架橋助剤を含まないことを特徴とする。
エラストマー部材
元素硫黄で加硫または架橋される、本発明の複合部材のエラストマー部分に使用されるゴムは加硫プロセスにより得ることができるエラストマーである。加硫はCharles Goodyearが開発した工業化学プロセスであり、ゴムを好適な化学物質で架橋することにより、大気および薬品の影響に対する耐性と、時間、温度および圧力の影響下における機械的応力に対する耐性とを付与することを意味するものと理解されている。
先行技術によれば、硫黄による加硫は、原料ゴム;可溶性硫黄の形態および/または不溶性硫黄の形態にある硫黄;および/または硫黄ドナー(例えば、ゴム産業において硫黄ドナーとして一般に知られている有機添加剤等)、特に二塩化二硫黄(S2Cl2);触媒;助剤に加え、適切であればさらなる充填剤を含むゴム混合物を加熱することにより達成される。ゴム材料に添加される添加剤として、硫黄加硫に好適な少なくとも1種の加硫促進剤を用いることができる。
先行技術において、硫黄系架橋系は、硫黄または硫黄ドナーの添加量および硫黄または硫黄ドナー対加硫促進剤の比が異なる5種類に分けられている。
「汎用」硫黄架橋系は、硫黄を2.0〜3.5phr(phr=ゴム百部当たりの部、すなわちゴム100重量部を基準とする重量部)および促進剤を0.5〜1.0phrを含む。「半EV」架橋系(EV=半有効加硫)においては、硫黄を1.0〜2.0phrおよび促進剤を1.0〜2.5phrが使用される。「EV」架橋系は、硫黄を0.3〜1.0phrおよび促進剤を2.0〜6.0phrを含む。硫黄を0.3〜0.6phrおよび促進剤を3.0〜6.0phrおよび硫黄ドナーを0.0〜2.0phrが使用されるものは「低硫黄EV」架橋系と称される。5つ目の硫黄系架橋系は本発明に使用するためのものではない。「無硫黄架橋系」は元素硫黄を全く含まず(0.0phr)、替わりに促進剤0.0〜2.0phrおよび硫黄ドナーを1.0〜4.0phrが使用されている。「無硫黄架橋系」においては、使用される硫黄ドナーが加硫剤として作用する(F.Roethemeyer,F.Sommer“Kautschuktechnologie”,第2改訂版,Carl Hanser Verlag Munich Vienna,2006年,291〜295頁)。
一実施形態において、本発明の複合部材に使用されるエラストマー部分は、架橋剤としての元素硫黄で加硫または架橋されるゴムであり、汎用硫黄架橋系、半EV架橋系、EV架橋系および低硫黄EV架橋系の群からの少なくとも1種の硫黄架橋系がさらに存在する。
全ての場合において、架橋系は、主促進剤と称される促進剤に加えて、これとは異なる任意選択的な複数種の第2促進剤と称される促進剤も含むことができる。その性質、添加量および組合せはそれぞれの用途に適合され、ゴムの種類によっても異なる。硫黄加硫過程で長鎖ゴム分子は硫黄の橋架けにより架橋される。その結果として、ゴムまたはゴム混合物の塑性特性は失われ、この材料は加硫過程で塑性状態から弾性状態に変換される。
この加硫過程で形成される、加硫ゴムとも称されるエラストマーは、反応体と比較して弾性を有しており、機械的応力を受けるとその都度元の状態に戻り、引裂強さ、伸びならびに耐老化性および耐候性が高くなっている。
硫黄架橋されたエラストマー部分の弾性は硫黄の橋架けの数に依存する。存在する硫黄の橋架けが多いほど加硫ゴムは硬くなる。そして硫黄の橋架けの数および長さは添加した硫黄の量、架橋系の性質および加硫時間に依存する。
元素硫黄で加硫または架橋されたゴムから得ることができる、本発明に従い使用される複合部材中のエラストマー部分に、C=C二重結合が存在することに注目されたい。
これらのC=C二重結合を含むゴムは、好ましくはジエンをベースとする。本発明によれば、二重結合を含み、工業的に製造された、ゲル分が30%未満、好ましくは5%未満、特に3%未満であり、DIN/ISO 1629に従い「R」ゴムまたは「M」ゴムと称されるゴムが特に好ましい。本発明に関する「ゲル分」とは、それ以上溶解しないが膨潤可能である3次元架橋した高分子材料の比率を意味する。
架橋剤としての元素硫黄で架橋される、本発明によるエラストマー部材に好ましいゴムは、天然ゴム(NR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、スチレン/ブタジエンゴム(SBR)、特にE−SBR、ポリブタジエンゴム(BR)、ポリイソプレン(IR)、ブチルゴム、特にイソブテン/イソプレンゴム(IIR)、ハロブチルゴム、特にクロロ−またはブロモブチルゴム(XIIR)、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(H−NBR)、カルボキシル化ブタジエン/アクリロニトリルゴム(XNBR)またはポリクロロプレン(CR)からなる群のゴムである。1を超える合成経路で、例えば、エマルジョンからまたは溶液から得ることができる場合、常に本発明によるあらゆる選択肢が想定される。上述のゴムは当業者によく知られており、様々な供給業者から市販されている。
さらに、本発明の複合体のエラストマー部材に2種以上の上述のゴムの混合物を使用することも可能である。これらの混合物はゴムのポリマーブレンドまたはゴムブレンドとも称される(J.Schnetger“Lexikon der Kautschuktechnik”,第3版,Huethig Verlag Heidelberg,2004年,375〜377頁)。本発明の複合体のエラストマー部材に好ましく使用されるゴムブレンドは、マトリックス相としてのNRと分散ゴム相としてのBRとの混合物(BR含有量50phr以下)およびマトリックス相としてのBRと分散ゴム相としてのSBRまたはCRとの混合物(SBRまたはCR含有量50phr以下)である。
本発明によれば、元素硫黄で加硫または架橋されるエラストマー部材用のゴムとして、少なくとも天然ゴム(NR)(CAS No.9006−04−6)を使用することが特に好ましい。
本発明の複合体のエラストマー部材用として本発明による特に好ましい、元素硫黄で架橋される天然ゴム(NR)を化学的に説明すると、シス−1,4含有量が>99%であり、平均分子量が2×106〜3×107g/molであるポリイソプレンである。NRは生化学的経路で合成され、好ましくはプランテーション作物であるパラゴムノキ(Hevea Brasiliensis)である。天然ゴムは、例えば、Pacidunia Sdn.Bhd.からSMR(Standard Malaysian Rubber)製品シリーズとして、またはPhu An Imexco.Ltd.からSVR(Standard Vietnamese Rubber)製品シリーズとして市販されている(J.Schnetger“Lexikon der Kautschuktechnik”,第3版,Huethig Verlag Heidelberg,2004年,331〜338頁)。
他の好ましい実施形態において、本発明の複合体のエラストマー部材に使用される元素硫黄で架橋されるゴムはEPDMゴム(CAS No.25038−36−2)である。EPDMは、エチレンと、プロピレン(エチレンよりも高比率)と、ジエン構造を有する第3モノマー(数重量%)とを三元重合させることにより調製されるポリマーを含む。ジエンモノマーは後段の加硫のための二重結合を提供する。使用されるジエンモノマーは、主として、シス,シス−1,5−シクロオクタジエン(COD)、exo−ジシクロペンタジエン(DCP)、endo−ジシクロペンタジエン(EDCP)、1,4−ヘキサジエン(HX)、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)に加えて、ビニルノルボルネン(VNB)である。
EPDMゴムは、エテンおよびプロペンおよびジエンの混合物をチーグラー・ナッタ触媒系(例えば、バナジウム化合物を有機アルミニウム共触媒と一緒に含む触媒系)またはメタロセン触媒系の存在下に重合させることによる公知の方法で調製される(J.Schnetger“Lexikon der Kautschuktechnik”,第3版,Huethig Verlag Heidelberg,2004年,144〜146頁)。一般に、エテンを25重量%超と、プロペンを25重量%超と、非共役ジエン(ビシクロ[2.2.1]ヘプタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−ジシクロペンタジエン、5−エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン等)を1〜10重量%、好ましくは1〜3重量%との混合物が重合される。
エラストマー部材用のEPDMゴム、例えば、Lanxess Deutschland GmbHからのKeltan(登録商標)ブランドの製品シリーズとして、または当業者に公知の方法により得ることができる。
他の好ましい実施形態において、エラストマー部材用の元素硫黄で架橋されるゴムとして用いられるのは、本発明の複合体のエラストマー部材用スチレン−ブタジエンゴム(SBR)(CAS No.9003−55−8)である。SBRゴムはスチレンおよび1,3−ブタジエンをベースとするゴムであり、溶液重合SBRゴム(「S−SBR」と略記)および乳化重合SBRゴム(E−SBRと略記)の両方を含む(J.Schnetger“Lexikon der Kautschuk−technik”[dictionary of rubber technology],第3版,Huethig Verlag Heidelberg,2004年,508〜512頁;F.Roethemeyer,F.Sommer“Kautschuktechnologie”[rubber technology],第2改訂版,Carl Hanser Verlag Munich Vienna,2006年,93〜107頁;H.G.Elias,“Macromolecules,Volume 2:Industrial Polymers and Syntheses”,WILEY−VCH Verlag GmbH,Weinheim,2007年,243〜244頁;H.G.Elias,“Macromolecules,Volume 4:Applications of Polymers”,WILEY−VCH Verlag GmbH,Weinheim,2009年,275〜278頁)。
本発明のエラストマー部材用のS−SBRは、スチレンおよび1,3−ブタジエンをベースとする溶液重合法により調製されるゴムを含むものと理解される。共重合されるスチレンの量は、好ましくは5〜50重量%の範囲、より好ましくは10〜40重量%の範囲にある。共重合されるブタジエンの量は、好ましくは50〜95重量%の範囲、より好ましくは60〜90重量%の範囲にある。共重合されるブタジエンに含まれるビニル基の量は、好ましくは10〜90重量%の範囲にあり、1,4−トランス二重結合の量は、好ましくは20〜80重量%の範囲にあり、1,4−シス二重結合の量は、ビニル基および1,4−トランス二重結合の総和を補完する量である。これらのスチレン−ブタジエンゴムは、特にアニオン溶液重合により、すなわち有機溶媒中でアルカリ金属系触媒またはアルカリ土類金属系触媒を用いることにより調製される。
従来、重合したモノマーおよび様々なブタジエンの配置は、エラストマー部材用ポリマー中にランダムに分布している。ブロック様構造を有するゴムは一体化ゴムとも称され、本発明に従い、S−SBR(A)の定義(K.H.Nordsiek,K.H.Kiepert,GAK Kautschuk Gummi Kunststoffe 33(1980年),No.4,251〜255頁)に包含されることが意図されている。
本発明のエラストマー部材用S−SBRは、本発明によれば、直鎖状および分岐状の両方のゴムまたは末端変性ゴムを包含することが意図されている。これらの種類のゴムのグレードは、例えば、独国特許出願公開第2034989A1号明細書で確認できる。分岐剤として四塩化ケイ素または四塩化スズが好ましく使用される。
本発明のエラストマー部材用E−SBRは、スチレンおよびブタジエンをベースとするラジカル乳化重合により調製されるゴムを含むものと理解される。共重合されるスチレンの量は、好ましくは15〜40重量%の範囲にある。重合温度に応じて高温重合プロセスおよび低温重合プロセスに区別される。使用される開始剤は、アルカリ金属過硫酸塩または有機過酸化物に還元剤を併用したものである。この重合方法により得られるエマルジョンをワークアップすることにより、使用される固体ゴムを得る。
E−SBRおよびS−SBRはいずれも、本発明の複合体のエラストマー部材用エラストマー材料中で油展形態で使用することもできる。本発明に関する「油展」とは、製造過程でゴムに油が混合されていることを意味する。油は可塑剤の役割を果たす。工業的に慣用されている油は当業者に知られており、本明細書において使用される。好ましい多環芳香族系炭化水素を含有する場合は、低含有量であることが好ましい。TDAE(留出油芳香族系抽出物処理油(treated distillate aromatic extract))、MES(軽度抽出溶媒和物(mild extraction solvate))およびナフテン系油が適している。
他の好ましい実施形態において、本発明の複合体のエラストマー部材に使用される元素硫黄で架橋されるゴムはポリブタジエン(BR)(CAS No.9003−17−2)である。ポリブタジエン(BR)は、特に2種の異なるポリブタジエンを含む。第1の種類は1,4−シス体含有量が少なくとも90%のポリブタジエンであり、遷移金属をベースとするチーグラー・ナッタ触媒を利用して調製される。Ti、Ni、CoおよびNdをベースとする触媒系を使用することが好ましい(Houben−Weyl,Methoden der Organischen Chemie,Thieme Verlag,Stuttgart,1987年,第E20巻,798〜812頁;Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,第A23巻,Rubber 3.Synthetic,VCH Verlagsgesellschaft mbH,D−69451 Weinheim,1993年,239〜364頁)。これらのポリブタジエンのガラス転移温度は、好ましくは<−90℃である(DSCにより測定)。
第2の種類のポリブタジエンは、リチウム触媒を用いて調製される、ビニル含有量が10%〜80%のポリブタジエンである。このポリブタジエンゴムのガラス転移温度は−90℃〜+20℃の範囲にある(DSCにより測定)。
他の好ましい実施形態において、本発明の複合体のエラストマー部材に使用される元素硫黄で架橋されるゴムはポリイソプレン(IR)である。ポリイソプレン(CAS No.9003−31−0)またはイソプレンゴムは天然ゴムの変形形態として製造される合成ゴムである。天然ゴムとの主な違いは化学的純度が低いことにある。その理由は、重合に使用される触媒が天然の酵素よりも効率が低いことにある。天然ゴム(NR)の純度は99.9%を超えるが、合成IRの場合は、使用する触媒に応じて約92〜97%にしか到達しない。ポリイソプレン(IR)は、通常、1,4−シス体含有量が少なくとも70%である。IRは、合成によりリチウム触媒またはチーグラー・ナッタ触媒のどちらを利用しても製造されるが、好ましくはチタンおよびネオジム触媒が利用される(Houben−Weyl,Methoden der Organischen Chemie,Thieme Verlag,Stuttgart,1987年,第E20巻,822〜840頁;Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,第A23巻,Rubber 3.Synthetic,VCH Verlagsgesellschaft mbH,D−69451 Weinheim,1993年,239〜364頁)。
ガラス転移温度が−20〜+30℃の範囲にある3,4−ポリイソプレンもIRに包含される。
他の好ましい実施形態において、本発明の複合体のエラストマー部材に使用される元素硫黄で架橋されるゴムはアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)である。NBR(CAS No.9003−18−3)は1,3−ブタジエンおよびアクリロニトリルを質量比約50:50〜85:15でラジカル共重合させることにより得られる。これは水性エマルジョン中で調製される。重合温度に応じて高温重合プロセスおよび低温重合プロセスに区別される。使用される開始剤は、アルカリ金属過硫酸塩または有機過酸化物に還元剤を併用したものである。この重合法により得られるエマルジョンをワークアップすることにより、使用される固体ゴムが得られる(J.Schnetger“Lexikon der Kautschuktechnik”[dictionary of rubber technology],第3版,Huethig Verlag Heidelberg,2004年,28〜29頁;F.Roethemeyer,F.Sommer“Kautschuktechnologie”[rubber technology],第2改訂版,Carl Hanser Verlag Munich Vienna,2006年,107〜122頁;H.G.Elias,“Macromolecules,Volume 2:Industrial Polymers and Syntheses”,WILEY−VCH Verlag GmbH,Weinheim,2007年,244〜244頁;H.G.Elias,“Macromolecules,Volume 4:Applications of Polymers”,WILEY−VCH Verlag GmbH,Weinheim,2009年,275〜278頁)。
他の好ましい実施形態において、本発明の複合体のエラストマー部材に使用される元素硫黄で架橋されるゴムは水素化ニトリルゴム(H−NBR)である。H−NBR(CAS No.308068−83−9)は、非水溶液中で特定の触媒(例えば、ピリジン−コバルト錯体またはロジウム、ルテニウム、イリジウムもしくはパラジウム錯体)を用いたNBRの完全水素化または部分水素化により製造される(J.Schnetger“Lexikon der Kautschuktechnik”,第3版,Huethig Verlag Heidelberg,2004年,30頁)。
他の好ましい実施形態において、本発明の複合体のエラストマー部材に使用される元素硫黄で架橋されるゴムはカルボキシル化ブタジエン/アクリロニトリルゴム(XNBR)である。XNBRは、ブタジエンと、アクリロニトリルと、アクリル酸またはメタクリル酸との三元重合により製造される。カルボン酸の比率は1〜7重量%の範囲にある(F.Roethemeyer,F.Sommer“Kautschuktechnologie”,第2改訂版,Carl Hanser Verlag Munich Vienna,2006年,112頁)。XNBRは例えばLanxess Deutschland GmbH(Cologne)からKrynac(登録商標)X740として入手可能である。
他の好ましい実施形態において、本発明の複合体のエラストマー部材に使用される元素硫黄で架橋されるゴムはブチルゴム(IIR)、特にイソブテン/イソプレンゴム(CAS No.9010−85−9)である。ブチルゴムは、イソプレンおよびイソブチレンを共重合させることにより製造される(J.Schnetger“Lexikon der Kautschuktechnik”,第3版,Huethig Verlag Heidelberg,2004年,69〜71頁)。
他の好ましい実施形態において、本発明の複合体のエラストマー部材に使用される元素硫黄で架橋されるゴムはハロブチルゴム(XIIR)、特にクロロブチルゴム(CIIR)またはブロモブチルゴム(BIIR)(CAS No.68441−14−5)である。クロロブチルゴム(CllR)(CAS No.68081−82−3)は、塩素ガスをブチルゴム溶液に導入することにより製造される(J.Schnetger“Lexikon der Kautschuktechnik”,第3版,Huethig Verlag Heidelberg,2004年,75頁)。ブロモブチルゴム(BIIR)は、ブチルゴムを溶液中で臭素で処理することにより製造される(J.Schnetger“Lexikon der Kautschuktechnik”,第3版,Huethig Verlag Heidelberg,2004年,66〜67頁)。
他の好ましい実施形態において、本発明の複合体のエラストマー部材に使用される元素硫黄で架橋されるゴムはポリクロロプレン(CR)である。ポリクロロプレン(CAS No.9010−98−4)はクロロプレン(2−クロロ−1,3−ブタジエン)から、場合によりコモノマーとしてのジクロロブタジエンまたは硫黄の存在下に、乳化重合により調製される。重合時に特定の連鎖移動剤(メルカプタン、例えば、n−ドデシルメルカプタンまたは二硫化キサントゲン等)を使用することにより、メルカプタン変性CRタイプまたは二硫化キサントゲン変性CRタイプと称されるものを製造することが可能であり、これは金属酸化物、加硫促進剤および硫黄で架橋することができる。本明細書においては、特定の促進剤系、特にチオウレアを使用することが可能である(ETU、DBTU、TBTU、DETU、MTT)(J.Schnetger“Lexikon der Kautschuktechnik”,第3版,Huethig Verlag Heidelberg,2004年,78〜81頁;F.Roethemeyer,F.Sommer“Kautschuktechnologie”,第2改訂版,Carl Hanser Verlag Munich Vienna,2006年,15〜163頁)。
好ましくは、本発明の複合体のエラストマー部材に使用される元素硫黄で架橋されるゴムは、天然ゴム(NR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、スチレン/ブタジエンゴム(SBR)(特に、E−SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ポリイソプレン(IR)、ブチルゴム(特に、イソブテン/イソプレンゴム(IIR))、ハロブチルゴム(XIIR)(特に、クロロ−またはブロモブチルゴム)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(H−NBR)、カルボキシル化ブタジエン/アクリロニトリルゴム(XNBR)およびポリクロロプレン(CR)または上述のゴムの2種以上の混合物からなる群の少なくとも1種である。
より好ましくは、本発明の複合体のエラストマー部材に使用される元素硫黄で架橋されるゴムは、天然ゴム(NR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、スチレン/ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシル化ブタジエン/アクリロニトリルゴム(XNBR)、ポリクロロプレン(CR)、ニトリルゴム(NBR)およびポリブタジエン(BR)または上述のゴムの2種以上の混合物からなる群の少なくとも1種のゴムである。
最も好ましくは、本発明の複合体のエラストマー部材に使用される元素硫黄で架橋されるゴムは、天然ゴム(NR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、スチレン/ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシル化ブタジエン/アクリロニトリルゴム(XNBR)およびポリブタジエン(BR)または上述のゴムの2種以上の混合物からなる群の少なくとも1種である。
本発明の非常に好ましい実施形態において、本発明の複合体のエラストマー部材に使用される元素硫黄で架橋されるゴムは天然ゴム(NR)である。
本発明の非常に好ましい実施形態において、本発明の複合体のエラストマー部材に使用される元素硫黄で架橋されるゴムはエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)である。
本発明の非常に好ましい実施形態において、本発明の複合体のエラストマー部材に使用される元素硫黄で架橋されるゴムはスチレン/ブタジエンゴム(SBR)である。
本発明の非常に好ましい実施形態において、本発明の複合体のエラストマー部材に使用される元素硫黄で架橋されるゴムはポリブタジエン(BR)である。
本発明の非常に好ましい実施形態において、本発明の複合体のエラストマー部材に使用される元素硫黄で架橋されるゴムはポリイソプレン(IR)である。
本発明の非常に好ましい実施形態において、本発明の複合体のエラストマー部材に使用される元素硫黄で架橋されるゴムはブチルゴム(IIR)である。
本発明の非常に好ましい実施形態において、本発明の複合体のエラストマー部材に使用される元素硫黄で架橋されるゴムはハロブチルゴム(XIIR)である。
本発明の非常に好ましい実施形態において、本発明の複合体のエラストマー部材に使用される元素硫黄で架橋されるゴムはニトリルゴム(NBR)である。
本発明の非常に好ましい実施形態において、本発明の複合体のエラストマー部材に使用される元素硫黄で架橋されるゴムは水素化ニトリルゴム(H−NBR)である。
本発明の非常に好ましい実施形態において、本発明の複合体のエラストマー部材に使用される元素硫黄で架橋されるゴムはカルボキシル化ブタジエン/アクリロニトリルゴム(XNBR)である。
本発明の非常に好ましい実施形態において、本発明の複合体のエラストマー部材に使用される元素硫黄で架橋されるゴムはポリクロロプレン(CR)である。
本発明の一実施形態において、エラストマー部材に使用されるゴムは、官能基修飾されていない形態のゴムである。本発明の他の実施形態においては、ゴムに、特にヒドロキシル基、カルボキシル基または酸無水物基を導入して官能基修飾することにより接着強度をさらに改善することができる。
元素硫黄
本発明によれば、本発明の複合体のエラストマー部材用のゴムに添加される架橋剤/加硫剤は元素硫黄(CAS No.7704−34−9)である。これは可溶性硫黄または不溶性硫黄のいずれかの形態、好ましくは可溶性硫黄の形態で使用される。
可溶性硫黄とは、常温で安定である唯一の形態であるS8硫黄またはα硫黄とも称される八硫黄(黄色シクロオクタ硫黄)を意味すると理解される。これは典型的な斜方晶から構成され、二硫化炭素に溶解する。例えば、25℃においては、α−SはCS2を100g中に30gが溶解する(“Schwefel”[Sulphur]in the online Roempp Chemie Lexikon,August 2004 version,Georg Thieme Verlag Stuttgart参照)。
不溶性硫黄とは、ゴム混合物の表面から滲み出す傾向のない硫黄の多形を意味すると理解される。この特定の硫黄の多形は二硫化炭素中で60%〜95%の範囲が不溶である。
他の好ましい実施形態においては、元素硫黄に加えて、少なくとも1種のいわゆる硫黄ドナーが本発明の複合体のエラストマー部材用ゴムに添加される。追加で使用されるこのような硫黄ドナーは、加硫促進作用を有していても有していなくてもよい。好ましく使用される、促進作用がない硫黄ドナーはジチオモルホリン(DTDM)またはカプロラクタムジスルフィド(CLD)である。好ましく使用される、促進作用を有する硫黄ドナーは、2−(4−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール(MBSS)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)またはジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)である(J.Schnetger“Lexikon der Kautschuktechnik”,第3版,Huethig Verlag Heidelberg,2004年,472頁、またはF.Roethemeyer,F.Sommer“Kautschuktechnologie”,第2改訂版,Carl Hanser Verlag Munich Vienna,2006年,309〜310頁)。
元素硫黄および好ましい実施形態において場合によりさらに使用される硫黄ドナーは、本発明の複合体のエラストマー部材用ゴム混合物に、好ましくは、エラストマー材料のゴム100重量部を基準として、総量が0.1〜15重量部、より好ましくは0.1〜10重量部の範囲となるように使用される。
本発明の複合体のエラストマー部材中のエラストマー材料に2種以上のゴムが使用される場合は、全てのゴムの総和が上述の重量部の数値の基準となる。以後、このことは、本発明に従い本発明の複合体の製造に使用される他のエラストマー材料に関し記載される全ての量に適用される。
本発明による好ましい一実施形態において、元素硫黄による硫黄架橋に適した少なくとも1種の加硫促進剤をゴムの添加剤として本発明の複合体のエラストマー部材に添加することができる。対応する加硫促進剤はJ.Schnetger“Lexikon der Kautschuktechnik”,第3版,Huethig Verlag Heidelberg,2004年,514〜515頁,537〜539頁および586〜589頁に記載されている。
本発明による好ましい加硫促進剤は、キサントゲン酸塩、ジチオカルバミン酸塩、テトラメチルチウラムジスルフィド、チウラム、チアゾール、チオウレア誘導体、アミン誘導体(テトラアミン等)、スルフェンイミド、ピペラジン、アミン、カルバミン酸塩、スルフェンアミド、ジチオリン酸誘導体、ビスフェノール誘導体またはトリアジン誘導体である。
本発明による特に好ましい加硫促進剤は、ベンゾチアジル−2−シクロヘキシルスルフェンアミド(CBS)、ベンゾチアジル−2−tert−ブチルスルフェンアミド(TBBS)、ベンゾチアジル−2−ジシクロヘキシルスルフェンアミド(DCBS)、1,3−ジエチルチオウレア(DETU)、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)およびその亜鉛塩(ZMBT)、ジメチルジチオカルバミン酸銅(CDMC)、ベンゾチアジル−2−スルフェンモルホリド(MBS)、ベンゾチアジルジシクロヘキシルスルフェンアミド(DCBS)、2−メルカプトベンゾチアゾールジスルフィド(MBTS)、ジメチルジフェニルチウラムジスルフィド(MPTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBZTD)、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)、テトライソブチルチウラムジスルフィド(IBTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、N−ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDMC)、N−ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDEC)、N−ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDBC)、N−エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛(ZEBC)、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(ZBEC)、ジイソブチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDiBC)、N−ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛(ZPMC)、N−エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛(ZEPC)、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛(ZMBT)、エチレンチオウレア(ETU)、ジエチルジチオカルバミン酸テルル(TDEC)、ジエチルチオウレア(DETU)、N,N−エチレンチオウレア(ETU)、ジフェニルチオウレア(DPTU)、トリエチルトリメチルトリアミン(TTT)、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンイミド(TBSI)、1,1’−ジチオビス(4−メチルピペラジン)、ヘキサメチレンジアミンカーバメート(HMDAC)、ベンゾチアジル−2−tert−ブチルスルフェンアミド(TOBS)、N,N’−ジエチルチオカルバミル−N’−シクロヘキシルスルフェンアミド(DETCS)、N−オキシジエチレンジチオカルバミル−N’−オキシジエチレンスルフェンアミド(OTOS)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(ビスフェノールS)、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛(ZIX)、ジチオカルバミン酸のセレン塩、テルル塩、鉛塩、銅塩およびアルカリ土類金属塩、ペンタメチレンアンモニウム−N−ペンタメチレンジチオカルバメート、ジチオリン酸誘導体、シクロヘキシルエチルアミン、ジブチルアミン、ポリエチレンポリアミンまたはポリエチレンポリイミン、特にトリエチレンテトラミン(TETA)である。
加硫促進剤は、好ましくは本発明の複合体のエラストマー部材のエラストマー材料用ゴム100重量部を基準として0.1〜15重量部の範囲の量、より好ましくは0.1〜10重量部の範囲の量で使用される。
本発明による好ましい一実施形態において、本発明の複合体のエラストマー部材のエラストマー材料用ゴムの添加剤として、酸化亜鉛およびステアリン酸または酸化亜鉛および2−エチルヘキサン酸またはステアリン酸亜鉛を添加する。酸化亜鉛は硫黄架橋の活性化剤として使用される。当業者であれば適量の選択はさほど難しいことではない。酸化亜鉛を幾分多く使用した場合、モノスルフィド結合が増加し、したがってゴム材料の耐老化性が向上する。本発明のゴム材料に酸化亜鉛を使用する場合は、さらにステアリン酸(オクタデカン酸)も含有させる。こうすることにより幅広い効果が得られることがゴム技術の当業者に知られている。その効果の一例として、エラストマー材料における加硫促進剤の分散の向上が挙げられる。加えて、硫黄架橋過程において亜鉛イオンとの錯体が形成される。ステアリン酸に替えて2−エチルヘキサン酸を使用することも可能である。
好ましくは、酸化亜鉛(CAS No.1314−13−2)は、エラストマー部材のエラストマー材料に含まれるゴム100重量部を基準として、0.5〜15重量部の範囲の量、より好ましくは1〜7.5重量部の範囲の量、非常に好ましくは1〜5重量部の範囲の量で使用される。
好ましくは、ステアリン酸(CAS No.57−11−4)または2−エチルヘキサン酸(CAS No.149−57−5)は、エラストマー部材のエラストマー材料のゴム100重量部を基準として、0.1〜7重量部の範囲の量、より好ましくは0.25〜7重量部の範囲の量、非常に好ましくは0.5〜5重量部の範囲の量で使用される。
酸化亜鉛およびステアリン酸の組合せに替えて、またはこれに加えて、好ましい実施形態においてはステアリン酸亜鉛(CAS No.557−05−1)を使用することができる。この場合、通常、それぞれエラストマー部材のエラストマー材料のゴム100重量部を基準として0.25〜5重量部の範囲の量、より好ましくは1〜3重量部の範囲の量で使用される。ステアリン酸亜鉛に替えて2−エチルヘキサン酸の亜鉛塩を使用することも可能である。
他の好ましい実施形態において、本発明の複合体のエラストマー部材のエラストマー材料に含まれる少なくとも1種のゴムの架橋を、元素硫黄による架橋に加えて、硫黄/過酸化物混合架橋として行うことができる。
さらに、好ましい実施形態において、本発明の複合体のエラストマー部材に使用するためのエラストマー材料は、充填剤、素練り剤、可塑剤、加工助剤(processing active ingredient)、老化安定剤、紫外線安定剤またはオゾン安定剤、粘着付与剤、顔料または染料、発泡剤、難燃剤、離型剤、補強要素および接着系(bonding system)の群の少なくとも1種のさらなる成分を含む。
本発明の複合体のエラストマー部材のエラストマー材料に充填剤を使用する場合、シリカ、カーボンブラック、ケイ酸塩、酸化物または有機充填剤、特にシリカおよび/またはカーボンブラックからなる群の少なくとも1種の充填剤を使用することが好ましい。
「シリカ」(CAS No.7631−86−9)(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,VCH Verlagsgesellschaft mbH,D−69451 Weinheim,1993年,“Silica”,635〜645頁)は特にフュームドシリカ(同書635〜642頁)の形態または沈降シリカ(同書642〜645)の形態で使用され、本発明によれば沈降シリカが好ましい。沈降シリカはBETにより測定された比表面積が5〜1000m2/g、好ましくは比表面積が20〜400m2/gである。これは水ガラスを無機酸、好ましくは硫酸で処理することにより得られる。一実施形態においては、シリカを他の金属酸化物(Al、Mg、Ca、Ba、Zn、Zr、Tiの酸化物等)との複合酸化物の形態とすることもできる。本発明によれば、それぞれDIN ISO 9277:2003−05に準ずるBETで測定された比表面積が5〜1000m2/g、より好ましくは20〜400m2/gであるシリカを使用することが好ましい。
一実施形態においては、本発明の複合体のエラストマー部材のエラストマー材料に含まれる充填剤としてカーボンブラック(CAS No.1333−36−4)を使用することも当業者に知られている(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,VCH Verlagsgesellschaft mbH,D−69451 Weinheim,1993年,第A5巻,95〜158頁、「carbon」または「carbon black」の項参照)。これらは好ましくは、ガスブラック法、ファーネスブラック法、ランプブラック法またはサーマルブラック法で製造され、ASTM新命名法(ASTM D1765およびD2516)に従い、N110、N115、N121、N125、N212、N220、N231、N234、N242、N293、N299、S315、N326、N330、N332、N339、N343、N347、N351、N375、N472、N539、N550、N582、N630、N642、N650、N660、N683、N754、N762、N765、N772、N774、N787、N907、N908、N990、N991 S3等に分類される。充填剤として使用されるカーボンブラックは、好ましくはDIN ISO9277:2003−05に準ずる方法で測定されたBET表面積が5〜200m2/gの範囲にある。
本発明の複合体のエラストマー部材のエラストマー材料に使用することができる好ましいさらなる充填剤は、合成ケイ酸塩、特にケイ酸アルミニウム、アルカリ土類金属ケイ酸塩、特にケイ酸マグネシウムまたはケイ酸カルシウム(好ましくは、それぞれ、DIN ISO9277:2003−05に準じて測定されたBET表面積が20〜400m2/gの範囲にあり、一次粒径が5〜400nmの範囲にあるもの)、天然ケイ酸塩(特に、カオリンまたは珪藻土および他の天然シリカ)、金属酸化物(特に、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム)、金属炭酸塩(特に、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛)、金属硫酸塩(特に、硫酸カルシウム、硫酸バリウム)、金属水酸化物(特に、水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウム)、ガラス繊維またはガラス繊維製品(バー(bar)、ストランドまたはガラスマイクロビーズ)、熱可塑性物質(特に、ポリアミド、ポリエステル、アラミド、ポリカーボネート、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンまたはトランス−1,4−ポリブタジエン)およびセルロース、セルロース誘導体またはデンプンからなる群の充填剤である。
本発明の複合体のエラストマー部材のエラストマー材料においてさらに素練り剤を使用する場合、チオフェノール、チオフェノール亜鉛塩、置換芳香族ジスルフィド、過酸化物、チオカルボン酸誘導体、ニトロソ化合物、ヒドラジン誘導体、Porofor(発泡剤)または金属錯体、特に、ヘミポルフィラジン鉄、フタロシアニン鉄、鉄アセトニルアセテート(iron acetonylacetate)またはその亜鉛塩からなる群の少なくとも1種の素練り剤を使用することが好ましい(J.Schnetger“Lexikon der Kautschuktechnik”,第3版,Huethig Verlag Heidelberg,2004年,1〜2頁)。素練り剤の作用形態は欧州特許出願公開第0603611A1号明細書に記載されている。
本発明の複合体のエラストマー部材のエラストマー材料にさらに可塑剤を使用する場合、パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油、芳香族系鉱油、脂肪族エステル、芳香族エステル、ポリエステル、リン酸エステル、エーテル、チオエーテル、天然脂肪または天然油からなる群の少なくとも1種の可塑剤を使用することが好ましい(F.Roethemeyer,F.Sommer“Kautschuktechnologie”,第2改訂版,Carl Hanser Verlag Munich Vienna,2006年,329〜337頁)。
本発明の複合体のエラストマー部材のエラストマー材料にさらに加工助剤を使用する場合、脂肪酸、脂肪酸誘導体、脂肪酸エステル、脂肪族アルコールおよびファクチスからなる群の少なくとも1種の加工助剤を使用することが好ましい(F.Roethemeyer,F.Sommer“Kautschuktechnologie”,第2改訂版,Carl Hanser Verlag Munich Vienna,2006年,337〜338頁)。油ゴムとしても知られるファクチスは、不飽和鉱油および植物油、欧州では特に菜種油(rapeseed oil、colza oil)またはヒマシ油、米国ではさらに大豆油を架橋させることにより生成するゴム様材料である。このことに関しては、http://de.wikipedia.org/wiki/Faktisも参照されたい。
本発明の複合部材のエラストマー部材に使用されるエラストマー材料にさらに老化安定剤、紫外線安定剤およびオゾン安定化剤を使用する場合、紫外線安定剤、特にカーボンブラック(既に充填剤として使用されていない場合)または二酸化チタン、オゾン劣化防止ワックス、ハイドロパーオキサイドを分解する添加剤(リン酸トリス(ノニルフェニル))、重金属安定剤、置換フェノール、ジアリールアミン、置換p−フェニレンジアミン、複素環式メルカプト化合物、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスおよびパラフェニレンジアミンからなる群の少なくとも1種の老化安定剤、紫外線安定剤およびオゾン安定化剤を使用することが好ましい(F.Roethemeyer,F.Sommer“Kautschuktechnologie”,第2改訂版,Carl Hanser Verlag Munich Vienna,2006年,338〜344頁)。
本発明の複合部材のエラストマー部材のエラストマー材料にさらに粘着付与剤樹脂を使用する場合、天然樹脂、炭化水素樹脂およびフェノール樹脂からなる群の少なくとも1種の粘着付与剤樹脂を使用することが好ましい(F.Roethemeyer,F.Sommer“Kautschuktechnologie”,第2改訂版,Carl Hanser Verlag Munich Vienna,2006年,345〜346頁)。
本発明の複合体のエラストマー部材のエラストマー材料にさらに顔料および染料を使用する場合、二酸化チタン(既に紫外線安定剤として使用されていない場合)、リトポン、酸化亜鉛、酸化鉄、ウルトラマリン、酸化クロム、硫化アンチモンおよび有機染料からなる群の少なくとも1種の顔料または染料を使用することが好ましい(F.Roethemeyer,F.Sommer“Kautschuktechnologie”,第2改訂版,Carl Hanser Verlag Munich Vienna,2006年,345頁)。
本発明の複合体のエラストマー部材のエラストマー材料にさらに発泡剤を使用する場合、ベンゼンスルホヒドラジド、ジニトロソペンタメチレンテトラミンおよびアゾジカルボンアミドからなる群の少なくとも1種の発泡剤を使用することが好ましい(F.Roethemeyer,F.Sommer“Kautschuktechnologie”,第2改訂版,Carl Hanser Verlag Munich Vienna,2006年,346頁)。
本発明の複合体のエラストマー部材のエラストマー成分にさらに難燃剤を使用する場合、酸化アルミニウム水和物、ハロゲン系難燃剤およびリン系難燃剤からなる群の少なくとも1種の難燃剤を使用することが好ましい(F.Roethemeyer,F.Sommer“Kautschuktechnologie”,第2改訂版,Carl Hanser Verlag Munich Vienna,2006年,346頁)。
本発明の複合体のエラストマー部材のエラストマー成分に離型剤を使用する場合、飽和および一部不飽和脂肪酸ならびにオレイン酸およびその誘導体、特に脂肪酸エステル、脂肪酸塩、脂肪族アルコールおよび脂肪酸アミドからなる群の少なくとも1種の離型剤を使用することが好ましい。離型剤を金型表面に適用する場合、好ましくは低分子量シリコーン化合物をベースとする製品、含フッ素重合体をベースとする製品およびフェノール樹脂をベースとする製品を使用することができる。
本発明の複合体のエラストマー部材のエラストマー材料に加硫物を補強するための補強要素(繊維)を使用する場合、米国特許第4,826,721A号明細書によるガラスをベースとする繊維;または脂肪族もしくは芳香族ポリアミド(Nylon(登録商標)、Aramid(登録商標))、ポリエステルもしくは天然繊維製品の、紐、織布、繊維の形態にある少なくとも1種の補強要素を使用することが好ましい。ステープル繊維または連続繊維のいずれかを使用することも可能である(J.Schnetger“Lexikon der Kautschuktechnik”,第3版,Huethig Verlag Heidelberg,2004年,498頁および528頁)。ゴム産業に慣用されている補強要素の例の一覧が、例えば、F.Roethemeyer,F.Sommer“Kautschuktechnologie”,第2改訂版,Carl Hanser Verlag Munich Vienna,2006年,823〜827頁に記載されている。
本発明の範囲に包含される本発明の複合体のエラストマー部材のエラストマー材料の実施形態が、発泡加硫物、多孔質ゴムまたは発泡ゴムである(J.Schnetger“Lexikon der Kautschuktechnik”,第3版,Huethig Verlag Heidelberg,2004年,322〜323頁および618頁)。発泡加硫物は、好ましくは発泡剤を利用して製造される。
好ましくは、本発明の付形方法に用いられる、硫黄で架橋される本発明の複合体のエラストマー部材のエラストマー材料は、少なくとも1種のゴム、硫黄および任意選択的なさらなる構成成分を密閉式混合機またはロールミルを用いる混合物加工と呼ばれる操作により加工することによって調製され、これが実際の付形方法に使用される加硫可能なゴム混合物となる。この混合物の加工操作において、エラストマー材料を得るためのゴム混合物の構成成分は互いに緊密に混合される。原則として、この混合物は密閉式混合機またはロールミルを用いて回分方式で製造することも、あるいは押出機を用いて連続方式で製造することもできる(J.Schnetger“Lexikon der Kautschuktechnik”,第3版,Huethig Verlag Heidelberg,2004年,275頁および315〜318頁)。
ポリアミド部分
本発明の複合体のポリアミド部分に使用するためのポリアミドは、好ましくは、ジアミンおよびジカルボン酸の組合せから、またはω−アミノカルボン酸から、またはラクタムから調製される。好ましく使用されるポリアミドは、PA6、PA66、PA610(CAS No.9011−52−3)、PA88、PA612(CAS No.26098−55−5)、PA810、PA108、PA9、PA613、PA614、PA812、PA1010、PA10、PA814、PA148、PA1012、PA11(CAS No.25035−04−5)、PA1014、PA1212またはPA12(CAS No.29437−16−4)である。本発明によれば、2色射出成形操作用として、ポリアミド成形用組成物PA6またはPA66(CAS No.32131−17−2)、特にPA6(CAS No.25038−54−4)を使用することが特に好ましい。ポリアミドの調製は先行技術である。上述のポリアミドをベースとするコポリアミドの使用も可能であることが理解されるであろう。
ポリアミドを調製するための方法としては、所望の最終生成物に応じて、異なるモノマー単位を使用する方法、所望の分子量を確立するための様々な連鎖移動剤を使用する方法、または後段で意図されている後処理のための反応性基を有するモノマーを使用する方法が多数知られるようになった。本発明の複合体に使用されるポリアミド材料を調製するための工業的に適した方法は、好ましくは、溶融物中における重縮合、または適切なラクタムの重付加により行われる。ラクタムの重付加反応としては、加水分解重合、アルカリ重合、活性アニオンラクタム重合および活性カチオンラクタム重合が挙げられる。熱重縮合およびラクタム重合によるポリアミドの調製は当業者に知られている;特に、Nylon Plastics Handbook,Hanser−Verlag Munich 1995年,17〜27頁およびKunststoff−Handbuch[Plastics Hadbook]3/4,Polyamide[Polyamides],Carl Hanser Verlag,Munich 1998年,22〜57頁を参照されたい。
本発明の複合体のポリアミド材料用として本発明に従い好ましく使用されるポリアミドは、ジアミンおよびジカルボン酸から、および/または少なくとも5員環のラクタムもしくは対応するアミノ酸から出発して調製することができる部分結晶性(semicrystalline)脂肪族ポリアミドである。本発明に関するポリアミドの命名は国際標準に対応しており、最初の数字は出発ジアミンの炭素原子数を表し、最後の数字はジカルボン酸の炭素原子数を表す。数字が1個しか記載されていない場合、これは出発物質がα,ω−アミノカルボン酸またはこれから誘導されたラクタムであることを表す。さらなる情報については、H.Domininghaus,Die Kunststoffe und ihre Eigenschaften[The Polymers and Their Properties],272ff.頁,VDI−Verlag,1976年を参照されたい。独国特許出願公開第102011084519A1号明細書によれば、部分結晶性ポリアミドは、ISO 11357に準ずるDSC法で測定された、2回目昇温における融解ピークの積分値である融解エンタルピーが25J/gを超えるものである。これは、このポリアミドを、ISO 11357に準ずるDSC法により測定された2回目昇温の融解ピークの積分値である融解エンタルピーが4〜25J/gの範囲にある半結晶性(semicrystalline)ポリアミドと、融解エンタルピーが4J/g未満である非晶質ポリアミドと区別するものである。
本発明の複合体のポリアミドをベースとする部材を調製するのに有用な反応体は、好ましくは、脂肪族および/または芳香族ジカルボン酸、より好ましくは、アジピン酸、2,2,4−トリメチルアジピン酸、2,4,4−トリメチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、脂肪族および/または芳香族ジアミン、より好ましくはテトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナン−1,9−ジアミン、2,2,4−および2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、ジアミノジシクロヘキシルメタン異性体、ジアミノジシクロヘキシルプロパン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、アミノカルボン酸、特にアミノカプロン酸、または対応するラクタムである。上述の複数のモノマーのコポリアミドも包含される。
特に好ましくは、ナイロン−6(PA−6)、ナイロン−6,6(PA−66)またはカプロラクタムをコモノマーとして含むコポリアミドであり、部分結晶性ランダム脂肪族コポリアミド、特にPA6/66が非常に好ましい。
好ましくは、ポリアミドの調製には特にε−カプロラクタム(CAS No.105−60−2)が使用される。シクロヘキサノンオキシムの調製は、まずシクロヘキサノンをヒドロキシルアミンの硫酸水素塩または塩酸塩と反応させることにより行われる。これをベックマン転位によりε−カプロラクタムに変換する。
ヘキサメチレンジアミンアジペート(CAS No.3323−53−3)はアジピン酸およびヘキサメチレンジアミンの反応生成物である。その用途の一つに、ナイロン−6,6を調製するための中間体がある。慣用名であるAH塩は出発物質の最初の文字に由来する。本発明に従い使用するための半結晶性PA6および/またはPA66は、例えば、Durethan(登録商標)の名称でLanxess Deutschland GmbH(Cologne,Germany)から入手することができる。
これらのポリアミドの混合物も所望に応じた混合比で使用できることが理解されるであろう。ポリアミド部分に一部再生ポリアミド成形用組成物および/または再生繊維を存在させることも可能である。
異なるポリアミドの混合物(十分な混和性があると想定する)を使用することも可能である。混和性を有するポリアミドの組合せは当業者に知られている。好ましく使用されるポリアミドの組合せは、PA6/PA66、PA12/PA1012、PA12/1212、PA612/PA12、PA613/PA12、PA1014/PA12またはPA610/PA12、およびPA11との対応する組合せ、より好ましくはPA6/PA66である。確信がない場合は、所定の試験により混和性のある組合せを確認することができる。
脂肪族ポリアミドに替えて、有利には、ISO 11357−3に準拠する微結晶融点Tmが好ましくは少なくとも250℃、より好ましくは少なくとも260℃、特に好ましくは少なくとも270℃である、8〜22個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸を5〜100mol%の範囲で含むジカルボン酸成分に由来する部分芳香族ポリアミドを使用することも可能である。この種類のポリアミドは、通常、追加の符号T(T=部分芳香族)で示される。これらはジアミンおよびジカルボン酸の組合せから、場合によりω−アミノカルボン酸または対応するラクタムを添加して調製することができる。好適な種類は、好ましくはPA66/6T、PA6/6T、PA6T/MPMDT(MPMDは2−メチルペンタメチレンジアミンを表す)、PA9T、PA10T、PA11T、PA12T、PA14T;これらの後者のタイプと、脂肪族ジアミンおよび脂肪族ジカルボン酸との共縮重合物、ω−アミノカルボン酸との共縮重合物、またはラクタムとの共縮重合物である。部分芳香族ポリアミドはまた、他のポリアミドとのブレンド、好ましくは脂肪族ポリアミド、より好ましくはPA6、PA66、PA11またはPA12とのブレンドの形態で使用することもできる。
他の好適なポリアミドの種類は透明ポリアミドである。ほとんどの場合これらは非晶質であるが、微結晶性の場合もある。これらは単独で使用することもできるし、あるいは脂肪族および/または部分芳香族ポリアミドとの混合物として、好ましくはPA6、PA66、PA11またはPA12との混合物として使用することもできる。良好な接着の達成に透明度は無関係である。ここで決定的に重要なのは、ISO 11357−3に準拠して測定されたガラス転移点Tgが少なくとも110℃、好ましくは少なくとも120℃、より好ましくは少なくとも130℃、より好ましくは少なくとも140℃であることにある。好ましい透明ポリアミドは:
− 1,12−ドデカン二酸および4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンから生成するポリアミド(PAPACM12)、特に、トランス,トランス体含有量が35%〜65%である4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンから出発することにより生成するポリアミド;
− テレフタル酸および/またはイソフタル酸ならびに2,2,4−および2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンの異性体混合物から生成するポリアミド;
− イソフタル酸および1,6−ヘキサメチレンジアミンから生成するポリアミド;
− テレフタル酸/イソフタル酸および1,6−ヘキサメチレンジアミンの混合物から、場合により4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンとの混合物から生成するコポリアミド;
− テレフタル酸および/またはイソフタル酸、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンおよびラウロラクタムまたはカプロラクタムのコポリアミド;
− 1,12−ドデカン二酸またはセバシン酸、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンおよび場合によりラウロラクタムまたはカプロラクタムから生成する(コ)ポリアミド;
− イソフタル酸、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンおよびラウロラクタムまたはカプロラクタムから生成するコポリアミド;
− 1,12−ドデカン二酸および4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン(トランス,トランス体含有量が低いもの)から生成するポリアミド;
− テレフタル酸および/またはイソフタル酸およびアルキル置換ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン類縁体(場合によりヘキサメチレンジアミンとの混合物)から生成するコポリアミド;
− ビス(4−アミノ−3−メチル−5−エチル−シクロヘキシル)メタン(場合により、他のジアミンを一緒に含む)と、イソフタル酸(場合により、他のジカルボン酸を一緒に含む)とから生成するコポリアミド;
− m−キシリレンジアミンおよびさらなるジアミン(例えば、ヘキサメチレンジアミン)と、イソフタル酸(場合によりさらなるジカルボン酸、例えば、テレフタル酸および/または2,6−ナフタレンジカルボン酸を一緒に含む)とから生成するコポリアミド;
− ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンおよびビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタンおよび8〜14個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸の混合物から生成するコポリアミド;および
− 1,14−テトラデカン二酸と、アリール脂肪族ジアミンまたは脂環式ジアミンとを含む混合物から生成するポリアミドまたはコポリアミド
である。
透明ポリアミドは、さらなる材料、好ましくはカプロラクタム、ラウロラクタムまたはジアミン/ジカルボン酸の組合せを添加することにより、または出発材料を他の材料に部分的にもしくは完全に交換することにより、大幅に変化させることができる。
ポリアミドを生成するモノマーとして使用されるラクタムまたはω−アミノカルボン酸は、4〜19個、好ましくは6〜12個の炭素原子を有する。特に好ましくは、ε−カプロラクタム、ε−アミノカプロン酸、カプリロラクタム、ω−アミノカプリル酸、ラウロラクタム、ω−アミノドデカン酸および/またはω−アミノウンデカン酸が使用される。
ジアミンおよびジカルボン酸の好ましい組合せは、ヘキサメチレンジアミン/アジピン酸、ヘキサメチレンジアミン/ドデカン二酸、オクタメチレンジアミン/セバシン酸、デカメチレンジアミン/セバシン酸、デカメチレンジアミン/ドデカン二酸、ドデカメチレンジアミン/ドデカン二酸、およびドデカメチレンジアミン/ナフタレン−2,6−ジカルボン酸である。さらに、他のあらゆる組合せ、特に、デカメチレンジアミン/ドデカン二酸/テレフタル酸、ヘキサメチレンジアミン/アジピン酸/テレフタル酸、ヘキサメチレンジアミン/アジピン酸/カプロラクタム、デカメチレンジアミン/ドデカン二酸/ω−アミノウンデカン酸、デカメチレンジアミン/ドデカン二酸/ラウロラクタム、デカメチレンジアミン/テレフタル酸/ラウロラクタム、またはドデカメチレンジアミン/ナフタレン−2,6−ジカルボン酸/ラウロラクタムを使用することも可能である。
本発明に関するポリアミド成形用組成物は、本発明の複合体のポリアミド部分を製造するためのポリアミド配合物であり、加工性を改善するかまたは使用性を改良するようになされている。好ましい実施形態において、これらのポリアミド成形用組成物は、ポリアミドおよび液状ポリブタジエンコポリマーに加えて、次に示す添加剤の少なくとも1種を含む:
a)耐衝撃性改良剤として機能する他のポリマー、ABS(ABS=アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)またはポリフェニレンエーテル。本明細書においては転相が確実に起こらないようにすべきであり、これは、成形用組成物のマトリックスがポリアミドから形成されているか、または少なくとも相互侵入網目構造が存在することを意味する。当業者は、相構造が主として個々のポリマーの体積比および溶融粘度に依存することを認識している。他のポリマーの溶融粘度がポリアミドの溶融粘度よりもかなり高い場合は、ポリアミドが例え熱可塑性物質部分の50体積パーセント未満程度、例えば約40体積パーセント程度で存在しても、マトリックスを形成する。これは特に、ポリフェニレンエーテルとのブレンドの場合に該当する;
b)補強繊維、特に円形または扁平断面を有するガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ステンレス鋼の繊維またはチタン酸カリウムウィスカー;
c)充填剤、特にタルク、雲母、ケイ酸塩、石英、二酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化鉄、硫化亜鉛、グラファイト、二硫化モリブデン、二酸化チタン、珪灰石、カオリン、非晶質シリカ、炭酸マグネシウム、白亜、石灰、長石、硫酸バリウム、導電性カーボンブラック(conductive black)、グラファイトフィブリル、中実ガラスビーズ、中空ガラスビーズまたは粉砕ガラス;
d)可塑剤、特に、アルコール部分に2〜20個の炭素原子を有する、p−ヒドロキシ安息香酸のエステル、またはアミン部分に2〜12個の炭素原子を有するアリールスルホン酸のアミド、好ましくはベンゼンスルホン酸のアミド;
e)顔料および/または染料、特にカーボンブラック、酸化鉄、硫化亜鉛、二酸化チタン、ウルトラマリン、ニグロシン、真珠光沢顔料または金属フレーク;
f)難燃剤、特に三酸化アンチモン、ヘキサブロモシクロドデカン、テトラブロモビスフェノール、ホウ酸塩、赤リン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メラミンシアヌレートおよびその縮合物(メラム、メレム、メロン等)、メラミン化合物、特にピロリン酸メラミンまたはポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウムおよび有機リン化合物またはその塩、特にレゾルシノールジフェニルホスフェート、ホスホン酸エステルまたはホスフィン酸金属塩;
g)加工助剤、特に、パラフィン、脂肪族アルコール、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、脂肪酸加水分解物、パラフィンワックス、モンタン酸エステル、モンタンワックスまたはポリシロキサン;および
h)安定剤、特に、銅塩、モリブデン塩、銅錯体、亜リン酸塩、立体障害フェノール、2級アミン、紫外線吸収剤またはHALS安定剤。
本発明のポリアミド材料に含まれる、本発明に従い使用される液状ポリブタジエンコポリマーは、様々な方法で、ポリアミド中に、または本発明の複合体のポリアミド部材のポリアミド材料中に組み込まれる。好ましい実施形態においては、液状ポリブタジエンコポリマーを、ポリアミド成形用組成物の配合時に他の添加物質と一緒にポリアミドに添加するか、またはマスターバッチとして配合時にポリアミドに添加するか、またはポリアミド成形用組成物との混合物として(通常ペレット形態で使用される)、計量漏斗を介して射出成形装置に供給する。
他の好ましい実施形態において、ポリブタジエンコポリマーを含むポリアミド成形用組成物は、ポリブタジエンコポリマー含有ポリアミド成形用組成物と、さらなる非ポリブタジエンコポリマー含有ポリアミド成形用組成物との粒状混合物(乾燥混合物すなわちドライブレンド;Die Kunststoffe−Chemie,Physik,Technologie,編集B.Carlowitz,Carl Hanser Verlag Munich Vienna,1990年,266頁参照)から製造され、このようにして、ポリブタジエンコポリマー濃度が調整されたポリアミド成形用組成物が得られる。
さらなる他の好ましい実施形態においては、RTで液状であるポリブタジエンコポリマーを好適な溶媒に溶解した溶液を、ポリアミドを好適な溶媒に溶解した溶液と混合する。この溶液から出発する場合、溶媒を留去し、乾燥した後、ポリブタジエンコポリマー含有ポリアミド成形用組成物が得られる。
特に好ましくは、RTで液状であるポリブタジエンコポリマーは、配合時、特に好ましくは添加物質と一緒に配合する際に、射出成形装置の計量漏斗内で他の添加物質と一緒にポリアミドに添加される。
方法
本発明の複合部材は、好ましくは、押出、フィルム押出、インフレーション成形、ブロー成形、共押出、カレンダ成形、注型、圧縮法、射出圧縮成形法、トランスファ成形法、射出トランスファ成形法または射出成形またはその特殊な方法、特にガスインジェクション技術からなる群から選択され、より好ましくは、多色射出成形、非常に好ましくは2色射出成形(2K射出成形とも称される)からなる群の少なくとも1種の付形方法により、1段階または2段階で製造される。
本発明による押出による付形方法とは、ポリマー半製品、特に、フィルム、シート、チューブ、または異形材の連続製造を意味すると理解される。押出法においては、加工すべきポリマー組成物(本発明においてはポリアミド組成物)が、スクリューおよびバレルから構成される押出機と称される装置の金型を介して圧力下に連続的に押し出される。実際は、単軸押出機または二軸押出機または特殊な設計の押出機が使用される。選択される金型に応じて押出物に所望の断面形状が付与される(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,第7版,第28巻,Plastics Processing,Wiley−VCH Verlag,Weinheim,2011年,169〜177頁)。
ゴム混合物を押出す場合は、金型を通過させた後に加硫が行われる。加硫プロセスは加圧加硫プロセスおよび常圧加硫プロセスに区別される(F.Roethemeyer,F.Sommer“Kautschuktechnologie”,第2改訂版,Carl Hanser Verlag Munich Vienna,2006年,597〜727頁)。共押出による付形方法においては、ポリアミド成形用組成物およびゴム組成物が付形オリフィスの上流で合一され、押出物を加硫することにより、ポリアミドおよびエラストマーの複合体が得られる(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,第7版,第28巻,Plastics Processing,Wiley−VCH Verlag,Weinheim,2011年,177頁)。ポリアミド成形用組成物およびゴム組成物の共押出は、順次、すなわち一方を他方の下流で行うこともできる(F.Roethemeyer,F.Sommer“Kautschuktechnologie”,第2改訂版,Carl Hanser Verlag Munich Vienna,2006年,852〜853頁)。この2段階押出プロセスを経た後に接触および加硫によって仕上げを行う場合は、第1段階で製造したポリアミド成形用組成物の異形材(例えばチューブ)をゴム組成物で覆い、場合により加圧下に加硫することにより仕上げを行う。ポリアミド成形用組成物から形成されたシートにもこの手順が用いられる(F.Roethemeyer,F.Sommer“Kautschuktechnologie”,第2改訂版,Carl Hanser Verlag Munich Vienna,2006年,977〜978頁)。
付形方法としてフィルム押出、インフレーション成形、ブロー成形、共押出、カレンダ成形または注型を用いると、フィルムまたは積層体を得ることが可能である(Die Kunststoffe−Chemie,Physik,Technologie,編集B.Carlowitz,Carl Hanser Verlag Munich Vienna,1990年,422〜480頁)。これらの方法によりポリアミドおよび硫黄架橋されるゴム混合物を一体化させ、多層積層体または多層フィルムを得ることができる。場合により、フィルムの製造に続いてゴム部分を加硫することにより仕上げを行う。共押出された多層フィルムは包装技術において非常に重要である。
圧縮成形法を用いる場合は、まず最初に未加硫ゴム混合物から押出によってなまづくりを製造し、次いで打ち抜きまたは切削を行う。加硫温度に予熱された金型のキャビティになまづくりを装入する。圧力および熱を印加することにより所望の金型形状に付形し、加硫を開始する(F.Roethemeyer,F.Sommer“Kautschuktechnologie”,第2改訂版,Carl Hanser Verlag Munich Vienna,2006年,729〜738頁)。この手順は熱可塑性物質の圧縮成形にも用られる。その後、金型を冷却して脱型する(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,第7版,第28巻,Plastics Processing,Wiley−VCH Verlag,Weinheim,2011年,167頁)。
射出圧縮成形は反りのない高精度ポリマー部品を製造するための特殊な射出成形である。これは、金型の半型の間にわずかな隙間が生じるように型締力をわずかに低下させて、溶融ポリマーを金型に射出することを含む。金型のキャビティ全体に充填するように型締力を最大にし、その後、成形体を最終的に脱型する(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,第7版,第28巻,Plastics Processing,Wiley−VCH Verlag,Weinheim,2011年,187頁)。ゴムの射出圧縮成形においても同様に、ゴム混合物を加硫温度に加熱した金型に射出する。金型を締めた状態で付形および加硫を行う(F.Roethemeyer,F.Sommer“Kautschuktechnologie”,第2改訂版,Carl Hanser Verlag Munich Vienna,2006年,738〜739頁)。
トランスファ成形法および射出トランスファ成形法に関しては、F.Roethemeyer,F.Sommer“Kautschuktechnologie”,第2改訂版,Carl Hanser Verlag Munich Vienna,2006年,第12.3章および第12.4章,740〜753頁,ならびに第12.5章,753〜755頁を参照されたい。
射出成形は主としてポリマーの加工に使用される方法である。
この方法は、それ以上加工することなくそのまま使用できる成形体を経済的に実現可能な方法で大量に製造するために用いることができる。その場合、射出成形機を使用して特定の高分子材料を可塑化し、これを射出成形金型に注入する。金型のキャビティが最終部材の形状を決定する。今日、射出成形により、数十分の1グラム単位からキログラム単位(upper kilogram)の範囲の部材を製造可能である(Ullmann’s Encyclpedia of Industrial Chemistry,第7版,第28巻,Plastics Processing,Wiley−VCH Verlag,Weinheim,2011年,181〜189頁)。
多色射出成形の場合、射出成形プロセスで数種の材料を合一することにより複合部材を形成する。2色射出成形の場合、2種の材料を射出成形プロセスにおいて合一することにより複合部材を形成する。本発明によれば、ポリブタジエンコポリマーを含有するポリアミド材料およびエラストマー材料を2色射出成形プロセスで合一することにより複合部材を形成することが好ましい。2色射出成形プロセスは1段階プロセスまたは2段階プロセスのいずれかで実施することができる(F.Johannaber,W.Michaeli,Handbuch Spritzgiessssen[Injection Moulding Handbook],第2版,Carl Hanser Verlag Munich,2004年,506〜523頁;Handbuch Kunststoff−Verbindungstechnik,編集G.W.Ehrenstein,Carl Hanser Verlag Munich Vienna,1990年,517〜540頁)。
2段階プロセスを行う場合は、まず最初に本発明に従い使用されるポリブタジエンコポリマー含有ポリアミド成形用組成物が使用され、特に上述の加工方法のうちの1つ、好ましくは射出成形によって、高剛性の熱可塑性物質の成形体が製造される。この熱可塑性物質の成形体は所望に応じて保存することができる。
さらなる工程において、上述の加工方法の1種、好ましくは射出成形を行うことにより、熱可塑性物質の成形体をエラストマー材料に接触させ、これを加硫条件に付すことによりゴムが得られる。
この製造は、機械(1段階プロセス)を用いて、好ましくは回転盤(swivel plate)もしくはロータリーテーブル(turntable)を有する機械および/または同等の金型技術(好ましくは、第2材料を導入するために遅れてキャビティ領域を開放するスライド板(slide vane))を有する機械を用いて実施することもできる。通常、回転盤、ロータリーテーブルまたは1つもしくは2つ以上のスライド板を有する機械が使用される場合、第1サイクルにおいて、第1ステージの金型キャビティでポリアミド材料からプリフォームが製造される。金型を回転させるかまたは移送技術を用いることにより(例えば、180°または120°(3個取り金型の場合)回転させる回転技法によるか、またはコアバック法と呼ばれるスライド板を閉鎖する技法による)、形状の異なる最終射出成形用第2ステージにプリフォームを導入し、第2サイクルにおいて、元素硫黄で加硫または架橋されるゴムから得ることができるエラストマー部材用のゴム混合物を注入する。エラストマー材料が脱型安定性を達成した後、複合体を脱型することができる。
本発明による熱可塑性材料として使用されるポリアミドの溶融温度は、好ましくは180〜340℃の範囲、より好ましくは200〜300℃の範囲にある。熱可塑性物質の金型温度の温度制御範囲は、好ましくは20〜200℃の範囲、より好ましくは60〜180℃の範囲にある。元素硫黄で加硫または架橋されるゴムから得ることができる、エラストマー部材用ゴム混合物の可塑化バレル内における好ましい溶融温度は、20〜150℃の範囲、好ましくは60〜100℃の範囲にある。エラストマー材料の好ましい加硫温度は、120〜220℃の範囲、好ましくは140〜200℃の範囲にある。好ましい実施形態においては、エラストマー材料を金型キャビティから脱型した後、熱処理を行う。物理的な観点での熱処理は、固体を溶融温度未満の温度に加熱することを意味する。これは数分間から数日間までの長期間実施される。このようにして原子の移動度を増大させることによって構造欠陥を相殺することができ、短距離的および長距離的な結晶構造が改善される。このようにして、結晶構造が確立される溶融過程および(極度に)ゆっくりと冷却される過程を回避することができる。本発明に関する熱処理は、好ましくは、120〜220℃の範囲の温度、好ましくは140〜200℃の範囲の温度で行われる。
これらの値は、部品の形状(特に、厚みおよび流路長)、ゲート設計の種類および配置(特に、ホットまたはコールドランナ)ならびに具体的な材料の特性に大きく依存する。保圧段階は、好ましくは0〜3000barの範囲で、保圧時間は0秒から型開までとする。
本発明の他の好ましい実施形態においては、本発明の複合体は、ポリアミド部材およびエラストマー部材から、逆(inverse)2色射出成形と称される成形(2K射出成形)により製造される。すなわち、最初に軟質の材料、次いで硬質の材料の順に成形され、この場合も同様に、ポリアミド部材は本発明に従い使用するためのポリブタジエンコポリマー含有ポリアミド成形用組成物から製造され、エラストマー部材は遊離硫黄の存在下に架橋されるゴムから製造される。
したがって、逆2K射出成形においては、まず最初に、元素硫黄で加硫または架橋されるゴムから得ることができるゴム混合物を射出成形して加硫することによりエラストマー部材を得、次いで本発明に従い使用されるポリブタジエンコポリマー含有ポリアミド成形用組成物を射出成形する。(従来の)2K射出成形プロセスと全く同様に、好ましくは回転盤もしくはロータリーテーブルを有する機械ならびに/または同等の金型技術(好ましくは、第2材料を導入するために遅れてキャビティ領域を開放するスライド板)を有する機械で製造を行うことができる(1段階プロセス)。対応する射出成形パラメータは、(従来の)2K射出成形プロセスのパラメータを採用することができる(バレル温度、金型温度、加硫時間、保圧、保圧時間等)。エラストマー部分を完全に加硫せず、寸法安定性が得られるまで一部加硫し、次いでポリアミド成形用組成物を射出成形により適用する場合は、逆2K射出成形プロセスの利点が発揮される。その理由は、複合体全体を製造するサイクルタイムを短縮することが可能になるためである。ポリアミド部分を製造するためのサイクルタイムはエラストマー部分のサイクルタイムよりもはるかに短いため、驚くべきことに、この好ましいプロセスによって、複合体全体を製造するためのサイクルタイムを、エラストマー部分を製造するためのサイクルタイムまで短縮することが可能である。好ましい実施形態においては、逆2K射出成形も同様に、金型キャビティから複合体を脱型した後に熱処理を行う。
ポリアミドの射出成形プロセスの特徴は、原料すなわち使用される本発明の成形用組成物(好ましくはペレット形態)を加熱された円筒形空洞内で溶融(可塑化)し、これを射出成形材料として、温度制御されたキャビティに加圧下に射出するものである。材料を冷却(固化)した後、射出成形物を脱型する。
射出成形プロセスは次の構成ステップに分けられる:
1.可塑化/溶融
2.射出段階(充填操作)
3.保圧段階(結晶化過程の熱収縮に起因)
4.脱型。
この目的に使用される射出成形機は、型締装置、射出装置、駆動および制御系から構成される。型締装置は、金型の固定プラテンおよび可動プラテン、エンドプラテン、ならびに金型の可動プラテン用のタイバーおよび駆動手段(トグル機構または油圧型締装置)を含む。
射出装置は、電気加熱可能なバレル、スクリュー駆動手段(モーター、ギアボックス)、スクリューを駆動する油圧装置(必要な場合)、および射出装置を含む。射出装置が行う作業は、粉末またはペレットの溶融、その計量し、射出、保圧(収縮に起因する)の維持である。溶融物がスクリュー内で逆流する問題(漏れ流れ(leakage flow))は逆流防止弁で対処する。
射出成形においては、次いで流入するポリアミド溶融物を冷却し、それによって製造すべき部分(すなわち製造物または成形体)を製造する。この目的のためには2個の半金型が必ず必要となる。射出成形の機能は、次に示す系統に区別される:
− ランナー系統
− 付形部のための導入(shaping insert)
− 通気
− 機械による注型および衝撃吸収
− 脱型系統および運動伝達
− 温度制御。
ポリアミドの射出成形は、Kunststoff−Handbuch 3/4,Polyamide,Carl Hanser Verlag,Munich 1998年,315〜352頁も参照されたい。
加硫ゴム成形体を製造するための射出成形プロセスは、原料すなわち架橋されるゴム混合物を加熱された円筒状キャビティ内で可塑化させ、これを射出成形材料として加硫温度に加熱されたキャビティ内に加圧下に射出することを特徴とする。この材料を完全に加硫した後、射出成形体を脱型する。射出成形機のシリンダおよびスクリューはゴム加工の当業者に公知の方法で設計されており、金型は加硫温度に加熱可能である。ゴム部分の加硫時間は、ゴム混合物のみならず、加硫温度および製造されるゴム部分の形状にも依存する。これらは好ましくは15秒間〜15分間であり、温度が低くゴム部材の厚みが厚ければ加硫時間は長くなる(F.Roethemeyer,F.Sommer“Kautschuktechnologie”,第2改訂版,Carl Hanser Verlag Munich Vienna,2006年,755〜815頁)。
任意選択的な脱型助剤を外添する場合、これらは接着強度に悪影響を与えかねないため、材料の界面層に侵入しないように注意を払うべきである。
好ましくは、一実施形態において使用するための有用な脱型剤(滑剤または離型剤とも称される)は、混合物の構成成分として好ましく使用される、飽和および一部不飽和脂肪酸ならびにオレイン酸およびその誘導体、特に脂肪酸エステル、脂肪酸塩、脂肪族アルコール、脂肪酸アミドに加えて、金型表面に適用可能なさらなる製品、特に低分子量シリコーン化合物をベースとする製品、フッ素系ポリマーをベースとする製品およびフェノール樹脂をベースとする製品を含む。
脱型剤は、混合物の構成成分として、好ましくはゴム部分のエラストマー100phrを基準として、約0.1〜10phrの量、より好ましくは0.5〜5phrの量で使用される。
好ましい実施形態において、本発明は、少なくとも1種のポリアミド成形用組成物から製造される少なくとも1種の部材と、少なくとも1種のエラストマー部材とから構成される複合部材であって、ポリアミド成形用組成物は、
a)ポリアミドを60〜99.9重量部と、
b)RTで液状である少なくとも1種のポリブタジエンコポリマーを0.1〜40重量部と
の混合物を少なくとも30重量%含み、a)およびb)の重量部の総和は100であり、ポリブタジエンコポリマーの、DIN 53019に準拠し、コーン/プレート法で、剪断速度50 1/s、標準圧力および25℃の温度で測定された粘度は100〜1000000mPasの範囲にあり、使用されるポリアミドはPA6またはPA66であり、エラストマー部材には、架橋剤としての元素硫黄で架橋されるNR、EPDM、NBR、CR、BR、SBR、XNBRからなる群の少なくとも1種のゴムが使用されることを特徴とする、複合部材に関する。
好ましい実施形態において、本発明は、少なくとも1種のポリアミド成形用組成物から製造される少なくとも1種の部材と、少なくとも1種のエラストマー部材とから構成される複合部材であって、ポリアミド成形用組成物は、
a)ポリアミドを60〜99.9重量部と、
b)RTで液状である少なくとも1種のポリブタジエンコポリマーを0.1〜40重量部と
の混合物を少なくとも30重量%含み、a)およびb)の重量部の総和は100であり、ポリブタジエンコポリマーの、DIN 53019に準拠し、コーン/プレート法で、剪断速度50 1/s、標準圧力および25℃の温度で測定された粘度は100〜1000000mPasの範囲にあり、使用されるポリアミドはPA6であり、エラストマー部材には、架橋剤としての元素硫黄で架橋されるNR、EPDM、NBR、CR、BR、SBR、XNBRからなる群の少なくとも1種のゴムが使用されることを特徴とする、複合部材に関する。
好ましい実施形態において、本発明は、少なくとも1種のポリアミド成形用組成物から製造される少なくとも1種の部材と、少なくとも1種のエラストマー部材とから構成される複合部材であって、ポリアミド成形用組成物は、
a)ポリアミドを60〜99.9重量部と、
b)RTで液状である少なくとも1種のポリブタジエンコポリマーを0.1〜40重量部と
の混合物を少なくとも30重量%含み、a)およびb)の重量部の総和は100であり、ポリブタジエンコポリマーの、DIN 53019に準拠し、コーン/プレート法で、剪断速度50 1/s、標準圧力および25℃の温度で測定された粘度は100〜1000000mPasの範囲にあり、使用されるポリアミドはPA66であり、エラストマー部材には、架橋剤としての元素硫黄で架橋されるNR、EPDM、NBR、CR、BR、SBR、XNBRからなる群の少なくとも1種のゴムが使用されることを特徴とする、複合部材に関する。
好ましい実施形態において、本発明は、少なくとも1種のポリアミド成形用組成物から製造される少なくとも1種の部材と、少なくとも1種のエラストマー部材とから構成される複合部材であって、ポリアミド成形用組成物は、
a)ポリアミドを60〜99.9重量部と、
b)RTで液状であるSBRまたはNBRを0.1〜40重量部と
の混合物を少なくとも30重量%含み、a)およびb)の重量部の総和は100であり、使用されるポリアミドはPA6またはPA66であり、エラストマー部材には、架橋剤としての元素硫黄で架橋されるNR、EPDM、NBR、CR、BR、SBR、XNBRからなる群の少なくとも1種のゴムが使用されることを特徴とする、複合部材に関する。
好ましい実施形態において、本発明は、少なくとも1種のポリアミド成形用組成物から製造される少なくとも1種の部材と、少なくとも1種のエラストマー部材とから構成される複合部材であって、ポリアミド成形用組成物は、
a)ポリアミドを60〜99.9重量部と、
b)RTで液状である少なくとも1種のSBRまたはNBRを0.1〜40重量部と
の混合物を少なくとも30重量%含み、a)およびb)の重量部の総和は100であり、使用されるポリアミドはPA6であり、エラストマー部材には、架橋剤としての元素硫黄で架橋されるNR、EPDM、NBR、CR、BR、SBR、XNBRからなる群の少なくとも1種のゴムが使用されることを特徴とする、複合部材に関する。
好ましい実施形態において、本発明は、少なくとも1種のポリアミド成形用組成物から製造される少なくとも1種の部材と、少なくとも1種のエラストマー部材とから構成される複合部材であって、ポリアミド成形用組成物は、
a)ポリアミドを60〜99.9重量部と、
b)RTで液状である少なくとも1種のSBRまたはNBRを0.1〜40重量部と
の混合物を少なくとも30重量%含み、a)およびb)の重量部の総和は100であり、使用されるポリアミドはPA66であり、エラストマー部材には、架橋剤としての元素硫黄で架橋されるNR、EPDM、NBR、CR、BR、SBR、XNBRの群からの少なくとも1種のゴムが使用されることを特徴とする、複合部材に関する。
好ましい実施形態において、本発明は、少なくとも1種のポリアミド成形用組成物から製造される少なくとも1種の部材と、少なくとも1種のエラストマー部材とから構成される複合部材であって、ポリアミド成形用組成物は、
a)ポリアミドを60〜99.9重量部と、
b)RTで液状である少なくとも1種のSBRを0.1〜40重量部と
の混合物を少なくとも30重量%含み、a)およびb)の重量部の総和は100であり、使用されるポリアミドはPA6であり、エラストマー部材には、架橋剤としての元素硫黄で架橋されるNR、EPDM、NBR、CR、BR、SBR、XNBRからなる群の少なくとも1種のゴムが使用されることを特徴とする、複合部材に関する。
好ましい実施形態において、本発明は、少なくとも1種のポリアミド成形用組成物から製造される少なくとも1種の部材と、少なくとも1種のエラストマー部材とから構成される複合部材であって、ポリアミド成形用組成物は、
a)ポリアミドを60〜99.9重量部と、
b)RTで液状である少なくとも1種のSBRを0.1〜40重量部と
の混合物を少なくとも30重量%含み、a)およびb)の重量部の総和は100であり、使用されるポリアミドはPA66であり、エラストマー部材には、架橋剤としての元素硫黄で架橋されるNR、EPDM、NBR、CR、BR、SBR、XNBRからなる群の少なくとも1種のゴムが使用されることを特徴とする、複合部材に関する。
好ましい実施形態において、本発明は、少なくとも1種のポリアミド成形用組成物から製造される少なくとも1種の部材と、少なくとも1種のエラストマー部材とから構成される複合部材であって、ポリアミド成形用組成物は、
a)ポリアミドを60〜99.9重量部と、
b)RTで液状である少なくとも1種のSBRを0.1〜40重量部と
の混合物を少なくとも30重量%を含み、a)およびb)の重量部の総和は100であり、使用されるポリアミドはPA6であり、エラストマー部材には、架橋剤としての元素硫黄で架橋されるNRゴムが使用されることを特徴とする、複合部材に関する。
好ましい実施形態において、本発明は、少なくとも1種のポリアミド成形用組成物から製造される少なくとも1種の部材と、少なくとも1種のエラストマー部材とから構成される複合部材であって、ポリアミド成形用組成物は、
a)ポリアミドを60〜99.9重量部と、
b)RTで液状である少なくとも1種のSBRを0.1〜40重量部と
の混合物を少なくとも30重量%含み、a)およびb)の重量部の総和は100であり、使用されるポリアミドはPA66であり、エラストマー部材には、架橋剤としての元素硫黄で架橋されるNRゴムが使用されることを特徴とする、複合部材に関する。
好ましい実施形態において、本発明は、少なくとも1種のポリアミド成形用組成物から製造される少なくとも1種の部材と、少なくとも1種のエラストマー部材とから構成される複合部材であって、ポリアミド成形用組成物は、
a)ポリアミドを60〜99.9重量部と、
b)RTで液状である少なくとも1種のSBRを0.1〜40重量部と
の混合物を少なくとも30重量%含み、a)およびb)の重量部の総和は100であり、使用されるポリアミドはPA6であり、エラストマー部材には、架橋剤としての元素硫黄で架橋されるEPDMゴムが使用されることを特徴とする、複合部材に関する。
好ましい実施形態において、本発明は、少なくとも1種のポリアミド成形用組成物から製造される少なくとも1種の部材と、少なくとも1種のエラストマー部材とから構成される複合部材であって、ポリアミド成形用組成物は、
a)ポリアミドを60〜99.9重量部と、
b)RTで液状である少なくとも1種のSBRを0.1〜40重量部と
の混合物を少なくとも30重量%含み、a)およびb)の重量部の総和は100であり、使用されるポリアミドはPA66であり、エラストマー部材には、架橋剤としての元素硫黄で架橋されるEPDMゴムが使用されることを特徴とする、複合部材に関する。
好ましい実施形態において、本発明は、少なくとも1種のポリアミド成形用組成物から製造される少なくとも1種の部材と、少なくとも1種のエラストマー部材とから構成される複合部材であって、ポリアミド成形用組成物は、
a)ポリアミドを60〜99.9重量部と、
b)RTで液状である少なくとも1種のSBRを0.1〜40重量部と
の混合物を少なくとも30重量%含み、a)およびb)の重量部の総和は100であり、使用されるポリアミドはPA6であり、エラストマー部材には、架橋剤としての元素硫黄で架橋されるNBRゴムが使用されることを特徴とする、複合部材に関する。
好ましい実施形態において、本発明は、少なくとも1種のポリアミド成形用組成物から製造される少なくとも1種の部材と、少なくとも1種のエラストマー部材とから構成される複合部材であって、ポリアミド成形用組成物は、
a)ポリアミドを60〜99.9重量部と、
b)RTで液状である少なくとも1種のSBRを0.1〜40重量部と
の混合物を少なくとも30重量%含み、a)およびb)の重量部の総和は100であり、使用されるポリアミドはPA66であり、エラストマー部材には、架橋剤としての元素硫黄で架橋されるNBRゴムが使用されることを特徴とする、複合部材に関する。
好ましい実施形態において、本発明は、少なくとも1種のポリアミド成形用組成物から製造される少なくとも1種の部材と、少なくとも1種のエラストマー部材とから構成される複合部材であって、ポリアミド成形用組成物は、
a)ポリアミドを60〜99.9重量部と、
b)RTで液状である少なくとも1種のSBRを0.1〜40重量部と
の混合物を少なくとも30重量%含み、a)およびb)の重量部の総和は100であり、使用されるポリアミドはPA6であり、エラストマー部材には、架橋剤としての元素硫黄で架橋されるCRゴムが使用されることを特徴とする、複合部材に関する。
好ましい実施形態において、本発明は、少なくとも1種のポリアミド成形用組成物から製造される少なくとも1種の部材と、少なくとも1種のエラストマー部材とから構成される複合部材であって、ポリアミド成形用組成物は、
a)ポリアミドを60〜99.9重量部と、
b)RTで液状である少なくとも1種のSBRを0.1〜40重量部と
の混合物を少なくとも30重量%含み、a)およびb)の重量部の総和は100であり、使用されるポリアミドはPA66であり、エラストマー部材には、架橋剤としての元素硫黄で架橋されるCRゴムが使用されることを特徴とする、複合部材に関する。
好ましい実施形態において、本発明は、少なくとも1種のポリアミド成形用組成物から製造される少なくとも1種の部材と、少なくとも1種のエラストマー部材から構成される複合部材であって、ポリアミド成形用組成物は、
a)ポリアミドを60〜99.9重量部と、
b)RTで液状である少なくとも1種のSBRを0.1〜40重量部と
の混合物を少なくとも30重量%含み、a)およびb)の重量部の総和は100であり、使用されるポリアミドはPA6であり、エラストマー部材には、架橋剤としての元素硫黄で架橋されるBRゴムが使用されることを特徴とする、複合部材に関する。
好ましい実施形態において、本発明は、少なくとも1種のポリアミド成形用組成物から製造される少なくとも1種の部材と、少なくとも1種のエラストマー部材とから構成される複合部材であって、ポリアミド成形用組成物は、
a)ポリアミドを60〜99.9重量部と、
b)RTで液状である少なくとも1種のSBRを0.1〜40重量部と
の混合物を少なくとも30重量%含み、a)およびb)の重量部の総和は100であり、使用されるポリアミドはPA66であり、エラストマー部材には、架橋剤としての元素硫黄で架橋されるBRゴムが使用されることを特徴とする、複合部材に関する。
好ましい実施形態において、本発明は、少なくとも1種のポリアミド成形用組成物から製造される少なくとも1種の部材と、少なくとも1種のエラストマー部材とから構成される複合部材であって、ポリアミド成形用組成物は、
a)ポリアミドを60〜99.9重量部と、
b)RTで液状である少なくとも1種のSBRを0.1〜40重量部と
の混合物を少なくとも30重量%含み、a)およびb)の重量部の総和は100であり、使用されるポリアミドはPA6であり、エラストマー部材には、架橋剤としての元素硫黄で架橋されるSBRゴムが使用されることを特徴とする、複合部材に関する。
好ましい実施形態において、本発明は、少なくとも1種のポリアミド成形用組成物から製造される少なくとも1種の部材と、少なくとも1種のエラストマー部材とから構成される複合部材であって、ポリアミド成形用組成物は、
a)ポリアミドを60〜99.9重量部と、
b)RTで液状である少なくとも1種のSBRを0.1〜40重量部と
の混合物を少なくとも30重量%含み、a)およびb)の重量部の総和は100であり、使用されるポリアミドはPA66であり、エラストマー部材には、架橋剤としての元素硫黄で架橋されるSBRゴムが使用されることを特徴とする、複合部材に関する。
好ましい実施形態において、本発明は、少なくとも1種のポリアミド成形用組成物から製造される少なくとも1種の部材と、少なくとも1種のエラストマー部材とから構成される複合部材であって、ポリアミド成形用組成物は、
a)ポリアミドを60〜99.9重量部と、
b)RTで液状である少なくとも1種のSBRを0.1〜40重量部と
の混合物を少なくとも30重量%含み、a)およびb)の重量部の総和は100であり、使用されるポリアミドはPA6であり、エラストマー部材には、架橋剤としての元素硫黄で架橋されるXNBRゴムが使用されることを特徴とする、複合部材に関する。
好ましい実施形態において、本発明は、少なくとも1種のポリアミド成形用組成物から製造される少なくとも1種の部材と、少なくとも1種のエラストマー部材とから構成される複合部材であって、ポリアミド成形用組成物は、
a)ポリアミドを60〜99.9重量部と、
b)RTで液状である少なくとも1種のSBRを0.1〜40重量部と
の混合物を少なくとも30重量%含み、a)およびb)の重量部の総和は100であり、使用されるポリアミドはPA66であり、エラストマー部材には、架橋剤としての元素硫黄で架橋されるXNBRゴムが使用されることを特徴とする、複合部材に関する。
非常に好ましい実施形態において、本発明は、少なくとも1種のポリアミド成形用組成物から製造される少なくとも1種の部材と、加硫剤としての元素硫黄で架橋することができる少なくとも1種のゴムから製造される少なくとも1種の部材とから構成される複合部材であって、ポリアミド成形用組成物は、次の材料:
a)ポリアミドを60〜99.9重量部、好ましくは75〜99.8重量部、より好ましくは85〜99.7重量部、最も好ましくは88〜99.5重量部と、
b)RTで液状である少なくとも1種のポリブタジエンコポリマー、好ましくはRTで液状である少なくとも1種のSBRを0.1〜40重量部、好ましくは0.2〜25重量部、より好ましくは0.3〜15重量部、最も好ましくは0.5〜12重量部と
の混合物を少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも45重量%、より好ましくは少なくとも55重量%、特に好ましくは少なくとも65重量%含み、a)およびb)の重量部の総和は100であることを特徴とする、複合部材に関する。
さらに本発明は、ポリアミド成形用組成物から製造される少なくとも1種の部材と、元素硫黄で加硫または架橋することができるゴムから得ることができるエラストマーから製造される少なくとも1種の部材とから構成される複合部材であって、少なくとも1種の付形方法により得られる複合部材の接着強度を向上するための、ポリアミド材料におけるRTで液状である少なくとも1種のポリブタジエンコポリマーの使用に関する。
1.使用されるポリアミド材料:
ポリアミド材料の組成を表1にまとめる。
ポリアミド材料の構成成分は、成形用組成物全体を基準とした質量部で記載する。
表1のポリアミド材料の製造:
表1によるポリアミド材料2の構成成分をCoperion GmbH(Stuttgart)(前Coperion Werner & Pfleiderer GmbH & Co.KG(Stuttgart))からのZSK 26二軸押出機にて混合することによりポリアミド成形用組成物を得た。溶融温度260〜300℃、処理量8〜60kg/hで配合を行った。溶融物をストランドとして水浴中に排出し、ペレット化した。
ポリアミド材料2の場合は、配合およびペレット化を行った後、配合およびペレット化により得られた表1に示す組成を有するポリアミド成形用組成物と、Durethan(登録商標)BKV30 H2.0 901510ポリアミド成形用組成物(LANXESS Deutschland GmbH(Cologne))とを等重量部(1:1)で乾燥混合し、ドライブレンドを得た。Durethan(登録商標)BKV30 H2.0 901510はポリブタジエンコポリマーを含まないので、ドライブレンドとしてのポリアミド材料2は、ポリブタジエンコポリマーRicon(登録商標)181の含有量が5%となる。
表1に、配合およびドライブレンド製造後に得られるポリアミド材料1〜2のポリブタジエンコポリマーおよびガラス繊維含有量を記載する。
配合およびドライブレンド製造後、ポリアミド成形用組成物を80℃の熱風乾燥機で4時間乾燥させ、次いで射出成形にて加工した。
2.使用するエラストマー材料:
加硫後にエラストマー材料となるゴム混合物の組成を表2に示す。
エラストマー材料のゴム混合物の構成成分をゴム100質量部を基準とする質量部で表す。
Werner & Pfleiderer GK 5E実験室用密閉式混合機にてゴム混合物を製造した。
3.DIN 53504に準拠する引張試験によるエラストマー材料の引張破壊応力および引張破壊ひずみの測定:
エラストマー材料の引張破壊応力および引張破壊ひずみを測定するために、DIN 53504に準拠する引張試験をDIN EN ISO 139に準拠する標準的な環境条件で行った。DIN ISO 23529に従い試験片を作製した。表2の組成に従い、Werner & Pfleiderer GK 5E実験室用密閉式混合機にてゴム混合物を製造し、165℃および200barで圧縮して加硫することにより厚さ2mmのシートを得た。次いでS2試験片を打抜き装置で打ち抜いた。試験片の厚みを測定した後、クランプで把持し、試験片に予備引張力(pretensioning force)を加え、次いで試験速度200mm/分で試験片が破断するまで応力を加え続けた。この試験により得られる結果が引張破壊応力および引張破壊ひずみである。引張試験結果を表3にまとめる。
表3から明らかなように、DIN 53504に準拠する引張試験で測定されたエラストマー材料Aの引張破壊応力σRは≧10MPaであり、DIN 53504に準拠する引張試験により測定されたエラストマー材料Aの引張破壊ひずみεRは≧300%であった。つまり、使用されるエラストマー材料は本発明の目的のために工業的に利用可能であると言える。
4.ポリアミド材料およびエラストマー材料の2色射出成形による複合体試験片の製造:
本発明の材料の組合せによる結合強度の増大を確認するために、多色射出成形法により複合体試験片を作製した。Engel Combimelt 200H/200L/80 2色射出成形機(Engel Austria GmbH(Schwertberg,Austria))を使用し、2個取り回転金型を使用した。
この目的のために、熱可塑性物質(本明細書においてはポリアミド)を射出金型の第1ステーションのキャビティに射出し、60mm×68mm×4mmのシートを製造した。冷却時間が経過した後、金型を開放し、ポリアミドをベースとする熱可塑性物質の成形体を180°回転させることにより第2ステーションに移送し、ここでゴムを射出して重ね成形した。ゴム用キャビティの寸法は140mm×25mm×6mmであり、熱可塑性物質シートの44.5mm×25mmの部分を覆うように成形した。ゴム材料の射出および射出成形体の加硫プロセスを行った後、金型を開放し、複合体試験片を取り出した。
本発明に関する作業により製造された複合体試験片の外観は、欧州特許出願公開第2392610A1号明細書の図1に示す標準的な複合体試験片とほぼ一致している。Kはゴム部分を表し、Tは熱可塑性物質(本明細書においてはポリアミド)を表す。欧州特許出願公開第2392610A1号明細書全体を本出願の一部を構成するものとしてここに援用する。
ポリアミド部分およびエラストマー部分から複合体試験片を様々な2K射出成形設定で、直接2K射出成形プロセス、すなわち1段階2K射出成形プロセスにより製造した。ポリアミド部分を調製した後、そのままエラストマー部分の射出成形を実施した。
ポリアミド部分およびエラストマー部分から複合体を製造するための2K射出成形の設定を表4および表5にまとめる。
表6に、ポリアミド材料1または2およびエラストマー材料Aから複合体試験片を製造するために用いた射出成形の設定を示す。
5.ポリアミド材料およびエラストマー材料から得られた複合体試験片の剥離試験:
ポリアミド材料1〜2およびエラストマー材料Aの組成物をベースとする複合体試験片を少なくとも24時間保存した後、接着強度を試験するために90°剥離試験に付した。剥離試験はDIN ISO 813に基づきZwick Z010万能試験機(Zwick GmbH & Co.KG(Ulm,Germany))を用いて実施した。この試験においては、引張試験機の専用器具を用いて複合体試験片を90°で把持することにより熱可塑性物質部分(ここではポリアミド部分)を収容し、引張応力を加えた。予備引張力を0.3Nとした。試験速度を100mm/分とした。測定された最大引張力(単位N)から、エラストマー部分の幅(25mm)に基づき最大接着強度を求めた。
2K射出成形設定1〜3に従い製造したポリアミド部分1および2のそれぞれとエラストマー部分Aとの複合体試験片に関する剥離試験結果を表6にまとめた。
表6は、複合体試験片の製造において、ポリアミド材料にRTで液状であるポリブタジエンコポリマーを添加する本発明を用いて、元素硫黄で加硫または架橋されるゴムから得ることができるエラストマー材料に直接接着(すなわち接着促進剤を使用せずに)させることにより、接着強度が少なくとも3N/mmである強固な接着が得られたことを示している。それと同時に、これらの複合体中のエラストマー材料の引張破壊応力は少なくとも10MPaであり、引張破壊ひずみは少なくとも300%であり、これらが工業的に使用可能であることを意味している。強固に結合した試験片を製造するために、ポリブタジエンコポリマーを含むポリアミド成形用組成物PA6と、元素硫黄で加硫または架橋されるゴムから得ることができるエラストマー部分(ここではEPDM)とを使用した。実施例1〜3は、様々な2K射出成形設定1〜3を用いて強固な結合が達成できることを示している。
表6に示す比較例1〜3は、ポリブタジエンコポリマーを含まないポリアミド成形用組成物PA6は、様々な2K射出成形設定1〜3を用いても、元素硫黄で加硫または架橋されるゴムから得ることができるエラストマー部分(ここではEPDM)に強固に結合せず、接着強度が3N/mm未満であったことを示している。
表6に示す実施例1〜3は、スチレン−1,3−ブタジエンコポリマーRicon(登録商標)181が、接着促進剤を追加することなく、ポリアミド部分およびエラストマー部分(後者は架橋剤としての元素硫黄で加硫または架橋することができるゴム)の直接接着により強固な結合を付与するのに使用可能であることを示している。