JP5934483B2 - リン脂質結合型dha増加剤 - Google Patents

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Description

本発明は、生体内のドコサヘキサエン酸(以下、DHAと称する)含有リン脂質を増加させることができるリン脂質結合型DHA増加剤に関する。本発明によれば、経口摂取により、リン脂質結合型DHAを増加させることができる。
DHA(C22:6)(炭素数22、不飽和結合6個)は広義の必須脂肪酸であり、生体内では主に細胞膜を構成するリン脂質に結合した形態であらゆる組織に存在するが、特に脳、神経組織、網膜、及び精子などに多い。DHAはヒト体内でもリノレン酸を原料として合成が可能であるが、その生産量は少なく、食物から摂取することが大部分である。
DHAは多くの生理作用に関与しており、様々な病態との関係についても報告されている。学習能力及び記憶力など脳機能の向上について良く知られているが、認知症等の予防、並びにアルツハイマー症、及びうつ病などの疾病に対してもDHAの摂取が有効であるといわれている。DHAが欠損した症例としては、視覚障害や言語障害のほか、自閉症や多動性障害などの認知能力と関与する障害の発生がある。
しかし、脳機能に対するDHAの詳細な作用機構は未だ不明であり、細胞膜構造の変化、メッセンジャーとしてのシグナル作用など多くの可能性が報告されている。また、DHAは、インターロイキンを介するシグナル伝達系に作用して、その炎症の発現を阻害するといわれ、動脈硬化症、アトピー、アレルギー、又はリウマチ様関節炎など、様々な炎症性疾患の抑制効果が示唆されている。更に、血管内皮細胞のリポタンパク質リパーゼへの阻害作用により、血中のトリアシルグリセリド及びコレステロール量を低下させることが示されており、「中性脂肪が気になる方の食品」という表示で、DHAを関与成分とした特定保健用食品も許可されている。
なかでも脳においては、脂質構成脂肪酸組成におけるDHA含量が高く、特にリン脂質を構成する脂肪酸組成におけるDHA含量が哺乳類では3〜20%、特にヒトにおいては約20%と極めて高いこと、また認知症患者では、リン脂質含量、特にエタノールアミン型リン脂質が大きく減少することが知られている(非特許文献1)。また、血清中のリン脂質含量、特にDHAが結合したリン脂質含量と認知症重症度とが相関することが知られている(非特許文献2及び特許文献2)。
このようにDHAの中でも、その存在形態としてリン脂質結合型が特に重要であり、そのDHA結合型リン脂質は生体、特に脳において、神経伝達や細胞間物質移動に極めて重要な役割を担っていることが示されている。
ここで、生体内のDHAを増加させる目的で、DHAを含むトリグリセリドやリン脂質を経口摂取させる方法が種々検討されている。例えば、DHAをトリグリセリドとして摂取させる方法では、微生物由来のDHA高含有油脂を植物油とエステル交換する方法(特許文献3)やDHAを含有する油脂と卵黄、乳等から得られるDHAを含有するリン脂質を摂取させる方法(特許文献4)、DHA等の高度不飽和脂肪酸を含有する油脂をリン脂質と共に摂取させる方法(特許文献5)等が提案されている。また、DHA等の長鎖高度不飽和脂肪酸は、トリグリセリドとして摂取するよりリン脂質として摂取した方が効果的な場合があることが知られている。このような観点から、動物の脳又は鶏卵から抽出されたDHAを含むリン脂質を摂取させる方法(特許文献6及び特許文献7)、DHAの豊富な餌を与えて育てた鶏から得た卵黄リン脂質を利用した食事療法組成物(特許文献8)等が開示されている。
しかし、特許文献3、5に開示されているDHAの由来として微生物由来のDHA含有油脂を用いる方法は、この微生物由来の油脂が極めて特殊な油脂であるため、広く食品に応用することはできなかった。また、特許文献4、6、8に記載されている魚油、卵黄リン脂質、及び乳リン脂質をDHAの由来として用いる場合、DHA含量は全脂肪酸組成中の数%程度に過ぎず、生体内のDHAを増加させる効果は不十分であった。
米国特許第5759585号明細書 特開2004−26803号公報 特表2007−528191号公報 特表平10−508193号公報 国際公開第2005/054415号パンフレット 特表2000−516261号公報 特開平10−17475号公報 特開1997−502360号公報 特開2003−012520号公報 特開2003−003190号公報 特開2009−269864号公報
「リピッド(Lipids)」1991年、第26巻、p.421−5 「ジャーナル・オブ・リピッド・リサーチ(Journal of LIPID Research)」2007年、第48巻、p.2485−98
本発明の目的は、生体内のDHA含有リン脂質を増加させることができる、リン脂質結合型DHA増加剤を提供することである。
前記課題を解決することのできる本発明のリン脂質結合型DHA増加剤は、後述のように1−アルキルエーテル型リン脂質を有効成分として含む。
1−アルキルエーテル型リン脂質は、リン脂質の1つのサブクラスである。リン脂質は、ジアシル型リン脂質、アルケニルアシル型リン脂質(プラスマローゲン)、及び1−アルキルエーテル型リン脂質(アルキル型リン脂質)のサブクラスに分けることができ、アルケニルアシル型リン脂質(プラスマローゲン)及び1−アルキルエーテル型リン脂質は、エーテル結合を有していることから、まとめてエーテル型リン脂質と呼ばれることもある。
エーテル型リン脂質とはグリセロール骨格のsn−1位にエーテル結合を持ち、sn−2位には脂肪酸又は水素が結合し、sn−3位に塩基又は水素の結合したリン酸を持っているグリセロリン脂質である。エーテル型リン脂質の1つである1−アルキルエーテル型リン脂質は、sn−1位にエーテル結合に加え、炭化水素基を有している。また、もう1つのアルケニルアシル型リン脂質(プラスマローゲン)は、sn−1位に、更にビニール結合を有しており、すなわちsn−1位の側鎖は、ビニールエーテル結合を有している。
一方、天然に存在する大部分のグリセロリン脂質は、sn−1位及びsn−2位にエステル結合を有するジアシル型リン脂質であり、一般的にはレシチンと言われ、その主成分はホスファチジルコリンである。
前記プラスマローゲンは抗酸化能を持ち、加齢や酸化ストレスが関与する疾病と関係しているといわれており、神経変性疾患やアルツハイマー病の予防などへの利用が検討されている(特許文献1及び特許文献2)。更に、プラスマローゲンが抗酸化能を持つことから、プラスマローゲンを生体組織の脂質の過酸化を抑制する抗酸化剤として利用する方法(特許文献9)や酸化安定性に優れた高度不飽和脂肪酸供給組成物として利用する方法(特許文献10)が開示されている。また、プラスマローゲン、好ましくはコリン型プラスマローゲンを投与することにより、アラキドン酸結合型リン脂質が増加することが報告されている(特許文献11)。
更に、特許文献6、7に記載の、動物の脳や内臓から得られるリン脂質はエーテル型リン脂質を含む可能性が考えられるが、特許文献6は得られたリン脂質が生体内のメラトニン分泌を調節する機能を開示したものであり、特許文献7はDHAを含むリン脂質が血液中の総コレステロール、中性脂質を低下させ、高密度リポ蛋白質コレステロールを増大させる機能を示すことを開示したものであり、共に、エーテル型リン脂質が生体内のDHAを増加させることを開示したものではなかった。
また、特許文献9、10はプラスマローゲンの抗酸化能を利用した発明であり、生体内のDHAを増加させることを開示したものではなかった。更に、特許文献11はアラキドン酸を増加することを示した文献であって、血液中のDHAを増加させることを開示したものではなかった。
このように、従来、血液中のDHA含量、特にリン脂質の形態で存在するDHA含量を増加させることのできる組成物は見出されていなかった。
本発明者らは、生体内でDHAを増加させることのできる組成物について、鋭意研究した結果、驚くべきことに、1−アルキルエーテル型リン脂質の投与により、生体内のリン脂質結合型DHAを飛躍的に増加させることができることを見出した。前記特許文献11には、プラスマローゲンの投与により、リン脂質結合型のアラキドン酸が増加することが開示されている。本発明者らは、1−アルキルエーテル型リン脂質を投与した場合、リン脂質結合型のアラキドン酸は生体内では減少するが、リン脂質結合型DHAは、飛躍的に増加することを見出した。プラスマローゲンの投与と、その前駆体である1−アルキルエーテル型リン脂質の投与により、生体内で増加する脂肪酸の種類が異なることのメカニズムは明らかではないが、当業者にとって驚くべきことである。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
従って、本発明は、1−アルキルエーテル型リン脂質を有効成分として含むことを特徴とする、リン脂質結合型DHA増加剤に関する。
本発明のリン脂質結合型DHA増加剤の好ましい態様においては、更にDHAを含み、特には、前記DHAの50%以上がリン脂質に結合している。
また、本発明のリン脂質結合型DHA増加剤の好ましい態様においては、オキアミ抽出物由来の、1−アルキルエーテル型リン脂質及び/又はDHAを含む。
また、本発明は、1−アルキルエーテル型リン脂質を有効成分として含むことを特徴とする、リン脂質結合型DHAを上昇させる飲食品に関する。
本発明の飲食品の好ましい態様においては、更にDHAを含み、特には、前記DHAの50%以上がリン脂質に結合している。
また、本発明の飲食品の好ましい態様においては、オキアミ抽出物由来の、1−アルキルエーテル型リン脂質及び/又はDHAを含む。
本発明のDHA増加剤は、血液中のリン脂質中の、DHA含量を増加させることが可能である。従って、前記のリン脂質結合型DHA増加剤は、リン脂質結合型DHAの増加によって予防又は治療可能な疾患を、効果的に予防又は治療することができる。
更に本発明による飲食品は、毎日の飲食により、血液中のリン脂質中の、DHA含量を増加させることが可能である。従って、飲食品の摂取のみで、リン脂質結合型DHAの低下又は消失に起因する疾患の予防又は治療に有用である。また、本発明の飲食品に使用されるエーテル型リン脂質は、広範な飲食品に使用することが可能であり、風味良好な飲食品を容易に得ることができる。
[1]リン脂質結合型DHA増加剤
(1−アルキルエーテル型リン脂質)
本発明の、経口投与剤は、一般式(I)
Figure 0005934483
[式中、Rは、炭素数1から21の炭化水素基であり、Rは、炭素数1〜26の脂肪酸残基、または水素原子であり、Rはコリン(−CHCHN(CH)、エタノールアミン(−CHCHNH)、セリン(−CH−CH(NH)−COOH)、グリセロール(−CH−CH(OH)−CHOH)、イノシトール(−CH−C(OH))、又は水素原子である]
で表される1−アルキルエーテル型リン脂質を有効成分として含む。
ここで、sn−1位がエステル結合であるリン脂質、例えば一般的なジアシル型リン脂質(すなわち「レシチン」)や、前記レシチンをホスホリパーゼ等で処理したリゾリン脂質を有効成分として用いた場合は本発明の効果は得られない。
前記Rの炭化水素基はアルキル基、又はアルケニル基でもよく、具体的にはペンタデシル基、ヘプタデシル基、又はヘプタデセル鎖基を挙げることができる。なお、本明細書において、「sn−1位の脂肪酸残基」とは、脂肪酸からカルボキシル基(−COOH)を除いたものを意味し、具体的には一般式(1)のRとエーテル基の炭素を含む「−CH−R」を意味し、16:0、18:0、又は18:1(炭素数:不飽和結合数)などと表記する。
また、前記Rの肪酸残基としては、具体的には、パルミトイル基、オレイル基、アラキドイル基、又はドコサヘキサエノイル基等を挙げることができる。なお、本明細書において、sn−2位の脂肪酸残基とは、脂肪酸から−OHを除いたものを意味し、16:0、18:1、20:4、又は22:6(炭素数:不飽和結合数)などと表記する。また、本明細書において、「sn−2位のアシル基」とは、脂肪酸からカルボキシル基の水素原子(−H)を除いた基を意味する。
本発明のリン脂質結合型DHA増加剤においては、1−アルキルエーテル型リン脂質のsn−1位の脂肪酸残基及びsn−2位の脂肪酸残基の由来となる脂肪酸が、どの脂肪酸であっても本発明の効果を有する。但し、後述のように本発明のリン脂質結合型DHA増加剤と同時にDHAを投与すると本発明の高い効果が得られること、更には、同時投与のDHAがリン脂質結合型であると更に本発明の高い効果が得られることから、前記1−アルキルエーテル型リン脂質についてもDHA含量が高いほど本発明の高い効果が得られることから、DHA含量が5%以上、好ましくは10%以上の1−アルキルエーテル型リン脂質を使用することが好ましい。
本発明のリン脂質結合型DHA増加剤に用いる1−アルキルエーテル型リン脂質は、従来、疾患の治療、又は食品に使用されていたプラスマローゲンと比較して、保存安定性が良好であり、この観点からも有用である。
(プラスマローゲンと1−アルキルエーテル型リン脂質との混合比)
1−アルキルエーテル型リン脂質は天然物にも少量含まれ、その場合はプラスマローゲンと1−アルキルエーテル型リン脂質は混合物として存在していることが多い。本発明で使用するエーテル型リン脂質としては、プラスマローゲンと1−アルキルエーテル型リン脂質の比が50:50〜0:100とすることが好ましく、より好ましくは30:70〜0:100、更に好ましくは10:90〜0:100とする。プラスマローゲンの割合が50%以上であると、常温で長期保存した場合に、エーテル型リン脂質は1−リゾアシルリン脂質と脂肪酸アルデヒドに分解され、過酸化リン脂質に変化してしまうため、本発明の効果が極端に減少してしまうおそれがある。
(1−アルキルエーテル型リン脂質の化学合成)
本発明に用いることのできる1−アルキルエーテル型リン脂質は、グリセリンを1−アルキルエーテルグリセロールに変換し、エステル化やリン酸化を行うことにより、化学合成することも可能であり、化学合成の1−アルキルエーテル型リン脂質を用いることも可能である。しかし本発明では、入手の容易性や生産性から、天然物から抽出及び分離したものが好ましい。
(1−アルキルエーテル型リン脂質の製造原料)
なお、ここで、抽出源とする天然物としては、エーテル型リン脂質中の1−アルキルエーテル型リン脂質含量が50%以上である天然物を使用することが好ましく、より好ましくは80%以上、更に好ましくは95%以上である天然物を使用することが好ましい。なお、前記天然物は、プラスマローゲンをなるべく含有しないことが好ましく、好ましくはエーテル型リン脂質中のプラスマローゲン比が50%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以下、更に好ましくは5%以下である天然物を使用する。
なお、ここで、抽出源とする前記天然物として1−アルキルエーテル型リン脂質とプラスマローゲンを共に含有する天然物を使用する場合は、弱酸溶液処理等の方法により、あらかじめプラスマローゲンを除去するか、あるいは、下記の分画・濃縮・精製の操作に加え、前記プラスマローゲンを除去する操作を行うことが好ましい。
1−アルキルエーテル型リン脂質を抽出、分離する天然物としては、一般的に1−アルキルエーテル型リン脂質含量が高いことが知られている各種の動物、植物、微生物、例えば、マグロ、イワシなどの魚類、ホタテ、カキ、ムール貝などの貝類、タコ、イカなどの頭足類、エビ、フジツボ、オキアミ、カラヌスなどの甲殻類、ウシ、ブタ、ニワトリなどの家禽動物などの、その個体そのもの、その筋肉組織や、脂肪組織、あるいは脳などの神経組織、腸などの内臓組織、更にはその卵などを使用することができる。なかでも本発明では、エーテル型リン脂質中の1−アルキルエーテル型リン脂質含量が高くプラスマローゲン含量が極めて少ない、すなわち、エーテル型リン脂質中の1−アルキルエーテル型リン脂質含量比が高い天然物であること、更には、組織を分離することなく生体そのものを直接抽出源とすることができ、資源量が豊富であり、入手が容易であることに加え、更にはアスタキサンチンを含有することから保存安定性が良好であるリン脂質結合型DHA増加剤を得ることが可能であることから、オキアミを用いることが特に好ましい。
(1−アルキルエーテル型リン脂質の抽出方法)
本発明のリン脂質結合型DHA増加剤では、これら各種動物、植物、微生物から、溶剤抽出などによって抽出された、エーテル型リン脂質含有脂質、更には、必要に応じて、前記脂質から液々抽出やカラムクロマトグラフィー、酵素処理などでリン脂質を分離した、リン脂質画分や、更にエーテル型リン脂質を濃縮した濃縮物、また、更に精製した、精製エーテル型リン脂質を使用することができる。
前記各種動物、植物、微生物等の組織からの抽出方法としては、Folch法(Folch et al.:J. Biol. Chem., 226, 497-505, 1957)、Bligh & Dyer法(Bligh et al.:Can. J. Biochem. Physiol., 37, 911-917, 1959)、あるいは安全性の高い有機溶媒であるヘキサンや低級アルコールを用いた混合溶媒を用いる方法(Hara et al.:Anal. Biochem., 90(1):420-6,1978、特開2005-179340)、また、安全性が高く、かつ液液抽出の界面分離性が優れるヘキサンとエタノールの混合溶媒を用いる方法(特開2009-227765)などがある。また、抽出効率を高めるために、前記動物組織を脱水処理したものを用いてもよい。
また、前記分離方法としては、アセトン沈殿法(山川民夫監修:生化学実験講座3,脂質の化学(日本生化学会編),p.19−20,1963,東京化学同人)、カラムクロマトグラフィー法(James et al.:Lipids, 23, 1146-1149, 1988)等によるトリグリセリドや部分グリセリドを除去し、エーテル型リン脂質を含むリン脂質画分のみを分離精製することができる。
更に、前記濃縮方法としては、弱アルカリ処理(Hanahan et al.:J. Biol. Chem. 236, 59-60, 1961)、あるいは哺乳動物膵臓由来リパーゼ又は微生物由来のホスホリパーゼA1処理によるジアシル型リン脂質の分解(Woelk et al.:Z Physiol. Chem. 354, 1265-70, 1973)の方法を用いて、エーテル型リン脂質以外のリン脂質を除去することでエーテル型リン脂質を濃縮することができる。
ホスホリパーゼA1を用いて濃縮する場合、具体的には、エーテル型リン脂質含有脂質に対し、ホスホリパーゼA1、好ましくはActinomadura sp.由来のホスホリパーゼA1を添加し、好ましくは少量のジエチルエーテルと弱酸性緩衝液下で、分解反応させ、分解生成物を親水性溶媒と疎水性溶媒の混合溶媒、例えば、ヘキサン/エタノール混合溶媒により再抽出することで得ることができる。
更に詳しく述べると、エーテル型リン脂質含有脂質1gにホスホリパーゼA1を0.1〜2.0U、酢酸緩衝液pH5.0〜6.0を2〜20%、好ましくは5〜10%添加し、30〜60℃で、2〜100時間、攪拌しながら分解反応させる。反応溶液にヘキサン/エタノール/水の混合溶媒、例えばヘキサン65〜90に対し、エタノール5〜20、水4〜10、好ましくはヘキサン75〜85、エタノール10〜18、水5〜8の比の混合溶媒を加えて再抽出することで、ホスホリパーゼA1反応で生じた1−リゾリン脂質は下層の水層に、エーテル型リン脂質は上層のヘキサン層に分離することができる。ここで、上層のヘキサン層を分取し、定法によりヘキサンを除去することで、エーテル型リン脂質以外のリン脂質を除去し、エーテル型リン脂質のみを濃縮することができる。
なお、前記エーテル型リン脂質の濃縮の前又は後、好ましくは後に、トリグリセリドに代表される中性脂質を分画除去し、エーテル型リン脂質含有リン脂質とすることが好ましい。この中性脂質の除去方法としては、アセトン沈殿法やカラムクロマトグラフィーなどの公知の方法を採ることができる。
更には、シリカゲルクロマトグラフィーによってsn−3位の塩基の種類別に濃縮することも可能である。例えば、シリカゲルをヘキサン/エタノール混合溶媒、好ましくは95:5〜60:40の混合溶媒で充填したカラムに、エーテル型リン脂質含有脂質やエーテル型リン脂質含有リン脂質を充填し、同溶媒をカラム体積の2〜8倍量通液させて中性脂質を溶出させた後、ヘキサン/エタノール混合溶媒、好ましくは5:95〜0:100、あるいはエタノール/水の混合溶媒、好ましくは100:0〜95:5をカラム体積の6〜15倍量通液させることにより、エタノールアミン型やホスファチジン酸型を分画することができ、続いてエタノール/水の混合溶媒、好ましくは90:10〜70:30をカラム体積の8〜20倍量通液させることにより、コリン型を分画することができる。
また、本発明のリン脂質結合型DHA増加剤における1−アルキルエーテル型リン脂質含有量は、好ましくは2〜100%、より好ましくは5〜100%、更に好ましくは50〜100%である。また、1−アルキルエーテル型リン脂質を有効成分として含有する本発明のリン脂質結合型DHA増加剤は、1−アルキルエーテル型リン脂質以外のリン脂質、例えばプラスマローゲンを含むこともできるが、プラスマローゲンは1−アルキルエーテル型リン脂質よりも酸化されやすく保存安定性が極めて低いため、本発明のリン脂質結合型DHA増加剤に含むことのできるエーテル型リン脂質の全量に対する1−アルキルエーテル型リン脂質の比率は、1−アルキルエーテル型リン脂質が60%以上であり、好ましくは80%以上であり、最も好ましくは90%以上である。
(その他の脂質)
なお、前記エーテル型リン脂質含有脂質や前記エーテル型リン脂質含有リン脂質の、エーテル型リン脂質以外のその他の脂質はジアシル型リン脂質、糖脂質、スフィンゴ脂質、中性脂質などからなる。
(DHA)
本発明のリン脂質結合型DHA増加剤は、本発明の効果を高めるためにDHAを含有することが好ましい。なお、一般のジアシル型リン脂質(すなわち「レシチン」)の場合は、本発明の効果が得られないのは前記のとおりであるが、ジアシル型リン脂質とDHAを併用のみでは本発明の効果は得られない。
本発明のリン脂質結合型DHA増加剤におけるDHAの好ましい含有量は、特に限定されるものではないが、リン脂質結合型DHA増加剤に含まれる全脂質の構成脂肪酸中の好ましくは4%以上、より好ましくは7%以上、更に好ましくは10%以上である。上限は特に制限されないが、保存安定性の面から70%以下であることが好ましく、より好ましくは50%以下である。
なお、前記DHAは、エーテル型リン脂質に結合したものであっても、エーテル型リン脂質以外のその他の脂質、例えばジアシル型リン脂質、糖脂質、スフィンゴ脂質、中性脂質に結合したものであってもよく、更には遊離脂肪酸の形態や、塩の形態であってもよいが、酸化に対する安定性が高く、保存性を高めることが可能である点で、エーテル型リン脂質(プラスマローゲン又は1−アルキルエーテル型リン脂質)、ジアシル型リン脂質、及びモノアシル型リン脂質などのリン脂質結合型であることが好ましい。この場合、リン脂質結合型DHA増加剤に含まれるDHAの好ましくは50〜100%、より好ましくは70〜100%、最も好ましくは80〜100%がリン脂質結合型であることが好ましい。なお、安定性の面からは、遊離型DHAは含有しないことが好ましい。
(その他の成分)
本発明のリン脂質結合型DHA増加剤では、前記以外のその他の成分を含有することができる。前記その他の成分としては、例えば、食用油脂、水、グリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の乳化剤、ローカストビーンガム、カラギーナン、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、ゼラチン、澱粉、又は化工澱粉等の増粘安定剤、食塩、又は塩化カリウム等の塩味剤、酢酸、乳酸、又はグルコン酸等の酸味料、糖類又は糖アルコール類、ステビア、又はアスパルテーム等の甘味料、ベータカロチン、カラメル、又は紅麹色素等の着色料、トコフェロール、又は茶抽出物等の酸化防止剤、着香料、pH調整剤、食品保存料、又は日持ち向上剤等の食品素材や食品添加物を挙げることができる。また、各種ビタミンやコエンザイムQ、植物ステロール、又は乳脂坊球皮膜等の機能素材を含有させることも可能である。
これらのその他の成分の含有量は、本発明のリン脂質結合型DHA増加剤中、合計で好ましくは80質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは20質量%以下とする。
(リン脂質結合型DHA)
本発明のリン脂質結合型DHA増加剤によって、生体内で増加するリン脂質結合型DHAの種類は、DHAが結合している限り、特に限定されるものではない。
具体的には、リン脂質として、プラスマローゲン、又は1−アルキルエーテル型リン脂質、を挙げることができる。DHAの結合部位は特に限定されるものではないが、基本的には前記リン脂質のsn−2位である。
更に、リン脂質結合型DHAは、生体内で増加する。本明細書において「生体内」とは、特に限定されるものではない。具体的には、体液、例えば、血液(血漿、血清を含む)、髄液、尿、唾液、若しくは組織液、又は組織、若しくは臓器を挙げることができるが、リン脂質結合型DHAが生体内のすべての組織に運ばれ、その効果が得られることから、血液中で増加することが好ましい。
(対象疾患)
本発明のリン脂質結合型DHA増加剤は、動脈硬化、アレルギー・炎症性疾患、乳児の発育、学習能力や記憶力の低下、発ガンなどを改善することが可能である。DHAが低下、消失する疾患としては、血栓症、多動性障害、認知症、視力の低下、胎児や乳児の正常な発育の阻害、うつ病などを挙げることができ、本発明のリン脂質結合型DHA増加剤は、これらの疾患の治療及び予防に有用である。
また、本発明のリン脂質結合型DHA増加剤は、広範な各種飲食品や医薬組成物に配合・添加することができ、その摂取量としては、成人の場合、エーテル型リン脂質として1日あたり、好ましくは100mg〜40g、より好ましくは200mg〜20gを摂取することが望ましい。
[2]飲食品
本発明の飲食品は、1−アルキルエーテル型リン脂質を有効成分として含有する。また、本発明の飲食品は、前記の1−アルキルエーテル型リン脂質を有効成分として含有するリン脂質結合型DHA増加剤を含有することもできる。
本発明の飲食品における、1−アルキルエーテル型リン脂質の含有量は、使用する飲食品により異なるが、成人の場合、1−アルキルエーテル型リン脂質として1日当たり100mg〜40g、より好ましくは200mg〜20g摂取できる量のリン脂質結合型DHA増加剤を飲食物中に含有できればよい。具体的には、飲食品中0.1〜100質量%であることが好ましい。
なお、本発明における飲食品としては、特に限定されるものではなく、例えば味噌、醤油、めんつゆ、たれ、だし、パスタソース、ドレッシング、マヨネーズ、トマトケチャップ、ウスターソース、とんかつソース、又はふりかけ等の調味料、お吸い物の素、カレールウ、ホワイトソース、お茶漬けの素、又はスープの素等の即席調理食品、味噌汁、お吸い物、コンソメスープ、又はポタージュスープ等のスープ類、焼肉、ハム、又はソーセージ等の畜産加工品、かまぼこ、干物、塩辛、佃煮、又は珍味等の水産加工品、漬物等の野菜加工品、ポテトチップス、又は煎餅等のスナック類、食パン、菓子パン、又はクッキー等のベーカリー食品類、煮物、揚げ物、焼き物、カレー、シチュー、グラタン、ごはん、おかゆ、又はおにぎり等の調理食品、パスタ、うどん、又はラーメン等の麺類食品、マーガリン、ショートニング、ファットスプレッド、又は風味ファットスプレッド等の油脂加工食品、フラワーペースト、又は餡等の製菓製パン用素材、パン用ミックス粉、ケーキ用ミックス粉、又はフライ食品用ミックス粉等のミックス粉、チョコレート、キャンディ、ゼリー、アイスクリーム、又はガム等の菓子類、饅頭、又はカステラ等の和菓子類、コーヒー、コーヒー牛乳、紅茶、ミルクティー、豆乳、栄養ドリンク、野菜飲料、食酢飲料、ジュース、コーラ、ミネラルウォーター、又はスポーツドリンク等の飲料、ビール、ワイン、カクテル、又はサワー等のアルコール飲料類、牛乳、ヨーグルト、又はチーズ等の乳や乳製品等が挙げられる。
本発明のエーテル型リン脂質を含有する飲食品は、1−アルキルエーテル型リン脂質を原料として含むこと以外は、公知の飲食品の製造方法を用いて製造することができる。
本発明の飲食品は、1−アルキルエーテル型リン脂質を含有することにより、血液中においてリン脂質結合型DHA含量を増加させることが可能であり、機能性食品又は健康食品(飲料も含む)として用いることができる。また動物には、飼料として与えることができる。1−アルキルエーテル型リン脂質を有効成分として含有する本発明の飲食品を、機能性食品又は健康食品として使用する場合、前記のリン脂質結合型DHA増加剤に記載のように、例えば、オキアミから分離した1−アルキルエーテル型リン脂質を含むことが好ましい。
本発明の飲食品は、前記のリン脂質結合型DHA増加剤と同じように、本発明の効果を高めるためにDHAを含有することが好ましい。本発明の飲食品におけるDHAの好ましい含有量は、飲食品に含まれる全脂質の構成脂肪酸中の好ましくは1%以上、より好ましくは2%以上である。上限は特に制限されないが、保存安定性の面から70%以下であることが好ましく、より好ましくは50%である。
なお、前記DHAは、前記の本発明のリン脂質結合型DHA増加剤同様、酸化に対する安定性が高く、保存性を高めることが可能である点で、エーテル型リン脂質、ジアシル型リン脂質、又はモノアシル型リン脂質などのリン脂質結合型であることが好ましい。この場合、飲食品に含まれる全脂質の構成脂肪酸中の好ましくは50〜100%、より好ましくは70〜100%、最も好ましくは80〜100%がリン脂質結合型であることが好ましい。なお、安定性の面で、遊離型DHAは含有しないことが好ましい。
本発明の飲食品に用いる1−アルキルエーテル型リン脂質は、従来食品に使用されていたプラスマローゲンと比較して、保存安定性が良好であり、この観点からも有用である。
また、本発明の飲食品によれば、前記リン脂質結合型DHA増加剤と同じように、生体内のリン脂質結合型DHAを上昇させることができる。
[3]医薬組成物
医薬組成物は、1−アルキルエーテル型リン脂質を有効成分として含有するため、血液中のリン脂質結合型DHAを増加させることが可能である。前記のエーテル型リン脂質を有効成分として含有するリン脂質結合型DHA増加剤を使用することもできる。
医薬組成物における、本発明のリン脂質結合型DHA増加剤の含有量は、使用する医薬組成物により異なるが、成人の場合、エーテル型リン脂質として1日当たり100mg〜40g、より好ましくは200mg〜20g摂取できる量のエーテル型リン脂質増加剤を医薬組成物中に含有できればよい。具体的には、1−アルキルエーテル型リン脂質は医薬組成物中、0.1〜100質量%であることが好ましく、0.5〜99質量%であることが好ましく、1〜80質量%であることが最も好ましい。
医薬組成物は、1−アルキルエーテル型リン脂質を単独で、あるいは、好ましくは薬剤学的又は獣医学的に許容することができる通常の担体又は希釈剤とともに、DHAの低下又は消失に起因する疾患の治療及び/又は予防が必要な対象[例えば、動物、好ましくは哺乳動物(特にヒト)]に有効量で投与することができる。
医薬組成物は、リン脂質結合型DHAの濃度を上昇させることのできる物質を含むこともできる。
医薬組成物の投与剤型としては、特に限定がなく、例えば、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁剤、エマルジョン剤、シロップ剤、エキス剤、若しくは丸剤等の経口剤、又は注射剤、外用液剤、軟膏剤、坐剤、局所投与のクリーム、若しくは点眼剤などの非経口剤を挙げることができるが、経口剤が好ましい。
経口剤は、例えば、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、澱粉、コーンスターチ、白糖、乳糖、ブドウ糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、ポリビニルピロリデン、結晶セルロース、大豆レシチン、ショ糖、脂肪酸エステル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、ケイ酸マグネシウム、無水ケイ酸、又は合成ケイ酸アルミニウムなどの賦形剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、希釈剤、保存剤、着色剤、香料、矯味剤、安定化剤、保湿剤、防腐剤、又は酸化防止剤等を用いて、常法に従って製造することができる。
医薬組成物を用いる場合の投与量は、例えば、使用する有効成分の種類、病気の種類、患者の年齢、性別、体重、生上の程度、又は投与方法に応じて適宜決定することができ、経口的に又は非経口的に投与することが可能である。
更に、投与形態も医薬品に限定されるものではなく、種々の形態、例えば、機能性食品や健康食品(飲料も含む)、又は飼料として飲食物の形態で与えることも可能である。
本発明のリン脂質結合型DHA増加剤を含有する医薬組成物の製造方法は、前記にエーテル型リン脂質を有効成分として含むこと以外は、公知の医薬品の製造方法を用いて製造することができる。
前記医薬組成物は、1−アルキルエーテル型リン脂質を含有することにより、血液中においてリン脂質結合型DHA含量を増加させることが可能である。なお、1−アルキルエーテル型リン脂質を有効成分として使用する場合、前記のように、例えば、オキアミから分離した1−アルキルエーテル型リン脂質を含むことが好ましい。
前記医薬組成物は、本発明の効果を高めるためにDHAを含有することが好ましい。
前記医薬組成物におけるDHAの好ましい含有量は、医薬組成物に含まれる全脂質の構成脂肪酸中の好ましくは1%以上、より好ましくは2%以上である。上限は特に制限されないが、保存安定性の面から70%以下であることが好ましく、より好ましくは50%である。
なお、前記DHAは、前記の本発明のリン脂質結合型DHA増加剤同様、酸化に対する安定性が高く、保存性を高めることが可能である点で、エーテル型リン脂質、ジアシル型リン脂質、又はモノアシル型リン脂質などのリン脂質結合型であることが好ましい。この場合、医薬組成物に含まれる全脂質の構成脂肪酸中の好ましくは50〜100%、より好ましくは70〜100%、最も好ましくは80〜100%がリン脂質結合型であることが好ましい。なお、安定性の面で、遊離型DHAは含有しないことが好ましい。
DHAを増加させることで、動脈硬化を含むなどの血栓性疾患、老人性認知症、視覚障害、うつ病などの精神性疾患を予防又は治療することが可能である。本発明のリン脂質結合型DHA増加剤、飲食品、又は医薬組成物を生体内に投与、特には経口投与することにより、血液中のリン脂質結合型DHAを増加させることが可能である。すなわち、エーテル型リン脂質を有効成分として含有する本発明のリン脂質結合型DHA増加剤、飲食品、又は医薬組成物を生体内に投与、特には経口投与することにより、生体内においてリン脂質結合型DHAを増加させる方法を提供することが可能である。
本発明の飲食品や医薬組成物を経口摂取する場合の摂取量は、前記のとおり、例えば成人の場合、エーテル型リン脂質として1日当たり100mg〜40g、より好ましくは200mg〜20g摂取できる量の血液中のリン脂質結合型DHA増加剤を医薬組成物中に含有できる量である。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
<1>エーテル型リン脂質含有試料の製造
〔製造例1〕
オキアミを利用してエーテル型リン脂質含有脂質を製造した。
冷凍ボイルオキアミの捏練品(オキアミCPM−MD、ADEKAファインフーズ)60kg(水分含有量87質量%)に、ヘキサン:エタノール=60:40で混合した混合溶媒216Lを加え、10分間攪拌した。その後、吸引濾過により得たろ液の上層であるヘキサン層を脂質抽出液として回収した。続いて、ろ液下層とろ過残渣を合わせ、それに新たにヘキサン130Lを加え、10分間攪拌して脂質画分を抽出後、前記同様に抽出液を回収した。更に、ろ液下層とろ過残渣に同一の操作をもう1回繰り返し、回収した合計3回分の抽出液を併せ、エバポレーターを使用して混合溶媒を除去し、残渣としてエーテル型リン脂質含有脂質である2.2kgのオキアミ油を得た。
得られたオキアミ油は、下記の分析方法に従い、エーテル型リン脂質含量、プラスマローゲン含量、1−アルキルエーテル型リン脂質含量、リン脂質の脂肪酸組成を測定し、その結果を表1に記載した。
更に、リン脂質中の塩基のタイプ(コリン型、エタノールアミン型、ホスファチジン酸型)の含量についても、下記の分析方法に従って測定し、その結果を併せて表1に記載した。
更に、DHA/全脂質の構成脂肪酸、及び、リン脂質結合型DHA/全DHAについては表2に記載した。なお、中性脂質(トリグリセリド)の脂肪酸組成については、基準油脂分析試験法に記載の方法に従い、メチルエステル化処理で得た脂肪酸メチルエステル量をガスクロマトグラフィーで検出することにより測定し、その結果を併せて表1に記載した。
〔製造例2〕
製造例1で得られたオキアミ油200gにアセトン2.5Lを添加し、4℃で1時間静置した。上清を除去し、更にアセトン2.5Lを添加し、同様に処理した。残った沈殿物を乾固し、中性脂質を除去し、1−アルキルエーテル型リン脂質含有リン脂質画分である、87gのオキアミ油リン脂質画分を得た。
得られたオキアミ油リン脂質画分は、製造例1同様、リン脂質含量、エーテル型リン脂質含量、プラスマローゲン含量、1−アルキルエーテル型リン脂質含量、リン脂質の脂肪酸組成、リン脂質中の塩基のタイプ(コリン型、エタノールアミン型、ホスファチジン酸型)の含量を測定し、その結果を併せて表1に記載した。
更に、DHA/全脂質の構成脂肪酸、及びリン脂質結合型DHA/全DHAについては表2に記載した。
〔製造例3〕
実施例1で得られたオキアミ油2000gにジエチルエーテル96mL及び0.2M酢酸緩衝液pH5.0 205mLに混濁させたLecitaseUltra(Novozymes)100kUを添加し、40℃で70時間攪拌した。反応溶液にヘキサン/エタノール/水(80:14:6)18Lを添加し、10分攪拌混合後、上層を採取した。続いて、下層に新たにヘキサン14Lを加え、10分間攪拌して、同様に脂質画分を回収した。更に、下層に同一の操作をもう1回繰り返し、回収した合計3回分の抽出液を併せ、エバポレーターを使用して混合溶媒を除去し、残渣分1950gを得た。
残渣分200gについて、ヘキサン/エタノール=80:20の混合溶媒300mLに溶解したものを、ヘキサン/エタノール=80:20の混合溶媒でけん濁したシリカゲル(Wakosil200)400gを充填したガラスカラム(100cm×3cm)に添加した。ヘキサン/エタノール=80:20の混合溶媒を4L通液させて中性脂質を溶出した後、エタノール8Lを通液させてエタノールアミンリン脂質を溶出させた。更にエタノール/水=80:20の混合溶媒11Lを通液させてコリンリン脂質を溶出させた。
得られた溶出液をエバポレーターで濃縮し、残渣として、sn−3位の塩基がコリン型である1−アルキルエーテル型リン脂質が濃縮された、7.2gのオキアミ油コリンリン脂質画分を得た。
得られたオキアミ油コリンリン脂質画分は、製造例1同様、リン脂質含量、エーテル型リン脂質含量、プラスマローゲン含量、1−アルキルエーテル型リン脂質含量、リン脂質の脂肪酸組成、リン脂質中の塩基のタイプ(コリン型、エタノールアミン型、ホスファチジン酸型)の含量を測定し、その結果を併せて表1に記載した。
更に、DHA/全脂質の構成脂肪酸、及びリン脂質結合型DHA/全DHAについては表2に記載した。
〔製造例4〕
製造例3で得られたエーテル型リン脂質含有リン脂質14gにジエチルエーテル28mL、1M塩化カルシウム溶液6mL、酢酸緩衝液(pH6.0)144mL、塩化エタノールアミン20g、Actinomadura sp.由来ホスホリパーゼD1.2g(1200U、名糖産業)を添加し、45℃で40時間攪拌した。ヘキサン/エタノール(60:40)600mLを添加し、10分攪拌混合後、上層を採取した。続いて、下層に新たにヘキサン360mLを加え、10分間攪拌して、同様に脂質画分を回収した。更に、下層に同一の操作をもう1回繰り返し、回収した合計3回分の抽出液を併せ、エバポレーターを使用して混合溶媒を除去し、残渣分11gを得た。
残渣をヘキサン/エタノール=80:20の混合溶媒300mLに溶解したものを、ヘキサン/エタノール=80:20の混合溶媒でけん濁したシリカゲル(Wakosil200)400gを充填したガラスカラム(100cm×3cm)に添加した。ヘキサン/エタノール=80:20の混合溶媒を4L通液させて中性脂質を溶出した後、エタノール8Lを通液させてエタノールアミン型リン脂質を溶出させた。
得られた溶出液をエバポレーターで濃縮し、残渣として、sn−3位の塩基がエタノールアミン型である1−アルキルエーテル型リン脂質が濃縮された、10gのオキアミ油エタノールアミンリン脂質画分を得た。
得られたオキアミ油エタノールアミンリン脂質画分は、製造例1同様、リン脂質含量、エーテル型リン脂質含量、プラスマローゲン含量、1−アルキルエーテル型リン脂質含量、リン脂質の脂肪酸組成、リン脂質中の塩基のタイプ(コリン型、エタノールアミン型、ホスファチジン酸型)の含量を測定し、その結果を併せて表1に記載した。
更に、DHA/全脂質の構成脂肪酸、及びリン脂質結合型DHA/全DHAについては表2に記載した。
〔製造例5〕
製造例3で得られたエーテル型リン脂質含有リン脂質14gにジエチルエーテル28mL、1M塩化カルシウム溶液6mL、酢酸緩衝液(pH6.0)144mL、Actinomadura sp.由来ホスホリパーゼD1.2g(1200U、名糖産業)を添加し、45℃で40時間攪拌した。ヘキサン/エタノール(60:40)600mLを添加し、10分攪拌混合後、上層を採取した。続いて、下層に新たにヘキサン360mLを加え、10分間攪拌して、同様に脂質画分を回収した。更に、下層に同一の操作をもう1回繰り返し、回収した合計3回分の抽出液を併せ、エバポレーターを使用して混合溶媒を除去し、残渣分13gを得た。
残渣をヘキサン/エタノール=80:20の混合溶媒300mLに溶解したものを、ヘキサン/エタノール=80:20の混合溶媒でけん濁したシリカゲル(Wakosil200)400gを充填したガラスカラム(100cm×3cm)に添加した。ヘキサン/エタノール=80:20の混合溶媒を4L通液させて中性脂質を溶出した後、エタノール8Lを通液させてホスファチジン酸型リン脂質を溶出させた。
得られた溶出液をエバポレーターで濃縮し、残渣として、sn−3位の塩基がホスファチジン酸型である1−アルキルエーテル型リン脂質が濃縮された、12gのオキアミ油ホスファチジン酸リン脂質画分を得た。
得られたオキアミ油ホスファチジン酸リン脂質画分は、製造例1同様、リン脂質含量、エーテル型リン脂質含量、プラスマローゲン含量、1−アルキルエーテル型リン脂質含量、リン脂質の脂肪酸組成、リン脂質中の塩基のタイプ(コリン型、エタノールアミン型、ホスファチジン酸型)の含量を測定し、その結果を併せて表1に記載した。
更に、DHA/全脂質の構成脂肪酸、及びリン脂質結合型DHA/全DHAについては表2に記載した。
Figure 0005934483
Figure 0005934483
<2>動物試験(摂食試験)
〔実施例1〜4、比較例1〕
5週齢の雄Wistar-ST系ラットを、6群(1群6匹)に分け、飼料及び水を自由に摂取させた。飼料はAIN93Gに準じた精製飼料(基本飼料:大豆油7%を含む)を用いた。なお、基本飼料は毎日交換し、飲水の水道水は3日毎に交換した。前記条件で7日間飼育した後、基本飼料の大豆油7%の代わりに製造例2で得られたオキアミ油リン脂質画分1%と大豆油6%の混合脂質を使用した飼料(実施例1)、製造例3で得られたオキアミ油コリンリン脂質画分1%と大豆油6%の混合脂質を使用した飼料(実施例2)、製造例4で得られたオキアミ油エタノールアミンリン脂質画分1%と大豆油6%の混合脂質を使用した飼料(実施例3)、製造例5で得られたオキアミ油ホスファチジン酸リン脂質画分1%と大豆油6%の混合脂質を使用した飼料(実施例4)、基本餌料(比較例1)を与え、8日間飼育した。
なお、基本飼料の配合を表3に記載する。
なお、試験期間中、各群のラットの体重増加量及び餌の摂取量への影響は認められなかった。
8日間の給餌後、採血し、下記の分析方法に従い、血清画分の脂質を抽出した。
抽出した血清脂質は、下記の分析方法に従い、血清中のプラスマローゲン量、リン脂質量(1−アルキルエーテル型リン脂質とプラスマローゲンの合計量)を、sn−1位及びsn−2位の結合脂肪酸の種類及びsn−3位の塩基の種類(分子種)ごとに測定した。
sn−2位の結合脂肪酸の種類ごとの測定値のうち、リン脂質とプラスマローゲンそれぞれの、DHA結合型について、その含量(nmol/L)と、その比率(mol%)を表4及び表5に記載した。更に、比較例1(大豆油のみ)を100とした場合の前記含量と比率についても同様に表4及び表5に記載した。なお、参考のためにアラキドン酸結合型の含量についてもあわせて記載した。
また、sn−3位の塩基の種類ごとの測定値のうち、DHA結合型プラスマローゲンについて、その含量(nmol/L)と、コリン型とエタノールアミン型の比率を表6に記載した。
Figure 0005934483
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Figure 0005934483
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<2>分析方法
本実施例の動物試験における血清中のプラスマローゲン及び1−アルキルエーテル型リン脂質の定量は、LC−MS/MSを用いて行った。
(被検試料からのプラスマローゲン及び1−アルキルエーテル型リン脂質の抽出)
血清からの総脂質の抽出は、以下のようにして行った。血液を遠心分離して得た血清0.3mLに1%塩化カリウム水溶液を加えて混合し、メタノール2.4mL、クロロホルム1.25mL及び内部標準物質として、sn−1位、sn−2位が共にミリスチン酸のジアシル型コリンリン脂質(以下、14:0/14:0−PCと言う)7.3nmol及びsn−1位、sn−2位がミリスチン酸のジアシルエタノールアミン型リン脂質(以下、14:0/14:0−PEと言う)1.7nmol及びsn−1位、sn−2位がミリスチン酸のホスファチジン酸型リン脂質(以下、14:0/14:0−PAと言う)1.7nmol含むクロロホルム:メタノール=2:1の混液0.1mLを加え、10分間混合後、30分間室温で放置した。更に、クロロホルム1.25mLを加えて混合し、1時間室温で放置後、1.25mLの1%塩化カリウム水溶液を加え、3000rpm、15分間遠心分離後、クロロホルム層(下層)を採取した。残渣に更にクロロホルム2.0mL加え、混合・放置後、遠心分離を行い、下層を採取し、先の採取液と合わせ、窒素の吹きつけにより、溶媒を除去後、1.0mLのメタノールに溶解し、フィルターを通したあと、適宜メタノールで希釈したのち、LC−MS/MSを用いて解析した。なお、その際のLC(高速液体クロマトグラフィー)と、MS/MS(タンデム質量分析)の条件はそれぞれ以下のとおりである。
(LC(高速液体クロマトグラフィー)の条件)
LC システム:Accela UHPLC System
溶離液A:5mMギ酸アンモニウム水溶液
溶離液B:アセトニトリル
カラム:Waters ACQUITY UPLC BEH C8(2.1×100mm,1.7μm)
カラム温度:60℃
流速:0.45mL/min
UHPLCの溶離液の条件を表7に示す。
Figure 0005934483
(MS/MS(タンデム質量分析)の条件)
MSシステム:TSQ Quantum system
イオン化モード:HeatedESI,positive
キャピラリー電圧:3.2kV
コーン電圧:35V
Desolvation温度:400℃
Source温度:80℃
衝突エネルギー:32eV(コリンプラスマローゲン)
20eV(エタノールアミンプラスマローゲン)
12eV(ホスファチジン酸プラスマローゲン)
32eV(1−アルキルエーテル型コリンリン脂質)
18eV(1−アルキルエーテル型エタノールアミンリン脂質)
12eV(1−アルキルエーテル型ホスファチジン酸リン脂質)
(コリンプラスマローゲンの定量方法)
コリンプラスマローゲンの定量方法は、特願2009−296744号明細書に従って行った。
被検試料中のコリンプラスマローゲンの定量を行うための検量線の作成は、以下のように行った。
sn−1位がステアリン酸、sn−2位がオレイン酸のコリンプラスマローゲン(以下、18:0/18:1−CPLと言う)、及びsn−1位がステアリン酸、sn−2位がアラキドン酸のコリンプラスマローゲン(以下、18:0/20:4−CPLと言う)を合成し、メタノールに溶解し、標準原液(1.29μmol/mL)を調製した。この標準原液をメタノールで希釈し、0.05pmol、0.10pmol、0.20pmol、及び0.50pmolの4種類の濃度の標準溶液を調製した。なお、それぞれの標準溶液には、14:0/14:0−PCを100pmol添加した。それぞれの標準溶液を、前記LC−MS/MSの測定条件に従って解析した。得られたそれぞれの標準溶液中の18:0/18:1−CPLあるいは18:0/20:4−CPLと、14:0/14:0−PCとのコリンリン酸由来フラグメントの面積比を計算し、検量線を作成した。この検量線を用いて検体試料中のコリンプラスマローゲンの定量を行った。
主要なコリン型プラスマローゲンの分子種として、sn−1位が16:0、16:1、18:0、又は18:1の4種類、sn−2位が16:0、18:0、18:1、18:2、18:3、20:1、20:4、20:5、22:4、22:5、又は22:6の11種類、つまり、合計44種類の分子種を測定した。
(エタノールアミンプラスマローゲンの定量方法)
エタノールアミンプラスマローゲンの定量方法は、Karin A.Zemski Berry et al.らの方法(J.Am.Soc.Mass Spectrom.,15,1499−508,2004)を参照、一部改変して行った。
被検試料中のエタノールアミンプラスマローゲンの定量を行うための検量線の作成は、以下のように行った。
sn−1位がステアリン酸、sn−2位がオレイン酸のエタノールアミンプラスマローゲン(以下、18:0/18:1−EPLと言う)、及び、sn−1位がステアリン酸、sn−2位がアラキドン酸のエタノールアミンプラスマローゲン(以下、18:0/20:4−EPLと言う)を合成し、これらを共にメタノールに溶解し、標準原液(1.29μmol/mL)を調製した。この標準原液をメタノールで希釈し、0.05pmol、0.10pmol、0.20pmol、及び0.50pmolの4種類の濃度の標準溶液を調製した。なお、それぞれの標準溶液には、14:0/14:0−PEを100pmol添加した。それぞれの標準溶液を、前記LC−MS/MSの測定条件に従って解析した。得られたそれぞれの標準溶液中の18:0/18:1−EPLあるいは18:0/20:4−EPLの分子内転移によって生じるフラグメントと、14:0/14:0−PEとの面積比を計算し、検量線を作成した。この検量線を用いて検体試料中のエタノールアミンプラスマローゲンの定量を行った。
主要なエタノールアミンプラスマローゲンの分子種として、sn−1位が16:0、16:1、18:0、又は18:1の4種類、sn−2位が16:0、18:0、18:1、18:2、18:3、20:1、20:4、20:5、22:4、22:5、又は22:6の11種類、つまり、合計44種類の分子種を測定した。
(1−アルキルエーテル型コリンリン脂質、及び1−アルキルエーテル型エタノールアミンリン脂質の定量方法)
被検試料中の1−アルキルエーテル型コリンリン脂質質、あるいは、1−アルキルエーテル型エタノールアミンリン脂質の定量を行うための検量線の作成は、以下のように行った。
sn−1位がパルミチン酸、sn−2位がオレイン酸の1−アルキルエーテル型コリンリン脂質(以下、16:0/18:1−CAと言う)、及び、sn−1位がパルミチン酸、sn−2位がオレイン酸の1−アルキルエーテル型エタノールアミンリン脂質(以下、16:0/18:1−EAと言う)を合成し、メタノールに溶解し、標準原液(1.29μmol/mL)を調製した。この標準原液をメタノールで希釈し、0.05pmol、0.10pmol、0.20pmol、及び0.50pmolの4種類の濃度の標準溶液を調製した。なお、16:0/18:1−CAの標準溶液には、14:0/14:0−PCを、16:0/18:1−EAの標準溶液には14:0/14:0−PEをそれぞれ100pmol添加した。それぞれの標準溶液を、前記LC−MS/MSの測定条件に従って解析した。
1−アルキルエーテル型コリンリン脂質のそれぞれの標準溶液中の16:0/18:1−CAと、14:0/14:0−PCとのコリンリン酸由来フラグメントの面積比を計算し、1−アルキルエーテル型コリンリン脂質質の検量線を作成した。
一方、1−アルキルエーテル型エタノールアミンリン脂質のそれぞれの標準溶液中の16:0/18:1−EAと、14:0/14:0−PEとのエタノールアミンリン酸由来フラグメントの面積比を計算し、エタノールアミン型1−アルキルエーテル型リン脂質の検量線を作成した。
これらの検量線を用いて検体試料中の1−アルキルエーテル型リン脂質の定量を行った。
主要な1−アルキルエーテル型リン脂質の分子種として、sn−1位が16:0、16:1、18:0、又は18:1の4種類、sn−2位が16:0、18:0、18:1、18:2、18:3、20:1、20:4、20:5、22:4、22:5、又は22:6の11種類、つまり、合計44種類の分子種を測定した。
(ホスファチジン酸プラスマローゲン及び1−アルキルエーテル型ホスファチジン酸リン脂質の定量)
なお、製造例1〜5の全ての被験試料、及び、実施例1〜4、比較例1,2の動物試験で得られた血清脂質サンプルについて、前記LC−MS/MSの測定条件に従って解析した場合、内部標準である14:0/14:0−PA以外のピークが検出されなかったため、ホスファチジン酸プラスマローゲン及び1−アルキルエーテル型ホスファチジン酸リン脂質は測定限界未満の含量であることが分かった。
表4からわかるように、血清中のリン脂質結合型DHA含量(DHA結合型プラスマローゲンとDHA結合型1−アルキルエーテル型リン脂質の合計量)は、基本飼料(比較例1)に対し、製造例2で得られたオキアミ油リン脂質画分1%と大豆油6%の混合脂質を使用した飼料(実施例1)は2.71倍、製造例3で得られたオキアミ油コリンリン脂質画分1%と大豆油6%の混合脂質を使用した飼料(実施例2)は14.66倍、製造例4で得られたオキアミ油エタノールアミンリン脂質画分1%と大豆油6%の混合脂質を使用した飼料(試験群3)は7.62倍、製造例5で得られたオキアミ油ホスファチジン酸リン脂質画分1%と大豆油6%の混合脂質を使用した飼料(実施例4)は7.84倍となった。
また、DHA比についても、基本飼料(比較例1)に対し、製造例2で得られたオキアミ油リン脂質画分1%と大豆油6%の混合脂質を使用した飼料(実施例1)は1.74倍、製造例3で得られたオキアミ油コリンリン脂質画分1%と大豆油6%の混合脂質を使用した飼料(実施例2)は2.49倍、製造例4で得られたオキアミ油エタノールアミンリン脂質画分1%と大豆油6%の混合脂質を使用した飼料(試験群3)は2.68倍、製造例5で得られたオキアミ油ホスファチジン酸リン脂質画分1%と大豆油6%の混合脂質を使用した飼料(実施例4)は2.64倍となった。
また、前記のようにリン脂質結合型DHA含量、比は大きく増加しているが、リン脂質結合型アラキドン酸については、その比を見るとわかるように、実施例1〜4において、比較例1に比べ50〜74%と逆に減少していることがわかる。
表5からわかるように、血清中のDHA結合型プラスマローゲン量は、基本飼料(比較例1)に対し、製造例2で得られたオキアミ油リン脂質画分1%と大豆油6%の混合脂質を使用した飼料(実施例1)は2.22倍、製造例3で得られたオキアミ油コリンリン脂質画分1%と大豆油6%の混合脂質を使用した飼料(実施例2)は4.57倍、製造例4で得られたオキアミ油エタノールアミンリン脂質画分1%と大豆油6%の混合脂質を使用した飼料(試験群3)は4.02倍、製造例5で得られたオキアミ油ホスファチジン酸リン脂質画分1%と大豆油6%の混合脂質を使用した飼料(実施例4)は4.95倍となった。
また、DHA比についても、基本飼料(比較例1)に対し、製造例2で得られたオキアミ油リン脂質画分1%と大豆油6%の混合脂質を使用した飼料(実施例1)は1.73倍、製造例3で得られたオキアミ油コリンリン脂質画分1%と大豆油6%の混合脂質を使用した飼料(実施例2)は2.45倍、製造例4で得られたオキアミ油エタノールアミンリン脂質画分1%と大豆油6%の混合脂質を使用した飼料(試験群3)は2.25倍、製造例5で得られたオキアミ油ホスファチジン酸リン脂質画分1%と大豆油6%の混合脂質を使用した飼料(実施例4)は2.38倍となった。
また、前記のようにリン脂質結合型DHA含量、比は大きく増加しているが、リン脂質結合型アラキドン酸については、その比を見るとわかるように、実施例1〜4において、比較例1に比べ58〜64%と逆に減少していることがわかる。
この結果から、エーテル型リン脂質(1−アルキルエーテル型リン脂質)は、リン脂質結合型DHA増加剤としての機能が高いことがわかる。
また、表6からわかるように、DHA結合型プラスマローゲンの増加分のうち、認知症患者や高齢者で血液中の濃度が低下すると言われるエタノールアミン型の増加は、コリン型の増加に対して有意に大きく、リン脂質結合型DHA増加剤としてエーテル型リン脂質(1−アルキルエーテル型リン脂質)は極めて有用であることがわかる。
本発明のリン脂質結合型DHA増加剤、及びリン脂質結合型DHAを上昇させる飲食品は、学習能力及び記憶力など脳機能の向上に有用であり、また認知症等の予防、並びにアルツハイマー症、及びうつ病などの疾病の治療に有用である。

Claims (6)

  1. 1−アルキルエーテル型リン脂質及びDHAを有効成分として含み、前記1−アルキルエーテル型リン脂質の含有量が5〜100%であり、そして前記DHAの70〜100%がリン脂質に結合していることを特徴とする、リン脂質結合型DHA増加剤。
  2. オキアミ抽出物由来の、1−アルキルエーテル型リン脂質及び/又はDHAを含む、請求項1に記載のリン脂質結合型DHA増加剤。
  3. 前記1−アルキルエーテル型リン脂質の含有量が50〜100%である、請求項1又は2に記載のリン脂質結合型DHA増加剤。
  4. 1−アルキルエーテル型リン脂質及びDHAを有効成分として含み、前記1−アルキルエーテル型リン脂質の含有量が5〜100%であり、そして前記DHAの70〜100%がリン脂質に結合していることを特徴とする、リン脂質結合型DHAを上昇させる増加用飲食品。
  5. オキアミ抽出物由来の、1−アルキルエーテル型リン脂質及び/又はDHAを含む、請求項3に記載のリン脂質結合型DHA増加用飲食品。
  6. 前記1−アルキルエーテル型リン脂質の含有量が50〜100%である、請求項4又は5に記載のリン脂質結合型DHA増加用飲食品。
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