JP6755530B2 - 皮膚炎の予防又は治療用医薬組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、皮膚炎の予防又は治療用医薬組成物並びに皮膚炎の予防又は改善用飲食品組成物に関する。本発明によれば、皮膚炎、特にはアトピー性皮膚炎を効果的に予防又は治療することができる。
近年、先進国を中心に皮膚炎に悩まされる人の数は年々増加する傾向にあり、食生活や住環境の変化、生活のリズムの変化等の様々な要因が関係しているといわれている。皮膚炎、特にアトピー性皮膚炎については、これまで多くの場合、子供のうちに発症するといわれていたが、最近では大人になってから突然発症する例も増えており、効果的な予防及び改善方法が求められている。
皮膚は体の最外殻にあり、常に酸化ストレスに晒されている部位である。皮膚には顆粒層にあるタイトジャンクション(TJ)バリアと角質層にある脂質が関与する角質バリアの2種類のバリア機能が存在する。このバリア機能の低下がアトピー性皮膚炎の原因の一つであることが知られている。
アトピー性皮膚炎の症状を改善するには、ステロイド剤に代表される治療薬によって、まずは直接炎症を抑える方法が行われる。一方、損傷した皮膚のバリア機能を正常な状態へ戻すための治療薬や組成物についてのアプローチが各種検討されている。例えば、(特許文献1)にはシソ科植物由来の抽出物を有効成分として含有する、セラミド産生促進剤について、(特許文献2)にはアルニカの抽出物、アシタバの抽出物、センキュウの抽出物、ハトムギの抽出物及び冬虫夏草の抽出物から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とするクローディン−1産生促進剤について、(特許文献3)にはN−アセチル−トランス−4−ヒドロキシ−L−プロリンまたはそれらの塩を有効成分として含有する皮膚表皮セラミド合成促進剤について、(特許文献4)には、シャクヤク及びその抽出物から選ばれる1種以上を含有する、皮膚バリア機能増強剤について開示されている。
上記の方法は、基本的に外用剤として皮膚へ塗布することによって改善するものと考えられるが、塗布した部分に限らず、皮膚の機能を改善することのできる方法が求められていた。
特開2004−210743号公報 特開2010−65007号公報 WO2002/006225号パンフレット 特開2016−23167号公報 特開平2−290812号公報 特開平7−173060号公報
従って、本発明の目的は、特に経口投与によって効果的に皮膚炎を予防又は治療できる医薬組成物を提供することにある。また、皮膚炎を予防又は改善できる飲食品組成物を提供することである。
本発明者は、皮膚炎を予防又は治療できる医薬組成物、並びに皮膚炎を予防又は改善できる飲食品組成物について、鋭意研究した結果、驚くべきことに、1−アルキルエーテル型リン脂質を有効成分とする医薬組成物及び飲食品組成物が、効果的に皮膚炎を予防又は治療(改善)できることを見出した。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
従って、本発明は、
[1]1−アルキルエーテル型リン脂質を有効成分として含むことを特徴とする、皮膚炎の予防又は治療用医薬組成物、
[2]前記皮膚炎が、アトピー性皮膚炎である[1]に記載の医薬組成物、
[3]1−アルキルエーテル型リン脂質を有効成分として含むことを特徴とする、皮膚炎の予防又は改善用飲食品組成物、及び
[4]前記皮膚炎が、アトピー性皮膚炎である[3]に記載の飲食品組成物、
に関する。
また、本明細書は、
[5]1−アルキルエーテル型リン脂質を、皮膚炎の治療が必要な対象に、有効量で投与することを含む、皮膚炎の予防又は治療方法、
[6]前記皮膚炎が、アトピー性皮膚炎である[5]に記載の皮膚炎の予防又は治療方法、
[7]皮膚炎の治療方法における使用のための1−アルキルエーテル型リン脂質、
[8]前記皮膚炎が、アトピー性皮膚炎である[7]に記載の1−アルキルエーテル型リン脂質、
[9]皮膚炎の予防又は治療用医薬組成物の製造のための1−アルキルエーテル型リン脂質の使用、及び
[10]前記皮膚炎が、アトピー性皮膚炎である[9]に記載の1−アルキルエーテル型リン脂質の使用、
を開示する。
なお、脂肪酸がアレルギー又は掻痒症状の改善に有効であることが報告されている。例えば、特許文献5には、α−リノレン酸を含むシソ油及び茶抽出物を摂取したラットにおいて、SRS(slow reacting substance)の産生が抑制されたことが開示されている。また、特許文献6には、魚油に含まれるエイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、及びエゴマ油に含まれるαーリノレン酸を含むドリンクが皮膚の掻痒症状を改善したことが開示されている。しかしながら、1−アルキルエーテル型リン脂質が、皮膚炎、特にアトピー性皮膚炎の改善に有効であることは、報告されていなかった。
本発明の医薬組成物によれば、皮膚炎、特にアトピー性皮膚炎を予防し、そして治療することができる。本発明の飲食品は、毎日の飲食により、皮膚炎、特にアトピー性皮膚炎を予防し、又は症状を改善することができる。また、本発明の飲食品に使用される1−アルキルエーテル型リン脂質は、広範な飲食品に使用することが可能であり、風味良好な飲食品を容易に得ることができる。
アトピー性皮膚炎のモデルマウスであるNC/Ngaマウスの発症マウス(A)、及び1−アルキルエーテル型リン脂質を投与した発症マウス(B)の皮膚の状態を示した写真である。 発症マウス、及び1−アルキルエーテル型リン脂質を投与した発症マウスの耳の厚さを測定したグラフである。 発症マウス、及び1−アルキルエーテル型リン脂質を投与した発症マウスの引っ掻き行動の回数を測定したグラフである。 発症マウス、及び1−アルキルエーテル型リン脂質を投与した発症マウスの外観の「出血」、「腫れ」、「乾燥」、及び「傷」のスコア4段階(0:none、1:mild、2:moderate、3:severe)で評価したグラフである。 発症マウス、及び1−アルキルエーテル型リン脂質を投与した発症マウスの背部の表皮からの水分蒸散量を示したグラフである。 発症マウス、及び1−アルキルエーテル型リン脂質を投与した発症マウスの血中IgE量を測定したグラフである。 発症マウス、及び1−アルキルエーテル型リン脂質又は魚油を投与した発症マウスの耳の厚さを測定したグラフである。 発症マウス、及び1−アルキルエーテル型リン脂質又は魚油を投与した発症マウスの背部の表皮からの水分蒸散量を示したグラフである。 発症マウス、及び1−アルキルエーテル型リン脂質又は魚油を投与した発症マウスの血中IgE量を測定したグラフである。
〔1〕皮膚炎の予防又は治療用医薬組成物
本発明の皮膚炎の予防又は治療用医薬組成物は、1−アルキルエーテル型リン脂質を有効成分として含む。本発明の医薬組成物は、1−アルキルエーテル型リン脂質のみを含むものでもよいが、1−アルキルエーテル型リン脂質及び薬剤学的又は獣医学的に許容することのできる通常の担体又は希釈剤等を含むものでもよい。本発明の医薬組成物は、皮膚炎の予防剤、改善剤、又は治療剤として用いることができる。
《1−アルキルエーテル型リン脂質》
本発明の医薬組成物は、一般式(I)
[式中、Rは、炭素数1から21の炭化水素基であり、Rは、炭素数1〜26の脂肪酸残基、または水素原子であり、Rはコリン(−CHCHN(CH)、エタノールアミン(−CHCHNH)、セリン(−CH−CH(NH)−COOH)、グリセロール(−CH−CH(OH)−CHOH)、イノシトール(−CH−C(OH))、又は水素原子である]で表される1−アルキルエーテル型リン脂質を有効成分として含む。
前記Rの炭化水素基はアルキル基、又はアルケニル基でもよく、具体的にはペンタデシル基、ヘプタデシル基、又はヘプタデセル鎖基を挙げることができる。なお、本明細書において、「sn−1位の脂肪酸残基」とは、脂肪酸からカルボキシル基(−COOH)を除いたものを意味し、具体的には一般式(1)のRとエーテル基の炭素を含む「−CH−R」を意味し、16:0、18:0、又は18:1(炭素数:不飽和結合数)などと表記する。
また、前記Rの脂肪酸残基としては、具体的には、パルミトイル基、オレイル基、アラキドイル基、又はドコサヘキサエノイル基等を挙げることができる。なお、本明細書において、sn−2位の脂肪酸残基とは、脂肪酸から−OHを除いたものを意味し、16:0、18:1、20:4、又は22:6(炭素数:不飽和結合数)などと表記する。また、本明細書において、「sn−2位のアシル基」とは、脂肪酸からカルボキシル基の水素原子(−H)を除いた基を意味する。
本発明の皮膚炎改善・予防剤においては、1−アルキルエーテル型リン脂質のsn−1位の脂肪酸残基及びsn−2位の脂肪酸残基の由来となる脂肪酸が、どの脂肪酸であっても本発明の効果を有する。
(1−アルキルエーテル型リン脂質の化学合成)
本発明に用いることのできる1−アルキルエーテル型リン脂質は、グリセリンを1−アルキルエーテルグリセロールに変換し、エステル化やリン酸化を行うことにより、化学合成することも可能であり、化学合成の1−アルキルエーテル型リン脂質を用いることも可能である。しかし本発明では、入手の容易性や生産性から、天然物から抽出及び分離したものが好ましい。
(1−アルキルエーテル型リン脂質の製造原料)
1−アルキルエーテル型リン脂質の抽出源とする天然物としては、エーテル型リン脂質中の1−アルキルエーテル型リン脂質含量が50%以上である天然物を使用することが好ましく、より好ましくは80%以上、更に好ましくは95%以上である天然物を使用することが好ましい。なお、前記天然物は、プラスマローゲン(アルケニルアシル型リン脂質)をなるべく含有しないことが好ましく、好ましくはエーテル型リン脂質中のプラスマローゲン比が50%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以下、更に好ましくは5%以下である天然物を使用する。
なお、ここで、抽出源とする前記天然物として1−アルキルエーテル型リン脂質とプラスマローゲンを共に含有する天然物を使用する場合は、弱酸溶液処理等の方法により、あらかじめプラスマローゲンを除去するか、あるいは、下記の分画・濃縮・精製の操作に加え、前記プラスマローゲンを除去する操作を行うことが好ましい。
1−アルキルエーテル型リン脂質を抽出、分離する天然物としては、一般的に1−アルキルエーテル型リン脂質含量が高いことが知られている各種の動物、植物、微生物、例えば、マグロ、イワシなどの魚類、ホタテ、カキ、ムール貝などの貝類、タコ、イカなどの頭足類、エビ、フジツボ、オキアミ、カラヌスなどの甲殻類、ウシ、ブタ、ニワトリなどの家禽動物などの、その個体そのもの、その筋肉組織や、脂肪組織、あるいは脳などの神経組織、腸などの内臓組織、更にはその卵などを使用することができる。なかでも本発明では、エーテル型リン脂質中の1−アルキルエーテル型リン脂質含量が高くプラスマローゲン含量が極めて少ない、すなわち、エーテル型リン脂質中の1−アルキルエーテル型リン脂質含量比が高い天然物であること、更には、組織を分離することなく生体そのものを直接抽出源とすることができ、資源量が豊富であり、入手が容易であることに加え、更にはアスタキサンチンを含有することから保存安定性が良好である皮膚炎改善・予防剤を得ることが可能であることから、オキアミを用いることが特に好ましい。
(1−アルキルエーテル型リン脂質の抽出方法)
本発明の医薬組成物では、これら各種動物、植物、微生物から、溶剤抽出などによって抽出された、エーテル型リン脂質含有脂質、更には、必要に応じて、前記脂質から液々抽出やカラムクロマトグラフィー、酵素処理などでリン脂質を分離した、リン脂質画分や、更にエーテル型リン脂質を濃縮した濃縮物、また、更に精製した、精製エーテル型リン脂質を使用することができる。
前記各種動物、植物、微生物等の組織からの抽出方法としては、Folch法(Folch et al.:J. Biol. Chem., 226, 497-505, 1957)、Bligh & Dyer法(Bligh et al.:Can. J. Biochem. Physiol., 37, 911-917, 1959)、あるいは安全性の高い有機溶媒であるヘキサンや低級アルコールを用いた混合溶媒を用いる方法(Hara et al.:Anal. Biochem., 90(1):420-6,1978、特開2005-179340)、また、安全性が高く、かつ液液抽出の界面分離性が優れるヘキサンとエタノールの混合溶媒を用いる方法(特開2009-227765)などがある。また、抽出効率を高めるために、前記動物組織を脱水処理したものを用いてもよい。
また、前記分離方法としては、アセトン沈殿法(山川民夫監修:生化学実験講座3,脂質の化学(日本生化学会編),p.19−20,1963,東京化学同人)、カラムクロマトグラフィー法(James et al.:Lipids, 23, 1146-1149, 1988)等によるトリグリセリドや部分グリセリドを除去し、エーテル型リン脂質を含むリン脂質画分のみを分離精製することができる。
更に、前記濃縮方法としては、弱アルカリ処理(Hanahan et al.:J. Biol. Chem. 236, 59-60, 1961)、あるいは哺乳動物膵臓由来リパーゼ又は微生物由来のホスホリパーゼA1処理によるジアシル型リン脂質の分解(Woelk et al.:Z Physiol. Chem. 354, 1265-70, 1973)の方法を用いて、エーテル型リン脂質以外のリン脂質を除去することでエーテル型リン脂質を濃縮することができる。
ホスホリパーゼA1を用いて濃縮する場合、具体的には、エーテル型リン脂質含有脂質に対し、ホスホリパーゼA1、好ましくはActinomadura sp.由来のホスホリパーゼA1を添加し、好ましくは少量のジエチルエーテルと弱酸性緩衝液下で、分解反応させ、分解生成物を親水性溶媒と疎水性溶媒の混合溶媒、例えば、ヘキサン/エタノール混合溶媒により再抽出することで得ることができる。
更に詳しく述べると、エーテル型リン脂質含有脂質1gにホスホリパーゼA1を0.1〜2.0U、酢酸緩衝液pH5.0〜6.0を2〜20%、好ましくは5〜10%添加し、30〜60℃で、2〜100時間、攪拌しながら分解反応させる。反応溶液にヘキサン/エタノール/水の混合溶媒、例えばヘキサン65〜90に対し、エタノール5〜20、水4〜10、好ましくはヘキサン75〜85、エタノール10〜18、水5〜8の比の混合溶媒を加えて再抽出することで、ホスホリパーゼA1反応で生じた1−リゾリン脂質は下層の水層に、エーテル型リン脂質は上層のヘキサン層に分離することができる。ここで、上層のヘキサン層を分取し、定法によりヘキサンを除去することで、エーテル型リン脂質以外のリン脂質を除去し、エーテル型リン脂質のみを濃縮することができる。
なお、前記エーテル型リン脂質の濃縮の前又は後、好ましくは後に、トリグリセリドに代表される中性脂質を分画除去し、エーテル型リン脂質含有リン脂質とすることが好ましい。この中性脂質の除去方法としては、アセトン沈殿法やカラムクロマトグラフィーなどの公知の方法を採ることができる。
更には、シリカゲルクロマトグラフィーによってsn−3位の塩基の種類別に濃縮することも可能である。例えば、シリカゲルをヘキサン/エタノール混合溶媒、好ましくは95:5〜60:40の混合溶媒で充填したカラムに、エーテル型リン脂質含有脂質やエーテル型リン脂質含有リン脂質を充填し、同溶媒をカラム体積の2〜8倍量通液させて中性脂質を溶出させた後、ヘキサン/エタノール混合溶媒、好ましくは5:95〜0:100、あるいはエタノール/水の混合溶媒、好ましくは100:0〜95:5をカラム体積の6〜15倍量通液させることにより、エタノールアミン型やホスファチジン酸型を分画することができ、続いてエタノール/水の混合溶媒、好ましくは90:10〜70:30をカラム体積の8〜20倍量通液させることにより、コリン型を分画することができる。
また、前記天然物からの抽出脂質における1−アルキルエーテル型リン脂質含有量は、好ましくは2〜100%、より好ましくは5〜100%、更に好ましくは50〜100%である。また、1−アルキルエーテル型リン脂質を有効成分として含有する本発明の医薬組成物は、1−アルキルエーテル型リン脂質以外のリン脂質、例えばプラスマローゲンを含むこともできるが、プラスマローゲンは1−アルキルエーテル型リン脂質よりも酸化されやすく保存安定性が極めて低いため、本発明の医薬組成物に含むことのできるエーテル型リン脂質の全量に対する1−アルキルエーテル型リン脂質の比率は、1−アルキルエーテル型リン脂質が60%以上であり、好ましくは80%以上であり、最も好ましくは90%以上である。
得られた1−アルキルエーテル型リン脂質を含む抽出脂質は、本発明の医薬組成物、又は飲食品組成物の有効成分として用いることができる。また、1−アルキルエーテル型リン脂質を含む抽出脂質は、そのまま皮膚炎の予防又は治療剤として用いることもできる。
(その他の脂質)
前記天然物からの抽出油脂は、前記エーテル型リン脂質含有脂質や前記エーテル型リン脂質含有リン脂質などのエーテル型リン脂質以外にその他の脂質を含んでもよい、その他の脂質はジアシル型リン脂質、糖脂質、スフィンゴ脂質、中性脂質などからなる。
本発明の医薬組成物は、1−アルキルエーテル型リン脂質を有効成分として含有するため、アトピー性皮膚炎をはじめとする皮膚炎の予防や改善に使用可能である。
医薬組成物における、1−アルキルエーテル型リン脂質の含有量は、使用する医薬組成物により異なるが、成人の場合、エーテル型リン脂質として1日当たり10mg〜4g、より好ましくは20mg〜2g摂取できる量の1−アルキルエーテル型リン脂質を医薬組成物中に含有できればよい。具体的には、1−アルキルエーテル型リン脂質は医薬組成物中、0.1〜100質量%であることが好ましく、0.5〜99質量%であることが好ましく、1〜80質量%であることが最も好ましい。
医薬組成物は、1−アルキルエーテル型リン脂質を単独で、あるいは、好ましくは薬剤学的又は獣医学的に許容することができる通常の担体又は希釈剤とともに、皮膚炎の治療及び/又は予防が必要な対象[例えば、動物、好ましくは哺乳動物(特にヒト)]に有効量で投与することができる。
医薬組成物の投与剤型としては、特に限定がなく、例えば、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁剤、エマルジョン剤、シロップ剤、エキス剤、若しくは丸剤等の経口剤、又は注射剤、外用液剤、軟膏剤、坐剤、局所投与のクリーム、若しくは点眼剤などの非経口剤を挙げることができるが、経口剤が好ましい。
経口剤は、例えば、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、澱粉、コーンスターチ、白糖、乳糖、ブドウ糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、ポリビニルピロリデン、結晶セルロース、大豆レシチン、ショ糖、脂肪酸エステル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、ケイ酸マグネシウム、無水ケイ酸、又は合成ケイ酸アルミニウムなどの賦形剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、希釈剤、保存剤、着色剤、香料、矯味剤、安定化剤、保湿剤、防腐剤、又は酸化防止剤等を用いて、常法に従って製造することができる。
医薬組成物を用いる場合の投与量は、例えば、使用する有効成分の種類、病気の種類、患者の年齢、性別、体重、生上の程度、又は投与方法に応じて適宜決定することができ、経口的に又は非経口的に投与することが可能である。
更に、投与形態も医薬品に限定されるものではなく、種々の形態、例えば、機能性食品や健康食品(飲料も含む)、又は飼料として飲食物の形態で与えることも可能である。
1−アルキルエーテル型リン脂質を含有する医薬組成物の製造方法は、前記にエーテル型リン脂質を有効成分として含むこと以外は、公知の医薬品の製造方法を用いて製造することができる。
本発明の飲食品又は医薬組成物を経口摂取する場合の摂取量は、前記のとおり、例えば成人の場合、エーテル型リン脂質として1日当たり10mg〜4g、より好ましくは20mg〜2g摂取できる量の皮膚炎改善・予防剤を医薬組成物中に含有できる量である。
(その他の成分)
本発明の医薬組成物は、その他の成分を含有することができる。前記その他の成分としては、例えば、食用油脂、水、グリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の乳化剤、ローカストビーンガム、カラギーナン、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、ゼラチン、澱粉、又は化工澱粉等の増粘安定剤、食塩、又は塩化カリウム等の塩味剤、酢酸、乳酸、又はグルコン酸等の酸味料、糖類又は糖アルコール類、ステビア、又はアスパルテーム等の甘味料、ベータカロチン、カラメル、又は紅麹色素等の着色料、トコフェロール、又は茶抽出物等の酸化防止剤、着香料、pH調整剤、食品保存料、又は日持ち向上剤等の食品素材や食品添加物を挙げることができる。また、各種ビタミンやコエンザイムQ、植物ステロール、又は乳脂坊球皮膜等の機能素材を含有させることも可能である。
これらのその他の成分の含有量は、本発明の医薬組成物中、合計で好ましくは80質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは20質量%以下とする。
《皮膚炎》
本発明の医薬組成物は、皮膚炎、特にアトピー性皮膚炎の予防、改善又は治療に有効である。本発明の医薬組成物が有効な皮膚炎は、特に限定されるものではないが、内因性皮膚炎(発疹)、接触性皮膚炎、又は脂漏性皮膚炎を挙げることができる。
内因性皮膚炎は、免疫又は遺伝等の原因で皮膚炎を発症するものであり、例えば、アトピー性皮膚炎を挙げることができる。アトピー性皮膚炎とは、アレルギー反応と関連して皮膚の炎症(発疹など)を伴う疾患である。アトピー性皮膚炎の原因は、特定されていないが、アトピー体質の人の肌に、ハウスダスト、ダニ、又は動物の毛などが接触することによりアレルギー反応が起こり、アトピー性皮膚炎が発症することがあると考えられている。また、卵、牛乳、又は大豆などの食品からアトピー性皮膚炎が発症することもあると考えられている。本発明の医薬組成物は、特にアトピー性皮膚炎に対して顕著な効果を示す。
実施例に示すように、本発明の医薬組成物は、アトピー性皮膚炎を発症したNC/Ngaマウスに投与することによって、アトピー性皮膚炎の症状を改善することができる。また、発症前のNC/Ngaマウスに投与することによって、アトピー性皮膚炎の発症を抑制することができる。
接触性皮膚炎は、化学物質が皮膚に触れることによって、発症する皮膚炎である。化学物質としては、酸、アルカリ、強力な石鹸、又は植物(うるし、ハゼ、ぎんなんなど)を挙げることができる。
脂漏性皮膚炎は、例えば頭皮に乾いた脂っぽい皮膚のはがれ(フケ)などが見られる。症状が進むと発疹が赤くなり、吹き出物などが見られることもある。脂漏性皮膚炎の原因は分かっていないが、遺伝、環境、又は精神的ストレスなどが考えられている。最近では、カビの1種であるマラセチアが発症の原因に関連しており、重要な悪化因子であると考えられている。
《皮膚炎の予防又は治療方法》
前記1−アルキルエーテル型リン脂質は、皮膚炎の予防又は治療方法に用いることができる。すなわち、本明細書は、1−アルキルエーテル型リン脂質を、皮膚炎患者に投与することを特徴とする、皮膚炎の予防又は治療方法を開示する。本発明の皮膚炎の予防又は治療方法は、特にアトピー性皮膚炎に有効である。
《皮膚炎の治療方法に使用する1−アルキルエーテル型リン脂質》
前記1−アルキルエーテル型リン脂質は、皮膚炎患の治療方法に使用することができる。すなわち、本明細書は、皮膚炎の予防又は治療方法における使用のための、1−アルキルエーテル型リン脂質を開示する。本発明の1−アルキルエーテル型リン脂質は、特にアトピー性皮膚炎に有効である。
《1−アルキルエーテル型リン脂質の医薬組成物の製造への使用》
前記1−アルキルエーテル型リン脂質は、皮膚炎の治療用医薬組成物の製造へ使用することができる。すなわち、本明細書は、1−アルキルエーテル型リン脂質の、皮膚炎の予防又は治療用医薬組成物の製造への使用を開示する。本発明の1−アルキルエーテル型リン脂質に使用は、特にアトピー性皮膚炎に有効である。
1−アルキルエーテル型リン脂質は、1−アルキルエーテル型リン脂質が有効性を示すと考えられる皮膚炎の種々の治療剤又は予防剤と併用することができる。当該併用は、同時投与、或いは別個に連続して、若しくは所望の時間間隔をおいて投与してもよい。同時投与製剤は、配合剤であっても別個に製剤化されていてもよい。
《作用》
本発明の効果が得られる作用機構は完全に解明されているわけではないが、以下のように推論することができる。しかしながら、本発明は以下の説明によって限定されるものではない。本発明の医薬組成物、又は食品組成物の有効成分である1−アルキルエーテル型リン脂質は、皮膚に存在するバリア機能の一つである顆粒層にあるタイトジャンクション(TJ)バリア機能の維持、及び回復に関与し、皮膚炎を予防又は治療できると考えられる。すなわち、本発明の医薬組成物、又は食品組成物はタイトジャンクションが障害される皮膚炎に有効に作用できる。また、本発明の医薬組成物は、皮膚炎の治療のみでなく、皮膚炎の予防に用いることができる。
〔2〕皮膚炎の予防又は改善用飲食品組成物
本発明の皮膚炎の予防又は改善用飲食品組成物は、1−アルキルエーテル型リン脂質を有効成分として含む。本発明の飲食品に含まれる1−アルキルエーテル型リン脂質は、前記「皮膚炎の予防又は治療用医薬組成物」の項に記載の1−アルキルエーテル型リン脂質を用いることができる。すなわち、化学合成された1−アルキルエーテル型リン脂質を使用することもできるが、天然物から抽出された1−アルキルエーテル型リン脂質を含む抽出物(抽出油脂)を用いることもできる。
また、本発明の飲食品組成物によって、予防又は改善される皮膚炎は、前記「皮膚炎の予防又は治療用医薬組成物」の項に記載の皮膚炎である。すなわち、皮膚炎であれば特に限定されるものではないが、内因性皮膚炎(発疹)、接触性皮膚炎、又は脂漏性皮膚炎を挙げることができる。特には、本発明の飲食品組成物は、アトピー性皮膚炎の予防、又は改善に有効である。
本発明の飲食品における、1−アルキルエーテル型リン脂質の含有量は、使用する飲食品により異なるが、成人の場合、1−アルキルエーテル型リン脂質として1日当たり10mg〜4g、より好ましくは20mg〜2g摂取できる量の皮膚炎改善・予防剤を飲食物中に含有できればよい。具体的には、飲食品中0.1〜100質量%であることが好ましい。
なお、本発明における飲食品としては、特に限定されるものではなく、例えば味噌、醤油、めんつゆ、たれ、だし、パスタソース、ドレッシング、マヨネーズ、トマトケチャップ、ウスターソース、とんかつソース、又はふりかけ等の調味料、お吸い物の素、カレールウ、ホワイトソース、お茶漬けの素、又はスープの素等の即席調理食品、味噌汁、お吸い物、コンソメスープ、又はポタージュスープ等のスープ類、焼肉、ハム、又はソーセージ等の畜産加工品、かまぼこ、干物、塩辛、佃煮、又は珍味等の水産加工品、漬物等の野菜加工品、ポテトチップス、又は煎餅等のスナック類、食パン、菓子パン、又はクッキー等のベーカリー食品類、煮物、揚げ物、焼き物、カレー、シチュー、グラタン、ごはん、おかゆ、又はおにぎり等の調理食品、パスタ、うどん、又はラーメン等の麺類食品、マーガリン、ショートニング、ファットスプレッド、又は風味ファットスプレッド等の油脂加工食品、フラワーペースト、又は餡等の製菓製パン用素材、パン用ミックス粉、ケーキ用ミックス粉、又はフライ食品用ミックス粉等のミックス粉、チョコレート、キャンディ、ゼリー、アイスクリーム、又はガム等の菓子類、饅頭、又はカステラ等の和菓子類、コーヒー、コーヒー牛乳、紅茶、ミルクティー、豆乳、栄養ドリンク、野菜飲料、食酢飲料、ジュース、コーラ、ミネラルウォーター、又はスポーツドリンク等の飲料、ビール、ワイン、カクテル、又はサワー等のアルコール飲料類、牛乳、ヨーグルト、又はチーズ等の乳や乳製品等が挙げられる。
本発明の1−アルキルエーテル型リン脂質を含有する飲食品は、1−アルキルエーテル型リン脂質を原料として含むこと以外は、公知の飲食品の製造方法を用いて製造することができる。
本発明の飲食品は、1−アルキルエーテル型リン脂質を含有することにより、血液中においてIgE濃度を低下させることが可能であり、皮膚炎の症状を改善させることができる。本発明の飲食品は機能性食品又は健康食品(飲料も含む)として用いることができ、また動物には、飼料として与えることができる。1−アルキルエーテル型リン脂質を有効成分として含有する本発明の飲食品を、機能性食品又は健康食品として使用する場合、前記の医薬組成物に記載のように、例えば、オキアミから分離した1−アルキルエーテル型リン脂質を含むことが好ましい。
本発明の飲食品に用いる1−アルキルエーテル型リン脂質は、従来食品に使用されていたプラスマローゲンと比較して、保存安定性が良好であり、この観点からも有用である。
《皮膚炎の予防又は改善方法》
本明細書は、1−アルキルエーテル型リン脂質を有効成分として含有する予防又は改善用飲食品組成物を摂食する、皮膚炎の予防又は改善方法を開示する。本発明の皮膚炎の予防又は改善方法は、特にアトピー性皮膚炎に有効である。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
《実施例1:1−アルキルエーテル型リン脂質含有組成物の製造》
ヘキサン:エタノール(60:40)の混合溶媒108Lに、冷凍ボイルオキアミの捏練品(オキアミCPM−MD、ADEKAファインフーズ)30kgを加えた。10分間攪拌後に、脂質を含むろ液の上層(ヘキサン層)を抽出液として回収した。ヘキサン65Lに、ろ液下層及びろ過残渣を加えた。10分間攪拌後に、同様に脂質画分を含む抽出液を回収した。更に、同じ操作を繰り返して、抽出液を回収した。得られた抽出液を混合し、エバポレーターを使用して溶媒を除去した。1−アルキルエーテル型リン脂質含有脂質として、1.1kgのオキアミ油を得た。
LecitaseUltra(Novozymes)50kUを、48mLのジエチルエーテル及び102.5mLの0.2M酢酸緩衝液(pH5.0)の混合液に混濁した。上記オキアミ油1kgに、前記混合液に混濁したLecitaseUltraを加え、40℃で70時間攪拌することにより反応させた。これに9Lのヘキサン、エタノール、及び水の混合液(80:14:6)を添加した。混合液を10分間攪拌し、上層を回収した。残った下層に、ヘキサン7Lを加え、10分間攪拌して、上層を回収した。更に、同様の操作を繰り返し、上層を回収した。得られた抽出液を合わせて、混合溶媒をエバポレーターによって除去した。975gの残渣が得られた。
300mLのヘキサン/エタノール(80:20)の混合液に、得られた残渣分200gを溶解した。ヘキサン/エタノール(80:20)の混合溶媒でけん濁したシリカゲル(Wakosil200)400gを充填したガラスカラム(100cm×3cm)に、前記溶解液を添加した。ヘキサン/エタノール(80:20)の混合溶媒を4L通液させて中性脂質を溶出した。その後、エタノール8Lを通液させてエタノールアミンリン脂質を溶出させた。次にエタノール/水(80:20)の混合溶媒11Lを通液させてコリンリン脂質を溶出させた。溶出液をエバポレーターで濃縮し、7.2gの1−アルキルエーテル型リン脂質含有脂質画分を得た。(1−アルキルエーテル型リン脂質画分に含まれる1−アルキルエーテル型リン脂質:27質量%)1−アルキルエーテル型リン脂質含有脂質画分を本発明の医薬組成物又は飲食品組成物として用いることができる。
《実施例2:摂食試験(3週間)》
8週齢の雄NC/Ngaクリーンマウスを、2群(1群8匹)に分け、飼料及び水を自由に摂取させた。飼料はAIN93Gに準じた精製飼料(基本飼料:大豆油7%を含む)を用いた。なお、基本飼料は毎日交換し、飲水の水道水は3日毎に交換した。前記条件で7日間飼育することによって、マウスはアトピー性皮膚炎様の症状を発症した。対照群には基本飼料を継続摂取させ、アルキル型リン脂質摂取群は、基本飼料の大豆油7%の代わりに実施例1で得られた1−アルキル型リン脂質含有脂質1%と大豆油6%の混合脂質を使用した飼料を与え、3週間飼育した。なお、基本飼料の配合を表1に記載する。
なお、試験期間中、各群のマウスの体重増加量及び餌の摂取量への影響は認められなかった。
《実施例3:摂食試験(5週間)》
8週齢の雄NC/Ngaクリーンマウスを、2群(1群8匹)に分け、飼料及び水を自由に摂取させた。飼料はAIN93Gに準じた精製飼料(基本飼料:大豆油7%を含む)を用いた。なお、基本飼料は毎日交換し、飲水の水道水は3日毎に交換した。前記条件で7日間飼育した後、発症群には基本飼料を継続摂取させ、アルキル型リン脂質摂取群は、基本飼料の大豆油7%の代わりに実施例1で得られた1−アルキル型リン脂質含有脂質1%と大豆油6%の混合脂質を使用した飼料を与え、5週間飼育した。
なお、試験期間中、各群のマウスの体重増加量及び餌の摂取量への影響は認められなかった。
《アトピー性皮膚炎の症状の評価》
3週間又は5週間の給餌後、「耳の厚さ」「ひっかき回数」「症状スコア」「水分蒸散量」「血中IgE濃度」「血中プラスマローゲン量」「皮膚プラスマローゲン量」を測定した。
「耳の厚さ」「水分蒸散量」「血中IgE濃度」については3週間給餌した群からデータを取得し、「ひっかき回数」「症状スコア」「血中プラスマローゲン量」「皮膚プラスマローゲン量」については5週間給餌した群からデータを取得した。
<耳の厚さ評価>
各群のマウスの耳の厚さをSKデジタルノギスDN−100を用いて測定した。正常マウス群との耳の厚さの変化は、アレルゲンに対する免疫応答の尺度である。耳の厚さが厚くなるほど、炎症が重度であることを意味する。その結果、1−アルキルエーテル型リン脂質を含有する飼料を与えた群では、3週間後においても耳の厚さの変化が抑えられ、発症マウス群と比較して、有意に変化が小さいことが認められた。(図2)
<引掻き評価>
各群のマウスについて、10分間に観察される背中・耳に対する引っ掻き行動の回数を測定し、3回の平均値を算出した。この回数が少ない程、抗掻痒効果に優れることを示している。発症マウス群と比較して、1−アルキルエーテル型リン脂質を含有する飼料を与えた群では、有意に低くなっていることが認められた。(図3)
<症状スコア>
背部の体毛を剃った部分の表皮について、外観の出血の度合い(出血)、浮腫の状態(腫れ)、皮膚の乾燥(乾燥)、擦過傷やびらんの状態(傷)の状態を4段階(0:none、1:mild、2:moderate、3:severe)で評価し、その合計値とした。その結果、「出血」「腫れ」「傷」について発症マウス群に比べ有意に低くなっていた。(図4)
<水分蒸散量>
水分蒸散量は、背部の表皮について、キュートメーター(DUAL MPA580 TewameterTM300、Courage+Khazaka electronic)にて測定した。その結果、1−アルキルエーテル型リン脂質を含有する飼料を与えた群では、水分蒸散量が大きく抑えられ、皮膚炎を発症していない群に近い数値であった。(図5)
<血中IgE量の測定>
血中IgE量はアレルギー反応の程度を意味する。血中IgE量は、測定キットマウスIgE測定キット「ヤマサ」EIA(ヤマサ醤油社製)を用いて、ELISA法により測定した。その結果、発症マウス群と比較して、1−アルキルエーテル型リン脂質を含有する飼料を与えた群では、有意に低くなっていることが認められた。(図6)
<血中及び皮膚のプラスマローゲン量の測定>
血中プラスマローゲンの分析については、飼育後に採血し、血清の脂質を抽出した画分について、LC−MS/MSにより測定した。その結果を表2に記載した。皮膚プラスマローゲンの分析については、飼育後に採材した表皮および真皮の部分に関して、脂質を抽出し、LC−MS/MSにより測定した。その結果を表4に記載した。
血中アルキル型リン脂質の分析については、上記プラスマローゲンの分析と同様、
飼育後に採血し、血清の脂質を抽出した画分について、LC−MS/MSにより測定した。その結果を表3に記載した。皮膚アルキル型リン脂質の分析については、飼育後に採材した表皮および真皮の部分に関して、脂質を抽出し、LC−MS/MSにより測定した。その結果を表5に記載した。
以上の結果、アルキル型リン脂質を摂取することにより、炎症抑制効果のあるEPAおよびDHA結合型のプラスマローゲンが増加し、一方で、炎症誘導性のアラキドン酸型リン脂質が減少したことで、症状の緩和効果が得られたとみなされる。
《実施例4》
8週齢の雄NC/Ngaクリーンマウス(1群8匹)に、飼料及び水を自由に摂取させた。飼料はAIN93Gに準じた精製飼料(基本飼料:大豆油7%を含む)を用いた。なお、基本飼料は毎日交換し、飲水の水道水は3日毎に交換した。前記条件で7日間飼育した後、発症群に、基本飼料の大豆油7%の代わりに実施例1で得られた1−アルキル型リン脂質含有脂質1%と大豆油6%の混合脂質を使用した飼料(実施例1)を与え、3週間飼育した。なお、1−アルキル型リン脂質含有脂質1%と大豆油6%の混合脂質は、DHA量34mg/g、EPA38mg/gであった。3週間の給餌後、「耳の厚さ」「水分蒸散量」及び「血中IgE濃度」を測定した。(図7〜9)
《比較例1》
1−アルキル型リン脂質含有脂質1%と大豆油6%の混合脂質を使用した飼料に代えて、基本飼料を摂食させた以外は、実施例4の操作を繰り返した。3週間の給餌後、「耳の厚さ」「水分蒸散量」及び「血中IgE濃度」を測定した。(図7〜9)
《比較例2》
1−アルキル型リン脂質含有脂質1%と大豆油6%の混合脂質を使用した飼料に代えて、調製魚油1.4%と大豆油5.6%の混合脂質を摂食させた以外は、実施例4の操作を繰り返した。魚油と大豆油の混合脂質は、DHA量34mg/g、EPA38mg/gであった。3週間の給餌後、「耳の厚さ」「水分蒸散量」及び「血中IgE濃度」を測定した。(図7〜9)
比較例2の魚油を摂取したマウスと比較して、実施例4の1−アルキル型リン脂質含有脂質を摂取したマウスは、「耳の厚さ」「水分蒸散量」及び「血中IgE濃度」ともに、測定値の改善が見られた。
本発明の医薬組成物及飲食品組成物は、皮膚炎、特にはアトピー性皮膚炎の予防剤、治療剤、又は改善剤として有効に用いることができる。

Claims (4)

  1. 魚類又は甲殻類由来の1−アルキルエーテル型リン脂質を有効成分として含むことを特徴とする、皮膚炎の予防又は治療用医薬組成物。
  2. 前記皮膚炎が、アトピー性皮膚炎である請求項1に記載の医薬組成物。
  3. 魚類又は甲殻類由来の1−アルキルエーテル型リン脂質を有効成分として含むことを特徴とする、皮膚炎の予防又は改善用飲食品組成物。
  4. 前記皮膚炎が、アトピー性皮膚炎である請求項3に記載の飲食品組成物。
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