JP6418960B2 - 粉末素材 - Google Patents
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Description
そのためDHAやEPAは、魚油あるいはその濃縮物の形態で、サプリメント、健康食品、一般食品、医薬品等に広く使用されている。
また、高度不飽和脂肪酸は通常はトリグリセリドの形態で存在することから、水に溶けないため、食品製造に用いる際に配合しにくいという問題もある。
上記方法で得られた高度不飽和脂肪酸含有粉末素材は水分散性も改良されていることから、一般の飲食品の製造に広く使用されている。
1−エーテルリン脂質は、グリセロリン脂質のうち、グリセロール骨格のsn−1位にエーテル結合あるいはビニルエーテル結合のアシル鎖を有し、かつsn−2位にアシル鎖、sn−3位に塩基の結合したリン酸をもつ脂質である。特に、エーテル結合をもつリン脂質を1−アルキルエーテルリン脂質と、また、ビニルエーテル結合をもつリン脂質を1−アルケニルアシル型リン脂質もしくはプラスマローゲンと呼ぶ。
また、1−アルキルエーテル型リン脂質は生体内のプラスマローゲン合成系において、その前駆体であることがわかっている。
プラスマローゲンの生体内の機能は未だ不明な点が多いが、ビニルエーテル結合に由来する抗酸化作用から、酸化ストレスの関与する疾病と関連することが明らかにされつつある。また、動脈硬化症の起因となる脂質代謝異常に関与する可能性も示されている。
一方、1−アルキルエーテルリン脂質は、その機能について詳細を報告された例はないが、一つの推定では、ヒトの血液中のコリン型1−アルキルエーテルリン脂質は、血小板凝集因子(PAF)と同構造であり、炎症作用との関連があるとされている。
また1−エーテルリン脂質は特有の不快臭があるため、飲食品に配合する際に添加量を制限しなければならないという問題もあった。
(1)1−エーテルリン脂質を含有する油相と水相を乳化して水中油型乳化物を得る工程。
(2)上記(1)工程で得られた水中油型乳化物を乾燥し、粉末化する工程。
また本発明の粉末素材の製造方法によれば、高度不飽和脂肪酸を多く含有しながら、酸化安定性、風味、水分散性に優れる粉末素材を容易に安定して製造することができる。
まず、本発明の粉末素材に使用する1−エーテルリン脂質について述べる。
1−エーテルリン脂質とは、グリセロリン脂質のうち、グリセロール骨格のsn−1位にエーテル結合あるいはビニルエーテル結合のアシル鎖を有し、かつsn−2位にアシル鎖、sn−3位に塩基の結合したリン酸をもつ脂質である。特に、エーテル結合をもつリン脂質を1−アルキルエーテルリン脂質と呼び、また、ビニルエーテル結合をもつリン脂質を1−アルケニルアシル型リン脂質もしくはプラスマローゲンと呼ぶ。
天然に存在する1−エーテルリン脂質の主たるオレフィニル鎖の炭素数は16〜18であり、主たるアシル鎖は炭素数16〜22の脂肪酸であり、sn−2位アシル鎖は、アラキドン酸やドコサヘキサエン酸等の多価不飽和脂肪酸が主である。
具体的には、ホスホリパーゼA1(三菱化学フーズ)を用いて濃縮する場合、ジアシル型リン脂質及び1−エーテルリン脂質の混合脂質1gに酵素(ホスホリパーゼA1)0.1〜2.0U、酢酸緩衝液pH4.0〜6.0を2〜20%、好ましくは5〜10%添加し、30〜60℃で、2〜100時間、攪拌しながら反応させる。反応溶液にヘキサン/エタノール/水の混合溶媒、好ましくはヘキサン65〜90、エタノール5〜20、水4〜16、より好ましくはヘキサン75〜85、エタノール8〜16、水6〜13の比の混合溶媒を加え、上層のヘキサン層を採取して1−エーテルリン脂質含有脂質を回収する。この抽出処理により、ホスホリパーゼA1反応で生じた1−リゾリン脂質は水層に溶解するために分画されうる。
得られた1−エーテルリン脂質含有脂質は、さらにアセトン沈殿法やカラムクロマトグラフィーによって中性脂質を分画して濃縮できる。
得られた1−エーテルリン脂質含有脂質はさらに塩基組成別にも濃縮可能なシリカゲルクロマトグラフィーによって各塩基の1−エーテルリン脂質含有脂質を回収することも可能である。例えば、シリカゲルをヘキサン/エタノール混合溶媒、好ましくは95:5〜60:40の混合溶媒で充填したカラムに、1−アルキルエーテルリン脂質含有脂質を充填し、同溶媒をカラム体積の2〜8倍量通液させて中性脂質を溶出させた後、ヘキサン/エタノール混合溶媒、好ましくは5:95〜0:100、あるいはエタノール/水の混合溶媒、好ましくは100:0〜95:5をカラム体積の6〜15倍量通液させることにより、エタノールアミン型の1−エーテルリン脂質含有脂質を分画することができ、続いてエタノール/水の混合溶媒、好ましくは90:10〜70:30をカラム体積の8〜20倍量通液させることにより、コリン型の1−エーテルリン脂質含有脂質を分画することができる。
すなわち、1−エーテルリン脂質を乳化剤として使用し、水中油型乳化物の形態にした後に粉末化して得られるものであることが必要である。水中油型乳化物の形態にすることにより、1−エーテルリン脂質が水中でミセルあるいはリポソームの形態で分散する形態となり、脂肪酸部分が内側に収納されることによりその後の粉末化工程でも粉末表面に脂肪酸が位置することがなく、また1−エーテルリン脂質が密に存在するため酸化や分解がおきにくくなっているものと思われる。
まず油相について述べる。
上記水中油型乳化物の油相としては、1−エーテルリン脂質を油脂に溶解したものを用いてもよく、または、1−エーテルリン脂質を含有する油脂を用いてもよいが、純粋な1−エーテルリン脂質を得るのが困難であることに加え、粉末化工程における安定性の点から、1−エーテルリン脂質を含有する油脂を使用することが好ましい。
オキアミ油を使用する場合、上述のように、オキアミ油そのものやオキアミ油濃縮物そのものを使用することも可能であるが、酸化安定性や粘度調整の目的で、オキアミ油やオキアミ油濃縮物に油脂を加配することが好ましい。
本発明では水中油型乳化物の製造が容易な粘度となる点、水中油型乳化物の乳化安定性や酸化安定性に優れる点で、パーム油の分別軟部油、及び/又は、パーム油の分別軟部油のエステル交換油を使用することが好ましい。
ここで、上記水相は水を主体とするものであり、酸化安定性の向上、及び、水中油型乳化物製造時の乳化安定性の観点から、糖質を含有することが好ましい。
本発明においては、これらの糖質を単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできるが、好ましくは糖類を使用することが好ましく、より好ましくは2糖類を使用することが好ましく、最も好ましくはショ糖、麦芽糖、トレハロースのうちの1種又は2種以上を使用する。
通常の乳清ミネラルは、乳又は乳清(ホエー)から可能な限り蛋白質や乳糖を除去したものであり、高濃度に乳中の灰分を含有するという特徴を有する。そのため、その灰分組成は、原料となる乳やホエー中の組成に近い比率で含有する。本発明で使用する乳清ミネラルとしては、通常の乳清ミネラルであってもよいが、本発明の高い効果を得ることが可能である点で、固形分中のカルシウム含量が2質量%未満、特に1質量%未満の乳清ミネラルを使用することが好ましい。尚、固形分中のカルシウム含量は低いほど好ましい。
(i)乳又はホエーから、膜分離及び/又はイオン交換、更には冷却により、乳糖と蛋白質を除去して乳清ミネラルを得る際に、予めカルシウムを低減した乳を使用した酸性ホエーを用いる方法
(ii)甘性ホエーから乳清ミネラルを製造する際にカルシウムを除去する工程を挿入する方法
ここで使用する脱カルシウムの方法としては特に限定されず、調温保持による沈殿法やイオン交換等公知の方法を採ることができる。
本発明における上記ショ糖脂肪酸エステル及び/またはポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、油相基準で1〜100質量%、より好ましくは30〜100質量%である。
なお、上記水中油型乳化物に使用する水は、水道水であってもミネラルウォーターであってもよい。また牛乳、果汁などの水を含有する食品原料を使用することもできる。
なお、上記水中油型乳化物における油相と水相の比率(前者:後者)は、好ましくは1:99〜50:50、より好ましくは1:99〜10:90である。
このようにして得られた水中油型乳化物を、続いて、乾燥し、粉末化する。
粉末化の方法としては、スプレードライ、凍結乾燥などの公知の方法を適宜選択することができる。
本発明の粉末素材の用途としては、サプリメント、健康食品、一般食品、医薬品等に広く使用することができる。
冷凍ボイルオキアミの捏練品(オキアミCPM−MD、ADEKAファインフーズ)20kg(水分含有量87質量%)に、ヘキサン:エタノール=60:40で混合した混合溶媒70Lを加え、10分間攪拌した。その後、吸引濾過により得たろ液の上層であるヘキサン層を脂質抽出液として回収した。続いて、ろ液下層と濾過残渣を合わせ、それに新たにヘキサン40Lを加え、10分間攪拌して脂質画分を抽出後、上記と同様にして、抽出液を回収した。さらに、ろ液下層と濾過残渣に同一の操作をもう1回繰り返し、回収した合計3回分の抽出液を併せ、エバポレーターを使用して混合溶媒を除去し、残渣として、オキアミ油700gを得た。得られたオキアミ油には1−アルキルエーテルリン脂質が3.5%含まれていた。
上記オキアミ油650gに、10mM塩化カルシウム含有0.2M酢酸緩衝液(pH5.0)100mLに混濁させたホスホリパーゼA1(三菱化学フーズ)200kUを添加し、45℃で7時間攪拌した。反応溶液にヘキサン/エタノール/水(80:10:10)18Lを添加し、10分攪拌混合後、上層を採取した。続いて、下層に新たにヘキサン14Lを加え、10分間攪拌して、上記同様に脂質画分を回収した。さらに、下層に同一の操作をもう1回繰り返し、回収した合計3回分の抽出液を併せ、エバポレーターを使用して混合溶媒を除去し、残渣分510gを得た。
残渣分170gをヘキサン/エタノール=80:20の混合溶媒300mLに溶解したものを、ヘキサン/エタノール=80:20の混合溶媒でけん濁したシリカゲル(Wakosil200)400gを充填したガラスカラム(100cm×3cm)に添加した。ヘキサン/エタノール=80:20の混合溶媒を4L通液させて中性脂質を溶出した後、エタノール8Lを通液させてエタノールアミン型リン脂質を溶出させた。さらにエタノール/水=80:20の混合溶媒11Lを通液させてコリン型リン脂質を溶出させた。
得られたコリン型リン脂質溶出液をエバポレーターで濃縮して得られた残渣16gを1−アルキルエーテルリン脂質濃縮物とした。
得られた1−アルキルエーテルリン脂質濃縮物は、1−アルキルエーテルリン脂質を42%含有していた。
チーズを製造する際に副産物として得られる甘性ホエーをナノ濾過膜分離後、更に、逆浸透濾過膜分離により固形分が20質量%となるまで濃縮した後、更に80℃で20分間の加熱処理をして生じた沈殿を遠心分離して除去し、これを更にエバポレーターで濃縮し、スプレードライ法により、固形分97質量%の乳清ミネラル1を得た。得られた乳清ミネラルの固形分中のカルシウム含量は0.4質量%であった。
〔実施例1〕
上記1−エーテルリン脂質濃縮物1質量部に対し、パーム油の分別軟部油(ヨウ素価=60)0.5質量部を加配し、さらに酸化防止剤(60%トコフェロール、昭和産業製)0.01質量部を添加、溶解し油相とした。
一方、脱酸素水100質量部にトレハロース(林原製)9質量部を添加、溶解し、水相とした。
上記水相に上記油相を添加し、ホモミキサー(POLYTRON PT3100)を用いて25000rpmで5分間乳化して水中油型乳化物を得、得られた水中油型乳化物を液体窒素で急冷した後、−80℃、100mT以下で24時間凍結乾燥し、これを粉砕し本発明の粉末素材Aを得た。
実施例1のトレハロース9質量部をデキストリン(サンデック製、DE70)9質量部に変更した以外は実施例1と同様の配合・製法により、本発明の粉末素材Bを得た。
上記乳清ミネラルを0.002質量部水相に添加した以外は、実施例1と同様の配合・製法により、本発明の粉末素材Cを得た。
ショ糖脂肪酸エステル(リョートーシュガーエステルP1670、三菱化学フーズ:HLB16)を1質量部水相に添加した以外は、実施例1と同様の配合・製法により、本発明の粉末素材Dを得た。
上記乳清ミネラルを0.002質量部及びショ糖脂肪酸エステル(リョートーシュガーエステルP1670、三菱化学フーズ:HLB16)を1質量部水相に添加した以外は、実施例1と同様の配合・製法により、本発明の粉末素材Eを得た。
上記1−エーテルリン脂質濃縮物1質量部に対し、パーム油の分別軟部油(ヨウ素価=60)0.5質量部を加配し、さらに酸化防止剤(60%トコフェロール、昭和産業製)0.01質量部を添加、溶解し油相とした。
トレハロース20質量部に対し上記油相の全量を徐々に添加、含浸させ、比較例の粉末素材Fを得た。
比較のために、上記1−アルキルエーテルリン脂質濃縮物そのものを1−アルキルエーテルリン脂質濃縮物Gとして用いた。
上記粉末素材の製造で得られた粉末素材A〜F及び1−アルキルエーテルリン脂質濃縮物Gの50℃における酸素吸収量を測定した。
評価方法としては、密閉バイアルに各組成物を一定量充填して50℃保存した場合の気相の酸素量の減少により評価した。すなわち、20mlアルミキャップバイアルに1−アルキルエーテルリン脂質130mg相当量の粉末素材又は濃縮物を封入したものを50℃下に保存し、経日的に気相の酸素濃度をガスクロマトグラフィーで測定し、その減少分を酸素吸収量として算出した。ガスクロマトグラフィーは以下の条件にて行った。
ガスクロマトグラフィー:GC323(GLsciences)
カラム:MolecularSieve 13X、3mm×2m
キャリアガス:ヘリウム
キャリア流量:25ml/分
オーブン温度:50℃
注入口温度:120℃
検出器温度:120℃
検出器電流:60mA
なお、酸素吸収量は試料未封入のバイアル中の気相の測定値を基準とし、以下の式により求めた。
試料酸素吸収量=(試料未封入バイアル酸素濃度)−(試料バイアル窒素濃度)×(試料未封入バイアル酸素濃度)/(試料未封入バイアル窒素濃度)
結果について表1に記載した。
50℃で25日間保管した粉末素材A〜F及び1−アルキルエーテルリン脂質濃縮物Gについて下記の評価基準に従って酸化臭を4段階で評価し、結果を表2に記載した。
〔評価基準〕
◎:風味良好
○:ほとんど酸化臭を感じない
△:酸化臭を感じる
×:激しい酸化臭を感じる
粉末素材A〜F及び1−アルキルエーテルリン脂質濃縮物G、各15mgを水300μLに溶解あるいは分散させたものについて、溶け残りと透過度から下記の評価基準に従って水分散性を4段階で評価し、結果を表3に記載した。また、その風味についても同時に下記の評価基準に従って4段階で評価し、結果を表3に記載した。
〔水分散性評価基準〕
◎:極めて良好
○:良好
△:やや不良
×:不良
〔風味評価基準〕
◎:極めて良好
○:良好
△:やや不良
×:不良
Claims (8)
- 1−エーテルリン脂質及び乳清ミネラルを含有する水中油型乳化物を乾燥させてなる粉末素材。
- 上記1−エーテルリン脂質が1−アルキルエーテル型リン脂質であることを特徴とする請求項1記載の粉末素材。
- 上記1−アルキルエーテル型リン脂質がオキアミ由来であることを特徴とする請求項2記載の粉末素材。
- 糖質を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の粉末素材。
- 糖質として2糖類を含有することを特徴とする請求項4記載の粉末素材。
- 上記水中油型乳化物がパーム油の分別軟部油、及び/又は、パーム油の分別軟部油のエステル交換油を含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の粉末素材。
- HLBが7以上であるショ糖脂肪酸エステル及び/またはポリグリセリン脂肪酸エステルを含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の粉末素材。
- 下記工程(1)及び(2)を有することを特徴とする粉末素材の製造方法。
(1)1−エーテルリン脂質を含有する油相と、乳清ミネラルを含有する水相とを乳化して水中油型乳化物を得る工程。
(2)上記(1)工程で得られた水中油型乳化物を乾燥し、粉末化する工程。
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