JP2018035119A - 皮膚炎の予防又は治療用医薬組成物 - Google Patents
皮膚炎の予防又は治療用医薬組成物 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2018035119A JP2018035119A JP2016171602A JP2016171602A JP2018035119A JP 2018035119 A JP2018035119 A JP 2018035119A JP 2016171602 A JP2016171602 A JP 2016171602A JP 2016171602 A JP2016171602 A JP 2016171602A JP 2018035119 A JP2018035119 A JP 2018035119A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- dermatitis
- ether type
- alkyl ether
- phospholipid
- pharmaceutical composition
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Granted
Links
Landscapes
- Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)
Abstract
【解決手段】前記課題は、本発明の1−アルキルエーテル型リン脂質を有効成分として含むことを特徴とする、皮膚炎の予防又は治療用医薬組成物、又は飲食品組成物によって解決することができる。
【選択図】なし
Description
皮膚は体の最外殻にあり、常に酸化ストレスに晒されている部位である。皮膚には顆粒層にあるタイトジャンクション(TJ)バリアと角質層にある脂質が関与する角質バリアの2種類のバリア機能が存在する。このバリア機能の低下がアトピー性皮膚炎の原因の一つであることが知られている。
アトピー性皮膚炎の症状を改善するには、ステロイド剤に代表される治療薬によって、まずは直接炎症を抑える方法が行われる。一方、損傷した皮膚のバリア機能を正常な状態へ戻すための治療薬や組成物についてのアプローチが各種検討されている。例えば、(特許文献1)にはシソ科植物由来の抽出物を有効成分として含有する、セラミド産生促進剤について、(特許文献2)にはアルニカの抽出物、アシタバの抽出物、センキュウの抽出物、ハトムギの抽出物及び冬虫夏草の抽出物から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とするクローディン−1産生促進剤について、(特許文献3)にはN−アセチル−トランス−4−ヒドロキシ−L−プロリンまたはそれらの塩を有効成分として含有する皮膚表皮セラミド合成促進剤について、(特許文献4)には、シャクヤク及びその抽出物から選ばれる1種以上を含有する、皮膚バリア機能増強剤について開示されている。
上記の方法は、基本的に外用剤として皮膚へ塗布することによって改善するものと考えられるが、塗布した部分に限らず、皮膚の機能を改善することのできる方法が求められていた。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
従って、本発明は、
[1]1−アルキルエーテル型リン脂質を有効成分として含むことを特徴とする、皮膚炎の予防又は治療用医薬組成物、
[2]前記皮膚炎が、アトピー性皮膚炎である[1]に記載の医薬組成物、
[3]1−アルキルエーテル型リン脂質を有効成分として含むことを特徴とする、皮膚炎の予防又は改善用飲食品組成物、及び
[4]前記皮膚炎が、アトピー性皮膚炎である[3]に記載の飲食品組成物、
に関する。
また、本明細書は、
[5]1−アルキルエーテル型リン脂質を、皮膚炎の治療が必要な対象に、有効量で投与することを含む、皮膚炎の予防又は治療方法、
[6]前記皮膚炎が、アトピー性皮膚炎である[5]に記載の皮膚炎の予防又は治療方法、
[7]皮膚炎の治療方法における使用のための1−アルキルエーテル型リン脂質、
[8]前記皮膚炎が、アトピー性皮膚炎である[7]に記載の1−アルキルエーテル型リン脂質、
[9]皮膚炎の予防又は治療用医薬組成物の製造のための1−アルキルエーテル型リン脂質の使用、及び
[10]前記皮膚炎が、アトピー性皮膚炎である[9]に記載の1−アルキルエーテル型リン脂質の使用、
を開示する。
なお、脂肪酸がアレルギー又は掻痒症状の改善に有効であることが報告されている。例えば、特許文献5には、α−リノレン酸を含むシソ油及び茶抽出物を摂取したラットにおいて、SRS(slow reacting substance)の産生が抑制されたことが開示されている。また、特許文献6には、魚油に含まれるエイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、及びエゴマ油に含まれるαーリノレン酸を含むドリンクが皮膚の掻痒症状を改善したことが開示されている。しかしながら、1−アルキルエーテル型リン脂質が、皮膚炎、特にアトピー性皮膚炎の改善に有効であることは、報告されていなかった。
本発明の皮膚炎の予防又は治療用医薬組成物は、1−アルキルエーテル型リン脂質を有効成分として含む。本発明の医薬組成物は、1−アルキルエーテル型リン脂質のみを含むものでもよいが、1−アルキルエーテル型リン脂質及び薬剤学的又は獣医学的に許容することのできる通常の担体又は希釈剤等を含むものでもよい。本発明の医薬組成物は、皮膚炎の予防剤、改善剤、又は治療剤として用いることができる。
本発明の医薬組成物は、一般式(I)
前記R1の炭化水素基はアルキル基、又はアルケニル基でもよく、具体的にはペンタデシル基、ヘプタデシル基、又はヘプタデセル鎖基を挙げることができる。なお、本明細書において、「sn−1位の脂肪酸残基」とは、脂肪酸からカルボキシル基(−COOH)を除いたものを意味し、具体的には一般式(1)のR1とエーテル基の炭素を含む「−CH2−R1」を意味し、16:0、18:0、又は18:1(炭素数:不飽和結合数)などと表記する。
また、前記R2の脂肪酸残基としては、具体的には、パルミトイル基、オレイル基、アラキドイル基、又はドコサヘキサエノイル基等を挙げることができる。なお、本明細書において、sn−2位の脂肪酸残基とは、脂肪酸から−OHを除いたものを意味し、16:0、18:1、20:4、又は22:6(炭素数:不飽和結合数)などと表記する。また、本明細書において、「sn−2位のアシル基」とは、脂肪酸からカルボキシル基の水素原子(−H)を除いた基を意味する。
本発明の皮膚炎改善・予防剤においては、1−アルキルエーテル型リン脂質のsn−1位の脂肪酸残基及びsn−2位の脂肪酸残基の由来となる脂肪酸が、どの脂肪酸であっても本発明の効果を有する。
本発明に用いることのできる1−アルキルエーテル型リン脂質は、グリセリンを1−アルキルエーテルグリセロールに変換し、エステル化やリン酸化を行うことにより、化学合成することも可能であり、化学合成の1−アルキルエーテル型リン脂質を用いることも可能である。しかし本発明では、入手の容易性や生産性から、天然物から抽出及び分離したものが好ましい。
1−アルキルエーテル型リン脂質の抽出源とする天然物としては、エーテル型リン脂質中の1−アルキルエーテル型リン脂質含量が50%以上である天然物を使用することが好ましく、より好ましくは80%以上、更に好ましくは95%以上である天然物を使用することが好ましい。なお、前記天然物は、プラスマローゲン(アルケニルアシル型リン脂質)をなるべく含有しないことが好ましく、好ましくはエーテル型リン脂質中のプラスマローゲン比が50%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以下、更に好ましくは5%以下である天然物を使用する。
なお、ここで、抽出源とする前記天然物として1−アルキルエーテル型リン脂質とプラスマローゲンを共に含有する天然物を使用する場合は、弱酸溶液処理等の方法により、あらかじめプラスマローゲンを除去するか、あるいは、下記の分画・濃縮・精製の操作に加え、前記プラスマローゲンを除去する操作を行うことが好ましい。
本発明の医薬組成物では、これら各種動物、植物、微生物から、溶剤抽出などによって抽出された、エーテル型リン脂質含有脂質、更には、必要に応じて、前記脂質から液々抽出やカラムクロマトグラフィー、酵素処理などでリン脂質を分離した、リン脂質画分や、更にエーテル型リン脂質を濃縮した濃縮物、また、更に精製した、精製エーテル型リン脂質を使用することができる。
前記各種動物、植物、微生物等の組織からの抽出方法としては、Folch法(Folch et al.:J. Biol. Chem., 226, 497-505, 1957)、Bligh & Dyer法(Bligh et al.:Can. J. Biochem. Physiol., 37, 911-917, 1959)、あるいは安全性の高い有機溶媒であるヘキサンや低級アルコールを用いた混合溶媒を用いる方法(Hara et al.:Anal. Biochem., 90(1):420-6,1978、特開2005-179340)、また、安全性が高く、かつ液液抽出の界面分離性が優れるヘキサンとエタノールの混合溶媒を用いる方法(特開2009-227765)などがある。また、抽出効率を高めるために、前記動物組織を脱水処理したものを用いてもよい。
なお、前記エーテル型リン脂質の濃縮の前又は後、好ましくは後に、トリグリセリドに代表される中性脂質を分画除去し、エーテル型リン脂質含有リン脂質とすることが好ましい。この中性脂質の除去方法としては、アセトン沈殿法やカラムクロマトグラフィーなどの公知の方法を採ることができる。
前記天然物からの抽出油脂は、前記エーテル型リン脂質含有脂質や前記エーテル型リン脂質含有リン脂質などのエーテル型リン脂質以外にその他の脂質を含んでもよい、その他の脂質はジアシル型リン脂質、糖脂質、スフィンゴ脂質、中性脂質などからなる。
医薬組成物における、1−アルキルエーテル型リン脂質の含有量は、使用する医薬組成物により異なるが、成人の場合、エーテル型リン脂質として1日当たり10mg〜4g、より好ましくは20mg〜2g摂取できる量の1−アルキルエーテル型リン脂質を医薬組成物中に含有できればよい。具体的には、1−アルキルエーテル型リン脂質は医薬組成物中、0.1〜100質量%であることが好ましく、0.5〜99質量%であることが好ましく、1〜80質量%であることが最も好ましい。
経口剤は、例えば、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、澱粉、コーンスターチ、白糖、乳糖、ブドウ糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、ポリビニルピロリデン、結晶セルロース、大豆レシチン、ショ糖、脂肪酸エステル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、ケイ酸マグネシウム、無水ケイ酸、又は合成ケイ酸アルミニウムなどの賦形剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、希釈剤、保存剤、着色剤、香料、矯味剤、安定化剤、保湿剤、防腐剤、又は酸化防止剤等を用いて、常法に従って製造することができる。
更に、投与形態も医薬品に限定されるものではなく、種々の形態、例えば、機能性食品や健康食品(飲料も含む)、又は飼料として飲食物の形態で与えることも可能である。
1−アルキルエーテル型リン脂質を含有する医薬組成物の製造方法は、前記にエーテル型リン脂質を有効成分として含むこと以外は、公知の医薬品の製造方法を用いて製造することができる。
本発明の飲食品又は医薬組成物を経口摂取する場合の摂取量は、前記のとおり、例えば成人の場合、エーテル型リン脂質として1日当たり10mg〜4g、より好ましくは20mg〜2g摂取できる量の皮膚炎改善・予防剤を医薬組成物中に含有できる量である。
本発明の医薬組成物は、その他の成分を含有することができる。前記その他の成分としては、例えば、食用油脂、水、グリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の乳化剤、ローカストビーンガム、カラギーナン、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、ゼラチン、澱粉、又は化工澱粉等の増粘安定剤、食塩、又は塩化カリウム等の塩味剤、酢酸、乳酸、又はグルコン酸等の酸味料、糖類又は糖アルコール類、ステビア、又はアスパルテーム等の甘味料、ベータカロチン、カラメル、又は紅麹色素等の着色料、トコフェロール、又は茶抽出物等の酸化防止剤、着香料、pH調整剤、食品保存料、又は日持ち向上剤等の食品素材や食品添加物を挙げることができる。また、各種ビタミンやコエンザイムQ、植物ステロール、又は乳脂坊球皮膜等の機能素材を含有させることも可能である。
これらのその他の成分の含有量は、本発明の医薬組成物中、合計で好ましくは80質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは20質量%以下とする。
本発明の医薬組成物は、皮膚炎、特にアトピー性皮膚炎の予防、改善又は治療に有効である。本発明の医薬組成物が有効な皮膚炎は、特に限定されるものではないが、内因性皮膚炎(発疹)、接触性皮膚炎、又は脂漏性皮膚炎を挙げることができる。
内因性皮膚炎は、免疫又は遺伝等の原因で皮膚炎を発症するものであり、例えば、アトピー性皮膚炎を挙げることができる。アトピー性皮膚炎とは、アレルギー反応と関連して皮膚の炎症(発疹など)を伴う疾患である。アトピー性皮膚炎の原因は、特定されていないが、アトピー体質の人の肌に、ハウスダスト、ダニ、又は動物の毛などが接触することによりアレルギー反応が起こり、アトピー性皮膚炎が発症することがあると考えられている。また、卵、牛乳、又は大豆などの食品からアトピー性皮膚炎が発症することもあると考えられている。本発明の医薬組成物は、特にアトピー性皮膚炎に対して顕著な効果を示す。
実施例に示すように、本発明の医薬組成物は、アトピー性皮膚炎を発症したNC/Ngaマウスに投与することによって、アトピー性皮膚炎の症状を改善することができる。また、発症前のNC/Ngaマウスに投与することによって、アトピー性皮膚炎の発症を抑制することができる。
脂漏性皮膚炎は、例えば頭皮に乾いた脂っぽい皮膚のはがれ(フケ)などが見られる。症状が進むと発疹が赤くなり、吹き出物などが見られることもある。脂漏性皮膚炎の原因は分かっていないが、遺伝、環境、又は精神的ストレスなどが考えられている。最近では、カビの1種であるマラセチアが発症の原因に関連しており、重要な悪化因子であると考えられている。
前記1−アルキルエーテル型リン脂質は、皮膚炎の予防又は治療方法に用いることができる。すなわち、本明細書は、1−アルキルエーテル型リン脂質を、皮膚炎患者に投与することを特徴とする、皮膚炎の予防又は治療方法を開示する。本発明の皮膚炎の予防又は治療方法は、特にアトピー性皮膚炎に有効である。
前記1−アルキルエーテル型リン脂質は、皮膚炎患の治療方法に使用することができる。すなわち、本明細書は、皮膚炎の予防又は治療方法における使用のための、1−アルキルエーテル型リン脂質を開示する。本発明の1−アルキルエーテル型リン脂質は、特にアトピー性皮膚炎に有効である。
前記1−アルキルエーテル型リン脂質は、皮膚炎の治療用医薬組成物の製造へ使用することができる。すなわち、本明細書は、1−アルキルエーテル型リン脂質の、皮膚炎の予防又は治療用医薬組成物の製造への使用を開示する。本発明の1−アルキルエーテル型リン脂質に使用は、特にアトピー性皮膚炎に有効である。
本発明の効果が得られる作用機構は完全に解明されているわけではないが、以下のように推論することができる。しかしながら、本発明は以下の説明によって限定されるものではない。本発明の医薬組成物、又は食品組成物の有効成分である1−アルキルエーテル型リン脂質は、皮膚に存在するバリア機能の一つである顆粒層にあるタイトジャンクション(TJ)バリア機能の維持、及び回復に関与し、皮膚炎を予防又は治療できると考えられる。すなわち、本発明の医薬組成物、又は食品組成物はタイトジャンクションが障害される皮膚炎に有効に作用できる。また、本発明の医薬組成物は、皮膚炎の治療のみでなく、皮膚炎の予防に用いることができる。
本発明の皮膚炎の予防又は改善用飲食品組成物は、1−アルキルエーテル型リン脂質を有効成分として含む。本発明の飲食品に含まれる1−アルキルエーテル型リン脂質は、前記「皮膚炎の予防又は治療用医薬組成物」の項に記載の1−アルキルエーテル型リン脂質を用いることができる。すなわち、化学合成された1−アルキルエーテル型リン脂質を使用することもできるが、天然物から抽出された1−アルキルエーテル型リン脂質を含む抽出物(抽出油脂)を用いることもできる。
また、本発明の飲食品組成物によって、予防又は改善される皮膚炎は、前記「皮膚炎の予防又は治療用医薬組成物」の項に記載の皮膚炎である。すなわち、皮膚炎であれば特に限定されるものではないが、内因性皮膚炎(発疹)、接触性皮膚炎、又は脂漏性皮膚炎を挙げることができる。特には、本発明の飲食品組成物は、アトピー性皮膚炎の予防、又は改善に有効である。
本発明の飲食品は、1−アルキルエーテル型リン脂質を含有することにより、血液中においてIgE濃度を低下させることが可能であり、皮膚炎の症状を改善させることができる。本発明の飲食品は機能性食品又は健康食品(飲料も含む)として用いることができ、また動物には、飼料として与えることができる。1−アルキルエーテル型リン脂質を有効成分として含有する本発明の飲食品を、機能性食品又は健康食品として使用する場合、前記の医薬組成物に記載のように、例えば、オキアミから分離した1−アルキルエーテル型リン脂質を含むことが好ましい。
本発明の飲食品に用いる1−アルキルエーテル型リン脂質は、従来食品に使用されていたプラスマローゲンと比較して、保存安定性が良好であり、この観点からも有用である。
本明細書は、1−アルキルエーテル型リン脂質を有効成分として含有する予防又は改善用飲食品組成物を摂食する、皮膚炎の予防又は改善方法を開示する。本発明の皮膚炎の予防又は改善方法は、特にアトピー性皮膚炎に有効である。
ヘキサン:エタノール(60:40)の混合溶媒108Lに、冷凍ボイルオキアミの捏練品(オキアミCPM−MD、ADEKAファインフーズ)30kgを加えた。10分間攪拌後に、脂質を含むろ液の上層(ヘキサン層)を抽出液として回収した。ヘキサン65Lに、ろ液下層及びろ過残渣を加えた。10分間攪拌後に、同様に脂質画分を含む抽出液を回収した。更に、同じ操作を繰り返して、抽出液を回収した。得られた抽出液を混合し、エバポレーターを使用して溶媒を除去した。1−アルキルエーテル型リン脂質含有脂質として、1.1kgのオキアミ油を得た。
LecitaseUltra(Novozymes)50kUを、48mLのジエチルエーテル及び102.5mLの0.2M酢酸緩衝液(pH5.0)の混合液に混濁した。上記オキアミ油1kgに、前記混合液に混濁したLecitaseUltraを加え、40℃で70時間攪拌することにより反応させた。これに9Lのヘキサン、エタノール、及び水の混合液(80:14:6)を添加した。混合液を10分間攪拌し、上層を回収した。残った下層に、ヘキサン7Lを加え、10分間攪拌して、上層を回収した。更に、同様の操作を繰り返し、上層を回収した。得られた抽出液を合わせて、混合溶媒をエバポレーターによって除去した。975gの残渣が得られた。
300mLのヘキサン/エタノール(80:20)の混合液に、得られた残渣分200gを溶解した。ヘキサン/エタノール(80:20)の混合溶媒でけん濁したシリカゲル(Wakosil200)400gを充填したガラスカラム(100cm×3cm)に、前記溶解液を添加した。ヘキサン/エタノール(80:20)の混合溶媒を4L通液させて中性脂質を溶出した。その後、エタノール8Lを通液させてエタノールアミンリン脂質を溶出させた。次にエタノール/水(80:20)の混合溶媒11Lを通液させてコリンリン脂質を溶出させた。溶出液をエバポレーターで濃縮し、7.2gの1−アルキルエーテル型リン脂質含有脂質画分を得た。(1−アルキルエーテル型リン脂質画分に含まれる1−アルキルエーテル型リン脂質:27質量%)1−アルキルエーテル型リン脂質含有脂質画分を本発明の医薬組成物又は飲食品組成物として用いることができる。
8週齢の雄NC/Ngaクリーンマウスを、2群(1群8匹)に分け、飼料及び水を自由に摂取させた。飼料はAIN93Gに準じた精製飼料(基本飼料:大豆油7%を含む)を用いた。なお、基本飼料は毎日交換し、飲水の水道水は3日毎に交換した。前記条件で7日間飼育することによって、マウスはアトピー性皮膚炎様の症状を発症した。対照群には基本飼料を継続摂取させ、アルキル型リン脂質摂取群は、基本飼料の大豆油7%の代わりに実施例1で得られた1−アルキル型リン脂質含有脂質1%と大豆油6%の混合脂質を使用した飼料を与え、3週間飼育した。なお、基本飼料の配合を表1に記載する。
なお、試験期間中、各群のマウスの体重増加量及び餌の摂取量への影響は認められなかった。
8週齢の雄NC/Ngaクリーンマウスを、2群(1群8匹)に分け、飼料及び水を自由に摂取させた。飼料はAIN93Gに準じた精製飼料(基本飼料:大豆油7%を含む)を用いた。なお、基本飼料は毎日交換し、飲水の水道水は3日毎に交換した。前記条件で7日間飼育した後、発症群には基本飼料を継続摂取させ、アルキル型リン脂質摂取群は、基本飼料の大豆油7%の代わりに実施例1で得られた1−アルキル型リン脂質含有脂質1%と大豆油6%の混合脂質を使用した飼料を与え、5週間飼育した。
なお、試験期間中、各群のマウスの体重増加量及び餌の摂取量への影響は認められなかった。
3週間又は5週間の給餌後、「耳の厚さ」「ひっかき回数」「症状スコア」「水分蒸散量」「血中IgE濃度」「血中プラスマローゲン量」「皮膚プラスマローゲン量」を測定した。
「耳の厚さ」「水分蒸散量」「血中IgE濃度」については3週間給餌した群からデータを取得し、「ひっかき回数」「症状スコア」「血中プラスマローゲン量」「皮膚プラスマローゲン量」については5週間給餌した群からデータを取得した。
各群のマウスの耳の厚さをSKデジタルノギスDN−100を用いて測定した。正常マウス群との耳の厚さの変化は、アレルゲンに対する免疫応答の尺度である。耳の厚さが厚くなるほど、炎症が重度であることを意味する。その結果、1−アルキルエーテル型リン脂質を含有する飼料を与えた群では、3週間後においても耳の厚さの変化が抑えられ、発症マウス群と比較して、有意に変化が小さいことが認められた。(図2)
各群のマウスについて、10分間に観察される背中・耳に対する引っ掻き行動の回数を測定し、3回の平均値を算出した。この回数が少ない程、抗掻痒効果に優れることを示している。発症マウス群と比較して、1−アルキルエーテル型リン脂質を含有する飼料を与えた群では、有意に低くなっていることが認められた。(図3)
背部の体毛を剃った部分の表皮について、外観の出血の度合い(出血)、浮腫の状態(腫れ)、皮膚の乾燥(乾燥)、擦過傷やびらんの状態(傷)の状態を4段階(0:none、1:mild、2:moderate、3:severe)で評価し、その合計値とした。その結果、「出血」「腫れ」「傷」について発症マウス群に比べ有意に低くなっていた。(図4)
水分蒸散量は、背部の表皮について、キュートメーター(DUAL MPA580 TewameterTM300、Courage+Khazaka electronic)にて測定した。その結果、1−アルキルエーテル型リン脂質を含有する飼料を与えた群では、水分蒸散量が大きく抑えられ、皮膚炎を発症していない群に近い数値であった。(図5)
血中IgE量はアレルギー反応の程度を意味する。血中IgE量は、測定キットマウスIgE測定キット「ヤマサ」EIA(ヤマサ醤油社製)を用いて、ELISA法により測定した。その結果、発症マウス群と比較して、1−アルキルエーテル型リン脂質を含有する飼料を与えた群では、有意に低くなっていることが認められた。(図6)
血中プラスマローゲンの分析については、飼育後に採血し、血清の脂質を抽出した画分について、LC−MS/MSにより測定した。その結果を表2に記載した。皮膚プラスマローゲンの分析については、飼育後に採材した表皮および真皮の部分に関して、脂質を抽出し、LC−MS/MSにより測定した。その結果を表4に記載した。
血中アルキル型リン脂質の分析については、上記プラスマローゲンの分析と同様、
飼育後に採血し、血清の脂質を抽出した画分について、LC−MS/MSにより測定した。その結果を表3に記載した。皮膚アルキル型リン脂質の分析については、飼育後に採材した表皮および真皮の部分に関して、脂質を抽出し、LC−MS/MSにより測定した。その結果を表5に記載した。
以上の結果、アルキル型リン脂質を摂取することにより、炎症抑制効果のあるEPAおよびDHA結合型のプラスマローゲンが増加し、一方で、炎症誘導性のアラキドン酸型リン脂質が減少したことで、症状の緩和効果が得られたとみなされる。
8週齢の雄NC/Ngaクリーンマウス(1群8匹)に、飼料及び水を自由に摂取させた。飼料はAIN93Gに準じた精製飼料(基本飼料:大豆油7%を含む)を用いた。なお、基本飼料は毎日交換し、飲水の水道水は3日毎に交換した。前記条件で7日間飼育した後、発症群に、基本飼料の大豆油7%の代わりに実施例1で得られた1−アルキル型リン脂質含有脂質1%と大豆油6%の混合脂質を使用した飼料(実施例1)を与え、3週間飼育した。なお、1−アルキル型リン脂質含有脂質1%と大豆油6%の混合脂質は、DHA量34mg/g、EPA38mg/gであった。3週間の給餌後、「耳の厚さ」「水分蒸散量」及び「血中IgE濃度」を測定した。(図7〜9)
1−アルキル型リン脂質含有脂質1%と大豆油6%の混合脂質を使用した飼料に代えて、基本飼料を摂食させた以外は、実施例4の操作を繰り返した。3週間の給餌後、「耳の厚さ」「水分蒸散量」及び「血中IgE濃度」を測定した。(図7〜9)
1−アルキル型リン脂質含有脂質1%と大豆油6%の混合脂質を使用した飼料に代えて、調製魚油1.4%と大豆油5.6%の混合脂質を摂食させた以外は、実施例4の操作を繰り返した。魚油と大豆油の混合脂質は、DHA量34mg/g、EPA38mg/gであった。3週間の給餌後、「耳の厚さ」「水分蒸散量」及び「血中IgE濃度」を測定した。(図7〜9)
Claims (4)
- 1−アルキルエーテル型リン脂質を有効成分として含むことを特徴とする、皮膚炎の予防又は治療用医薬組成物。
- 前記皮膚炎が、アトピー性皮膚炎である請求項1に記載の医薬組成物。
- 1−アルキルエーテル型リン脂質を有効成分として含むことを特徴とする、皮膚炎の予防又は改善用飲食品組成物。
- 前記皮膚炎が、アトピー性皮膚炎である請求項3に記載の飲食品組成物。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016171602A JP6755530B2 (ja) | 2016-09-02 | 2016-09-02 | 皮膚炎の予防又は治療用医薬組成物 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016171602A JP6755530B2 (ja) | 2016-09-02 | 2016-09-02 | 皮膚炎の予防又は治療用医薬組成物 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2018035119A true JP2018035119A (ja) | 2018-03-08 |
JP6755530B2 JP6755530B2 (ja) | 2020-09-16 |
Family
ID=61566951
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2016171602A Active JP6755530B2 (ja) | 2016-09-02 | 2016-09-02 | 皮膚炎の予防又は治療用医薬組成物 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP6755530B2 (ja) |
Citations (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US20110263531A1 (en) * | 2005-12-23 | 2011-10-27 | Jado Technologies Gmbh | Methods for the treatment and amelioration of atopic dermatitis |
JP2012507577A (ja) * | 2008-11-06 | 2012-03-29 | ヴァスキュラー バイオジェニックス リミテッド | 酸化脂質化合物およびその使用 |
JP2013053110A (ja) * | 2011-09-05 | 2013-03-21 | Teikyo Univ | 経口投与剤 |
JP2014525463A (ja) * | 2011-09-01 | 2014-09-29 | バスキュラー バイオジェニックス リミテッド | 酸化リン脂質の製剤および剤形 |
JP2016040277A (ja) * | 2009-08-21 | 2016-03-24 | ターゲッティド デリバリー テクノロジーズ リミテッド | 小胞状の製剤 |
-
2016
- 2016-09-02 JP JP2016171602A patent/JP6755530B2/ja active Active
Patent Citations (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US20110263531A1 (en) * | 2005-12-23 | 2011-10-27 | Jado Technologies Gmbh | Methods for the treatment and amelioration of atopic dermatitis |
JP2012507577A (ja) * | 2008-11-06 | 2012-03-29 | ヴァスキュラー バイオジェニックス リミテッド | 酸化脂質化合物およびその使用 |
JP2016040277A (ja) * | 2009-08-21 | 2016-03-24 | ターゲッティド デリバリー テクノロジーズ リミテッド | 小胞状の製剤 |
JP2014525463A (ja) * | 2011-09-01 | 2014-09-29 | バスキュラー バイオジェニックス リミテッド | 酸化リン脂質の製剤および剤形 |
JP2013053110A (ja) * | 2011-09-05 | 2013-03-21 | Teikyo Univ | 経口投与剤 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP6755530B2 (ja) | 2020-09-16 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
AU2014202880B2 (en) | Production and purification of esters of polyunsaturated fatty acids | |
JP5934483B2 (ja) | リン脂質結合型dha増加剤 | |
JP5997887B2 (ja) | 経口投与剤 | |
EP2027864B1 (en) | Composition for improvement of lipid metabolism | |
KR20040095263A (ko) | 체온상승제 | |
EP0635266A1 (en) | Composition comprising an omega 9 series unsaturated fatty acid in the treatment of medical symptions caused by leucotriene B4 | |
JP3614859B2 (ja) | ネルボン酸組成物 | |
JP2009269865A (ja) | 経口投与剤 | |
JP2009269864A (ja) | リン脂質結合型アラキドン酸増加剤 | |
JP2010105946A (ja) | 筋タンパク質増強剤及びこれを含む医薬品または食品 | |
US7157496B2 (en) | Prophylactic agent of hypertension containing a conjugated fatty acid as an effective ingredient and the use thereof | |
JP6755530B2 (ja) | 皮膚炎の予防又は治療用医薬組成物 | |
JP6824506B2 (ja) | 脂質組成物 | |
JP2008074794A (ja) | 肥満予防又は改善剤 | |
JPWO2003039270A1 (ja) | 抗肥満用飲食物 | |
JP6456032B2 (ja) | Sirt1活性化剤および当該Sirt1活性化剤の利用 | |
JP7309136B2 (ja) | Hdl機能改善剤及びhdl機能改善食品組成物 | |
JP5479696B2 (ja) | 生体内のプラスマローゲン増加剤 | |
JP6761924B2 (ja) | エーテル型グリセロリン脂質含有組成物及びその製造方法 | |
JP4359205B2 (ja) | 皮膚保湿用食品 | |
JP2000239168A (ja) | 脳卒中予防剤およびこれを配合してなる組成物 | |
JP4118128B2 (ja) | 共役脂肪酸含有飼料 | |
JP4575105B2 (ja) | 骨芽細胞活性抑制剤 | |
JP2021155565A (ja) | エーテル型グリセロリン脂質含有機能性素材の製造方法 | |
JP2021145563A (ja) | 脂質代謝改善用組成物 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A80 | Written request to apply exceptions to lack of novelty of invention |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A80 Effective date: 20160921 |
|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20190613 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20200519 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20200716 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20200804 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20200819 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 6755530 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |